感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。
始まりの終わり 終わりの始まり
そして翌日。
オールフォーワンは事の大きさから特例中の特例として、刑の判定を待たず特殊拘置所へ入れられた。
オールフォーワンは、護送用の車椅子に座らされて特殊拘置所へと護送されていた。
平和の象徴を限界まで追い詰めた巨悪は今、まさに刑を待つ身となった。
「ここは?」
オールフォーワンは、自身を護送していた看守に尋ねる。
すると看守は、話をするのも不愉快だと言わんばかりにオールフォーワンに怒鳴りつける。
「黙っていろ!! 見ればわかるだろう!! 死刑すら生温い程の罪人が行き着く場所だ!!」
看守が怒鳴ると、オールフォーワンは少し考えてからようやく納得したのか言葉を紡いだ。
まるで、今の今まで
「ああ…監獄なのか…わからなかった。ここは…センサーが多すぎて」
オールフォーワンが言うと、看守が怪訝そうな表情を浮かべる。
それもそのはずで、ここが監獄である事くらい見ればわかるはずなのだ。
看守は、もしやと思いオールフォーワンに尋ねる。
「…………? 何を言っている。貴様……眼が視えてないとでも言うのか?」
看守が言うと、オールフォーワンは肯定する代わりに話し始める。
「衣ずれの音や空気のわずかな振動に加え、『赤外線』という“個性”で微かながらに感知して6年間過ごしてきた。『音・振動』で動作を…『感知』で感情の動きや空間把握を補助しているんだ。ここはセンサーだらけで感知が意味を成さない…悪いね」
オールフォーワンが言うと、看守は思わず戦慄する。
眼が視えていない状態でオールマイトと互角に渡り合っていたというのだ。
看守は、自分が今護送している男が『怪物』という言葉すら生温い巨悪そのものである事を本能で感じていた。
特殊な拘束具に加えて先日の戦いの消耗のせいか、オールフォーワンにはもはや暴れる力は残っていなかったが、日本中を恐怖に陥れた巨悪としての悪意は未だに健在だった。
そして、オールフォーワンは拘置所に入っていく。
オールフォーワンは、オールマイトとの戦いで負けを認めていた。
そして思った。
実に醜い足掻きだった、だがオールマイトは間違えたと。
戦いの果て、オールマイトは緑谷に寄り添う事を選んだ。
だがオールマイトは、離れ時を見誤った。
死に場所を失ったのだ。
───『先生』というのは、弟子を一人立ちさせる為にいる。
頼りにしてきた師が手の届かぬ場所へ去り、彼は憎悪を募らせる。
彼は真に先頭を歩んでいく。
仲間もいる、仲間を増やす術も学んでいる。
大丈夫だ、死柄木弔。
経験も、憎悪も、悔恨も、全てを糧としろ。
次は、君だ。
オールフォーワンは、死柄木に自分の思いを託した。
◇◇◇
神野区の悪夢から一夜明け、世間は騒然としていた。
警視庁では、今回の件について会議が行われていた。
「捕えた脳無はいずれもこれまでと同様、人間的な反応がなく新たな情報は得られそうにありません。保管されていたという倉庫は消し飛ばされており、彼らの製造方法についても追って調査を進めるしかありません」
正装をした警官の一人が報告をすると、上官職と思われる男が怪訝そうな表情を浮かべながら口を開く。
「そもそもその倉庫というのもフェイクじゃねえのか? 生体実験なぞ行える環境じゃねえし場も安易すぎる。バーからも連中の個人情報はあがってねえんだろ?」
「現在調査中です」
上官職の男が言うと、報告をした男がさらに報告をする。
上官職の男は、頭を掻きながら考え込む。
すると別の男が口を挟む。
「大元は捕えたものの…死柄木をはじめとした実行犯らは丸々捕り逃がした…とびきり甘く採点したとして…痛み分けといったところか」
「馬鹿野郎、平和の象徴と引き換えだぞ。オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの“絶対に倒れない平和の象徴”はいない。国民にとっても、
「たった一人にもたれかかってきたツケだァな…」
別の男の発言に対し上官職の男が訂正し、さらに太った男がぼやく。
オールフォーワンを捕らえたのは良かったものの、その代償としてヒーローとしての『オールマイト』を失ってしまったのだ。
その代償は、あまりにも大きすぎた。
すると上官職の男は軽く身を乗り出しながら言った。
「馬鹿も集まりゃここまで出来ると…全員が知った。俺は恐れているよ。最初期のプロファイリングじゃ子どもの癇癪とまで言われていた主犯格死柄木弔の犯行計画は、数を重ねるごとに回りくどく…世間への影響を見据えたものになっている。死柄木は考え成長している。そして、オールマイトが崩れ以前にも増して抑圧がなくなろうとしている状況。連合は失敗する度力をつけていく。こうも都合良く勢力拡大の余地が残っていくものかね?」
「手の内だと? 結果論じゃないか?」
「ネガティヴに捉えすぎでは?」
上官職の男が言うと、別の男と報告をした男が流石に考えすぎだと言った。
だが上官職の男は、不吉な予感を抱いていた。
「わからん。ただ一つ確実に言えるのは…奴等は必ず捕えなきゃならん。我々警察も
警察の上層部は、
平和の象徴を失った今、いつまでも従来の考えを続けるわけにはいかなかった。
◇◇◇
一方、入院中のオールマイトはというと。
「私の中の残り火は消えた、“平和の象徴”は死にました」
オールマイトは、見舞い兼事情聴取に来ていたグラントリノと塚内に言った。
オールマイトは先日の戦いで全身ボロボロになっていて、もはやワンフォーオールも残っていなかった。
平和の象徴としてのオールマイトの面影は、もうどこにも無かった。
「しかしまだやらねばならぬ事があります」
「死柄木弔。志村の孫………か」
オールマイトが言うと、グラントリノが呟く。
だが塚内は、その事実を未だ完全には受け入れられないでいた。
「奴の発言だろ? 根拠が薄くはないか? 二人ともその先代の家族とは交流がなかったのか?」
「ああ…志村は夫を殺されていてな。我が子をヒーロー世界から遠ざけるべく里子に出している。俺は俊典には『私にもしもの事があってもあの子には関わらないでほしい』と…」
塚内が尋ねると、グラントリノが答える。
志村が息子の為を思って交わした友人との約束が、逆にオールフォーワンがつけ入る隙となってしまったのだ。
すると塚内が悔しそうに俯きながら口を開く。
「故人との約束が逆に…やるせないな」
「お師匠がせめて平穏にと決別した血縁…! 私は死柄木を見つけなければ…見つけて彼を…」
「だめだ」
オールマイトは、拳を握り締めた。
一度は倒そうとした
だがオールマイトが言う前に、グラントリノが言葉を遮る。
その先の言葉は、ヒーローとしてあってはならない言葉だったからだ。
そしてそれは、今までのオールマイトの行動を否定するという事でもある。
人を救けると同時に悪を打ち砕くのがヒーローなのだ。
悪を挫く為には、時には非情にならなければならなかった。
「見つけてどうする。お前はもう奴を
グラントリノが言うと、塚内が頷く。
そしてグラントリノは師としてオールマイトに言葉をかける。
「お前は雄英に残ってすべき事を全うしろ。平和の象徴ではいられなくなったとしても、オールマイトはまだ生きてるんだ」
◇◇◇
あの後緑谷達は轟・八百万と合流し、爆豪とひなたを警察に送り届けた。
そして半日以上をかけて、緑谷達は家路を辿った(ちなみに飯田はまだつけ髭をつけたままだった)。
「では!」
「ありがとうな、みんな」
「皆さん、真っ直ぐ帰って下さいね!?」
「……うん」
八百万が念押しすると、飯田を除く他の4人が頷く。
「うん、本当にありがとう」
「じゃあ…また学校で」
そう言って爆豪とひなたを救出しに行った6人は、そのまま家へ帰っていった。
◇◇◇
ひなたが警察署で事情聴取を受けた後、相澤がひなたを迎えに来た。
「大変ご迷惑をおかけしました…僕が攫われなんかしたばかりに……」
ひなたは、暗い表情をして相澤に向かって頭を下げていた。
自分のミスのせいで零に“個性”をかけられて連れ去られてしまい、挙句の果てに自分の心の弱さが原因で零に心を揺さぶられて頼るべきクラスメイトを一度は拒絶してしまったのだ。
どう考えても擁護できない過ちを犯してしまったと猛省していた。
だが相澤の返答は、ひなたが想定していた返答と180°真逆だった。
「頭上げろ。謝らなきゃならんのは俺の方だ。俺は、手の届くところにいた。あの時、絶対にお前を救け出さなきゃいけなかった。…すまない。俺が不甲斐ないばかりにお前を危険に晒した」
相澤は、頭を下げて猛省しているひなたに向かって頭を下げる。
爆豪とひなたが攫われてから、相澤はずっと嫌な想像が頭の中を巡っていた。
悪の道を歩ませる為に洗脳や拷問を受けているのではないか、ヒーローへの腹いせに慰み者にされているのではないか、最悪の場合殺されているのではないか、悪い未来を想像すればキリがなかった。
そして、その可能性が無いという保証はどこにも無かった。
そうでなくとも、10歳かそこらの少女が
ひなたがこうして無事に帰ってきたのは、奇跡以外の何でもなかった。
だからこそ、何が何でも攫われる前に救けなければならなかった。
その場にいる事が出来なかった爆豪ならまだしも、目の前にいた娘一人救けられなかった自分にヒーローとして、教師として、父親としての資格があるのだろうかと自問自答を繰り返していた。
だがひなたがこうして無事帰ってきた今、それをいくら考えても仕方なかった。
それでもせめて、自分を責める代わりに自分の失態のせいで攫われた事を謝った。
するとひなたはギョッとして目を見開き動揺する。
「………!? おっ、お…お父さんが…あっ、あ…謝……!?」
あまりにもショッキングな出来事にひなたが目を丸くしてわなわな震えていたので、そのリアクションに拍子抜けしたのか相澤はハッと笑って言った。
「何驚いてんだ。俺だって自分が悪い時は謝るぞ」
ひなたは、『そもそも自分が悪いと認める事が珍しいんだよ』とツッコミを入れようとするが、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
そして山田が心配しているかもしれない事を思い出し、携帯を確認した。
「パパから連絡きてないかな」
するとだ。
「いや重い女か!!」
ひなたは、自分の携帯を確認した瞬間にツッコミを入れる。
それもそのはず、未読のメッセージが100件以上来ていたのだ。
普段はどれだけスベっても全く動じない鋼鉄のメンタルを持つ山田だったが、ひなたの事になるとたちまち親バカが発動してしまうのだ。
「ったく…」
ひなたは呆れ返ってツッコミを入れようとするが、心配してくれているのだろうと思い直すとツッコミを入れる代わりに無事を報告した。
するとすぐに山田が駆けつけ、無事戻ってきたひなたの顔を見るなりひなたに抱きついてきた。
『ひなたあああああ!!』
「ふぎゃ!」
『お前が攫われたって聞いた時、俺…@#¥%$※*!!!』
「ちょっ…だからパパ、“個性”出てるってば。あと後半何言ってんのかわかんない」
山田が“個性”を発動して泣きながら何かを言っていると、ひなたは山田の背中を軽く叩いて注意した。
強い力で胸板に顔を押し付けられているので顔が痛く、ひなたは鼓膜が破れこそしなかったものの耳がキンキン鳴っていた。
さらには爆音で眼鏡にヒビが入り、隣にいた相澤は鬱陶しそうに耳を塞いでいた。
ようやく山田がひなたを離すと、ひなたは胸板に押し当てられて少し赤くなった鼻を摩る。
すると山田がひなたに尋ねる。
「それでひなた、お前は本当に何もされてないんだよな?」
「ああ、うん。軽く催眠はかけられたけど、あとは何もされてないよ。…多分」
ひなたが言うと、相澤は明らかに不機嫌そうな表情を浮かべて尋ね返す。
「『多分』……?」
相澤が睨みながら言うと、これ以上二人に心配かけるわけにはいかないと思ったひなたは慌てて弁解する。
「あ、えっと…その…催眠かけられてる間はボーっとしてて…記憶が定かじゃないんだよね。まるで、頭の中に靄がかかってるみたいに、ぼんやりとしか思い出せなくて…あ、でもひとつだけ気になる事があってさ」
「気になる事?」
「うん。何か、“個性”が変なの。救出されてからはまだ一度も“個性”を使ってないんだけど、“個性”を使ってないはずのものにまで波長が見えるようになったの。最初は、自分のものが自分のものじゃなくなったみたいで怖かったけど、一日置いてようやく気持ちに整理がついた。それで、お父さん達には相談しなくちゃって思って…」
ひなたは、自分の掌をぼんやりと見つめ、身体の周りでエメラルドグリーンの光をぱちぱちと散らす。
ひなたが“個性”に異変を感じたのは、緑谷達に救出された直後だった。
それまで見えなかったものが見えるようになり、最初は自分のものが自分のものでなくなったようで怖くなり、“個性”を使わないようにしていたが、肉親である二人にだけは打ち明ける事にしたのだ。
ひなたは、徐に顔を上げると、山田の顔をまじまじと見つめる。
「…………」
「ん、どうしたひなた?」
「……………」
ひなたは、山田の顔をまじまじと見つめるとそっと眼鏡を外した。
そのような行動を取った事に、大した理由はなかった。
普段ひなたが自身の“個性”で感じ取っている『波長』をヒビの入った眼鏡から感じ取ったので、ただ何となく手に取ってみただけだった。
今までのひなたなら、特定の波長を持つ電子機器以外の無生物に対して『波長』を読み取る事は出来なかったはずだった。
ひなたは、何を思ったのかまじまじと手に取った眼鏡を見つめると小さく息を吸った。
そして…
『わっ!!』
ひなたは、試しに眼鏡に対して“個性”を使った。
するとその直後、信じがたい現象が起こり相澤と山田は目を見開く。
「は…!?」
「嘘だろ…!?」
ひなたが“個性”を使うと、眼鏡のヒビが綺麗に消えて元通りに戻ったのだ。
それを見たひなた自身も、今目の前で起こった事に目を見開く。
「おい、お前今何をした?」
「え……? ぼ、僕だってわかんないよ! 何かパパの眼鏡から波長を感じたから試しに“個性”を使ってみただけで…今までこんな事なかったのに何で急にって思って…」
相澤がひなたに尋ねるが、ひなた自身は自分でも何をしたのかわかっていない様子だった。
明らかにひなたの“個性”に異変が起こったのをその目で確認した二人は、急遽ひなたを大学附属病院に連れて行き、一応身体検査も兼ねて“個性”の検査も行った。
◇◇◇
「“個性”が変質してます」
ひなたを診察した医師は、三人にそう告げた。
ひなたを診察したのは、国内屈指の優秀な医者で、口が堅く信頼のおける人物だ。
ひなたが施設から救出された時に治療を行い、ひなたが退院してからも何かと気にかけてくれていたので、相澤と山田からすれば感謝しかなかった。
「まぁたまにあるんですよ。ふとしたきっかけで突然“個性”が飛躍的に進化する例っていうのはね。問題はその“個性”なんですけど…これが世界でも類を見ないかなり特殊な“個性”でして…」
医師は、頭を掻きながら告げた。
医師が頭を悩ませる程に、ひなたの“個性”が複雑で希少な“個性”だったのだ。
ひなたがキョトンとしていると、医師は診断結果を見せながら言った。
「ひなたちゃんの“個性”は、“個性”を声による超振動で破壊・麻痺させるというものでしたよね。しかしそれはあくまで発動中の“個性”に対して効果を発揮するものであって、既に発動し切ったものに対しては効果がなかったと」
「ええ、娘は、今までは“個性”を壊す事しか出来ませんでした。物を直す事なんて出来なかったはずです」
「ですよね。これはあくまで私がひなたちゃんの“個性”を観察した結果導き出した推測なのですが、ひなたちゃんは、“個性”を使った事実そのものも抹消できるようになったんじゃないでしょうか」
「「な…!?」」
「………!」
「例えば、先ほど仰っていた山田さんの眼鏡で例えるなら、『声で眼鏡が壊れた』という事実を抹消して、壊れる前の状態に戻してしまうわけです。今はまだ壊れた小物を修復する程度の力しかないようですが、そのうち“個性”が成長すれば、傷を癒したり、“個性”由来の病気を治す事も…それどころか、死人を蘇らせる事さえも可能になるかもしれません」
医師が話をすると、二人は思わず目を見開く。
ひなた本人も、まさか自分がそんな力を使えるようになっているとは思わなかったため驚いていた。
ひなたが取得した力は、ものが受けた“個性”による影響そのものを抹消し、元通りに修復してしまうという力だった。
今はまだこの力が使えるようになったばかりなのでできる事もあまり多くはないが、いずれ“個性”が成長していけば、オールフォーワンに“個性”を奪われた人々を元に戻したり、怪我を治したりする事も可能になる力だった。
「もし私の推測が正しければ、これは凄い事ですよ。何せ、既に起こった事実を変えられる“個性”なんて、私の知る限りでは世界でも指を折る程しかいない希少な“個性”ですから」
「………」
医師が言うと、ひなたは少し戸惑いながら自分の頬を掻く。
ひなたは、“個性”を壊す事しかできない自分の“個性”がコンプレックスだった。
だが“個性”が成長し、できる事が増えて人を助ける為に“個性”を使えるようになり、やっと自分の“個性”に自信が持てるようになってきたのだ。
自分がこれから出来るようになるかもしれない力の使い方の可能性を示されて、今すぐにでもその可能性を試してみたくなった。
すると医師は、指を組みながら深刻そうな表情で話しかける。
「さて。ここからは提案になるのですが、その“個性”を研究させてくれませんか?」
「……え?」
「ひなたちゃんの“個性”は、医療業界に革命を起こせるかもしれない力です。もし最新の設備が整った研究施設で研究させていただけるなら、怪我の後遺症や病に苦しんでいる幾万もの人の命を救えるでしょう。それだけではなく、ひなたちゃんの“個性”の成長を手助けする事をお約束します」
医師が言うと、ひなたは僅かに目を見開く。
ひなたは一瞬、研究施設で受けた仕打ちを思い出してしまい、身体が硬直した。
すると山田は、固まっているひなたを見て、低い声で医師に尋ねる。
「…あんた、ひなたがずっと研究施設で苦しめられてきたのは知ってんだろ。その提案が、ひなたをどんな気持ちにさせるかわかってんのか」
「当然、ひなたちゃんを苦しめるような事は一切しません。もしご協力下さるのなら、ひなたちゃんのストレスにならない環境を提供します。私の運営している施設には既に子供達が通院していますし、何より最先端の医療技術に触れる機会があります。ヒーロー科の学生なら、今のうちから医療の現場をその場で見ておいて損はないと思いますよ」
医師が優しい口調で言うと、ひなたはほっと胸を撫で下ろす。
だが、それで一切の不安が消え去ったわけではなかった。
ひなたは、一番気になっていた事を医師に尋ねる。
「あの…それはわかりましたが、学校はどうなるんですか?」
「研究の都合上、週に何回かは通院してもらう事になりますが、そちらの都合に合わせるよう努力します。それでも不都合があれば、通信教材もこちらで用意させていただきます。このようなケースの場合、ひなたちゃんのヒーロー科の単位取得には差し支えありませんね?」
「ええ。その点は問題ありませんが…」
医師が尋ねると、相澤はひなたを見る。
ひなたは、俯いたまま何かを考え込んでいた。
「ひなた……」
山田は、心配そうにひなたに尋ねる。
するとひなたは、顔を上げて自分の考えを話す。
「お話はよく分かりました。あの…すごい子供みたいな考えなんですが、人の命を救うって、すごくカッコいい事だと思ってて…こんな僕でも力になれるなら、協力したいとは思ってるんです。ですが、やっぱり研究は少し待って下さい」
「!」
「僕には、命懸けで僕を救けてくれる友達がいます。遅かったけど、やっと気付いたんです。今は皆との時間を大切にしたくて…だから、今すぐお力を貸す事はできません。ごめんなさい」
ひなたは、医師に対して深く頭を下げた。
すると医師は、ふぅっとため息をつき、優しく笑顔を浮かべながら話しかける。
「そう、ですよね。…分かりました。また何かあればご連絡下さい」
「はい。ありがとうございます」
医師が言うと、ひなたはペコリと頭を下げる。
山田がひなたの肩に手を置くと、ひなたはふぅっと小さくため息をつき、ニコッと微笑んだ。
診察を終えたひなたは、相澤と一緒にアパートへと帰っていった。
◇◇◇
数日後。
テレビでは、事件解決数、社会貢献度、国民の支持率など諸々を集計し毎年二回発表される現役ヒーロー番付『ヒーロービルボードチャートJP』不動のNo.1オールマイトが事実上のヒーロー活動引退を表明し、日本のみならずヒーローの本場アメリカでも騒然としている事、オールマイト本当の姿、体力の限界などが報道されてた。
そして、No.4ヒーローベストジーニストは一命は取りとめたものの長期の活動休止、更にNo.32ヒーロー根強い人気のプッシーキャッツの一人ラグドールは拉致後“個性”を使用出来なくなるという変調から活動の見合わせる事となった。
一夜にして多くのヒーローたちが大打撃を受けた神野の悪夢に、日本中が騒然としていた。
そして校長室では、校長がオールマイト、相澤、管(ブラドキングの事)の前で話をしていた。
「その身を犠牲に多くを救ってくれた。国民、ヒーロー、そして校長として感謝してもしきれやしない。ただ、世間では君が雄英教師を続けるのに少なからず批判意見も出ている。『元はと言えばオールマイトが雄英に赴任したのが問題、戦えない体になった今こそ、再び子どもたちが巻き込まれるのでは?』……皆不安なのさ。だからこそ今度は我々で紡ぎ強くしていかなきゃならない。君が繋ぎ止めてくれたヒーローへの信頼をね」
校長がオールマイトに言うと、管も自分達が今までしてきた事を悔いるようにオールマイトに話しかけた。
「あの一件で気付かされました。あなた一人に背負わせてしまっていたこと、背負わせていたものの大きさ」
「脅威はまだ拭いきれていない。これからはより強固に守り育てなければならない。そこで、兼ねてより考えていた案を実行に移すのさ。私はブラドと被害の大きかったB組へ。オールマイトとイレイザーヘッドはA組へ……よろしく頼むね、家庭訪問」
校長はそう言って一枚のプリントを三人に見せた。
そのプリントには、『雄英高校 全寮制導入検討のお知らせ』と書かれていた。
◇◇◇
その後、オールマイトと相澤は雄英から近い順にA組の家を回っていた(ちなみにひなたは既に本人の了承を得ているため家庭訪問を免除されている)。
当然被害にあった生徒の家庭は親が大反対していた(例外的に耳郎と爆豪の家はあっさり了承した)が、生徒本人の説得により今のところ全ての過程が全寮制に同意していた。
そして今日、二人は心操の家に訪れていた。
オールマイトはガリガリの姿でスーツを着ており、相澤も珍しく髪を整えスーツを着ていた。
心操の両親は、少し雑談をしつつ二人をリビングに招き入れた。
「それでは全寮制についてなのですが…」
「あ、はい。よろしくお願いします」
相澤が言おうとすると、心操の父親はあっさり承諾した。
すると相澤とオールマイトはキョトンとする。
あまりにもあっさり同意されたので、逆に調子を狂わされたのだ。
「本当に宜しいのですか?」
「何というか、やけにあっさりですね…」
相澤とオールマイトが尋ねると、心操の父親が尋ね返す。
「では少しは粘った方が宜しかったですか?」
「あ、いや…そういうわけでは…」
心操の父親が意地の悪い笑みを浮かべながら言うと、オールマイトが否定しようとする。
すると心操の父親はさらに笑みを深くして言った。
「冗談です。全寮制については、家族三人で話し合って決めました。息子が寮に入る事を希望しているので私達親としては息子の希望を優先したいと思っておりますし、息子の安全を考えての事ならむしろ私達の方がお願いしたいくらいです。…何より、ここまで誠意を持ってお願いされては断れませんしね」
「…と仰いますと?」
「私、会話をした相手の心が読めるんです。初めて会話をした時点で貴方方の誠意がしっかり伝わってきたので、元々反対する気なんてありませんでしたよ」
心操の父親の発言に対し相澤が尋ねると、心操の父親は自分の左目尻を指差しながら言った。
初めて会話を交わした時点で二人に不誠実さが少しも感じられなかったため、この二人になら息子を任せられると判断したのだ。
すると心操の母親も頭を下げて頼み込む。
「私からも、どうか息子をよろしくお願いします。息子の将来を保証していただけるのなら、文句はありません」
「父さん、母さん……」
両親が全寮制に同意してくれたので、全寮制を強く希望していた心操は安心した。
すると相澤とオールマイトが頭を下げる。
「ご了承頂きありがとうございます」
「必ず人使少年を立派なヒーローに育ててみせます」
「「「よろしくお願いします」」」
二人が頭を下げて約束すると、心操と両親もまた頭を下げて頼み込んだ。
こうして、心操も無事寮に入る事が決まった。
マスターの詳細
マスター
本名:
年齢:不明(少なくとも死亡した時点で70歳以上と思われる)
所属:Ouroboros(現在は解体済み)
“個性”名:不明
身長:173cm
誕生日:不明
血液型:不明
好きなもの:不明
性格:知的探究心旺盛
ひなたを製造した張本人。
自身の最高傑作であるひなたに対して非人道的な実験を繰り返していたが、プロヒーローに逮捕され、その後獄中で謎の死を遂げている。
なお、自身の頭脳に絶対的な自信を持つが故に周囲の人間を実験動物としてしか見る事ができない異常者で、研究員を実験体にしたり拉致してきた子供に激痛を伴う実験をした挙句殺すといった常軌を逸した行動を取っていた。
“個性”:不明
詳細は不明。
自分の寿命を伸ばす事ができる“個性”と思われる。
もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます
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要る
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要らない