抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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最近評価8が入ってお気に入りも増えて嬉しいなり。
面白いと思っていただけましたら高評価(特に9・10あたり)、お気に入り、感想等よろしくお願いします。


戦・闘・訓・練

 その後は、モニタールームで講評会が行われた。

 今回の訓練に参加した飯田、麗日、爆豪は並んで前に立たされていた。

 

「まぁつっても…今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」

 

「なな!!?」

 

 オールマイトが言うと、飯田本人が一番驚いていた。

 

「まあ……そりゃそうだよね」

 

 ひなたは、何故他の3人がダメだったのかをわかっているため頷いていた。

 すると蛙吹がオールマイトとひなたに疑問を投げかける。

 

「どういう事かしら? 勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 

「何故だろうな〜〜〜? 分かる人!!?」

 

「はい、オールマイト先生」

 

 オールマイトが全員に尋ねると、八百万が手を挙げて発言する。

 

「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生が仰っていた通り、屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですね。麗日さんは、中盤の気の緩み。そして、最後の攻撃が乱暴過ぎた事。ハリボテを核として扱っていたら、あんな危険な行為出来ませんわ。相手への対策をこなし且つ、核の争奪をきちんと想定していたからこそ飯田さんは最後反応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは、訓練だからという甘えから生じた反則のようなものですわ」

 

「ま…まぁ、飯田少年もまだ固すぎる節はあったりする訳だが…まぁ…正解だよ! くぅ…!」

 

 思っていたより八百万が指摘していたので、オールマイトは困惑しつつもサムズアップをした。

 すると、八百万はふんっと鼻を鳴らして真剣な面持ちで締め括る。

 

「常に下学上達! 一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」

 

 八百万が言うと、クラスメイトがパチパチと拍手を送る。

 すると、ひなたが手を挙げて発言する。

 

「はい! オールマイト、僕からもいいですか?」

 

「何だい、相澤少女!」

 

「屋内での大規模攻撃ですが、仮にかっちゃ……爆豪くんが本物の(ヴィラン)だと仮定したら、あながち愚策じゃないと思いますよ。本番なら、『核を起爆する』も(ヴィラン)側の勝利条件に含まれるはずですよね?」

 

「た、確かに……!」

 

「ただまあ、あくまで『ヒーローとしての』訓練なので、さっきの評価は授業としては妥当だと思います。実戦で同じ事やられたらたまったもんじゃないですし。僕が言いたいのは、『実戦だったらそういう考え方をする(ヴィラン)もいるかもしれないって事を覚えておこうね』って事です」

 

 ひなたは、自分の考えをオールマイトに伝えた。

 この訓練は、『対(ヴィラン)を想定した戦闘訓練』と銘打ってはいるものの、実質『ヒーローチーム同士での戦闘訓練』なので、屋内での大規模攻撃が大幅減点という採点基準は間違いではなかった。

 しかし、相手がもし本物の(ヴィラン)だったら、心中覚悟で核の起爆を図る可能性もゼロではないため、実戦を想定するのであればこの場にいる全員がその事を考慮しなければならないという事をひなたは言いたかったのだ。

 

「それを踏まえて……ねえかっちゃん。最初の奇襲自体は良かったと思うんだけどさ。それ、ちゃんと天ちゃんに言った方が良かったんじゃないかな?」

 

「!」

 

「初手で奇襲をかけて戦闘に持ち込んだのは良い判断だったし、戦闘技術も見事の一言だったと思う。私怨ありきとはいえ、開始早々あそこまで躊躇なく行動できるのは、正直見習いたいくらいだよ。でもいきなり何も言わずに飛び出したりなんかしちゃったら、天ちゃんだって状況把握できないからとりあえず守りに徹するしかなくなっちゃうよね? 二人とも能力は高いんだしさ。君が天ちゃんに一声でもかけていれば天ちゃんだって納得してくれたかもしれないし、今回の勝敗も違ってたと思うよ」

 

「………………」

 

 ひなたが言うと、爆豪が俯く。

 自分より格下だと思っていた相手に正論で諭され、フォローまでされてプライドはズタズタになっていた。

 するとひなたは、他の二人にも具体的なアドバイスをする。

 

「天ちゃんは、まあさっきヤオモモが言った通り、一通り申し分なかったと思う。あの狭い室内でよく頑張ったさ。ただ、さっきオールマイトも言ってたけど、せっかく機動力が高いんだからもうちょっと柔軟に動けると良かったね。ま、何事もケースバイケースだよ」

 

「そうか……俺には柔軟さが欠けていたのか……!」

 

 ひなたが飯田にアドバイスをすると、飯田は顎に手を当てて考え込んだ。

 さらにひなたは、麗日にもアドバイスをする。

 

「あとデッくんとお茶子っちは、“個性”の不利をチームワークで補ってたのは良かったと思うよ。デッくんはちゃんと計算してかっちゃんを誘導した上で、反則とはいえ勝ったわけだし。二人の“個性”の相性考えたら、まずお茶子っちが外から核のある部屋を探し出して、窓から侵入して核を確保。万が一(ヴィラン)チームに見つかったら、最終手段としてデッくんがデコピンを使って撃退。これが定石だったんじゃないかな」

 

「そっか、私が浮いて窓の外から覗けば調べられたな……」

 

「そういう事。もし窓が無い部屋に核があったとしても、ローラー作戦で攻めればいいだけだし。それと、現場に武器になるものが落ちてるとは限らないんだし、あらかじめ浮かす用の武器を持ってるといいかもね。デッくんは……別の力の使い方を考えるか、反動を抑えるサポートアイテムの装備を検討するかした方がいいのかな。ま、あくまで個人的な感想だけどね」

 

(すごい的確……!!)

 

 ひなたが正論を言うと、オールマイトは思わず舌を巻く。

 優等生二人に自分の教師としての仕事をほとんど奪われ、オールマイトは八百万とひなたに感服する一方で、このままでは自分が要らなくなってしまうのではないかと危機感を覚えていた。

 

「人にものを教える時は、まず悪いところじゃなくて良いところを見ましょう」

 

「うむ! そ、そうだな! 完璧なアドバイスありがとう相澤少女!!」

 

 ひなたが第一試合ではどう動けば相手に勝てたのかを具体的にアドバイスすると、クラスメイトが拍手を送った。

 その後、切り替えて第二試合が行われる事となった。

 第二試合は、ヒーロー側が障子&轟コンビ、(ヴィラン)側が相澤&葉隠コンビだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 4人がそれぞれの持ち場に移動すると、他の16人(緑谷は保健室に行ったため)は次の試合がどう動くかを話し合っていた。

 

「なぁ、次の試合どうなると思う?」

 

「そりゃヒーローチームの勝ちだろ。“個性”把握テストの時轟ヤバかったしな。あんまこういう事言いたかねーけど、(ヴィラン)チームは両方とも女の子だし……」

 

「あー……確かに。“個性”把握テストの成績もヒーローチームの方が良かったしな」

 

 上鳴が尋ねると、瀬呂と砂藤が答える。

 二人とも、ヒーローチームが勝つと予想していた。

 だが八百万は、二人の意見に対し反対意見を言った。

 

「いいえ! その逆ですわ。ひなたさんが“個性”把握テストで“個性“を使わなかったのは、恐らくテストと“個性”の相性が悪かったから。対人戦闘においてどう“個性”を使ってくるかがわからない以上、むしろあの中で最も警戒しなければならないのはひなたさんです」

 

 それを聞いたA組がざわつくと、蛙吹が昨日のひなたとの会話について話す。

 

「そういえば私、テストの後ひなたちゃんに“個性”の事を聞いたのだけれど、相澤先生と同じような事ができると言っていたわ。それ以上詳しくは教えてくれなかったけど」

 

「対人用の“個性”か……厄介だな……」

 

 A組達が話し合っていると、オールマイトが試合開始の合図をする。

 

「ではヒーローチーム障子目蔵、轟焦凍vs (ヴィラン)チーム相澤ひなた、葉隠透の試合をはじめる! 双方用意はいいか! それでは、スタートだ!!!」

 

 オールマイトが試合開始の合図をしてブザーを鳴らした直後、轟が建物を氷漬けにする。

 

「仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化……」

 

「最強じゃねぇか!!」

 

 轟の放った冷気がモニター室にまで及びオールマイトも含めて全員ガタガタ震えており、蛙吹に至っては冬眠寸前だった。

 だが、その直後だった。

 

 

 

 

 

『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!』

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 突然オールマイトの持っていた無線から爆音が聞こえ、モニターの映像が乱れ始める。

 

「わ、何だ何だ!?」

 

「うるっさ……!!」

 

「氷の次は爆音かよ!?」

 

 突然の爆音と映像の乱れに、A組は耳を塞ぎながら動揺していた。

 A組の中で唯一ひなたの“個性”を知っていた心操は、今の爆音がひなたの“個性”によるものだと気がつく。

 

「ひなた……!?」

 

 そして10秒ほどして、乱れていた映像が元に戻る。

 部屋全体が煙に包まれており、次第に煙が晴れていき人影が映り込む。

 するとそこには、衝撃的な映像が映っていた。

 核のある部屋の氷が全て消え去り、核の前で倒れる轟にひなたが捕縛テープを巻き付けていた。

 

「な……!?」

 

「嘘だろ、あいつ今何しやがった……!?」

 

 先程まで圧倒的優勢だったはずの轟が倒れており氷漬けにされていたはずのひなたがピンピンしているという状況に、クラス全員が驚いていた。

 するとその時、青山が別の画面を指差して声を上げる。

 

「あ、ムッシュ!」

 

 その画面には、捕縛テープを巻かれた障子が映っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 遡る事数分前。

 ひなたと葉隠は、核のある部屋で準備をしていた。

 ひなたは、ヒーローチームがどこにいるのかをエコーロケーションで探っていた。

 

(二人とも正面玄関付近にいるな。めぞりんがこっちの索敵をしてるっぽいな……となると、向こうが取ってくる作戦は……)

 

「ひなたちゃん! 私ちょっと本気出すわ! 手袋もブーツも脱ぐわ!」

 

「う、うん……頑張ろうね」

 

 葉隠が手袋とブーツを脱ぐと、ひなたは咄嗟に目を逸らした。

 すると葉隠がひなたに尋ねる。

 

「ねえ、そういえばひなたちゃんの“個性”って何? “個性”把握テストの時全然使わなかったよね?」

 

「えっとね、耳貸して」

 

 葉隠が尋ねると、ひなたは自分の“個性”を葉隠に耳打ちする。

 すると葉隠は、驚いて思わず大声を上げる。

 

「えっ!? それもう最強じゃん!!」

 

「しっ! 声がデカい! めぞりんに聞かれちゃうでしょ!」

 

「あっ、ごめん」

 

 驚いて大声を上げる葉隠に対し、ひなたが慌てて指の前で人差し指を立てて静かにするよう言った。

 

「とおるんの“個性”は透明化で合ってるよね? それで僕今パパッと作戦考えてみたんだけど、やっぱとおるんの“個性”を最大限活かすには僕の“個性”が役に立つと思うんだ」

 

「ふんふん」

 

「だからね、まず僕が合図をしたら……」

 

 ひなたは、考えた作戦を葉隠に話す。

 そして、ヒーロー側と(ヴィラン)側それぞれ準備が終わり、オールマイトが合図をして試合が始まった。

 障子は複製した耳で二人の居場所を探って轟に報告する。

 

「四階北側の広間に一人。もう一人は同階のどこか……素足だな……透明の奴が伏兵として捕える係か」

 

 

 

 障子目蔵

 “個性”『複製腕』

 触手の先端に自身の身体を複製する事ができる! 

 

 

 

「外出てろ危ねえから。向こうは防衛戦のつもりだろうが……俺には関係ない」

 

 そう言って轟は、ひなた達がいるビルを一瞬で凍らせた。

 

 

 

 轟焦凍

 “個性”『半冷半燃』

 右で凍らし左で燃やす! 

 範囲も温度も未知数!! 

 化け物かよ!! 

 

 

 その頃、ひなたと葉隠はというと。

 

「っ…………!!」

 

「ひなたちゃん!」

 

 ひなたの捕縛武器が空中に浮いており、捕縛武器の方から声が聞こえる。

 高い聴力で建物が凍りついていくのを瞬時に把握したひなたは、床を凍らされる前に捕縛武器で葉隠を縛って天井から吊し上げ足を凍らされるのを防いでいたのだ。

 だがひなたの方は、足先から凍りついて身動きが取れなくなっていた。

 すると正面のドアが開き、轟が部屋に入ってくる。

 

「へぇ……凍りつく前に仲間を守ったか」

 

 轟は、宙吊りになった捕縛武器を見て、瞬時に状況を把握した。

 

「でもまぁ、“個性”が何なのかわからなくて気味が悪いお前さえ封じれば十分だ。動いてもいいけど、無理に動くと身体千切れるぞ」

 

 そう言って轟は、瞬く間にひなたを氷漬けにしていく。

 ひなたは、肌を襲う冷気と凍りついていく痛みに顔を歪める。

 

「っ…………!!」

 

 ひなたはとうとう首から下を全て凍らされて身動きが取れなくなってしまった。

 だが、それと同時にニヤリと笑みを浮かべる。

 

「とおるん!」

 

 ひなたは、完全に凍りつく前に葉隠に向かって叫び、大きく息を吸い込む。

 すると轟が二人まとめて完全に氷漬けにしようとするが、既に遅かった。

 

 

 

 

 

『YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!』

 

 

 

 

 

 ひなたは、耳を劈く爆音攻撃を放った。

 すると建物の氷が大きく振動して霧散していき、瞬く間に氷だけが全て消し飛んでしまった。

 部屋には、氷を消しとばして発生した霧が立ち込める。

 あまりの爆音に、轟は両耳を塞いで表情を歪めていた。

 

「ぐっ…………!?」

 

(クソッ、どうなってる……!? 氷()()が全部消し飛んだ!)

 

 轟は、核の前に立って爆音を浴びせるひなたに目を向ける。

 

(氷がまるで効かねえ……どうする!? これ以上核に近づいたら、確実に耳をやられる……! ()を使うしか……いや、俺は()だけで戦うって決めたんだ!)

 

 轟は耳を塞ぎながら氷の壁で爆音を防ごうとするが、氷を出した次の瞬間には爆音攻撃で氷が全て消し飛ぶ。

 だが、突然ひなたが喉を押さえ、10秒弱続いた爆音が止んだ。

 

(今……!!)

 

 その一瞬を逃さず、轟は氷を出そうとする。

 だが、その次の瞬間。

 

 

 

『わ゛!!!!!』

 

 

 

 ひなたは、残っていた力を振り絞って思いっきり叫ぶ。

 

「がっ…………」

 

 すると轟は、全身が麻痺してその場に倒れ込んだ。

 轟は、ひなたの『声』によって“個性”が出せなくなり身体も思うように動かなくなっていた。

 

(クソッ、指一本動かせねぇ……氷も出ねぇ……何なんだこいつの“個性”……!?)

 

 ひなたは、喉の激痛に顔を歪めながら咳き込む。

 

「ゲホッ……ゴホッ……確かに僕を真っ先に狙ったのはいい判断だったよ。でも甘かったね。初手で肺攻めされたら打つ手無かったのに」

 

 ひなたは、腰のポーチから捕縛テープを取り出すと身動きの取れない轟に巻きつける。

 

 

 

 相澤ひなた

 “個性”『共鳴』

 相手の“個性”の波長に特殊な声をぶつけ、強制的に共鳴させて一定時間“無個性”にする! 

 ただし使い過ぎると喉がイカレる! 喉のケアが欠かせないぞ! 

 

 

 

「はい終わり」

 

「何なんだ、お前……」

 

「たはは……ごめんね焦ちゃん。あと1分くらいしたら自然に治るから」

 

 轟がひなたを見上げながら呟くと、ひなたは腰につけた懐中時計を見て笑いながら言った。

 するとオールマイトからの通信が聴こえてくる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は少し遡り爆音が聞こえた直後、建物の前では。

 

「くっ…………!?」

 

 建物の前でひなたと葉隠の音を探っていた障子は、建物の方から聞こえてきた爆音に思わず目を見開き複製していた耳を引っ込める。

 

(何だ……!? 爆音がしたかと思えば氷が全部消えた!? まさか相澤の“個性”か……!? これだけ離れていてもこの音量という事は、至近距離でこれを浴びた轟はタダでは済まないはず……!! どうする!? 轟を助けに行くか!? だが、爆音で索敵ができない状態で行くのはリスクが高すぎる……いや、ここで仲間を助けに行かなければヒーローとは言えない!)

 

 障子は、このままでは轟が危ないと判断し危険を承知の上で細心の注意を払いながら建物へと入っていく。

 すると、その直後だった。

 

「確保ぉ!!」

 

 突然背後から葉隠の声が聞こえ、障子の身体にテープが巻き付けられる。

 

「何!?」

 

(バカな!? 爆音で索敵が出来ない時間は10秒もなかった……その直前までは核の部屋にいたはず! どうやってたった10秒で1階の入り口まで……!?)

 

 葉隠に確保された障子は、思わず目を見開く。

 爆音が鳴り響く直前まで四階の北側の部屋にいたはずの葉隠がたった10秒でビルの入り口付近にまで辿り着いていたからだ。

 これが飯田や蛙吹、尾白などならまだ納得ができたが、透明な事以外は特殊能力を持たない葉隠にそんな芸当ができるはずがなかった。

 すると、障子の視界の端にひなたの捕縛武器が映り込む。

 それを見た障子は、二人の作戦を理解した。

 

(……!! そういう事か……!)

 

「ひなたちゃんが言ってた! 確かに障子くんの“個性”は凄いけど、足音や話し声を聞いてるならそれ以上の音量でかき消せばいいって!」

 

 葉隠は、ひなたが合図をした瞬間にビルの窓から飛び降り(もちろん小型無線機の電源を切った状態で)、ひなたの捕縛武器を命綱にし窓から一階に侵入して障子を入り口で待ち伏せしていたのだ。

 ひなたは、透明人間であるという葉隠のアドバンテージを最大限活かすため、物音や気配を消す訓練をしていない彼女でも障子の索敵を掻い潜れる策を試合前に考えていた。

 そこで、爆音で物音を消し予測不能な経路を使って最短時間で移動するという作戦を思いついたのだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方他のA組は、モニター室で試合の様子を見て目を見開いていた。

 

「な……!? 嘘だろ!?」

 

「さっきの爆音は、轟くんへの攻撃だけでなく葉隠くんの着地の時の足音をかき消す為でもあったのか……!」

 

 窮地に追い込まれていたにもかかわらず爆音攻撃で形勢逆転してしまった(ヴィラン)チームを見てA組は驚愕しており、それはオールマイトも例外ではなかった。

 

「大規模な無差別攻撃のように見えて建物や核を一切傷つけず相手の“個性”だけを狙った的確な攻撃……味方の“個性”を最大限活かす為の工夫と見事なチームワーク……マジかよ相澤少女……!」

 

「最凶じゃねーか!!」

 

 画面に映り込んでいるひなたを見てオールマイトがコメントすると、切島がツッコミを入れる。

 すると芦戸がオールマイトに尋ねる。

 

「てかひなたの“個性”って何なのオールマイト!? うるさいわ“個性”消しちゃうわ!」

 

「相澤少女の“個性”は『共鳴』! 相手の“個性”の波長に特殊な声を爆音で浴びせて“個性”を共鳴させて破壊する……らしい!」

 

「はぁ!? 爆音で近づけない上に“個性”消されるとか反則じゃねーかんなもん! はーヤダヤダ!」

 

 オールマイトがひなたの“個性”を説明すると、上鳴は呆れ返る。

 オールマイトは、相澤と山田の複合“個性”を使ったひなたをモニター越しに見て驚愕していた。

 

(ヴィラン)に人工的に造られた相澤くんとマイクの娘と聞いていたが……あの二人の“個性”が組み合わさるとこうなるかよ!? 相澤くん、君……もしやとんでもない娘を引き取ってしまったんじゃないか!?)

 

 オールマイトは、ひなたに驚きつつも彼女に轟の容態を尋ねる。

 いくつか無事だったカメラで彼に見たところ大怪我がない事は把握していたが、何かしらの大ダメージを負っているのであればすぐにでも保健室に連れて行く必要があると判断したからだ。

 

「……相澤少女、轟少年は?」

 

『大丈夫ですよ、ちょいと麻痺させただけです。ギリギリ鼓膜破らないように音量調整しました。1分後には身体も“個性”も完治します』

 

「そうか、では……」

 

 ひなたが報告すると、オールマイトは頷いて試合終了のブザーを鳴らす。

 

(ヴィラン)チーム……WIIIIIN!!』

 

 

 

 オールマイトが(ヴィラン)チームの勝利を告げて、二戦目は終了した。

 すると、戦った4人がモニター室に戻ってくる。

 ひなたに麻痺させられた轟も、ひなたの“個性”が自然に解けて元に戻っていた。

 

「さて、今回の訓練のベストは相澤少女だ! 何故だかわかる人!?」

 

 オールマイトが尋ねると、八百万が手を挙げて答える。

 

「はい。それは、ひなたさんが終始戦局をコントロールしていたからですわ」

 

 八百万は、4人のそれぞれの行動を客観的に分析してコメントした。

 まずひなたは、真っ先に轟が凍らせに来る事を予測して瞬時に葉隠を助ける判断を下し、そこからは核や建物を一切傷つける事なく轟を無力化しつつ葉隠をサポートしてチームを勝利に導いた事が高得点だった。

 やり過ぎてカメラと無線の調子を一時的に狂わせてしまった点を除けば、素晴らしい戦略だった。

 葉隠は、ひなたと連携を取って見事障子を確保したのは流石だったが、せっかくひなたが音を消す為の策を練ったのに最後に声を出してしまったのが反省点だった。

 轟は、建物全体を凍らせて仲間や核にダメージを与えず敵を弱体化させ“個性”が未知数なひなたを真っ先に氷漬けにしたところまでは完璧だったが、相手が女の子だからと気絶させるのを一瞬躊躇してしまいそこを突かれたのが反省点だった。

 障子は、常に索敵をして爆音の直前まで二人の位置を把握していたのは評価できるが、爆音の瞬間に轟を心配するあまり葉隠の存在が頭から抜けていた事が反省点だった。

 

「今回の4人の反省点は以上ですわ」

 

「う、うむ! 完璧な講評ありがとう!」

 

 八百万が完璧な講評をすると、オールマイトはいう事がなくなってしまい複雑そうな表情を浮かべながらサムズアップをした。

 緊張が解けたのか、ひなたがふぅっとため息をつくと、心操が声をかける。

 

「おつかれ。かっこよかったよ。自分の為だけじゃなくて仲間の為に力を使っててさ」

 

「ひー君!」

 

 心操が言うとひなたは表情をパァっと明るくし、触角をピンと立てた。

 

(((仲良いなあいつら……)))

 

 二人が話している様子を見て、何人かのクラスメイトはそう思った。

 そして講評が終わり、次の試合が行われる。

 第三戦はヒーローチームが蛙吹&常闇コンビ、(ヴィラン)チームが切島&瀬呂コンビで、第四戦はヒーローチームが上鳴&耳郎コンビ、(ヴィラン)チームが八百万&峰田コンビだった。

 そして第五試合、くじ引きの結果ヒーローチームが青山&芦戸&心操チーム、(ヴィラン)チームが尾白&砂藤チームとなった。

 

「最後はひー君達だねぇ! 頑張れ!」

 

「……おう」

 

 ひなたがブンブンと手を振りながら言うと、心操はコクリと頷く。

 試合開始前に作戦タイムが与えられ、芦戸が心操に話しかける。

 

「作戦どーする!?」

 

「このマント……」

 

「ねぇ、わかったから一回真面目に聞いてくれない?」

 

 心操が作戦を考えている間も青山が関係ない事を喋っていたので、心操が呆れながらツッコミを入れる。

 

「とりあえずまずは相手の“個性”を考察しないとな。二人とも“個性”把握テストで“個性”を使ってきたから、ひなたの時みたいに切り札的な“個性”を隠し持ってるって線はまず無い。尾白は単純にあの尻尾が“個性“で、砂藤は多分増強系ってところじゃないかな。向こうの“個性”から考えて、多分取ってくる策は防衛戦だと思う」

 

「よくそんなのわかるな!」

 

「普通わかるでしょ」

 

「えー何で!?」

 

 心操が説明すると芦戸が感心し、心操がそれに対して当然のように言うと芦戸が聞き返す。

 

「向こうの立場になって考えるんだよ。あっちは単純にパワー系の“個性”があるわけだから、何仕掛けてくるかわからない俺に対して下手に戦力分散させるよりかは守りを万全にした方が勝率が高いだろ。索敵系の“個性”がないのは向こうも同じだしな。第二試合を見て考えてるなら尚更、防衛戦に持ち込もうとするのが自然だと思う」

 

「ふーん……ねぇ、そういえば今更だけど心操の“個性”って何? “個性”把握テストの時全く使わなかったよね?」

 

「……ああいう形式のテストじゃ役に立たないからね。俺の“個性”は『洗脳』、俺の声に返事した相手を俺の言いなりにする事ができる」

 

 心操が言うと芦戸は一旦頷いて心操に“個性”の詳細を尋ねる。

 心操が芦戸の質問に答えると、芦戸は目を見開いて驚く。

 

「えぇ強!?」

 

「と言っても頭使わせるような命令をするのは無理。例えば『芦戸三奈』って名前を見せてそれを書かせる事は出来ても、『酸を使う子の名前は?』って聞いて名前を書かせるのはできない。あと、複数人同時に操る事は出来るけど、“個性”の維持に集中力を使うから単純な命令しかできない。それとこれが一番大事で、操ってる相手に強めの衝撃を与えたら簡単に解ける」

 

「それでも十分強いよー」

 

 心操が言うと、芦戸はウキウキしながら返す。

 

「まあ向こうのチームに口を開かせる事さえできれば勝ちは決まったと思ってくれていい。確実ってわけじゃないけど、多分口を開かせられる質問も今考えた。二人は、尾白と砂藤のペースを乱してほしい」

 

「えっと……とにかく攻め続ければいいんだよね? 任せて!」

 

「スィ☆」

 

 心操が作戦を話すと、芦戸と青山が頷く。

 するとその直後、ブザーが鳴りオールマイトが合図をして試合が始まった。

 3人は、早速ビルの中に入って核のある部屋を探していく。

 

「いやっほ━━う!!」

 

「……!!」

 

 芦戸が上機嫌で酸の上を滑っていると、酸が跳ねて青山のマントにかかる。

 マントを溶かされた青山は、かなり傷ついていた。

 すると芦戸が笑いながら謝る。

 

「あ、ごめーん!」

 

(ホントに大丈夫かな……)

 

 

 

 その頃、(ヴィラン)チームの尾白と砂藤は心操の読み通り核のある部屋にいた。

 砂藤は、作戦を考えた尾白に尋ねる。

 

「なぁ尾白、ホントに俺達からは何も仕掛けにいかなくていいんだよな?」

 

「ああ。第二試合では轟と障子が別行動を取ったのが仇になって二人とも捕まってるからな。心操が相澤さんと同じように対人専用の“個性“なら、下手に奇襲を仕掛けに行くと相澤さんの時みたく返り討ちに遭って連絡手段を断たれたりなんて事になりかねない。連携を取れなくなったら致命的だから、ここで二人で核を守った方がいい」

 

「っし、そういう事なら任せとけ! どっからでもかかって来い!」

 

 尾白が今回の作戦を説明すると、砂藤はボクサーのように空中にジャブを繰り出す。

 すると、階段を上る足音が聞こえてくる。

 その直後、廊下から滑るような音と足音が近づいてくる。

 

「来る……!」

 

 二人が構えた直後扉が開き、青山のネビルレーザーが飛んでくる。

 

「うぉっ!?」

 

「危ねぇ!?」

 

 核スレスレにレーザーが放たれると、二人はレーザーを避けつつ核の方を振り向く。

 するとその直後、芦戸が酸のボールを使って攻撃を仕掛ける。

 

「喰らえー(ヴィラン)!」

 

 芦戸は、酸で次々と攻撃を繰り出し二人のペースを乱していく。

 だが砂藤は、“個性”を使った怪力で芦戸に詰め寄っていく。

 

 

 

 砂藤力道

 “個性”『シュガードープ』

 糖分10g(角砂糖約3個分)につき3分間パワー5倍! 

 

 

 

 砂藤は、青山と芦戸がドアを開けて攻撃を仕掛ける前に常備していた砂糖を口に含んでおり、『シュガードープ』で身体能力を底上げしていた。

 酸で二人のペースを乱していた芦戸だったが、身体能力が強化された砂藤に距離を詰められていく。

 

「わ゛!?」

 

 そして、心操を守りつつレーザーで攻撃を繰り出していた青山も、腹を下して苦しそうに腹を抱える。

 

「心操くん……僕もうそろそろ限界……☆」

 

 すると、尾白が尾で青山と心操を拘束しにかかる。

 

「ヘ━━━ゥプ!!」

 

「んのっ……!!」

 

 青山が叫ぶと、芦戸は二人を助けようと尾白の方へ酸のボールを投げつける。

 だがその前に砂藤の拳が降ってきて、ボールの軌道が反れる。

 

「ぎゃっ」

 

 軌道がズレたボールは容易く尾白に躱されて二人は尾で拘束され、その隙をついて芦戸も砂藤に捕まる。

 ヒーローチームを捕らえた二人は、捕らえた3人をテープで巻こうとする。

 尾白は、テープを取り出しながら心操に話しかける。

 

「心操、お前……結局何もして来なかったな」

 

 尾白が言うと、心操はニヤリと笑って言った。

 

「……違うね。これは囮作戦だ。……なぁ、俺の“個性”で既に核に細工をしたって言ったらどうする?」

 

 そう言って心操が顎で核を指すと、砂藤と尾白はまさかと思い反応する。

 

「な……!?」

 

「嘘だ……」

 

 するとその瞬間、尾白の目から光が失われて尾白の身体が硬直する。

 

「尾白……!?」

 

「うん、嘘だよ。引っかかってくれてありがとう」

 

 心操は、『洗脳』にかかった尾白に早速命令をする。

 

「『俺達を放してその場から動くな』」

 

 心操が言うと、尾白はヒーローチーム二人の拘束を解いた。

 

「は!? ちょ、おい何してんだ尾じ……」

 

「確保ー!!」

 

「……! しまった!!」

 

 尾白が心操の言う事に従ってしまったので砂藤が動揺すると、その隙に芦戸が砂藤にテープを巻き付ける。

 そして心操がそのまま核の方へ歩いて行き核に触れた。

 

「悪いな。俺達の勝ちだ」

 

 心操がそう言った直後、試合終了のブザーが鳴る。

 

『ヒーローチーム……WIIIIIN!!』

 

 オールマイトが勝敗を言い渡すと、芦戸がピョンピョン跳ねて喜ぶ。

 

「やったあ! うまくいったなー心操!」

 

「うん……でも二人ともごめん。作戦とはいえ危険な目に遭わせて」

 

 芦戸が心操の肩をバシバシ叩いて喜ぶと、心操は二人に謝る。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 試合開始前、心操は二人に作戦を話していた。

 

「……って言っても、いくらこっちが3人とはいえ単純に身体能力が高いあの二人とまともに戦ったら、芦戸はともかく俺と青山はすぐ捕まると思う。でもそれでいい。俺の方からも、尾白と砂藤には何もしない」

 

「え!? それが作戦!?」

 

 心操が言うと、芦戸が目を見開く。

 すると心操は、二人に本命の作戦を話す。

 

「ああ。二人が勝ちを確信した瞬間、俺が二人を揺さぶる。『勝負は既に決まってる』とか何とか言ってな。(ヴィラン)チームの勝ちが確定してる状態なのに、“個性”不明の俺が余裕そうにしてたら向こうだって動揺するだろ? 『いくら何でも上手く事が運びすぎてる、本当にこのまま勝っていいのか』って。そんな状態で揺さぶられたら、罠だってわかってても反応しちまう。話しかけるタイミングは二人のうちのどっちかがテープを手に取った瞬間だ。流石に何もせずに捕まったら怪しすぎるから、二人は俺を守りながら尾白や砂藤と戦ってくれ」

 

 “個性”不明というアドバンテージを活かしてハッタリで二人を揺さぶって返事をさせる、それが心操の本命の作戦だった。

 かなり賭けの要素が強い作戦だったが、互いのチームの条件を考えれば勝率の高い賭けだった。

『洗脳』という“個性”のせいか、心操は昔から話術に長けていた。

 相手と状況に合わせて相手を揺さぶる一言を見つけ出す事が得意だったのだ。

 あとはその状況さえ生み出せれば、もはや勝ちは確定したも同然だった。

 

「てゆーか、そんな作戦よく思いつくよな! チート“個性”持ってる上に頭良いとか最強じゃん!」

 

 心操の作戦を聞いた芦戸がそう言うと、心操はわずかに目を見開く。

 昔から(ヴィラン)向きの“個性”と言われ続け避けられてきた心操は、自分の“個性”を褒められた事がほとんど無かった。

 その為、自分の“個性”を同じヒーローを目指すクラスメイトに褒められたのが純粋に嬉しかったのだ。

 

「……そんな事より、そろそろ試合始まるから準備しようぜ」

 

 心操は、照れ臭そうに首に右手を回して呟く。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、モニター室で試合を見ていた他のクラスメイトは驚いていた。

 

「な……!? 嘘だろ、何なんだあいつの“個性”!?」

 

 上鳴がモニターを指差して尋ねると、オールマイトが答える。

 

「心操少年の“個性”は『洗脳』、問いかけに答えた相手を操る事ができる! 心操少年は、ハッタリで(ヴィラン)チーム二人に返事をさせて尾白少年を『洗脳』したというわけさ!」

 

「ズリィ!! 初見殺しじゃねーか!」

 

 オールマイトが心操の“個性”を説明すると、切島が口を開く。

 するとひなたがひょこっと切島の横から出てきて言った。

 

「でもハッタリだってヒーローになる上で重要な武器だと思うよ」

 

「その通り!」

 

(いくら強い“個性”を持っていようと、それを使いこなせなければ意味がない。心操少年は、相手チーム二人を揺さぶる為に戦況をコントロールして作戦の成功確率を最大限まで引き上げた。……全く、大した役者だよ……! 勝率の高い賭けとはいえ、内心上手くいくか不安だったろうに……よくあんな平然とハッタリかませたな!)

 

 オールマイトはひなたの発言に同意し、“個性”を使う為に戦況をコントロールした心操を高く評価する。

 そして最後の試合をした5人がモニター室に戻ってくると、もはやお約束と言うべきなのか八百万がオールマイトのセリフを奪って講評する。

 こうして、戦闘訓練は5戦全てが終了した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 授業の最後に、オールマイトがA組全員に言葉をかける。

 

「お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

 

 オールマイトが言うと、A組の一人がボソッと呟く。

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けと言うか…」

 

「真っ当な授業もまた私達の自由さ! それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて教室にお戻り!!」

 

 オールマイトは、A組にそう告げると保健室へ全力疾走していった。

 

「? 急いでるなオールマイト…かっけえ」

 

「ははは……」

 

 峰田がオールマイトの全力疾走に怪訝そうな表情を浮かべ、ひなたも苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして放課後、ひなた達が戦闘訓練の反省会をしていると、腕に包帯を巻いたボロボロの緑谷が教室に入ってくる。

 すると切島が緑谷に声をかける。

 

「おお、緑谷来た!!! お疲れ!! いや何喋ってるか分かんなかったけど熱かったぜおめー!!」

 

「へっ!?」

 

 切島がいきなり詰め寄ってくると、緑谷が肩をビクッと跳ね上がらせる。

 すると芦戸、砂藤、ひなたも詰め寄ってくる。

 

「よく避けたよー」

 

「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ」

 

「おかえりデッくん! 怪我大丈夫ー?」

 

「で、デックン!?」

 

「うん、お茶子っちが『デクくん』言ってたから、そっちの方が呼びやすいかなーって。ごめん、嫌だった?」

 

「う、ううん! 全然!」

 

「そう?」

 

 ひなたが緑谷を『デッくん』と呼ぶと、緑谷は分かりやすく動揺する。

 それを見たひなたは、もしかしたら自分の呼び方のせいで不快な思いをさせてしまったかと思ったが、そうではないようだったので安心していた。

 すると切島、芦戸、蛙吹、砂藤が順に自己紹介をする。

 

「俺ぁ切島鋭児郎! 今、皆で訓練の反省会してたんだ!」

 

「私、芦戸三奈! よく避けたよ━━━━!」

 

「蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで」

 

「俺! 砂藤」

 

「わわ…」

 

「それでさ、ひなちゃんの提案で反省会の後皆で特訓しようって話になったんだけどよ! 一緒に行こうぜ!」

 

「あっ、えっと……」

 

 いきなり詰め寄って自己紹介をしてきた4人に、緑谷は慌てふためく。

 切島がひなたの提案した特訓に緑谷も誘うと、緑谷は困惑する。

 戦闘訓練の反省会で改めてクラスメイト達の向き不向きを確認したひなたは、予習を兼ねてクラスメイトとブートキャンプをする事にしたのだ。

 相澤の娘という事もあり、ひなたの指摘は的確だったため、ほとんどのクラスメイトはひなたのブートキャンプに参加する意思を示した。

 

「騒々しい…」

 

「机は腰掛けじゃないぞ、今すぐやめよう!!」

 

「ブレないな飯田くん!」

 

 机に腰掛ける常闇に飯田が注意をすると、緑谷がツッコミを入れる。

 一方上鳴は、その後ろで麗日をナンパしていた。

 

「麗日今度飯行かね? 何好きなん?」

 

「おもち…」

 

 すると、麗日が緑谷が未だにボロボロなのに気がつき心配そうに駆け寄る。

 

「あれ!? デクくん怪我! 治してもらえなかったの!?」

 

「あ、いや、これは僕の体力のアレで…あの、麗日さん…それより、かっちゃんは?」

 

「ああ…爆豪くん? もう帰っちゃったよ。ついさっきね。私達で引き留めようとしたんだけど……」

 

 麗日が話すと、緑谷は急いで駆け出した。

 結局、緑谷は爆豪を追いかけていき、ひなたはまだ教室に残っていたメンバーで反省会の続きと特訓をする事にした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 放課後、教室に戻った緑谷は先に帰ってしまった爆豪を追いかけた。

 

「かっちゃん!!!」

 

「ああ?」

 

「これだけは君には言わなきゃいけないと思って…!」

 

 爆豪が立ち止まると、緑谷は少し躊躇いつつも自分の抱える秘密を打ち明けた。

 

「人から授かった“個性”なんだ。誰からかは絶対言えない! 言わない…でも、コミックみたいな話だけど本当で…!」

 

「…!?」

 

「おまけにまだろくに扱えもしなくて………全然ものに出来てない状態の借り物で……! だから…使わず君に勝とうとした! けど結局勝てなくて、それに頼った! 僕はまだまだで…!! だから…いつかちゃんと自分のものにして、僕の力で君を超えるよ」

 

 緑谷の言い分を聞いていた爆豪はブチ切れ寸前だったが、『僕の力で君を超える』という言葉にポカンとした。

 

「何だそりゃ…? 借り物…? わけわかんねぇ事言って…これ以上コケにしてどうするつもりだ……なぁ!? だから何だ!? 今日…俺はてめぇに負けた!!! そんだけだろが! そんだけ…氷の奴と隈の奴見てっ! 敵わねえんじゃねぇかって思っちまった…!! クソ!! ポニーテールの奴と触角チビの言う事に納得しちまった…クソ!! 触角チビ見て…あんなのに勝てるわけがねぇって思っちまった…!! クソが!!! クッソ!!! なあ!! てめぇもだ…! デク!!」

 

 爆豪は、涙目になりながら緑谷に向かって叫んだ。

 

「こっからだ!! 俺は…!! こっから…!! いいか!? 俺はここで、一番になってやる!!! 俺に勝つなんて、二度とねえからな!! クソが!!」

 

 そう言って爆豪が去っていくと、オールマイトが猛ダッシュで爆豪を追いかけていった。

 

「いたー! 爆! 豪! 少年!!」

 

 オールマイトは、爆豪の肩を掴んで爆豪を励ます。

 

「言っとくけど…! 自尊心ってのは大事なもんだ!! 君は間違いなくプロになれる能力を持っている!! 君はまだまだこれから…」

 

「放してくれよ、オールマイト。歩けねえ。言われなくても!! 俺はあんたをも超えるヒーローになる!」

 

 爆豪は、目に溜まった涙を拭いながら言った。

 爆豪がプライドがズタズタになって自棄になっているのではないかと心配していたオールマイトだったが、爆豪がとっくに立ち直っていたため逆に調子を狂わされていた。

 

「あ…うん……教師って…難しい…!!」

 

 オールマイトは、去っていく爆豪の背中を見てそう呟いた。

 

 

 

 

 




ひーちゃんと心操君がチートすぎw
ちなみに心操君はこの時点で原作より強いので、強化タグ入れた方が良ければタグ入れます。

ちなみに戦闘訓練の結果表
         ヒーロー側          (ヴィラン)
第一試合 ◯ Aチーム(麗日&緑谷)   VS Dチーム(飯田&爆豪)  ×
第二試合 ×  Bチーム(障子&轟)    VS Iチーム (相澤&葉隠)  ◯
第三試合 ◯ Hチーム(蛙吹&常闇)   VS Jチーム(切島&瀬呂)  ×
第四試合 ×  Gチーム(上鳴&耳郎)   VS Cチーム(峰田&八百万) ◯
第五試合 ◯ Eチーム(青山&芦戸&心操)VS Fチーム(尾白&砂藤)  ×
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