感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
面白いと思っていただけましたらお気に入り登録よろしくお願いします。
GO!!
エリの居場所が特定できるまでの間、ひなた達は待機となった。
またインターンに関しては一切の口外を禁止された。
崖登りの訓練では、ひなた、蛙吹、切島の三人が群を抜いたスピードでよじ登っていく。
「インターン組動きがキレてる」
「外で何か掴みやがったんだ…! コラオイ何掴んだんだ言え!!」
「ワリー言えねえ!!」
爆豪はキレ散らかして問い詰めるが、切島は口止めされているため答えなかった。
そして昼食の時、ひなたと心操はA組男子の中で仲が良い緑谷、飯田、轟の3人と一緒に食堂でランチラッシュの作った昼食を食べていた。
ひなたは煮干しラーメンと天津飯と餃子とエビチリと青椒肉絲を、心操は日替わり定食を、緑谷はカツ丼を、飯田はビーフシチューを、轟は蕎麦を頼んで食べていたのだが、緑谷だけは箸が止まっていた。
「デッくん」
「食わねえのか?」
「食うよ! 食うクー!」
ひなたと轟が尋ねると、緑谷は慌てて答えた。
そんな緑谷の様子を見て、4人は心配していた。
「…………大丈夫か」
「インターン入ってから浮かねえ顔が続いてる」
「そ……うかな!?」
飯田と轟が尋ねると、緑谷は慌てて箸を進めようとした。
すると轟が心操に尋ねる。
「緑谷、何かあったか?」
「ごめん守秘義務あるから言えない」
「そうか」
緑谷がまだ若干浮かない表情をしていると、飯田が緑谷に言った。
「『本当にどうしようもなくなったら言ってくれ、友達だろ』いつかの愚かな俺に君がかけてくれた言葉さ!」
それを聞いた緑谷はハッとした。
「……職場体験前の……」
飯田が続けると、緑谷は突然泣き出した。
「うっ…うう…」
「え!? オイ!?」
「ごめん…!! 大丈夫、何でもない……」
緑谷は、涙を拭うとカツ丼を頬張った。
「ヒーローは…泣かない…! どんな時でも笑うんだ!」
緑谷がカツ丼を口の中へとかき込むと、轟が声をかける。
「いや……ヒーローも笑えない時はあるし泣く時ゃ泣くだろ…多分…蕎麦、半玉やろうか?」
「ビーフシチューもやろう」
「デッくんギョーザどうぞ」
「生姜焼き食うか?」
「ありがとう…」
「ネギいるか?」
「いただきます…」
「ワサビいるか」
「うん」
◇◇◇
その頃、プロヒーロー達はそれぞれ自分の持ち場を隈なく探していた。
そしてナイトアイはというと、デパートに来ていた。
構成員の一人がデパートに入っていくところを確認したナイトアイは、構成員の跡を尾けデパートに入った。
構成員が真っ先に向かったのは、幼児向けの玩具売り場だった。
ナイトアイは、しばらく構成員の様子を見る事にした。
すると、構成員は真っ先にレジへと向かっていきレジの店員に尋ねた。
「なあ、プリ何とかとかいうオモチャ探してんだけど」
「……プリキュア…でしょうか?」
「ああー、それだ思い出した! 『ふたりはプリキュア』ってヤツだ! オモチャどこにある!?」
「それは何年も前のシリーズで、今は…『デリシャスパーティ♡プリキュア』…」
「めんど、まァいいや、それどこ?」
構成員が店員に尋ねると、ナイトアイは女児向けのオモチャを片手に後ろから男の肩を掴みながら声をかける。
「ここにありますよ」
「何だてめェ…」
ナイトアイは、男に対して予知を使った。
「私も、好きなんですよ」
サー・ナイトアイ
本名 佐々木未来
“個性”『予知』
対象人物の一部に触れ目線を合わせる事で、一時間の間その人物の取りうる行動を先に“見る”事ができる!
ナイトアイが予知で構成員の未来を見ていると、案の定玩具でエリの機嫌を取ろうとしている場面が脳裏に浮かんだ。
エリの居場所がわかったナイトアイは、そういう趣味の人間の演技を続けて玩具を購入した。
◇◇◇
そして後日。
「「「「本拠地にいるう!!?」」」」
ナイトアイに向かって、プロヒーロー達は一斉に叫んだ。
「何だよ、俺達の調査は無駄だったわけか」
「いえ、新たな情報も得られました」
「どうやって確信に至った!」
ヒーロー達に問い詰められると、ナイトアイはデパートで買った玩具を机の上に置いた。
「八斎會の構成員が先日、近くのデパートで女児向けの玩具を購入していました」
「はあ!?」
「何じゃそらァ…!」
するとファットガムが反論する。
「そういう趣味の人かもしれへんやろ!! 世界は広いんやでナイトアイ! ちゅーか何でお前も買うてんねん!」
「いえ…そういう趣味を持つ人間ならば、確実に言わない台詞を吐いていた。そこで予知を使い未来を見たところ、玩具で治崎の娘の機嫌を取っている所が脳裏に浮かびました」
「予知使うのかよ!」
ファットガムの反論に対しナイトアイが説明すると、ロックロックがツッコミを入れる。
「確信を得た時、ダメ押しで使うと先日も言ったはず」
「とにかくコレでようやっと決まりっちゅうわけやな」
ナイトアイが言うと、ファットガムも納得する。
「奴が家にいる時間帯は張り込みによりバッチリでございます」
「令状も出ている。後は」
センチピーダーが言うと、グラントリノも準備万端といった様子で言った。
◇◇◇
そして作戦決行日前日深夜。
ひなた達6人は、携帯を持って集まった。
「来たか?」
「うん……」
「決行日…!」
そしてビッグ3も、寮の外で集まっていた。
「ミリオ…」
「頑張りましょう」
「ああ」
◇◇◇
そして作戦決行日当時午前8時、警察署前。
ナイトアイが構成員のその後を見た結果、八斎會宅には届出の無い入り組んだ地下施設が存在しその一室の中に今回の目的であるエリが匿われている事が確定した。
念の為、ひなたの“個性”で八斎會宅を入念に調べてからの突撃となった。
「あー、あーあー、あー」
ひなたは、“個性”の音波で八斎會宅を索敵する。
ひなたが索敵をしている間にも、警察はヒーロー達に今回の作戦の確認をしていた。
「しかし目指すにしても、“個性”を駆使されれば捜索は難航する。そこで、分かる範囲だが八斎會の登録“個性”をリストアップしておいた。頭に入れといてくれ!」
警察は、まとめ上げたリストをプロヒーロー達に配る。
「こういうのはパッと出せるっていいよな」
「隠蔽の時間を与えぬ為にも、全構成員の確認、捕捉等可能な限り迅速に行いたい」
警察の説明を聞いたビッグ3やひなた達6人も、作戦のため準備をしていた。
「決まったら早いスね!」
「君朝から元気だな…」
切島のテンションに対し、天喰はついていけない様子でいた。
「緊張してきた」
「探偵業のような事から警察との協力…知らない事だらけ」
「ね! 不思議だね」
麗日は緊張し蛙吹が頬に指を当てながら不思議がっていると、波動は蛙吹の仕草を真似しながら一緒に不思議がっていた。
するとリューキュウが二人に共感する。
「そういうのって学校じゃ深く教えてくれなくて、新人時代苦労したよ」
「わかる」
「プロ皆落ち着いてんな! 慣れか!」
プロヒーローの落ち着きぶりに切島が感心する中、緑谷はキョロキョロと見渡す。
「皆……………グラントリノがいないよ…どうしたんだろ」
緑谷がグラントリノの姿がない事を気にしていると、ナイトアイが答えた。
「あの人は来れなくなったそうだ」
「え…」
ナイトアイが言うと、緑谷が少し驚く。
刑事は、驚いている緑谷に対して説明を続ける。
「塚内が行ってる連合の件に大きな動きがあったみたいでな。悔しそうだったよ。だがまァこちらも人手は充分。支障は無い」
「そっか……」
刑事が言うと、緑谷は少し残念そうに納得した。
「八斎會と
「それだ! っし…!!」
切島が言うと、緑谷は気合を入れた。
するとイレイザーヘッドが緑谷に声をかける。
「おい」
「あっ、イレイザーヘッド!」
「俺と心操はナイトアイ事務所と動く。意味わかるな?」
「はい…!」
イレイザーヘッドが言うと、緑谷が頷く。
イレイザーヘッドが言ったのは、緑谷は自分が見ておくと言う意味だった。
するとその直後、ひなたが報告をする。
「いました! 治崎とエリちゃん、玄野、構成員8名! あと下っ端の構成員が50名ほど、それと…渡我と分倍河原も一緒です!」
ひなたが叫ぶと、他のヒーロー達や警察は驚いた表情を見せる。
「な…んだと!?」
「良好な協力関係にはないと踏んでいたが…奴等、
「みたいですね。うわ、殺気立ってる。これ、僕達が来てる事、勘付かれてますよ。一人門の前で待ち伏せしてます」
ヒーロー達や警察が驚く中、ひなたは索敵を続けた。
すると刑事がヒーロー達に向かって言った。
「我々の最悪の予測が的中してしまったわけか…ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない。相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うして欲しい! 出動!」
ヒーロー達は、刑事の指示を合図に八斎會本拠地へと足を運んだ。
◇◇◇
そして午前8時50分、決行。
「令状読み上げたらダ━━ッ!! っと! 行くんで! 速やかによろしくお願いします」
「しつこいな、信用されてねえのか」
「集中しましょ、ロックロック」
警察の指示に対してロックロックが悪態をつくと、ファットガムが窘める。
「そういう意味やないやろ、意地悪やな」
「フン、そもそもよぉ。ヤクザ者なんてコソコソ生きる日陰者だ。待ち伏せしてるってのも嬢ちゃんの勘違いじゃねえの?」
ロックロックが言い、警察がインターホンを鳴らそうとした、次の瞬間だった。
ガォッ!!
「何なんですかァ」
「!!」
突然ペストマスクをつけた巨漢が、正門を突き破った。
死穢八斎會の構成員の一人、活瓶だ。
ひなたが索敵をしていなければ、警察は何名か吹っ飛ばされていたところだったが、ひなたが爆音の衝撃波を浴びせて無力化する。
「ぬぁあああああっ!!」
ひなたの音波を喰らった活瓶は、“個性”を消されたせいか、みるみるうちに縮んでいく。
ひなたが爆音を浴びせて活瓶を無力化すると、リューキュウはそのまま活瓶に飛びつき、地面にねじ伏せた。
「確保ォ!! 皆、行って!!」
「はい!」
リューキュウが押さえている間に、他のヒーロー達が敷地内へ畳み掛ける。
すると、屋敷からヤクザがゾロゾロと出てくる。
「おォい何じゃてめぇら!」
「勝手に上がり込んでんじゃね━━━━━!!」
突入したヒーロー達に対しヤクザがキレると、警察が令状を持って乗り込む。
「ヒーローと警察だ! 違法薬物製造・販売の容疑で捜索令状が出てる!」
「こてこての人だ、すげえ…!!」
「うん」
本物のヤクザに切島が感動し、ひなたも少し驚いていた。
「真っ直ぐ最短で、目的まで!!」
◇◇◇
その頃、オーバーホールとクロノスタシスは地下道を通ってエリの部屋へ向かっていた。
「大人数が同じ方向に全速力で走ってる。つまり行きたい場所が決まってる。多分ここの事もバレてやすね。見つかったらおじゃんだ」
「いつかこういう事態になるとは想定していたが…早かったな…今見つかるわけにはいかない。『俺はここにいない』『あいつらが勝手に暴れた』そういう事にしよう。その為に育てた駒だ」
「鉄砲玉八斎衆、彼等が時間を稼ぐ」
鉄砲玉八斎衆と呼ばれる八人の部下が、それぞれ持ち場について待ち構えていた。
◇◇◇
そしてその頃地上では、組員がヒーローと交戦していた。
「おぉ何様じゃ、待て待てなんじゃてめェら!?」
「捜査だって言ってるでしょ!!」
「暴れないで下さい!!」
警察とヒーローは、暴れる組員達を“個性”で押さえつけた。
「道を空けて!! 後先考えずに暴れると後悔するよ!!」
「組総出で時間稼ぎかよ…! 何て破滅的な…」
組員達が考えなしに突っ込んでくると、ヒーロー達は驚いた様子で応戦する。
リューキュウ事務所や他のヒーロー達が足止めしている間に、ひなた達や警察は八斎會の屋敷に突入した。
「火急の用や、土足で失礼するで!!」
ファットガムが叫び、センチピーダーとバブルガールを先頭にヒーローと警察が屋敷内に雪崩れ込む。
「俺ァだいぶ不安になってきたぜオイ。始まったらもう進むしかねえがよ」
「どこかから情報が漏れてたのだろうか…いやに一丸となってる気が……」
ロックロックは動揺を隠せず、天喰も不安そうにしていた。
すると刑事が答える。
「だったらもっとスマートに躱せる方法を取るだろ。意思の統一は普段から言われてるんだろう」
「盃を交わせば親や兄貴分に忠義を尽くす。肩身が狭い分昔ながらの結束を重視してんだろうな…この騒ぎ…そして治崎や幹部が姿を見せてない。今頃地下で隠蔽や逃走の準備中だろうな」
「捨て石…って事ですか」
「ああ」
イレイザーヘッドが言うと心操が言い、イレイザーヘッドが心操に同意する。
すると切島もオーバーホールのやり方に怒りを露わにする。
「忠義じゃねえやそんなもん!! 子分に責任押し付けて逃げ出そうなんて漢らしくねえ!!」
「うん、何かヤな感じ! コソコソしててカッコ悪いや」
「んん!!」
切島とひなたの言葉に、ファットガムも同意する。
すると、ナイトアイが床の間の前で立ち止まる。
「ここだ。この下に隠し通路を開く仕掛けがある。この板敷きを決まった順番に押さえると開く」
ナイトアイは、花瓶を退かして板敷きを押した。
すると、ゴゴゴと床の間が動く音が聞こえる。
「忍者屋敷かっての! ですね!」
「見てなきゃ気付かんな、まだ姿を見せてない“個性”に気をつけましょう」
隠し扉を発見したバブルガールは、早速扉を開けようとする。
すると、扉の向こうの音を聞いていたひなたが叫ぶ。
「待ってください! その隠し扉の向こう、三人います!」
「わかった!」
ひなたが報告すると、センチピーダーとバブルガールが戦闘態勢を取りつつ扉を開けた。
すると次の瞬間、扉の奥から三人のヤクザが飛び出してきた。
「なァアんじゃてめエエエらアアア!!!」
「一人頼む!」
センチピーダーはヤクザのうち二人を拘束し、もう一人はバブルガールが目に泡を当ててその隙に組み伏せた。
「はいごめんね!!」
「目がー!!!」
「追ってこないよう大人しくさせます! 先行って下さい、すぐ合流します!」
「疾え…!!」
「鋭ちゃん! 感心してる場合じゃない! 行くよ!」
「お、おう!」
二人の早技に、切島は感心していた。
するとひなたが切島に向かって叫ぶ。
「行くぞ!! もうすぐだ、急ぐぞ!」
ヒーローと警察は、ナイトアイを先頭に隠し階段を降りていく。
だが、進んだ先は行き止まりだった。
「行き止まりじゃねえか!! 道合ってんだよな!?」
「説明しろナイトアイ!」
ナイトアイが予知で正しい道を通ってきたにもかかわらず行き止まりだったので、刑事とロックロックが動揺する。
もしやと思ったひなたは、壁に耳を近づけて向こう側の音を聴いた。
「この先に空間が続いてます。これ、本当に壁かな…」
「俺見て来ます!!」
通形は、壁に走っていって壁に顔を通過させた。
「ルミリオン先輩待って!! またマッパに…」
「わ゛━━━!?」
「ミリオのコスチュームは奴の毛髪から作られた特殊な繊維だ。発動に呼応し透過するように出来ている」
「よ、良かった…」
切島が通形がまた全裸になってしまうのではないかと思い心配し、ひなたが顔を赤くして両手で顔を覆う。
それに対し天喰が説明すると、ひなたはホッと胸を撫で下ろす。
通形が壁を透過すると、道が続いていた。
「クレシェンドの言う通り、壁で塞いであるだけです! ただかなり厚い壁です」
「治崎の『分解』して『治す』“個性”ならこういう事も可能か」
「小細工を───…」
通形の説明に対してヒーロー達が苛つきファットガムがグッと拳に力を込めると、緑谷、切島、ひなたの3人が前に出る。
「来られたら困るって言ってるようなもんだ!!」
「そだな!! 妨害できてるつもりならめでてーな!!」
「目の前に壁があるならブチ破るだけだ!」
三人はそれぞれ“個性”を発動し、壁に向かって突き進んでいく。
「ワンフォーオールフルカウル!! シュートスタイル!!!」
「『
「『
緑谷は超パワーで壁を蹴破り、切島は硬化した拳で殴り、ひなたは爆音で壁を貫く。
三人は、それぞれの必殺技で壁を破壊した。
するとロックロックとファットガムが驚く。
「……ちったぁやるじゃねえか…」
「先越されたわ」
「進みましょう────…」
ヒーロー達が先へ進もうとしたその時、道がグニャグニャとうねって変形する。
「「「「!?」」」」
「待て、これは…!! 道が!! うねって変わっていく!!」
変形する地下道を見て、刑事が口を開く。
「治崎じゃねえ…逸脱してる! 考えられるとしたら……本部長『入中』! しかし! 規模が大きすぎるぞ、奴が入り操れるのはせいぜい冷蔵庫ほどの大きさまでと──…」
「かな━━りキツめにブーストさせれば、無い話じゃァないか……」
刑事の疑問に対しファットガムが自身の仮説を話すと、ひなたはピンときたのか僅かに目を見開く。
ひなたが先日倒したチンピラも、元は『せいぜいオイルランプ一杯分程度の火を体内に取り込んで操る』“個性”のはずだったのだが、薬でかなり強めにブーストさせて大量の炎を取り込んで操れるようになっていたのだ。
「物に入り自由に操れる“個性”…!! 『擬態』! 地下を形成するコンクリに入り込んで、生き迷宮となってるんだ…!!!」
「何に化けとるか注意しとったが…まさかの『地下』、こんなん相当身体に負担かかるはずやで…イレイザー消せへんのか!!?」
「本体が見えないとどうにも──…」
刑事が口を開きファットガムがイレイザーヘッドに尋ねると、イレイザーヘッドが答える。
すると天喰がうねる地下道を見てパニックに陥ってしまう。
「道を作り変えられ続けたら…目的まで辿り着けない…その間に向こうはいくらでも逃げ道を用意できる。即時にこの対応、判断…ああダメだ…もう……女の子を救い出すどころか俺達も─────…!!」
天喰がパニックに陥っていると、通形が声をかけた。
「環!! そうはならないし、お前はサンイーターだ!! そして!! こんなのはその場凌ぎ! どれだけ道を歪めようとも、目的の方向さえわかっていれば俺は行ける!」
「ルミリオン!」
「先輩!」
「目的の方向……」
通形が言うと、ひなたは僅かに目を見開く。
冷静に状況を判断している通形を見て、自分もこうなりたいと願いながら目を瞑り、屋敷内の音を感知した。
壊理と治崎を見つけたひなたは、その方向を指差して通形に報告した。
「先輩! 文字通り真っ直ぐ突っ切ってください! エリちゃんと治崎、あと玄野がいます!」
「ありがとう!」
ひなたが報告をすると、通形は笑顔でひなたにサムズアップをした。
するとひなたも、少し嬉しそうにサムズアップを返す。
「スピード勝負、奴等も分かっているからこその時間稼ぎでしょう! 先に向かってます!!」
通形は、透過で先にオーバーホールの元へ向かった。
天喰は、こんな時でも持ち前の明るさを失わない通形を見て目を見開いていた。
「ミリオ…!!」
通形が行った直後、ひなたも自分にできる事をしようと心に決める。
「皆さん、僕が元に戻してみます! 耳塞いで!」
ひなたは、髪をざわつかせて瞳を光らせながら言った。
ひなたの“個性”を知っているイレイザーヘッドは、返事をする代わりに目で応えた。
「『
ひなたが大声を発して迷路を元に戻そうとした、その瞬間だった。
床が大きく開き、ひなた以外のヒーロー達が下に落ちた。
ひなたはアコースティックシューズを起動させて落下を防ぎ、近くにいた心操を拾い上げたが、それ以外の全員は下へと落ちてしまった。
「皆さん!!」
ひなたは、捕縛武器を伸ばして他の全員を拾い上げようとする。
だが間に合わず、落とし穴がコンクリートで塞がれる。
そしてヒーロー達は全員広間に落ちた。
「広間…?」
「ますます目的から遠のいたぞ、いいようにやられてるじゃねえか!!」
するとその時、土煙の中から三つの人影が現れる。
「おいおいおいおい空から国家権力が…」
「!?」
「不思議な事もあるもんだ」
現れたのは右目が前髪で隠れペストマスクをつけた男、スキンヘッドでマスクをつけた男、そしててるてる坊主のような顔の男だった。
それを見たファットガムが戦闘準備をしようとする。
「よっぽど全面戦争したいらしいな…! 流石にそろそろプロの力見せつけ──…」
すると、天喰がファットガムの前に立って止める。
「そのプロの力は、目的の為に…!! こんな時間稼ぎ要員────…俺一人で充分だ」
天喰が言うと、切島が止めた。
「何言ってんスか!? 協力しましょう!」
すると、右目が隠れた男が刀を抜く。
「そうだ協力しろ、全員殺ってやる」
「『窃野』だ!! こいつ相手に銃は出せん、ヒーロー頼む!」
「バレてんのか、まァいいや。暴れやすくなるだけだ!!」
窃野は刀を振りかぶって突進してくる。
するとイレイザーヘッドが前に出て窃野の“個性”を消した。
「ならないぞ、刀捨てろ」
「!? 使えねえ!?」
窃野が“個性”を使えなくなると、スキンヘッドの男が銃を構える。
するとファットガムが前に出る。
「刀も銃弾も俺の身体に沈むだけや、大人しく捕まった方が身の為やぞ!!」
「そういう脅しは命が惜しい奴にしか効かねんだよ」
ファットガムが言うと、窃野はニヤリと笑いながら言った。
「イレイザーが抑えてる今なら武器も使える! 観念して投降しろ!」
するとその時、巨大な二枚貝の中に入った天喰が窃野とスキンヘッドの間を通り過ぎ、貝の中からタコの足を出して三人を拘束した。
そしてタコの足で絡めとった武器を、蟹の鋏に変えた手で粉々に砕く。
「『窃盗』窃野、『結晶』宝生、『食』多部、俺が相手します。ファット事務所でタコ焼き三昧だったからタコの熟練度は極まってるし…以前撃たれた事でこういうものには敏感になってる。こいつらは相手にするだけ無駄だ。何人ものプロがこの場に留まっているこの状況がもう思う壺だ」
「……へっへへ…」
「でも先輩…」
切島が天喰を心配すると、天喰は切島達に向かって叫んだ。
「スピード勝負なら一秒でも無駄にできない!! イレイザー筆頭にプロの“個性”はこの先にとっておくべきだ!! 蠢く地下を突破するパワーも! 拳銃を持つ警察も! ファットガム! 俺なら一人で三人完封できる!」
天喰が言うと、ファットガムは切島を連れて扉の向こうへ進んだ。
「行くぞあの扉や」
「ファット!」
「オイオイオイ待て待て」
窃野は“個性”を使おうとしたがイレイザーヘッドが“個性”を消して阻止する。
「まーた…!!」
イレイザーヘッドは、続けて多部の頭を叩いて意識を奪う。
「三人を見といた。効果がある間に動きを止めろ!」
「皆さん!! ミリオを頼むよ! あいつは…絶対無理するから助けてやってくれ」
天喰が通形の事をヒーロー達に頼むと、一行は扉の向こうへと進んだ。
だが切島とロックロックは、天喰を一人置いて行った事を納得していない様子だった。
「ファット!! 先輩一人残すなんて何考えてんスか!!!」
「お前んとこの人間だ、お前の判断に任せたが、正直マズいんじゃねえか?」
二人が声を荒げると、ファットガムが冷静に返す。
「あいつの実力はこの場の誰よりも上や。ただ心が弱かった。完璧にやらなアカンっちゅうプレッシャーで自分を圧し潰しとるんや。そんな状態であいつは雄英のビッグ3に登り詰めた。そんな人間が『完封できる』と断言したんや、ほんなら任せるしかないやろ」
一方天喰は、タコの触腕で三人を拘束していた。
三人は『目標に向かう者を排除する役』で、入中の“個性”も動きがなかったので上にいる警察を優先したのかと考える。
どのみち迷宮全体を完全に把握して精緻な操作が出来る能力があるわけではないと考え、三人を制圧しようとしていた。
「まだ”個性”使えねー! 気持ちわりい感覚だ!」
窃野が不愉快そうに叫ぶと、天喰がタコの触腕に変えた右腕を振りかぶる。
「同時に三人、悪いが寝てもらう」
そう言って天喰が食椀を丸めて三人を殴ろうとすると、いきなり窃野が飛び出し丸めた触腕に頭突きを仕掛けてくる。
すると天喰の触腕に痛みが走り、天喰は思わず怯んで触腕を引っ込める。
触腕には、刃物で切られたような傷ができており血が滴っていた。
「ビックリして思わず引いちゃったなァ? …急いでんのはわかるが、横着しちゃいけねえよ。ゴミみたいな人間相手にしてんだからよォ、マスクの下に何隠してるかわかったもんじゃねえよ」
窃野は、ペストマスクの中に刃物を隠し持っていた。
すると宝生の身体からボコボコと結晶が生える。
「さっきの小汚え男の”個性”も時間切れだ」
宝生は、身体から生やした結晶で触腕を押し広げて抜け出し、天喰の方へと突進する。
天喰は貝殻で宝生を殴ろうとしたが、突然右腕の貝殻が消える。
窃野の手には、天喰が生やした貝殻が握られていた。
「殺せねーってのはハンデだなァ!! 良いご身分だぜ」
窃野の“個性”は『窃盗』、人が身につけているモノに限り瞬時に手元へ移動させるという“個性”だった。
天喰の貝殻も『身につけている』事になるため、手元へ引き寄せられてしまうのだ。
「俺たちゃ元々人生捨てた身だ!! 飛び降りをヒーローにキャッチされた時ァまァ絶望したもんだ! 生きる価値を見出せなくなった人間! わかんねぇだろ! 若頭はそんなゴミを拾って再利用してくれてる!」
「ゴミにもプライドはあるんだぜ? 期待されちまったら…応えねぇとなぁ!!」
宝生は、結晶を生やした拳で天喰を殴りつける。
だが天喰は、腕に筋肉を集めタコの吸盤と蟹の殻でできた拳で宝生の拳を受け止めていた。
「諦めろ、俺は…
だが…
「良い使い方をする…だがそれまで!!」
宝生は、巨大な結晶を無数に生やして天喰を押し返した。
すると天喰は、雄英で二年半伸ばし続けた“個性”をフルに活かして必殺技を放つ。
「混成大夥『キメラ・クラーケン』!!」
天喰は、顔を甲羅でガードし、全身から巨大なタコの触腕を生やして三人に襲いかかった。
広間中でタコの触腕が激しく暴れて宝生のガードも簡単に砕かれ、三人は一気に窮地へ追いやられた。
先程まで天喰を嘲笑っていた窃野も、動揺して目を見開いていた。
「オイオイオイオイオイ!!! こういう事かよ!! 多部ェ起きろ!! 飯だ!!」
窃野が叫ぶと、多部は触腕を食いちぎる。
すると触腕を食いちぎられた痛みで天喰が顔を歪める。
「タコうまっ、うまっ、うまっ」
多部は、次々と触腕を食いちぎっていく。
すると再び窃野が天喰を嘲笑う。
「ハハハ!! どんなモノでも一瞬で喰らう歯と顎! そして食った側から消化しちまう胃袋だ!! 多部の腹が満ちる事は無いぜ!? 痛そうだな!! でもお前ら良い相性してるぜ」
食べ物の特徴を再現する天喰にとって、何でも食べてしまう多部は相性最悪だった。
イレイザーヘッドは、天喰と多部の“個性”の相性を考えて真っ先に多部を気絶させたのだ。
だがそれでも天喰は多部の噛みちぎるスピードを上回るスピードで攻撃を続けようとする。
だがその時、突然天喰の顔の甲羅が剥がれる。
「3対1を望んだのは……ハハハ!! お前だよなァサンイーター!? まさかでっけえタコ足ブン回して“完封”とか考えてたか!?」
天喰から顔の甲羅を盗んだ窃野が嘲笑うと、その直後宝生が結晶を生やした拳で天喰の顔面を殴る。
辛うじて顔から甲羅を生やしてガードした天喰だったが、そのまま宝生に殴り飛ばされる。
天喰は、顔を負傷して意識が朦朧としつつもマダコの唾液に含まれる神経毒を触腕に再現して多部に喰らわせようとする。
だがその時、窃野が天喰の触腕を盗んだ。
「でかすぎて盗れなかったが、ここまで小さくなりゃ別だ」
するとその直後、宝生が長く伸ばした結晶で天喰を壁に叩きつける。
「ガハッ」
流れるような連携プレイに、天喰は手も足も出なかった。
宝生は、ボロボロになっている天喰に話しかける。
「俺達はゴミだが、ゴミなりに固い絆で結ばれているのさ」
「…………お前達は逮捕される。俺に勝っても先は無い」
「それがどうした」
天喰が正論を言うと、宝生はサラッと流し窃野が天喰の携帯していたポーチを盗む。
すると宝生が語り始める。
「或る者は社会に適応できず捨てられた。或る者は恋人に裏切られ多額の借金を背負った。死ぬ事すら許されず泥水を啜る日々。或る者は金の亡者に道具として利用され、生成した宝石が金にならない贋物だとわかると要らぬ人間だと徹底的に打ちのめされた。そんな俺達にあいつは声をかけてくれた。後先なんか知ったこっちゃない!! 価値を与えてくれた男の為、邪魔者は殺す」
オーバーホールは、部下を恐怖で従わせてなどいなかった。
絶望の底に堕ちた人間を掬い上げて自分に依存させる、それがオーバーホールのやり方だった。
「使い捨てられる事が本望なのか!?」
「ヒーローには理解できんさ! さァ死ね!! 先程のようにはいかんぞ! 壁を背にこいつを受けられるか!!?」
宝生は、巨大な結晶の柱を生やした右腕を振りかぶる。
すると天喰は左足を鳥の足に変え、足元に転がっていた結晶を弾き飛ばして窃野の目元にぶつける。
窃野が怯んだ隙に、天喰は宝生に顔を殴られた時に口に含んでいた結晶を再現して宝生の結晶をガードする。
「俺の…!? 相殺された!! まさか…俺の結晶を!!」
「そういう事だ!!」
宝生が怯んだ隙に、天喰は巨大な鳥の足で宝生の上半身を掴んだ。
「互いを信頼した良い連携だったよ!!」
「喰う!! 喰う!! 喰う!! 喰う!!」
多部が大口を開けて突進してくると、天喰は宝生の身体を前に出した。
すると多部が怯んで動きを止める。
「お前達の境遇も、怒りも、哀しみも、俺にはわからないが…その固い絆とやらは俺にもわかる!!」
天喰は、左脚の筋肉を増強して伸ばし、そのまま宝生の身体を窃野と多部ごと壁に叩きつける。
天喰の足と宝生が生み出した結晶に押されて、三人はそのまま意識を手放した。
「ただ利用し合うだけの仲じゃない。『友達』は喰えないよな」