抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が13件9が45件…だと…!?
感謝感激雨霰。
念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
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ルミリオン

 イレイザーヘッド、緑谷、ロックロックの3人が合流した頃、ナイトアイはトゥワイス・乱波と対峙していた。

 

「どんな輩が来てんのかと思ったらコノヤロー只のリーマンじゃねェか!! ヤクザなめんなコノヤロー!! やっちゃって下さいよ乱波の兄貴!!」

 

 トゥワイスが叫ぶと、乱波はナイトアイにラッシュを仕掛ける。

 するとナイトアイは姿勢を低くして乱波のラッシュを避け、足払いを仕掛ける。

 だが乱波のラッシュはナイトアイに掠っており、ナイトアイのスーツが破れる。

 

「カスったか…強いな」

 

 バランスを崩した乱波に、ナイトアイが何かを投げつける。

 すると乱波は凄まじい勢いで壁に打ちつけられる。

 それを見たトゥワイスは呆然とし、警察も驚いていた。

 

「何が…起きた!?」

 

「戦闘用サポートアイテム 超質量印。約5㎏の印鑑です。サラリーマンの風体。このアイテムはユーモアが効いてるでしょう。『予測を立てて先手を打つ』、幾人もの未来を見てきたからか…近接において私はそられが他人より少し速い。しかしこれは読めなかった…まさか天下の(ヴィラン)連合が一介のヤクザに組するとはな」

 

 ナイトアイがそう言って押印を構えたその時、乱波の身体が溶けて崩れる。

 

「溶けた…!!」

 

 警察が驚いていると、トゥワイスは息を吸い込んで叫ぶ。

 

「ヤクザ、使えねェな!!」

 

 するとナイトアイがトゥワイスに押印を投げつけ、マスクが左半分破れる。

 ナイトアイが向かってくると、トゥワイスは慌てて逃げ出す。

 

「ってええ!! ちくしょうこのヤロー!!」

 

 トゥワイスが逃げるとナイトアイが追おうとしたが、二人の間に壁が降りた。

 

「早いんだよ!! 壁!! あとちょっと遅れてたらやられてたぞノロマヤクザァ!! 協力してやってんだからそっちも頑張れよ!!」

 

 トゥワイスは、入中に対して矛盾した文句を言った。

 トゥワイスが逃げた先には、トガがいた。

 

「仁くん、だいじょぶ?」

 

「トガちゃん…!」

 

 トガは、トゥワイスの頬に手を添えるとトゥワイスを慰めた。

 するとトゥワイスは感動で目に涙を浮かべる。

 

「せっかく協力してあげてるのに、ひどいねェゴクドー」

 

「…付き合おう、トガちゃん、君は悪魔だ…」

 

「悲しいねェ、零くん傷つけられて一番責任感じてるのにねェ」

 

「……妻…」

 

「それでも耐えて、決められた通り協力してあげてるのに、やだねェ、哀しいねェ仁くん。協力先がしょうもないと、報われないねェ」

 

 トガが言うと、トゥワイスも一緒になって八斎會をバカにした。

 

「これだからヤクザは絶滅寸前になるんだよ!」

 

「どうせきっと、寝たきりの組長さんがしょうもなかったんでしょうね」

 

「入中の兄貴はキレやすいっスなァ!」

 

「気の小さい人程怒りっぽいのです。怒って注意が散漫になります。気の小さい人程自分が弱いのを隠したがります。自分を強く見せたくて、人を上から見下すのです。ゴクドー、カッコ悪いですね」

 

 トガが言うと、入中は怒りが頂点にまで達したのか叫び声を上げた。

 

「キェエエエエエエエエエエ!!!!」

 

 するとその直後だった。

 

「ガァッ!?」

 

 突然、入中に爆音攻撃が浴びせられ、迷宮がこれ以上動かなくなる。

 そこには、息を切らしたひなたがいた。

 

「やぁっと当たった!!」

 

「相澤さん、心操くん!」

 

「ごめん、訳あって遅れた!!」

 

 ひなたが緑谷に声をかけ、心操が気を失った入中を捕縛武器で拘束した。

 するとナイトアイが眼鏡を押さえながら口を開く。

 

「クレシェンド、また君に助けられたようだな。だがこれで迷宮は終わった」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして時は遡り、通形が治崎を追って一直線に壁を進んでから二分後、ついに治崎に追いついていた。

 通形は、息を切らしながら治崎に話しかける。

 

「すいませんね…やっぱ、少し話聞かせてもらっていいですか?」

 

 すると治崎は、僅かに目を見開きながら言った。

 

「あの時の…すぐ来れるような道じゃなかったはずだが…」

 

「近道したんで…その子、保護しに来ました」

 

「……………………事情がわかったらヒーロー面か、学生さん。あの時見て見ぬ振りをしていたよな。お前に保護されるなんてこの子は望んじゃいない。この子にとってお前はヒーローじゃない」

 

 治崎は、通形に対して冷酷に言い放った。

 すると通形が口を開く。

 

「………だから来た」

 

「伝わらないな、わかりやすく言ってやろう」

 

 オーバーホールが通形に背を向けて歩き出すと、通形は足を透過させる。

 だが…

 

「死ぬって事だよ」

 

 その直後、通形は足元がおぼつかなくなり壁にぶつかってしまう。

 

「何っ…!!」

 

「ヒャヒャヒャヒャ! 酔っ払っちゃったかァア〜〜〜!?」

 

 天井から笑い声が聞こえたので見上げると、八斎衆の一人酒木が天井に張り付きながら顔に日本酒を浴びていた。

 

「ウィイイ、足元がァ、おぼつかっ、おぼつかねェエなァアア!? 俺もだよ!! だから下は歩かねェエエ! 俺に近付くなよォ、酔っ払いがうつっちまうぞ!!」

 

 すると、帽子とペストマスクを受けた男音本が拳銃を構えて撃つ。

 だが、弾丸は通形の身体をすり抜けた。

 

「どういう“個性”だ?」

 

「『透過』!! 発動中はあらゆるものがすり抜ける!」

 

 音本が尋ねると、通形は自分の個性を話してしまった。

 そしてハッと気付いた通形は咄嗟に口を塞ぐ。

 

「どこから湧いたかと思ったが…なるほどそれならミミック達もスルーできるというわけか」

 

「ヘッタクソ外してんじゃねえや!! 酔っ払ってんのかァア!?」

 

「それは君だ」

 

「俺かあ」

 

 酒木が酔っ払って音本に日本酒の瓶を投げると、音本は瓶を床に叩きつけてツッコミを入れる。

 そして呆れた様子で酒木に指示を出す。

 

「君は黙ってこの特別な私をサポートしていれば良い」

 

「『強制的に喋らせる』…ってとこか…! 前線に立つタイプじゃ…ないね…!」

 

 通形は酩酊に苦しみながらも立ち上がるが、音本は間髪入れずに銃を撃ってくる。

 

「故に、他の使い捨てとは違う。私は、八斎衆の中で唯一! 若の野望に寄り添う事を許された身!!」

 

「実の娘を使って何が野望だ…!!」

 

 通形が言うと、音本は肩をすくめて首を傾げる。

 通形の『娘』という表現にピンときていない様子だったが、すぐにエリの事だとわかった。

 

「………? …ああ───、物事を円滑に進めるには情など不要。君もよくわかっているだろう。壊理さんと遭遇した際、君は物事を円滑に進める為に一度見過ごしたのだろう?」

 

「─────そうだ……」

 

 音本が尋ねると、通形は答える。

 音本の言葉は、確実に通形の心を抉っていた。

 

 

 

 音本真

 “個性”『真実(まこと)吐き』

 彼の問いかけは強制時に本心を語らせる!! 

 八斎會にスカウトされるまで彼は詐欺の常習犯だった。

 音本はよく知っていた。

 人は皆本性という弱みを隠していると! 

 時に本人すら気付いていない弱味を音本は引きずり出す!! 

 

 

 

 酒木泥泥

 “個性”『泥酔』

 近くにいる者の平衡感覚を奪う! 

 

 

 

「そして大方我々の計画を察知し、後悔。壊理さんを助ける? 壊理さんを蓑にして、自分が楽になりたいだけだろう?」

 

 音本は、通形の本音を見透かしそれを突きつけて通形の心を揺さぶった。

 すると通形は、悔しそうにグッと歯を食いしばる。

 

「見よ酒木、行ってしまう! 私は若の野望に! 若に必要とされている! ついて行かねば! 共に歩み! 成就の喜びを分かち合うのだ。さァ!! さァ!!」

 

 音本はそう叫びながら銃を撃ち、酒木は握っていたスローイングナイフを通形目掛けて投げつける。

 

「逝けよ邪魔者!」

 

 音本と酒木が同時に通形を攻撃すると、通形は身体を壁に沈める。

 

「必殺『ファントム・メナス』!!」

 

 そして瞬間移動で一気に二人に拳を叩き込んだ。

 すると通形が口を開く。

 

「そうだ」

 

 通形ミリオは、弱い事を受け入れてきた男だった。

 自分の弱さを受け入れてきたからこそ、励む事ができた。

 心も同様、彼にとって弱味とは隠すものではなかった。

 

「酩酊どころじゃない感覚を、いつも味わってる。あの子が笑えないままなんて、そんなの絶対許せない!!」

 

 通形は、透過を応用して二人の前に現れると重い一撃を浴びせた。

 

「POWERR!!」

 

 通形は、一瞬で二人を倒すと治崎の背後にワープした。

 

「治崎!!」

 

 そして治崎目掛けて拳を振るい、クロノスタシス目掛けて脚を振るう。

 治崎は通形の拳を避けたが、クロノスタシスは顔面に蹴りをモロ喰らった。

 

「った!」

 

 クロノスタシスが仰け反って壊理を手放すと、通形はすかさず壊理をキャッチした。

 

「何で…! 来たらダメだよ、あの人に殺されちゃう」

 

 壊理が焦った様子で叫ぶと、通形は壊理を強く抱き抱えて言った。

 

「もう決して君を悲しませない。大丈夫!! 俺が君のヒーローになる!」

 

 通形の蹴りが掠った治崎は、蕁麻疹ができた頬を擦りながら通形を睨む。

 

「…汚いな。戻って来い壊理。殺されちゃう? 何度言ったらわかるんだ。お前は人を壊す、そうやって生まれた」

 

 治崎が突き刺すような視線を向けると、壊理は怯え切った表情を浮かべる。

 

「ダメ…! やっぱり…」

 

「聞かなくていい!」

 

 壊理が訴えようとすると、通形は壊理を強く抱き締めながら遮る。

 すると治崎は、執拗に顔を腕で擦りながら言った。

 

「いつも言ってるだろう。お前の我儘で、俺が手を汚さなきゃいけなくなる。お前の行動一つ一つが人を殺す、呪われた存在なんだよ」

 

「自分の子に何でそんな事言えるんだ!!」

 

 治崎が壊理を責めると、通形は激昂して叫ぶ。

 すると治崎は、顔を擦る手をピタリと止めて通形の方に顔を向ける。

 

「ああ…? そうか、そういう話だったな」

 

 治崎は、右手の手袋を外して告げる。

 

「俺に子などいない」

 

 

 

 治崎は真実を告げると、床に右手を触れた。

 すると次の瞬間、コンクリートの床が広範囲に分解する。

 そしてさらに次の瞬間には、分解した床が無数の鋭い棘に変形する。

 治崎の“個性”『オーバーホール』は対象の分解と修復が可能という力だが、どう見ても『修復』というレベルではなかった。

 通形は、自分は『透過』で攻撃を無効化しつつ、壊理に棘が当たらないよう持ち上げた。

 するとそれを見た治崎が感心する。

 

「”個性”だけじゃないようだな」

 

「この子ごと──…!」

 

「ああ、壊れても支障はない。すぐに修復すれば蘇生出来る。原型を留めていなくとも元通りに治せる。その子は身を以て知っているハズだ」

 

 治崎が平然と言うと、通形は怒りで顔を歪める。

 するとその直後、通形目掛けて無数の棘が迫ってきたので、通形は壊理を抱えて棘を避けた。

 

「壊理が傷を負ったらどうする。この状況下、治せるのは俺しかいないぞ。抱えたままじゃ透過で逃げられない。俺と戦うのか? 学生さんよ。今の修復で逃げ道は封じた」

 

「その”個性”も、こいつを撃ち込まれりゃ消えちまいやす」

 

 クロノスタシスは、起き上がって拳銃を構えた。

 通形が酔っている状態で蹴ったため軸がズレ、失神には至らなかったのだ。

 

「壊理を抱えてる腕を狙え、間抜け」

 

「間抜けって…あんな精密な”個性”の使い方されるとは思いませんよ。相当鍛えてきたんでしょうね」

 

 治崎が指示を出すと、クロノスタシスはググッと引き金に力を入れる。

 治崎は、再び地面に触れて遮蔽物となる棘を壊した。

 すると通形は、その場で跳び上がると自分のマントを掴む。

 

「ちょっとごめんね」

 

 通形は、マントで自分と壊理を覆って隠した。

 その直後、クロノスタシスが銃を撃つが、マントで狙いが外れて二発とも外した。

 クロノスタシス、本名玄野針、彼の“個性”だけは喰らうわけにはいかなかった。

 

「ヒーローのマントって、カッコつけだと思ってやした」

 

「クロノ!」

 

 治崎が叫ぶと、通形は玄野の腕を殴って銃を飛ばす。

 そして続けざまにアッパーを顎に叩き込もうとするが、地面が迫り上がり玄野は逃げ果せた。

 迫り上がった地面から跳び上がった玄野は、そのまま地面に仰向けに着地する。

 

「すいやせんオーバーホール!」

 

 そして玄野が持っていた拳銃は、回転しながら床を滑っていった。

 治崎は、通形が地面に置いたマントに目を向ける。

 マントはもぞもぞと動いており、包まれているものの大きさから壊理だと理解するのにそう時間は掛からなかった。

 治崎は、通形が壊理から目を離した隙に壊理を殺そうとする。

 

「そう言う奴だよな」

 

 その瞬間、通形は治崎の背後にワープした。

 治崎は壊理に意識を向けていたため完全に反応が遅れ、防御のタイミングを見誤って右頬に拳を喰らう。

 

「お前は!!」

 

 通形に殴り飛ばされた治崎は、そのまま地面に倒れ込んだ。

 

「ヒーローがマントを羽織るのは! 痛くて辛くて苦しんでる女の子を、優しく包んであげる為だ!」

 

 玄野が立ち上がって拳銃を手に取ろうとすると、通形はワープで玄野の目の前に移動し玄野を蹴り飛ばす。

 

「相手をよく見て!! 次の行動を予測する!! 一介のヤクザとは思えない身のこなしだ! お前は強いよ治崎! でもね!! 俺の方が強い!!」

 

 ワープを使って治崎の目の前に現れた通形は、治崎の頭を殴りつける。

 モロに攻撃を喰らった治崎は大きくのけぞる。

 治崎と玄野を圧倒する通形を見ていた壊理は、目を見開いて戦いを見守っていた。

 

「もう指一本触れさせない!! お前の負けだ治崎!!!」

 

 通形が叫ぶと、治崎の前身にブワッと蕁麻疹が沸く。

 そして、血走った目で通形を睨んだ。

 

「気安く呼ぶな。その名は… 捨てた!」

 

 そして次の瞬間、治崎は叫ぶ。

 

「音本!!」

 

 すると壁の隙間から通形にやられてボロボロの音本が顔を出した。

 治崎は、音本の方へ弾丸が入ったケースを投げつける。

 ケースを受け取った音本は、拳銃に弾丸を装填した。

 

「撃て!!!」

 

 治崎が叫ぶと、音本は拳銃を構える。

 音本は、一瞬躊躇した。

 5発製造するだけで莫大なコストと時間がかかってしまうその弾の“重み”を知っていたからこそ、無駄打ちは許されなかったからだ。

 どうすれば『透過』の“個性”を持つ通形に確実に弾を当てられるかと思考を巡らせていた。

 その時、音本の目に映ったのはマントに包まれている壊理の姿だった。

 音本が壊理に銃口を向けると、通形が壊理の方へ飛び出し壊理は固く目を瞑って縮こまる。

 

 通形は理解した。

 殺意が向く度泣くでも叫ぶでもなく、目をつむり黙って歯を喰いしばる少女の表情。

 それは受け入れる外ない痛みに備え、耐え忍ばんとする彼女の習慣なのだと。

 痛みと恐怖によって刻みこまれてしまった、絶望なのだと。

 

 

 

「病人が」

 

 

 

 ドゥン

 

 

 

 壊理は、大きく目を見開いていた。

 そしてそれは治崎と音本も同様だった。

 

「………は?」

 

「ああ、そんな…若、若…!」

 

 治崎は、目の前で起こった現象に理解が追いつかずに固まっており、音本は絶望の表情を浮かべていた。

 通形は、左腕を前に出して左腕のみを透過し、“個性”の特性を活かして銃弾を身体の外へ弾き出した。

 

「お前なら、そう来ると思ってた…! そりゃあ、()()()()()()を防ぐ訓練、するさ…! 相手をよく見て動きを予測するんだ…! 俺はヒーロー、ルミリオンだ!!」

 

 通形は、治崎を見据えながら叫んだ。

 壊理は、自分を守る為に強大な敵に立ちはだかる通形に見入っていた。

 通形は、そのまま玄野に詰め寄り、玄野を殴り飛ばした。

 

「クロノ!」

 

「ぐぁ…!」

 

 通形に殴り飛ばされた玄野は、そのまま壁に叩きつけられて意識を失う。

 治崎は通形に掴み掛かろうとするが、通形は逆に治崎にアッパーを叩き込んだ。

 壊理を守りながら戦わなければならないという枷を背負いながらも治崎相手に善戦している通形を見て、音本は『あり得ない』と目を見開いていた。

 

「これで終わりだ治崎!!」

 

「調子に乗るな、病人風情が」

 

 通形が治崎を殴ろうとしたその瞬間、治崎は不機嫌そうに呟きながら袖口に忍ばせていたペン型の注射器を取り出す。

 そしてそれを、躊躇なく自分の足に打ち込んだ。

 

「!」

 

 治崎が注射器を足に打ち込むのを通形が目撃した、次の瞬間。

 治崎は、通形の反応を超える速度で距離を詰めると、左手を通形に振りかぶる。

 通形は咄嗟に透過の“個性”で治崎の手を透かそうとするが、僅かに間に合わず脇腹を弾き飛ばされる。

 通形の抉れた脇腹からは、血が噴き出す。

 

「ぁが…!!」

 

「どうしたルミリオン? 俺を倒すんじゃなかったのか」

 

 そう言って治崎は、地面に触れて無数の棘を伸ばす。

 通形は、自身を透過させて棘を透かすが、後ろにいた壊理目掛けて棘が伸びると、壊理を守る為に一瞬透過を解除してしまう。

 すると通形の予測と反応を超える速度で棘が襲いかかり、通形の腕を抉った。

 通形を一方的に追い詰めていく治崎は、顔に血管を浮き上がらせ瞳孔が開き、尋常ではないほど脈拍が上昇していた。

 

「お、まえ…!」

 

「冥土の土産に教えてやろう。今のは脳機能のあらゆるリミッターを外し、脳の処理速度や身体能力を飛躍的に向上させ、行動選択における無意識の制限を排除する薬だ。そして壊理の“個性”は、何も“個性”を壊すだけじゃない。細胞の損傷を制御する事で、常に潜在能力を100%引き出した状態をキープできる。濫用すればガタが来るそこらの()()()とはわけが違う。人間の機能を保ったまま超人になれる」

 

 治崎は、棘を伸ばして足場にすると、全方向から絶え間なく通形目掛けて棘を伸ばしつつ、棘の死角から手を伸ばして通形に触れようとする。

 だが通形は、棘が掠りながらも致命傷を避けながら壊理を守り続けた。

 

「確かに、さっきより速い…だけど、防げないほどじゃない…!」

 

「こいつ…」

 

「そんな付け焼き刃の力じゃ、(ルミリオン)は倒れないぞ!! 治崎!!」

 

 通形が治崎の攻撃をいなしながら叫ぶと、治崎は苛立ちのあまり蕁麻疹を発生させながら目を見開く。

 

 通形が追いついてから15分経過。

 治崎が薬物で自身を強化してから5分間、1対2という圧倒的不利な状況の中、通形はボロボロになりながらも壊理を守り抜いた。

 

「何が『防げない程じゃない』だ、そんなに血を流したらもう長くないだろう。負け惜しみも程々にしろ」

 

「っぐ……!」

 

「ヒーローになりたかったか、壊理を助けたかったかルミリオン。全て汚らしい現代病だ。お前らのような奴を治してやるのさ、壊理の力で」

 

 治崎は、地面に手を触れて“個性”を発動する。

 

「治崎ィ!!」

 

「その名は捨てたと言った筈だ!!」

 

 治崎が地面を塵に変えた、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

『AHHHHHHHHHHHHH!!!!』

 

 突然、壁越しに爆音が響き、治崎は“個性”を壊される。

 そしてその直後。

 

 

 

 ドゴォッ

 

 

 

 緑谷が壁を壊して、飛び出してきた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は遡り、ひなた達が入中を倒した直後。

 

「生き迷宮は終わったのは良いが、これじゃ前後も分からない」

 

「エリちゃんの部屋への方向なら、私が把握している」

 

「すげぇ!」

 

 そう言ってナイトアイが予知で見た壊理の部屋の方向を指差すと、警官の一人が驚く。

 心操は、“個性”で入中を操って地下迷宮を元に戻させようとする。

 

「おい、このグチャグチャ早く元に戻せ」

 

「ぬ゛う゛う゛う゛〜〜〜!!!」

 

 心操が命令するが、入中は目を血走らせカタカタと痙攣しながら唸っているだけだった。

 心操が怪訝そうな表情を浮かべていると、イレイザーヘッドが話す。

 

「薬の効果切れだろう…ファットガムの見立てが当たっていた。入中にもう今までの力は無い」

 

「だったら…『逆行輪曲(カノン・カンクリザン)』!!」

 

 ひなたは、狭い通路の中でありったけの声を張り上げ“個性”を発動した。

 すると、通路のコンクリートが緑色の光に包まれた粒子へと変化し、粒子が繋ぎ合わさって元の形状を取り戻していく。

 

「これは…!?」

 

「この通路全体を“個性”発動前の状態に戻しました」

 

 警察が驚いていると、ひなたは喉スプレーをしながら答える。

 そんな中、警官の一人が懸念を口にする。

 

「だが、まだ連合の奴等が…」

 

「心配要りませんよ」

 

「は? それはどういう──…」

 

 ひなたの発言に警察が聞き返した、その直後だった。

 ひなたは、“個性”でトゥワイスとトガの居場所を探ると、スゥッと勢いよく息を吸った。

 

「やべっ」

 

 遠くからでもひなたの強烈な殺気を感じ取ったトゥワイスとトガは、逃げる足を止める。

 するとその直後だった。

 

『わ!!!!!!』

 

 ひなたは、二人に向かって爆音の衝撃波を浴びせて攻撃した。

 するとトゥワイスとトガはドロドロに溶ける。

 

「これで屋敷内にいる分身は全部倒しました。もう増える事はありません。あいつら、全員分身だったんですよ」

 

「どういう事だ…? 分倍河原の“個性”で自分を造る事はできなかったはず…」

 

「どうやら、僕達の知らない間に自分の分身も造れるようになってたみたいです。それなら、わざわざ本体がここに来る理由がありませんからね。多分本体は、僕の索敵範囲内にはいませんよ」

 

 イレイザーヘッドが疑問を口にすると、ひなたはため息をつきながら自分の推測を話す。

 

「連合メンバーは? どこにいるのか教えろ」

 

 心操は、“個性”を発動した状態で入中に尋ねる。

 以前は頭を使わせる命令や喋らせる命令をする事ができなかったのだが、圧縮訓練によって簡単な質問になら答えさせる事ができるようになっていた。

 

「知るか!!!」

 

 心操が尋ねると、入中が答える。

 心操の質問に対して嘘をつく事はできないため、知らないというのは本当だった。

 

「…本当に知らないみたいですね」

 

「やはりな。分身を寄越すくらいだ、本体が近くにいる可能性は低いとみていいだろう」

 

 心操が言うと、ナイトアイも考え込む。

 するとひなたが介抱していたロックロックが口を開く。

 

「な━━━に立ち話してんだ………!!」

 

「ロックロック!」

 

「無視して進め! ここにはいねえ奴の事気にしてもしょうがねえだろ!? 俺達の最優先事項は何だよ!!?」

 

「確かにそれが最善か…!」

 

「俺は小娘のせいでこれ以上飛んで跳ねてはちょっとキツい。分かったらとっとと足動かせ!! リューキュウ達上にいる連中! 地下で分断された警官達! サンイーター、烈怒頼雄斗(レッドライオット)! ファットガム!! ルミリオン!! ここまで来たらあと一息だろう! 皆が稼いだ時間を無駄にするな!!」

 

 ロックロックが叫ぶと、緑谷はロックロックの目を見て答える。

 

「必ず! 救け出します! ロックロック!」

 

「ケッ……言ったな…!? 必ずだぞ…! デク!」

 

 ロックロックが託すと、緑谷達はナイトアイの指し示す方向へと走った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして現在、壁を壊して飛び出した緑谷は治崎目掛けて拳を振り抜いていた。

 だが治崎は、まるで予知能力でも使ったかのように緑谷の拳を避けた。

 

「ナイトアイ、確保を!!」

 

 イレイザーヘッドに声をかけられたナイトアイが目を向けると、血塗れになった通形の後ろに壊理がいた。

 

「後…ろに、います……」

 

 通形は、血を流しすぎて朦朧としつつもナイトアイに伝えた。

 するとナイトアイは、通形と壊理を抱きかかえた。

 

「凄いぞ…凄いぞ…ルミリオン…!!」

 

 一方治崎は、棘を伸ばして突入してきた緑谷達を串刺しにしようとするが、ひなたが叫んで“個性”を壊したため、“個性”を発動できなかった。

 

「──…いい加減に…!!」

 

「ルミリオンがここまで追い詰めた! このまま畳みかけろ!!」

 

 ひなたが治崎と玄野の波長を見ると、床に倒れている玄野の意識があり、自分と相澤を狙っている事に気がつく。

 ひなたは再び息を大きく吸い、大声で叫んだ。

 

『AHHHHHHHHHHHHHH!!!!』

 

 ひなたが大声を上げて叫ぶと、地面に倒れていた玄野は“個性”を破壊された。

 玄野は、全身が痺れ“個性”を出せなくなり、そのまま意識を手放した。

 

「ぐぁ……!」

 

 ひなたが玄野を倒すと、心操にハンドサインを出した。

 

「ひー君!」

 

「わかってる」

 

 ひなたがハンドサインを出すと、心操は捕縛武器で玄野を回収し、一旦安全圏に退いた。

 相澤は、玄野が自分達を狙っていたのをひなたが事前に阻止したのに気付くと、ひなたに礼を言った。

 

「助かった」

 

「いえ…!」

 

 ひなたと相澤が言った直後、治崎は“個性”が出せないせいか全身から蕁麻疹を発生させ、ひなたの眼前に迫った。

 治崎のあまりのスピードに、フルカウルを使っている緑谷ですら目で追い切れず、思わず目を見開く。

 

「え」

 

 相澤は、治崎に向かって捕縛武器を投げるが、治崎は相澤の攻撃を避けると相澤に向かって右腕を振り抜いた。

 相澤は、咄嗟に治崎の攻撃を防御するが、治崎の馬鹿力に押されてそのまま吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「くっ……!」

 

「お父さん!!」

 

 相澤が吹き飛ばされると、ひなたが血相を変えて目を見開き、緑谷が治崎に向かって飛び出す。

 

「治崎!!」

 

「全て無駄だ!!」

 

 緑谷が飛び出すと、治崎は血走らせた目を見開きながら緑谷目掛けて左腕を振り抜き、緑谷にアッパーを叩き込んだ。

 すると緑谷の身体が軽く吹き飛ばされ、天井に叩きつけられる。

 

「がっ!!」

 

「デッくん!!」

 

 天井に叩きつけられた緑谷がそのまま床に落ちそうになると、ひなたが捕縛武器で緑谷をキャッチした。

 そしてそのまま、治崎に向かって捕縛武器を伸ばす。

 何本もの鞭が蛇のように襲いかかるが、治崎はまるで未来が見えているかの如くひなたの鞭を見切って回避する。

 ひなたはさらに、両腿に装備したスローイングナイフで変化球を投げつけ、不規則で予測不能な軌道を描くナイフが治崎目掛けて飛んでいく。

 常に次の手を予測しながら手を打つ技術は、ひなたもイレイザーヘッドに叩き込まれていた。

 だが治崎は、ひなたの投げたナイフをも避けて距離を詰める。

 

「ルミリオン程じゃないが悪くない…ガキにしては、だが」

 

 治崎はひなたに対してそう言うと、ひなたの眼前に迫りひなたを上から踏みつける。

 咄嗟に治崎の攻撃を防御したひなただったが、無理な体勢で防御したせいか、蹴りを受け止めた右腕がミシッと嫌な音を立てる。

 

「ぎっ…!!」

 

 ひなたは、そのまま大きく後ろに退いて距離を取り、ふぅー…と大きく息を吐くと、再び“個性”を発動させようとする。

 

「ルミリオン、お前は確かに俺より強かった。だがやはり全て無に帰した。さァ、壊理を返してもらおうか」

 

 そう言って治崎が一歩前に出た、その時だった。

 

「何が『無に帰した』、だ。いいようにやられてんじゃねえか」

 

 玄野を連れて安全圏に退避していた心操が、治崎を煽る。

 心操の言葉に反応した治崎は、心操の方を振り向く。

 すると心操は、ここぞとばかりに治崎を煽りまくった。

 

「ルミリオンに粘られて、手下を全員やられて、挙げ句の果てに“個性”を消されて、何一つあんたの思い通りになってないだろ。そんだけ素晴らしい力を持ってながらこのザマじゃ笑えねえな。“個性”消してやろうなんて奴が“個性”消されるなんて、最高に皮肉が効いてるなあオイ」

 

「何だと…この、病人風情が」

 

 心操が治崎を煽ると、治崎は心操の言葉に激昂し口を開く。

 するとその瞬間、ビタッと治崎の身体の動きが止まった。

 治崎に洗脳がかかると、心操は緊張の糸が解けたのか、ふぅっと息を吐く。

 

「…終わりました」

 

「心操くん…!」

 

 心操が言うと、緑谷がホッと安堵のため息をついた。

 心操は、先ほど治崎の攻撃を喰らった相澤のもとへ駆け寄り、声をかけた。

 

「すみません、援護が遅れて。こんな事もあろうかと、イレイザーが俺を作戦に参加させてくれてて良かった。すぐに警察を…」

 

「いや、待て!」

 

 心操が警察を呼ぼうとしたその時、ナイトアイが口を開く。

 ナイトアイの視線の先では、心操の洗脳を喰らったはずの治崎が頭を押さえて呻き声を上げていた。

 

「ぅぐ…がっ、あ゛ぁあ゛ああぁああ゛…!!」

 

 治崎の身体はドクン、と大きく波打ち、治崎は呻き声を上げた。

 心操の洗脳が解けたのは、通形との戦いで打った薬の副作用が今になって現れ、身体中に激痛が走ったからだった。

 治崎は、目を見開いて叫んだかと思うと、袖の中に隠していたペン型の注射器を取り出す。

 それに気付いたナイトアイは、印鑑を投げつけてペン型の注射器を破壊する。

 だが治崎が最初に取り出した注射器は、本物に気付かせないためのフェイクだった。

 治崎は、もう片方の腕に隠し持っていた注射器を躊躇なく自分の左脚に打ち込んだ。

 そして、その直後だった。

 

「…え!?」

 

 突然、目の前にいた治崎が消える。

 すると次の瞬間、治崎の波長を感知したひなたが心操の前に飛び出し、治崎を捕縛しようと蜘蛛の巣状に捕縛武器を展開した。

 その瞬間、治崎の指先が地面に触れ、二人目掛けて鋭い棘が伸びた。

 ひなたは、目の前に伸びた棘を粉々に砕いて防御したが、砕けた棘の死角から治崎の腕が伸び、そのまま左腕を掴まれへし折られた。

 

「ぎ…ぁあ…!!」

 

「ひなた!!」

 

 左腕をへし折られたひなたが叫び声を上げると、心操が目を見開く。

 ひなたの腕をへし折った治崎は、血走った目でひなたを睨みながら言った。

 

「バカめ、“個性”を壊せる薬があるって事は、壊れた“個性”を元に戻す薬もあるって事だ。それくらい、少し考えればわかる事だろう?」

 

「う、ぅう…!」

 

「病人がつけあがるからこういう目に遭う。すぐに終わらせてやろう」

 

 そう言って治崎が再び棘に触れて二人を串刺しにしようとする。

 だが、治崎は棘に触れても“個性”を発動できなかった。

 治崎が振り向くと、そこには“個性”を発動して治崎を睨む相澤がいた。

 

「おい治崎。それ以上俺の生徒に手ェ出すな」

 

 相澤が脇腹を押さえながら治崎を睨むと、緑谷が相澤を心配する。

 

「先生!! 怪我を…」

 

「問題ない。肋が折れただけだ。それより、お前らはエリちゃんとルミリオンのところにいてやってくれ」

 

「邪魔を…」

 

 相澤に見られている事に気づいた治崎は、まずは相澤から始末しようとする。

 するとその直後、ナイトアイの印鑑が飛んできて治崎の腕にめり込む。

 

「こいつの相手は我々がする! 貴様らはルミリオンとエリちゃんを!!」

 

「させるか」

 

 治崎が邪魔をしようとすると、ナイトアイは次々と押印を投げる。

 

「「「了解です!」」」

 

 ひなた、心操、緑谷は、ナイトアイと相澤に任せて通形と壊理の元へ向かった。

 ひなた達が向かうと、相澤は“個性”を消しながら治崎に捕縛武器を投げつけた。

 だが治崎は、相澤の捕縛武器を避けると、一気に距離を詰めて相澤の目をゴーグルごと引っ掻いて潰そうとする。

 相澤は、咄嗟に身体の重心を後ろに傾けて治崎の攻撃を避けた。

 

「チッ…!」

 

 するとその直後、ナイトアイの印鑑が治崎目掛けて飛んでくる。

 飛んでくる印鑑に気がついた治崎は、印鑑を掴んで止めた。

 ナイトアイは、執拗に相澤を狙う治崎に印鑑を投げつけながら尋ねる。

 

「さっきから露骨だな。他人の“個性”を壊し浸ってる人間が、“個性”を消されるのを恐れているのか。おまけにその異常な脈拍と呼吸…相当ブースト薬をきめているな。貴様は紛い物の力に頼ってまで、ルミリオンを排除しようとした。そんなにルミリオンが怖かったか!?」

 

 ナイトアイが激昂すると、治崎はナイトアイ目掛けて腕を振りかぶる。

 だが、ナイトアイは治崎の動きを予測し避け続けた。

 治崎がナイトアイに向かって腕を振り下ろそうとすると、相澤が治崎の腕に捕縛武器を巻き付けて止めた。

 

「二人いる事、忘れてもらっちゃ困るな」

 

 そう言って相澤が捕縛武器を引き寄せると、治崎は血走った目を相澤に向ける。

 そして三人は、通形と壊理のもとへ駆けつけると通形を介抱する。

 

「エリちゃん! 先輩!! 動けますか!?」

 

「…ああ…! 余裕………だよね…!!」

 

「いや、そんなわけないでしょうよ…」

 

 緑谷が尋ねると、通形が無理をした様子で言うので心操がツッコミを入れる。

 

「───…結局…悲しませてしまった」

 

「───…移動します! 僕等が通ってきた通路、相澤さんが戻してくれました。治崎と距離を置かないと──…! 少なくともここよりは安全です」

 

 緑谷は、そう言って二人を安全な場所に案内しようとした。

 すると、壊理が泣きながら声を絞り出す。

 

「もう…いいです…ごめんなさい」

 

 そしてその頃、ナイトアイと相澤は治崎と死闘を繰り広げていた。

 ナイトアイは、治崎の未来を見ながら戦っていた。

 彼は今、一秒先の未来だけを見て動いていた。

 治崎が己に触れそうな未来の度、異なる行動を取った。

 彼の行動は単なる先延ばし。

 わかってはいるがそれが最善手───しかしそれも限界だった。

 

 ナイトアイは、縋るように治崎の行く末を”見た”。

 敗色濃厚の中、一縷の望みを懸け、どうか少女は助かり少年達も無事。

 治崎が敗けて逮捕される未来を───…

 

 

 

 だがその直後、ナイトアイは絶望した。

 彼が見た未来は、自分と相澤が殺された後通形、緑谷、ひなた、心操の4人も惨殺され壊理は絶望の表情で治崎に連れ戻され、そこで真っ黒に塗り潰されて終わるという最悪の未来だった。

 

 

 

 ナイトアイが絶望した直後、とうとう相澤の“個性”が切れた。

 するとその瞬間、治崎が地面に触れて“個性”を発動した。

 

「ぐぁあぁああああ!!」

 

 治崎が“個性”を発動すると、地面が一瞬で棘に変わり、ナイトアイの肩が棘で抉られ、相澤も棘が身体に掠る。

 ナイトアイは、『予知』を使って棘を避けようとした。

 だが結局避け切れずに、棘が眼前に迫る。

 するとその時だった。

 

 

 

『AHHHHHHHHHH!!!!』

 

 突然耳を劈く大声が鳴り響き、棘が全て粉々に砕け散った。

 振り向くと、そこには“個性”を発動して髪を逆立てたひなたと、フルカウルを発動した緑谷がいた。

 

「誰も死なせない!! エリちゃんは絶対助ける!! その為に僕等(ヒーロー)はここにいるんだ!!」

 

「緑谷…ひなた……!」

 

 ひなたが治崎に立ち向かうと、相澤は目を見開く。

 緑谷は、自壊寸前のワンフォーオール50%を使って治崎に立ち向かう。

 

「お前らが来て事態が悪化してる事、気付いているだろう。諦めろ、俺の言った通りになるだけだ。全員死ぬ」

 

「そんな事にはさせない…! そう決まっていたとしても! その未来を捻じ曲げる!!」

 

 

 

 

 




読んでお分かりだとは思いますが、オバホはおくすりの力を抜きにしても原作より強いです。
それとおくすりの開発に成功したのは、何気にひーちゃんを生み出した組織の研究データを裏ルートで入手して利用していたからだったりします。
梅干しの件と言い、オバホの件と言い、この世界のネームドヴィランは、主にお兄ちゃんが組織の研究データを世のヴィラン達にばら撒いてるおかげで大幅に強化されています。
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