抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が11件9が39件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。


仮免取得編
THE試験


 仮免試験当日、A組を乗せたバスは試験会場に到着した。

 到着すると、相澤がA組に声をかける。

 

「降りろ、到着だ。試験会場国立多古場競技場」

 

「緊張してきたぁ」

 

「多古場でやるんだ」

 

 耳郎が緊張し緑谷がソワソワしていると、峰田が弱音を吐く。

 

「試験て何やるんだろ。はー仮免取れっかなぁ」

 

「峰田、取れるかじゃない。取ってこい」

 

「おっもっ、モロチンだぜ!!」

 

 相澤が上半身をダランと垂れ下がらせて峰田と視線を合わせると、峰田はビクッとして力む。

 

「この試験に合格し仮免許を取得できれば、お前ら志望者は晴れてヒヨっ子…セミプロへと孵化できる。頑張ってこい」

 

 相澤の話を聞き、それぞれが覚悟を決めた。

 

「っしゃあ、なってやろうぜヒヨっ子によぉ!!」

 

「いつもの1発決めていこーぜ!」

 

「せーのっPlus…「Ultra!!」」

 

 切島が掛け声で士気を高めようとすると、突然制帽を被った坊主頭の青年が割り込んでくる。

 

「!」

 

 すると、青年と同じ制帽を被った前髪で左目が隠れた少年が注意した。

 

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよイナサ」

 

「ああしまった!! どうも大変失礼致しましたァ!!!」

 

 イナサという青年は、ビシッと身構えると割れそうな勢いで頭を地面へ打ちつけた。

 青年の奇行に、緑谷は思わずユニフォームのケースを抱えたまま悲鳴を上げた。

 

「ヒイイ!!!」

 

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

 

「切島と飯田を足して二乗したような…!」

 

「なんか知らんけど熱苦しい!!」

 

 青年の奇行に、上鳴、瀬呂、ひなたの3人がツッコミを入れる。

 A組は殆ど全員が青年に引いていたが、相澤は青年を見た途端に僅かに目を見開く。

 すると他校の生徒が次々と口を開く。

 

「待って…あの制服…!」

 

「あ! マジでか」

 

「あれじゃん!! 西の!!! 有名な!!」

 

 他校の生徒達に続けて、爆豪も口を開く。

 

「東の雄英、西の士傑。数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する程の難関校───…士傑高校!」

 

「一度言ってみたかったっス!! プルスウルトラ!! 自分雄英高校大好きっス!!! 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!」

 

 ハキハキと喋る青年の額からは、大量の血が出ていた。

 

「あ、血」

 

「行くぞ」

 

「血スか!? 平気っス! 好きっス血!」

 

「うわぁ…」

 

 士傑高校の他の生徒達が青年を置いて先に行き、ひなたがドン引きしていた。

 すると、相澤が警戒心剥き出しで青年を一瞥しながら呟く。

 

「夜嵐イナサ」

 

「先生知ってる人ですか?」

 

「すごい前のめりだな。よく聞きゃ言ってる事は普通に気の良い感じだ」

 

 葉隠が相澤に尋ね切島がごもっともなコメントをすると、相澤が目を細めながらコメントする。

 

「ありゃぁ…強いぞ。夜嵐、昨年度…つまりお前らの年の推薦入試、トップの成績で合格したのにも拘わらず何故か入学を辞退した男だ」

 

「え!? じゃあ…1年!? っていうか推薦トップの成績って…」

 

 相澤が言うと、A組はざわついた。

 推薦トップという事はつまり、轟以上の実力者という事だからだ。

 

「雄英大好きとか言ってた割に入学は蹴るってよくわかんねぇな」

 

「ねー…変なの」

 

「変だが本物だ。マークしとけ」

 

 瀬呂と芦戸が言うと、相澤が注意を促す。

 相澤がそこまで言うという事は只者ではないとひなたが気合を入れ直した、その時だった。

 

「あれ!? ざわっぴ━━━━!! 久しぶりー!!」

 

「!!」

 

 突然別の少年の声が聞こえ、聞き覚えのある声にひなたの肩がビクッと跳ね上がる。

 声がした方にいたのは、濃い水色で毛先だけ白い髪をし、魚の鰭のような耳と鋭い犬歯の特徴的な男子生徒だった。

 夜嵐と同じ制帽を被っている事から、同じ士傑生である事がわかる。

 ひなたは、その男子の顔を見た途端に目を見開いて一歩退く。

 

「あ…か、カイリくん……」

 

 するとその男子は、いきなりひなたと肩を組んできた。

 

「あっははは!! いやぁ中学以来!? しっかし、ざわっぴは相変わらずちっこいよな! 小さすぎて一瞬どこにいんのかわかんなかったよ」

 

「う……」

 

 少年がバシバシとひなたの肩を叩くと、ひなたは顔を引き攣らせて縮こまる。

 すると少年は他のA組に気がついてズンズン近づき声をかけてくる。

 

「お! 雄英生じゃん! ねえねえ君はざわっぴの彼氏? え、絶対そうだよね! 距離近いもん! てか君よく見たら体育祭の心操くんじゃん! じゃあしんちゃんって呼んでいいよね? っていうか呼ぶね!」

 

「いや、あの…」

 

「おお! 君は腕ぶっ壊してた子! 確か緑谷くんだったよね? じゃあみどりんって呼ぶね!」

 

「えっと…」

 

 少年が心操と緑谷に歩み寄ってマシンガントークをしながら半ば強引に握手をしてくると、二人は見るからに困惑する。

 そして少年は、言わずもがな名の知れた轟とちょっとした有名人の爆豪に声をかけに行く。

 

「あ! ねぇ君らはエンデヴァーんとこの轟くんと神野事件の爆豪くんだよね? サインちょうだい! あとさ、ろっきーにバッくんって呼んでいい?」

 

「はあ…」

 

「ウゼェ」

 

 少年が二人にウザ絡みしていると、先程夜嵐に注意をしてきた男子生徒が声をかける。

 

「行くよカイリ」

 

「あ、サーセンお肉先輩! じゃーまた後でねー!」

 

 少年が男子生徒に呼ばれて手を振りながら去っていくと、A組はそれをポカンとして眺めていた。

 

「何今の……」

 

「まるで陽キャに対する偏見を凝縮して固めたよーな…」

 

「ひなた知り合い?」

 

「うん…竜崎浬くん。僕の中学のクラスメイト。って言っても、中3になってカイリくんがご両親の都合で転校してからずっと疎遠だったんだ。人伝に聞いた話だと、士傑の推薦入試に合格したらしいけど…」

 

 耳郎と瀬呂がツッコミを入れ芦戸が尋ねると、ひなたが若干俯いて答える。

 ひなたの幼馴染みなので相澤も当然知っているのか、相澤は無言で少年の背中を睨みつけていた。

 そして、ひなたの背丈に合わせてしゃがみ込むとひなたの耳元で囁く。

 

「ひなた。わかってると思うが、試験に受かりたきゃあいつには極力関わるな」

 

「う、うん……」

 

 相澤が囁くと、ひなたは若干戸惑いつつもコクリと頷く。

 すると、その時だった。

 

「イレイザー!? イレイザーじゃないか!!」

 

 突然どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえ、気付いた相澤は露骨に嫌な顔をしていた。

 相澤が振り向くとMs.ジョークこと福門が手を振りながら歩いてくる。

 

「テレビで見てたけどこうして直接会うのは久しぶりだな」

 

「あの人は…!」

 

 Ms.ジョークに見覚えがあった緑谷は、思わず目を見開く。

 するとMs.ジョークは衝撃発言をしてきた。

 

「結婚しようぜ」

 

「しない」

 

「わあ!!」

 

 Ms.ジョークがプロポーズすると相澤は断り、芦戸はキャッキャとはしゃいでいた。

 するとMs.ジョークは何が面白いのか突然爆笑し出した。

 

「しないのかよ!! ウケる!」

 

「相変わらず絡みずらいな、ジョーク」

 

「スマイルヒーロー『Ms.ジョーク』! “個性”は『爆笑』! 近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせるんだ! 彼女の(ヴィラン)退治は狂気に満ちてるよ!」

 

 Ms.ジョークが爆笑していると、緑谷がすかさず解説を挟む。

 Ms.ジョークは、相澤に対して独特な絡みを続ける。

 

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ」

 

「その家庭幸せじゃないだろ」

 

「ブハ!!」

 

 Ms.ジョークが言うと相澤がツッコミを入れ、Ms.ジョークは何が面白いのか突然爆笑し出した。

 

「仲が良いんですね」

 

「昔事務所が近くでな! 助け助けられを繰り返すうちに相思相愛の仲へと「なってない」

 

 葉隠が言うと、相澤はMs.ジョークの発言を食い気味に否定する。

 すると相澤の後ろからひなたがヒョコッと出てきてMs.ジョークに駆け寄る。

 

「笑ねぇ!!」

 

 ひなたがパァッと笑みを浮かべて駆け寄ってくると、Ms.ジョークはひなたをひょいと持ち上げる。

 

「おぉ、ひなた! 久しぶりだな! にしても相変わらずちっちゃいなーお前!」

 

「もう! 酷いなぁ、人が気にしてる事を!」

 

「ブハッ! 悪い悪い!」

 

 Ms.ジョークがひなたをいじるとひなたが頬を膨らませるので、Ms.ジョークは謝りながらもひなたのリアクションを面白がる。

 すると二人のやり取りを見ていた相澤が咳払いをしてひなたに注意する。

 

「…おい。場所を考えろ場所を」

 

「あ…ごめんなさい!」

 

 相澤が言うと、ひなたは恥ずかしそうに頭を掻きながらヘコヘコと頭を下げる。

 すると心操がコソッとひなたに話しかける。

 

「…知り合いだったんだ」

 

「うん! お父さんが雄英で先生やる前からの付き合いでさ。小さい頃はよく遊んでもらってたんだ」

 

 すると相澤は、めんどくさそうに頭を掻きながらMs.ジョークに話しかける。

 

「何だお前のとこもか」

 

「いじりがいがあるんだよなイレイザーは、そうそう、おいで皆! 雄英だよ!」

 

 Ms.ジョークが呼ぶと、生徒達が出てきた。

 

「おお! 本物じゃないか!!」

 

「凄いよ凄いよ! テレビで見た人ばっかり!」

 

「1年で仮免? へぇー随分ハイペースなんだね。まぁ色々あったからねぇ、さすがやる事が違うよ」

 

 好青年、ツインテールの女子、のっぺりとした顔の長髪男子の3人が口を開く。

 Ms.ジョークは、自分のクラスの生徒達を紹介した。

 

「傑物学園高校2年2組! 私の受け持ち。よろしくな」

 

 すると、真っ先に来た好青年がいきなり緑谷の手を掴んでくる。

 

「俺は真堂! 今年の雄英はトラブル続きで大変だったね」

 

「えっあ」

 

「しかし君達はこうしてヒーローを志し続けているんだね。素晴らしいよ!! 不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

 

 真堂は、A組の生徒達に次々と握手をしていくとイケメンスマイルを浮かべた。

 

「ドストレードに爽やかイケメンだ…」

 

 真堂は、ひなたと爆豪の前で立ち止まって握手を求めてくる。

 

「中でも神野事件を中心で経験した爆豪くんと相澤さん。君達は特別に強い心を持っている。今日は君達の胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

 

「はぁ…ど、どうも」

 

 真堂が握手を求めると、ひなたはキョトンとしつつも握手を返した。

 ひなたと握手を交わした真堂は、爆豪にも握手を求める。

 すると爆豪は、真堂の手を払い除け睨みつける。

 

「フカしてんじゃねぇ。台詞と顔が合ってねぇんだよ」

 

「こらおめー失礼だろ! すみません無礼で…」

 

「いいんだよ! 心が強い証拠さ!」

 

 爆豪が悪態をつくと切島が平謝りするが、真堂は好青年スマイルを浮かべてあっさり爆豪の非礼を許した。

 

(イケメンだぁ…!)

 

 一方でひなたは、真堂の態度を見て感心していた。

 あからさまに目を輝かせているひなたを見て、心操が面白くなさそうな表情を浮かべる。

 

「………」

 

「あっ、ゲフンゲフン!」

 

 心操の視線に気付いたひなたは、慌てて咳払いをして誤魔化す。

 

(……けど、かっちゃんの言う通りどこか引っかかるんだよなぁ。イケメンなんだけど)

 

 ひなたは、慌てて咳払いをしつつも真堂の態度にどこか引っ掛かっている様子だった。

 一方、ツインテールの女子は轟に話しかけていた。

 

「ねぇ轟くんサインちょうだい。体育祭カッコ良かったんだあ」

 

「やめなよミーハーだなぁ」

 

「はあ…」

 

 ツインテールの女子が話しかけるとのっぺりとした顔の長髪男子が注意をし轟が若干戸惑った様子で返事をする。

 

「オイラのサインもあげますよ」

 

「おやめ」

 

 ツインテールの女子に近づこうとした峰田を、ひなたが襟首を掴んで回収した。

 すると相澤がA組の生徒達に声をかけた。

 

「おい、コスチュームに着替えてから説明会だぞ。時間を無駄にするな」

 

「「「はい!!」」」

 

 相澤が言うと、ひなたを含めたA組が一斉に返事をする。

 

「何か…外部と接すると改めて思うけど」

 

「やっぱ結構な有名人なんだな、雄英生って」

 

 耳郎と上鳴の発言に違和感を抱いたMs.ジョークは、相澤に尋ねる。

 

「………? ひょっとして…言ってないのイレイザー?」

 

「?」

 

 ひなたはMs.ジョークの言葉に疑問符を浮かべるが、気にしている余裕もなくコスチュームに着替え会場へと向かった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 会場に着くと、志望者達が千人以上は集まっていた。

 

「多いな…!」

 

「多いね…!」

 

「はわぁ緊張する…!」

 

 緑谷、麗日、ひなたの三人は人数の多さに圧倒されていた。

 すると明らかにやる気が無さそうなヒーロー委員会の男が話し始める。

 

「えー…ではアレ、仮免のやつを、やります。あー…僕は、ヒーロー公安委員会の目良です、好きな睡眠はノンレム睡眠。宜しく。仕事が忙しくてろくに寝れない…! 人手が足りてない…! 眠たい! そんな信条の下、ご説明させていただきます」

 

(((疲れ一切隠さないな大丈夫かこの人)))

 

 目良が疲れているアピールをすると、その場にいたほとんど全員が心の中でツッコミを入れる。

 

「ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます」

 

「ざっくりだな」

 

「マジか」

 

 あちこちからざわざわと声が聞こえる中、目良は説明を続けた。

 

「現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません」

 

 その言葉を、保須事件から生還した緑谷、飯田、ひなたは緊張した面持ちから一変して真剣な表情を浮かべる。

 ステインの『ヒーローとは見返りを求めてはならない。自己犠牲の果てに得うる称号でなくてはならない』という言葉を思い出し真摯に受け止める。

 

「まぁ…一個人としては…動機はどうであれ命懸けで人助けしている人間に“何も求めるな”は…現代社会に於いて無慈悲な話だと思うわけですが…とにかく…対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・(ヴィラン)退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間は今ヒくくらい迅速になってます。君達は仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者、ハッキリ言って厳しい。よって試されるはスピード! 条件達成者先着100名を通過とします」

 

「「「「!!?」」」」

 

 目良がサラッと言うと、その場にいたほとんど全員が目を見開く。

 そして受験生の一人が文句を言い出す。

 

「待て待て1540人だぞ!? 5割どころじゃねぇぞ!!?」

 

「まぁ社会で色々とあったんで…運がアレだったと思ってアレしてください」

 

「マジかよ……!」

 

 その場にいたほとんど全員の気持ちを代弁した受験生のツッコミを目良がバッサリ切り捨て、また別の受験生が呆れ返る。

 ひなたも、流石にやりすぎじゃないかと呆れて苦笑いを浮かべていた。

 

「で、その条件というのがコレです」

 

 目良は、ボールと的を取り出して説明した。

 

「受験者はこのターゲットを3つ、身体の好きな場所、ただし常に晒されている場所に取り付けて下さい。脇や足裏などはダメです。そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が“倒した”事にします。そして二人倒した者から勝ち抜きです。ルールは以上。えー.じゃあ展開後ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートとします」

 

「展開?」

 

 轟が呟いた次の瞬間、会場の壁と天井が開いた。

 そして、周りには市街地や山岳、森や水場などありとあらゆる環境を模したフィールドが広がっていた。

 

「各々苦手な地形好きな地形があると思います。自分を活かして頑張ってください。一応地形公開をアレするっていう配慮です…まぁ無駄です。こんなもののせいで睡眠が…」

 

「あはは…無駄に大掛かり…」

 

(何かデジャヴだこの人…)

 

 目良が説明ついでに愚痴をこぼすと、ひなたはツッコミを入れつつ自分の知人(相澤)に似たものを感じたのか苦笑いを浮かべる。

 会場が展開された後、ひなたにもボールとターゲットが配られる。

 ひなたは、左肩、右手の甲、右肋にターゲットを装着する。

 

「これでよし」

 

 その頃、会場の観客席では相澤とMs.ジョークが喋っていた。

 

「イレイザー、チャック開いてる」

 

「………」

 

 Ms.ジョークがクスクス笑うが、相澤は見事にスルーしていた。

 するとMs.ジョークが相澤に話しかける。

 

「にしても21人とはなぁ。お前が除籍にしないなんて珍しいじゃん。気に入ってんだ? 今回のクラス」

 

「別に」

 

「ブハッ、照れんなよダッセェなぁ! 付き合おう!!」

 

「黙れ」

 

「しっかしそれなら変な話だぜ」

 

 Ms.ジョークのプロポーズを相澤が振ると、Ms.ジョークが爆笑した。

 その頃緑谷は、ターゲットを装着しつつクラス全員に作戦を話していた。

 

「先着で合格なら… 同校で潰し合いはない…むしろ手の内を知った中でチームアップが勝ち筋…! 皆! あまり離れず一かたまりで動こう!」

 

「うん!」

 

 緑谷が言うと、ひなたが軽く拳を握り締めて頷く。

 

「フザけろ遠足じゃねぇんだよ」

 

「バッカ待て待て!!」

 

 爆豪、切島は先にどこかへと向かってしまった。

 そして轟もどこかへ行ってしまう。

 

「俺も、大所帯じゃ却って力が発揮できねぇ」

 

「轟くん!!」

 

「緑谷時間ねえよ行こう!!」

 

 緑谷が轟を呼び止めようとすると、峰田が緑谷に声をかけた。

 その間にもカウントダウンが進んでいく。

 

『4』

 

「単独で動くのは良くないと思うんだけど…」

 

「何で?」

 

「だってホラ…! 僕らはもう手の内バレてるんだ」

 

 緑谷の発言に峰田が尋ねると、緑谷が答える。

 

『3』

 

「さっき僕が言った勝ち筋は他校も同様なわけで…………学校単位での対抗戦になると思うんだ。そしたら当然、次はどこの学校を狙うかって話になる」

 

『2』

 

 緑谷が説明している間にも、カウントダウンが進んでいく。

 Ms.ジョークは、気になっていた事を相澤に尋ねていた。

 

「例年形式は変われどこの仮免試験には1つの慣習に近いものが存在する。全国の高校が一斉に競い合う中で唯一『“個性”・不明というアドバンテージ』を失っている高校。体育祭というイベントで“個性”はおろか弱点・スタイルまで割れたトップ校」

 

『1…』

 

「可愛いクラスなら言ってあげればいいのに! 毎回まず初めに行われる…」

 

 

 

『START!!』

 

「雄英潰しの事を」

 

 スタートと同時に、他校の生徒達が一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

「自らをも破壊する超パワー、まぁ… 杭が出てればそりゃ打つさ!!!」

 

 真堂の合図と共に、傑物高校の生徒達は一斉にA組に向かってボールを投げつけた。

 そのどさくさに紛れて、他校の生徒も攻撃を仕掛けてくる。

 すると相澤がMs.ジョークの問いに答える。

 

「雄英潰し…別に言わない理由もないが、結局やる事は変わらんからな。ただただ乗り越えていくだけさ。理不尽を覆していくのがヒーロー。そもそもプロになれば“個性”晒すなんて前提条件。悪いがウチは他より少し先を見据えてる」

 

 A組は、襲いかかってきたボールを“個性”で蹴散らした。

 

「締まって行こう!!」

 

 仮免試験の一次試験スタートと同時に、他校がひなた達に襲いかかってきた。

 A組は、“個性”を使ってボールを蹴散らす。

 そしてそれはひなたも例外ではなかった。

 

「皆、耳塞いでて!!」

 

 ひなたは、息を大きく吸うと大声量で叫んだ。

 すると周囲から飛んできたボールは全てひなたの放った衝撃波による風圧で吹き飛び、ひなた達に襲いかかってきた他校生の“個性”が全て消し飛ばされる。

 そしてひなたの声を至近距離で喰らった他校生は、気を失って泡を吹きながらバタバタと倒れていく。

 

「おいおい、何が起こって……」

 

「ただの脳震盪だよ」

 

「脳震盪!?」

 

「音って空気の振動でしょ。今のは“個性”を消すついでに超音波で脳をシェイクしたのさ。……まあ、流石に全部の生徒に通じるほど甘くはなかったみたいだけど」

 

 そう言ってひなたが振り向こうとした直後、あらかじめひなたの“個性”の対策をして気絶を免れていた他校生が命知らずにもひなたに不意打ちを仕掛けようとする。

 当然ひなたは他校生が来るのをわかっており、振り向く事なく手首から鞭を出現させて迎撃した。

 他校生は、“個性”で身体をガードしていたが、ひなたはお構いなしに、メリッサの作品である『リストウィップス』で突きを放つ。

 見た目はしなる鞭だが、靱性や形状を自在に変える事ができ、ひなたの技術次第で無限の軌道を生み出せる優れ物だった。

 

「『滅葬舞曲(モルテロンド)』!!」

 

「「ぐぁああああ!!」」

 

 ひなたが捕縛武器で突きを放つと、二人の受験生の防御は跡形もなく消え去り、そのまま吹き飛ばされて後ろの瓦礫に叩きつけられた。

 ひなたが仕掛けた新技『滅葬舞曲(モルテロンド)』は『震音壁(シバリングシャウト)』の応用技で、触れた瞬間に相手の“個性”を発動前の状態に戻してしまう技だった。

 ひなたの蹴りが効いたのは、ひなたが蹴りを入れた瞬間に相手が“個性”を使ってガードしたという事実を“無かった事に”してしまい、生身で蹴りを受けたという事実を強制的に成立させてしまったからだ。

 普通のシャウトより消耗が少ない上、打撃を乗せる事で破壊力を生み出す事ができるので、ひなたはこの技を重宝していた。

 

「僕に不意打ち仕掛けようなんて百年早いよ」

 

 そう言ってひなたは、不意打ちを仕掛けてきた生徒にボールを当てて脱落させる。

 周りで泡を吹いて倒れている受験生を見て、耳郎が顔を引き攣らせる。

 

「ちょ…ひなたやりすぎ」

 

「先に仕掛けてきたのは向こうだもの、手段なんか選んでられないよ」

 

「まあそうなんだけどさ…」

 

「さ、今のうちにさっさとクリアしちゃおっか。僕らだけで20位以内独占して焦ちゃん達あっと言わせてやろーぜ」

 

「結局必殺技披露する機会なかったな〜。まあ相澤いると楽でいいけどよ」

 

「……君らも君らでえげつない事考えるね」

 

 峰田が文句を言いながらも気絶した生徒をもぎもぎでくっつけ、瀬呂がテープで拘束すると、ひなたが顔を引き攣らせる。

 ひなたが自分の周りにいるA組以外の生徒を気絶させると、A組は気絶した生徒にボールを当てて次々とクリアしていく。

 ひなたの衝撃波を喰らって気絶している生徒は約60名。

 ここにいる全員がクリアするのに十分な生徒数は確保できており、ひなたの音のバリアのおかげで不意打ちも防げるため、A組は安全に一次試験を通過できた。

 その頃、真堂達傑物学園の生徒はというと。

 

「ったぁ〜……! ヨーくん大丈夫!?」

 

 傑物学園の女子生徒、中瓶は、頭がぐわんぐわんとするのを何とか堪えながら、真堂に話しかける。

 傑物学園の生徒は、あらかじめひなたの“個性”の対策をしていたためダメージは最小限で済んでおり、中でも真堂は、“個性”のおかげか、他の生徒よりひなたの声による脳震盪の症状が軽く済んでいた。

 だがひなたのせいで“個性”が出なくなっており、真堂はひなたに忌々しそうな視線を向けていた。

 

「…ああ。体育祭を観れば、容赦なく“個性”を消してくる相澤さんを真っ先に排除するのが得策…だと思ってたけど、そう上手くはいかないね。どうやら『振動』は俺の専売特許じゃなかったようだ」

 

 真堂は、ゲスい笑みを浮かべながらも状況を冷静に分析していた。

 すると、のっぺりした顔の男子、投擲が尋ねる。

 

「で、どうするの?」

 

「失敗したものは仕方ない。最善がダメなら次善の策だ」

 

「…OK。じゃあ、ひとまずここから移動する…で、いいんだよな?」

 

「あぁ、頼むよ」

 

 フルフェイスマスクをつけたような顔つきの男子、真壁が尋ねると、真堂が頷く。

 傑物学園の生徒達は、身を隠しつつ移動を始めた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして同時刻。

 

「爆音…? “個性”か!?」

 

「目の前に集中しろぉ!!」

 

「連携しろって! 距離取って“個性”見ろ!」

 

 他校の生徒達が混乱している中、ボールが風で宙に浮く。

 

「あ、ちょ、ボールが風で…」

 

「…って、ええ!?」

 

「ボールだけが巻き上げられてく!!」

 

 突然発生した突風によってボールだけが巻き上げられ、一箇所へと集まっていく。

 その先には、ビルの上に立つ夜嵐がいた。

 

「俺、ヒーローって!! 熱血だと思うんです!!! 皆さんの戦い!! 熱いっス!! 俺、熱いの好きっス!!」

 

 夜嵐が暴風を起こしながら叫ぶと、ボールを取られた受験生達が驚く。

 

「士傑高校!! 一人かよ!?」

 

「何言ってるんだ!? わかるけど…」

 

「待て、ボール取られたら俺達何も…」

 

「この熱い戦い!! 俺も混ぜて下さい!! よろしくお願いしまっス!!!!」

 

 夜嵐は、竜巻を起こして大量のボールを下にいた志望者目掛けて叩きつけた。

 

『うお!? 脱落者120名!! 一人で120人脱落させて通過した!!』

 

 夜嵐は何と一気に120人も脱落させて一抜けした。

 通過した夜嵐は、ガッツポーズをして喜んでいた。

 

「やったぁ勝てた!!」

 

 ガッツポーズをする夜嵐とは対照的に、夜嵐のクラスメイトの竜崎は呆れたような笑みを浮かべていた。

 

「やりすぎだよよっちゃん。さて…俺もそろそろ参りますかね」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてひなた達は。

 

「マジかよ…」

 

 放送を聴いたひなたと心操は、直近の通過者が120人も脱落させた事に驚く。

 一方で、ひなた達A組は、別行動をしている轟や爆豪達を除いて、ひなた、飯田、麗日、心操、緑谷以外の12人がクリアしていた。

 現在、通過人数は、夜嵐を含めて13人。

 先にクリアした蛙吹は、控え室に向かう途中、まだ通過していない飯田に声をかける。

 

「飯田ちゃん、通過しなくていいの?」

 

「ああ。俺達はひなた君のお陰で助かったとはいえ、他校に“個性”を知られている事には変わりない。轟くんや爆豪くん達が苦戦を強いられているかもしれない。余計なお節介かもしれないが、クラス全員が通過したのを確認するまでは、俺は通過できない」

 

「ん…! じゃあ天ちゃん、僕が他の皆探すの手伝うよっ!」

 

「ひなた君、まだ通過していなかったのか!!」

 

「僕も気持ちは天ちゃんと同じだよ。このだだっ広いフィールド内で、他の皆を探しつつその場で指示を出せるのは僕だけでしょ? 僕が最後まで残って他の皆を探した方が合理的だと思わない?」

 

 ひなたは、そう言ってヘッドホンのダイヤルを回す。

 すると心操、緑谷、麗日も、ひなたに続けて言った。

 

「ひなたが残るなら俺も残る」

 

「僕も残るよ。飯田くんがクラスの為にここに残るなら、尚更一人にはできないよ」

 

「うん…!」

 

「緑谷くん、麗日くん…!」

 

 ひなた達が言うと、飯田は僅かに目を見開いて驚く。

 ひなた達5人は、ここに残って轟と爆豪達が通過するのを確認してから通過する事にした。

 

「とりあえず、他の皆を探そうぜ」

 

「任せて!」

 

 ひなたと心操は、早速受験生狩りに動き出した。

 ひなたは、早速『千里音(ダウジングシャウト)』で他のA組を探した。

 その日の体調によって数十メートルのばらつきがあるものの、“個性”訓練をしていたおかげで『千里音(ダウジングシャウト)』で探れる最大範囲は2kmにまで伸びていた(距離を伸ばせば伸ばす程精度が落ちるため、そこまで伸ばす事は滅多に無いが)。

 周囲の音を探っていたひなただったが、その直後、大きく目を見開いた。

 

「!!」

 

「どうした?」

 

「まずい、()()…!」

 

 珍しく焦っているひなたに対し、心操が訪ねると、ひなたは目を見開きながら冷や汗を流す。

 

「来るって、何が!?」

 

「逃げて!!」

 

 心操が尋ねると、ひなたは大声を張り上げた。

 すると、その直後だった。

 

 

 

 ドンッ

 

 

 

「っ…ぐぁ…!!」

 

 突然、鼓膜が破れる程の衝撃波がひなたに襲いかかる。

 その衝撃で地面がバカァッと大きく割れ、ひなた達5人が分断される。

 

「キャア!!」

 

「麗日さん!!」

 

「ひなた君!! 皆!!」

 

 突然発生した衝撃波によって地面が割れ、麗日、緑谷、飯田の三人ははぐれてしまった。

 何者かが超音速で体当たりを仕掛けた事でソニックブームが発生し、ひなたの軽い身体はいとも容易く吹き飛ばされる。

 ひなたはそのまま背後のビルへと吹き飛んでいき、ビルの外壁に激しく激突した。

 

「ひなた!!」

 

 ひなたがビルへと叩きつけられると、心操が血相を変えて叫ぶ。

 一方で、ビルに激突したひなたは、瓦礫をどかしながらゆっくりと立ち上がった。

 

「う、うぅ…!」

 

 ひなたは、ぶつかられる直前に受け身を取っていたのと、耐久力が人一倍優れていたのでさほど重傷ではなかったが、衝撃波で脳を揺らされたせいかふらついていた。

 ひなたが立ち上がって前を見ると、何者かが近づいてくる。

 見ると、竜崎が周囲に水をフヨフヨと浮かせながら立っていた。

 竜崎は、ニィっと不気味な笑顔を浮かべながらひなたに話しかける。

 

「おー、良かった良かった、ちゃんと生きてた! よぉざわっぴ、遊ぼうぜ」

 

 

 

 

 




ひーちゃんの元同クラ現る。
次回は仮免と、ひーちゃんの過去がちょっとだけ明らかになります。

もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます

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