抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が12件9が43件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたら高評価(特に8・9・10あたり)お気に入り、感想等よろしくお願いします。



ガッツだレッツレッドライオット

 (ヴィラン)連合と死穢八斎會が接触していたその頃、A組では。

 

「1年生のインターンですが、昨日協議した結果校長をはじめ多くの先生が『やめとけ』という意見でした」

 

 相澤が報告すると、切島が不満を漏らした。

 

「えー、あんな説明会までして!?」

 

「でも全寮制になった経緯から考えたらそうなるか…」

 

「ざまあ!!」

 

(自分が行けないからって…)

 

 インターンに参加できない爆豪は、他のクラスメイトも自分と同様インターンに参加できなくなった事で上機嫌になっていた。

 ひなたは、人の不幸を笑って一人上機嫌になっている爆豪に対し呆れ返っていた。

 

「が、今の保護下方針では強いヒーローは育たないという意見もあり、方針として『インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可する』という結論に至りました」

 

「ガンヘッドさんとこどうなんやろー…」

 

「セルキーさん連絡してみようかしら」

 

「クソが!!」

 

 完全にインターンの話がなくなったわけではないと聞かされた爆豪は逆ギレしていた。

 ひなたは、キレ散らかす爆豪を他所にインターン先を考えていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 HRの後、ひなたは落ち込んでいるのか頭頂部から生えた触角がしんなり萎れていた。

 すると後ろから心操が声をかける。

 

「何かあったのか? ひなた」

 

「エンデヴァーのとこ、インターンダメだって。一応連絡したんだけど、『悪いが今は焦凍以外に構ってられない』ってさ。はぁ……」

 

 心操が尋ねると、ひなたは大きくため息をつきながら愚痴を言った。

 すると近くでそれを聞いていた爆豪がここぞとばかりに笑う。

 

「ざまあ!!」

 

「やめろ爆豪」

 

 爆豪がひなたの不幸を笑っていると、心操が爆豪に注意する。

 すると近くにいた轟がひなたに謝ってくる。

 

「悪い、相澤……」

 

「ううん! 焦ちゃんのせいじゃないよ! 気にしないで!」

 

 轟が真剣な表情で頭を下げてくると、ひなたはブンブンと手を横に振った。

 そしてどこからか職場体験の時のリストを取り出して眺める。

 

「つってもどうしようかなぁ…インターン先。このリストの中から選んだ方がいいのかな」

 

 パラパラとリストを捲っていたひなただったが、ふととある事務所から指名が来ている事に気がつく。

 ひなたは、早速リストを持って相澤の所に相談に行く。

 

「お父さん」

 

「どうしたひなた」

 

「あのさ、インターンの事なんだけど…」

 

 ひなたは、インターン先の事について相澤に相談した。

 相澤と話し合った結果、ひなたのインターン先が無事決まった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして週末。

 

「休みだね」

 

 上鳴と峰田がボケっとしていると、緑谷がドタドタと足音を鳴らしながら走ってくる。

 

「お、緑谷おはー…」

 

「おはよう!!」

 

 緑谷は、全速力で寮を出て行った。

 そして轟と爆豪も、講習があるため会場に向かっていた。

 

「先生に感謝だな。権利剥奪になんなくてよ」

 

「うるせぇな…」

 

「早くあいつらに追いつかねぇとな」

 

「だぁからうっせんだっつの!! 後ろ歩けやクソ!!」

 

 轟が話していると、爆豪がキレ散らす。

 上鳴と峰田は、相変わらず呑気そうな様子だった。

 

「あの二人週末は仮免の講習か」

 

「今日俺らヤオモモの予習会やんだけど、お前ら来る?」

 

「ワリィ俺らも今日用事あるわ」

 

「うん。ごめんね電吉ー」

 

 上鳴が八百万の予習会に切島、ひなた、常闇の三人を誘うが、切島とひなたが誘いを断り常闇も頷くと、切島とひなたは出発の準備をした。

 ひなたは、同じインターン先の切島に笑顔で話しかけた。

 

「インターン楽しみだねぇ鋭ちゃん!」

 

「おう! しっかし意外だな! ひなちゃんがファットガムんとこインターン行くなんてよ」

 

「知り合いなの! 昔ね、お父さんがファットさんと仕事してた事があって、それで僕も会った事あるんだー。エンデヴァーに断られちゃったからインターン先探してたんだけど、ファットさんに指名貰ってたの思い出してさ。お父さんにも相談したら、行ってこいって!」

 

「へぇー」

 

 ひなたが話すと、切島が納得する。

 相澤が昔ファットガムとチームアップをしていた事があり、そのよしみでひなたもファットガムと面識があったのだ。

 そして体育祭後にひなた宛に来ていた4937件の指名の中にファットガム事務所からの指名もあった事を思い出し、相澤にも一応インターン先の相談をしたところ「是非行ってこい」と言われたので、ファットガム事務所にインターンに行く事にしたというわけだった。

 二人は、関西にあるファットガム事務所へ行くため新幹線に乗り込んだ。

 そして新幹線で雑談しているうちに江州羽市の駅に到着し、二人はそこから徒歩でファットガム事務所に向かった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして週末明け。

 芦戸は、ボロボロになっている爆豪を指差して尋ねる。

 

「バクゴーどったのあれ? またケンカ?」

 

「女子は見てねえのか。轟も見てみ」

 

 上鳴は、爆豪同様ボロボロになっている轟を指差した。

 

「ひょ──イケメン台無し!! どうしたのさ!!」

 

「仮免講習がスパルタだったみてえだよ」

 

「体育会系だねえー!!」

 

「コッソコソうるっせんだよ!!」

 

 講習でボロボロになっている二人についてクラスメイト達が話していると、爆豪がキレ散らかす。

 飯田は、謎の手の動きをして全員に着席を呼びかけた。

 

「授業が始まるぞ!! ひなた君、麗日くん、梅雨ちゃんくんがまだ来てないが!?」

 

「公欠ですわ委員長」

 

 飯田が出席を確認すると八百万が答える。

 女子はひなた、蛙吹、麗日が来ていなかった。

 すると耳郎は切島も来ていない事に気がつく。

 

「男子も切島いなくね?」

 

 一方インターンから帰ってきた緑谷は、峰田と芦戸に質問攻めにされていた。

 

「なァ緑谷、インターンどうだった!? ドスケベエロコス女ヒーローがいたかどうか」

 

「んあうん」

 

「どんくらい行くのー? 私も入れてー」

 

「んあうん」

 

「俺より一歩先の話するんじゃねえ」

 

 二人が尋ねると、緑谷は曖昧な返事をする。

 それを前の席で聞いていた爆豪は、鬱陶しそうに耳を塞いでいた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ひなた達がインターンに行っていた頃、死穢八斎會の所有地の地下では死柄木がオーバーホールと対峙していた。

 ただしオーバーホールは小柄なペストマスクの男ミミックと共に事務所のソファーに腰掛けており、死柄木の背後にはコートのフードを深く被ったペストマスクの男クロノスタシスが立っていた。

 

「殺風景な事務所だな」

 

「ゴチャついたレイアウトは好みじゃないんだ」

 

「地下をグルグル30分は歩かされた。蟻になった気分だ! どうなってるんだヤクザの家ってのは」

 

 死柄木は、首を掻きながら不機嫌そうに不満を漏らす。

 死穢八斎會の所有地は、警察やヒーローの目を掻い潜る為にいくつものルートや隠し部屋を作っており、まるで忍者屋敷のような造りをしていたのだ。

 

「誰がどこで見てるかわからないし客が何を考えているかもわからない。地下からのルートをいくつか繋げてある。この応接間も地下の隠し部屋にあたる」

 

「ウチが今日まで生き残ってるのも、こういうせせこましさの賜物さ。でだ! 先日の電話の件、本当なんだろうね。条件次第でウチに与するというのは」

 

 ミミックが尋ねると、死柄木はソファーに腰を下ろしテーブルに右足を乗せた。

 

「都合の良い解釈をするな。そっちは俺達の名が欲しい。俺達は勢力を拡大したい。お互いニーズは合致してるわけだろ」

 

「足を下ろせ机が汚れる」

 

 死柄木がテーブルに右足を乗せたまま話すと、オーバーホールは不機嫌そうに不満を漏らす。

 死柄木は、オーバーホールの漏らした不満に対しさらに反論した。

 

「『下ろしてくれないか?』と言えよ若頭。本来頭を下げる立場だろ。まず傘下にはならん。俺達は俺達の好きなように動く。五分。いわゆる提携って形なら協力してやるよ」

 

「それが条件か」

 

「もう一つ。お前の言っていた計画、その内容を聞かせろ。自然な条件だ。名を貸すメリットがあるのか検討したい。尤も…」

 

 死柄木が懐から何かを取り出そうとすると、後ろにいたクロノスタシスが死柄木の頭に拳銃を突きつけ、ミミックが小さな身体から筋骨隆々な巨大な手を生やして死柄木の腕を掴んだ。

 

「調子に乗るなよ。自由すぎるでしょう色々」

 

「さっきから何様だァチンピラがあ!!!」

 

 クロノスタシスが言いミミックが怒鳴り散らすと、死柄木は二人を睨みながら言い返した。

 

「そっちが何様だ? ウチのシスコンの腕を吹き飛ばしてくれたんだ。多少は譲歩してくれなきゃ割に合わない」

 

 死柄木が言うと、オーバーホールが二人を止めた。

 

「クロノ、ミミック、下がれ。せっかく前向きに検討してくれて来たんだ。最後まで聞こう。話の途中だった」

 

「こいつが関係してんだろ」

 

 そう言って死柄木が懐から出したのは、注射針が突き出た小さな弾丸だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその頃、江州羽市では。

 

「最近チンピラやらチーマーやらのイザコザが多くてなァア!! 腹が減ってしゃアないわ!! せやからここらのヒーロー事務所も武闘派欲しがっとんねん。クレシェンド、レッドライオットくん、適材やで」

 

「よろしくお願いします!!! フォースカインドさんが受け付けてなかったんで拾って貰ってありがてーっス!!」

 

「僕もエンデヴァーに断られちゃったんで、ファットさんに受け付けて貰えて良かったです!」

 

「ええてええて、クレシェンドは元々指名しとったしな!」

 

 ファットガムがタコ焼き用の鉄板でタコ焼きを食べ歩きながら喋っていると、切島とひなたが礼を言う。

 ひなたが頬を掻いているとファットガムが笑いながらひなたを褒めるので、ひなたは若干照れ臭そうに頭を掻く。

 一方でファットガムの元でインターンをしている天喰は、切島の熱苦しさについて行けていない様子だった。

 

「ミリオの都合がついていれば…君グイグイ来て恐ろしかった」

 

「あはは…すいません、何か急に押しかける感じになっちゃって…」

 

 天喰がボソボソと弱音を吐くので、ひなたはコソッと天喰に謝る。

 ひなたは元々顔見知りだった上に指名を貰っていたのですんなりインターン先が決まったのだが、どうしてもインターンに行きたい切島はビッグ3の所に相談に行き天喰にファットガム事務所を紹介してもらったのだ。

 

「環はそのヘボメンタルどうにかなれば逸材やのにな!!」

 

「そのプレッシャーが俺を更なる低みへ導く」

 

(大丈夫かこの人)

 

 ファットガムが笑い飛ばしながら天喰に激励を送ると、天喰はファットガムの言葉にショックを受けて凹む。

 ひなたは、隣で凹んでいる天喰を見て心の中でツッコミを入れる。

 

「いつもこうなんだ! この人は俺をいたぶる為スカウトしたんだ! パワハラさ! 帰りたい!」

 

「激励くれてるんじゃないっスかね! 俺にはそう聞こえる。な、ひなちゃん?」

 

「う、うん…でも確かにファットさんたまに言葉選ばないとこあるから…」

 

 天喰が凹んでいると、切島とひなたが何とかメンタルを立ち直らせようとする。

 

「ファットォ!! ウチの食えや!」

 

「明日な」

 

 屋台の店主がファットガムに声をかけると、ファットガムは店主に返事をする。

 丸くて可愛らしいフォルムもさる事ながらその人当たりの良さのお陰か、ファットガムは江州羽市のマスコット的存在だった。

 天喰は、明るく前向きな姿勢を見せている切島やひなたを羨ましく思っていた。

 

「君達やミリオのように明るく前向きにはなれない」

 

「俺もそんなっスよ! 皆が必死ん時に何も出来ねえ事多くて、クラスの連中と実力も経験値も開いちまって…だからせめて並び立てるよう差を埋めたいんス!!」

 

「僕だって前向きになれるわけじゃないですよ。立ち止まる事だって逃げ出したくなる時だってあるけど、その度に背中を押してくれる人達がいて、僕はその人達の期待に応えたくてここにいるんです」

 

「それを前向きと言うんだよ1年生!」

 

 天喰をフォローしようと二人が謙遜すると、さらに二人の前向きさが浮き彫りになったせいか天喰がさらに沈み込む。

 すると、その時だった。

 

「ケンカだあ!! 誰かァ!!」

 

「噂をすれば!」

 

 背後から叫び声が聞こえ、ファットガムと天喰がいち早く反応する。

 騒ぎの中心では、喧嘩をしていたチンピラが逃げていた。

 

「バカがウチのシマで勝手に商売始めやがって!!!」

 

「っちくしょうついてねえ!!! 折角これから一旗あげようって時に!! 一旦バラけるぞ!!」

 

「おう!!!」

 

 チンピラが大通りに出たその時、ファットガムがチンピラ達の目の前に現れる。

 

「させへん!!」

 

 全力疾走していたチンピラ達は、身体のブレーキが効かずにそのままファットガムの身体に沈み込む。

 

「ファットや!! あかん沈む…!!」

 

「沈ませ屋さんのファットさんや。って何や、エッジと“個性”被っとるでお前!!」

 

 チンピラのリーダー格の男は、エッジショットのように身体を細くしてファットガムの拘束を免れた。

 するとその直後、天喰の指先が変化したタコの足が男の身体を拘束する。

 

「!? 何じゃこのタコォ━━━━!!?」

 

 男がタコの足に驚いて叫ぶと、それを悪口と勘違いした天喰が落ち込む。

 

「酷い言い方を…!」

 

「違うよセンパイ、見た目の話!! 悪口じゃないっス!」

 

「ちょっと、あんたが余計な事言うから先輩がショック受けちゃったじゃんか!」

 

「知らんわガキィ!!」

 

 落ち込む天喰を切島がフォローし、ひなたがチンピラを指差して理不尽な言いがかりをつけるとチンピラがキレる。

 すると天喰はタコの足でチンピラを自分の方へと引き寄せる。

 

「うぁ!?」

 

 そして、貝殻に変化させた左の掌でチンピラの顎を殴る。

 天喰に顎を殴られたチンピラは、そのまま意識を手放す。

 

「タコやないんかい…ワレ…」

 

「アサリは便利なんだ…攻防に長ける…だから毎日食べるようにしているんだ」

 

 天喰は、倒れたチンピラの背中を鳥の足に変化させた脚で踏みつけて押さえつける。

 天喰は背中から翼を生やして足を鳥の足に変化させ、右手の指をタコの足に変化させ、左手を貝殻に変化させていた。

 

「羽根は要らなかった」

 

 

 

 天喰環

 “個性”『再現』

 喰らったモノの特徴をその身体に再現できる!! 

 

 

 

 ちなみに翼と鳥の足はフライドチキン、タコの足はタコ焼き、貝殻はアサリのしぐれ煮を再現させたものだった。

 切島とひなたは、あっという間にチンピラを倒してしまった天喰に驚いていた。

 

「上手く………出来ていただろうか…………」

 

「すげーっス!! 迅速で“個性”の使い方も慣れてて…」

 

「僕達要りませんでしたね…あ、決して悪い意味ではなく!」

 

 天喰が自信なさげに尋ねると、二人は天喰を褒めちぎる。

 

「技量ならとうにプロ以上やでウチのサンイーターは! メンタルは育たんけど!」

 

 さらにファットガムも天喰の実力を高く買い周りのギャラリーも歓声を送ると、天喰はプレッシャーで圧し潰されそうになる。

 だがギャラリーの中に紛れていたチンピラの下っ端が天喰の方へ拳銃の銃口を向けていたのを、ファットガムは見逃さなかった。

 

「あかん伏せ…

 

 

 

 BLAM!!! 

 

 

 

「!!」

 

 ファットガムが三人に伏せるよう叫んだ時には既に遅く、天喰の左腕に銃弾が当たっていた。

 

「アニキ!! 逃げろォ!!!」

 

 下っ端は、さらにもう一発拳銃を撃った。

 

 

 

 BLAM!!! 

 

 

 

 だが今度は、切島が天喰を庇って硬化で銃弾を弾いた。

 

「サンイーター!! レッドライオット!!」

 

「鋭ちゃん! 先輩!!」

 

 ファットガムが二人の方へ駆けつけ、ひなたが叫ぶ。

 天喰と切島を撃った下っ端は、切島が銃弾を防いだので怯んでいた。

 

「弾けた!」

 

「捕らえます!!」

 

 切島は、全身を硬化して踏ん張る。

 天喰が撃たれたので、周りに集まっていたギャラリーはどよめいていた。

 

「ヒーローが撃たれたぞ!!」

 

「先輩!!!」

 

 ひなたは、撃たれた天喰に駆け寄る。

 だが天喰は、特に大きな怪我は負っておらずピンピンしていた。

 

「思ったより痛くない…!!」

 

「先輩!! 大丈夫なんスか!? かっけえ!!」

 

 天喰が思いの外大丈夫そうだったのでひなたは目を点にし、切島も素直に驚く。

 下っ端は、普通に天喰を撃ち殺す気だったので、天喰がピンピンしている事に驚いていた。

 

「何やこのポンコツはあ──ー!!」

 

「タコで捕まえる…」

 

 天喰は、下っ端を捕らえようとする。

 だが、天喰の指先からはタコが出なくなっていた。

 

「来なボケェ!!!」

 

 下っ端は、ギャラリーに紛れて逃げ出した。

 するとファットガムが天喰に代わって下っ端を追いかける。

 

「待て早まんな! 下手に追うと噛まれるぞ! サンイーター、無事ならここ任すぞ! すぐに他のヒーローが来る、協力しろ!」

 

「無事だけど、発動しない!」

 

 ファットガムが指示を出すと、天喰は自身の身体の異常を伝える。

 するとファットガムが僅かに目を見開く。

 

「!!? クレシェンド、お前何かしたか!?」

 

「いや…僕は何も…!!」

 

 天喰の“個性”がいきなり使えなくなったので、ファットガムは“個性”を消す“個性”を持つひなたが何かをしたのかと思い尋ねる。

 だが当然、ひなたに心当たりはなかった。

 

「ほなクレシェンド、悪いけどここ任すで! サンイーターの指示に従っとき!!」

 

「あ、はい!」

 

 ファットガムが指示を出すと、ひなたはファットガムの指示に従う。

 現場に残された天喰は、後輩のひなたに指示を出す。

 

(ヴィラン)達を拘束して警察に引き渡そう…一応武器は全部外しておいて…」

 

「はい!」

 

 ひなたは、天喰の指示通りファットガムと天喰が倒したチンピラ達を拘束して武器を没収する。

 すると、チンピラの胸ポケットにエピペンのようなものが入っている事に気がつく。

 

「…ん? 何これ……」

 

 ひなたがエピペンを回収して調べていると、隣に倒れていたチンピラが袖の中に隠し持っていたエピペンのようなものを自分の脚に打つ。

 

「! しまっ……」

 

 ひなたは思わず目を見開いた直後、薬を打ったチンピラが叫び声を上げてのたうち回る。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!! あづい、身体が焼ける!!」

 

「ちょっとあんた、今何したの!? ねえ!!」

 

 チンピラが全身から熱を出してのたうち回っていると、ひなたはチンピラの胸ぐらを掴んで問い詰める。

 するとその直後、いきなりチンピラの身体が発火する。

 

「あづっ!?」

 

 至近距離で炎の熱に晒され、ひなたは思わず退く。

 すると周りの建物から炎がチンピラの方へ集まっていく。

 チンピラは、薬を打ってハイになっていたのかゲラゲラと下品な笑い声を上げていた。

 

「ヒャハハハハハ!!! 腹ん底から力が湧いて来よる!! 最高の気分や!! 今の俺なら何でも出来そうな気ィするわァア!!」

 

「ごめん相澤さん、俺がついていながら…!」

 

「いえ、僕の落ち度です! すいません先輩!!」

 

 いきなりチンピラがハイになって大量の炎を操ってきたので、天喰とひなたは驚いていた。

 チンピラが炎を操って通行人に攻撃を仕掛けようとすると、ひなたは咄嗟に捕縛武器で炎を弾く。

 

「逃げて下さい!! こいつは必ず僕達が捕らえます!!」

 

「ヒーローは守るモンが多くて困りモンやのぉ!! 安心せえ、お前ら諸共ここら一帯焼き尽くしたるわ!!」

 

 チンピラが調子に乗って炎を放出すると、ひなたは捕縛武器をチンピラに巻き付ける。

 チンピラを捕縛したひなたは、“個性”を発動して髪をざわつかせていた。

 

「出来ないよ。だって、僕達(ヒーロー)がいるから」

 

「あぁ!? 何やねんこの貧乳チビ!? こんなもん燃やしてすぐ…」

 

『わ!!!!!』

 

 ひなたは、爆音攻撃をチンピラに浴びせる。

 すると、チンピラの身体に纏わりついていた炎が消える。

 その瞬間、ひなたはチンピラに狙いを定めて勢いよく右脚を振りかぶる。

 

「誰が貧乳チビじゃゴルァ!!」

 

「がっ………!?」

 

 ひなたは、チンピラの顔面に(かなり私怨の割合が高い)回し蹴りを叩き込んで意識を落とした。

 チンピラが“個性”を失って気絶すると、ひなたはさらにガチガチに捕縛武器を巻き付けて捕獲した。

 

「確保ぉ!!」

 

 ひなたは、ふんっと鼻を鳴らして軽く拳を握りしめる。

 すると、近くにいたギャラリーが歓声を上げる。

 

「おおきになー! お嬢ちゃん! カッコ良かったよー!」

 

「あんた体育祭2位の子やろ!? 最近の若ェのはホンマ勢いが凄いわ!」

 

「最後の蹴りが怖かったけど!」

 

 ギャラリーがひなたに歓声を送ると、ひなたは照れ臭そうに頭を掻き天喰はその空気に耐えられない様子だった。

 その後、他のヒーロー達や警察も駆けつけ、現場にいたチンピラは全員確保し終えた。

 二人は、捕らえたチンピラ達を警察に引き渡す。

 

「おかげさまで助かりました! こいつらは違法薬物や裏アイテムの売人チームで、我々も機会をうかがっていたんです」

 

「そういえばこいつ、エピペンみたいなのを打った途端ハイになって暴れ出してたな…」

 

 ひなたは、炎を撒き散らして暴れていたチンピラの方を見て言った。

 

「…俺の”個性”が発動できないのはじゃあ…”商品”の一つか…?」

 

 天喰が撃たれた左腕を押さえながら言うと、捕らえられたチンピラの一人が天喰とひなたを睨みながら口を開く。

 

「…死ねボケカス」

 

 すると、暴言を吐かれたショックで天喰が頭を付けて落ち込む。

 

「まァ後は我々に任しといて下さい」

 

「ちょっとあんた! 何先輩を落ち込ませてんだよ!」

 

 天喰が落ち込んでいると、警察が苦笑いを浮かべひなたがチンピラを非難する。

 そんな中天喰は、もしかしたら切島やファットガムが追っているチンピラも何かしでかしているかもしれないと不安を抱いていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 少し遡り、切島は全速力で下っ端を追っていた。

 下っ端は、逃げながら泣き言を言っていた。

 

「来んなあ!! 追わんといてや!!」

 

「そっちが逃げんなァ! せめてなァ!! 仲間救ける姿勢貫けよ!!」

 

「どこにキレとんねん!!」

 

 泣きながら逃げる下っ端に対し切島が怒鳴ると、下っ端がツッコミを入れる。

 

「人撃っといて自分だけビビって逃げるなんて、漢らしくねえよ!!」

 

 切島は、逃げている下っ端に向かって叫んだ。

 切島から逃げ続けていた下っ端だったが、とうとう行き止まりに追い詰められる。

 

「行き止まりだ!! 観念しろォ!!」

 

「やかっ、ましィ!!」

 

 切島が下っ端を捕らえようとすると、下っ端は右腕から刃物を生やして切島の顔面を斬りつける。

 だが切島は、硬化で下っ端の刃を防いだ。

 

「『烈怒交吽咤(レッドカウンター)』!!」

 

 切島は、硬化した拳で下っ端を殴る。

 重い一撃が直撃した下っ端は、地面に倒れ込んだ。

 

「加減はした! 大人しく捕まろうぜ、テッポー野郎!」

 

 切島は、下っ端に大人しく投降するよう言った。

 下っ端は、泣いているのか肩を震わせていた。

 

「ウッ、うっ、う…」

 

「え…泣いてる?」

 

 切島が恐る恐る下っ端に歩み寄ると、下っ端はボロボロ泣きながら逆ギレし始めた。

 

「ズルやで…こちとら『刃渡り10cm以下の刃物が飛び出る』やぞ! カッターナイフと同じくらいやぞ…ズルやん! そらアニキら助けたいわアホンダラ! でも怖いやん…!!! むしろ撃った勇気褒めろや…!」

 

「やだよ! つーか、そんなベソかいて怖いとか言うなら、悪ィ事に加担すんなよ!」

 

 下っ端が泣きべそをかきながら逆ギレしているので、切島はツッコミを入れつつ下っ端を諭しながら立たせる。

 下っ端は、観念したのかボロボロと泣きながらポツポツと喋り始める。

 

「強い男に………なりたかったんや…強い人らとおれば、強くなれるから」

 

「…………その気持ちはわかるけどよ………」

 

「アニキらについていけば…力を貰えるんや。ヒーローなれる奴が軽率にわかるとか言わんといてや…」

 

 下っ端は、ズボンのポケットからエピペンのようなものを取り出すと、自分の足に打った。

 すると下っ端の身体に異変が起こり、下っ端は膝をついて耳を劈く叫び声を上げる。

 

「あああああああ!!」

 

「何してんだ!? 何打った!? オイ! 大丈夫かよ!?」

 

 切島は、下っ端に歩み寄って容態を確認しようとする。

 するとその直後、下っ端の身体から無数の刃が生える。

 切島は何とか硬化で耐えて後ろにいた通行人を守り切るが、薬のせいか下っ端の刃の強度が上がっており、硬化したはずの切島の表皮に切り傷ができていた。

 

「皆さん下がって!! こいつの刃が届かないところまで…」

 

 切島が通行人を逃がそうとしたその時、下っ端が刃を伸ばして切島を斬りつけてくる。

 切島は、全身に切り傷を負ってボロボロになっていた。

 すると下っ端は薬でハイになっているのか高笑いする。

 

「慢心したなァガキコラぁ!!! 偉そうに正義ごっこしとるからや!! アニキらが言うとったで! ヒーローの時代はもうじき崩れるってなァ!! 次は俺達みたいな日陰者の時代言うとったわ! なんかめっちゃハイになってきたわ!! どけガキ!! 今ならお前の言う通り…アニキら助けられそうや!!!」

 

 そう言って下っ端が切島目掛けて刃を伸ばした、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 バキバキバキバキッ

 

 

 

「いでえ━━━!!!?」

 

 切島は、全身の硬度を限界まで引き上げ迫り来る刃を全て受け止めた。

 すると刃は粉々に砕け散り、下っ端が叫び声を上げる。

 切島は、圧縮訓練で生み出した新技を繰り出していた。

 

烈怒頼雄斗(レッドライオット)安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)』!!」

 

 切島が新技を出すと、切島の身体からギギギギ、ゴガッと金属が摩擦するような音が鳴る。

 

「何やこの音…軋んでんのか、全身が!!」

 

 切島が全身から軋んだ音を鳴らしていると、下っ端が怯む。

 切島の新技『安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)』は60秒程度しか硬度を維持できないが、その間は全身が何にも勝る最強の盾となるという技だった。

 

「俺を見ろォ!!!」

 

「ううう…!」

 

 切島が突進すると、下っ端は全身から出していた刃物を一度引っ込める。

 下っ端は、怯みながらも次の攻撃を仕掛けてくる。

 

「押しとばしたるわぁ!!!」

 

 下っ端は、無数の刃を腹から一極集中させて生やし、切島目掛けて一直線に伸ばしていく。

 すると火花が散り、金属同士がぶつかるような音が鳴り響く。

 無数の刃で一方的に攻撃を仕掛けていた下っ端だったが、一歩も退かない切島を見て怯む。

 

「ぐぅ!!!」

 

 切島は、何の小細工もせずに、ただひたすら迫り来る刃を打ち砕いて間合いを詰めていく。

 そして、下っ端に狙いを定めて右拳を振りかぶる。

 

「必殺『烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)』!!!」

 

 切島は、下っ端の腹に重いボディーブローを叩き込んだ。

 すると下っ端は全身の刃物が砕け、数メートルほど吹っ飛ばされる。

 それを見ていた通行人は、切島に圧倒される。

 

「若いのに…なんちう怒気よ…」

 

「すンげぇ…」

 

 切島に吹っ飛ばされた下っ端は、仰向けに倒れたまま意識を取り戻して咳き込む。

 

「カハッ!」

 

「おらァア!!!!」

 

 発動限界ギリギリまで戦っていた切島は、硬化を解くとブハッと息を吐いた。

 すると倒れていた下っ端が泣きながら後退りする。

 

「ゲホッあ゛あ゛ん!! うわああん来んなァア~!!」

 

 下っ端は、咳き込みながら泣きべそをかいていた。

 それを見た切島は、ブースト薬の効果が切れたのかと考える。

 下っ端は、ボロボロと泣きながら切島に命乞いをする。

 

「強くなりたかっただけやねん…!! 頼むよ、逃がしてよ…! 俺は力が欲しかっただけの哀れな人間や!!」

 

「ダメだ、先輩を撃った。気持ちはよくわかるぜ…俺も昔は……」

 

「てめーの話なんぞ知るかボケェ!!!!」

 

 切島が下っ端の命乞いを切り捨てると、下っ端が捨て台詞を吐く。

 そして下っ端は背中から刃を伸ばして地面に突き刺すと、そのまま刃を一直線に伸ばして切島を飛び越えた。

 

「馬鹿か俺は!!!」

 

 不意を突かれた切島は、慌てて刃を叩き割る。

 下っ端はガクッとバランスを崩すが、そんな事はお構いなしに高笑いしていた。

 

「素直!! 素直すぎやで、助かったわ! 逃げる逃げたる!! 捕まってたまるかァ!!」

 

 下っ端が高笑いしながら逃げようとしたその時、ファットガムが下っ端の前に立ち塞がる。

 下っ端は、そのままファットガムの腹へと飲み込まれていった。

 

「ファットガム!!!」

 

「遅なってすまんな!! 対敵した時!! 敵の勝利条件は“殺す”! ”逃げる”! ”ブチのめす”にetc!! 対してこっちは”ガイ者出さずに捕える”1つ!! 覚えて帰りや烈怒頼雄斗(レッドライオット)!!」

 

 ファットガムは、切島にアドバイスをしながら下っ端を捕らえる。

 下っ端は、暴れて逃げ出そうとするがファットガムの脂肪に吸い込まれて身動きが取れず、そのまま窒息して意識を手放した。

 

(ヴィラン)退治は、いかに早く戦意喪失させるかや!!」

 

 

 

 ファットガム

 “個性”『脂肪吸着』

 彼の体は何でも吸着し、沈められるのだ!!! 

 トートロ!! 

 

 

 

「……助かりました」

 

 切島は、自分が命懸けで戦った相手を瞬殺してしまったファットガムに驚きつつも安堵の表情を浮かべて礼を言った。

 すると切島に助けられた通行人が切島に礼を言う。

 

「ありがとうなァ若いの! 凄いなァ、惚れたでホンマ。俺らに刃ァ向かんように動いとったやろ!? 長年ヒーロー見とるとわかんねん! フツーびびるで、あんな刃人間!! ホンマ救けられたわ!!」

 

「華々しいデビューやなァ…俺のデビュー時とは大違いや。助かったんはこっちや!! お前はすごいヒーローになるよ! 必ず!」

 

 ファットガムが切島を褒めると、切島はニカッと笑みを浮かべる。

 

「───…!! あざっス!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後切島とファットガムは、市街地で天喰やひなたと合流していた。

 

「”個性”がパワーアップか…そのクスリは日本じゃ禁止されとるヤツやな…効果の短さから見て、アジア系の粗悪品や。米製なら一~二時間は効く」

 

「詳しいンスね!! すげえ」

 

「俺、昔はポリと協力してそんいうんばっか捕まえとったんやで」

 

 ファットガムがブースト薬の分析をしていると、切島が素直に感心する。

 すると警察が駆け寄ってきて調査結果をファットガムに報告する。

 

「ファット!! 奴が発砲した拳銃やけど! “個性”で粉々に砕いとった! 弾はなかった。あとこれ普通のチャカやないで。とりあえず色々調べて報告するわ!」

 

「わざわざありがとうな。そうか…」

 

 ファットガムは、警察からの報告を受けて考え込む。

 切島は、“個性”が使えなくなる弾を撃たれた天喰を心配する。

 

「先輩は大丈夫なんスか?」

 

「……辛い」

 

 天喰は、フードで顔を隠して落ち込んでいた。

 

「……”個性”が出ねえなんて…ヒーローにひでえ仕打ちだ。…ああ、悪ィ! ひなちゃんも“個性”消せるんだったな」

 

「いや、いいよ。事実だし」

 

 切島がひなたに謝ると、ひなたは首を横に振る。

 ひなたは、研究施設にいた頃に(ヴィラン)に無理矢理“個性”を使わされて“無個性”に変えてしまった人達も同じ気持ちだったのだろうかと考えていた。

 すると天喰が切島やひなたに礼を言った。

 

「それより…君は俺を庇ってくれた…相澤さんは“個性”が使えない俺に代わって戦ってくれた…ミリオと同じ…太陽のように輝かしい人間だ君達は…」

 

「いえ、そんな…」

 

「んなこと言ったらここ紹介してくれた先輩も太陽っスよ」

 

「それだよ…すごいんだよ…君……」

 

 天喰の発言に対しひなたと切島が謙遜すると、天喰は二人をさらに褒める。

 三人のやり取りを少し離れたところで見ていたファットガムだったが、内心では嫌な予感がしていた。

 “弱個性”への救済措置であるブースト薬ならまだわかるが、“個性”を消す薬というのは薬物に詳しいファットガムでも聞いた事がなかった。

 だが似た“個性”を持つ相澤やひなたがいる以上、あり得ない話ではないのかもしれないと考えていた。

 

「病院で検査してもらおか。俺も調べたい事があるしな。とりあえず一旦事務所経由で───…」

 

「……ハイ」

 

「はい!」

 

「オス!」

 

 ファットガムが言うと、三人が返事をした。

 ひなたと切島の華々しいデビューの裏では、底知れぬ悪意が蠢いていた。

 

 

 

 

 




ひーちゃんは切島や天喰先輩と一緒にファットさんの事務所にインターンにいきましたとさ。
インターン編って個人的な感想ですけど、二次創作だとオリ主がリューキュウ&ねじれ先輩の所に行くか、オリヒーローの所に行くか、原作緑谷的ポジションのオリ主がナイトアイ事務所に行くかの3パターンが多い気がするので、あえてここはファットさん路線でやらせていただきます。
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