そして、9時丁度。
『Good Moorrrnin! ヘイガイズ!! 準備はここまでいよいよだ!!! 今日は1日無礼講!! 学年学科は忘れてハシャげ!! そんじゃ皆さんご唱和下さい、雄英文化祭開催!!』
プレゼントマイクの放送を合図に大量の花火が打ち上げられ、文化祭が始まった。
その頃A組は、午前10時からの自分達の出し物であるバンドの最終調整をしていた。
2時間程前までジェントル&ラブラバ捕獲作戦に参加していたひなたも、他のクラスメイトが練習しているところに急いで駆け込んで練習に加わった。
壊理を連れに病院に行っていた相澤も、壊理と通形を連れて寮に戻っていた。
一方、ひなたはというと。
「はふはふはふはふはふ!!」
『ABAND』と書かれたTシャツを着たひなたは、テーブルの上に置かれた大量のサルミアッキパイを両手で掴んで片っ端から口の中に詰め込んでいた。
次から次へとサルミアッキパイを口の中に詰め込むひなたを見て、上鳴がひなたを指差して砂藤に尋ねる。
「…何してんのあれ」
「緊張を解く為の儀式みたいなもんだと。あんなもん食って笑顔になる奴がいるとは…」
「アレエリちゃんが見たら絶対引くだろ…」
上鳴が尋ねると、サルミアッキパイを作らされた砂藤が答え、心操もひなたの奇行にツッコミを入れた。
ひなたは、ジェントル捕獲作戦に参加していたからか腹を空かしており、これからの出し物の為の栄養補給と緊張を解く為のまじない的な意味で、練習の休憩中に好物のサルミアッキパイを食い散らかしていた。
目の前で超絶不味いパイを暴食をしているひなたの事は、流石に彼氏である心操も擁護はできなかった。
「あー、食った食った! 腹が減っては戦ができぬっていうしね! さ、気合い入れてこっか!」
栄養補給を終えたひなたは、パアッと笑みを浮かべながら椅子から立ち上がった。
各々が、全力を出し切る為に今自分にできる事をした。
◇◇◇
開始時刻数分前。
会場には予想以上に観客が集まり、既に満席となっていた。
観客の中には、壊理の保護役の相澤とパトロールサボりのプレゼントマイクもいた。
「さて…どうかな」
『どうかなって!! 何が!? 俺ちょー楽しみよ!』
プレゼントマイクが相澤の肩に手を置きながら言うと、相澤は呆れ返る。
「お前はどーでもいい。つーかパトロール行けよ」
『ちょっとだけ! ちょっとだけ! だってひなたが歌うんだろ!?』
相澤がツッコミを入れるが、プレゼントマイクはパトロールそっちのけでA組のライブを観ようとしていたので、相澤は呆れて言葉も出ない様子だった。
相澤は、A組の出し物に、というよりは周囲の観客達の事で不安を抱いている様子だった。
「この中には『最近の雄英』に対する不平不満を奴等に向けてる輩もいる。楽しもうなんて気はなく品定めの為に来てるって輩が。彼等の目にお遊戯同然に映らないといいんだが」
相澤は、ひなた達の出し物を品定めに来た者達に火に油を注ぐ結果にならないかと、一抹の不安を抱えていた。
するとその時、相澤の近くにいた女性がいきなり二人の会話に加わってくる。
「大丈夫ですよ。ひなたちゃんは天使ですし。ひなたちゃんが歌えば、誰も品定めする気になんかなれないですよ」
「誰だお前」
相澤が振り向くと、後ろには『HINATA』と書かれた鉢巻とペンライト、さらにはひなたの似顔絵が描かれた団扇といったオタク丸出しのファッションをした見るからに不審者の女が立っていた。
相澤は、オタクグッズで全身フル装備の怪しい女を見て、シンプルに誰だかわからずにツッコミを入れる。
「さー、目いっぱい楽しむぞー!」
オタク女は、頭の鉢巻を締め直して気合いを入れていた。
冷やかしに来る輩が多い中で、気合いが入りすぎて逆に迷惑そうな客もいたので、相澤は別の意味でも不安を抱える。
その頃、舞台袖から観客達の様子を見ていたA組は、緊張した様子で自分達の出番を待機していた。
「思ったより人集まってるよ」
「朝からご機嫌な連中だぜ」
「楽しみにしてくれてんだよバカチン」
A組は、観客達の反応を舞台袖から伺いつつソワソワしていた。
ひなたも、自分の出番を待ちつつ観客席の方へ耳を傾ける。
観客は、純粋に楽しみにきた者が7割、品定め、もしくは冷やかしに来た者が3割程だった。
心操は、冷やかしに来た者の視線がプレッシャーとなってしまい、どこか表情が固かった。
するとひなたは、トンっと心操の頭に手刀を入れ、心操の緊張を解く。
「大丈夫。皆今日までいっぱい頑張ってきたんだもん。絶対上手くいくって、信じよう!」
ひなたは、心操の肩に手を置いて満面の笑みを浮かべた。
すると心操は、ひなたの笑顔を見て緊張の糸が解れたのか、自然と笑みが溢れる。
「…ああ」
心操は、ひなたに言われた通り、絶対上手くいくと信じて全力を出し切る事にした。
AM10:00
ブ━━━━━━━━
ブザーの音と共に、幕が上がる。
観客達の注目は、ステージに集まった。
「お、おお」
「始まるぞ」
「キター」
「1年頑張れー」
「ヤオヨロズー!!」
「どんなもんだぁ!? 1年ー!!」
「ヤオヨロズー!! ヤオヨロズー!! ヤオヨロズー!」
「ひなちゃん!! ひなちゃん!! ひなちゃん!!」
観客達は、手を叩きながら歓声を送った(一部テンションがおかしい者達がいたが)。
観客席にいた通形は、壊理をヒョイと抱き上げる。
「エリちゃん見える!?」
「うん…!」
壊理は、舞台に立つひなたと煌びやかな衣装に身を包んだ緑谷を、目を輝かせながら見ていた。
「いくぞコラァアア!!」
爆豪は、大声を張り上げてドラムスティックを振り上げる。
『雄英全員音で殺るぞ!!』
BOOM!!!
爆豪がドラムを叩くと同時に爆炎が上がる。
それに合わせてバンド隊も楽器を奏でる。
すると、扱き下ろしに来た普通科の生徒達も思わず圧倒されて目を見開く。
「開幕爆発! ツカミはド派手に!」
演奏に合わせて、ダンス隊も踊り始める。
そして演出隊も、演出の準備をした。
「「よろしくお願いしまァす!!!」」
耳郎とひなたの叫び声と同時に舞台からは炎が上がり、ダンス隊は一斉に飛び出した。
─── What am I to be?
─── What is my calling?
─── I gave up giving up, I’m ready to go
ダンス隊が一斉に飛び出すと、ひなたと耳郎が歌を歌う。
それを見た観客達は、思わず目を奪われる。
「おお!? いいじゃん!!」
「キャ━━━━ひなたちゃんこっち向いて━━━!!」
周囲の観客達が目を奪われる中、限界ヲタク女は叫びながら手を振っており、運悪くヲタク女の近くになってしまった相澤は鬱陶しそうにしていた。
すると緑谷と青山がステージの中央に飛び出し、同時にポーズを決めた。
「息ピッタリ! 緑谷とレーザーだ!」
「見せ場!!」
緑谷のダンスを見た壊理と通形は、テンションが上がっていた。
すると緑谷と青山は目で合図をし合う。
「いくよ!」
「ウィ☆」
緑谷はワンフォーオールで青山を高く飛ばす。
そして青山は空中でレーザーを放った。
─── The futures left unseen
─── It all depends on me
─── Put it on the line to follow my dream
「人間花火かよ!!」
ミラーボール青山を見た観客達は、一斉に笑い出した。
空中に投げ出された青山を尾白がキャッチし、青山をステージに立たせる。
壊理と通形がステージを見ると、障子が峰田の頭の球体を投げていた。
「よっしゃ今だせろろき!!」
「セイ!」
「おお」
切島が合図を出すと、瀬呂が肘からテープを伸ばし轟が氷を出す。
─── Tried all my life
─── I’ve tried to find
─── Something that makes me hold on and never let go ohhhh
「行け、
「アイヨ!」
常闇が指示を出すと、黒い布を被った
その他にも、パワーローダーから借りた照明付きドローンが縦横無尽に動いてステージを照らしていた。
「サビだここで全員ブッ殺せ!!」
─── Hero too
─── I am a hero too
─── My heart is set and I won’t back down
爆豪が叫ぶと同時に、爆豪が爆発を起こし、青山がミラーボールになり、瀬呂のテープとひなたの作った花弁が宙を舞い、瀬呂のテープと峰田の球が凍らされて氷の道ができる。
すると蛙吹が氷の足場に飛び乗って麗日を舌で巻いて持ち上げる。
─── Hero too
─── Strength doesn’t make a hero
─── True heroes stand up for what they believe
─── So wait and see
─── So wait and see
「楽しみたい方ァア!! ハイタッチー!」
麗日は、手を挙げた観客達の手に触れて浮かしていく。
すると手を触れた観客達は浮き上がって空中を舞った。
─── What do they think of me?
─── Who do they think I’ll be?
─── I could not care less I don’t wanna know
「わぁ!?」
「おおおおおお!!?」
「何だこいつらああ!!!」
A組のパフォーマンスに、観客全員が驚き楽しんでいた。
─── Am I doing right?
─── Am I satisfied?
─── I wanna live my life like it’s meant to be
「行ってこいダンス隊!!」
「ダイヤモンドダストじゃあ!!」
障子はダンス隊を投げ飛ばし、切島は体育館の天井を走りながら轟の氷を削った。
─── Tried all my life
─── I’ve tried to find
─── Something that makes me hold on and never let go ohhhh
「上鳴!!」
「ほーい」
「空中ギター!」
砂藤は上鳴を持ち上げて投げ飛ばし、麗日が上鳴を浮かせた。
すると上鳴は空中で放電しながらギターを演奏する。
─── Hero too
─── I am a hero too
─── My heart is set and I won’t back down
─── Hero too
─── Strength doesn’t make a hero
─── True heroes stand up for what they believe
─── So wait and see
「浮いたお客をテープで安全確保!」
葉隠は自身の身体を発光させ、ダンス隊は空中に浮いた客にテープをくっつけていき足場に立たせる。
─── People will judge for no reason at all
─── Yea they might try
─── To say your dreams dumb…don’t listen
─── They may look down on me and count me out
「うおおお!!」
「あいつずっとロボットダンスだけしてる!」
飯田は、ロボットダンスで客の爆笑を掻っ攫っていた。
─── I’m going my own way
─── They may look down on me and count me out
─── I’m a hero, I’ve got music
「オイラの時代ー!」
峰田が女子達に囲まれて鼻の下を伸ばしていると、観客達はブーイングをした。
─── Hero too
─── I am a hero too
─── My heart is set and I won’t back down
─── Hero too
─── Strength doesn’t make a hero
─── True heroes stand up for what they believe
─── Yea I’ll be !!!
ステージに立っていたひなたと耳郎は、歌っているうちにテンションが上がりアドリブで歌い出した。
すると、観客達は完全に扱き下ろすのを忘れて盛り上がった。
「おめーらがするンかい」
散々『変なアドリブ入れるな』と言っておきながら本番でいきなりアドリブを入れてきた耳郎とひなたに、爆豪は呆れながらドラムを叩いていた。
─── Hero too
─── I am a hero too
─── My heart is set and I won’t back down
─── Hero too
─── Strength doesn’t make a hero
─── True heroes stand up for what they believe
─── So wait and see
その瞬間、壊理の心の中に巣食っていたオーバーホールの影が完全に消え去った。
「わああ!!」
壊理は、両手を挙げて満面の笑みを浮かべながら歓声を上げた。
すると通形も涙ぐみながら笑う。
「「わぁああ!!」」
─── I have met so many heroes in my life
─── Gave me the strength and courage to survive
─── Gave me the power to smile everyday
─── Now it’s my turn to be the one
─── to make you smile
そしてラスト、ドラムとベースが重なり、落ち着いた音程になって一曲目の演奏は終了した。
一曲目が終わったところで、ひなたは“個性”で声を大きくして観客にレスポンスを煽る。
『皆さん盛り上がってますかァアアア!!?』
「「「「YEAHHHHHHHHHH!!!!」」」」
ひなたがレスポンスを煽ると、観客が一斉に声を上げる。
すると続けてバンド隊は2曲目の演奏に入り、演出隊も演出の準備をする。
「それでは2曲目、『空に歌えば』」
2曲目は、いきなりボーカルから始まった。
2曲目に選んだのは、某ロックバンドが5年前にリリースした曲だった。
───虚実を切り裂いて 蒼天を仰いで 飛び立った永久
───空に歌えば 後悔も否応無く
───必然 必然 なるべくしてなる未来だ それ故、足掻け
───蜃気楼 涙の川を漕ぎ出して 幾星霜
───さよなら 行かざるを得ない 何を失ったとて
───忘れない 悔しさも 屈辱も
───胸に飾って
───虚実を切り裂いて 蒼天を仰いで 飛び立った永久
───空に歌えば 後悔も否応無く
───必然 必然 断ち切るには眩し過ぎた 未来へ、足掻け
───人を傷つけずには 本懐は遂げられず
───失って構わないと思える 理想が道しるべ
───笑うなら 笑ってよ 嘲笑も
───道連れにして
───あの日の君の声 言いたかった事 言えなかった事
───空に歌えば 後悔を振り切って
───必然 必然 投げ出すには背負いすぎた それ故、足掻け
───苦悩は一陣の驟雨となりて 行かすものかと足にすがる嘲笑の泥濘
───雨雲に幽閉 隔離された空 捕縛された暗がりからの逃走
───掴んだものはすぐにすり抜けた 信じたものは呆気なく過ぎ去った
───それでも、それらが残していった、この温みだけで この人生は生きるに値する
───失意の濁流を抜けて 曇天から射す一条の光
───その時、既にもう 雨は上がっていた
───虚実を切り裂いて 蒼天を仰いで 飛び立った永久
───空に歌えば
───あの日なにか叫んでた君の声 言いたかった事 言えなかった事
───空に歌えば 後悔も連れ立って
───必然 必然 終わらすには失くしすぎた それ故、足掻け
───有限 有限 残り僅かな未来だ それ故、足掻け
2曲目は、ベースとキーボードを基調としたイントロから始まり、間奏に入った瞬間にギターとドラムが合わさってロックらしい曲調となった。
演出も曲調に合わせて、レーザーをメインにしていた。
青山がレーザーを放ち、あらかじめ設置されていた光源からも無数のレーザー光が放たれる。
「まだまだ盛り上がっていくよー! 3曲目! 『ピースサイン』」
ひなたが3曲目の曲を発表すると、観客が盛り上がる。
3曲目は、某大人気アーティストが作詞作曲した誰もが知るヒーローソングだった。
3曲目が始まると、観客も一緒になってイントロ部分を歌った。
───いつか僕らの上をスレスレに
───通り過ぎていったあの飛行機を
───不思議なくらいに憶えてる
───意味もないのに なぜか
───不甲斐なくて泣いた日の夜に
───ただ強くなりたいと願ってた
───そのために必要な勇気を
───探し求めていた
───残酷な運命が定まってるとして
───それがいつの日か僕の前に現れるとして
───ただ一瞬 この一瞬 息ができるなら
───どうでもいいと思えた その心を
───もう一度
───遠くへ行け遠くへ行けと
───僕の中で誰かが歌う
───どうしようもないほど熱烈に
───いつだって目を腫らした君が二度と
───悲しまないように笑える
───そんなヒーローになるための歌
───さらば掲げろピースサイン
───転がっていくストーリーを
───守りたいだなんて言えるほど
───君が弱くはないのわかってた
───それ以上に僕は弱くてさ
───君が大事だったんだ
───「独りで生きていくんだ」なんてさ
───口をついて叫んだあの日から
───変わっていく僕を笑えばいい
───独りが怖い僕を
───蹴飛ばして噛み付いて息もできなくて
───騒ぐ頭と腹の奥がぐしゃぐしゃになったって
───衒いも外連も消えてしまうくらいに
───今は触っていたいんだ 君の心に
───僕たちは
───きっといつか遠く離れた
───太陽にすら手が届いて
───夜明け前を手に入れて笑おう
───そうやって青く燃える色に染まり
───おぼろげな街の向こうへ
───手をつないで走っていけるはずだ
───君と未来を盗み描く
───捻りのないストーリーを
───カサブタだらけ荒くれた日々が
───削り削られ擦り切れた今が
───君の言葉で蘇る 鮮やかにも 現れていく
───蛹のままで眠る魂を
───食べかけのまま捨てたあの夢を
───もう一度取り戻せ
───もう一度
───遠くへ行け遠くへ行けと
───僕の中で誰かが歌う
───どうしようもないほど熱烈に
───いつだって目を腫らした君が二度と
───悲しまないように笑える
───そんなヒーローになるための歌
───さらば掲げろピースサイン
───転がっていくストーリーを
───君と未来を盗み描く 捻りのないストーリーを
3曲目は、観客も一緒になって一つの音楽を創るタイプのライブとなった。
サビ部分でひなたがピースサインを掲げながら歌うと、観客が歓声を上げる。
通形と壊理も、他の観客と一緒に盛り上がっていた。
「続けて4曲目! 『THE DAY』!」
耳郎が4曲目の曲を発表すると、観客が盛り上がる。
4曲目は、某二人組ロックバンドが5年前にリリースした曲だった。
───静けさがしみ込むようで息を止めた午前5時
───非常階段で爪を噛む 明日はどっちだ? THE DAY HAS COME
───けして明けない夜も 降り続けてやまない雨も
───このろくでもない世界にはあるんだよ
───少しも変ではないの まどろみに足を取られてる
───あなたを責めているわけじゃないんだよ
───独り空想に遊ぶ そこで思い描いたことまで恥じるのかい?
───絡み合う迷宮 迷宮 それでも行くというの?
───小さき旅人が奏でる 始まりの鐘の音
───行く当ても DON'T KNOW DON'T KNOW 本当は怖いんじゃないの?
───踏み出すその一歩一歩が変えていけるさ THE DAY HAS COME
───わかりあえないヤツも わかったようなふりしたヤツも
───このろくでもない世界にはいるんだよ
───ここは地獄じゃなくて まして天国のはずもなく
───ちょうどそのミシン目のような場所なんだ
───明日を占うカード 風がまき上げた意味なら知ってるだろ
───絡み合う迷宮 迷宮 それでも行くというの?
───小さき旅人が奏でる 始まりの鐘の音
───行く当ても DON'T KNOW DON'T KNOW 本当は怖いんじゃないの?
───踏み出すその一歩一歩が変えていけるさ THE DAY HAS COME
───その目で見たモノだけ信じていたいけれど 影に怯えては
───悪い予感が本当に化ける CRY ON CRY ON
───果てしない Real Survivor 足を引っ張りあう
───生き残ったものが勝者で 「FAIR」などは幻想
───忍び寄る Secret Hunter 語るのは 天下国家
───非常階段で爪を研ぐ 明日はどっちだ? THE DAY HAS COME
4曲目は今まで披露した曲の中でも特にパワフルな曲で、それに合わせて演出も炎や強い光を使って激しく仕上げた。
青山ミラーボールがピカピカ光り、光源のドローンが様々な色の光を放ってダンスホールを色鮮やかに輝かせる。
4曲目が終わり、いよいよライブも最後の曲となった。
「最後の曲は、僕に勇気をくれた歌、そしてここに来てくれたある女の子のために歌います!」
「!!」
ひなたが言うと、壊理が目を見開く。
「聞いた!? エリちゃんのための歌だって!」
通形はパァっと笑みを浮かべ、壊理も笑みを浮かべて最後の曲を楽しみにする。
「それでは聴いて下さい! 『愛の力』」
ひなたが最後の曲を発表すると、ギターを中心にした力強い前奏が始まる。
ステージからは炎が上がり、所々から赤い花火が放たれ、ホール全体が紅く彩られる。
ひなたが最後の曲に選んだのは、10年程前に放送されたプリキュアシリーズのキャラクターソングで、絶望しか知らなかったひなたの未来を明るく照らした曲だった。
───限られた時だって それさえも楽しもうよ
───ときめきは失わないわ それが私だから
───閉じ込められた世界 未来はどこにあるのか?
───誰もが戸惑いながらも歩く
「あれ? これプリキュアじゃね?」
「うわ懐かしい! ウチこれ見てたわ!」
ひなたが歌い始めると、ちょうど当時小学生だった女子生徒達が反応する。
───突然に 闇が溢れて
───暗闇に 不安が揺れ動いた
───だけど、正義は 揺らぎはしない
───儚くも刻んでいこう! 愛の力
ひなたは、暗い過去を乗り越えてクラスの仲間と共にヒーローを目指している今の自分と曲の歌詞を重ね合わせ、想いを込めて歌った。
サビに入る直前、麗日がひなたに手を伸ばしてくる。
するとひなたは、ステージから飛び降りて麗日の手にタッチした。
その直後サビに入り、爆豪が大爆発を起こす。
───忘れない 忘れない 誓った未来
───どんな苦難が 待っていたとしても
───もっと遠く もっと高く 私を動かす
───仲間がいる 忘れない
爆豪が起こした爆発でちょうどバンド隊が逆光になり、そのタイミングでダイヤモンドダストが散りばめられてキラキラ光る。
麗日に浮かされたひなたは、観客席全体を見渡せる空中でダンス隊に合わせて踊りながら歌った。
1番のサビが終わり、2番目の歌詞に差し掛かる。
───忘れてはいけない 真っ直ぐな想いだけは
───誰にでも弱さがあるよ だから、やさしくなれる
───君と出会えたこと それが宝物になる
───悲しみも痛みも 分かちあえる
「わぁぁ…!」
ひなたが空中で踊りながら歌っていると、ちょうど降りかかったダイヤモンドダストが光を乱反射してキラキラ輝いているように見える。
ひなたは、歌詞に込めた想いを壊理に訴えるように歌った。
その想いが伝わったのか、壊理は目を見開いて魅入っていた。
───どこまでも続いていく道
───もう決して引き返せはしないから
───一人じゃないと気付いてほしい
───奇跡の扉 きっと開く 愛の力
サビに入る直前、再び峰田のハーレムパートに突入する。
「ハーレム最高ォォォ!!!」
「要らねー!」
「引っ込めー!」
峰田が調子に乗っていると、観客からブーイングを浴びせられる。
───忘れない 忘れない 誓いの言葉
───強い想いが 導いてくれる
───もっと遠く もっと高く 未来を信じてる
───仲間といる 忘れない
2番目のサビになると、今度は赤い閃光がホール全体に広がり、ダイヤモンドダストと共にスートの形をした光の粒が散らばる。
『くぎゅァアアアアアアア!!!』
「う゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「喧しい」
プレゼントマイクが謎の奇声を発し、後ろの限界ヲタク女がペンライトを振りながら号泣していると、相澤がツッコミを入れる。
2番のサビが終わり、最後のサビに入る。
───忘れない 忘れない 誓った未来
───どんな苦難が 待っていたとしても
───もっと遠く もっと高く 私を動かす
───仲間がいる 忘れない
最後のパートは耳郎とひなたのデュエットで、二人の歌声がハモる。
耳郎は、両親に自分の進路の話をした時の事を思い出していた。
両親の望む音楽の道ではなくヒーローの道を目指すと話した時、両親は快く耳郎の夢を応援した。
彼女は今、大好きな音楽も、憧れたヒーローへの道も、どちらも全力で楽しんでいた。
───忘れない 忘れない 誓いの言葉
───強い想いが 導いてくれる
───もっと遠く もっと高く 未来を信じてる
───仲間といる 忘れない
ラスト、二人が歌詞を歌い終わりギターとベースをメインとしたアウトロに入り、ベースの耳郎が最後の一音を弾き終えて演奏は終了した。
「ありがとうございましたァアア!!!」
耳郎が締め括りに叫ぶと、観客達は盛大な歓声と拍手を送った。
こうしてA組のライブは大成功を収め終了した。