抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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生き残れ!決死のサバイバル訓練・後編

 轟と常闇が脱出経路を確保していた頃ひなた達は、何とかエレベーターホールにまで辿り着いた。

 緑谷がエレベーターの扉を蹴り飛ばし、脱出経路を確保する。

 

「日の光が差し込んでる。ここからなら脱出できる!」

 

「これで地上に行けるね」

 

「だが…それは妙じゃないか? 八百万くん」

 

 緑谷と麗日が言うと、飯田が不思議そうに考え込む。

 すると八百万は立体映像を表示しながら言った。

 

「建物の構造を見ると、エレベーターで行けるのは地下1階までですわ」

 

「じゃあ、どうして光が?」

 

 八百万の発言に対して麗日が疑問に思っていると、蛙吹が答える。

 

「恐らく…地上部分も崩落して、ここまで日の光が届いてるんじゃないかしら」

 

「それはそれで好都合ですわね」

 

「ええ、お茶子ちゃんの“個性”があれば確実に地上に出られるもの」

 

「よし、じゃあ皆を浮かせて…」

 

「ちょっと待って、麗日さん」

 

 麗日が全員を“個性”で浮かせようとすると、緑谷が止めた。

 緑谷は、八百万に話しかける。

 

「八百万さん、地下一階に着いたら縄梯子を垂らしてもらえますか?」

 

「え? ええ…」

 

 緑谷が言うと、八百万が頷く。

 すると蛙吹は、緑谷の意図に気がついた。

 

「緑谷ちゃん、あなた残るつもりね」

 

「残る? どうして?」

 

 蛙吹が言うと、麗日が緑谷に尋ねる。

 すると緑谷は、全員に説明をした。

 

「クラスの皆がまだ残ってるかもしれないし…怪我をしてる可能性もある。僕は、皆の無事を確認しながらここに誘導します。八百万さん達は、外への脱出と救助要請を最優先に」

 

「分かりましたわ」

 

 緑谷が言うと、八百万が頷く。

 するとひなたが口を挟む。

 

「待ってデッくん、僕も残る」

 

「ひなた君、君もか!」

 

「相澤さん…でも「皆が閉じ込められてるなら、探索ができる僕が残るのが最善。違う?」

 

 ひなたがヘッドホンに手を当てながら言うと、緑谷が頷く。

 すると飯田が緑谷とひなたに話しかける。

 

「委員長として、クラスメイトを助けに行きたいのは山々だが…崩落した災害現場では、君達の方が救助に向いている。それに君達の事だ、何か考えがあるんだろう。俺達は先に脱出して、先生に救援を呼びに行く。必ず無事に戻って来るんだぞ」

 

「うん!」

 

 飯田が言うと、ひなたが頷いた。

 麗日は、自分、蛙吹、八百万、飯田の4人を“個性”で浮かせた。

 

「気をつけて。緑谷ちゃん、ひなたちゃん」

 

「うん! 梅雨ちゃん、お茶子っち、ヤオモモ、天ちゃん! 行ってくる!」

 

 蛙吹が言うと、ひなたが頷く。

 

「二人共! もし危なくなったら…」

 

「わかってる。すぐに避難するから」

 

 麗日が言うと、緑谷が返事をした。

 4人を見送った緑谷は、ひなたに声をかける。

 

「行こう、相澤さん」

 

「うん!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、轟と常闇は。

 常闇は、轟に現状を尋ねる。

 

「轟、何故非常灯がついた?」

 

「恐らく誰かが非常用電源を直したか電源装置に電気を送ったんだろう」

 

「電気…上鳴か」

 

「上鳴に指示を出した奴もいるだろうな。こんな機転が利く奴は緑谷か八百万か相澤…それと、もう一人…」

 

 轟は、もう一人、爆豪の事を思い浮かべていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして当の爆豪はというと。

 爆豪がダミー人形を探していると、切島が声をかける。

 

「爆豪! 見つけた! 要救助者のダミー人形!」

 

「おお、やったな!」

 

 切島が報告すると、上鳴が喜んだ。

 

「ハッ、手間かけさせやがってこのクソ市民が! 後でブチ殺す!」

 

「人形を?」

 

 爆豪が悪態をつきながら人形に近づくと、切島がツッコミを入れた。

 ダミー人形は、瓦礫の中に埋もれて抜け出せなくなっていた。

 

「けど、どうやって掘り起こす? 無理に引き摺り出して万が一崩れたら、俺らも瓦礫の下敷きだ」

 

「どうする? 爆豪」

 

「爆破する」

 

「はあ!?」

 

 上鳴と切島が尋ねると爆豪が即答し、上鳴が驚く。

 上鳴は、危険な方法を取ろうとする爆豪に対してツッコミを入れる。

 

「今の説明聞いてなかった!? 結構詳しく言ったつもりだけど!? 見て、脆いの! 今にも崩れそうなの!」

 

「だから崩れる前に助けんだよ!」

 

「でもさ…」

 

 ツッコミを入れる上鳴に対して爆豪が言うと、上鳴が反論しようとする。

 すると切島が上鳴に尋ねる。

 

「上鳴。あそこにいるのがダミー人形じゃなくて人間で、助けてくれって訴えていたらどうする? 無理だって諦めんのか?」

 

「そっ、それは…でも、今はそうじゃねえし訓練だし…無理してやる事はねえかなって思うんだけど…」

 

 切島が尋ねると、上鳴はヘラッと笑いながら言った。

 切島は、一歩前に出ながら爆豪に尋ねる。

 

「勝算あるんだろ? 爆豪」

 

「あるわ」

 

「ならやろうぜ! 俺達はヒーローになる為に、その為に雄英に入ったんだ! そうだろ、上鳴!」

 

「そりゃそうだけど…」

 

 切島が言うと、上鳴は文句を言おうとする。

 すると爆豪が二人を急かす。

 

「時間が無え! とっとと始めるぞこのクソモブ共!」

 

「せめて作戦教えて!」

 

 二人を罵倒する爆豪に対し、上鳴がツッコミを入れた。

 だが三人は、後ろの壁の亀裂から水が漏れている事に気付いていなかった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、麗日は地下一階のエレベーターの扉に辿り着き、扉をこじ開けていた。

 扉を開けて4人で外に出ると、地下一階の天井が崩れて日の光が差し込んでいた。

 麗日は、崩れた天井を指差しながら口を開く。

 

「あっ、あそこから地上に出られる!」

 

「俺は先生に救援を呼びに行く。八百万くんは戻って縄梯子を。蛙吹くん麗日くんは八百万くんを手伝ってくれ」

 

「ケロ」

 

「うん!」

 

「わかりましたわ」

 

 飯田が三人に指示を出した、その時だった。

 

「脱出できたのはお前らだけか?」

 

「相澤先生!」

 

 相澤の声が聞こえてきたので4人が振り向くと、相澤とリカバリーガールが立っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、爆豪達はというと。

 

「準備はいいな? このモブ共」

 

「ああ」

 

「頼むぜ」

 

「俺に当てんなよ」

 

 爆豪が言うと切島と上鳴が頷き、切島は笑顔を浮かべながら言った。

 

「死ね、『徹甲弾(A・Pショット)』!!」

 

「いけ切島!!」

 

「ぐっ…」

 

 爆豪が爆破を、上鳴が電気を放つと、切島が飛び出す。

 切島は、瓦礫の隙間からダミー人形を引っ張り出した。

 

「掴んだ!!」

 

 切島がダミー人形を引っ張り出した瞬間、瓦礫が崩れる。

 だがその瞬間に爆豪と上鳴が瓦礫を撃ち落とし、切島はその隙にダミー人形を抱えて脱出した。

 切島が地面に着地した瞬間、爆豪が叫ぶ。

 

「伏せろ!!」

 

「えっ?」

 

 切島がキョトンとしていると、横にあった巨大な瓦礫が今にも倒れそうになっていた。

 するとそこへ爆豪が飛んでくる。

 

「最大で死ね!!」

 

 爆豪は、最大級の爆破で瓦礫を吹き飛ばした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 それと同時刻。

 

「ん!?」

 

 突然、ひなたが目を見開いて触角をピンと立てる。

 すると緑谷が足を止めて尋ねる。

 

「どうしたの、相澤さん!?」

 

「下で爆発音が!!」

 

「爆発音…もしかして!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして爆豪の爆発音と同時刻、常闇と轟は。

 

「この音…」

 

「爆豪か」

 

 爆発音を聞いた轟と常闇は、その音の正体が爆豪の爆破である事に気がついていた。

 

「いつまた崩壊するか分かんねえ状況で…あいつ何考えてやがる」

 

「爆発音は下から響いた」

 

「地下6階…最下層か。よりにもよって一番脆い場所で…」

 

 常闇と話していた轟は、突然閃いたのか目を見開く。

 

「非常用電源を復旧させたのは爆豪。その上でこの爆破…まさか…こんな状況で救助訓練を続けているのか?」

 

「轟!」

 

 轟が考えていると、常闇が声をかける。

 常闇の視線の先では、亀裂から水が噴き出していた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、当の爆豪達はというと。

 壁の亀裂から噴き出した水によって、地下6階は水浸しになっていた。

 

「ああ…! あっ、ああっ…どうすんのどうすんの!? こんな場所で君があんな事すっから…!」

 

「うっせえ!!」

 

 上鳴が文句を言うと、爆豪がキレる。

 

「グダグダしてねえで早く上に…」

 

 切島が二人を仲裁して階段に行こうとしたその時、階段から勢いよく水が噴き出る。

 ダミー人形を抱えていた切島のもとへ、そのまま大量の水が押し寄せた。

 

「うわっ!?」

 

「おいおいおいおいおい、このままじゃ溺れ死んじまう! どうすりゃいいよ爆豪!?」

 

「くっ…」

 

 上鳴が混乱している中、爆豪はこの窮地を切り抜ける術を考えていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、地上では。

 そして相澤に救援を呼んだ飯田はというと。

 

「助けに行かないって…どういう事ですか相澤先生!?」

 

「今言った通りだ。救援は必要無い」

 

「…! まさか、地下の崩落は…!」

 

 相澤が冷たく言い放つと、飯田は相澤の発言に意味に気がつく。

 地下の崩落は、初めから救助演習に組み込まれていたのだ。

 

「想定内のアクシデント。言っておくが、この程度の危機を乗り越えられなければ仮免合格もおぼつかん」

 

「しかし! 負傷者がいるなら早く助けに行かなくては…!」

 

「だとすれば、その者はヒーローではなく要救助者になる。助けるのは誰だ?」

 

 相澤が言い放つと、飯田がハッとする。

 いざという時に、救助隊がいるとは限らない。

 そんな時は、自分達で助け出すしかないのだ。

 

「くっ…!」

 

 飯田は、麗日達と一緒に要救助者を助け出す為、来た道を戻っていった。

 リカバリーガールが相澤に話しかける。

 

「少しやり過ぎなんじゃないのかい?」

 

「もしもの対処はしてあります」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、轟と常闇はというと。

 轟は、常闇に指示を出す。

 

「常闇、黒影(ダークシャドウ)で床を破壊してくれ」

 

「しかし、この暗闇では制御が…」

 

 常闇が言うと、轟は左手から炎を出す。

 

「俺の炎で抑える」

 

「わかった。黒影(ダークシャドウ)!!」

 

 常闇が命令すると、黒影(ダークシャドウ)が飛び出てくる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、爆豪達は。

 

「も…もうダメだ…」

 

 水浸しになった上鳴が弱音を吐いたその時、突然天井が崩れる。

 

「な、何だ!?」

 

 切島が驚いていると、三人の方へ氷の柱が伸びてくる。

 三人が見上げると、氷柱の上には轟と常闇がいた。

 

「こっちだ、登ってこい!」

 

「「轟!!」」

 

「誰がてめえなんかの世話になるか!!」

 

 轟が声をかけると上鳴と切島は素直に喜ぶが、爆豪だけは逆ギレしていた。

 すると上鳴が爆豪にツッコミを入れる。

 

「この状況で何言ってんの、世話になろうよ! 轟の脛しゃぶり尽くそうよ!」

 

「早くしろ、急げ!」

 

「爆豪行くぞ!」

 

「引っ張んじゃねえ!」

 

「いいから!」

 

 轟が三人を急かすと切島が荒れる爆豪を無理矢理引っ張り上げ、三人とも無事水浸しの最下層から脱出できた。

 

「ハア、ハア、ハア…助かった…」

 

「サンキューな。轟、常闇」

 

「無事で何より」

 

「フン!」

 

 上鳴が助かった事に安心し切島が二人に礼を言うと、常闇は三人の無事を確認して安心し爆豪がそっぽを向く。

 すると轟が他の4人に言った。

 

「安心してる暇は無えぞ。地下水はまだ収まっていない。俺が凍らせて食い止める。その間にお前らは脱出しろ」

 

「轟! 俺も一緒に…」

 

「お前らの“個性”じゃこの状況に対応できねえし…近くにいたら氷結の巻き添えだ。足手纏いになりたくなけりゃとっとと行ってくれ」

 

 轟に対して切島が言うと、轟が指示を出す。

 すると常闇が轟に賛成した。

 

「轟の言う通りだ。事態は一刻を争う。脱出するぞ」

 

「あ…わかった」

 

「カッコつけちゃってよ。上で待ってるからな」

 

「ああ」

 

 常闇が言うと、ダミー人形を抱えた切島は大人しく常闇について行く。

 そして上鳴も、二人について行った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、緑谷とひなたはというと。

 

「くしゅっ!!」

 

 ひなたは、両手で両腕を摩りながら大きなくしゃみをした。

 

「うう寒…いくら地下だからって寒すぎじゃないの!? 8月よ!?」

 

「轟くんが氷結を使ってる…? 崩落を抑える為?」

 

 緑谷が言うと、ひなたが目を見開く。

 

「…! だとしたら、早く下に行かなきゃ!」

 

「うん!」

 

 ひなたが言うと、緑谷が頷く。

 するとその直後、切島の声を拾ったひなたが目を見開いて壁を指差す。

 

「デッくん!! この壁の向こう、鋭ちゃんがいる!!」

 

「切島くんが!?」

 

「うん! そんなに遠くない! 時間がない、この壁壊して合流するよ!」

 

 ひなたが言うと、緑谷は超パワーの“個性”を使って壁を蹴破った。

 すると、下の階へと続くエスカレーターから上鳴、切島、常闇の三人が登ってくる。

 

「おっ、緑谷?」

 

「それにひなちゃんまで!」

 

 切島と上鳴が言うと、三人の無事を確認した緑谷とひなたは笑顔を浮かべる。

 

「切島くん、上鳴くん、常闇くん!」

 

「皆良かったよ無事でー!」

 

「ああ、お前らもな」

 

 二人が三人に駆け寄ると、切島も二人を見て安心する。

 緑谷は、三人に脱出経路を教えた。

 

「皆、ここを真っ直ぐ行ってドアが開いてるエレベーターの中に縄梯子があるからそれで地上に」

 

「マジか!」

 

「俺ら助かったよ切島!」

 

「ああ!」

 

 無事脱出できる事を知った上鳴と切島は、顔を見合わせて喜んでいた。

 緑谷とひなたは、常闇に話しかける。

 

「常闇くん、まだ轟くんが下にいるよね」

 

「それにかっちゃんもいないよ?」

 

「轟は、流れ込んできた地下水を氷結で食い止めている」

 

 常闇が言うと、緑谷とひなたは目を見開いて驚く。

 

「地下水を氷結で…!?」

 

「それから…」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、八百万はというと。

 

「くっ、うっ、ハア…ハア…」

 

 八百万は、“個性”を使って縄梯子を創造していた。

 

「もう少しよ、頑張って」

 

 蛙吹が声をかけると、八百万は息を切らしながらも縄梯子の創造を続ける。

 するとその時、下の方から声が聞こえてくる。

 

「むっ、この声は…!」

 

 誰かの声が下から聞こえてくると、飯田は声が聞こえてきた方を振り向く。

 

「縄梯子が無え!?」

 

「どうなってんだよ!?」

 

 切島と上鳴の声が聞こえてくると、飯田、麗日、蛙吹が下を覗く。

 

「切島くん!?」

 

「それに上鳴ちゃんの声だわ」

 

「切島くん!! 上鳴くん!! 二人とも無事か!!」

 

 飯田は、下にいた二人に向かって叫んだ。

 すると上鳴の声が聞こえてくる。

 

「その声、飯田か!?」

 

「ああ! 今、縄梯子を降ろしている! もう少しだけ待っていてくれ!!」

 

「わかった!!」

 

 すると切島の声も聞こえてくる。

 

「縄梯子作ってるの、八百万だろ!? 疲れてるだろうが悪い、頼むな!!」

 

「も、もちろん…! プルス、ウルトラ…ですわ!」

 

 切島が言うと、八百万は苦しそうな表情を浮かべつつも縄梯子の創造を続けた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、轟はというと。

 轟は、“個性”で地下水を凍らせて堰き止めていた。

 

「どうにか地下水の上昇は防げたようだが…それより、何で残ってんだ? 爆豪」

 

「てめえに借りは作らねえ」

 

 轟が尋ねると、爆豪が答える。

 すると轟は、若干呆れた様子で爆豪に指示を出す。

 

「何でもいいから脱出するぞ」

 

「もう遅え」

 

「ん?」

 

「今から逃げても無駄だっつってんだ」

 

 そう言って爆豪は、今の状態を説明し始めた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃ひなたは、“個性”で轟と爆豪の居場所を特定して緑谷と一緒に全速力で向かっていた。

 ひなたが髪をざわつかせながら地下の音を探り、曲がり角を急カーブすると緑谷もそれに続いた。

 

「いくら轟くんの氷結が凄くても、こんな広大な場所を全て凍らせられるとはとても思えない…恐らく水面の何センチ…いや、十数センチかを凍らせただけで、その下は流れ込む地下水で圧迫されてるはず」

 

「うん…実際地下から物凄い水の音がしてるしね。そんな状態でずっと氷結を続けてたら、圧迫された水が最下層の壁から噴き出して地下街全体が崩落する…!」

 

 緑谷が言うと、ひなたも頷いて冷や汗を垂らしながら言った。

 

「…だけど、それはかっちゃんもわかってたはず。僕が思いつく事をかっちゃんが思いつかないわけないもの」

 

「かっちゃんが残ったのは、轟くんを助けるため。そして、かっちゃんなら絶対に脱出の方法を考えているはず…! かっちゃんならどうする…?」

 

「地下水…圧迫……」

 

 緑谷が考えていると、ひなたも一緒に考える。

 するとひなたは、爆豪がやろうとしているであろう作戦を思いついたのか大きく目を見開いた。

 

「……!! まさか、爆破で氷に穴を開けて間欠泉を作ろうとしてるんじゃ…!?」

 

「…! 勢いよく噴き出た水…その表面を轟くんが凍らせて、足場を作り上昇。かっちゃんが上に向かって爆破を続け、一気に上の階まで行く…!」

 

 ひなたが言うと、緑谷もひなたの言おうとしている事を瞬時に理解してそれを言葉にした。

 それを聞いたひなたは、片眉を上げて話を続ける。

 

「だけど問題は、かっちゃんが本当にそううまく爆破でピンポイントで氷に穴を開けられるかどうか…デッくん、出来そうだと思う?」

 

「その確率はかなり低い。でも、僕のシュートスタイルなら氷に必要な大きさの穴を開けられる。発目さんが作ってくれたコスチュームγ、その耐久力ギリギリまで力を上げれば…!」

 

 緑谷がそう言ったその直後、反響定位で二人を見つけ出したひなたが目を見開く。

 

「!! ビンゴ!!」

 

「かっちゃん、轟くん!!」

 

 轟と爆豪を見つけ出したひなたと緑谷は、轟と爆豪の方へと走っていく。

 

「緑谷! 相澤!」

 

「何しに来やがったクソナードにクソチビ!!」

 

「出端から罵倒!! さすがかっちゃん、クソ下水煮込みがプルスウルトラしてやがる!!」

 

 二人が駆けつけると轟が驚き、爆豪が二人を罵倒したのでひなたが目を丸くしてツッコミを入れる。

 すると緑谷は、爆豪に提案する。

 

「氷の穴は僕が開ける」

 

「なっ、てめ…「轟くんは氷結の準備をお願い!」

 

「わかった」

 

「相澤さんは穴を開ける位置とタイミングの指示、それと軌道修正をお願い!」

 

「任せて!」

 

 緑谷が提案すると爆豪は文句を言おうとするが、緑谷が無視して轟とひなたに指示を出すと二人とも頷く。

 緑谷は、さらに爆豪にも指示を出した。

 

「かっちゃんは天井への爆破準備を」

 

「俺に命令すんじゃねえ!」

 

 緑谷の指示に対して爆豪がキレたその時、壁から地下水が噴き出す。

 

「時間がない、行くよ!」

 

「うん!」

 

 緑谷とひなたは、同時に“個性”を発動する。

 ひなたは、“個性”で氷の状態を把握してから緑谷に指示を出す。

 

「デッくん!! 氷山の1m手前、丁度中央の位置!! 5秒後!! 3、2、1!!」

 

「SMAAAAAAAAASH!!!」

 

 ひなたのカウントダウンが終わると同時に、緑谷は蹴りで氷に穴を開けた。

 すると水が勢いよく噴き出し、水の表面を凍らせた轟が緑谷を引き上げた。

 

「死ねや!!」

 

 爆豪は、爆破で天井を破壊し巨大な穴を開けた。

 その次の瞬間には、間欠泉が穴を突き抜けていく。

 

「次が来る!」

 

 轟が言うと、爆豪は再び天井を破壊して穴を開けた。

 だがすぐに天井が迫り、爆豪の爆破でも追い付かなかった。

 

「ッソがぁ…!!」

 

 天井が迫るスピードに爆破のスピードが追いつかなくなり、4人は絶体絶命のピンチに追い込まれる。

 するとひなたは、自ら身を乗り出すと爆豪に飛び乗って指示を出す。

 

「かっちゃん!! もう時間が無い!! 全開で爆破して!!」

 

 ひなたは、天井を指差しながら最大火力で爆破するよう言った。

 そんな事をすればさらに崩壊が広がり、脱出どころではなくなってしまう。

 どう考えても愚策だった。

 だがこの時の爆豪は、どういうわけかひなたの言葉を疑わなかった。

 コンマ数秒の判断が事態を左右させる状況で、ひなたならこの状況を打開できるはずだ、全力で何度もぶつかってきたライバルだからこそ、どこかでそう信じていた。

 

「命令すんな…!」

 

 爆豪は、右手を天井に構えると、籠手のピンを抜く。

 ありったけの汗を凝縮させ、渾身の一撃を放った。

 

「くたばれぇええええええええ!!!」

 

『突き抜けろぉおおおおおおお!!!!!』

 

 爆豪が爆破を放つと同時に、ひなたは“個性”を全開にして叫んだ。

 地下に崩壊が伝わっていかないよう、声で爆豪の爆破を軌道修正した。

 すると、最大火力の爆破が天井を何枚も突き抜けていき、天井に巨大な穴が開く。

 

「天井が…!」

 

 爆豪が天井を突き破ると、緑谷と轟が目を見開く。

 突き破った天井からは日の光が漏れ、4人を照らす。

 爆豪の放った爆破が、天井を全て突き破って地上へと突き抜けたのだ。

 だが一気に穴を開けた事で、瓦礫が4人の頭上に降り注ぐ。

 すると緑谷は、脚を振り上げて衝撃波を起こし、瓦礫を全て吹き飛ばした。

 

「SMAAAAAASH!!!」

 

 緑谷が瓦礫を全て吹き飛ばすと、4人はそのまま間欠泉によって一気に地上へと押し出された。

 ひなたは、咄嗟に三人に捕縛武器を巻き付けて抱え込んだ。

 

「えっ!? ちょ、相澤さ…「着地準備に移る!! しっかり掴まってな!!」

 

 ひなたは、強く踏み込み、DJ機材のような機械が取り付けられた靴型のサポートアイテム『アコースティックシューズ』を起動させる。

 すると靴の機械部分が光り、キィィと靴の起動音が鳴る。

 その直後、靴底から衝撃波が放たれ、ひなたと三人の身体が空中へと打ち出された。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数秒前。

 切島達は、八百万が創造した縄梯子を使って地上へ登っている最中だった。

 するとその時爆発音が聞こえ、縄梯子が大きく揺れる。

 

「う…うわあ!!」

 

「「「上鳴」くん!!」」

 

 縄梯子が大きく揺れて上鳴が振り落とされると、飯田、麗日、切島が同時に叫ぶ。

 するとその時、蛙吹が舌で上鳴の腕を掴んだ。

 

「常闇ちゃん!」

 

「こっちだ上鳴!」

 

 蛙吹は、下で上鳴の身体を常闇の方へ振り、上鳴は何とか梯子を掴んだ。

 

「た…助かった…」

 

「急ごう」

 

「あ…ああ!」

 

 命拾いした上鳴が安心していると常闇が声をかけ、上鳴が急いで登り始める。

 間一髪の所で上鳴を助けた蛙吹に対し、麗日が声をかけた。

 

「ナイス梅雨ちゃん!」

 

「ケロケロ」

 

 麗日が声をかけると、蛙吹は少し嬉しそうにする。

 麗日達は、無事切島達を救出し、7人全員無傷で地下街からの脱出に成功した。

 

「三人とも、無事で良かった」

 

「おう! ダミー人形も助け出したしな!」

 

 飯田が安堵のため息をこぼすと、切島は抱えていたダミー人形見せた。

 ここにいる7人は無事に脱出したが、ふとここにいない4人の事が気になった。

 

「ところで、ひなた君や緑谷くん、爆豪くん達は?」

 

 飯田が尋ねると、切島、常闇、上鳴が答える。

 

「実は…最下層に突然地下水が流れ込んできて…轟が氷結で脱出の時間を稼ぐって」

 

「爆豪もその場に残った」

 

「それを聞いた緑谷とひなちゃんが、二人を助けようと走り出してさ」

 

 三人が言うと、飯田と八百万が驚く。

 

「何だって!?」

 

「では、4人共まだあの中に…」

 

 八百万が言うと、他のメンバーも4人の身を案じる。

 するとその時、麗日が口を開く。

 

「きっと無事だよ! デクくんとひなたちゃんが助けに行ったって事は、助けられる確信があったからだと思う。それに、爆豪くんと轟くんならちょっとやそっとのピンチくらい…だから4人共無事に決まってる!」

 

 麗日が言うと、飯田が頷く。

 

「そうだな。よし、ここにいるメンバーから救助班を作ろう! 頼めるかい? 切島くん、麗日くん、梅雨ちゃんくん」

 

「おう!」

 

「ケロ」

 

「うん! 絶対に助ける!」

 

「あいつらの事だ、間違いなく上に向かってる!」

 

「地下二階から捜しましょう」

 

 飯田が言うと、三人とも頷いた。

 三人がひなた達を助ける為に動き出しているのを、相澤は微笑みながら眺めていた。

 するとその直後、ボゴォンと7人の背後から爆発音が聴こえる。

 7人が振り向いた、その直後だった。

 

 

 

「お━━━━い!! みんなぁ━━━━━!!」

 

 ひなたの声が聴こえたので見上げてみると、ひなたが三人を抱えて空を飛んでいた。

 ひなたの靴の裏から放たれる衝撃波がひなたの身体を浮かせ、空中浮遊を可能にしていた。

 地下街から脱出したひなたが空中を浮きながら大声で呼びかけると、これから4人を助けに行こうとしていた7人が駆け寄る。

 

「ひなた君!!」

 

「デクくん! 轟くん!」

 

「おーい無事かバクゴー!!」

 

 7人が駆け寄ってくると、ひなたはシューズの勢いを弱めて綺麗に着地する。

 ひなた達が戻ってくると、先に脱出した7人が駆け寄り4人を心配した。

 特に飯田は、独特の手の動きをしながら4人の安否を尋ねた。

 

「怪我はないか4人とも!? どこか痛むならすぐに保健室へ行った方がいい!」

 

「う、うん…! 平気…!」

 

「ありがとう天ちゃん、大丈夫だから…!」

 

「デクくん、ひなたちゃん! 無事二人を助けられたんだね!」

 

「ケロケロ、大きな怪我はしてないみたいで良かったわ」

 

 飯田がすごい勢いで4人を心配すると、緑谷とひなたは心配をかけまいと笑ってみせた。

 麗日と蛙吹も、轟と爆豪を助けに行った二人が無事に戻ってきたので安心している様子だった。

 一方で、常闇と八百万は轟に声をかけた。

 

「また助けられた。かたじけない」

 

「いや、俺は…」

 

「心配しましたのよ」

 

「…悪い」

 

 轟が地下に残ってまで常闇達を先に逃がした事に常闇が礼を言うと、轟は礼を言われると思っていなかったのか、少し戸惑う。

 八百万が心配そうに轟に声をかけると、轟は自分の行動が他のメンバーに心配をかけていた事を自覚し、素直に謝った。

 一方、爆豪派閥の二人は爆豪に声をかけた。

 

「爆豪お前さっきさ……ブフッ!! ひなちゃんにさ、抱っこされてたよな…マジプリンセスじゃん!! ブフゥッ!!」

 

「笑うなアホ面!!」

 

「とにかく無事で良かったな!」

 

 ひなたに抱っこされて助け出された爆豪を上鳴が笑うと爆豪がキレ、切島はひとまず爆豪の無事を喜んだ。

 無事戻ってきた11人に対し、相澤は微笑みながら言葉をかけた。

 

「俺は仮免取得試験までお前らの前にいくつもの壁を築く。乗り越えろ、その先へ。更に向こうへ、プルスウルトラだ」

 

 

 

 

 

もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます

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