「また100点! さすがだ浬、俺達の自慢の息子だ!」
「まあカイリ、もう変身できるようになったの? すごいじゃない! お父さんもきっと喜ぶわよ!」
「カイリくんは将来絶対立派なヒーローになれるね! だってあのリントヴルムの息子さんなんでしょ?」
「甘ったれるな。お前ならこれくらい、できて当然だろう」
俺の父は、かつてはトップ5圏内に君臨していたプロヒーローだった。
俺が中3になる前に持病で引退してからは母さんの地元に家族全員で引っ越したけど、それまではオールマイトとエンデヴァーに続くNo.3ヒーローだった時期もあったくらいだ。
だけど俺は、『ヒーローの息子に生まれて良かった』だなんて思った事は一度もなかった。
俺の父と母は俺を偉大なヒーローにするのに必死で、物心ついた時から家庭教師や習い事に大金を注ぎ込んで、俺に英才教育を受けさせた。
ヒーローの息子だからって皆に過剰に期待されて、その期待に応えられなかったら失望される。
俺の周りには、下心丸出しで近づく奴か、俺の肩書きや実績に嫉妬して嫌がらせをしてくる奴しかしいなかった。
リントヴルムの息子だからって理由だけで
俺にとって、『ヒーローの息子』って肩書きは、俺を縛る足枷でしかなかった。
人の顔色を窺う生活のおかげで、要領だけは人一倍良くなった。
俺が他の奴等より少しできるように見えるのは、才能があるからじゃない。
ただ単にズル賢いからだ。
何をすれば相手を自分の都合のいいように動かせるか、そういうのは手に取るようにわかった。
俺に寄ってくるのは、俺の肩書きに釣られておこぼれをもらおうなんて考えるクズか、俺の実績に騙されてホイホイついてくるバカだけだった。
俺自身は、人間的魅力だとか、正義感だとか、ヒーローになる為に必要なものは何一つ持ってない。
俺も周りも、中身空っぽの凡夫だ。
だけど、あいつだけは違った。
「カイリくん! 放課後一緒に特訓しよ!」
ざわっぴは…あいつだけは、他の奴等とは違った。
短足のちっちゃい猫、マンチカンだっけ?
最初はアレみたいにちんちくりんな子がいるな、っていう印象しかなかった。
そんな奴が『ヒーローになりたい』なんてマジな顔で言うから面白くて、興味本位で話しかけた。
何というか、文武両道の優等生だけど、度が過ぎたお人好しだし、変なところで世間知らずだし、『あーこいつは放っといたらすぐいいように利用されるな』って思ってた。
このまま放置して悪い奴に騙されるのも可哀想だし、成り行きで友達になってやった。
ざわっぴと友達になってからは、新しい発見の連続だった。
普通は当たり前すぎてスルーするような事で感動して目を輝かせるから、ざわっぴと過ごすのは退屈しなかった。
俺がざわっぴを面白いと思ったのは、こいつはおこぼれが欲しくて近づいてるわけじゃなくて、本気で俺を超えようとしてるからだった。
この時は俺もざわっぴを友達だと思ってたし、ざわっぴの夢も応援してた。
だけどある時から、ざわっぴに対して心がざわつくようになった。
「おいブス澤! てめえカイリくんに気に入られてるからって調子に乗ってんじゃねえよ!」
「ブスのくせに一丁前に髪伸ばしやがって、あざといんだよてめえ!」
俺は、ざわっぴの長くて綺麗な髪が好きだった。
でもブス達が、ざわっぴに嫉妬して暴言を吐いてきた。
ざわっぴは、それを間に受けて落ち込んでいた。
「僕ってロングヘア似合わないのかな。パパは僕の髪綺麗だって褒めてくれたんだけどなぁ」
下校中、ざわっぴがクラスのブス共に言われた事を落ち込んだ様子で打ち明けてくれた。
ざわっぴは、俺と仲がいいからってクラスの女子からやっかみを受ける事があった。
俺は、ざわっぴがいいようにやられてるのが納得いかなくて、ハッキリざわっぴに言ってやった。
「いやそれどうせ嫉妬だから。嫉妬ブスの遠吠えなんか気にしない気にしない」
「それ女の子の前で絶対言っちゃダメだよ…?」
「先に言ってきたのはあいつらだろ。ざわっぴも怒れば良かったのに」
「…良いんだよ、事実だし。嫌われるのは…慣れてるから。僕なんか、カイリくんの友達に似つかわしくないって…皆思ってる」
ざわっぴは、自分の髪をいじりながら俯いた。
俺は、ざわっぴが自分を卑下する度心がざわついた。
俺は、心がざわつくのを何とかしたくて、その場の空気を誤魔化す為に冗談を言った。
「じゃあいっそ友達やめて付き合うか? なーんつって」
冗談のつもりだった。
だけどざわっぴは、笑顔で言った。
「ありがとう。冗談でも嬉しいよ」
その笑顔を見ると、また心の中で棘が引っかかった。
そんな時、ドブ川で子供が溺れているのを見つけた。
「子供が溺れてるぞ!」
「ヒーローはまだか!?」
「おい、誰か助けろよ!!」
「無理だって! パニクって“個性”暴走させてるし!」
通行人達は、子供がパニックになって“個性”を暴走させているせいで助けに行けず、ヒーローの助けを待つ事しかできなかった。
俺の“個性”なら、子供を助け出す事はできた。
だけどこの時期に“個性”を無断使用してヒーローの邪魔をしたりなんかしたら、内申点に響く。
そうじゃなくても、あんな汚い濁流の中にわざわざ飛び込んで助けに行くなんて正気じゃない。
俺にできる事といえば、すぐにヒーローに通報して助けを待つ事だけだ。
俺は、この期に及んでも自分の事しか考えていない自分が恥ずかしかった。
でも俺が足を止めたその瞬間、ざわっぴは信じられない行動に出た。
ざわっぴは、何の躊躇いもなく自分の髪をバッサリ切って制服を脱ぐと、髪と制服で命綱を作って橋から飛び降り、躊躇なくドブ川の中に飛び込んだ。
そのまま『声』で子供の“個性”を消して、川の中を泳ぎながら子供を抱き寄せて助け出した。
「大丈夫、もう大丈夫だよ!」
「うわぁあああああああん!!」
ざわっぴは、汚物まみれになりながらも笑顔で子供の背中を撫でて落ち着かせた。
俺は、その一部始終をただ黙って見ている事しかできなかった。
その後ヒーローが駆けつけ、ざわっぴはヒーローの仕事を邪魔したとして説教を喰らった。
「すごい怒られた…まあそうだよね、冷静に考えたら業務妨害だもん」
「全くだよ。自分の髪命綱にしてドブ川に飛び込むとかバッカじゃねえの?」
「う…」
俺が小突くと、ざわっぴは小さく縮こまった。
どうやらやっと自分のしでかした事の大きさに気づいたらしい。
「でも、助けられて良かった!」
俺はざわっぴの表情を見て、鳥肌が立った。
あれだけ身体を張っておいて、ざわっぴは普通に笑顔を浮かべていた。
怖かったんだ。
ざわっぴはお人好しだから、誰かが困ってたら迷わず危険に飛び込んじまう。
ヒーローになるって事は、誰かを助ける為に傷ついたり、死んじまったりするリスクが付き纏うって事だ。
俺は、誰よりも気のいいあいつがいなくなるの
何でかはわかんねえけど、俺にとって、あいつは何よりも大事だったんだ。
俺はずっと、あいつの夢を応援してきた。
きっとあいつみたいな奴が、本当にヒーローになるべきなんだと思う。
だけど心のどこかで、だからこそヒーローになってほしくないと思ってた。
俺は、ざわっぴが笑顔で話しかけてくる度に、そんな本性が見透かされるんじゃないかって怖くなって、あいつを遠ざけるようになった。
そしてある日、俺はざわっぴと友達をやめた。
中2の秋、生徒会長を決める選挙が学校で行われて、ウチのクラスは俺とざわっぴが立候補した。
正直、他の奴等は敵じゃないと思ってた。
唯一俺の脅威になるとしたら、ざわっぴ以外あり得なかった。
俺は、
俺の事が気に食わない奴やざわっぴの親衛隊を勝手に作ってる
だけどあいつは、たったの一週間で俺との票差を一票差まで縮めてきた。
1年の時にいじめられてるところをざわっぴに助けられた奴が、ざわっぴの選挙活動を全面的に支援したおかげだった。
あいつが他が為を思って起こした行動が、校内の半分近い生徒の心を突き動かした。
『負けた』と思った。
だからこそ俺は、投票締め切りの数秒前、自分の票をざわっぴに移した。
その結果、あいつは一票差で俺に勝った。
悔しかったけど、後悔はしてなかった。
俺は、晴れて生徒会長に当選したあいつを素直に祝福する事にした。
「よぉざわっぴ。当選おめでと」
「ありがとうカイリくん! 僕、頑張るね!」
俺が声をかけると、ざわっぴはパァッと笑顔を浮かべた。
その笑顔を見て、俺は自分の判断は間違ってなかったと確信した。
でも、その時だった。
「それにしても、僕が会長でいいのかなぁ。立候補しといて何だけど、僕はてっきりカイリくんが当選するものだと思ってたから…」
「何で?」
「だってそうでしょ? カイリくんは首席だし、皆の人気者だもん! 僕、カイリくんみたいになりたいってずっと思ってたんだよ! 君みたいな、“皆から頼られるくらい強い人”にさ!」
その言葉が、俺を刺した。
俺は、弱い。
自分が怖いからって、人の夢を否定して、自分を強く見せる事しかできない。
俺の本性を見透かされた気がして、いてもたってもいられなくなった。
「君は、誰よりもヒーローに───……」
「……だから何? 俺に勝ったからって、マウント取りたいわけ?」
「…え?」
「才能ある奴ってさ、すぐそうやって人の事見下すよな。自分基準で世界が動いてるとでも思ってんのかね。俺が『皆から頼られる強い人』だって? そりゃ皮肉か? ええ、おい!」
「ち、違うよカイリくん…! 僕は、本当にカイリくんに憧れてて…大体、才能ならカイリくんの方がずっと…」
その言葉を聞いた瞬間、俺はカッとなってざわっぴの頬を引っ叩いた。
俺は、自分だけが心の傷を抉られたのが耐えられなくて、ざわっぴの一番触れられたくないところを抉った。
「いい加減にしろよお前。人の神経逆撫でするから
俺が言うと、ざわっぴは何も言い返せなくなった。
ただの八つ当たりだ。
俺は、自分にない強さを持つこいつを守った気になってた自分が惨めで仕方なかったんだ。
結局俺も、あいつを拒絶して苦しめた馬鹿共と何も変わらない。
その日から俺は、あいつと一言も話さなくなった。
あいつは俺に何か言いたそうにしてたけど、あえて気付かないふりをした。
俺は、ざわっぴに合わせる顔がないって理由で雄英を志望校から外して、雄英と遜色ない士傑を受験する事に決めた。
そして春休み、親父が持病こじらせて現役を引退して、それを機に母さんの故郷の兵庫に引っ越す事になった。
最寄りから士傑に通いやすかったのと、自然が多くて親父の療養にちょうどよかったから、じいちゃんとばあちゃん、それから俺達家族の5人で母さんの実家に住む事が決まった。
結局俺は、ざわっぴに謝れずに引っ越し、それから一度も連絡は取り合っていない。
後から聞いた話だと、ざわっぴは雄英の入試に首席合格したそうだ。
体育祭で無双してたざわっぴを見て、もうあいつには一生勝てないかもしれないと思った。
実際そうだった。
一次試験の時、あいつに決闘を申し込んだ。
試験に落ちれば、ヒーローになるのを諦めてくれると思ったんだ。
だけど蓋を開けてみりゃ、実力の差は歴然だった。
俺は、もしあいつが最初から本気で俺を潰しにかかってたら負けてた。
あいつが本気を出さなかったのは、俺を敵とすら認識していなかったから。
あいつ、俺なんかには全然本気じゃなかったんだ。
仮免の二次、俺は“個性”を駆使して要救助者役を助けていた。
何でも、どれだけ正しい行動を取れるかどうかを採点してるらしい。
正直しんどかった。
こういうのは、俺みたいなクズじゃなくて本当に向いてる奴の仕事だと思う。
助けられる側だって、俺なんかが助けるより本当にヒーローになるべき人に助けられた方が喜ぶに決まってる。
もちろん、救助がヒーローにとって大事な仕事だっていうのはわかってはいた。
だけど俺が助けたって、所詮は偽善でしかない。
(はー、しんど。プロになったらこんな事しなきゃいけないんだな。俺はとにかく強い
最低な本音だと思う。
でも事実だ。
人の命を救うだなんて大それた事、俺には荷が重すぎる。
そんな事を考えていた時、
チャンスだと思った。
「はい来た、こういうのを待ってたんだよ」
「待ってカイリくん! カイリくんの“個性”じゃイナズマと相性が悪すぎる! 僕に考えがあるんだ! ここは一旦協力して…」
何で。
何でお前はそうやってすぐ危険に飛び込もうとするんだよ。
これじゃ、俺がやってきた事が何の意味もなくなっちまうだろうが。
「うるせぇな。手柄奪いに来る暇があんならてめえは
「手柄とかそういうんじゃなくて、君一人でイナズマに挑むなんて無茶だって言ってるんだよ! これ以上の被害を抑える為にも、今は協力しないと! わかるだろ!?」
「嫌だね! 誰がてめえとなんか協力するかよ! 一次試験で抜け駆けした事、忘れたとは言わせねえぞ!」
「なっ…それは君が喧嘩売ってきたからだろ!? カイリくん、本当に試験に受かる気あんの!? やる気無いなら、受かりに来てる人の邪魔をするな!!」
本当にその通りだ。
受かる為に頑張ってるざわっぴの邪魔をして、自分でも自分が嫌になってくる。
だけどここまで来たら、もう引き返せなかった。
「邪魔はてめーだろうが! 悉く俺の神経逆撫でしやがって、そんなに俺を馬鹿にしてえのか!? ええ、おい!?」
「何でそうなるんだよ! 僕はただ協力しようって言ってるだけじゃんか! そうやって捻くれた捉え方してたら、協力できるものもできないだろ!!」
「あー、うっぜ。お前がそういう事言うからもう完全に協力する気無くしたわ。どっか行けよ、邪魔だから」
「…っ!! じゃあもういい!! 勝手にしろ!!」
本当に、自分で自分が嫌になる。
本当はわかってるんだ。
ざわっぴが正しくて、俺が間違ってるって事くらい。
結局、何もかもが中途半端で、自分本位だ。
俺って結局、何がしたかったんだっけ。
◆◆◆
「助けに来たよ…! カイリくん!」
イナズマが石の飛んできた方を見ると、そこには息を切らしたひなたが立っていた。
イナズマは、コキコキと首を鳴らすとひなたの方に目を向ける。
「何や自分、尻尾巻いて逃げたんやなかったんかい」
「逃げる…? 冗談だろ!」
イナズマが首を鳴らすと、ひなたは構えの姿勢を取った。
するとイナズマは、それを宣戦布告と受け取ったのか、ニヤリと笑みを浮かべながら金棒を振りかぶる。
「友達助けに来た度胸は認めるわ。せやけどなぁ…うち相手に単騎で来るなんざアホの極みやろが!」
そう言ってイナズマは、電撃を纏って目に留まらぬ速度で飛び出すと、ひなた目掛けて金棒を振り落ろす。
だがひなたは、間一髪イナズマの攻撃を見切り、後ろに飛んで避けた。
イナズマが金棒を振り下ろすと、地面が放射状に割れる。
だがその直後、割れた地面がひっくり返り、イナズマが落とし穴に嵌まった。
「な!?」
ひなたの真下に落とし穴があるとは思わなかったのか、イナズマは目を見開いて驚く。
だがそれだけではなく、落とし穴に仕掛けられていた瀬呂のテープと峰田のボールがイナズマに絡まり、イナズマは完全に身動きが取れなくなった。
ひなたは、周囲の避難を促すと同時に、峰田と瀬呂がHUCを助ける為に“個性”を使って固定した瓦礫を拾ってきて、竜崎とイナズマが荒らした地面に落とし穴を掘って罠を仕掛けておいたのだ。
イナズマは、竜崎にばかり気を取られてひなたの動きが目に入っておらず、しかも竜崎との戦いで瓦礫が大量に転がっていたため、ひなたが作った落とし穴に気付かなかった。
「あなたがカイリくんに気を取られてくれたおかげで、作戦の準備が整いました。雷で攻撃してくるイナズマさんを声で仕留めに行くのは確実性が低い。だからこういう時はまず、動きを封じるのが定石!」
「なるほどなぁ…あのアホがアホやらかすんも計算のうちやったっちゅうわけか。自分よぉ考えたで。せやけどなぁ…」
イナズマは、落とし穴に嵌ったまま大量の電流を放出した。
するとイナズマを中心に雷鳴が轟き、周囲の瓦礫がイナズマを中心に渦巻く。
「
イナズマは、完全に
イナズマは、鬼のようなイメージと、まだデビューから2年目で事務所を持たずにフリーで活動している事から、支持率や経験値でトップヒーロー達に及ばずトップ10圏外ではあったが、単純な実力だけなら間違いなくトップ10に入る実力者だった。
完全に役にはまっているイナズマを見て、目良は頭を抱える。
「ああ出た…あの人の悪い癖だ…! あくまで救助演習だから、ある程度シナリオ通り動いたらやられた事にしていいって言ったのに…帰って寝たい…!」
目良は、イナズマの悪癖に頭を抱えていた。
イナズマは、後進の育成に熱心で、こういった仕事も二つ返事で引き受けるなど面倒見の良い事で有名だった。
しかし、熱心すぎて役にハマり過ぎてしまい、教材として役目も忘れてやり過ぎてしまうという悪癖で有名なヒーローでもあった。
「さあ、どう動く!? ヒヨッコ共ォ!!」
「マジかよ…ガチでバケモンじゃねえか…」
イナズマが
圧倒的な力の差を見せつけられ、もはや絶望的な状況だった。
だがそんな中、ひなたが竜崎に声をかけた。
「カイリくん、立てる?」
「ざわっぴ…」
「遅れてごめん。今さっき、救援を呼んできた。救援が来るまで僕が時間を稼ぐから、カイリくんは救護所に行って安全の確保を!」
「バカ、お前何で…!」
ひなたが竜崎に声をかけると、竜崎は目を見開いた。
何故先程悪態をついた相手を庇って
するとひなたは、ニコッと笑みを浮かべながら答える。
「わかんない! でもね、何だか僕ならやれそうな気がするんだ!」
ひなたがそう言ってイナズマに立ち向かおうとすると、竜崎は目を見開く。
この時、竜崎はひなたとの決定的な違いを思い知らされた。
竜崎は今まで、ヒーローが人助けをするのは、それが仕事だからだと思っていた。
だがひなたは、ヒーローを人助けの理由にする事すらしなかった。
ひなたは、自分がイナズマに挑んでも勝てない事はわかっていた。
それでもイナズマに挑もうとするのは、竜崎が独断でイナズマに挑んで重傷を負い、応援が来るまで自分一人で持ち堪えなければならなかったからだった。
竜崎は、自分のせいで敗色濃厚な勝負に出ようとしているひなたを見て、ようやく自分の犯した過ちがどれ程大きいものだったのかを思い知り、ひなたを遠ざけてきた自分を恥じた。
「ごめん!!!」
竜崎が謝罪の言葉を告げると、ひなたは足を止めて振り向く。
すると竜崎は、恥もプライドも捨ててひなたに向かって土下座をした。
「意地張って悪かった!! お前、何か考えがあったんだろ!? それ、今からでも遅くねえかな!?」
竜崎が謝ると、ひなたは僅かに目を見開く。
その直後、イナズマが電光を放って二人への攻撃準備をする。
「もぉ〜ええかぁ〜!?」
イナズマが電撃を放とうとすると、ひなたが竜崎に向かって叫ぶ。
「カイリくん、イナズマを覆うように水を作って!」
ひなたが指示を出すと、竜崎は巨大な水の球を作ってイナズマを飲み込んだ。
するとイナズマは、自分の身体に電流を流して自身を電磁石に変え、水を弾き飛ばそうとする。
(学ばんやっちゃなぁ〜…ウチに水は効かへん言うたやろが)
だがその瞬間、イナズマは水の中に手榴弾が漂っている事に気がつく。
「!!?」
(んのアホ…!! 殺す気か!!)
流石に手榴弾に怯んだイナズマは、息を呑む勢いで誤って水を飲みそうになる。
するとその直後、音響弾が炸裂し、爆音攻撃が放たれる。
爆音を喰らったイナズマは、“個性”を麻痺させられる。
するとその瞬間、ひなたは捕縛武器でイナズマを縛り付ける。
ひなたに捕らえられたイナズマは、フッと笑みを零す。
「…あーあ。負けてしもた」
◇◇◇
一方、喧嘩をしていた轟と夜嵐は、緑谷の一言で我に返る。
そして喧嘩をやめ、一時的に協力関係を結んだ。
轟と夜嵐は同時に炎と風を出し、ギャングオルカを炎の竜巻の中に閉じ込めた。
轟の炎が夜嵐の風を浮かせ夜嵐の風が轟の炎の威力を増幅させ、先程まで邪魔をし合っていた二人の“個性”が今度は互いに助け合っていた。
「熱と風の熱風牢獄か…良いアイディアだ…並の
ギャングオルカは、携帯していたペットボトルの水を自分にかけて身体を潤し力を増した。
そして、超音波で炎の竜巻をかき消す。
「で? 次は?」
すると今度は、緑谷が攻撃を仕掛ける。
だが…
ビ━━━━━━━━
『えー、只今を持ちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますが、これにて仮免試験全行程終了となります!!! 集計の後この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ…他の方々は着替えてしばし待機でお願いします』
◇◇◇
同時刻、イナズマを捕らえたひなた達はというと。
「終わった……」
仮免試験が終わったので、竜崎はホッとため息をつく。
一方ひなたは、イナズマの拘束を解きながら尋ねる。
「あの…イナズマさん」
「何や」
「最後の攻撃、僕はあなたが意図的に受けたように思えました。意図をお聞かせ願えますか?」
「意図も何も無いわボケ。うちらは拘束用プロテクターを付けられて思うように動けへん。そないな状況で手榴弾なんか投げられたらそらビビるやろ。自分ら、人にあないなモン向けるとかホンマイカレとんなぁ」
イナズマがため息をついて頭を掻きながら答えると、ひなたはクスリと笑い出す。
「…やっぱりイナズマさんって、ホント相澤先生に似てますよね。普段は厳しいけど、何だかんだで甘いところとか。流石は最初の教え子ってだけありますね」
「……フン。喧しいわボケ」
ひなたが笑いながら言うと、イナズマは照れ臭そうに髪を弄る。
実はイナズマは雄英のOGで、相澤が初めて担任を受け持った4年前の1ーAの生徒だった。
入学したての頃はクラスでも落ちこぼれの部類だったが、その成長性を見込まれて唯一最後まで一度も除籍されずに生き残り、高校卒業からたった1年半でNo.14にまで上り詰める程の豪傑へと変貌を遂げたのだ。
一方竜崎は、今まで酷い仕打ちをしてきたひなたに謝っていた。
竜崎は、誠意を込めてひなたに向かって深く頭を下げる。
「…
「………え」
竜崎が頭を下げて謝ると、ひなたは僅かに目を見開く。
ひなたにとって竜崎は憧れで、自分を心配していたなどと一度も考えた事がなかった。
「俺は、遠ざける事でお前を守った気になってた。…けど、俺の方がお前に助けられてばっかで、俺がお前を遠ざけようと必死になればなるほど、てめえの弱さを思い知るだけだった。俺は、お前の事が誰よりも大事で、俺にない強さを持ってるお前がどうしようもなく妬ましくて、お前の事だけはどうしても合格させたくなかったんだ。今更もう遅せえけど、試験邪魔してごめんな」
竜崎は、頭を下げてひなたに本心を全て打ち明け、自分のした事を謝罪した。
するとひなたは、笑顔を浮かべながら竜崎の頭を撫でる。
「カイリくん、本当の事話してくれてありがとね」
ひなたが竜崎の頭を撫でると、竜崎はゆっくりと顔を上げてひなたの顔を見た。
「僕、ずっとカイリくんに憧れてたんだ。本当だよ? 僕は、ずっと嫌われてきて、友達ができなくて、初めてできた大切な友達が君だったの。僕は、君に追いつくのに必死で、君が僕を心配してくれてるなんて考えた事もなかった。でも、雄英に入って、友達がいっぱいできて、今になって、やっと君の気持ちがわかった。今まで気付かなくてごめん」
ひなたは、竜崎の気持ちに気付けなかった事を、頭を下げて詫びた。
そして竜崎の手を取り、微笑みかけながら告げる。
「それとカイリくん、僕と、友達になってくれてありがとう」
ひなたが笑顔で伝えると、竜崎は僅かに目を見開く。
自分が散々邪魔してきた相手が伝えてきたのは、侮蔑でも説教でもなく、一緒に同じ時間を過ごした事への感謝だった。
自分がどれだけ親友に恵まれていたかを理解した竜崎は、思わず涙を流しそうになった。
竜崎が目を押さえると、ひなたは竜崎の顔を覗き込んだ。
「…カイリくん、もしかして泣いてる?」
「泣いてねえよ! 水が目に滲みただけだっての」
ひなたが尋ねると、竜崎は顔を逸らしながら強がった。
仲直りを果たした二人は、それぞれが着替える為に自分のクラスへ合流していった。
そして、時間が経ち合否の発表が始まる。
カイリファミリーとイナズマさんのプロフィール載せときますね。
名前:
性別:男
年齢:48歳
ヒーロー名:ドレイクヒーロー『リントヴルム』
“個性”名:『ドラゴン』
出身校:雄英高校ヒーロー科
身長:190cm
誕生日:6月18日(双子座)
血液型:O型
出身地:東京都
好きなもの:刺身
性格:親バカ
元ビルボードチャート3位のプロヒーローで、竜崎の父親。
リューキュウの歳の離れた従兄。
現在は持病の療養のためヒーロー業を退いているが、元は
竜崎には自分の跡を継がせる為に英才教育をしていたが、不器用さが災いして竜崎のコンプレックスの原因になっていた。
性別:女
年齢:49歳
“個性”名:『人魚』
身長:174cm
誕生日:8月6日(獅子座)
出身地:兵庫県
好きなもの:海
竜崎の母親。魚の特徴と海水を操る能力を持つ『人魚』の“個性”を持っている。
普段は大人しい淑女だが、一人息子を溺愛している教育ママで、息子に何かあろうものならヒステリーを起こして泣き喚くため、当の息子である竜崎のストレスの要因になっている。
名前:
性別:女
年齢:20歳
ヒーロー名:雷神ヒーロー『イナズマ』
所属:無所属
“個性”名:『蓄雷』
出身校:雄英高校ヒーロー科
身長:197cm
体重:98kg
誕生日:5月25日(双子座)
血液型:B型
出身地:大阪府
好きなもの:たい焼き、野球、酒類、子供
嫌いなもの:親父ギャグ、ニッキ餅
性格:意外と熱血
戦闘スタイル:オールラウンダー
ICV:白石涼子
HERO’ S STATUS
パワー:A
スピード:S
テクニック:A+
知力:B
協調性:A
ビルボードチャート14位のプロヒーロー。鬼のような風貌と豪快な態度が特徴的な巨女(異形型の“個性”持ちが多く存在する現代でも珍しがられる程の長身で、『八尺娘』と呼ばれている)。
ミルコ同様事務所を構えずフリーで活動している(本人曰く『部下を束ねて仕事をするのが性に合わないから』。後輩への教育にはむしろ熱心な方)。高校卒業からたった1年半で14位まで上り詰めた天才。
実は相澤が初めて担任を受け持った4年前の1ーAに在籍しており、唯一卒業まで一度も除籍されずに生き残っている。
“個性”と言動のせいか鬼教官のイメージが強いが、実は意外と熱血で面倒見がいい。
ちなみに二つ下の妹は現在3年B組に在籍している。
◯容姿
稲妻マークを模した癖っ毛の金髪ポニーテール。
目はキリッとした碧眼。
頭から角のような外骨格が生えており、八重歯が特徴的。
ちなみに頭の角は雷を溜め込む為の器官らしく、半径10km以内に落ちた雷を全て引き寄せて吸収する効果がある。
抜群のプロポーションだが、骨太で、鍛えているためガッシリとした体格。
◯コスチューム
・白地に緑と橙の模様の着物
・紺の袴
・サラシ
・しめ縄と紙垂
・緑の肩巾
・下駄
といった、いかにも雷神を思わせる和風のコスチュームを着用。
それに加えて、雷神をイメージしたサポートアイテムを着用。
・雷鼓
電気を体内に溜め込む為の大容量バッテリーが内蔵されており、背中の雷鼓を叩く事で雷華の体内に直接充電される。
ただし“個性”の性質上体内の電気を使い果たすケースはほとんど無いため、緊急時以外はただの飾りと言っても差し支えない。
・カフス
両手足に着用。チェーンが内蔵されており、微弱な電流を流して操る事で捕縛武器として使う事が可能。
・金棒
“個性”で砂鉄を固めて作った武器。中は空洞なので軽量だが、本人の技量により極めて高い破壊力を持たせる事が可能。本人曰くイメージ重視で金棒の形にしているとの事だが、砂鉄に戻して別の形状の武器を生成する事も可能。
◯“個性”
『蓄雷』
電気を無尽蔵に溜め込み操る“個性”。
出力の最大電圧は10億ボルト、最大電流は50万アンペアと、天災レベルの電力を扱える電気系の“個性”は世界的に見ても珍しく、ほぼほぼ上鳴電気の上位互換。
威力はさる事ながら汎用性も高く、本人の努力とセンスにより生物電気に干渉したり磁力を支配して即席の武器を作ったりと幅広く活用できている。
自分の意思とは関係なく常に周囲から電気を吸収する常時発動型の“個性”であるため、電気系の攻撃は全て強制的に無効化される。電気系“個性”にとってはイレイザーヘッドやひなた以上の天敵。
ただし自分で電力を作り出す事はできないため、一度電力を使い果たすと“無個性”状態になってしまう。
また、溜め込む事自体は無尽蔵に出来ても、一度に放出できる許容量を超えると身体に大ダメージを負うため、あらかじめ大量放電に耐えられる身体を作っておく必要がある。
もっとひーひーカップルのイチャイチャを書いてほしいとのお声を頂いたので、R18バージョンの執筆を検討しております。R18バージョンいる?いる派が過半数なら書きます
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要る
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要らない