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数日後。
いつの間にか9月も終わり10月を迎えた。
夏の気配もすっかり消え去り、寒暖の差も激しくなっていた。
あれから、インターンは学校とヒーロー事務所の話し合いの末しばらく様子見との事だった。
ナイトアイも無事復帰し、今はセンチピーダー達と共に連合の動きを追っているようだ。
壊理は、ようやく意識が戻ったもののまだ精神的に不安定で、いつまた暴走してしまうかわからない為面会は出来ないとの事だった。
もう一つ、壊理の”個性”は額の角から放出されており、その角が熱が引いてくにつれ縮み今ではほとんどコブくらいにまで縮んでいた。
インターンに関しては、早ければ冬頃に再開との事だった。
そして数学の授業中。
「アマリ美シイ問イデハナイガ…コノ定積分ヲ計算セヨ。正解ノワカル者ハ挙手ヲ」
エクトプラズムが黒板に問題を書き、生徒達に問いを投げかける。
すると、出題とほぼ同時にひなたが手を挙げる。
「ホウ、出題ト同時トハ…デハ相澤!」
「あっ、すいません…つい……」
エクトプラズムが手を挙げたひなたを指名すると、流石に出題とほぼ同時に挙手をしてしまって恥ずかしくなったのか、照れ臭そうに少し頬を赤くしながら頭を掻く。
「間違ッテイテモイイカラ答エテミロ」
「えっと…107/28、ですよね?」
エクトプラズムが言うと、ひなたは若干辿々しく答えを言った。
ひなたがエクトプラズムの方をチラチラ見ながら答えを言うと、エクトプラズムは少し間を置いてから正解を告げる。
「正解!」
何とか問題に正解したひなたは、ほっと胸を撫で下ろしながら席に座った。
◇◇◇
そして昼。
ひなた、心操、飯田、麗日の4人は、緑谷を昼食に誘おうと緑谷の席に向かった。
その途中、麗日が先程の数学の問題の話をひなたに振ってくる。
「ひなたちゃんさっきの凄かったね!」
「えへへ、僕数学は得意だから…」
麗日が言うと、ひなたは頭を掻きながら答える。
「勉強に力を入れるのは良い事だ!! さァ緑谷くん、午後の為にもランチラッシュの料理を食べに行こう」
「うん腹ペコ…」
飯田が言うと、緑谷は顔を上げて席を立とうとする。
するとその時、突然青山が緑谷の口にチーズを突っ込んできた。
「じゃあチーズあげる」
数秒後、緑谷は隣に青山がいる事に気がつき驚く。
「びっくりした!! チーズ!!?」
すると青山は自分もチーズを頬張りながら言った。
「ポン・レヴェックチーズ。まろやかで食べやすいんだ」
「ああ、知ってる。ウォッシュチーズの割にはクセが無いアレでしょ」
「ウィ☆」
青山が言うと、ひなたが2本の触角をピンと立てながら答える。
青山は、モグモグとチーズを咀嚼しながら緑谷の口にもう一つチーズを押し込もうとする。
「ええ!? いやいいよ、まだ口の中入ってるよ! ありがとう…!」
「じゃあいただきます」
「ええ…ひなた、お前…」
緑谷がものすごい勢いでチーズを咀嚼しながら断ると、ひなたがしれっとそのチーズを横から奪ってきたので、心操はどれだけ食い意地が張っているんだと引いていた。
青山がチーズを飲み込んでいると、飯田が青山を食堂に誘う。
「青山くんも一緒にどうだい!? 君大概一人で食べてるだろう!!」
「ノン☆ここの食堂は僕の口に合わない☆」
青山は、高速で首と両手を振りながら断ると、自分の席に戻りファサッとナプキンをテーブルに広げた。
ナイフとフォーク、メインの料理とワイングラスを出すと、グラスの飲み物をクイー! と飲んだ。
「今の、どこから取り出したんだ…」
「あれ、中身ブドウジュースでしょ」
「好みは千差万別だ…無理強いはしない。ではまた後ほど!!」
心操とひなたは小声でツッコミを入れ、飯田は笑顔で手を振って立ち去る。
◇◇◇
そしてその夜。
「うーん…ギガ・ラ・セウシル…チャージル・サイフォドン…!」
ひなたは、独特の寝言を言いながら爆睡していた。
一方、緑谷はというと、自室で夜中まで勉強をしていた。
「もう1時…! 寝ないと」
緑谷は、部屋の電気を消してベッドに入る。
するとカーテンの隙間から青山が顔を覗かせていた。
わざわざ緑谷のベランダに侵入した青山が去っていくと、寝たふりをしていた緑谷が目を見開いてバクバクと心臓を鳴らす。
青山の奇行が怖すぎてつい寝たふりをしてしまったのだ。
だがどうしても何をしに来たのか気になってしまいカーテンを開けると、ベランダにチーズが置かれていた。
チーズで『ぼくはしってるよ☆』という文字が作られており、それを見た緑谷は悲鳴を上げそうになっていた。
◇◇◇
そして翌日。
「走ってはいけない!! しかし出せる限りのスピードで!!」
飯田が教室の中から廊下に向かって顔を出し腕を振りながら呼びかけると、緑谷は飯田に言われたように競歩で教室に入る。
すると飯田と麗日がジャッジをする。
「始業一分前! ギリギリセーフだ!」
「朝からうるせぇよ」
「でも元気なのはいい事だ!」
飯田が言うと瀬呂がツッコミを入れ、ひなたが『世界のチーズ図鑑』という本を読みながら言った。
飯田は、夜更かしをしていた緑谷に注意をする。
「夜更かしは良くないぞ。自律神経が乱れる」
「すいません、委員長」
「せやで。成績上げたいなら、適度に頑張るのが一番効果的なんやでデッくん」
「は、はい……」
飯田とひなたが言うと、緑谷が謝る。
座学成績上位の二人だからこその説得力のある言葉だった。
そしてそのまま青山に顔を向けると、青山はウィンクした。
『サ・プ・ラ・イ・ズ』
青山が口パクで伝えると、緑谷はドン引きして顔を引き攣らせる。
ひなたは、青山に対してドン引きしている緑谷を見て怪訝そうな顔を浮かべていた。
そしてその後ミッドナイトのヒーロー美術史の授業が終わり、上鳴と峰田が話をしていた。
「おい峰田! 知ってるコレ!?」
「Rは?」
「全年齢よ」
峰田と上鳴が謎の掛け言葉を言い合い、上鳴が携帯の画面を見せながら言った。
「Mt.レディがエッジショットとチーム結成! シンリンカムイとプリンセスプリティハニーもいるぜ」
「ウワアアアアアやめろおおおおお!!!」
「どんだけ悲惨だったんだよプリンセスプリティハニー事務所」
上鳴が言うと、プリンセスプリティハニーの元で散々な目に遭った峰田が耳を塞ぎながら絶叫する。
しっかりトラウマを植え付けられた峰田が発狂していると、心操がツッコミを入れた。
すると耳郎が話に入ってくる。
「『ラーカーズ』だよね。前々から噂あったよ」
「チームアップ多いよなあここ最近」
「レディの躍進すげえ」
「私達もプロんなったらチーム組もー! 麗日がねえ! 私を浮かしてねェ! 酸の雨を降らす!」
「エグない?」
芦戸が言うと、麗日がツッコミを入れる。
すると芦戸が続けて言った。
「私を瀬呂のテープで操作するんだよ!」
「何の話してんの」
「障子と耳郎が偵察ね。チーム・レイニーデイ」
「オー」
芦戸が言うと、瀬呂と耳郎が口を挟む。
すると峰田と上鳴が出しゃばってくる。
「「俺達は!?」」
「要らない」
芦戸が即答すると二人が落ち込み、八百万が二人をフォローしようとする。
「チームアップは“個性”だけじゃなく性格の相性も重要ですわ」
「ヤオモモそれ追い討ち」
「まあでも日頃の行いって大事よね」
「しっかりトドメ刺したわねひなたちゃん」
八百万が二人をフォローするつもりで追い討ちをかけると、葉隠がツッコミを入れる。
そしてさらにひなたがトドメを刺すと、二人はさらに沈み込み、蛙吹がツッコミを入れた。
すると芦戸が心操に話しかける。
「心操はひなたとチーム組むんだよね!?」
「うん」
「え!? いや、ちょ…」
「即答かよ!」
「リア充の余裕だ!! 逆剥けろ!! 歯にニラが挟まって取れなくなれ!!」
芦戸の質問に心操はひなたの肩に手を置きながら即答し、ひなたが若干動揺した様子で顔を赤くする。
仲良さげな二人を見て上鳴と峰田が嫉妬を爆発させ、峰田に至っては地味に嫌な僻み方をしていた。
すると耳郎や葉隠もコメントする。
「二人が組んだらエグい事になりそうなんだけど…」
「世界獲れちゃうねー!」
「まず俺の“個性”で相手を洗脳して混乱させてからひなたの“個性”で相手側の全員の“個性”を消してフィニッシュ」
「えげつなっ」
二人の言う通り、対人ならほぼ無敵の“個性”を持つ二人のチームアップは、やりようによってはオールマイトにも対抗できるある意味最凶のチームだった。
すると飯田がクラスメイトに声をかける。
「皆早く移動しなさい! 着替える時間なくなるぞ」
「うん!」
飯田が声をかけると、ひなたが慌てて準備をしながらコクリと頷く。
◇◇◇
午後のヒーロー基礎学は、セメントスと共に必殺技の鍛錬をする授業だった。
「それでは今日も必殺技の向上に務めていきましょー。以前課した『最低二つの必殺技』、出来てない人は開発を。出来てる人は更なる発展を」
「『
「わっ」
切島が早速必殺技を出すと、芦戸が軽く驚く。
「乱波と同等の連撃を受けて鍛える!! それには──…爆豪!! 砂藤ー!! 緑谷!! 思う存分俺をサンドバッグにしてくれ!」
「誤解を招くぜ!!?」
切島が言うと、砂藤がツッコミを入れる。
すると緑谷が断った。
あれから緑谷は、“個性”の暴走の事をオールマイトに話し、爆豪にも協力を仰いで“個性”の制御の練習を行い、ようやく制御ができるようになったのだが、まだ独自のスタイルを編み出すところまでは辿り着いていなかった。
「ごめん、僕は一人で…!」
「わかった!」
すると爆豪が緑谷の隣を歩きながら話しかける。
「ちったあ進んだンかよ」
「全然だ」
「全っ然かよ!! 俺より上に行くんじゃねェのかァ!?」
爆豪が怒鳴ると、緑谷は俯いて黙り込む。
爆豪は、そのまま切島の方へと歩いていき声をかける。
「切島ァ『
「いいぜ」
「良くねーよ建物フッ飛ぶぞやめとけ!」
「かっちゃんは相変わらず物騒だ」
爆豪の頼みを切島が承諾すると、砂藤とひなたがツッコミを入れる。
緑谷が、自分も一刻も早く目覚めた力を使いこなせるようにならなければと考えていると、青山が声をかける。
「ねえ、見て☆」
青山は直方体の岩に両肘をついており、レーザーを岩に貫通させた。
「新技☆『ネビルビュッフェ☆レーザー』!」
青山は、両肩からもチュンチュンと短めのレーザーを出した。
すると緑谷が軽く驚く。
「も一つ☆」
青山は、踏ん張りながらレーザーを一極集中させ、非常に細いレーザーを出すと岩に何かを刻み込む。
岩には『Il faut se méfier de l’eau qui dort』と書かれており、青山はフゥと鼻から息を吐き出す。
「これやるとすぐお腹痛くなるんだよね」
「何で今やったの!!?」
青山が腹を下して蹲っていると、緑谷がツッコミを入れる。
「セメントス先生! 青山くん調子崩しちゃって、ちょっと休んでもいいですか?」
「はいよ」
緑谷は、セメントスに声をかけてから青山を体育館の隅へ連れて行く。
すると緑谷がチャンスは今しかないと思い青山に尋ねる。
「あの…最近っていうか…ベランダのアレ…『知ってるよ☆』って…何を?」
すると青山は、蹲りながら答える。
「君の”個性”、身体と合ってない。君は僕に似ているんだ」
青山が言うと、緑谷はワンフォーオールの事が青山にバレたのかと思い思わず後退りする。
「似てるって…何が──」
「僕、常にサポートアイテムのベルトを巻いてるんだ。幼い頃からね。じゃないと時々ネビルレーザーが漏れちゃうのさ☆先天的なモノでね。僕も身体と”個性”が合ってないんだ☆」
青山は、自分のベルトを見せながらそう伝えた。
「お医者様にそう言われた☆君、入学当時”個性”を全然コントロールできてなかったろ? 以前から似てると思ってたんだ。インターン以降、君は以前にも増して焦ってように見える☆」
「青山くん…」
「サプライズは嬉しいだろう☆僕はサプライズが何よりも嬉しいのさ! 僕が嬉しいと思うことをしたのさ。どうだい? チーズ、美味しかったかい?」
「あれ食べる勇気ないよ!」
青山が言うと、緑谷がツッコミを入れる。
すると青山が言った。
「辛い事と向き合ってるだけじゃきっとキラメけないのさ☆」
青山が言うと、緑谷は全部自分を励ます為にやってくれていたのだと気づき、笑顔を浮かべて礼を言った。
「ありがとう。サプライズ大成功だよ、青山くん」
緑谷は、自分を励ましてくれた青山に笑顔で感謝した。
すると青山は、真顔で腹を抱える。
「青山くん?」
緑谷が心配して歩み寄ると、青山の尻から異臭が漂っていた。
「出ちゃった☆」
◇◇◇
こうして緑谷は、青山と仲良くなった。
「フィナンシェあげる☆」
「ありがとう」
青山が決めポーズをしながら焼き菓子を緑谷に渡すと、緑谷は礼を言った。
その様子を、芦戸と上鳴は歯磨きをしながら微笑ましそうに見ていた。
「青山近頃元気だねぇ」
そしてひなたも、微笑ましそうに青山と緑谷を見ていた。
「良かったねゆー君」
「何が?」
ひなたがクスリと笑いながら言うと、心操が尋ねる。
「何かね、今までは一人だけ一歩離れた所で僕達クラスメイトを見守ってるような気がしたからさ。やっと同じ舞台に立ってくれたような気がして、嬉しいんだ。騎馬戦の時も力を貸してくれたしさ、何か少しずつクラスがひとつに纏まってる気がするよね」
「…そうかもな」
ひなたが笑いながら言うと、心操は首を手で押さえながら言った。
ひなたは、初めから青山が今まで誰とも仲良くしようとせず一定の距離を保ってクラスを見守っているような気がしていた。
体育祭の時に騎馬戦のチームに誘ったのは、そんな青山をかつての自分と重ねて少しでも彼の事を理解したいと思ったからだった。
すると、心操がコソッとひなたに耳打ちしてくる。
「ところでさ、ひなた…明日の事なんだけど……」
「ああ、うん。お父さん、エリちゃんの面会が終わった後なら大丈夫だって」
「そっか…何か今から緊張してきた」
「あはは…僕も」
心操が言うと、ひなたが苦笑いを浮かべる。
相澤と話をするだけなのだが、何故か二人とも緊張していた。
◇◇◇
そして翌日、相澤と山田、そしてひなたと心操は教師寮の一室に集まっていた。
ひなたが『家族として個人的な話をしたい』と言い、相澤と山田が空き時間を見つけて話し合いの場を設けたのだ。
この日は相澤は壊理の面会があったので、話し合いをしに集まる頃にはすっかり陽が落ちていた。
家族として個人的な話をしたいという事だったが、大事な話だったので4人ともきちんとした格好で集まっていた。
「話って何だ」
「まァ…二人で『家族として話をしたい』って言ったら大体察しはつくけどよ」
相澤と山田が尋ねると、心操が話し始める。
大事な話なので、教師と生徒の関係とは思えないほど余所余所しく畏まった口調で話した。
「えっと…改めまして。ひな……一ヶ月程前から相澤さんとお付き合いをさせて頂いております、心操人使です。多忙な時期に話し合いの場を設けて頂きありがとうございます。でも、相澤さんがボロボロに傷ついて、その時思ったんです。伝えたい事は伝えられるうちに伝えないと、一生伝えられないまま終わってしまうかもしれないって…だから今お話しする事にしました」
心操がそう伝えると、相澤と山田は少し身構える。
自分達が想定していた話が出てくる可能性が高かったからだ。
すると心操は頭を下げながら本題に入った。
「…お願いします。娘さんと結婚させて下さい」
心操が真剣な表情で頭を下げながら伝えると、ひなたは不覚にも僅かに頬を染める。
「娘さんの素性は全て知ってます。
「あ、えっと…僕は、ひーく…心操くんと二人で幸せになりたいんです。他の誰かじゃなくて、心操くんじゃないと嫌なんです。卒業したら必ず二人で立派なヒーローになって、今までの分の恩返しをします。だから、その…僕からもお願いします」
心操が深く頭を下げて頼み込むと、ひなたも二人に頭を下げて頼み込む。
すると相澤は即答した。
「ああ、いいよ」
相澤が言うと、ひなたがガタっとソファーから立ち上がる。
「何でよ!? 酷いよ、何でそんな事言………え、『いいよ』?」
相澤があっさり二人の結婚を認めたので、二人とも驚きのあまりキョトンとしていた。
心操は、恐る恐る相澤に尋ねる。
「え、いいんですか…? そんなあっさり…」
「別に断る理由も無いしな。俺もこの半年でお前の人となりは把握したつもりだ。心操、お前が誰よりもひなたの事を気にかけてくれている事はよく知ってる。それに、俺より賢くて人を見る目があるひなたが惚れた男なんだ、文句は無いよ」
相澤が言うと、ひなたは照れ臭そうに頭を掻いた。
すると相澤は、隣に座っていた山田に声をかける。
「無駄な問答を続けるのは非合理極まりない。ほらマイク、お前も…」
「やっぱり嫌だああああ!! ひなたが嫁に行くなんて嫌だ!! ひなたは誰にもやらん!! どうしても嫁に貰いたきゃ俺を倒していけ!!」
山田がいきなり猛反対してきたので、相澤が面倒臭そうな表情を浮かべる。
「……は? お前、この前話した時は納得してただろ」
「知るか嫌なもんは嫌なんだよ!! ひなたが何処ぞの馬の骨のものになるなんて耐えられるか!! 俺の天使が汚されるなんてヤダヤダヤダ!! 絶対無理!!」
「駄々っ子か!! てかパパ、何でそんな酷い事言うんだよ!? パパだって、ひー君が僕の事を大事に思ってくれてるのは知ってるはずでしょ!?」
山田が子供のように駄々を捏ねながら猛反対すると、ひなたがすかさずツッコミを入れる。
山田は実の娘のひなたの事を溺愛しており、ひなたに下心を抱いた者が近づこうものならプロヒーローという立場を忘れて怒り狂う程の子煩悩だった。
取り乱すあまり、普段のハイテンションで英語混じりのトークを忘れて素が出ていた。
すると山田は、ようやく落ち着いたのか声量を落として話し始める。
「…知ってるよ。そりゃあ消太とひなたが正しいよ、心操がいい奴なのは俺もわかってる。ひなたに下心を持って寄ってくる変な虫は今まで何人も見てきたけど、こいつは違う。ひなたは、心操の話をしてる時が一番楽しそうなんだよ。俺だってお前らが二人でこうやって挨拶に来た時、『お似合いだ』って思っちまったもん。ひなたが嫁に行っちまうのは寂しいけど、ひなたの事を任せるなら心操しかいないって俺も思う。だからひなたの事支えてくれるって言うならな、ちゃんと行動で示してくれ。それなら俺も文句は無えよ」
山田がそう言って頼み込むと、心操とひなたはパァっと笑みを浮かべる。
「はい、必ず娘さんを幸せにしてみせます」
「…!! ありがとうパパ!」
「ただ!! もしてめぇ、ひなたの事泣かせやがったらタダじゃおかねぇかんな」
「……はい」
「パパは行動で示しすぎ!! ったくもう…」
山田が心操を睨みながら言うと、心操が頷きながら返事をする。
山田が今にも取って食う勢いで心操を睨むので、ひなたがツッコミを入れる。
すると相澤が二人に対して言った。
「俺からもいいか。さっきはいいと言ったが、条件が三つある」
「条件…? なあにお父さん」
「まず一つ目、ちゃんと学業やヒーロー活動と両立しろ。恋愛に現を抜かして本分を疎かにするなんて論外だ」
「うん」
「はい」
相澤が言うと、二人とも頷く。
相澤が今まで二人に何も口出しをしなかったのは、きちんと恋愛と本分の両立が出来ていたからだった。
相澤とて別に生徒同士の恋愛を禁止しているわけではなくそれは実の娘のひなたも同じ事だったが、恋愛に現を抜かしてヒーロー科としての本分を疎かにするようなら別れさせる必要があった。
だが二人の場合は二人で一緒にヒーローになる為に互いに互いを高め合っており、成績も順調に上がっているので相澤も文句は出なかった。
すると相澤は続けて言った。
「二つ目、これは今言った条件と関係する事だ。わかっているとは思うが一応言っておく。卒業するまで子供は作るな」
「はい」
「…わかってる」
相澤が言うと、二人が頷く。
すると相澤が話を続ける。
「最後に三つ目、さっき全てを懸けて支えると言ったが、絶対に命だけは捨てるな。相手の幸せを願うなら、まず自分を大事にしろ。いいか、一個でも破ったら二人まとめて即刻除籍だ。それでもいいならお前らの事はお前らに任せる」
「じゃあ…!」
相澤が言うと、二人は僅かに目を見開いて次の言葉を待つ。
すると相澤は心操の目を見て言った。
「心操、俺達の娘をよろしく頼んだ」
「…はい! こちらこそ、よろしくお願いします。
「お義父さんはやめてくれ」
心操が返事をしながら言うと、相澤が頭を掻きながら言った。
するとひなたはパアッと表情を明るくして相澤と山田に礼を言い、心操の方を見て満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう二人共!! やったねひー君!」
「うん」
ひなたは、心操に抱きついて大喜びする。
すると心操もひなたの頭をよしよしと撫でながら喜んだ。
二人の許可が降りたので(心操の両親はとっくに許可済み)、結婚を前提に付き合えるようになったのが嬉しかったのだ。
すると相澤は、隣で俯いて顔を両手で覆っている山田に声をかける。
「ひざし、お前いつまでそうしてんだ。顔上げろ」
「消太ぁ…俺、本当は嫌なんだよ…けどひなたがあんな幸せそうな顔してるの見たら、祝福するしかねぇじゃねぇかよぉ…」
山田はひなたが嫁に貰われるのを嫌がっていたが、ひなたが幸せそうに心操と話しているのを見て、娘の幸せを祝福するのが父親としての筋だろうと思い直していた。
◇◇◇
その後、ひなたは心操と一緒に部屋で話をしていた。
一緒に授業や補習の予習と復習をしていたため、テーブルの上には勉強道具が広げられていた。
ひなたは、相澤と山田に結婚前提の交際の許可を貰えた事を、触角をピコピコさせながら喜んでいた。
「良かったねぇひー君! お父さんやパパが認めるって、そうない事だからねー」
「うん。ホント許可貰えて良かったよ」
ひなたが喜びながら話しかけると、心操も首を手で押さえながら頷く。
するとひなたはふにゃっとした笑みを浮かべてマグカップに入ったココアを飲みながら話し始める。
「卒業したら僕達夫婦かぁ。まずは二人で事務所立てて、庭付きの家に住んで、ひー君にそっくりな子供を産んで、家の庭で遊ばせてあげるの。えへへ、楽しみだなぁ♪」
「気が早いよ…まだ2年以上あるんだぞ」
ひなたが幸せそうな表情を浮かべて将来の事を話していると、心操がツッコミを入れる。
ひなたはココアをふーふーと吹きながら少しずつ飲んでおり、ベッドに座って足をプラプラしていた。
服装は色気のいの字もない指定のジャージだったが、頸が見えるように髪を後ろで縛っているためどこか色っぽかった。
心操は、ひなたの仕草にドキッとしつつもひなたの頭を撫でた。
「…でもその夢、絶対叶えような」
「……うん!」
心操が笑顔を浮かべながら言うと、ひなたは顔を赤くしつつ頷いた。
真っ赤になったひなたの顔を見て、心操は思った事を率直に伝える。
「ひなたって、色白いから顔赤くなるとすぐわかるよな」
「え、そうかな!?」
心操が指摘すると、ひなたは恥ずかしそうに頬を両手で覆った。
すると心操は、首を手で押さえながらひなたに尋ねる。
「…なぁ、ひなた」
「んー?」
「お前、いつから俺の事好きだった?」
「…入試の時」
「すごい最初じゃん」
ひなたが僅かに頬を染めて言うと、心操がツッコミを入れる。
ひなたは、右手を左手で覆いながら話し始める。
「最初は一目惚れだった。受験票拾ってもらった時から気になってたんだ。ひー君は、他の受験生を操って僕を助けてくれた時からずっと、僕の王子様でヒーローだったんだよ」
ひなたは、心操と出会ってからの事を思い出しながら話した。
「同じクラスになって、君の事を知れば知るほど、どんどん好きになった。どんなにボロボロになっても、どんな手段を使ってもなりたいものになろうともがいてる君の姿は、青臭くて、泥臭くて…だけどそんな君を、世界一カッコいいと思ったんだ」
ひなたは、頬を染めながら自分の思いを率直に伝えた。
すると心操は、ひなたの頭に手を置いて笑う。
「……変な奴」
「しってる」
心操が笑いながら言うと、ひなたは満面の笑みを浮かべた。
「僕ね、ひー君が初めて告白してくれた時思ったの。これが運命なんだって」
「ひなた…」
「それまでは運命なんてもの信じた事なかったけど、あの時受験票を拾ってくれたひー君と同じ会場で実技受けて、同じクラスになって、こうやって両想いになれたのは偶然じゃなくて、きっと神様が僕達を出逢わせてくれたんだって…もし本当に僕がひー君と運命で繋がってるなら、それはとっても嬉しいなって思うの」
ひなたが幸せそうな表情を浮かべながら言うと、心操がひなたを軽く抱きしめる。
「俺もだよ、ひなた」
「……ん」
心操がひなたを抱き寄せてひなたの頭を軽く撫でると、ひなたは心操の胸に顔を擦り寄せる。
二人がそのままキスをしようとしたその時、ジジがひなたの膝に飛び乗って鳴いた。
「にゃー!」
「んまっ、ジジ〜! あんたって子は! 可愛すぎの罪で撫で回しの刑に処してやる! おりゃおりゃおりゃ〜!」
「にゃあああ!」
ひなたは、自分の膝の上に乗ってきたジジをひたすら撫で回した。
二人は、ジジと一緒に、消灯時間までベッドの上でイチャイチャしていた。
この幸せな時間がずっと終わらなければいいのに、ひなたはそう思っていた。