雄英高校の二日目。
午前は必修科目、英語等の至って普通の授業だった。
ひなたも、遠視の矯正用の眼鏡をかけて授業を受けていた。
『んじゃ次の英文のうち間違っているのは? おらエヴィバディヘンズアップ! 盛り上がれ━━!!!』
(((普通だ…)))
(クソつまんね)
プレゼントマイクの英語の授業に関しては一部を除いてほとんど全員が同じ感想だった。
だがひなたは、プレゼントマイクの授業というだけで楽しいのか一人だけノリノリだった。
「はい!」
『お、元気がいいな! んじゃ相澤!』
「関係詞の位置が違うから4番!」
『
ひなたが元気良く手を挙げると、プレゼントマイクがひなたを当てたのでひなたはハキハキ答えた。
見た目が完全に小学生なので想像しにくいが、ひなたは入試の筆記試験を上位10位以内に入る成績で合格しており、勉強頭がかなり良かったので雄英の授業にもついていけていた。
◇◇◇
そして昼食の時間になると、ひなたは食堂に行った。
雄英高校にある大食堂では、一流の料理を安価で頂ける。
クックヒーロー『ランチラッシュ』を始めとする一流の料理人達が調理しているのだ。
ひなたは、食堂のメニュー表を見て口の端から涎を垂らし幸せそうな表情を浮かべていた。
「うわぁ、ホントに色々あるんだねぇ。カツ丼にカレーにラーメンに蕎麦……どれにしようか迷うなー……あ、ビーフシチューもあるんだ!」
「……なぁひなた、頼むから早く決めてくれ。後ろつかえてるから」
「え?」
ひなたがメニュー表を見て目を輝かせていると、心操が言いづらそうにひなたを急かす。
ふと後ろを見ると他のクラスの生徒達や上級生達がズラリと並んでおり、『早くしろ』『いつまで待たせんだ』などと急かす声が聞こえてきた。
「わっ、ご、ごめんなさい! 今注文します!」
後ろに並んでいた生徒達に苛立った目を向けられたひなたは、慌てて注文をする。
ひなたが注文したのは、
・豚骨ラーメン(ヤサイアブラマシマシチャーシュートッピング)10人前
・ネギ塩カルビチャーハン大盛り 10人前
・ジャンボ揚げ餃子(チーズ入り) 10人前
・若鶏の中華ソースがけ 5人前
・レバニラ炒め 5人前
・マンゴープリンのヨーグルトパフェ 10人前
だった。
「ふー、頼んだ頼んだ!」
「……それ、全部食うの?」
「うん、そうだよ! 僕、“個性”使う時にエネルギー消費するからすぐお腹空いちゃうんだ。カラオケとか思いっきり歌うと疲れるでしょ? それと一緒。だから毎日高カロリー高タンパクの食事が欠かせなくてさぁ」
「女子でそっちの意味でカロリー気にする奴初めて見たんだけど」
ひなたがしょぼくれながら言うと、心操がツッコミを入れる。
ひなたは“個性”を使う際に膨大な量のエネルギーを消費するため、疲労を回復させる為に膨大なエネルギーを摂取する必要があるのだ。
それに加えて、ひなたは常人より基礎代謝が高いため、何もしていなくても勝手にエネルギーが消費されてしまう体質だった。
その為必然的に大量の食事を摂る必要があり、単純計算で成人男性の5倍以上のカロリーを摂取しなければならず、その分ひなたは小柄な見た目からは想像もできない程大食らいとなってしまったのだ。
ひなたの後ろにはギャラリーができており、中には写真撮影する者もいた。
あり得ない量の食事を頼んだひなたは、何と心操と同じくらいの時間で料理全てを食べ切った。
「ふぃー、食った食った! やっぱランチラッシュの食事は美味しいね!」
満足げに腹を摩るひなたの横では、何とも言えない表情で心操が立っていた。
するとひなたは、何かを思いついたかのようにポンッと掌を打つ。
「あ、そうだ。デザートに飴食べよっと」
「いやデザートさっき食ったろ」
「そうなんだけどさ、おやつにはこれ食べないと落ち着かないんだ〜」
そう言ってひなたは、スカートのポケットから黒いチェック柄の箱を取り出し、その中から黒い菱形の物体を出した。
それを見た心操は、思わず顔を引き攣らせて指を差す。
「……おい。ちょっと待て。それサルミアッキだろ」
「うん、サルミアッキ! 美味しいよ!」
ひなたが平然と答えながらサルミアッキを美味しそうに食べると、心操はひなたに『訳がわからない』といった様子の表情を向ける。
それもそのはずで、目の前で『世界一まずい飴』と言われるそれを幸せそうな表情で食べているのだ。
理解などできるわけがなかった、否、したくないというのが心操の感想だった。
心操は、昨日のひなたの上鳴との会話を思い出し、『そういえば好物って言ってたっけ』と思いながら頭痛を起こしていた。
実は、ひなたがこうなった原因は父親である相澤にあった。
彼がひなたに『旨い飴』と言ってサルミアッキを勧めたところ、味覚まで遺伝してしまったのかひなたもその独特の味にハマってしまったのだ。
「ひー君も良かったら「遠慮しとく」えっ」
ひなたがサルミアッキを心操に勧めると、心操は食い気味に断った。
◇◇◇
そして午後の『ヒーロー基礎学』。
「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」
HAHAHAHAと特徴的な笑い声を響かせながらオールマイトが教室に入ってきた。
トップヒーローが普通に教室に入ってきているのを見て、ひなたも含めてA組は興奮のあまり震え上がっていた。
「オールマイトだ…!! すげぇや本当に先生やってるんだな…!!!」
「
「わー! やっぱ生は映像と全然違うね!」
ひなたもオールマイトの登場に胸が熱くなっており、興奮のあまり触角がピコピコ動いていた。
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ! 単位数も最も多いぞ! 早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!!」
オールマイトは、BATTLEと書かれたカードを生徒達に見せた。
「戦闘…」
「…訓練…!」
戦闘向きの“個性”の者達はやる気を出した。
それはひなたも例外ではなく、両拳を胸の前で握りしめてふんっと鼻を鳴らしていた。
そして、壁からはケースが入った棚が現れる。
「そしてそいつに伴って…こちら!!! 入学前に送って貰った『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた…『
「おおお!!!!」
中学まででは考えられなかったハイテクな棚に、そしてその中に入っている自分達のコスチュームにA組は興奮のあまり声を上げていた。
「着替えたら順次、グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はーい!!!」」」
オールマイトが指示を出すと、A組は一斉に返事をした。
ひなたは、01と書かれたケースを持って更衣室に向かいコスチュームに着替えた。
◇◇◇
ひなたは、女子更衣室で自分のコスチュームの調子を確認する。
ひなたのコスチュームは父親二人をリスペクトし黒を基調としたコスチュームとなっており、相澤同様捕縛武器とゴーグルを着用していた。
ノースリーブの黒いワンピースに白いホットパンツ、二の腕あたりから手首までを覆う袖、レッグガーター付きのニーハイといった格好をしており、武器の他にもゴーグル付きヘッドホンやポーチといった小道具を身につけていた。
ワンピースは前面に金のボタンがついた、軍服モチーフのアイドル衣装のようなデザインで、裾の部分に五線譜が描かれているのが特徴だ。
素肌の上にはベージュ色の極薄ハイネックインナーを着ており、背が低いのを気にしているのか爪先と踵の部分が特殊合金でできた厚底ブーツを履いていた。
「ひなたちゃんカッコいいねぇ! 私なんて要望ちゃんと書かんかったからパツパツスーツんなってもうた……」
SF風のヘルメットとパツパツスーツを身につけた麗日が、ひなたに声をかける。
要望をちゃんと書かなかったので勝手にパツパツスーツにされてしまったらしく、麗日は若干恥ずかしそうにしていた。
「えへへー、ありがと! お茶子っちのコスチュームも可愛いよ」
「ありがとう!」
ひなたがふにゃりと笑顔を浮かべて麗日のコスチュームを褒めると、麗日もまた満面の笑みを浮かべた。
すると、蛙吹がひなたに話しかける。
「ひなたちゃんのコスチュームはもしかして相澤先生を意識してるのかしら?」
「お! 気付いてくれました!? そうなの! 同じサポート会社に作ってもらったんだよね」
蛙吹が言うと、ひなたは上機嫌で触角をピコピコさせる。
ひなたのコスチュームは、親子という事で相澤の時と同じサポート会社に製作してもらったのだ。
「それはそうと、梅雨ちゃんのコスチュームは蛙なんだね」
「ケロ、“個性”が蛙だからね」
蛙吹のコスチュームは全体的に蛙を意識したスーツとなっており、蛙の目をモチーフにしたと思われるゴーグルと蛙の足のような形状のブーツが特徴的だった。
「みなっちはダンサーみたいだねぇ」
「カッコいいでしょーが!」
芦戸のコスチュームは、水色と紫の斑模様のコンビネゾンにファー付きのベストといったダンサーのようなコスチュームだった。
「きょーちんはロッキンガールだ!」
「やめてよ恥ずかしい……」
耳郎のコスチュームは、革ジャンにロングTシャツといったパンク系のコスチュームで、頬にメイクを施していた。
ひなたが耳郎のコスチュームを見てキャイキャイはしゃいでいると、耳郎は恥ずかしそうにしていた。
「ヤオモ……わぁ!?」
「発育の暴力……!」
ひなたと耳郎は、八百万の大胆なコスチュームに思わず目を見開く。
八百万は胸元から臍回りにかけて大きく露出したレオタードを着ており、ひなたとは対照的に発育のいい身体が惜しげもなく曝け出されていた。
「これは手直しされたものですわ。“個性”の性質上肌を露出したコスチュームの方が都合がいいのですが、“コスチュームの露出における規定法案”に引っかかってしまいましたの」
ひなたは、『じゃあ要望の時はもっと過激なコスチュームだったんかい』と心の中でツッコミを入れる。
そしてふと耳郎の方を見ると八百万のスタイル抜群の身体を羨ましそうに見ていたので、仲間意識が芽生えたひなたはきゅっと耳郎の手を握る。
「同志……」
ひなたがそう呟いて耳郎の手を握ると、耳郎もまた仲間意識が芽生えたのかひなたの手を握り返す。
「でも似合ってるよヤオモモー」
葉隠の声がする方を振り向くと、手袋とブーツが宙に浮いていた。
それを見たひなたは、思わず目を丸くしてギョッとする。
葉隠は、手袋とブーツ以外の衣類を一切纏っていなかったのだ。
透明人間の彼女にとっては何も着ないというのは最善の選択だったが、それ以前に女子としては問題だらけの選択だった。
「うわあああああ!!?」
「えっ、何ひなたちゃんどうしたの!?」
「とおるん前隠して!! 見えてるから!!」
「えっ嘘!?」
ひなたが顔を真っ赤にして目を瞑りながら言うと、葉隠が動揺する。
二人の反応を見た他の女子達は、もしやと思い葉隠の方を見る。
「えっ……まさか葉隠、今全裸……!?」
「そうだけど……っていうかひなたちゃん見えてたの!?」
「僕、“個性”の関係でシルエット見えちゃうんだよ! 授業終わったらコスチューム作ってもらって! 髪とか爪とかでコスチューム作れば透明なコスチューム作れるから!」
「わ、わかった、そうする!」
ひなたが顔をトマトのように真っ赤にして言うと、葉隠は勢いよく頷いた。
◇◇◇
着替えが終わった女子達は、グラウンド・βに出た。
すると、同じタイミングで男子も出てくる。
「始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」
オールマイトの掛け声と共に、全員がグラウンドに集合した。
麗日は、頭から二本の触角のようなものが生えた緑色のコスチュームを着た緑谷に声をかける。
「あ、デクくん!? カッコいいね!! 地に足ついた感じ!」
「麗日さ…うおお…!!」
緑谷は、男子高校生には目の毒な麗日のパツパツのコスチュームを見て思わずしどろもどろになってしまう。
「要望ちゃんと書けば良かったよ…パツパツスーツんなった。恥ずかしい…」
麗日と緑谷が話していると、目から上をマスクで覆い黄色いマントと白いオムツのようなものを身につけた峰田が緑谷の方へ寄ってきた。
「ヒーロー科最高」
「ええ!?」
麗日のパツパツスーツやひなたの生脚を見た峰田がキリッと笑いながらサムズアップをし緑谷が困惑している様子を、麗日が頭上にクエスチョンマークを浮かべながら見ていた。
ひなたは、キョロキョロして男子のコスチュームを見て周っていた。
すると途中で相澤やひなたと同じ黒を基調としたコスチュームを着た心操を見つけ、手を振って近づいていく。
「あ、ひー君! アサシンって感じだ!」
「いや……俺一応アサシンじゃなくてヒーローなんだけど……」
「あ、ごめん! でもさ! カッコいいよ!!」
ひなたが率直な感想を述べると、遠回しに『
するとそれをすぐに察したひなたは、咄嗟に口に手を当てて謝った。
ひなたに悪気は全くなく普通に褒めたつもりだったのだが、言葉選びが良くなかったと思いひなたは言葉には気をつけようと自分に言い聞かせる。
「良いじゃないか皆!! カッコいいぜ!!」
オールマイトが皆に向けてそう言う。
「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
フルフェイスヘルメットを被った飯田がガシャンと音を立てながら手を挙げた。
飯田は中世騎士のようにプレートアーマーを着用しており、一見誰だかわからないという感想をほとんど全員に抱かせた。
「いいや! もう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練さ!! 敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪
オールマイトが説明すると、蛙吹が質問する。
「基礎訓練も無しに?」
「その基礎を知る為の実践さ! ただし今度は、ブッ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」
「分かれるとはどの様な分かれ方をすればよろしいですか!」
「一人余るんですけどそれはどうすれば……?」
「このマントヤバくない?」
「んんん〜〜聖徳太子ィィ!!!」
八百万、爆豪、麗日、飯田、ひなたがそれぞれほぼ同時に質問をし、青山は一人だけ関係ない事を言っていた。
オールマイトが困惑すると、ひなたは『しまった』と思い口を手で塞いだ。
するとオールマイトはどこからかカンペを取り出してそれを読み始め、ひなたは思わず『可愛い』と思って頬を緩めた。
「いいかい!? 状況設定は
(設定がアメリカン…!!)
オールマイトがルールを説明すると、ひなたも含めて全員が心の中でそう呟いた。
「コンビ及び対戦相手はクジだ! そんでもって、このクラスは21人だからどこかのチームは3人になるな! ただし、3人チームでも2人捕まればアウトだ!」
「適当なのですか!?」
「それに1チームだけ3人って! そんなのズルいやオールマイト!」
オールマイトが説明すると、飯田がツッコミを入れ芦戸も不満を漏らす。
すると緑谷がいきなり分析を始める。
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事が多いしそういう事じゃないかな…それに、常にヒーローと敵が同じ数ってわけじゃないし」
「それにさ。3人チームでも、2人捕まればアウトなんでしょ? だったら2人だろうと3人だろうと条件はそんなに変わんないよ。数が多いチームは単純に数で言えば有利だけど、お互いの“個性”とか得意不得意とかをちゃんと把握して連携とるのって人数が増えれば増えるほど難しくなるんだよ」
緑谷に続けてひなたも言うと、3人チームが出てくる事に不満を抱いていた生徒達も納得する。
ひなたの言う通り、人数が多いチームは数でゴリ押しできるというメリットがあったが、反面互いの得意不得意を把握して連携を取るのが難しくなるというデメリットもある。
それを考えれば、1チームだけ3人になるというのはそこまで不公平な分け方ではなかった。
すると、自分が余計な事で口を挟んでしまったと思った飯田はオールマイトに謝る。
「そうか…! 先を見据えた計らい…失礼致しました!!」
「いいよ!! 早くやろ!!!」
「うわぁヤケクソ」
飯田が頭を直角に下げるとオールマイトが半ば強引に切り上げ、ひなたは苦笑いを浮かべながらツッコミを入れた。
◇◇◇
全員のくじ引きが終わりチームが決まる。
Aチーム:麗日お茶子&緑谷出久
Bチーム:障子目蔵&轟焦凍
Cチーム:峰田実&八百万百
Dチーム:飯田天哉&爆豪勝己
Eチーム:青山優雅&芦戸三奈&心操人使
Fチーム:尾白猿夫&砂藤力道
Gチーム:上鳴電気&耳郎響香
Hチーム:蛙吹梅雨&常闇踏陰
Iチーム:相澤ひなた&葉隠透
Jチーム:切島鋭児郎&瀬呂範太
「えっと、Iチームは……」
「ひなたちゃん! 私もIチームだよ!」
「え、やった! 一緒に頑張ろうね、とおるん!」
葉隠と同じチームになったひなたは、一緒にキャイキャイとはしゃいでいた。
一方、青山や芦戸と同じチームになった心操はというと。
「心操だっけ? 私芦戸三奈! よろしくー!」
「ああ、うん。よろしく」
「ねぇこのマントヤバくない?」
「よっしゃあ勝つぞー!」
(大丈夫かなこれ)
とにかく底抜けに明るい芦戸と、試合と全く関係ない自慢ばかりしてくる青山を見て、心操は若干不安そうにしていた。
「続いて最初の対戦相手は、こいつらだ!!!」
続いてオールマイトは、色違いの箱からボールを一個ずつ取り出した。
「Aコンビが『ヒーロー』!! Dコンビが『
最初に戦う事になったのは、麗日&緑谷コンビと飯田&爆豪コンビだった。
「わぁ、トップバッターかよかっちゃん」
「かっちゃん言うな殺すぞ」
ひなたが爆豪に声をかけると、爆豪がひなたに対して凄む。
「
訓練が始まる前に、オールマイトが4人に指示を出した。
他の17人は地下のモニタールームで4人の戦いを観戦する事になった。
こうして、屋内対人戦闘訓練が始まった。
◇◇◇
ヒーローチームの麗日&緑谷コンビと
他の17人は、地下のモニタールームでオールマイトと一緒に4人の様子を観察していた。
「さぁ、君達も考えて見るんだぞ!!」
モニターには、窓から潜入するヒーローチームの姿が映っていた。
すると、いきなり動きがあった。
爆豪がいきなり死角から飛び出してきた。
「いきなり奇襲!!!」
爆豪が現れた瞬間、峰田は驚きのあまり声を上げる。
するとその次の瞬間、爆豪はいきなり二人に爆破を浴びせてきた。
緑谷は麗日を庇い、オールマイトを模したマスクが破れて顔の左半分が露わになる。
爆破が掠った緑谷は、自分より先に麗日を心配する。
麗日は咄嗟の事で腰を抜かしていたが、コクリと頷いて返事をする。
すると爆豪が崩れた壁の瓦礫を押し退けながらゆっくりと立ち上がる。
爆豪が緑谷を睨んで凄むと、緑谷も立ち上がって爆豪を見据える。
「爆豪ズッケェ!! 奇襲なんて男らしくねぇ!!」
「いや奇襲自体は普通だよ。戦闘っていうのはいかに早く相手から行動の選択肢を奪うかだってお父さん達も言ってたし。それは
切島が叫ぶと、ひなたがツッコミを入れる。
ひなたの言う通り、互いに命懸けの戦闘において相手を倒す為に手を打つのは当然の事で、本番では『卑怯』などという言葉は存在しない。
それを考えれば、爆豪の行動は
すると、オールマイトもひなたに同意し補足する。
「相澤少女の言う通り、奇襲も戦略! 彼らは今実戦の最中なんだぜ!」
「緑くん、よく避けれたな!」
(ただなぁ……奇襲自体は良かったんだけど、チームワークが全然ダメ。映像見てる限り、天ちゃんはこの事把握してないみたいだし。つまり今のは、多分だけど別に作戦とかじゃなくて私怨による独断行動。こんなんお父さんが見たら即ブチ切れだよ)
オールマイトが言うと、芦戸はウキウキしながら緑谷を誉めた。
爆豪は、さらに緑谷を爆破しようとする。
すると次の瞬間、緑谷に右腕を掴まれ爆豪の動きが一瞬鈍る。
それを見た麗日は、緑谷に対して感心の声を上げる。
その隙を逃さず緑谷はそのまま背負い投げを決めた。
それを見ていたひなたは、目を丸くした。
「おお! やるじゃんいずっ君!」
ひなたは、緑谷の背負い投げに思わず歓声を上げる。
爆豪がゆっくりと立ちあがろうとすると、緑谷が爆豪に向かって何かを叫ぶ。
爆豪は、大声で何かを叫んで緑谷を捲し立てた。
すると、先程まで緑谷しか視野になかった爆豪が誰に対してでもなく何かを話し始める。
切島は、不思議そうに呟く。
「あいつ何話してんだ? 定点カメラで音声無いと分かんねぇな」
「小型無線でコンビと話してるのさ! 持ち物はプラス建物の見取り図。そして、この確保テープ! これを相手に巻き付けた時点で、捕らえた証明となる!!」
オールマイトが切島の質問に答えると、芦戸がオールマイトに質問する。
「制限時間は15分間で、核の場所はヒーローに知らされないんですよね?」
「Yes!」
「ヒーロー側が圧倒的に不利ですね! これ!」
芦戸の質問にオールマイトが答えると、芦戸が続けて言った。
するとひなたが芦戸に対して付け加えるように言った。
「そんなもんだよ。むしろ実戦じゃ、ヒーローが有利な状況の方が珍しいよ。それでも勝たなきゃいけないからヒーローは命懸けなんだよ」
「その通り! 相澤くんにも言われたろ? アレだよ、せーの! Plus U「あ、ムッシュ! 爆豪が」
オールマイトの掛け声を青山が遮ると、オールマイトは少し落ち込みつつもモニターを確認した。
爆豪が再び攻撃を仕掛けると、緑谷は麗日を行かせて爆豪を食い止める。
すると、クラスメイト達がドッと湧き上がった。
「すげえなあいつ!! “個性”使わずに渡り合ってるぞ!」
「入試一位と!!」
緑谷は曲がり角へと逃げ込むと、爆豪はその場で爆破を繰り返しながら何か叫ぶ。
「なんかすっげーイラついてる。コワッ」
「
「ああいうの見ちゃうとちょっと幻滅するよな」
上鳴とひなたと心操は、それを見て呆れていた。
一方、麗日の方は飯田を発見し物陰に隠れていたが、飯田が頑張って
飯田は、触れたものを浮かせて武器にできる麗日対策にフロアを綺麗に掃除していた。
飯田は頑張って悪のオーラを出しながら麗日に接近していた。
「天ちゃんメッチャ頑張ってんな……」
ひなたは、思わず飯田の行動にツッコミを入れる。
一方、緑谷を見つけた爆豪は緑谷に何かを言いながら右手を向けて腕に付いている手榴弾のような籠手のレバーを引く。
すると、緑谷の命の危険を察したオールマイトが即座に無線で中止を促す。
「爆豪少年! ストップだ! 殺す気か!」
だが、爆豪はそれを無視してピンを抜いた。
すると次の瞬間、籠手から凄まじい威力の爆発が射出された。
その爆発の破壊力は今までの爆豪のそれとは比べ物にならず、ビルは半壊しモニタールームにまで振動が行き届いた。
「授業だぞ! コレ!」
「あいつ本当にヒーロー科かよ…!?」
「うー、うるさい……!」
切島と心操は爆豪の大規模爆破を見て引いており、ひなたはヘッドホンの上から耳を塞いでいた。
「…!! 緑谷少年!!」
黒煙で画面が見えず、オールマイトは安否の分からない緑谷に必死に呼び掛けていた。
「先生! 止めた方がいいって! 爆豪あいつ、相当クレイジーだぜ! 殺しちまうぜ!?」
「いや……爆豪少年! 次ソレ撃ったら…強制終了で君らの負けとする! 屋内戦において、大規模な攻撃は守るべき牙城の損害を招く! ヒーローとしては勿論、
切島は爆豪を止めるようオールマイトに言うが、爆豪の声を聞いていたオールマイトは妙にみみっちい所がある爆豪の性格を把握していたので流石に緑谷を殺して自ら失格になったりはしないと踏んでイエローカードで留めた。
しかし、オールマイトの注意を聞いてブチ切れた爆豪は両手を爆発させて緑谷へと突撃する。
緑谷はその場でカウンターを狙うが、爆豪の目眩しと軌道変更を兼ねた爆破で防がれ背中を爆破される。
「目眩しを兼ねた爆破で軌道変更、そして即座に、もう一回…考えるタイプには見えねぇが、意外と繊細だな」
「慣性を殺しつつ有効打を加えるには、左右の爆破力を微調整しなきゃなりませんしね」
「すごいやかっちゃん。“個性”の技術もそうだけど、身体運びも素人技じゃない。何の訓練も受けずにやってるんだとしたら天才だよ」
「才能マンだ、才能マン。ヤダヤダ…」
轟、八百万、ひなたの説明を聞いた上鳴と峰田は軽く引いていた。
爆豪は、さらに右の大振りを緑谷の右脇腹に叩き込むとそのまま右腕を掴み、左手を爆発させた勢いで回転すると緑谷を地面に叩きつけた。
その様子を見ていたクラスメイトからは非難の声が上がる。
「リンチだよコレ! テープを巻き付ければ捕らえた事になるのに!」
「ヒーローの所業に非ず…」
「緑谷もすげえって思ったけどよ…戦闘能力に於いて、爆豪は間違いなくセンスの塊だぜ」
非難しているクラスメイト達だったが、爆豪の実力だけは認めざるを得なかった。
爆豪が緑谷を睨みつけると、緑谷はすぐに立ち上がって逃げ出した。
「逃げてる!」
「男のする事じゃねぇけど仕方ないぜ。しかし変だよな…」
芦戸と切島が言った直後、画面に動きが起こる。
壁際まで追い詰められ逃げ場が無くなる緑谷に向かって爆豪が叫ぶと緑谷が叫び返し、余裕の無くなった爆豪がさらに叫び返す。
「爆豪の方が余裕なくね?」
すると次の瞬間、二人は互いに突っ込んだ。
「先生!! ヤバそうだってコレ! 先生!」
「双方…中止……」
見かねた切島は、オールマイトに訓練をやめさせるように言った。
止めようとするオールマイトだったが、すぐに止まる。
緑谷が麗日に合図を出すと、麗日は柱に引っ付いた。
すると緑谷は途中で右拳の軌道を変えてアッパーを放ち、その衝撃がビルの最上階まで突き抜けた。
一方麗日は、捕まっていた柱を大きく振り無数の瓦礫をバッティングの要領で飯田目掛けて撃ち飛ばした。
飯田が驚いて対応に困っている隙に、麗日自身も跳び上がって核にしがみついた。
「ヒーロー…ヒーローチーム…WIIIIIN!!」
オールマイトがヒーローチームの勝利を告げて、初戦は終了した。
負けた爆豪は唖然とし、飯田は麗日に崩された体勢を戻し、麗日はキャパオーバーで倒れて吐き、緑谷は爆豪にやられた怪我によって気絶していた。
「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら…」
「勝負に負けて、試合に勝ったと言う所か」
「訓練だけど」
モニターで4人を見ていたクラスメイト達だったが、歓声を上げた者は一人もいなかった。
重傷を負った緑谷だけは保健室へと運ばれ、残りの3人はオールマイトに連れられてクラスメイトのいるモニタールームへ向かった。
ちな席順
轟 障子 麗日 相澤
葉隠 耳郎 尾白 青山
爆豪 心操 上鳴 芦戸
緑谷 瀬呂 切島 蛙吹
峰田 常闇 砂藤 飯田
八百万
ヤオモモごめんよ
そして右・左・後ろとかっちゃん派閥リーチ状態のひー君w
ひーちゃんのコスチュームは、欅坂46の『サイレントマジョリティー』のPVの衣装をイメージしていただければわかりやすいです。
心操君のコスチュームは、原作340話に出てきたコスチュームで、この時はまだ捕縛武器の使い方を習ってないので首には何もつけていません。