抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が12件9が43件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたらお気に入り(特に)、高評価、感想等よろしくお願いします。



嫌な話

 翌日。

 天喰のインターン先のファットガム事務所に行った切島とひなた以外では、緑谷は通形のインターン先のナイトアイ事務所、蛙吹と麗日は波動のインターン先のリューキュウ事務所、常闇はホークス事務所へインターンに行っており、クラスではインターンの話で持ち切りになっていた。

 

「切島コラァ!!!」

 

「ん」

 

「お前名前!! ネットニュースにヒーロー名!! 載ってるぞすげぇ!!!」

 

 そう言って上鳴が切島にスマホのネットニュースを見せると、後ろで爆豪が悔しそうに歯をガチガチ鳴らしていた。

 上鳴が見せたネットニュースの見出しには、『新米サイドキック烈怒頼雄斗爆誕!』『初日から市民を背負い単独敵退治!!』などと書かれていた。

 すると芦戸が麗日に話しかける。

 

「梅雨ちゃん麗日ぁ、すごいよー名前出てる!!」

 

「マジじゃん」

 

 芦戸が蛙吹と麗日に携帯でネットニュースを見せ、耳郎もネットニュースを確認していた。

 芦戸が見せたネットニュースの見出しには、『リューキュウ事務所に新たな相棒』『インターンシップで所属した2人! ルックスもキュート!』『お手柄! 大事件を瞬時に制圧!! 実力は本物』などと書かれていた。

 

「うへえ━━、嬉しいなァ本当だ…!」

 

「どこから撮ったのかしら」

 

 麗日はネットニュースを見て嬉しがり、蛙吹は僅かに驚いていた。

 葉隠と芦戸は、たった一日で人気者になってしまった二人を羨ましがる。

 

「うらやまー」

 

「すっごいねー! もうMt.レディみたいにファンついてるかもねえええ!!!」

 

 女子達がワイワイはしゃいでいる様子を、ひなたは微笑ましそうに眺めていた。

 

「あはは…いいなぁ皆」

 

「ひなた、お前もネットニュースになってるよ」

 

「え?」

 

 ひなたが麗日達を羨ましがっていると、心操が声をかけて携帯でネットニュースを見せる。

 心操が見せたネットニュースの見出しには、『新米サイドキック“クレシェンド・モルト”大活躍!』『初日から凶悪(ヴィラン)を瞬殺!』『実力はプロ以上!?』などと書かれており、ひなたのファンスレも怒涛の勢いで伸びていた。

 しかしファンスレには『くさそう』『脇舐めたい』『prprhshs』『踏まれたい』『とりあえずこの娘持って帰りますね』などといった変態コメントや、『偽乳で草』『虚乳』『盛りすぎワロタ』『見事なまでの絶壁』『永遠の0』『貧乳神様』などといった体型をバカにするコメントも書き込まれていた。

 

「誰が貧乳神だコラ」

 

「壊すなよそれ俺の携帯」

 

 ネットで『貧乳神様』と呼ばれている事にブチ切れたひなたは、心操の携帯を叩き割らんばかりの握力で握りわなわなと震えていた。

 ブチ切れた時の形相は、爆豪を思わせるほど凶悪だった。

 携帯からメキッと音が鳴り始めたため、携帯の危機を察した心操はひなたから自分の携帯を取り上げる。

 すると、飯田が5人に対して言った。

 

「仮免といえど街へ出れば同じヒーロー……素晴らしい活躍だ……! だが学業は学生の本分!! 居眠りダメだよ!」

 

「おうよ飯田! 覚悟の上さ! なァ!?」

 

「「うん!」」

 

 飯田が注意すると、切島が気合を入れ緑谷とひなたも頷く。

 

「ひなちゃんや緑谷はともかく…切島お前勉強ヤベーっつってたのに大丈夫かよー」

 

「先生が補習時間設けてくれるんだってよ」

 

「俺も行きゃー良かったなァ。両立キツそうでさァ…」

 

「学ぶペースは人それぞれですわ」

 

「善い事を仰る!」

 

 インターンに行かなかった上鳴や瀬呂が羨ましそうにしていると、八百万が二人をフォローする言葉をかけたので上鳴は上機嫌になった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして数日後。

 切島とひなたが集合場所に行こうとすると、緑谷が寮から出てくる。

 

「お!!? 緑谷ァ!! おはよ!!」

 

「デッくんおはよー!」

 

 二人は、寮から出てきた緑谷に手を振って挨拶する。

 

「お前も今日行くんだ!? キグーだな!」

 

「しばらく呼ばれなくってやっと今日だよ。コスチュームは要らないって言われたけど…」

 

「へぇ…デッくんのとこは、確かナイトアイ事務所だったよね?」

 

 二人は、早速緑谷と今日の予定について話し合っていた。 

 すると、麗日と蛙吹も出てきた。

 

「あれー!? おはよ━━━!! 三人も今日!?」

 

 5人とも方角が同じとの事で、5人は一緒に集合場所へ向かった。

 すると、途中でヒーローに声をかけられる。

 

「駅まで? 送ってくよー!」

 

「わ! じゃあよろしくお願いします」

 

「ヒーロー多いな」

 

「ありがたや」

 

 5人は、ヒーローに送られて駅に着いた。

 緑谷が改札を通ろうとすると、4人とも同じ改札へ向かう。

 

「あれ!? 皆こっち!? 切島くんと相澤さん、関西じゃ…」

 

「ん、ああ! 何か集合場所がいつもと違くてさぁ」

 

「そうなの! 奇遇だねぇ」

 

 5人は、改札を通ると同じ電車に乗った。

 

「皆同じ駅!? 奇遇だね…!」

 

「先輩と現地集合なの」

 

 そして、同じ駅で降りると同じ方向に向かって歩いた。

 

「方向も同じ…!?」

 

 さらに、同じ曲がり角を曲がる。

 

「曲がる角も同じ…………」

 

 角を曲がると、ビッグ3がいた。

 

「お」

 

「わ」

 

「…………」

 

「ビッグ3もお揃いで……」

 

 そして5人がビッグ3と一緒に集合場所であるサーナイトアイ事務所の2階に行くと、大勢のプロヒーロー達がいた。

 チャートに載っている有名なヒーローからマイナーなヒーローまでおりその中には、ファットガムやリューキュウだけでなく、グラントリノと相澤、そして相澤の元で職場体験をしていた心操までいた。

 

「「「これは…何だ!?」」」

 

「グラントリノ!!?」

 

「それに…相澤先生!?」

 

「お父さん! それにひー君まで! えー、なになに?」

 

「こんなに大勢…すごいぞ…! 一体何を…」

 

 緑谷達が驚いていると、波動がリューキュウに詰め寄った。

 

「リューキュウ!! ねえねえこれ何、何するの!? 会議って言ってたけどー、知ってるけど!! 何の!?」

 

「すぐわかるよ。ナイトアイさん、そろそろ始めましょう」

 

 リューキュウがナイトアイの名前を出すと、蛙吹と麗日はピンときた。

 

「あなた方に提供して頂いた情報のおかげで、調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます。順を追って話します」

 

 ナイトアイが言うと、ひなた、蛙吹、麗日の3人は相澤のもとへ走っていった。

 

「先生!」

 

「先生が何故ここに?」

 

「ひー君も一緒なんだね!」

 

 三人が声をかけると、相澤が事情を説明する。

 

「急に声掛けられてな。協力を頼まれたから来たんだ。ザックリとだが事情も聞いてる…言わなきゃならん事もあるしな」

 

「で、先生の元でインターンやるつもりだった俺にも声がかかったんだ。俺も先生から事情は聞いてる」

 

「なるほど」

 

 相澤と心操が事情を説明すると、ひなたはコクリと頷く。

 すると、何も説明を聞かされていない切島がファットガムに尋ねる。

 

「俺置いてけぼりなんスけど…ハッサイ? 何スか?」

 

「悪い事考えとるかもしれんから皆で煮詰めましょのお時間や。お前らも十分関係してくるで」

 

 ひなた達が現状を把握している間に会議の準備は整い、全員が会議室の席に座った。

 ナイトアイのサイドキックのバブルガールが端末を見ながら説明を始める。

 

「えー、それでは始めて参ります。我々ナイトアイ事務所は約2週間程前から死穢八斎會という指定(ヴィラン)団体について…独自調査を進めて…います!!」

 

「キッカケは?」

 

「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故からです。警察は事故として片付けてしまいましたが、腑に落ちない点が多く追跡を始めました」

 

 すると、百足のような顔をしたヒーロー『センチピーダー』が説明を始める。

 

「私サイドキックのセンチピーダーがナイトアイの指示の下追跡調査を進めておりました。調べたところ、ここ一年以内の間に全国の組以外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いているものと見ています。そして調査開始からすぐに…(ヴィラン)連合の一人分倍河原仁、(ヴィラン)名トゥワイスとの接触。尾行を警戒され追跡は叶いませんでしたが警察に調査を協力して頂き組織間で何らかの争いがあった事を確認…」

 

 センチピーダーが説明すると、グラントリノが口を開く。

 

「連合が関わる話なら…という事で俺や塚内にも声が掛かったんだ」

 

「その塚内さんは?」

 

「他で目撃情報が入ってな、そっちへ行ってる。小僧、まさかこうなるとは思わなんだ…面倒な事に引き入れちまったな…」

 

「面倒なんて思ってないです!」

 

 グラントリノが申し訳なさそうに言うと、緑谷は否定する。

 

「知り合いなんだ!?」

 

「職場体験で──…」

 

 緑谷が通形に説明していると、切島がひなたにコソッと話しかける。

 

「神野でオールマイトといたじーさんだ! 緑谷スゲェ人と知り合いだな」

 

「うん。ナイトアイもオールマイトの元サイドキックらしいし…デッくんてオールマイト関連の繋がり多いよね」

 

 切島とひなたは、コソコソと話し合っていた。

 するとナイトアイがバブルガールに指示を出す。

 

「………続けて」

 

「えーこのような過程があり! 『HN』で皆さんに協力を求めたわけで」

 

「そこ飛ばしていいよ」

 

「うん!」

 

 すると、麗日が波動に尋ねる。

 

「HN?」

 

「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり、便利な“個性”のヒーローに協力を申請したりできるんだって!」

 

 麗日が尋ねると、波動が麗日の質問に答えた。

 するとロックロックが緑谷達を指差しながら不満を漏らす。

 

「雄英生とはいえガキがこの場にいるのはどうなんだ? 話が進まねえや。本題の企みに辿り着く頃にゃ日が暮れてるぜ」

 

 ロックロックが不満そうに言うと、ファットガムが立ち上がって天喰とひなたと切島を指す。

 

「ぬかせこの三人はスーパー重要参考人やぞ」

 

 ファットガムの発言に、ひなたと切島は驚き天喰は俯いていた。

 

「…え?」

 

「俺……達?」

 

「ノリがキツい…」

 

「とりあえず初対面の方も多い思いますんで! ファットガムです、よろしくね!」

 

「「丸くて可愛い」」

 

「お! 飴やろーな!」

 

 蛙吹と麗日が言うと、ファットガムは飴を取り出した。

 するとナイトアイが説明を続ける。

 

「八斎會は以前認可されていない薬物の捌きをシノギの一つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました」

 

「昔はゴリゴリにそういうんブッ潰しとりました! そんで先日の烈怒頼雄斗とクレシェンド・モルトのデビュー戦!! 今までに見た事ない種類のモンが環に打ち込まれた! “個性”を壊す薬」

 

 ファットガムが怒りを露わにし飴を握り潰しながら言うと、話を聞いていたヒーロー達はざわついた。

 

「“個性”を壊す…!?」

 

「え…!? 環、大丈夫なんだろ!?」

 

 天喰の親友である通形が心配すると、天喰は右手を牛の蹄に変えてみせた。

 

「ああ…寝たら回復していたよ。見てくれ、この立派な牛の蹄」

 

「朝食は牛丼かな!?」

 

 天喰の無事を確認した通形は、ひとまず安心した。

 続けてロックロックが口を開く。

 

「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねえ」

 

「いえ…その辺りはイレイザーヘッドから」

 

 ナイトアイが相澤に振ると、相澤が話し始める。

 

「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺は“個性”を攻撃してるわけじゃないので。基本となる人体に特別な仕組みが+αされたものが“個性”。その+αが一括りに“個性因子”と呼ばれています。俺はあくまでその“個性因子”を一時停止させるだけで、ダメージを与える事はできない。むしろ、娘の“個性”の方がそれに近いかと」

 

「ああ、えっと…僕の“個性”は音でガラス割ったりするアレと原理は近くて、“個性因子”を特殊な音波で攻撃して激しく共振させて“個性”にダメージを与えるんです。そしたら“個性因子”が麻痺したり傷ついたりして、しばらく“個性”が使えなくなります。ああ、もちろん故意に完全に破壊したりとかは絶対しませんけど!」

 

 相澤がひなたに話を振ると、ひなたは自分の“個性”の原理を説明した。

 

「環が撃たれた直後病院で診て貰ったんやが、その“個性因子”が傷ついとったんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど」

 

「その打ち込まれたものの解析は?」

 

「それが、環の身体は他に異常無し! ただただ“個性”だけが攻撃された! 撃った連中もダンマリ! 銃はバラバラ!! 弾も撃ったっきりしか所持していなかった! ただ…切島くんが身を挺して弾いたおかげで、中身の入った一発が手に入ったっちゅーわけや!!」

 

 突然ファットガムに称賛された切島は、自分を指差しながらギョッとしていた。

 

「俺っスか!! ビックリした!! 急に来た!!」

 

「切島くんお手柄や」

 

「カッコイイわ」

 

「硬化だよね! 知ってるー! うってつけだね!」

 

 麗日、蛙吹、波動も切島を称賛した。

 そんな中ファットガムは報告を続ける。

 

「そしてその中身を調べた結果、ムッチャ気色悪いモンが出てきた……」

 

 すると、ファットガムは思わずその場にいた全員が息を呑む発言をした。

 

「人の血ィや細胞が入っとった」

 

「………!」

 

 それを聞いた者達は、思わず顔を青くしていた。

 

「えええ…!?」

 

「別世界のお話のよう…」

 

「………!」

 

 麗日や蛙吹は血の気が引き、ひなたは俯いたまま冷や汗をかいて震えていた。

 昔生みの親にされた仕打ちがフラッシュバックしてしまったのだ。

 心操は、過去のトラウマに震えるひなたを心配そうに見ていた。

 するとリューキュウが口を開く。

 

「つまり…その効果は人由来…“個性”って事? “個性”による“個性”破壊…」

 

「うーん…さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會と繋がる」

 

「今回切島くんとひなたが捕らえた男! そいつらが使用した違法薬物な、そういうブツの流通経路は複雑でな。今でこそかなり縮小されたが、色んな人間・グループ・組織が何段階にも卸売りを重ねてようやく末端に行き着くんや。八斎會がブツ捌いとった証拠はないけど、その中間売買組織の一つと八斎會は交流があった」

 

「それだけ!?」

 

 ファットガムの説明にヒーロー達が腑に落ちないでいると、ナイトアイが説明をする。

 

「先日リューキュウ達が退治した(ヴィラン)グループ同士の抗争、片方のグループの元締めがその交流のあった中間売買組織だった」

 

「巨大化した一人は、効果の持続が短い粗悪品を打っていたそうよ」

 

 ナイトアイの説明に続けてリューキュウも答えるが、何名かのヒーローはまだ納得できなかった。

 

「最近多発している組織的犯行の多くが…八斎會に繋げようと思えば繋がるのか。ちょっとまだわからんな…どうも八斎會をクロにしたくてこじつけてるような、もっとこうバシッと繋がらんかね」

 

「若頭治崎の“個性”は『オーバーホール』、対象の分解・修復が可能という力です。分解…一度『壊し』『治す』“個性”、そして“個性”を『破壊』する弾」

 

 ナイトアイの言葉に、緑谷と通形は滝のような冷や汗をかいて聞こえそうなほどバクバクと胸を鳴らす。

 

「治崎には娘がいる…出生届も無く詳細は不明ですが、この二人が遭遇した時は手足に夥しく包帯が巻かれていた」

 

「まさか…そんな悍ましい事…」

 

「超人社会だ、やろうと思えば誰もが何だってできちまう」

 

 ナイトアイの言葉に何となく察しがついたリューキュウとグラントリノは、嫌悪感を剥き出しにしながら口を開く。

 だが、切島は状況が飲み込めていない様子だった。

 

「何? 何の話っスか………!?」

 

「やっぱガキはいらねーんじゃねーの? わかれよな…つまり娘の身体を銃弾にして捌いてんじゃね? って事だ」

 

 ロックロックの言葉を聞いた切島、ひなた、麗日、蛙吹、心操の5人は一斉に目を見開く。

 するとナイトアイが説明を続けた。

 

「実際に売買をしているのかは分かりません。現段階では性能としてあまりに半端です。ただ…仮にそれが試作段階にあるとして、プレゼンの為サンプルを仲間集めに使っていたとしたら…確たる証はありません。しかし、全国に渡る仲間集め、資金集め、もしも弾の完成形が“個性”を完全に破壊するものだとしたら…? 悪事のアイデアがいくつでも湧いてくる」

 

「想像しただけでハラワタ煮えくり返る!! 今すぐガサ入れじゃ!!」

 

「こいつらが子供保護してりゃ一発解決だったんじゃねーの!?」

 

 ナイトアイの言葉にファットガムが怒りを露わにしながら同調し、ロックロックが少女を保護しなかった緑谷と通形を責める。

 するとナイトアイが二人を庇う。

 

「全て私の責任だ。二人を責めないで頂きたい。知らなかった事とはいえ…二人ともその娘を救けようと行動したのです」

 

 緑谷と通形は、俯いて歯を食いしばっていた。

 緑谷はリスクを背負いその場で保護しようとしたが結局保護できず、通形は先を考えより確実に保護できるよう動いた。

 二人の行動は責められるものではなかったが、少なくとも二人は少女に救いの手を差し伸べるのを先送りにしてしまった事には変わりないと思い自身の不甲斐なさに腹を立てていた。

 

「今この場で一番悔しいのは、この二人です」

 

 ナイトアイが言った直後、二人は席から立ち上がった。

 そして、自分自身に誓うように力強く言った。

 

「今度こそ必ずエリちゃんを…!! 「保護する!!」」

 

「それが私達の目的になります」

 

 二人に続けてナイトアイが言うと、ロックロックが呆れたように口を開く。

 

「ケッ、ガキがイキるのもいいけどよ。推測通りだとして、若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ? それが何らかのトラブルで外に出ちまってた! あまつさえガキんちょヒーローに見られちまった! 素直に本拠地に置いとくか? 俺なら置かない。攻め入るにしてもその子が『いませんでした』じゃ話にならねぇぞ。どこにいるのか特定できてんのか?」

 

「確かに。どうなのナイトアイ?」

 

 ロックロックとリューキュウが尋ねると、ナイトアイが答える。

 

「問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不透明な以上、一度で確実に叩かねば反撃のチャンスを与え兼ねない。そこで八斎會と接点のある組織・グループ及び八斎會の持つ土地! 可能な限り洗い出し、リストアップしました! 皆さんには各自その箇所を探って頂き、拠点となり得るポイントを絞って貰いたい!!」

 

 すると、集められたマイナーヒーローの何人かは納得した。

 

「なるほど、それで俺達のようなマイナーヒーローが…」

 

「?」

 

「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる! 土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ」

 

 すると、ファットガムがナイトアイに対し目を血走らせながら声を荒げた。

 

「オールマイトの元サイドキックな割に随分慎重やな、回りくどいわ!! こうしてる間にもエリちゃんいう子泣いてるかもしれへんのやぞ!!」

 

「我々はオールマイトにはなれない! だからこそ分析と予測を重ね、救けられる可能性を100%に近付けなければ!」

 

「焦っちゃあいけねえ。下手に大きく出て捕らえ損ねた場合、火種が更に大きくなり兼ねん。ステインの逮捕劇が連合のPRになっちまったようにな。むしろ一介のチンピラに“個性”破壊なんつー武器流したのも、そういう意図があっての事かもしらん」

 

「…考え過ぎやろ、そないな事ばっか言うとったら身動き取れへんようになるで!!」

 

 ナイトアイとグラントリノに対しファットガムが反論すると、それを皮切りに他のヒーロー達も言い合いを始めた。

 すると、相澤が手を挙げた。

 

「あのー…一つ良いですか。どういう性能かは存じませんが、サーナイトアイ。未来を予知できるなら、俺達の行く末を見ればいいじゃないですか。このままでは少々…合理性に欠ける」

 

「それは…できない」

 

 相澤の質問に対しナイトアイが答えると、相澤は怪訝そうな表情を浮かべる。

 するとナイトアイが自分の個性について説明した。

 

「私の予知性能ですが、発動したら24時間のインターバルを要する。つまり一日一時間、一人しか見る事が出来ない。そしてフラッシュバックのように一コマ一コマが脳裏に映される。発動してから一時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見られる…と考えて頂きたい。ただしそのフィルムは全編人物のすぐ近くからの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ」

 

「いや、それだけでも充分すぎる程色々わかるでしょう。出来ないとはどういう事なんですか」

 

 相澤が尋ねると、ナイトアイは眼鏡を上げながら表情を険しくした。

 

「例えばその人物に近い将来、死、ただ無慈悲な死が待っていたら、どうします」

 

「!」

 

 ナイトアイが言うと、その場にいたヒーロー達が目を見開く。

 そしてナイトアイは、“個性”を使って未来を見るべきではないと話した。

 

「この“個性”は行動の成功率を最大まで引き上げた後に勝利のダメ押しとして使うものです。不確定要素の多い間は闇雲に見るべきじゃない」

 

「はあ!? 死だって情報だろう!? そうならねぇ為の策を講じられるぜ!?」

 

「占いとは違う。回避できる確証は無い!」

 

「ナイトアイ! よくわかんねえな、いいぜ俺を見てみろ! いくらでも回避してやるよ」

 

 ロックロックがナイトアイを指差して声を荒げると、ナイトアイは俯いて声を絞り出した。

 

「ダメだ」

 

 それを見たヒーロー達は、それ以上何も言わなかった。

 ひなたも、もし自分や大切な人が死ぬ未来を先に見てしまったら動けなくなってしまうのではないか、何かが狂ってしまうのではないか、そう考えていた。

 するとリューキュウが話題を切り替える。

 

「とりあえずやりましょう。困っている子がいる、これが最も重要よ」

 

「娘の居場所の特定・保護、可能な限り確度を高め早期解決を目指します。ご協力よろしくお願いします」

 

 ナイトアイは、椅子から立ち上がってその場にいるヒーロー全員に頼み込んだ。

 その後バブルガールとセンチピーダーから個別に詳細を渡され、全員が目を通したところで会議は終わった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその後、緑谷と通形は他の5人と天喰と波動に『エリ』という女の子について話した。

 二人はパトロール中に路地裏から飛び出してきたエリを発見し、そこへ父親を名乗るオーバーホールが来たため通形は八斎會に探りを入れている事を勘付かれないようやり過ごそうとしたところをエリに泣いて抱きつかれた緑谷が食い下がったのだが、オーバーホールが殺気を放ってエリを従わせたので通形がそれ以上の詮索は得策ではないと判断し救出を断念したのだ。

 

「そうかそんな事が…悔しいな…」

 

「デクくん…」

 

「緑谷…」

 

 通形と緑谷は眉間に皺を寄せて俯き、他の7人は二人を心配していた。

 すると、近くのエレベーターが止まり中から相澤が出て来る。

 

「…通夜でもしてんのか」

 

「先生!」

 

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ。いやァしかし…今日は君達のインターン中止を提言する予定だったんだがなァ…」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 相澤が言うと、ひなた達6人は目を見開く。

 切島に至っては席から立ち上がった。

 

「ええ!? 今更何で!!」

 

「連合が関わってくる可能性があると聞かされたろ。話は変わってくる。ただなァ………緑谷、お前はまだ俺の信頼を取り戻せていないんだよ」

 

 相澤は、頭を掻くと緑谷の視線に合わせてしゃがむ。

 

「残念な事にここで止めたらお前はまた飛び出してしまうと、俺は確信してしまった。俺が見ておく。正規の活躍をしよう、緑谷。わかったか、問題児」

 

 相澤は、緑谷の胸に拳を当てて言った。

 天喰と波動も、俯いている通形を励ます。

 

「ミリオ…顔を上げてくれ」

 

「ねえ私知ってるの、ねえ通形、後悔して落ち込んでてもね、仕方ないんだよ! 知ってた!?」

 

「…ああ」

 

 二人が言うと、通形は前を向いた。

 すると相澤が緑谷に言葉をかける。

 

「気休めを言う。掴み損ねたその手はエリちゃんにとって、必ずしも絶望だったとは限らない。前向いていこう」

 

「はい!!!!」

 

 相澤が立ち上がると、緑谷は声を張り上げて返事した。

 

「俺…イレイザーヘッドに一生ついていきます!」

 

「一生はやめてくれ」

 

「すいアっせん!!」

 

「切島くん声デカい…!」

 

 切島が相澤に一生ついていくと言うと、相澤が宥め麗日が注意した。

 すると相澤は心操とひなたを除く他の4人に言った。

 

「…とは言ってもだ。プロと同等かそれ以上の実力を持つビッグ3やこの作戦に適任の“個性”を持つ心操はともかく、お前達の役割は薄いと思う。蛙吹、麗日、切島。お前達は自分の意志でここにいるわけでもない。どうしたい」

 

「先っ…イレイザーヘッド! あんな話聞かされてもう、やめときましょとはいきません…!!」

 

「イレイザーがダメと言わないのなら…お力添えさせて欲しいわ。小さな女の子を傷つけるなんて許せないもの」

 

 麗日と蛙吹が言うと、天喰が隙あらばと言わんばかりに口を挟む。

 

「会議に参加させてる以上、ヒーロー達は1年生の実力を認めてると…思う。現に俺なんかよりも、1年の方がよっぽど輝かしい」

 

「天喰くん隙あらばだねえ」

 

 天喰が自分を卑下すると、波動がツッコミを入れる。

 すると、切島も拳をガキンと鳴らして言った。

 

「俺らの力が少しでもその子の為ンなるなら、やるぜイレイザーヘッド!」

 

「意思確認をしたかった。わかってるならいい。だがひなた、お前は…「やるから僕」

 

 相澤がひなたに何かを言おうとするとひなたが食い気味に答えるので、相澤は呆れ返った表情を浮かべる。

 

「どうせ今、止める気だったんでしょ。おと…イレイザーが言おうとしてる事はわかるよ。でも、だからこそ僕が行かなきゃいけないと思う。僕は、ここで二の足を踏むような臆病者になれと教わった憶えはないよ。僕は、傷ついて泣いてる女の子を救ける為にヒーローになったんだ」

 

 ひなたは、相澤の目を真っ直ぐ見て自分の意見を伝えた。

 相澤は、ひなたの読み通りひなたの事だけは踏み込ませないつもりでいた。

 それは他でもない、ひなたの為だった。

 ひなたと同じような境遇を抱えるエリを目の前にした時、過去に自分がされた仕打ちがフラッシュバックして動けなくなってしまうのではないかと心配していたのだ。

 ひなたも当然、相澤が自分の事を心配して止めようとしている事は重々承知だった。

 

 だが、それでもひなたは立ち止まるわけにはいかなかった。

 作戦会議でエリの事を聞かされた時、ひなたは名前しか知らない少女の姿を過去の自分と重ねていた。

 かつて何の希望も見い出せなかった自分を相澤が救い出したように、自分も誰かを救い出す為にヒーローになると誓ったのだ。

 今ここで二の足を踏むようなら、ヒーローになった意味が無かった。

 

 ひなたがどれ程の覚悟で決断したのかは、固く握りしめた拳を見ればわかる事だった。

 すると、心操もひなたの隣に立って固く握りしめた左拳をそっと右手で包みながら言った。

 

「イレイザーヘッド。俺からもお願いします。エリちゃんを救けたいという思いは、俺もひなたも同じだと思うんで…ひなたが立ち止まった時は、俺達が支えます」

 

 心操からも頼み込むと、ひなたは心操に手を握られた事で少し頬を赤らめつつ「お願いします」と頭を下げた。

 すると相澤は、軽くため息をついて言った。

 

「…わかった。そこまで言うなら俺も止めはしない。お前はもう、自分で自分にケジメつけられない程子供じゃないだろうしな」

 

「うん!」

 

 相澤が言うと、ひなたは両手を胸の前で軽く握って頷く。

 すると、二人の話を聞いて何かあったのかと思った切島が相澤に尋ねる。

 

「え、何? 何の話っスか?」

 

「ああ、いや! 何でもない! こっちの話!」

 

 切島が相澤に尋ねると、ひなたは慌てて誤魔化した。

 自分の本当の生い立ちは、心操以外のクラスメイトにはまだ秘密にしていたのだ。

 すると相澤が話の続きをする。

 

「話戻すぞ。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的。それ以上は踏み込まない。一番の懸念である(ヴィラン)連合の影、警察やナイトアイらの見解では、良好な協力関係にはないとして…今回のガサ入れで奴等も同じ場所にいる可能性は低いと見ている。だが万が一見当違いで…連合にまで目的が及ぶ場合は、そこまでだ」

 

「了解です!」

 

 ひなた達は、エリという少女の救出に向けて本格的に動き出すのだった。

 

 

 

 

 

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