生き残れ!決死のサバイバル訓練・前編
来たるヒーロー仮免許取得試験に向け、雄英高校ヒーロー科1年生は集中的な訓練を続けていた。
相澤は、ホームルームで本日の演習の内容を説明していた。
「仮免の取得試験は例年災害時における救助を目的としたものが多く出題されている。よって今日はクラスを11名と10名の2チームに分け仮免試験を想定した救助訓練を行う」
相澤は、そう言って黒板にチーム分けを表示した。
Aチーム:相澤ひなた、蛙吹梅雨、飯田天哉、麗日お茶子、上鳴電気、切島鋭児郎、常闇踏陰、轟焦凍、爆豪勝己、緑谷出久、八百万百
Bチーム:青山優雅、芦戸三奈、尾白猿夫、砂藤力道、障子目蔵、耳郎響香、心操人使、瀬呂範太、葉隠透、峰田実
「俺はAチームか」
「ひなたちゃん、飯田くん、梅雨ちゃん、同じチームだね。よろしく」
「よろしくね、ケロケロ」
「おう! よろしくお茶子っち! 梅雨ちゃん! 天ちゃん!」
同じチームになった飯田、麗日、蛙吹、ひなたの4人は、席が近いもの同士で話し合っていた。
「よろしく頼むな」
「任せろって」
上鳴と切島も、席が近いもの同士で話し合う。
「救助訓練はチームワークが大切。よろしくお願いしますわ、轟さん、常闇さん」
「ああ」
「全力を尽くそう」
八百万が二人に話しかけると、二人共頷く。
「ケッ、クソデクと同じチームかよ」
爆豪が悪態をつくと、緑谷は萎縮しつつ目を丸くした。
(ひー君と同じチームが良かった…でも落ち込んでる場合じゃない! 頑張ろう!)
ひなたは、心操と同じチームではなかったので少し落ち込みつつも、両手でグッと拳を作った。
緑谷は、今回の訓練の内容に疑問を抱く。
(救助訓練か…一体どんな内容なんだろう)
すると相澤が生徒達に指示を出した。
「では、これより救助訓練を開始する。全員直ちにコスチュームに着替えグラウンドβに集合しろ」
◇◇◇
コスチュームに着替えたひなた達は、グラウンドβに集まった。
飯田は、早速チームメイトの前で演説を行う。
「Aチームのリーダーは、クラス委員長であるこの俺飯田天哉が任命された! 皆、雄英生の名に恥じぬようこの救助訓練を完遂させようではないか! その為にも君達の奮起と努力が必要になるわけだが、まずその心構えについて…」
「長い…相変わらず話が長いよ委員長」
「天ちゃんフルスロットル…!」
「いいから訓練始めようぜ!」
飯田が長々と話していると、上鳴、ひなた、切島がツッコミを入れた。
すると八百万が前に出て窘める。
「皆さん! 逸る気持ちはわかりますが、訓練を始める前にもう一度状況を確認する事をお勧めしますわ」
「そうだな。八百万くんの言う通りだ」
八百万が言うと、飯田が頷く。
すると八百万は、持っていたデバイスで立体映像を表示する。
「2時間前、地下にある大型ショッピングモールの最下層で火災が発生。現在火災は鎮火。中にいた人々の避難も終わっています。ですが、この地下街のどこかに要救助者が一人だけ残っているという情報が入ってきました」
「俺達に課せられた任務はその要救助者を速やかに助け出す事。ちなみに要救助者はダミーの人形だ」
「地下街全域が火災によって停電していますが、幸いにも非常用電源は生きてますわ」
飯田と八百万が言うと、麗日は立体映像を覗きながら言った。
「なら、明かりが無くても捜索は出来るね」
「要救助者の捜索は時間との勝負。手分けして探す事を提案する」
「賛成ー! 探すのは僕に任せて! 見つけ次第…「ちょっと待って」…デッくん?」
常闇とひなたが手を挙げながら提案すると、緑谷が遮る。
「この辺り、電波が届いてないみたい」
「ホントだ」
「俺のも旗立ってねえ」
緑谷が言うと、上鳴と切島も自分の携帯を確認した。
すると緑谷が状況を推測する。
「恐らく、中継基地局も火災の被害を受けたという設定なんじゃないかな」
「だとすると、手分けして探すにしても集合場所を決めておいた方がいい」
「うん!」
緑谷の推測に対し轟が意見を言うと、ひなたが頷く。
すると蛙吹は、立体映像を眺めながら言った。
「この施設は地下6階まであるわ。中央の階段から下りて地下1階を手分けして捜索。10分後に中央階段前で合流。下の階へ行って再び手分けして捜索するのがいいんじゃないかしら」
「梅雨ちゃんの意見に賛成!」
「ん! これだけ広いモールだったら一階を全員で手分けして探して落ち合った方が効率的だよね!」
「僕もそう思う」
蛙吹の提案に麗日、ひなた、緑谷が賛成すると、爆豪が一人で歩き出した。
「…って、かっちゃんどこ行くの?」
「決まってんだろ。逃げ遅れたクソ市民を捜すんだよ」
緑谷が尋ねると、爆豪が悪態をつく。
すると飯田が爆豪に注意をした。
「待ちたまえ爆豪くん! 勝手な行動をしてチームワークを乱すんじゃない! ここは蛙吹くんの提案通りに…」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「つっ、梅雨ちゃんくんの提案通りに…」
飯田が若干ぎこちない様子で言うが、爆豪は先に歩き出してしまった。
「捜索は時間との勝負っつったのはてめえらだろうが! この俺が即行でクソ市民を見つけ出して格の違いを見せつけてやんよ」
「かっちゃん!」
「
「黙ってろ殺すぞ」
「ヒーロー以前に人の発言とは思えない…!」
先に行く爆豪を緑谷とひなたが止めようとするが、爆豪はひなたに悪口を言ってそのままショッピングモールへ入っていった。
爆豪の悪口にひなたが目を点にしていると、切島が爆豪を追いかけていった。
「待てよ爆豪! 一人じゃ危険だ、俺も行く」
「じゃあ何となく俺も」
切島に続けて、上鳴までもが爆豪について行った。
「切島くん、上鳴くんまで!」
「10分後、中央階段前で集合な!」
「爆豪も連れてくようにすっから、なるべく!」
「う、うん…わかった、気をつけて」
切島と上鳴は、他の8人と約束すると爆豪を追いかけに行ってしまい、緑谷は仕方なく二人を送り出してしまった。
「爆豪くん相変わらずだなぁ」
「唯我独尊」
「あのさ…嫌な予感がするの僕だけ?」
麗日と常闇がツッコミを入れると、ひなたが苦笑いを浮かべながらチョロっと手を挙げる。
爆豪は言わずもがなで、切島は方向音痴(しかもI・アイランドでの前科あり)で、上鳴はクラス一のアホなのでひなたが不安がるのも無理はなかった。
飯田は、先に行ってしまった3人に困惑しつつも方針を話す。
「と…とにかく! いつまでもここにいても仕方ない。俺達も手分けして捜索を開始しよう!」
「救助に必要な“個性”を考えますと…緑谷さんと麗日さんと蛙吹さん、轟さんと常闇さん、そして私と飯田さんとひなたさんの3つのグループに分けたら如何でしょう」
「うん!」
飯田と八百万が言うと、ひなたが納得する。
「なるほど…このグループ分けは流石八百万さんって感じだ。僕らのグループは地形条件を苦にしない蛙吹さん、『
緑谷がブツブツと分析していると、麗日が緑谷の肩を叩いて声をかけた。
すると緑谷は周りをキョロキョロと見渡し、自分達3人以外の5人がいなくなっている事に気がつく。
「皆は!?」
「もう行っちゃったよ」
「私達も捜索に行きましょ緑谷ちゃん」
「そ…そうだね、要救助者を早く助けないと」
二人が言うと、緑谷は慌てて二人を連れてショッピングモールへ入っていった。
麗日は、ショッピングモールの地下へと降りながら蛙吹と緑谷に話しかける。
「結構広いね」
「ええ」
「でも思ったより明るい。これなら捜索に支障は無い」
緑谷が言うと、麗日が尋ねる。
「デクくん、どこから探す?」
「火災は最下層で起こったから…火災に気付いた要救助者は真っ先に地上へ向かうはず。なのに逃げ遅れたとなると…防火用のシャッターが下りて閉じ込められた可能性がある。これらの階段のどこかにいるのかも」
「行ってみよう」
「ケロ」
緑谷が推測し麗日が提案すると、蛙吹が頷いた。
◇◇◇
一方、ひなた達3人はというと。
ひなたは、反響定位を使って要救助者を探していた。
「ひなた君、どうだ?」
「んー…この近くにはいないっぽいよ。下の階じゃないかな」
(相手が“個性”持ちなら楽に探せるんだけどなぁ)
飯田が尋ねると、ひなたが答える。
ひなた達が探しているのは、自分で動く事もなければ音も出さず、ひなたが索敵を得意とする“個性”の波長も無いマネキンなので、いつも以上に捜索に時間がかかっていた。
すると八百万が創造した懐中電灯で周囲を照らしながら言った。
「時間まで丹念に捜索しましょう」
「…ちょっと待って。これ…何の音!?」
八百万が懐中電灯で捜索をしていると、ひなたが不穏そうな表情を浮かべる。
◇◇◇
一方、轟と常闇はというと。
「常闇、明るさは大丈夫か?」
「
轟が左手から炎を出しながら尋ねると、常闇が答える。
◇◇◇
一方、爆豪達3人はというと。
「爆豪、勝手に行くなって!」
「ついて来いとは言ってねえ」
切島と上鳴が爆豪を追うと、爆豪は悪態をついた。
◇◇◇
一方、緑谷達はというと。
階段前に辿り着いた緑谷達は、思わず目を見開く。
周りの店全てがシャッターが下りていたのだ。
「あちこちシャッターが下りてる」
「まるで迷路のようね」
「階段は…」
緑谷が階段を探していたその時、ショッピングモール全体が揺れる。
「ケロ」
「あっ」
「何!?」
突然ショッピングモールが揺れ、三人は驚きを露わにする。
◇◇◇
一方飯田達も、突然の揺れに驚いていた。
「これは…!?」
「マズいよ!! 天ちゃん、ヤオモモ!! 早く逃げなきゃ!!」
飯田と八百万が驚いていると、ひなたが血相を変えて叫んだ。
すると飯田は、瞬時に状況を判断し、ひなたと八百万を抱えて飛び出した。
「二人とも、しっかり掴まっていろ!!」
飯田は、二人を抱えるとエンジンを吹かして爆速で移動した。
するとその直後、ちょうどひなた達がいた場所が崩落した。
咄嗟の判断で二人を連れて逃げた飯田は、二人を下ろすと背後を見る。
先程までひなた達がいた場所は、瓦礫で埋まっていた。
「マズいよ、二人とも…! 階段が…!」
ひなたは、周囲の音を声で探りながら現状を報告した。
今の崩落で階段が埋もれてしまい、下の階に降りる事も上の階に登る事も出来なくなってしまった。
「他の皆は…救助者の方は無事だろうか」
(マネキンだけどね)
飯田が他のメンバーとマネキンの心配をすると、ひなたが心の中でツッコミを入れる。
すると八百万は、ひなたに指示を出す。
「ひなたさん。脱出経路の捜索をお願いできますか?」
「…! うん! わかった!」
八百万が言うと、ひなたは早速脱出経路を探し始める。
すると飯田は、生き埋めになってしまったかもしれないクラスメイトや救助者を探す方が先ではないかと考え、八百万に意見した。
「他の皆を探しに行かなくていいのか!? 助けを呼ぶ事も難しい状況にいるかもしれないんだぞ!」
「だからこそですわ。たとえ助け出せたとしても、外に出られなければ意味がありません。状況が把握できない今は、脱出経路の確保を最優先しなくては」
「…! ああ、そうだな」
八百万が言うと、飯田はハッとする。
クラスメイトや救助者を心配するあまり、助けなくてはという思いが先行していたが、冷静に考えてみれば救助者を助け出すのに手間取ってその間に脱出経路が経たれてしまったら、それこそ本末転倒だった。
すると、脱出経路を探していたひなたが目を見開く。
「ん! 二人とも! エレベーターから逃げられそうだよ!」
「本当か!?」
「うん、とりあえず壊れてはないみたい! まずは邪魔な瓦礫をどかさなきゃだけど」
「この三人だけでは、エレベーターに辿り着くまで何時間かかる事やら…」
ひなたは、唯一外に出られそうなエレベーターを見つけたが、瓦礫で埋もれていて、重い瓦礫を退かしてエレベーターまで辿り着くのは気が遠くなる作業だった。
するとひなたは、瓦礫で塞がれた道を指差しながら言った。
「この状況を打破できる人を、一人だけ知ってるよ。この先にいるから、呼びかけてみるね」
◇◇◇
そして常闇と轟も、ショッピングモールの揺れに気付く。
「地震か?」
揺れを感知した轟は、辺りを見渡しながら言った。
◇◇◇
そして爆豪達も、ショッピングモールの揺れに気付く。
「ヒイッ! 揺れてる揺れてる」
「離れろや鬱陶しい!」
上鳴が爆豪の右腕にしがみついて怯えていると、爆豪が文句を言った。
するとその直後、地面に大きくヒビが入る。
「あっ」
「床が…!」
◇◇◇
一方、緑谷達のいた場所は、地震によって停電が起こった。
「明かりまで!」
するとその直後、床が割れて蛙吹が下に落ちてしまう。
「ケ、ケロ…!」
「梅雨ちゃん!」
「蛙吹さん!」
緑谷は、『シュートスタイル』で崩れる床の瓦礫を砕いて蛙吹を助けようとするが、さらに床が崩れて自分まで落ちてしまう。
「しまっ…!」
「デクくん!」
緑谷を助けようと飛び出した麗日も、下の床が崩れて一緒に下の階へ落ちてしまった。
さらに三人が落ちた床に瓦礫が覆い被さり、床の穴を塞いでしまった。
「デクくん! デクくん!!」
麗日が声をかけると、下の階に落ちた緑谷がゆっくりと目を開ける。
緑谷の前には、フワフワと浮遊する麗日がいた。
「ん…んん…ここは…?」
「大丈夫? 怪我は無い?」
麗日は宙に浮きながら話しかけ、緑谷もまた麗日の“個性”で宙に浮いていた。
「あっ、うん、大丈夫。ありがとう、麗日さんのお陰で助かったよ」
「そんな事…あ、解除するね」
麗日が両手の指を合わせて“個性”を解除し、二人は瓦礫の上に降りた。
だがその時、麗日がバランスを崩して緑谷にもたれかかる。
「うわ!」
「あっ」
「「あ…」」
図らずもぶつかってしまった二人は、気まずそうに顔を赤らめる。
麗日は、恥ずかしいのを誤魔化すように緑谷に話しかける。
「わ…私らどれくらい落ちたんだろ」
「わからない、とりあえず今の状況を確認しよう」
緑谷は、そう言って携帯の懐中電灯で周りを照らした。
「…って、蛙吹さんは?」
緑谷が言ったその時、下の方から蛙吹が顔を出して覗き込んでくる。
「梅雨ちゃんと呼んで」
「うわあああああ!?」
「ケロ?」
いきなり蛙吹が現れたので緑谷が大声を上げて驚いていると、蛙吹が首を傾げる。
すると麗日が蛙吹に話しかけた。
「梅雨ちゃん、無事だったんだ! 良かった」
「でも状況はあまり良くないみたい。このフロアの出入り口は全て瓦礫で埋まってしまっているわ。天井もあんな状態だし…」
「そっか…脱出経路を確保しないと」
「だったらデクくんの超パワーを使って瓦礫を吹っ飛ばせばいいんじゃないかな!?」
蛙吹と緑谷が考えていると、麗日が腕をブンブン振り回しながら提案した。
すると蛙吹が麗日を止める。
「それはいけないわ、お茶子ちゃん」
「えっ、どうして?」
「耳を澄ませてよく聞いてみて」
蛙吹が言うと、麗日も耳を澄ませる。
すると、奥の方から瓦礫が崩れる音が聞こえてきた。
「この音…」
「瓦礫が崩れてる。地下街の崩落が完全に終わったわけじゃないんだ」
「ええ、無理矢理瓦礫を撤去したら更なる崩壊が起こる可能性があるわ」
「だとしたら、一つ一つ瓦礫を取り除いて進むしかない」
そう言って緑谷は、麗日の方を振り向く。
「麗日さんの『
「うん、任せて」
緑谷が言うと、麗日が頷く。
するとその時、聴き覚えのある声が聴こえてくる。
『デッく━━━ん!! お茶子っち━━━!! 梅雨ちゃ━━━ん!!』
「この声…相澤さんだ!」
緑谷は、瓦礫の向こうからひなたの声が聴こえてくるのに気がついた。
緑谷が瓦礫に近づくと、ひなたがさらに叫ぶ。
『そこにいるんでしょ!? 無事なら無事って言って━━━━!!』
「相澤さん! 緑谷です! 三人とも無事だよ!」
『良かった! 時間が無いから単刀直入に言うね! 脱出経路を見つけた! でも、瓦礫で埋もれてて人手が足りない! 手伝って!』
ひなたが言うと、三人は顔を見合わせて頷く。
三人の答えは、もう既に決まっていた。
緑谷は、瓦礫の向こうにいるひなたに叫び返す。
「わかった! すぐにそっち行くからちょっと待ってて!」
『ありがとう! お願いね!』
◇◇◇
一方、轟と常闇はというと。
轟は、シャッターにもたれかかりながら言った。
「振動が起こってから約10分。余震がないところを見るとやはり地震ではなく地下街のどこかで崩落が起こったと考えた方がいいな」
「轟、感謝する。お前が氷結で頭上を防いでくれなければ、俺は瓦礫に埋もれていた」
常闇は、崩れた瓦礫を見ながら轟に感謝する。
すると轟は、携帯を見ながら言った。
「仲間を助けるのは当然だろ。しかし、電源がイカれたのは痛いな」
「ああ。この暗闇では
「更なる崩落が起きる…か」
「轟が常時炎を出してくれれば
常闇が轟の方を見ながら言うと、轟は首を横に振る。
「やめとこう。瓦礫で埋もれた場所で炎を使えば酸素不足になり、最悪一酸化炭素中毒だ。絶対必要な時以外に炎は使わねえ」
「この状況での訓練続行は不可能だ。ここで待っていれば、先生方の救助が来るのではないか?」
「そうだな。確かにそうかもしれない。尤もこの崩落が意図的に訓練に組み込まれていた可能性もあるが」
「二次災害からの脱出か」
「どちらにせよ、クラスの奴等が気になる。さっきの崩落で誰かが怪我をしているかもしれねえ。皆の無事を確かめないと」
「そうだな。その意見に全面的に賛成する」
そう言って二人は、立ち上がって歩き出した。
◇◇◇
その頃、爆豪達のいた場所はというと。
瓦礫の表面が動き、突然切島が飛び出てくる。
「だっはぁ!! 酷え目に遭ったぜ!! おい、生きてるか上鳴!?」
「な…何とか」
切島は、瓦礫に埋もれていた上鳴を引っ張り上げた。
「しっかし流石爆豪だな。あいつが天井から降ってきた瓦礫を爆破で細かく砕いてなかったら、俺ら大怪我してるとこだった」
「何言ってんの。爆破で飛び散った瓦礫の破片から硬化で俺を庇ってくれたの切島っしょ? つうか俺だけ何の役にも立ってねえ。お荷物かよ」
「そんな事ねえって」
切島と上鳴が話していた、その時だった。
「ハッ、バカかよてめえは!」
突然、爆豪が悪態をつきながら二人に歩み寄ってくる。
「爆豪!」
「何だよわざわざ言葉にして言う事ねえだろ! 十分わかってるっての!」
「違えよバカ!」
「また言った!」
上鳴が言うと爆豪が否定し、上鳴が不服そうにする。
すると爆豪は、上鳴に対して言った。
「いいか! ここから脱出すんのに一番必要なのはてめえの“個性”だ! そんな事も分かんねえのか、このアホ面」
「爆豪…」
「せいぜい“個性”温存しとけや」
爆豪が言うと、上鳴が嬉しそうにする。
すると切島が上鳴と爆豪に尋ねる。
「なあ、これからどうする?」
「どうするって、そりゃ脱出するに決まってんでしょ? 要救助者探しどころじゃねえや。つうか今や俺らが要救助者だって!」
「この状況、先生達も把握してるよな。だったらここで待ってりゃ助けに来てくれるんじゃ…」
「そうだな。下手に動いたらまた崩落起きるかもだし…って、どこへ行く!?」
上鳴は、一人でどこかに行こうとする爆豪に声をかけた。
すると爆豪は、足を止める事なく答えた。
「決まってんだろ! 逃げ遅れたクソ市民を捜すんだよ!」
「ちょっと待てって、これは訓練…要救助者っつうてもダミーの人形じゃん! こんな状況で行く必要なんか…「オールマイトなら行く!」
「え?」
ダミー人形を助けに行こうとする爆豪を上鳴が止めようとすると、爆豪が言った。
「訓練だろうが何だろうが、オールマイトなら助けに行くっつったんだ! No.1ヒーローがやれる事を、俺が出来なくてどうする? こんなクソチンケな訓練くらい、あっさりクリアしてやんよ」
「ちょっ…待てよ、熱くなりすぎだって!」
爆豪が言うと、上鳴は爆豪を落ち着けようとする。
すると切島が爆豪についていく。
「爆豪…俺も行くぜ!」
「切島?」
「だってそうだろ!? 仮免に受かれば俺達は本格的にヒーロー活動を始めるんだ。そうなりゃこんな事態に出くわす事もあるかもしんねえ。ヒーローなら要救助者を放ってこの場から逃げるか? いいや逃げねえ!
切島は、グッと拳を握りながら叫び、爆豪の方へ走っていった。
「切島、お前も熱くなりすぎ…!」
「クソ髪、足手纏いはなしだ」
「ああ分かってる、行こうぜ!」
「おいおいおいおい、ホントに行っちゃうわけ? 待てよ俺も行くから! 一人じゃ寂しくなっちゃうでしょもう!」
二人が先に行くと、上鳴は慌てて二人を追いかけていった。
◇◇◇
その頃緑谷達は、ひなた達と合流する為瓦礫を少しずつどかしていた。
麗日が少しずつ瓦礫を浮かせ、緑谷と蛙吹が瓦礫を運ぶ。
すると、瓦礫の隙間から八百万が顔を出した。
「あっ、皆さん!」
三人が緑谷達の無事を確認すると、三人とも安堵の息を漏らす。
飯田は、救援に来た緑谷達三人に早速指示を出す。
「三人とも、無事で良かった。早速で申し訳ないが、この先にあるエレベーターホールに行きたい。力を貸してくれ」
「エレベーターホール?」
飯田が言うと、麗日がキョトンとする。
飯田から指示を受けた緑谷は、その意図に気付く。
「そうか…! エレベーターが無事なら、麗日さんの“個性”で一気に上まで行ける!」
「そういう事! 皆、力を貸して!」
「もちろん!」
「ケロ」
緑谷とひなたが言うと、麗日と蛙吹が頷いた。
そして麗日は“個性”で瓦礫を浮かせ、他の5人が瓦礫を運んで撤去した。
◇◇◇
そしてその頃、爆豪達三人は切島の“個性”でシャッターに穴を開けて最下層に辿り着いていた。
「ここが地下6階、地下街の最下層か」
「うへえ、グッチャグチャ。こんな状況でどうやって要救助者を捜すんだよ…」
切島と上鳴は、最下層の惨状を見て驚いていた。
すると爆豪が切島に尋ねる。
「切島、一番被害の少ない場所は?」
「何だよいきなり…あ…一番奥んとこじゃねえか? あそこだけ壁が崩れてねえし」
切島が壁の壊れていない場所を指すと、爆豪がそこへ歩く。
「よし行くぞ」
「行くって…」
「どこへ?」
「アホ! 一番頑丈な場所には非常用の発電設備があるに決まってんだろうが」
爆豪は、そう言ってその場所にあった扉を蹴り飛ばした。
すると中には、爆豪の読み通り瓦礫が降って動かなくなった発電設備があった。
「やっぱか、瓦礫喰らってイカれてやがる。おいアホ! おめえの出番だ」
「えっ、何が?」
上鳴がキョトンとしていると、爆豪が予備バッテリーの配線を引っ張って叫ぶ。
「いいからこの予備バッテリーにてめえの電気をクソ流しやがれ!」
「あ、ああ…」
(そっか、爆豪の奴非常用電源を直してクラスの皆が脱出しやすいように…)
上鳴が爆豪の気遣いに感心していると、爆豪が上鳴を睨みながら急かす。
「グズグズすんなクソ殺すぞ」
「わかったって…」
上鳴は、爆豪の態度に苦笑いを浮かべつつ配線を握ってありったけの電気を流し込む。
「ヘヘッ、そういう事なら…今まで活躍してなかった分思いっきりやってやる! 喰らえ! 全力放電200万ボル…「そんなに出したらバッテリーが壊れんだろうが!」
上鳴がいきなり全開で電気を送り込むと、爆豪が平手打ちで上鳴をブッ飛ばした。
「わかった、ちゃんとやるから!」
爆豪に怒鳴られた上鳴は、今度は少しずつ電気を送り込む。
「充電充電、急速充電…!」
◇◇◇
そしてその頃、緑谷達はというと。
緑谷とひなたは、瓦礫を少しずつ撤去していた。
緑谷から瓦礫を受け取った蛙吹は、麗日に声をかける。
「お茶子ちゃん」
「解除」
麗日が“個性”を解除すると、運び出した瓦礫が床に落ちる。
「もう少しでエレベーターのある場所に出るはずです」
「やっとだぁ…!」
八百万が端末の立体映像を見ながら言うと、ひなたが一息つく。
するとその時、麗日が地面に膝をつく。
「うっ…」
「麗日くん!」
「麗日さん、大丈夫? 気持ち悪い?」
麗日が口に手を当てていると、飯田と緑谷が心配する。
すると麗日は、苦しそうにしながらも返事をした。
「あ…平気平気。このくらいでへばってたら仮免試験にも受からないから…」
「お茶子ちゃん、もう少しよ。頑張って」
蛙吹がしゃがみながら言うと、麗日は笑顔を浮かべながら答える。
「わかってる。プルスウルトラ…だよね」
◇◇◇
一方、轟と常闇はというと。
「こういう時、麗日か八百万がいればな」
「光が…それか相澤さえいれば…」
二人は、巨大な瓦礫を前にして呟く。
「無いものねだりしてもしょうがねえ。やるぞ」
そう言って轟が巨大な瓦礫を押そうとした、その時だった。
突然、轟の足元の床に亀裂が生じる。
「しまっ…!」
「轟!!」
轟が崩落に巻き込まれそうになると、常闇が目を見開き
「落ち着け!!
常闇は何とか
◇◇◇
一方、脱出経路を確保していたひなた達はというと。
「!!」
突然、ひなたが触角をピンと立てて目を見開く。
すると一緒に瓦礫を運んでいた蛙吹が尋ねる。
「ケロ、どうしたのひなたちゃん」
「来る…!」
ひなたが言った直後、フロア全体が揺れる。
「この揺れは…!」
そしてさらにその直後、突然天井が崩れた。
すると緑谷は、崩落した天井の方へ走っていく。
「デクくん!!」
「一か八か…!!」
緑谷は、超パワーの“個性”を発動して崩落する天井へと飛び出した。
◇◇◇
その頃、暴走した
「ぐっ…!!」
「轟!! 鎮まれ、
常闇は
「頼む鎮まってくれ!!」
常闇が何とか
突然投げ出された常闇は、床に倒れ込んだ。
「あっ」
常闇は、ガバッと起き上がって
◇◇◇
そしてその頃、瓦礫に突っ込んでいった緑谷は。
「ハア…ハア…あっ…明かりが…」
緑谷は、フロア全体の明かりが付いた事に気がつく。
◇◇◇
その頃、発電室にいた爆豪達はというと。
「よっしゃ! 非常用電源復旧!」
電源が復活したため、切島が喜んでいた。
「あとはクソ市民を見つけるだけだ!」
「おう! でもよ、さっきの振動は…」
「時間が無え、急ぐぞ!」
「おう!」
爆豪と切島は、急いでダミー人形を助けに行こうとする。
一方で、電源を復活させた上鳴はアホになっていた。
「う…待ってウェイ…」
◇◇◇
その頃、常闇と轟はというと。
常闇は、気を失った轟に声をかけていた。
「轟…しっかりしろ、轟!」
常闇が声をかけると、轟が目を覚ます。
「あ…すまねえ。気を失っていたようだ…」
「いや、こっちこそ
「謝る必要はねえよ。結果オーライだ」
轟がそう言って右側を見ると、
だが、救助訓練はこれで終わりではなかった。
仮免試験を想定したこの救助訓練、基、サバイバル訓練の本当に試練はここから始まるのだった。
もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます
-
要る
-
要らない