抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が11件9が40件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。


救助演習

 A組は、青山のお陰で全員無事一次試験を通過した。

 すると、モニターに一次試験のフィールドが表示される。

 

『えー、100人の皆さんこれをご覧下さい』

 

「フィールドだ」

 

「なんだろうね……」

 

 全員が疑問に思いつつもモニターを眺めていると、突然フィールドが爆破され跡形もなく崩れた。

 

(((何故!!)))

 

 それを見ていた全員が心の中で一斉にツッコむ。

 すると目良が説明を始めた。

 

『次の試験でラストになります! 皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます』

 

「「パイスライダー…?」」

 

「バイスタンダー! 現場に居合わせた人の事だよ。授業でやったでしょ」

 

「一般市民を指す意味でも使われたりしますが…」

 

 上鳴と峰田が頓珍漢な事を言っていると、葉隠と八百万が説明する。

 すると目良が試験のルール説明を続ける。

 

『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として───…どれだけ適切な救助を行えるか試させて頂きます』

 

「む…人がいる…」

 

「え…あぁ!? あぁあ!? 老人に子供!? 危ねえ何やってんだ!?」

 

 子供や老人が崩れた建物の周りを彷徨いていると、砂藤は思わず声を上げた。

 

『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの要救助者のプロ!!』

 

「要救助者のプロ!?」

 

『『HELP(ヘルプ)US(アス)COMPANY(カンパニー)』、略して『HUC(フック)』の皆さんです』

 

 目良が説明していると、老人は懐から血糊を取り出してニヤニヤしていた。

 

「色んなお仕事あるんだな…!」

 

「ヒーロー人気のこの現代に則した仕事だ」

 

『傷病者に扮した『HUC(フック)』がフィールド全域にスタンバイ中。皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます。尚今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき、演習終了時に基準値を超えていれば合格とします。10分後にスタートしますのでそれまでにトイレとか済ましといてくださいねー…』

 

 目良が説明を終えると、飯田が緑谷に話しかける。

 

「緑谷くん」

 

「うん…神野区を模してるのかな…」

 

「俺達は爆豪くん達を(ヴィラン)から遠ざけ…プロの邪魔をしない事に徹した…その中で死傷者も多くいた…」

 

「──頑張ろう」

 

 飯田が言うと、緑谷も頷いて試験に臨む決心をした。

 そして10分後、突然サイレンが鳴る。

 

(ヴィラン)によるテロが発生! 規模は◯◯市全域、建物倒壊により傷病者多数! 道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ! 到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う。一人でも多くの命を救い出す事!!! START!!』

 

 一次試験同様、控室の壁と天井が開いた。

 開始の合図と同時に、100人の通過者が一斉に走り出す。

 

「とりあえず一番近くの都市部ゾーンへ行こう!」

 

「なるべくチームで動くぞ!」

 

「うん!」

 

 ひなたは、他のA組と行動を共にしつつも士傑のグループの中で行動を共にしている竜崎と目が合う。

 すると竜崎は、笑顔を浮かべつつもひなたを睨んでくる。

 ひなたは、あからさまに自分を嫌がる竜崎の態度に若干ムカつきつつも試験中である事を思い出して真っ先に救助に向かう。

 

「う゛ぇえ゛え゛え゛え゛!! ひっ、ひぐっ、パパぁあ、ママぁあ!!」

 

 ひなたは、お世辞にも可愛らしいとは言えない小学生くらいの男の子を発見する。

 足が折れて頭から血を流しており、両親とはぐれてしまったのか瓦礫の前でギャン泣きしていた。

 

「もう大丈夫! 僕が来たよ」

 

 ひなたは、笑顔を浮かべて男の子に歩み寄ると適切な応急処置を施す。

 そして応急処置をしつつもクラスメイトに指示を出していく。

 

「めぞりん、きょーちん! 近くにこの子のお父さんとお母さんがいるかもしれないから探してあげて! あとはーちん、峰田! 瓦礫固定するの手伝って!」

 

「「了解!」」

 

「お、おう!」

 

 ひなたが指示を出すと、指示を出された4人が返事をする。

 

「もう大丈夫! すぐに安全なところに連れてくからね。よく一人で頑張ったね」

 

「ひぐっ、えぐっ…」

 

 ひなたは、男の子を抱き上げ背中をさすって落ち着かせる。

 すると男の子がひなたの行動を採点する。

 

(傷病者の容態を瞬時に判断し、会話が出来なくても安心させる言葉をかけ続けながら適切な応急処置に努めていた。そして混乱している傷病者の言葉から他の要救助者がいる事を即座に判断し最適な“個性”を持つ受験生に探させた。…減点なしと)

 

「ちょっと急ぐよ。大丈夫そう?」

 

「ぅ…あ……」

 

「よし、じゃあしっかり掴まっててね」

 

 ひなたは、アコースティックシューズを起動させ、爆速で男の子を救護所に連れて行った。

 

「男の子の救助者です! 頭と足を負傷してます! 応急処置はしましたが、受け答えはできません!」

 

「……うん、じゃあ右のスペースへ」

 

 ひなたは、男の子を回復系の“個性”の志望者に預けるとすぐに他の救助者の救助に向かった。

 相澤と山田のヒーロー活動を間近で見てきたという事もあって、こういう時の行動は迅速かつ的確だった。

 それを見た心操は、自分も見ているだけではダメだと他の要救助者を救助しに行く。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「見てわかんないのぉおお!? 腕怪我してんでしょうが!! 痛くて千切れそうなの!! 早く助けてよ!!」

 

 心操が声をかけると、お世辞にも美人とは言えない女性が大泣きしながら逆ギレする。

 腕を少し負傷している程度で脚に目立った怪我は見られなかったが、混乱しているのかただ『痛い』と泣き喚いていた。

 心操は、女性の容態を確認してから女性に尋ねる。

 

「歩行の確認です。歩けますか」

 

「歩けるわけないでしょ!? 痛くて死んじゃ……」

 

「『向こうに救護所があります。そこまで避難して下さい』」

 

 心操は、女性を操って自分の足で救護所へ避難させた。

 そしてそのまま他の要救助者を救助しに行く。

 すると、それを見ていたMs.ジョークと相澤が感心する。

 

「お、あいつ要救助者役を操ってるぞ!」

 

「良い“個性”の使い方をしているな。こういうケースでは、一見軽傷でも混乱して自分で逃げられない被災者も多い。そういう被災者の対応に時間を取られて本当に救助が必要な重傷者の救助が遅れたら本末転倒。そういう場合は操って避難させた方が早いし、効率的に救助を行えて合理的だ」

 

「あいつ、体育祭じゃ『(ヴィラン)向きの“個性”』だなんて言ってたけど、ちゃんとヒーロー向きの“個性”だよな」

 

 相澤とMs.ジョークは、心操の“個性”の使い方を高く評価していた。

 心操は幼い頃から『犯罪し放題』などといじられ、ひなたと出会うまでは自分の“個性”に自信が持てなかった。

 だが、二人からしてみれば対(ヴィラン)にも救助にも使えるヒーロー向きの“個性”だった。

 

 一方、竜崎は他の士傑生と一緒に救助をしていた。

 竜崎は海水を操ってロープ代わりにして要救助者を助け出し、竜化の“個性”で巨大な瓦礫を退かしていく。

 

(はー、しんど。プロになったらこんな事しなきゃいけないんだな。俺はとにかく強い(ヴィラン)をブッ倒したくてヒーロー科志望したんだけどなー)

 

「はい、俺が来た。大丈夫っスか? …って、意識無いしどう見ても自分で救護所まで行けないか。ほいならほいと」

 

 竜崎は、海水で道を作って重傷者を運んでいく。

 竜崎は内心救助活動をめんどくさがっていたが、やはりこういう面でも天才なのか救助は迅速かつ的確だった。

 その点に関してはHUCも高く評価しており、この時点で竜崎の減点は無かった。

 

 一方、男の子を救助したひなたは別の要救助者を助けに行っていた。

 ひなたが要救助者を助けに行こうとすると、既に他校の生徒が瓦礫に足を挟まれた要救助者を助け出そうとしていた。

 よく見ると、要救助者は瓦礫に挟まれた脚に斑点が浮き上がっていた。

 

「要救助者だ! 助けなきゃ!」

 

(おっと、その判断は減点だよ)

 

 他校生が瓦礫を退かそうとすると、要救助者はニヤリと笑った。

 するとその時、ひなたが他校生を捕縛して待ったをかけた。

 

「待って!」

 

「ぐえっ!!」

 

 ひなたが他校生を捕縛すると、他校生はひなたの方を振り向く。

 

「あ、あんた、雄英の…! 何をするんだ!」

 

「その人、クラッシュ症候群を起こしてる可能性が高いです。いきなり瓦礫を退かしたりしたら、圧迫部に溜まった有害物質が全身に回って急死してしまいます」

 

「じゃあ、どうすれば…」

 

「このまま応急処置します。できたら水の“個性”の人がいればいいんだけど…」

 

 ひなたは、“個性”を使って水の“個性”の生徒を探した。

 ようやく一人発見すると、ひなたは特殊な音波を使ってその生徒にSOSを発信した。

 するとその直後、ひなたが呼んだ生徒が駆けつけてくる。

 

「どうした!?」

 

「この人、クラッシュ症候群を起こしてます! 出来るだけ水分を投与して下さい! 救助後はすぐに透析お願いします!」

 

「わかった!」

 

 ひなたが指示を出すと、他校生は大量の水分を要救助者の体内に送り込んだ。

 ひなたは、他の部位の応急処置をしつつ、要救助者の脚を縛って圧迫し、他の受験生に指示を出した。

 

「よし、もう瓦礫退かして大丈夫!」

 

「よい…しょ!!」

 

 ひなたが合図を送ると、最初にいた他校生が瓦礫を退かした。

 その直後、駆けつけてきた他校生が“個性”を使って透析を始める。

 

「ありがとう。ここからは俺達に任せてくれ」

 

「はい!」

 

 他校生がひなたに礼を言うと、ひなたは元気よく返事をした。

 ちょうどひなたが手当を終えたその時、さらに他の受験生がひなたに声をかける。

 

「ちょっとそこの君! こっち来てくれ!」

 

「どうしました?」

 

 ひなたが他の受験生の方へ走っていくと、その受験生は瓦礫を指差す。

 瓦礫には子供一人が通れる程度の僅かな隙間があったものの、その場にいた受験生が通れるサイズではなかった。

 

「この瓦礫の隙間に子供がいるんだが、隙間が狭すぎて入れないんだ! 無理に動かしたら崩れるし…」

 

「任せて下さい!」

 

 ひなたは、ニコッと笑顔を浮かべると軽い身のこなしで穴の中へスルスルと入っていく。

 そしてしばらくして、ひなたは泣きじゃくっている女の子を抱えて穴から這い出てきた。

 ひなたは、泣いている女の子の背中をさすって落ち着かせる。

 

「ほら、もう大丈夫だよ。よく頑張ったね」

 

「でかした! その子、怪我は?」

 

 ひなたが女の子を落ち着かせていると、他校の受験生が駆け寄ってくる。

 容態を聞かれたので、女の子に容態を聞いていたひなたは受験生に報告する。

 

「足を怪我してますが、他は大丈夫そうです! 受け答えはしっかりしてます」

 

「わかった、じゃあ俺が連れて行く。君は他の要救助者の救護を!」

 

「はい!」

 

 他の受験生がひなたに指示を出すと、ひなたは素直に指示に従って走り出す。

 ひなたが救助に向かおうとした、その時だった。

 

 

 

 BOOOOM!!! 

 

「!!!」

 

「何だぁ!!?」

 

「うわぁ!!?」

 

「!」

 

 突然爆発が起こり、ギャングオルカと(ヴィラン)役の部下達が現れる。

 

「対敵。全てを並行処理…できるかな」

 

「ギャングオルカ!」

 

「さて…どう動く!? ヒーロー!」

 

 ギャングオルカが現れると、ひなたが目を見開く。

 

(ギャングオルカ…! ビルボードチャートJP第10位、『(ヴィラン)っぽい見た目ヒーローランキング』第3位の鯱ヒーロー…! マジかよ、仮免試験に呼ぶかよ!?)

 

 仮免試験の(ヴィラン)役にトップヒーローを呼ぶとは思わなかったので、ひなたは思わずギョッとしていた。

 だが、脅威はギャングオルカだけではなかった。

 

「うちもおる事忘れたらアカンで〜」

 

「!?」

 

 ひなたが目を見開いて驚いた直後、ひなたの背後で轟音が響く。

 ひなたが恐る恐る後ろを振り向くと、無造作に肩あたりまで伸ばした金髪をポニーテールにし上半身がはだけた袴を着て胸にサラシを巻いた女性が立っていた。

 頭から角のような外骨格を生やし、両手両足に枷をつけ金棒を持った姿は鬼そのものだった。

 この女性こそ、ビルボードチャートJP第14位の雷神ヒーロー『イナズマ』だった。

 

「ハイ、うちが来た。んな訳で来てみぃや、ヒーロー共。死にたい奴から殺したるわ」

 

 イナズマは、手からバチバチと青白い火花を散らしながら凄んでみせる。

 イナズマは事務所を構えずにフリーで活動しているにもかかわらず弱冠20歳にしてNo.14にまで上り詰めた超凄腕の若手ヒーローだが、(ヴィラン)っぽい外見と暴力団を思わせるような言動から『(ヴィラン)っぽい見た目ヒーローランキング』第8位にランクインしているのだ。

 

(ビルボードチャートJP第14位のイナズマまで…!? どうなってんだよ今回の試験、いくら何でもハイレベルすぎでしょ!?)

 

「嘘だろ!? 何でイナズマまで来てるんだよ!」

 

(ヴィラン)役のヒーローって一人じゃねえのかよ!?」

 

 トップクラスの実力を持つヒーローが二人も(ヴィラン)役として現れたので、ひなたはいくら何でもハイレベルすぎだと驚いていた。

 他の受験生達、特に前年度仮免を取得した先輩からある程度試験内容を聞かされていた者達は、予想外の事態に動揺を隠せない様子だった。

 するとその直後、会場全体に目良の気怠げな声が鳴り響く。

 

『えー……言い忘れてましたが、皆さんに非っっっ常に残念なお知らせです。当初はギャングオルカのみの予定でしたが、上から『『平和の象徴』不在の今、(ヴィラン)一人対応しつつ救助活動を行うというのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。よって難易度を調整しろ』とのお達しがありまして…急遽イナズマにも(ヴィラン)役として来てもらう事になりました。まあ運が悪かったと思ってアレして下さい』

 

(((嘘だろ!!?)))

 

 目良が他人事のように言うと、受験生は心の中でツッコミを入れる。

 公安の勝手な決定により、二次試験の難易度が桁違いに跳ね上がってしまったので、納得いかないのも無理はなかった。

 

『というわけで、(ヴィラン)が姿を現し追撃を開始! 現場のヒーロー候補生は(ヴィラン)を制圧しつつ救助を続行して下さい』

 

「ど、どうすんだよこれ…!?」

 

「僕が行きます! 手が空いてる人、援護お願いします!」

 

 (ヴィラン)を制圧するのに最適な“個性”を持つひなたは、早速イナズマを倒しに行く。

 だがその時、竜崎がひなたの横を通り過ぎる。

 

「はい来た、こういうのを待ってたんだよ」

 

 竜崎が引き裂けそうな笑みを浮かべながらイナズマの方へ一直線に向かっていくと、ひなたが竜崎を呼び止める。

 

「待ってカイリくん! カイリくんの“個性”じゃイナズマと相性が悪すぎる! 僕に考えがあるんだ! ここは一旦協力して…」

 

 ひなたは、竜崎の肩を掴んで竜崎に指示を出す。

 イナズマの“個性”だと、竜崎が相手をするよりひなたが“個性”を消してから竜崎が押さえた方が勝率が高かった。

 だが竜崎は、ひなたの手を振り払って睨みつける。

 

「うるせぇな。手柄奪いに来る暇があんならてめえは雄英(お仲間)同士で重傷者の救助でもやってろよ」

 

「手柄とかそういうんじゃなくて、君一人でイナズマに挑むなんて無茶だって言ってるんだよ! これ以上の被害を抑える為にも、今は協力しないと! わかるだろ!?」

 

「嫌だね! 誰がてめえとなんか協力するかよ! 一次試験で抜け駆けした事、忘れたとは言わせねえぞ!」

 

「なっ…それは君が喧嘩売ってきたからだろ!? カイリくん、本当に試験に受かる気あんの!? やる気無いなら、受かりに来てる人の邪魔をするな!!」

 

 竜崎がひなたに向かって悪態をつくと、ひなたが反論した。

 すると竜崎は、ひなたに対して牙を剥いて怒鳴りつけ、二人は口論となった。

 一方、それを見ていたイナズマは二人にジト目を向けて頭を掻きながら呆れ返っていた。

 

(はぁー…何やねんこいつら。敵前で喧嘩とか園児か。んなもんうちがホンマモンの(ヴィラン)やったら喧嘩おっ始めた瞬間自分ら二人とも首飛んどるぞ。今回の雄英生と士傑生はハイレベルっちゅう風に聞いとったんやけどなぁ…)

 

 イナズマは、二人のやり取りを見てつまらなさそうに欠伸をし、その場で胡座をかいて喧嘩が終わるのを待っていた。

 一方、Ms.ジョークと相澤も呆れ返った様子で二人を見ていた。

 

「何か…ひなたの奴、士傑生と言い争ってないか?」

 

「何をしてるんだあのバカは……」

 

 Ms.ジョークがひなたを指差しながら言うと、相澤がため息をつきながら組んだ右腕を左手に人差し指でトントン叩き苛立ちを露わにしていた。

 ひなたには対敵した時どうすべきかを口を酸っぱくして教え込んだつもりだったのだが、ひなたが全く教え通りに動いていなかったので焦ったさを隠しきれなかったのだ。

 

「邪魔はてめーだろうが! 悉く俺の神経逆撫でしやがって、そんなに俺を馬鹿にしてえのか!? ええ、おい!?」

 

「何でそうなるんだよ! 僕はただ協力しようって言ってるだけじゃんか! そうやって捻くれた捉え方してたら、協力できるものもできないだろ!!」

 

 ひなたが竜崎を正論で捲し立てると、竜崎はカチンときたのか黙り込んだ。

 しばらくの沈黙の後、竜崎はため息をつきながら言い放つ。

 

「あー、うっぜ。お前がそういう事言うからもう完全に協力する気無くしたわ。どっか行けよ、邪魔だから」

 

「…っ!! じゃあもういい!! 勝手にしろ!!」

 

 ひなたに正論を言われた竜崎が拗ねると、ひなたも目に涙を浮かべながら売り言葉に買い言葉と言わんばかりに怒鳴りつけ、その場から立ち去ってしまった。

 するとその直後、イナズマが手からバチバチと火花を放って竜崎に急接近してくる。

 

「終わった?」

 

 イナズマがそのまま電気を纏った手で竜崎に触ろうとすると、竜崎は尾で攻撃を仕掛ける。

 するとイナズマは、軽い身のこなしで跳び上がって回避した。

 その直後、竜崎は大量の海水を操って攻撃を仕掛ける。

 

「『海帝の鉾(トライデント・マリン)』!!」

 

「ほぉーん、自分水も操れるんか。最近の子供はバケモンじみてて恐いわぁ。せやけどなぁ…『海鳴り』」

 

 竜崎は、大量の海水を操って槍のように鋭くし、三方向から攻撃を仕掛けた。

 だがイナズマは、掌で軽くいなすように竜崎の水をいなす。

 竜崎の操る海水は、まるでイナズマの掌から逃げるかのように反れていく。

 

「それしか出来へんならうちを倒すなんぞ千年早いで」

 

「な…!? 水を弾いた!?」

 

「何驚いとんねん。反磁性体って知っとるか? 最近の子供は学校で習わへんのか? ドアホでもわかるよーにザックリ言うとな、水は磁石を嫌う性質があんねん。うちは電気を操って身体を強力な磁石に出来る。ほんでもって自分の水を反らしたっちゅうわけや」

 

 竜崎が驚いていると、イナズマが呆れながら竜崎の水を反らしていく。

 イナズマに海水攻撃が効かない事がわかると、竜崎はすぐに竜化して攻撃を仕掛ける。

 

「だったら…これはどうだ!?」

 

 竜崎が巨大な手を振りかぶると、イナズマは軽い身のこなしで避ける。

 竜崎の攻撃を避けたイナズマは、竜崎を煽る。

 

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪」

 

「ッ……!!」

 

 イナズマが手を叩きながら煽ると、竜崎がイナズマに攻撃を仕掛ける。

 だが竜崎がイナズマに攻撃を仕掛けようと右足を踏み込んだ瞬間、近くで要救助者を運んでいたヒーローが吹き飛んでしまう。

 それを見たイナズマの眉間がピクリと動き、イナズマはため息をついて呆れ返る。

 

「ほい今のでマイナス40点。周りよぉ見いやカス」

 

「チッ……!」

 

 イナズマは、電気を身体に纏って浮き上がり、背中の金棒を抜いて天に向けて構えると金棒にバチバチと電気を走らせる。

 すると周りの瓦礫が浮き上がり、イナズマの金棒を中心に渦を巻く。

 そして、その周りの空気までもが渦を巻き竜巻が発生し、バチバチと雷光が走った。

 

「『建御雷神(たけみかづち)』」

 

 

 

 雷神ヒーロー イナズマ

 本名 五常雷華

 “個性”『蓄雷』

 体内に溜め込んだ雷を放出して自在に操れる! 

 電気で磁力を操る事もできるぞ! 

 ちなみに最大出力は10億ボルト! 化け物かよ!! 

 

 

 

「ほな千本ノック行ってみよかお兄ちゃん」

 

 イナズマは、ニヤリと笑みを浮かべると巻き上げた大量の瓦礫を竜崎めがけて金棒で打ち飛ばす。

 竜崎は大量の水を操って防御しようとするが磁力を纏わせた大量の瓦礫の前では焼け石に水程度の効果しか出せず、直接瓦礫の雨を喰らってしまう。

 

「ぐぁあぁああああああああ!!!」

 

 瓦礫の雨を喰らった竜崎は、激痛のあまり叫び声を上げる。

 いくら並外れた防御力と耐久力を誇る竜崎といえど、千発もの瓦礫の雨に耐えられるわけもなく、ボロボロにやられていく一方だった。

 イナズマが飛ばした瓦礫は、救助活動を行っていた他のヒーローのところにも飛んでいく。

 それを見た目良は、流石にここまでの試験の過激さは想定外だったのか、頭を抱えて狼狽える。

 

「あああああ何やってるんだあの人…!」

 

「周囲への被害なんぞクソ喰らえや! 受かりたかったらちゃんと要救助者守りぃや!」

 

 イナズマは、ハイになって瓦礫をやたらめったらに試験会場の至る所に飛ばした。

 幸い磁力で落下のスピードを落としていたため、死人が出る程の威力ではなかったものの、救助活動を妨げるには十分な威力だった。

 一方、イナズマの射程内で救助活動をしていた爆豪派閥はというと。

 

「ひいい何あの人!? 完全に俺の立場ゼロじゃん!」

 

「バクゴーとりあえずここから離れるぞ!」

 

 雷を操って瓦礫の雨を降らせてくるイナズマに対し上鳴は顔色を悪くして震え上がり、切島はとりあえず避難を優先するよう爆豪に言った。

 だがその時、三人の足元から女性の声が聞こえてくる。

 

「う、うぅ……!」

 

 見ると、他校生の女子が要救助者を庇って重傷を負い、頭から血を流して倒れていた。

 すると爆豪は、女子生徒を救護所に連れて行こうとする。

 

「おいアホ面! クソ髪! 手ェ貸せ!」

 

「お、おう!」

 

 爆豪が上鳴と切島に声をかけると、二人とも爆豪を手伝う。

 だがその時、想定外の事態が起こった。

 

「ちょっと、私から先に救助しなさいよ!」

 

「いいや、俺が先だ!」

 

 女子生徒が庇った要救助者達が、自分が先に助かろうと喧嘩を始めてしまったのだ。

 要救助者が喧嘩を始めたせいで、三人とも救助を妨害されてしまう。

 

「マジかよ、こういう対応も試験に含まれてんのかよ…!」

 

「と、とりあえず皆さん落ち着いて…」

 

 上鳴と切島は、荒れる要救助者達を落ち着かせようとした。

 だが要救助者達は聞く耳を持たずに喧嘩を続けた。

 すると、救助活動を邪魔されて痺れを切らした爆豪は、目尻を80°吊り上げて怒鳴り散らした。

 

「だぁってろクソモブ共!! この状況見てわかんねえのか!? 喧嘩する元気があんならとっととてめぇで避難しやがれ!!」

 

 爆豪が要救助者に対して怒鳴り散らすと、要救助者はビクッと肩を跳ね上がらせる。

 だがそのうちの一人は、怒鳴られた事でパニックを起こして動けなくなってしまう。

 

「あ、ああ…ああああ……」

 

 要救助者は、腰が抜けて立ち上がれず、ただただ涙目で助けを求めていた。

 するとその時だった。

 

「皆さん、もう大丈夫です! 助けに来ました!」

 

 どこからか手の空いたクラスメイトを引き連れた心操が現れ、要救助者に呼びかけた。

 

「まずは深呼吸して、返事できるならしてもらえますか」

 

「はっ、はひ…!」

 

 心操が呼びかけると、要救助者に洗脳スイッチが入りひとりでに救護所へ走り出す。

 すると、それを見た他の要救助者も、流されるようについて行った。

 心操は、怪我をして歩けない要救助者の手当てをしながら爆豪達三人に言った。

 

「職場体験の時、相澤先生が言ってた。異常事態が発生した時、冷静に対処できるのはたった1割。パニックになって間違った行動をしちまうのが2割。残りの7割は、何もできずに思考停止しちまうって」

 

「心操…!」

 

「俺なら、全員救える」

 

 心操の助太刀に上鳴と切島が安堵していると、心操は捕縛武器で要救助者の折れた脚を固定しながら言った。

 一方で竜崎は、イナズマに瓦礫を浴びせられて満身創痍になっていた。

 さらにイナズマは、金棒に電気を纏わせ、容赦無く竜崎の腹に殴打を浴びせる。

 

「『天鼓(てんこ)』」

 

「あ…がぁ…!!」

 

 イナズマが竜崎に電撃付きの殴打を浴びせると、竜崎は一瞬意識を手放し、口から黒煙を吐く。

 それを見たイナズマは、流石に受験生相手にやり過ぎたと思ったのか、『しまった』とでも言いたげな表情を浮かべながら頭を掻く。

 

「あっちゃー、受かる気無いクソガキに腹立ったとは言え、流石にやりすぎてもうた。おーい、生きとるか〜?」

 

 イナズマが竜崎を心配して声をかけると、竜崎はイナズマを睨みつけてイナズマを掴もうとする。

 するとイナズマは、電気の盾で竜崎の攻撃を弾き、呆れたような表情を浮かべながらため息をつく。

 

「なぁ〜、お兄ちゃん。もう諦めて応援呼んだ方がええんとちゃう? 実力で敵わへん奴と会敵したら味方に頼る判断も、ヒーローには必要やぞ〜」

 

 満身創痍の竜崎にイナズマが欠伸しながら言うと、竜崎は殴打の痛みに顔を歪めながらも答える。

 

「誰が…!! 俺は、一人であんたを倒さなきゃここに立ってる意味が無いんだ!!」

 

「さよか。ほんなら去ねや」

 

 イナズマは、右手にバチバチと火花を纏うと竜崎の頭に軽く手を当てる。

 すると竜崎の脳内に電流が流れ、竜崎は電気ショックで意識を手放した。

 

「がっ………!!」

 

 気絶した竜崎は、自然と人型モードに戻って地面に伏す。

 するとイナズマが地面に金棒を突き立て竜崎の頭を踏みつけ、竜崎は頭を踏まれた痛みで目を覚ます。

 イナズマは、足元で倒れている竜崎に冷たい目を向けて言い放つ。

 

「何イキっとんねんドアホウ。うちに勝とうなんざ千年早い言うたやろが」

 

「ッ……クソ、俺は…俺は…!!」

 

「なぁ自分、さっき女の子と喧嘩しとったやろ? 何を言い争っとったんか知らんけどな…あの子、うちを倒す策考えとったんとちゃうんか? それ無視して一人で突っ走るからこうなんねん。女の子泣かすなんてなぁ、ヒーローとしても男としてもサイテーやぞ」

 

「うる…せえ…! そんなの…俺が一番良く分かってんだよ…!」

 

 イナズマが呆れながら言うと、竜崎はひなたが自分を止めようとしていた事を思い出す。

 ひなたの策に乗じればイナズマを倒す術があったかもしれないのに、自らそれを跳ね除けたのだ。

 竜崎は、愚かな判断をしてしまった事、イナズマの言う通り自分が最低な人間である事を理解していた。

 ひなたの言葉を素直に受け入れられなかった事を、今になって後悔していた。

 だが…

 

「今更後悔しても遅いで。さいなら。3、2、1………」

 

 イナズマは、電気を纏った金棒を竜崎に振り下ろそうとする。

 するとその時だった。

 

 

 

「!」

 

 突然イナズマ目掛けて小石が飛んできたので、イナズマはそれを“個性”で感知しノールックでキャッチした。

 イナズマが小石の飛んできた方に顔を向けると、そこには息を切らしたひなたが立っていた。

 

「助けに来たよ…! カイリくん!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、少し遡りアナウンスが流れた頃、ギャングオルカが現れた救護所付近では。

 

「さて…どう動く!? ヒーロー!」

 

 ギャングオルカは、完全に(ヴィラン)になり切っていた。

 すると、傑物学園の真堂が飛び出した。

 

「皆を避難させろ! 奥へ! (ヴィラン)から出来るだけ距離を置け!!」

 

「真堂…さん!?」

 

「インターバル一秒程の震度で畳みかける! 近づかせない!!!」

 

 真堂は、地震を起こして(ヴィラン)役を足止めした。

 だが…

 

「温い」

 

 ギャングオルカの超音波攻撃によって、真堂は脳を揺らされて麻痺する。

 

「この実力差で殿一人…!? 舐められたものだ…!」

 

 するとその直後、巨大な氷塊がギャングオルカに襲いかかった。

 それと同時に、轟が現れる。

 

「!」

 

「緑谷! 避難か!? 手伝う!」

 

 尾白、芦戸、常闇の三人も息を切らしながら走ってくる。

 

「皆! どこいたの!?」

 

「向こうの水辺付近さ! 皆街の方に向かったから手薄なとこにいたんだが、(ヴィラン)がここらに大挙するのを見て応援に来た! 蛙吹らは向こうで救助続行してる」

 

 その直後、上の方から声が聞こえて来る。

 

 

 

「ふぅきィイイイイ飛べえええっっ」

 

 夜嵐が、暴風と共に舞い降り(ヴィラン)達を蹴散らした。

 

「風…」

 

(ヴィラン)乱入とか!!! 中々熱い展開にしてくれるじゃないっスか!!」

 

 目が合った轟と夜嵐は、互いに睨み合った。

 

「あんたと同着とは…!!」

 

「お前は救護所の避難を手伝ったらどうだ。“個性”的にも適任だろ。こっちは俺がやる」

 

「ムムム…」

 

 轟が夜嵐に対し救護所の避難を手伝ってくるよう言うと、夜嵐は納得いかないといった様子で唸る。

 

「来る」

 

 ギャングオルカが警戒した直後、轟と夜嵐は同時に攻撃を放つ。

 だが、轟の炎と夜嵐の風が互いに邪魔をし合って二人の攻撃は明後日の方向へ逸れていった。

 

「なんで炎だ!! 熱で風が浮くんだよ!!」

 

「さっき氷結を防がれたからだ。お前が合わせてきたんじゃねぇのか? 俺の炎だって風で飛ばされた」

 

「あんたが手柄を渡さないよう合わせたんだ!」

 

「は? 誰がそんな事するかよ」

 

「するね! だってあんたはあのエンデヴァーの息子だ!」

 

「さっき…から、何なんだよお前。それとこれとは関係ねえだろ」

 

 互いに自分の攻撃を邪魔された轟と夜嵐は、敵前で言い争いを始める。

 夜嵐の挑発に轟が食ってかかろうとすると、ギャングオルカの部下が轟にセメントガンを浴びせた。

 

「セメントガン! すぐ固まって動き辛くなるぜ」

 

「論外だな…! 喧嘩を始めるとは」

 

 目の前で喧嘩を始めた二人に、ギャングオルカは呆れ返る。

 ヒーロー同士が敵前で喧嘩をするのは、ヒーローとしてあってはならない失態だった。

 轟と夜嵐の喧嘩は、収まるどころかさらにヒートアップしていく。

 

「関係あるんだなこれが! ヒーローってのは俺にとって熱さだ! 熱い心が人に希望とか感動を与える!! 伝える!! だからショックだった! その目からはただただ冷たい怒りしか伝わってこなかったんだから! そして入試の時、あんたを見てあんたが誰かすぐにわかった。何せ、あんたは全く同じ目をしてた」

 

 夜嵐は、轟に怒りをぶつけた。

 夜嵐は幼い頃エンデヴァーにサインを求めたところ『邪魔だ』と冷たく一蹴され、それを機にエンデヴァーに嫌悪感を抱くようになったが、エンデヴァーの息子であろうと轟となら仲良くなれると思っていた頃もあった。

 だが、推薦入試の時に当時エンデヴァーを見返す事しか頭になかった轟に冷たい態度を取られ、轟にもエンデヴァーに向けている嫌悪感を轟にも向けるようになったのだ。

 すると、夜嵐に対して轟が苛立ちを露わにする。

 

「俺は親父じゃねえ…! お前、さっきから何がしたいんだ」

 

 二人が言い争いをしていると、ギャングオルカが呆れ返る。

 

(ヴィラン)を前に何をしているのやら…」

 

「俺はあんたら親子のヒーローだけはどーにも認めらんないんスよぉ━━━! 以上!!」

 

 二人は、それぞれの怒りを露わにしながら同時に攻撃を放った。

 だが、再び二人の攻撃が邪魔をし合って轟の炎がギャングオルカに脳を揺らされ地面に臥した真堂の方へとズレる。

 

 

 

 ダンッ

 

「!?」

 

 次の瞬間、緑谷が真堂を抱えて飛び出した。

 緑谷は、喧嘩をしている二人に向かって叫んだ。

 

「何を、してんだよ!!」

 

 

 

 

 




ごめんなさいカイリくんがひーちゃんを嫌いな理由をこの回で語るつもりだったんですけど、書ききれませんでした。
次の話で明らかになります。
そして次回はちょっとだけ新キャラのイナズマさんの素性が明らかになります。

もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます

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