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念願の赤バーを維持し続けてるぞおおおおおお!!!
やったああああああああああああああああああ!!!
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緑谷とひなたは、相澤とナイトアイに代わって治崎に立ちはだかった。
ひなたが声で治崎の“個性”を壊し、緑谷が治崎目掛けて一気に距離を詰めると、治崎は緑谷の脇腹目掛けて右腕を振り抜く。
緑谷は、咄嗟に避けるものの、治崎の指先が緑谷の脇腹を抉った。
「う゛う゛っ!!」
治崎は、緑谷が一瞬怯んだ隙に、“個性”修復弾を打ち込んでひなたに壊された“個性”を治そうとする。
その動きを察知したひなたは、治崎目掛けて捕縛武器を投げつけて止めようとする。
だが治崎は、ひなたの捕縛武器をあっさりと掴むと、グイッと引っ張ってひなたを引き寄せようとした。
するとひなたは、声で治崎の脳を揺らし、脳震盪を起こした。
ひなたの声を喰らった治崎は、一瞬意識を失うが、すぐに意識を回復させるとひなたの顔面目掛けて手を伸ばし、掴みにかかった。
ひなたは、間一髪のところで治崎の攻撃を避けると、ナイフを抜いて治崎の顔を斬りつけた。
「ああクソッ、汚いな…!」
ひなたに浅く斬りつけられた治崎は、蕁麻疹を発生させながら顔を袖で拭いた。
するとその隙に、緑谷が治崎に踵落としを仕掛ける。
「脳天一撃! マンチェスタースマッシュ!!」
だが、治崎は緑谷の踵落としを難なく避けた。
「いくら速かろうが、他の奴等に比べれば動きの線が素直で見えやすい」
そう言って治崎は、緑谷の背後から迫り、左脚を振り抜いて蹴飛ばした。
背中に重い一撃を喰らった緑谷は、そのまま吹き飛ばされた。
その直後、ひなたが治崎の背後から攻撃を仕掛けるが、緑谷同様殴り飛ばされ、空中で緑谷とぶつかった。
「「がはっ!!」」
薬で格段にパワーアップした治崎の攻撃を受けた緑谷とひなたは、その場に倒れ込んだ。
だが二人は、ボロボロになりながらも立ち上がる。
「ゲホッ、ゲホッ、う゛う゛う゛!! まだ…!!」
「ああ…そうやってルミリオンにも粘られた。諦めない人間の底力は侮れない」
その頃、心操に応急処置を施された通形はボロボロの身体に鞭打ち涙を零しながら壊理を連れて地下道を歩いていた。
だが、血を流し過ぎたせいで地面に膝をつき視界がぼやける。
心操は通形に肩を貸そうとしたが、通形は自力で立ち上がろうとした。
「エリちゃん…身を…隠すんだ…後続を…待つんだ…! 何十人って…人間が、君を…救けようと…動いてる…んだ! エリちゃん…! 大丈夫…だ、君は…大丈夫だ、エリちゃん…!!」
だが、その時だった。
「う、うぅ……!」
突然、壊理が頭の角を押さえてその場に蹲る。
心操が壊理に歩み寄ろうとしたその時、壊理の身体から光が放たれ、心操は身体を巻き戻される感覚に襲われる。
はずみで発動してしまった“個性”をどうにか止めようとする壊理だったが、“個性”の制御が利かず、また自分の“個性”で人を殺してしまう事に怯えながら泣く事しかできなかった。
「う、うぅ…! 止まって、止まって…!」
「エリちゃん!」
「離して! じゃないとみんな消えちゃうの! 私はもう、誰にも死んでほしくないの!」
壊理は、自分の“個性”で心操を消滅させてしまう事を恐れて、心操の掴んでいる手を引き剥がそうとする。
壊理の“個性”は『巻き戻し』、触れたものを巻き戻す事ができる。
暴走すれば周辺のものを巻き戻し、或いは消滅させてしまう。
心操は、“個性”を暴走させた壊理にかつてのひなたを重ねた。
今の壊理が、自分の“個性”が周囲を巻き込んでしまう事を恐れて線引きをしていた頃のひなたに似ていたのだ。
心操は、入学してからずっと、人を操る“個性”でどう人を救えるかを考えてきた。
そして今、傷ついて泣いている少女がいる。
心操に迷いはなかった。
「エリちゃん! 大丈夫だ、俺は消えない! 絶対に君を助ける! 俺を信じろ!!」
心操は、より強く壊理の肩を掴みながら叫んだ。
自分が助かりたい、早く止めなければ周囲にまで被害が及ぶなどといった事は一切考えなかった。
壊理を救い出す、その為に彼女の心に訴えかけた。
心操の言葉を聞いた壊理は、大きく目を見開く。
壊理は、呪われた“個性”を持って生まれてしまった自分が悪いのだと、助かる事を諦めてしまっていた。
だが、どんなにボロボロになっても立ち上がるルミリオンに、今必死に戦っている三人に、そして身体を巻き戻されてもなお助けると誓ってくれた心操に、心を動かされた。
そして今、彼女の心に、『助からなければ』、『助けると誓ってくれた人を信じなければ』という思いが芽生えた。
「………うん」
壊理が頷いた瞬間、壊理は意識を失ってカクっと前に倒れ、心操がすかさず壊理の身体を受け止めた。
『洗脳』の“個性”で壊理の暴走を止めた心操は、そのまま眠る壊理を抱き上げた。
「ほらな。俺の言った通りだっただろ」
壊理の暴走を止める心操を見た通形は、驚いたような表情で心操を見る。
「心操くん……」
「…すみません。手荒な方法になっちまって。行きましょう」
心操は、強引な方法で壊理を助けた事を反省しつつも、壊理と瀕死の通形を連れて戦線離脱した。
その頃緑谷とひなたは、治崎相手に苦戦を強いられていた。
緑谷が脇腹から血を流し、ひなたが折られた腕を押さえて息を切らしていると、治崎が指をコキコキと鳴らしながら二人を見下ろす。
薬物で強化した治崎は、顔中に青筋が浮いて目が血走り、脈拍が異常に上昇していた。
もはや命が危ぶまれる状態にもかかわらず、一切体力が衰える様子もなく、むしろひなたと緑谷の体力が削られる一方だった。
「その様子じゃあ、もう長くは保たないだろう。今すぐ楽にしてやる」
そう言って治崎が二人に歩み寄ろうとした、その時だった。
「う…ぐぅ……!?」
「!?」
突然、治崎が地面に膝をつく。
先程まで全く疲れている様子もなかった治崎が突然膝をついたのを見て、緑谷が驚く。
「やっと跪いた」
そう呟くひなたの右手には、毒のナイフが握られていた。
それを見た治崎は、ブワっと全身に蕁麻疹を発生させながらひなたを睨む。
「毒か……!」
「ヒーローだから正攻法しか使わないとでも思った? 絶対勝たなきゃいけないから、勝つためならどんな手だって使う。そういうのさぁ、ちょっと考えればわかるでしょ」
そう言ってひなたは、捕縛武器を鞭状にして治崎を拘束しようとする。
すると、その時だった。
THOOM!!!
突然天井が壊れ、巨大化した男と共にリューキュウ、蛙吹、麗日が降ってきた。
「ドンピシャ!!」
「ケロ…」
◇◇◇
時は遡り、八斎會突入から数分後。
リューキュウ事務所のメンバーは、ひなたに無力化させられた活瓶を捕らえていた。
「よしっ! ちょっと出遅れたけど私達も行くよ!」
「『活瓶力也』、人に触れて吸息する事で活力を吸い取り… 巨大化します。気を失ってる内に隔離させて下さい」
「中も荒れてるみたいだよ、急いだ方が良いよ!」
そう言って波動が門を指差し、麗日と蛙吹も波動に続いた。
するとその時だった。
「あらら…?」
ふと蛙吹が弱気な声を出し、麗日と蛙吹はよろける。
異変を察した波動が振り向くと、活瓶が息を吸って周りのヒーローや警官の活力を吸い取っていた。
「いてっ…」
「どうして…!? ひなたちゃんが“個性”を消したはず…!」
活瓶が目を覚ますと、リューキュウが目を見開く。
活瓶は、拘束具を砕いて巨大化した。
「入中から貰ったブースト薬がやっと効いてきた…呼吸してるだけで…吸ってるぞ! 凄く元気が湧いてきたァ!!」
そう言って活瓶は高笑いする。
ひなたの“個性”によって無力化させられた活瓶だが、ひなたの“個性”によって傷つけられた“個性”因子が、ブースト薬に混ぜていた薬の効果で回復力が活性化し、ひなたが想定していた時間よりもはるかに短い時間で“個性”が完治したのだ。
活瓶のブースト薬の効き目が現れるのが遅れたのは、“個性”因子の回復力を増強する薬剤を混合していたからだった。
活瓶は、拳を振りかぶって正門を破壊した。
そして20分後。
「何かメンドクセェ…」
「ニャンニャン」
警官や捕らえたヤクザは活力を失っており、リューキュウ達も活力を奪われ思うように動けない様子だった。
「ネジレちゃん!!」
リューキュウが叫ぶと、波動は活瓶にねじれた波動を飛ばす。
ネジレちゃん
本名 波動ねじれ
“個性”『波動』
自分の活力をエネルギーにして衝撃波を放つ!!
放つが!
何故かねじれてしまうので速度はない!
「ハッハッハッ、薬が切れた。触らせろカワイ子ちゃん」
「ムゥー嫌っ!」
活瓶が高笑いし、波動が唇を噛み締めながら嫌がった。
するとその時だった。
「お茶子ちゃん! 梅雨ちゃん!」
突然、道の傍からひなたが現れる。
「ひなたちゃん!?」
「応援を呼びに来た! あっちの十字路の真下に目的がいる! プロが戦って足止め中! 加勢して!」
ひなたは、そう言って十字路を指差す。
リューキュウは、活瓶に体当たりしながら麗日達に指示を出す。
「皆!! 指示通りに!」
「イテッ」
「ウラビティ!! 浮かす!! フロッピー! 移動を!! 手伝って! ネジレ!! ありったけを、私ごと!」
麗日が活瓶に触れて浮かせ、蛙吹が舌で活瓶の首を掴み、波動が腕にエネルギーを溜めた。
「何で動けるんだこの女共ォ!!」
「「「毎日言われてるから」」」
波動は、ありったけの波動を活瓶目掛けて飛ばした。
「「「『プルスウルトラ』って!!」」」
◇◇◇
そして現在、活瓶はリューキュウに押さえつけられ地面に頭を打って気絶した。
「っ………!」
緑谷とひなたは、突然降ってきたリューキュウ達を見て驚いていた。
「リューキュウ!! 二人共!!」
「お茶子っち!? 梅雨ちゃん!?」
先程見かけた筈のひなたが下にいたので、麗日と蛙吹は混乱していた。
「ひなたちゃん!? あれ!?」
「そういえばさっきのひなたちゃん、『お茶子ちゃん』って…」
「じゃあ、さっきのは誰なの!?」
麗日の事を『お茶子っち』と呼ぶはずのひなたが『お茶子ちゃん』と言っていた事に蛙吹が気付くと、麗日は余計に混乱する。
穴の空いた地上には、ひなたの姿があった。
地上にいた偽物のひなたはドロドロに溶けてトガに変わった。
「上の人間投入しようと思ったら、お茶子ちゃん達も来てたなんて。プルスケイオスって感じですね」
「ハハハ、誰があんな奴らに大人しく本体を貸すかよ!」
「えげつない事考えるね。まあ、死柄木の指示だけどよ」
「よく聞けMr.今日まで核の子供には近付けさせてくんなかった。オーバーホールと正面切って戦っても勝てそうにねェ………そんなとこにヒーローが突入してくれた」
「核が子供なのか?」
「わかったら降りて取ってきて!」
「はあ!?」
トゥワイスが言うと、Mr.コンプレスが驚く。
するとトガがトゥワイスに続けて言った。
「私達はそろそろ時間切れなので、あなたが行ってきて下さい」
「お前は出来たてほやほやだ! 早くしろ人が来ちまう」
トガとトゥワイスは、嫌がるMr.コンプレスを無理矢理穴の下に降りさせた。
「もぉ〜怖ぇよ何がプルスケイオスだよあいつらサイコだよ!」
「
「何が何だか───…」
「ウラビティちゃん!」
リューキュウは叫びながら降りるMr.コンプレスを見つけ、麗日も混乱する中、蛙吹が指を差して叫んだ。
するとひなたが、麗日と蛙吹に指示を出す。
「ウラビティ!! フロッピー!! ナイトアイとイレイザーの保護を!!」
「ひなたちゃんは!?」
「奴を倒す!!」
「でも腕…!」
「こんなの、エリちゃんの苦しみに比べたらただの掠り傷だよ! いいから早く!!」
二人は左腕がボロボロになりあちこちに傷を負って血を流しているひなたを心配するが、ひなたは捕縛武器と近くに落ちていた鉄筋を使って左腕を固定すると走り出した。
それと同時に緑谷も走り出したが、緑谷の視線の先には、先程のどさくさに紛れて修復弾を打ち込み、“個性”を発動して棘を生み出している治崎がいた。
「「治崎!!」」
ひなたと緑谷は、同時に治崎への怒りを爆発させる。
治崎は、ひなたと緑谷に対して苛立ちを露わにしながら棘を伸ばした。
「メチャクチャだ…ゴミ共が! 壊理を返せ!!」
治崎が棘を伸ばすと、緑谷は棘を薙ぎ払おうと左脚を振りかぶる。
「ああああ!!」
治崎は、緑谷目掛けて棘を伸ばす。
緑谷が棘を薙ぎ払おうとしたその時、緑谷の中でワンフォーオールの歴代継承者の影が揺らぐ。
すると、その瞬間だった。
「え」
突然、緑谷を中心に黒い鞭のようなものが大量に出現する。
それを見た治崎は、全身に蕁麻疹を発生させて目を血走らせ激昂する。
「まだそんな力を持っていたのか…英雄気取りの重篤者が…!」
治崎は、全く関連性のないもう一つの“個性”を出現させた緑谷に対し殺意を剥き出しにした。
土壇場で新たな“個性”を出現させた緑谷だったが、様子がおかしかった。
「う゛ぅうううう…!! 痛い、痛い痛い痛い!!」
「デッくん!!」
緑谷が全身の激痛に苦しんでいると、ひなたが血相を変えて駆け寄る。
緑谷は、自分の方へ走ってくるひなたに対し、激痛に苦しみながらも言葉を捻り出した。
「力を、抑えられない…! 離れて…!!」
緑谷は、制御できない自分の力でひなたを傷つけまいと、自分から離れるよう言った。
だがひなたは、アコースティックシューズを使って飛び出すと、緑谷にしがみついた。
「やだ! 絶対、助けるから!」
ひなたは、“個性”を発動して緑谷の“個性”を消し暴走を止めようとする。
するとその時、緑谷を掴んでいたひなたごと空中にフワリと浮き上がる。
「え!?」
ひなたが驚いている間にも、二人は空高く浮き上がった。
「デクくんは──…! 治崎!」
麗日は、ボロボロの状態で立ち上がり“個性”を使う治崎を発見した。
治崎は、活瓶に近づく。
治崎がやろうとしている事を察したリューキュウは目を見開く。
「──マズい!」
すると、ナイトアイが口を開く。
「君達は…大丈夫…だ…少なくとも…奴が今…君らを…標的にする…事はない…奴は…緑谷とクレシェンドを追って地上へ出る…そして…緑谷とクレシェンドを…殺す」
「そんなの…」
ナイトアイの予知を聞いた麗日は加勢しに行こうとするが、上手く走れず転んでしまった。
「見たんだ… それ聞いて黙ってると…」
「君達のその状態では…奴に向かっても…勝てない…」
「だからって何もしやんのはちゃうやろ!!? 未来なんて何かせなわからんやん!」
麗日が叫ぶと、ナイトアイは天井の穴から覗く空を見上げて目を細める。
「………壁の穴の先…ミリオがいる筈だ……フロッピー頼む。ウラビティ、リューキュウ………私を…私と上へ向かってくれ」
◇◇◇
一方で、ひなたは緑谷を抱えたまま空中に留まっていた。
緑谷が黒い鞭状の“個性”だけでなく、自分を浮かせる“個性”まで暴走させてしまい、暴走を止めようとしたひなたごと浮かせてしまったのだ。
緑谷は、二つの“個性”を暴走させて黒い鞭を放ったまま空中で溺れたような状態になってしまう。
「うぅ、う゛ぅうう…!!」
緑谷は、“個性”を暴走させて激痛に顔を歪め唸っていた。
するとひなたは、緑谷の前に膝をついて優しく心地の良い歌声を漏らす。
「〜♪ 〜♫」
ひなたが髪をざわつかせて瞳を光らせながら歌うと、緑谷の生み出した鞭が消え、二人ともゆっくりと地面へと落下していく。
ひなたに“個性”を消された緑谷は、そのまま意識を手放した。
「…!」
再び緑谷が目を覚ますと、何もない真っ暗な空間に立っていた。
身体の口から下が靄のようになっていて、その場から動く事ができなかった。
「こんな形で出てくる事になるとはね」
「…!」
「おォい口が無いのかドンマイさ!」
緑谷が動揺していると、精悍な顔立ちの黒髪の女性と、ラフな格好をしたスキンヘッドの男性が現れる。
するとさらに、痩躯の男性が姿を現した。
「君が9人目だね…」
痩躯の男性が現れると、緑谷は目を見開く。
緑谷の前に現れたのは、7代目、5代目、そして初代ワンフォーオールだった。
だがその直後、三人の身体が揺らぎ始める。
「手短に話そう。僕達は、歴代継承者の魂…その一部だ。ワンフォーオールは聖火の如く受け継がれる“個性”…君がワンフォーオールを受け継ぐ時、力だけじゃなく僕達の魂の一部も受け継がれたんだ」
「お前が今出した力は、俺達の“個性”さ」
「今まで表面化せずに内側に沈んでいた力…それが今、いきなり現れた。ワンフォーオールの中にいた私達にも想定外の形でね」
「俺達の因子は、“力”の核に混ざってワンフォーオールの中にずうっとあった。小さな核さ。揺らめく炎、或いは波立つ水面の中にある小さな点。培われてきたに覆われる力の原始。それが今になって、大きく…膨れ胎動を始めたさ。揺らぎの隙間から時折見えるものが…ワンフォーオールそのものが成長している」
「“個性”を揺らす大きな力…その力がワンフォーオールの揺らぎと『共鳴』を起こし、私達の力が呼び起こされたんだと思う」
(それって、相澤さんの…!)
7代目の継承者が言うと、緑谷が目を見開く。
緑谷の『未来を捻じ曲げる』という思いと、ひなたの放った『声』が共鳴し、ワンフォーオールの奥底に眠っていた歴代継承者の“個性”を呼び起こしたのだ。
「お前が出したのは、5代目の『黒鞭』と私の『浮遊』だ。最初に出たのが私達で良かったよ」
「だけどな! この“個性”もワンフォーオールに蓄積された力が上乗せされ、俺の頃よりも大幅に強化されてる!」
二人が言ったその時、歴代継承者の身体のブレが大きくなる。
「いかん、消えるさ…すごくフワッとしたもんよ。俺達はよ…心だけの存在だからよ」
歴代継承者は、完全に消える前に緑谷にアドバイスをした。
「8人の人間を渡り、ワン・フォー・オールは途方もなく大きな力となった。いいか坊主! お前にはこれから6つの“個性”が発現するさ! 心を制して俺達を使いこなせ!」
5代目がそう言った直後、3人は緑谷の意識の世界から消えた。
その直後、緑谷は意識を取り戻した。
見ると、ひなたが緑谷を横抱きにして心配していた。
「デッくん、大丈夫!?」
「相澤さん…! ごめん! 僕…」
「大丈夫、僕が制御したから」
緑谷が、自分の暴走にひなたを巻き込んでしまった事を謝ろうとすると、ひなたは笑顔を浮かべてみせた。
「ずっと、人を傷つける事しかできない“個性”だと思ってた。でも、『そんな事ないよ』って言ってくれる人達に出逢って、やっと自分を好きになれた。ずっと考えてたんだ。人を救ける為の、この力の使い方を…!」
ひなたは、“個性”で緑谷の“個性”を制御した。
時空を超えて“個性”を抹消する、その力によって、緑谷が“個性”を暴走させたという事実を無かった事にしてしまったのだ。
「何が人を救ける為の力の使い方だ…! お前も、壊理も、人を壊す為だけに生まれてきた存在だろうが…!!」
地下からは怒号が飛び、大地が揺れるとボコボコと破壊されていく。
姿を現したのは、活瓶を取り込み無数の手が生えた巨躯と化した治崎だった。
治崎は、巨躯の口から上半身のみを生やしていた。
「人間を巻き戻す、それが壊理だ。使いようによっては猿にまで戻すことすら可能だろう。触れる者を全てが『無』へと巻き戻される。呪われてるんだよ、あいつの“個性”は。壊理を渡せ。あいつの力は、お前ら病人如きが扱えるようなものじゃない」
「「絶対やだ」」
緑谷とひなたは、同時に治崎を拒絶した。
緑谷は、治崎の方を見ながらひなたに話しかける。
「相澤さん。さっき、僕の力を制御してくれたよね」
「うん」
「その力…まだ使えるかい?」
「奇遇だね、僕も同じ事考えてた」
「一緒に治崎を倒すぞ」
「応!」
緑谷がワンフォーオール100%を解放して全身から緑色の火花を散らすと、ひなたも髪をざわつかせる。
“超常”
かつて突如として人々にもたらされた謎の変異。
一説では未知のウイルスがネズミを介し世界へ拡がったと言われているが、明確な論拠はない。
無数にある超常にまつわる推論の一つ。
「お前らも壊理も…力の価値を分かっていない。“個性”は伸ばす事で飛躍する。俺は研究を重ね壊理の力を抽出し、到達点まで引き出すことに成功した。結果…単に肉体を巻き戻すに留まらず…もっと大きな流れ…種としての流れ…変異が起こる前の『形』へと巻き戻す。壊理にはそういう力が備わっている。“個性因子”を消滅させ、人間を正常に戻す力だ…! “個性”で成り立つこの世界を! 理を壊す程の力が…壊理だ!!」
治崎は、巨躯から伸びる無数の手で街中の住宅地を触れていき、瞬く間に分解していく。
「うわああ!?」
「ちょちょ、ヒーロー! ケーサツ!」
「タケシ!!」
住宅を壊された住民達は、パニックに陥っていた。
「価値もわからんガキに、利用できる代物じゃない!」
「『価値』…!?」
治崎が言うと、ひなたは治崎の言葉に激怒する。
治崎は、住宅地を修復して無数の棘に変え二人を攻撃する。
だがひなたが棘を壊し、その隙に緑谷が治崎の懐に入り込むと治崎を蹴り飛ばした。
治崎の巨躯は、空高く舞い上がる。
「治崎ィ!! 僕はお前が何を思っていようと、それを否定する気も嗤う気もない! でもね!! お前の都合で小さな女の子を傷つけるのだけは絶対許さない!!」
ひなたは、治崎に向かって怒りをぶつけた。
ひなたは治崎のやってきた悪事を憎みこそすれ、彼自身を否定する事も、彼の思想を犯罪者の戯言と嗤う事もしなかった。
だが、その為に何の罪もない小さな女の子を傷つける事だけはどんな理由があろうと許せなかった。
一方、Mr.コンプレスのコピーはリューキュウに潰されてドロドロに溶けていた。
「いやァまあこうなるぜ? 正面突破なんざ柄じゃねえ」
リューキュウは、ナイトアイを抱えた麗日を尾で上へと持ち上げる。
「先行ってウラビティ! ナイトアイを救急車に!! さぁ行って!」
麗日は、重傷を負ったナイトアイを運んだ。
一方緑谷に打ち上げられた治崎は、空中で自身を分解していた。
「どいつもこいつも大局を見ようとしない!! 俺が崩すのはこの“世界”!! その構造そのものだ!! 目の前の小さな正義だけの…感情論だけのヒーロー気取りが… 俺の邪魔をするな!!」
治崎は、瞬時に修復させた腕を緑谷へと伸ばす。
だが治崎が修復した瞬間、ひなたが『
『うぁあああぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!』
ひなたは、治崎に負わされた傷口が開いて全身から血を噴いても叫び続けた。
すると治崎の“個性”が壊れ、治崎と活瓶の身体が分離し、治崎が壊した家も元に戻っていく。
それと同時に、緑谷の身体がひなたの音の膜で覆われる。
緑谷は、ひなたの雄叫びを合図にするかのように『浮遊』の“個性”で浮き上がり、治崎の目の前で拳を振りかぶり、拳を覆うように『黒鞭』を出して攻撃力と防御力を引き上げた。
「目の前の……小さな女の子一人救えないで──皆を救けるヒーローになれるかよ!!!」
緑谷は、治崎に拳を叩き込む。
すると治崎のマスクが外れ、治崎はついに倒れた。
一方麗日は、予知についてナイトアイに尋ねていた。
「ナイトアイ…二人が殺されるって…? 本当…ですか」
「それが私が見た変えようのない未来──だが…これは…」
ナイトアイが見たのは、変わらない筈の未来に抗い捻じ曲げてみせた少年少女の姿だった。
「ああああああ!!!!」
緑谷は、渾身の力で治崎を地面へ叩きつけた。
すると治崎は意識を失い地面に伏せる。
治崎を殴り飛ばして着地した緑谷は、ひなたに話しかける。
「相澤さん…! ごめん、無茶させて…!」
「ううん、何の…これしき…!」
緑谷がひなたを心配して駆け寄ると、ひなたはサムズアップをした。
その直後、治崎は、白目を剥き全身に蕁麻疹を発生させながら吠えた。
意識がもうほとんど無い治崎の脳裏に浮かんでいたのは、かつて自分を拾ってくれた組長の姿だった。
治崎を突き動かしたのは、何としてでも組長の悲願を叶えるという執念だった。
治崎は、最後の力を振り絞って緑谷とひなたに襲い掛かろうとする。
するとその時、麗日が治崎を捕獲する。
「状況は!?」
「ナイトアイは後方にいます! 周辺住民には避難を呼びかけました! 治崎はデクくんとクレシェンドが! けど、クレシェンドが…!」
麗日は、状況を事細かに説明した。
その後ろでは、ひなたが息を切らして全身から血を流していた。
「被害者がいないか確認を! 救急車ありったけ呼んで!!
その後、怪我をしたヒーロー達は全員救急車で搬送され、昏睡状態の組長も無事保護された。
救急隊員は、重傷を負った緑谷とひなたに話しかけた。
「とりあえず病院へ運ぼう、君達もだ」
「「はい」」
すると、担架で運ばれていたナイトアイが緑谷に声をかける。
「緑谷… お前は未来を、捻じ曲げた」
「ナイトアイ、僕言いそびれてて! オールマイト! 生きるって! ナイトアイに合わせる顔がないって…! 必ず会いましょう! 会って…また! だから…だから、頑張って!!」
緑谷が激励した直後、救急車の扉が閉まる。
◇◇◇
その後、死穢八斎會のメンバーは全員警察に引き渡され移送される事になった。
メンバーを乗せた護送車が高速道路を走る。
「八斎會組員十一名移送中。いずれも重傷。胝棚の
「何だ…?」
護送車を運転していた運転手がふと前を見ると、トラックの上に死柄木がいる事に気がつく。
トラックの扉は開いており、中にはMr.コンプレス、荼毘、零、マグネ、トガ、トゥワイスの6人がいた。
「将棋ってさ… 要するに玉を奪れば良いんだよな?」
「そう単純じゃねぇぞ」
「そうそう、やってみると意外と奥が深いんですよ」
「やった事ないだろお前」
死柄木が言うと荼毘が口を挟み、零が荼毘に同意すると荼毘がツッコミを入れる。
「あーあ、そっちに101号がいるなら僕もオバホの方行けばよかったなぁ。それに、調子に乗ったオバホに痛い目見せてやりたいし」
「やーんゼロちゃん怖ぁ」
零は、トゥワイスとトガにジト目を向けてぼやいていた。
零が治崎に対して沸々と怒りを募らせていると、マグネがリアクションをした。
「二人ともお疲れさん! つっても、頑張ったのは分身だけど」
「はあ!? 分身生み出したのは俺だぞ!? 死柄木の指示だけどな!」
「最寄りの病院に搬送するにはこの高速が一番早いのです。核の子は手に入れられませんでしたが、本体はこっちにある可能性が高いでしょうね。分身に通信機持たせて警察の動向を追ってたので間違いないです」
Mr.コンプレスがトガとトゥワイスに声をかけると、二人はここに至るまでの経緯を語った。
するとその直後だった。
運転手が死柄木達に気がつく。
「おいおいおい!! あれは───…
運転手が死柄木達に気がつくと、スピナーがアクセルを踏み込む。
すると車体が揺れ、マグネが文句を口にした。
「きゃあ!? ちょっとスピナー! 急発進するなら言いなさいよ!」
マグネは、運転をしているスピナーに文句を言った。
荼毘と零も後ろを振り向き文句を言う。
「おいトカゲ。フラついてんぞ、俺酔いやすいんだ」
「ヘッタクソ、ちゃんと運転しろよトカゲ」
「『トカゲ』は! ダメだ!! スピナーだ!! ゲームで鍛えた俺のドライビングに文句でも!?」
「何キレてんだウゼェ」
荼毘と零が文句を言うとスピナーがキレ、二人はそれに対して呆れ返った。
「警察を襲う事が本当に“真のヒーロー社会”、ステインの意志に沿うのか…俺は逡巡してるのだ!」
「あっそ」
「必要な犠牲さスピナー、運転頼むぜ」
スピナーが自問自答していると、零が呆れ返り死柄木が答えた。
すると荼毘が手から青い炎を出す。
「さて」
「来るぞ!!」
するとパトカーからも隙間から砂が出た。
その直後、荼毘はパトカーと護送車目掛けて青い炎を放った。
だが、当たった感触の無さに荼毘は違和感を抱く。
「何だあいつ」
炎が飛散すると、砂で覆われたパトカーが現れる。
中から現れたのは、サンドヒーロー『スナッチ』だった。
「
「ヒーロー…! そりゃぁいるよなぁ──怠い!! スピナー!! 減速!」
死柄木が指示を出すと、トラックは減速した。
「好都合!」
すると、スナッチはトラック目掛けて砂を飛ばす。
死柄木が降りてスナッチを触ろうとすると、スナッチの上半身が砂に変わる。
「……天敵ですね」
「『五指で触れて崩壊させる“個性”』、砂塵は掴めまい!!」
「有名人だな」
「死柄木は
Mr.コンプレスは、圧縮して作った球をパトカーの下に投げた。
「パトカーフワリ空中浮遊!」
そして“個性”を解除すると球は巨大な岩に変わり、パトカーは上へ打ち上げられた。
「タネも仕掛けもございやせん」
死柄木は、パトカーごと打ち上げられた勢いで護送車のボンネットに飛び乗りフロントガラスを壊した。
そして死柄木はハンドルを左に切らせ、護送車を転倒させた。
「グランドセフトオート!!」
スピナーがハンドルを強く切ると、トラックは大きな弧を描いて180°向きを変えた。
「くっ…!」
ダミーの護送車の運転手は、“個性”を使って反撃しようとする。
だがその時、トガのサポートアイテムの注射器がフロントガラスを突き破って運転手の眉間に突き刺さる。
「ぐあっ!!」
「邪魔です」
トガが運転手にトドメを刺すと、トゥワイスも“個性”を発動して自分の分身を増やす。
「行けっ、俺達ィ!!」
「「「「どらぁあああああっ!!」」」」
トゥワイス達は、護送車に向かって体当たりを仕掛け、そのまま護送車を崖の下に突き落とした。
「勘弁してよ、僕はお前らみたいにド派手な“個性”じゃないの。行くぞマグ姉」
「任せてちょうだい」
零はもう一台の護送車の運転手に催眠をかけ、マグネはパトカーの運転手に磁力を付与し、巨大な磁石で身体をブレさせる。
零は、コントロールを失ったパトカーに護送車を激突させた。
するとぶつかり合った護送車とパトカーは大きくひしゃげ、そのままガードレールを突き破って下へ落ち、大爆発を起こした。
「ハイ必殺『エターナルフォースブリザード』」
「ダッセ。つかブリザード要素どこにもねーだろ」
零が決めポーズをしながらダサい技名を言うと、Mr.コンプレスがツッコミを入れる。
咄嗟に護送車の運転手を砂で助け出したスナッチは、道路上に横転していた。
するとその直後、零がスローイングナイフをスナッチ目掛けて投げつけてくる。
「この…!!」
スナッチは砂で運転手を守りつつナイフをいなしていたが、“個性”で自分の姿を見えなくしていた零に気付かずに折り畳み式のマチェットナイフで斬りつけられる。
下半身は砂化する事ができないため、そのまま零に左脚を切断される。
「いぇーいヒットォ♪」
「ぐっ…うぅ…!!」
零は上機嫌でナイフを舐め、スナッチは左脚の痛みに顔を歪める。
すると背後から荼毘が現れる。
「そうそうヒーローは人命優先しちまう」
「…… ここ最近、各地で焼死体が相次いで見つかっている…」
「お、噂になってる? 嬉しいね」
「遺族の気持ちを考えたことが無いのか!!」
スナッチは激昂し、砂を虎の形に変えて荼毘に攻撃を仕掛ける。
だが、荼毘の炎であっさり崩された。
「この──………」
すると次の瞬間、Mr.コンプレスがスナッチに触れて炎ごと圧縮した。
「あっちちち… 砂って燃えねえよな」
「見た感じ上半身しか砂化出来ねぇっぽいから死ぬだろ」
ガガ…ガガ…と、金属音か何かが鈍く動く音が響く。
死柄木が治崎が拘束されたベッドを護送車から引き摺り出していたのだ。
「なぁにが『次の支配者になる』だ」
死柄木は治崎を見下し嘲るが、治崎は壊理を保護され警察に捕まり八斎會の復権も叶わなくなった今絶望からかさほど驚きもせず死んだような目をしていた。
「殺しに来たのか」
「いーや…お前が最も嫌がる事を考えた。俺はお前が嫌いだ。偉そうだからな」
するとMr.コンプレスが治崎に近づき、左腕を圧縮した。
「これは零の分」
「要らねえよ」
「クスクス」
Mr.コンプレスが圧縮した左腕を零に差し出すと、零はムスッとした表情を浮かべて左腕の入ったビー玉を弾き飛ばし、トガは面白そうにクスクスと笑った。
「コレさぁ、二箱あるけどどっちが完成品? まぁ…いっか」
死柄木が“個性”破壊弾の入ったケースを奪い取ると、治崎の顔が歪む。
「……………返せ」
「あのな、オーバーホール。“個性”を消してやるって人間がさぁ、“個性”に頼ってちゃいけねェよな」
そう言って死柄木は治崎の残った右腕に触れた。
すると、治崎の右腕が崩壊する。
「───っ!!」
「切り離さないと塵になっちまう。零、ナイフ」
「あいよ」
死柄木が零の方へ手を差し伸べながら言うと、零はスナッチを斬りつけたナイフを死柄木に投げる。
零からナイフを受け取った死柄木は、治崎の腕を切り落として投げた。
すると切り落とされた腕が弾けて血が飛び散り、腕を拘束していた枷だけが落ちた。
「よしっ、これでお前は無力非力の“無個性”マン! お前が費やしてきた努力はさぁ! 全部俺のもんになっちゃったよ!! これからは咥える指もなく、ただただ眺めて生きていけ!! 頑張ろうな!!」
死柄木が目を見開いて治崎を嘲笑うと、治崎の全身に蕁麻疹が沸く。
「すぐ追手が来るぞ!! 早く乗れ!!」
スピナーが叫ぶと、炎を上げたパトカーを背に7人がトラックへと歩いていく。
零は、両手をズボンのポケットに突っ込んで大きなあくびをしながら荼毘の隣を歩いていた。
背後からは、治崎の悲痛な叫び声が鳴り響いた。
「次は、俺達だ」