抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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遅れたけどハッピーバースデーひーちゃん。

10が11件9が40件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。
6/26 カイリくんのヒーロー名を改名しました。



ーーー

追記

今見たらCまでやってほしい派が急激に増えてて草
どんだけ見たいねんw
まあCが1位になったらちゃんと書くけどさ…

それでは本編どうぞ



這い寄る士傑高校

「よぉざわっぴ、遊ぼうぜ」

 

 突然竜崎が目の前に現れ、ひなたは目を大きく見開いて動揺する。

 

「カイリくん…!?」

 

 ひなたは、いきなり竜崎が襲いかかってきた事に理解が追いつかず、呆然と竜崎の方を眺めていた。

 ひなたを見据えながら舌舐めずりをする竜崎に対し、ひなたはぐらつく頭を押さえながら迎撃態勢を取る。

 

 ひなたは、額からドクドクと流れ出る血を手で押さえて止めながら、何故竜崎がいきなり体当たりを仕掛けてきたのかと考えていた。

 ひなたが直前で反応して咄嗟に受け身を取ったのと、ひなたの肉体の強度が元々人並外れていた事、そして耐衝撃仕様のヒーロースーツのおかげで比較的軽傷で済んだが、もしひなた以外の受験生が同じ攻撃を喰らっていれば全身粉砕骨折か頚椎骨折による即死を免れないのはほぼ確実だった。

 ボールを当てれば終わりの仮免試験で何故ここまでやるのか、ひなたには竜崎の考えが理解できなかった。

 

「カイリくん…僕に何の用?」

 

「んー、別に大した用じゃないんだけどね。この試験があまりにもヌルいからつまんなくてさ。せっかく久々に会えたんだし、ざわっぴと遊んで暇潰しでもしよっかなって」

 

「…ごめん、今それどころじゃないんだ。クラスの皆がピンチかもしれないから行かなきゃ」

 

 ひなたは、竜崎の態度に若干苛立ちつつも、竜崎の横を通り過ぎて他のA組を探しに行こうとする。

 だがその時、竜崎は水の槍をひなたの目の前に突き刺して妨害した。

 

「おいおい、俺が話しかけてんのに他の奴の心配か? 妬いちゃうぜ」

 

「………!」

 

「どうしてもお友達が心配なら、タイマンで俺に一度でも勝ってみろよ」

 

 竜崎は、両手で水を浮かせながら大胆不敵に宣戦布告した。

 窮地に立たされていたひなただったが、クラスメイトと一緒に試験を勝ち抜く為にも、竜崎を見据えながら戦闘態勢を取った。

 

「いいね! そうこなくっちゃ」

 

 すると竜崎は、髪をざわつかせて瞳孔を大きく開く。

 元々鋭利だった爪がさらに鋭くなり、元々鋭利だった犬歯は鋭い牙に変わり、手や顔にビキビキと鱗が生え始める。

 するとひなたは、“個性”を発動させて叫ぼうとする。

 だが…

 

「がはっ!!」

 

 ひなたが叫ぶ前に、竜崎は目に留まらぬスピードでひなたを蹴りつけた。

 モロに蹴りを喰らったひなたは、吹っ飛ばされて地面に倒れ込む。

 ひなたがすぐに体勢を立て直してもう一度声を出そうとすると、既に竜崎が目の前に迫っていた。

 竜崎は、背中と四肢からヒレが生え、背中からは蝙蝠のような翼が生え、尾骶骨のあたりからは強靭な鱗で覆われた尾が生えていた。

 顔つきも目が鋭くなって口が耳元まで裂け、辛うじて人の形を保ってはいたもののどう見ても半分竜の姿をしていた。

 竜崎が尾を振り下ろすと、ひなたは咄嗟にDJ機材のような機械が取り付けられたブーツを起動させて回避する。

 ひなたが起動させたのは、発目に作ってもらった新装備、『アコースティックシューズ』だった。

 このシューズは、ひなたの声のエネルギーを衝撃波に変換し、衝撃波で身体を地面と反発させて爆発的な速度を生む事ができるという代物だった。

 

 ひなたが避けた直後、ひなたがいた場所に尾が叩きつけられて地面が大きく抉れる。

 それを見たひなたは、今のを喰らっていたらひとたまりもなかった事を本能で感じ青ざめていた。

 血を流しながらも立ち向かってくるひなたを見て、竜崎は興奮しながら舌なめずりをした。

 

「ほら来いよざわっぴ! すぐ()かせてやっから、とびっきりイイ声上げてみろ!!」

 

 

 

 リヴァイアサン

 本名 竜崎浬

 “個性”『海竜』

 魚っぽい事なら大抵できる異形型の“個性”、竜に変身する変形型の“個性”、海流を生み出して操る発動型の“個性”のハイブリッド! 

 世界的にも類を見ない三系統全てを複合した超レア“個性”! 

 竜化による筋力や回復力の増強の他にも、自分で生み出した海流を使った超高速移動や広範囲攻撃など超万能な使い方が可能! 

 化け物かよ! 

 

 

 

 ひなたは再び“個性”を使おうとするが、竜崎がひなたの前に海水の槍を生み出して妨害する。

 そして竜崎は、海水で生み出した槍を次々とひなた目掛けて投げつける。

 ひなたは、防御に徹して逃げていたが、矢は容赦なく降り注ぐ。

 ひなたは、窮地に追い込まれていた。

 それもその筈、単純な戦闘力、体格、戦闘経験、その全てにおいて竜崎の方が圧倒的に優っていた。

 その上ひなたの隙を戦略的に突いてくる、絶対に敵に回したくない相手だった。

 

「オラァ!!」

 

「ぐぅ…!」

 

 竜崎は、ひなたの喉を潰そうと首目掛けて蹴りを放った。

 だがひなたの首に巻かれていたマフラーが防御機能を果たし、喉を潰されるのを防いだ。

 相澤の捕縛武器に見た目がそっくりなそれは、中にゲル状の特殊素材が入っており普段はプニプニとしていて柔らかいが、衝撃を受けた瞬間に固まって鋼鉄並みの硬度に変化し、衝撃を殺した後は液体状に戻るダイラタンシーアーマーだった。

 ひなたは、竜崎が蹴りを放った瞬間に竜崎の脚を両腕で掴む。

 すると、竜崎は電気ショックを受けたかのように固まる。

 

「ぐ……!」

 

 竜崎が痺れている一方で、ひなたの手袋からはバチバチと青白い火花が散っていた。

 ひなたが両手にはめていたのは、新たに作ってもらった装備、手袋型スタンガンだった。

 竜崎が電撃を浴びて固まっている隙に、ひなたは捕縛武器で竜崎を捕えようとした。

 だが竜崎は、痺れながらもひなたをギロリと睨みつけると、そのまま振り抜いて軽い体を蹴飛ばした。

 

「いってぇなァオイ!!」

 

「ぎぁ…!!」

 

 竜崎がひなたを蹴飛ばすと、ひなたは後ろの瓦礫へと激突する。

 瓦礫に叩きつけられたひなたが痛みに顔を歪めながらも立ち上がると、後ろにあった瓦礫がガラガラと音を立てて崩れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 戦いを始めてから、3分程が経過した。

 ひなたは、何度も竜崎の攻撃を喰らってボロボロになっていた。

 

「そろそろ決着つけたいね、ざわっぴ」

 

 そう言って竜崎が水の槍で攻撃を仕掛けていく。

 そんな中、ひなたの脳裏にあったのは竜崎と同じクラスだった頃の記憶だった。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「ひなたちゃんって何考えてるかわかんなくて何か怖いよねー」

 

「隣のクラスの相澤の“個性”ってさ、人の“個性”壊すらしいぜ。(ヴィラン)みたいだよな」

 

「ちょっと頭良いからって調子乗んなよ。どうせウチらの事見下してるんでしょ」

 

「先生〜、今のは相澤さんが悪いと思います」

 

「お前のせいで…っ! お前さえ転校してこなきゃ、こんな事にならなかったんだよ!!」

 

 僕はずっとひとりぼっちだった。

 (ヴィラン)みたいな“個性”のせいで、皆僕を怖がって近づこうとしなかった。

 ずっと研究施設にいたから、人との接し方がわからなくて、気付いたら僕はクラスの中で悪者扱いされていた。

 僕はただ皆と仲良くしたかっただけなのに、僕が何かする度に皆僕から離れていった。

 周りの子から嫌われてたから、小学校では一人も友達ができなかった。

 お父さんは、雄英の近くの名門中学を紹介してくれて、雄英に入るまでの3年間はそこに通っていた。

 家から歩いて通える距離だったから修行の時間を確保できたし、雄英の近くという事もあって校内の治安は比較的良かったし、特待生クラスに入れれば安い授業料でハイレベルの授業を受けられる学校だった。

 でも中学校の入学式の日。

 

「相澤ひなたです。“個性”は…えっと、声で人の“個性”を消せます。雄英に行って、皆の笑顔を守れるヒーローになりたいです。よろしくお願いします」

 

 入学式の後の自己紹介で、僕は最初に自己紹介をした。

 僕が自己紹介をすると、たった一人を除いて皆馬鹿にしたようにクスクスと笑った。

 『(ヴィラン)みたいな“個性”のくせにヒーローになんかなれるわけがない』、皆そういう目で僕を見ていた。

 初日から笑い者にされて、恥ずかしくて顔が赤くなるのが自分でもわかった。

 その後も皆出席番号順に自己紹介をして、最後は唯一僕を笑わなかった男子の番になった。

 

「竜崎カイリ。“個性”は『海竜』。水操ったり龍に変身したりできます。雄英に行って、とにかく強いヒーローになりたいです。よろしくー」

 

 竜崎くんは、僕の自己紹介にそっくりそのまま被せてきた。

 だけどクラスの皆は、僕の時とは違って盛大に拍手を送った。

 ほとんど同じ内容の自己紹介だったのに、僕は嘲笑されて、竜崎くんは褒められた。

 竜崎くんはお父さんがプロヒーローで、本人も強くてヒーロー向きの“個性”で、何でもそつなくこなせて、何より竜崎くんには人望があった。

 ヒーローになる為に生まれてきた男の子。

 それが竜崎くんだった。

 僕は、何もかも境遇が違う彼と同じ夢を語ってしまった自分が恥ずかしかった。

 

「相澤さん!」

 

 ホームルームが終わった後、竜崎くんが僕に話しかけてきた。

 まさか話しかけられるなんて思ってもいなかった。

 

「さっきの自己紹介、相澤さんのやつパクった。だって面白いんだもん」

 

「…え?」

 

「雄英行って、ヒーローになりたい! 俺と一緒じゃん! これからよろしくな、ざわっぴ!」

 

「ざ、ざわっぴ…?」

 

「うん、相澤さんだからざわっぴ。ヤダ?」

 

「いや…僕は何て呼べばいいかなって」

 

「何でもいいよ。あ、ただ、苗字呼びはカンベンな。苗字で呼ばれると、『その家の人』って感じがして嫌なんだわ」

 

「わかった。じゃあカイリくんって呼ぶね!」

 

 その日から僕達は、お互いを名前で呼び合う仲になった。

 僕は、生まれて初めて友達ができて嬉しかった。

 カイリくんと過ごす毎日は刺激的だった。

 カイリくんは、僕の知らない事を何でも教えてくれた。

 カイリくんは、僕を拒絶しなかった。

 カイリくんは、僕なんかよりずっとヒーローの才能があった。

 僕は、僕にないものを持つカイリくんに憧れた。

 僕にはカイリくんの事が、とても輝かしく見えた。

 だけど中2の秋、ある出来事をきっかけに僕はカイリくんの友達をやめた。

 

 この時期は、学校の次期生徒会長を決める選挙があった。

 普通なら受験を控えている時期に自分から生徒会長を志願しないけど、この学校には『生徒会長になれば雄英や士傑に合格できる』なんてジンクスがあったから、ゲン担ぎに立候補する人は少なくなかった。

 僕も生徒会の選挙に立候補したけど、正直僕は当選するとは思っていなかった。

 当選するなら、絶対カイリくんだと思ってた。

 

 でも当選したのは、僕だった。

 ほとんどの票を僕とカイリくんで獲得して、1票差で僕が勝った。

 カイリくんを当選させたくない人達がいるのは知ってたから、その人達が消去法で僕に投票するのは想定内だった。

 でも、それを差し引いても僕とカイリくんじゃ人望は雲泥の差だった。

 片やヒーロー一家に生まれて、皆の期待を一身に背負った人気者。

 片や(ヴィラン)みたいな“個性”で疎まれて、人との接し方もわからない嫌われ者。

 どっちが人に求められるかは、考えるまでもなかった。

 だからこそ、どうして僕が当選したのかわからなかった。

 選挙が終わった後、カイリくんは僕に祝福の言葉をくれた。

 

「よぉざわっぴ。当選おめでと」

 

「ありがとうカイリくん! 僕、頑張るね!」

 

 カイリくんは、いつもの調子で僕に話しかけてくれた。

 自分だって生徒会長に立候補してたのに、悔しさを一切表情に出さずに僕を素直に祝福してくれるあたり、本当に人としての器が違うんだなぁと思った。

 

「それにしても、僕が会長でいいのかなぁ。立候補しといて何だけど、僕はてっきりカイリくんが当選するものだと思ってたから…」

 

「何で?」

 

「だってそうでしょ? カイリくんは首席だし、皆の人気者だもん! 僕、カイリくんみたいになりたいってずっと思ってたんだよ! 君みたいな、“皆から頼られるくらい強い人”にさ! 君は、誰よりもヒーローに───……」

 

「……だから何? 俺に勝ったからって、マウント取りたいわけ?」

 

「…え?」

 

「才能ある奴ってさ、すぐそうやって人の事見下すよな。自分基準で世界が動いてるとでも思ってんのかね。俺が『皆から頼られる強い人』だって? そりゃ皮肉か? ええ、おい!」

 

 僕は、どうしてそんな事を言われなきゃいけないのかわからなかった。

 カイリくんの方がヒーローの才能があるのも、カイリくんの方が生徒会長にふさわしいのも、事実だった。

 僕よりずっと先にいるカイリくんを、僕なんかが見下せるわけがない。

 そんなの、わかりきった事じゃないか。

 

「ち、違うよカイリくん…! 僕は、本当にカイリくんに憧れてて…大体、才能ならカイリくんの方がずっと…」

 

 僕がそう言った次の瞬間、ピシャッと左頬に痛みが走った。

 僕は、訳もわからないままいきなりカイリくんに叩かれた。

 

「いい加減にしろよお前。人の神経逆撫でするから(ヴィラン)だとか言われんだよ」

 

 その言葉が、僕を刺した。

 どこまで行こうとお前は(ヴィラン)だ、そう言われた気がした。

 僕は、お父さんみたいなヒーローになりたくて、自分にできる事を考えて実践してきた。

 大勢の人を助けるヒーローになるにはいろんな事を知るべきだと思ったから、いろんな人と仲良くなって僕の知らない事をもっと知りたかった。

 でもいつもうまくいかなくて、人を嫌な気分にさせてばかりだった。

 これじゃあ(ヴィラン)と何も変わらない。

 その事実を突きつけられたのがショックだった。

 

 その日から、僕はカイリくんと一言も話さなくなった。

 謝りたかったけど、謝れなかった。

 僕がまた余計な事をして、カイリくんの心の傷を広げてしまうのが怖かった。

 そして中2の春休み、結局僕はカイリくんと一言も話せないまま、カイリくんの父親のリントヴルムの引退をきっかけに、カイリくんが引っ越してしまった。

 後から聞いた話だと、カイリくんは僕の顔を見たくないからって雄英を志望から外したそうだった。

 あれから、カイリくんとは一度も連絡を取り合っていない。

 だけど何の因果か、試験会場でこうして再会した。

 

 カイリくんは、本当に凄い人だ。

 僕にとって痛いところを正確かつ戦略的に突いてくる。

 僕の事を恨んでいる相手だけど、本当は未だに彼の事を密かに目標にしていた。

 どんなに彼との距離があろうと、カイリくんに追いつきたい。

 どんなに分厚くて高い壁に阻まれていようと、カイリくんを超えたい。

 ──“いつか”じゃない、今がその時だ!! 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「終わりだよ!!」

 

 竜崎がひなたを再び吹き飛ばそうとした、その時だった。

 

「くっ…来るなぁ!!」

 

 ひなたは、ヤケクソと言わんばかりに竜崎目掛けてボールを投げた。

 竜崎は、それをヒョイと躱すとひなた目掛けて接近してくる。

 するとひなたは、距離を取って大きく息を吸い込み、“個性”を使って叫んだ。

 

「『滅葬劇曲(モルテアジタート)』!!」

 

「何!?」

 

 

 

 ひなたは、大きく息を吸うと渾身の爆音を放つ。

 するとひなたの放った爆音は次第に一点に収束して突き抜けていく。

 圧縮訓練で編み出した新技『滅葬劇曲(モルテアジタート)』は、“個性”の有効範囲を最小限に絞る事で最大限の破壊力を生み出す技だった。

 訓練を重ねた結果『滅葬歌曲(モルテカンタービレ)』の10倍の威力を局所的に浴びせる事が可能となり、今使ったのはその限界をも超えた超高威力の技だった。

 つまりこれが今ひなたにできる全力だった。

 だが…

 

「どこ狙ってんだバァカ!」

 

「あ゛ぁっ…!!」

 

 ひなたの全力の攻撃は、竜崎には当たらなかった。

 ひなたの肩に竜崎の爪が刺さり、痛々しい肩の生傷からは血が滲む。

 竜崎が不気味な笑みを浮かべながらさらにひなたを引っ掻こうとした、その時だった。

 竜崎がまだボールを当てていないにもかかわらず、突然ひなたのターゲットが3つとも光る。

 

『ハイ、通過20人目出ました』

 

 目良のアナウンスに、竜崎が僅かに目を見開く。

 そしてひなたの方を見ると、通信機器も兼ねたターゲットから音声が聞こえる。

 

『通過者は控え室へ移動して下さい。早よ』

 

 それを聞いた竜崎は、柄にもなく目を丸くする。

 

「………は?」

 

(嘘だ、俺はまだざわっぴにボールを当てられてない。ざわっぴは通過するチャンスなんて無かったはず……!)

 

 竜崎は、何故ひなたがいきなり通過したのかと思考を巡らせていた。

 それもそのはず、竜崎は一切の隙を見せずひなたに絶え間ない攻撃を仕掛けていた。

 その間にクリアする事など、不可能なはずだった。

 

「じゃ、控え室で待ってるから。君も早いとこクリアした方がいいんじゃない?」

 

「ふざけんな、てめぇ一体どんな手を……」

 

 ひなたが話しかけると、竜崎が苛立った様子で反論した。

 だがその直後、竜崎の身体がピタリと止まる。

 

「…!」

 

「助けに来たぜ」

 

 これはもしやと思い、ひなたが顔を上げると、何者かがひなたの声で話しかけてくる。

 ひなたの視線の先には、マスク型のサポートアイテムのツマミを回している心操がいた。

 

「もう一つの声帯、『ペルソナコード』」

 

 心操は、仮免試験の前に発目に作ってもらった新装備を披露した。

 心操の声は拡声器や変声器を通すと効果がなくなるが、この装備は内部のプレートが変形して擬似的な声帯を作り出し、生声のままで他人の声を出せるというものだった。

 

 ひなたは、竜崎が襲いかかってくる直前、レーダーの中に知らない受験生が入ってきたのを感知していた。

 心操はひなたと分断された後、他校生に奇襲を仕掛けられた。

 しかし、奇襲を仕掛けてきた他校生を洗脳して返り討ちにし、ひなたを助ける為洗脳を掛けた他校生を連れて戻ってきたのだ。

 他校生がレーダーに入ってきたのを察知したひなたは、その他校生を倒して合格するため、竜崎を最大限引きつけてからボールを投げた。

 そして自分の声を追い風にして、他校生のターゲットを狙い撃ち合格したのだ。

 

「ありがとうひー君、助かった」

 

「さっきは助けられたしな。行こうぜ」

 

「あっ、でも…カイリくんどうしよう」

 

「ああ、放置でいいよ。もうここには用はないし」

 

 ひなたは、心操に操られて棒立ちしている竜崎の方を見る。

 心操は、竜崎には目もくれずにスタスタと歩いていく。

 

「え? それってどういう…」

 

 ひなたがキョトンとしていると、心操は近くにいた受験生のターゲットにボールを当てた。

 すると心操のターゲットが3つとも光り、目良のアナウンスが鳴る。

 

『あっ、今21人目』

 

「俺はこれで合格だ。だからあいつはいらない」

 

 そう言って心操は、自分のターゲットを指さす。

 心操が洗脳をかけていた受験生は、一人だけではなかったのだ。

 無事合格した心操は、ボロボロのひなたに肩を貸して一緒に控え室へ向かった。

 ひなたは、控え室に向かう途中、他のクラスメイトを探すため通過せずに残っていた飯田達の事を思い出し、取り越し苦労とならないよう一応はぐれた三人にテレパシーのような通信能力で報告をした。

 

(『以心音信(テレパスシャウト)』!!)

 

『ごめん、僕とひー君は訳あって先に通過しちゃった。先に待ってるね』

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、心操に洗脳された竜崎は、一際目立つ瓦礫の上で棒立ちしていた。

 無防備で微動だにせず、他の受験生の恰好の的だった。

 

「っしゃあラッキーターゲット発見!」

 

 他校生は、竜崎を倒そうと竜崎のターゲット目掛けてボールを投げた。

 だがボールはターゲットに当たらず、竜崎の頭を直撃する。

 するとその衝撃で洗脳が解け、竜崎は正気に戻った。

 

「ちっ、外したか…! だったら近づいてもう一回…!」

 

 最初の球を外した他校生は、今度こそターゲットに当てようと竜崎に近づく。

 だが…

 

「………」

 

「ひっ!? ご、ごめんなさ…」

 

 竜崎が瞳孔の開き切った目でギロリと睨むと、ボールを投げた他校生は気圧されてその場に尻餅をついて顔を真っ青にしてガタガタ震え出す。

 よほど竜崎の視線が恐ろしかったのか、情けない事に失禁までしていた。

 竜崎は、今ので堪忍袋の緒が切れたのか、ビキビキと骨格を変形させて巨大な竜と化す。

 竜モードの竜崎はリューキュウより一回り小柄な竜でパワーもその分劣るが、海水を生み出して操る“個性”と組み合わさりほぼ無敵状態だった。

 

「ひいいいいいい!!」

 

「嘘だろ!?」

 

「あんな化け物どうやって倒せっていうんだよ!!」

 

 竜化した竜崎を前に他の受験生は完全に萎縮し、ほとんどは倒すのを諦めて逃げていた。

 だがひなたに勝ち逃げされた上に心操に操られた怒りで我を失っていた竜崎は、その怒りを他の受験生にぶつけた。

 竜崎は、他の受験生に向かって咆えると自分を中心に巨大な水の竜巻を生み出す。

 

「『海帝の逆鱗(インペリアルマリン)』!!!」

 

「「「うわああああああああああああああ!!!」」」

 

 竜崎の生み出した水の竜巻は、次々と受験生を巻き込んで巻き上げながら溺れさせていく。

 するとモニターで通過者と脱落者を確認していた目良が夜嵐の時以上に目を見開く。

 

『うおおおおおお!!? 出ました!! 通過者25人目!! っていうかそれより、脱落者…に、257名!!?』

 

 一気に250人以上を脱落させた竜崎は、海水にまみれた瓦礫の中心で背伸びをしていた。

 竜化を解いて人間モードに戻っており、大量の受験生を倒してスカッとしたのか先程までの不機嫌そうな表情が嘘のようにスッキリした表情を浮かべていた。

 

「うん、さっきのは俺らしくなかったね。反省反省。こっからは切り替えていかなきゃな。やっぱ誇り高きヒーロー科たるもの、クールで強かにいかないと♪」

 

 そう言って竜崎は、上機嫌で控え室に向かっていく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 少し前、ひなたと心操は一足先に控え室へ向かっていた。

 すると目の前に見覚えのあるシルエットがある事に気がつく。

 

「あ、あのハーフアンドハーフは! 焦ちゃん!」

 

 ひなたは、目の前にいた轟に声をかける。

 

「お、相澤と心操か。…っていうかどうしたその怪我」

 

「いやぁ…これはちょっといざこざに巻き込まれて…でもひー君が機転利かせてくれたおかげでクリアできたよ!」

 

「そうか」

 

 3人で話しながら控室に入ると、控室では夜嵐が他の通過者達に話しかけていた。

 

「マジっスか!? 自分もスタンプマン好きっスよ!!」

 

「あ、血の人」

 

「彼は熱いヒーローっス!! でもやっぱり…」

 

 轟は、他の通過者と話をしていた夜嵐と目が合った。

 夜嵐は、何故か敵視するような目つきで轟を睨みつけてきた。

 

「で、何でしたっけ!?」

 

「いや知らんよ君が話しかけて来たんでしょ」

 

「…………?」

 

 夜嵐が他の通過者に話しかけると、ひなたはコッソリ轟に尋ねる。

 初対面ではかなり熱苦しいものの悪い人物には思えなかったので、夜嵐が轟に向けた目つきの真相が気になったのだ。

 

「ねぇ焦ちゃん、今あの人に睨まれてなかった?」

 

「ああ」

 

「同じ推薦組でしょ? その時何かあった?」

 

「心当たりねえな…」

 

「そっか、まあそうだよね」

 

 ひなたは推薦入試で何かあったのかと思い轟に尋ねるが、轟は全く心当たりがない様子だった。

 ひなたは思い過ごしをしたのだろうと思い大人しく椅子に座る。

 するとしばらくして、竜崎が控室に入ってくる。

 

「おーっすよっちゃん一抜けおめでとー」

 

 竜崎がクラスメイトの夜嵐に声をかけると、ひなたは気まずそうに飲み物を取りに行く。

 すると夜嵐と話し終わった竜崎は、ニコニコと笑顔を浮かべながらクルッと振り向いてひなたに近寄ってくる。

 

「やあ、一次通過おめでとうざわっぴ。二次試験お互い頑張ろうね」

 

「う、うん…」

 

 竜崎は、ひなたの肩をポンポン叩きながら笑顔で話しかけた。

 だが竜崎の目が笑っていない事に気がついたひなたは、逃げるように自分の席に戻っていった。

 ひなたと心操が轟や通過したクラスメイトと一緒に控室で待っていると、アナウンスが流れる。

 

『現在60名! ガンガン進んでいい調子ですよー』

 

「残り40人…みんな大丈夫かな」

 

 すると、さらに続けてアナウンスが鳴る。

 

『さて立て続けに三名通過、現在63名となり残席はあと37名!』

 

 アナウンスの直後、切島、上鳴、爆豪が控室に入ってきた。

 すると、八百万が通過した3人に声をかける。

 

「皆さんよくご無事で! 心配していましたわ」

 

「ヤオモモー! ゴブジよゴブジ! つーか早くね皆!?」

 

「ああ。俺達は相澤のおかげで最初に通過できたからな」

 

「ひょえー、ひなちゃんやべー」

 

 上鳴が驚いていると、障子が答え、上鳴が驚く。

 

「爆豪も絶対もういると思ってたけど、なる程! 上鳴が一緒だったからか」

 

「はぁ!? お前ちょっとそこ直れ!」

 

 耳郎が納得すると、カチンときた上鳴が耳郎を指差した。

 すると蛙吹が控室にきた3人に話しかける。

 

「ターゲットを外すキーが奥にあるわ。ボールバッグと一緒に返却棚に戻せって」

 

「A組はこれで18人か」

 

「あと3人」

 

「飯田さん大丈夫かしら…」

 

 八百万は、飯田の事を心配していた。

 飯田は竜崎のせいでひなた達とはぐれてしまい、自分の通過は後回しでまだ通過していないクラスメイトを探し回っていたのだ。

 

『ハイ、えーここで一気に8名通過来ました━━! 残席はあと29名!』

 

 ここで真堂達傑物学園高校の二年生が控室に入ってくる。

 それを見たひなたは、触角をピンと立てる。

 

「あ、笑ねえのクラスの人達。通過したんだ」

 

「……飯田達、まだ来ないな」

 

「うん……」

 

 心操が言うと、ひなたが僅かに表情を暗くして頷く。

 すると何かを察した上鳴がひなたに尋ねる。

 

「えっ、何かあったの?」

 

「実は……」

 

 上鳴が尋ねると、ひなたは事の経緯を話した。

 竜崎が自分を狙ったせいで飯田達がとばっちりを喰らった事、あのままだと竜崎に脱落させられる可能性が高かったので仕方なく先に自分達だけ通過してしまった事、飯田がまだクリアしていないのはおそらくはぐれてしまった緑谷と麗日を探しているからだという事も話した。

 

「だから、天ちゃん達がまだクリアできてないのは僕のせいでもあって…」

 

「いやいやいや、ひなちゃんは何も悪くないだろ!」

 

「でも……」

 

 ひなたの発言を瀬呂が否定するが、ひなたの表情はまだ暗いままだった。

 すると心操がひなたに話しかける。

 

「ひなた。飯田に緑谷と麗日の居場所は伝えたか?」

 

「え? あ、うん。一応……」

 

「だったら大丈夫だ。あの三人ならまず心配はいらない。むしろ俺らが先にクリアしてた方が、あいつらも安心してクリアできるだろ」

 

 心操は、飯田達を心配するひなたを励ました。

 するとその直後、飯田、緑谷、麗日が控え室に駆け込んでくる。

 

「皆!!」

 

「ごめん、遅くなった!」

 

 三人が駆け込んでくると、ひなたは元々丸い目をさらに丸くする。

 緑谷は、竜崎のせいで分断された後、どさくさに紛れて奇襲をしかけた士傑の女子生徒に絡まれていたのだが、そこへ飯田と麗日が駆けつけて事なきを得ていた。

 結局士傑の女子生徒は取り逃がしたが、三人で協力して他の生徒を倒し、皆でクリアするという当初の目的は達成した。

 これでA組全員が合格を果たし、ひなたは感極まってクラスメイトの方へ一直線に走っていく。

 

「うわあああああ良かったああああ!!」

 

「うぉあ!?」

 

 ひなたは、嬉し泣きしながら飯田に飛びつき、そのまま勢いで床に押し倒した。

 ひなたが泣きながら全員の合格を喜ぶと、ほとんど全員がそれを微笑ましそうに見つめる一方で、竜崎はひなたに鋭い視線を向けていた。

 それから数分後、ついに通過者が100人目となった。

 

『0名! 100人!! 今埋まり!! 終了! です! ッハ━━━!! これより残念ながら脱落してしまった皆さんの撤収に移ります』

 

 脱落者達は、係に連れられて次々と撤収していった。

 一方、通過したA組達は全員で喜び合っていた。

 

「おぉおお〜〜〜…っしゃああああ!!!」

 

「スゲェ!! こんなんスゲェよ!」

 

「雄英全員一次通っちゃったあ!!!」

 

 上鳴、瀬呂、麗日が歓声を上げ、峰田はというとどさくさに紛れて麗日の尻を凝視していた。

 ラストは青山のお陰で21人全員無事一次試験を通過したのだった。

 

 

 

 

 





カイリくんのプロフィール

名前:竜崎(りゅうざき)(カイリ)

性別:男

年齢:16歳

ヒーロー名:リヴァイアサン

所属:士傑高校ヒーロー科1年1組

“個性”名:『海竜』

出身校:垢離里中学校→椎羅中学校

身長:180cm(人型モード)/250cm(半竜モード)/10m(海竜モード)

誕生日:7月17日(蟹座)

血液型:O型

出身地:兵庫県

好きなもの:炭酸飲料、レトロゲー、骨付き肉、寿司(サビ抜き)

性格:完璧主義者

戦闘スタイル:近接格闘+中距離攻撃

ICV:松風雅也

HERO’ S STATUS
 
パワー:S
スピード:S
テクニック:A
知力:A
協調性:D

士傑の生徒で夜嵐のクラスメイト。元プロヒーロー『リントヴルム』の一人息子。ひなたの中学時代のクラスメイト(ただし中3から神戸の中学校に転校している)。頭脳明晰、高い戦闘能力、ヒーロー向きの“個性”とテンプレのような天才児。中学時代はひなたと親友だったが、ある日を境にして絶交状態となっており、関係を修復できないまま転校してしまったので疎遠となっていた。何故かひなたの事を目の敵にしており、雄英志望のひなたと会いたくないという理由で士傑に進学した。

◯容姿
毛先だけが白い濃い水色のセミロングで、一部分だけ編み込んでいる。瞳は海のような深い青。
ヘアピンをつけている。
中学時代はピアスをしていたが、高校に上がってからは校則で禁止されているため外している。

人型モード
轟と爆豪を足して2で割った感じのイケメンフェイスで、鋭い犬歯が特徴的。
耳が魚の鰭のような形をしており、両耳の下あたりに鰓がある。
普段は服で隠れる部分が薄い鱗で覆われている。

半竜モード
背中と四肢から鰭が生え、背中からは蝙蝠のような翼が生え、尾骶骨のあたりからは強靭な鱗で覆われた尾が生えている。
目つきが鋭く、口が耳元まで裂けている。

海竜モード
全身を強靭な鱗が覆い、背中からは蝙蝠のような翼が生え、背中側に頭から尾にかけて鰭が生えている。
人型モードの原型は殆ど無く、強いて言うなら特徴的な髪型くらい。

◯コスチューム
・上着とボトムス
海軍を意識した装飾が施された紺色のコスチューム。
ボトムスは七分丈で、膝下あたりがゆったりとしたデザイン。
特にギミックは無いが、防水性に優れている。
自身の髪を使った繊維で作られている為、変身するサイズに合わせて伸縮が可能。
・ブーツ
水でできたブーツ。竜化した際に邪魔になるので靴は履かず、水で素足を覆って靴代わりにしている。
・制帽
士傑高校の制帽。校則により着用が義務付けられている。
・籠手
“個性”の補助用のサポートアイテム。
“個性”使用時の体温を一定に保つ効果がある。

◯“個性”
『海竜』
魚っぽい事なら大抵できる異形型の“個性”、竜に変身する変形型の“個性”、海流を生み出して操る発動型の“個性”のハイブリッド。
世界的にも類を見ない三系統全てを複合した超レア“個性”。
父方の竜に変身する“個性”と母方の『人魚』と『海』の“個性”を複合した“個性”の複合型。
大量の海水を生み出せるが、水の出所は不明。
ちなみに父親がリューキュウの従兄。
攻撃力・防御力・機動力・拘束力全てに長け戦闘・救助両方に応用が利く万能“個性”。
それを可能にしているのは竜崎自身の類稀なるセンス。
水陸両方で生活可能で、水圧にも耐性があるが、強いて言うなら極度の低温状態が続くと仮眠状態になってしまうのが弱点。
また、海水を生み出す際に体温を奪われる為、許容量をオーバーすると動きが鈍くなる。

もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます

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