抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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楽しめ!文化祭!

 A組のライブの後は、B組の劇が始まった。

 背景のセットは見事なクオリティーで作られており、観客達の目を奪っていた。

 物間の足元には敵役の凡戸が倒れており、城の中ではジュリエット役の小大が顔を覗かせていた。

 

「我が名はロミオ!! アズカバンの亡霊パリス伯爵よ! ジュリエットを返してもらおう!!」

 

 本物そっくりのオモチャの剣を持ったロミオ役の物間が台詞を叫ぶ。

 すると、黒いマントを羽織った鉄哲が台詞を言う。

 

「ロミオ…オビワンから父親の事聞いているだろう。ゴンドール王国の王であったと…あれは嘘だ。ワシがお前の父だ」

 

「嘘だあ━━━━!!!」

 

 物間が叫ぶと同時にスポットライトが照らされ、ピアノの鍵盤を叩く音が鳴り響く。

 物間脚本の演劇は、色々な要素を詰め込みまくったツッコミどころのある劇だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 B組の劇を見た観客達は、体育館の外でガヤガヤと騒いでいた。

 

「詰め込みすぎだろ!!」

 

「色々凄かったな」

 

「勢いに笑っちゃった」

 

 はしゃいでいる観客達を、A組は羨ましそうに眺めていた。

 

「B組の劇見たかったなー」

 

「しゃあない片付けはちゃんとしないと!」

 

「あ、先輩がビデオ撮影したやつ後で編集してくれるってさ。落ち着いてから後でゆっくり見ない?」

 

「有能!!」

 

 A組は、ライブで出した氷やらテープやらの掃除で忙しかったためB組の劇を見そびれていたのだ。

 すると心操が録画を後で先輩から貰ってくると言ったので、既に劇の録画を手配してもらえる程上級生と仲良くなっていた心操に対し、周りのクラスメイト達が驚いて声を上げる。

 ひなた達が片付けをしていた、その時だった。

 

「よーうオツカレ!!」

 

「センパイ! エリちゃん!」

 

 通形が壊理を連れて声をかけてきた。

 ひなたは、話がしたそうな様子の壊理のもとへと向かう。

 すると、壊理は楽しそうに話し始めた。

 

「最初は大きな音で怖くって、でもダンスでピョンピョンなってデクさん踊っててね、女の人とクレシェンドさんが歌っててね、ピカって光ってぶわって冷たくなってね、プカーってグルグルーって光ってて、女の人の声がワーってなって私…わああって言っちゃった! それでね! 最後ね! クレシェンドさんが、私のために歌ってくれた時ね、赤い光がピカピカ光って、ブワって炎が出て、すっごくかっこよかった!」

 

 壊理の話を聞いて涙目になる緑谷だったが、すぐに涙を拭うと笑みを浮かべた。

 

「楽しんでくれて良かった」

 

「うん! あの歌はね、僕に勇気をくれた歌なんだ。エリちゃんに一番聴かせたかったから、喜んでもらえて良かった!」

 

 ひなたが満面の笑みを浮かべて壊理の手を取ると、壊理も笑顔を浮かべる。

 緑谷とひなたが笑っていると、峰田がカリカリした様子で怒鳴ってくる。

 

「良かねんだよ遅刻の次はサボリか運べや!」

 

「ああ! ごめん持つ! 持つ!」

 

「僕のも☆」

 

「はいはい!」

 

 峰田が怒鳴ってくると二人が慌てて片付けに取り掛かり、青山も荷物を運ばせようとするのでひなたが青山の荷物を代わりに運んだ。

 すると、他の科の生徒達がA組に声をかけてくる。

 

「A組!!」

 

「オツー! 楽しませてもらったよー」

 

「わっ!! やったァあざっス!!」

 

 他の科の生徒が口々に感想を言うと、切島が礼を言った。

 すると、他の科の行列の後ろの方から扱き下ろしに来た普通科の男子と女子が出てくる。

 

「ああ…楽しかった、良かったよ」

 

 すると、普通科の男子と女子がA組に頭を下げる。

 

「ごめん!」

 

「扱き下ろす気で見てた!!」

 

 二人は、律儀にも扱き下ろす気で見ていた事を謝り、素直に楽しんでしまった事を伝えるとそそくさと去っていってしまった。

 

「言わなくて良いのに…」

 

 二人がそそくさと去っていくと上鳴は少し呆れ爆豪はドヤ顔をしていた。

 切島は、嬉しそうに飯田に話しかける。

 

「先生が言ってた『ストレスを感じてる人』だったんかな。だったら飯田、通じたって事だなァ!!」

 

「うむ! しかし! 理由はどうあれ見てくれたからこそ。見てない人もいるはずだ。今日で終わらせず気持ちを…」

 

 飯田が言いかけると、普通科の上級生達がフォローする。

 

「いいんじゃない、君らがどういう思いで企画したか聞いてるし」

 

「俺達には伝わった。今度は俺らからそいつらに…本当に楽しかったもん。君らの想いは見た人から伝播していくさ」

 

 普通科の上級生達が口々に言うと、芦戸は喜び飯田は頭を直角に下げた。

 

「嬉しいねぇ」

 

「ご厚意痛み入ります!」

 

 一方爆豪はというと、見に来なかった生徒が一部いるという事実に怒り心頭な様子だった。

 

「スカッとしねえ…見なかった奴炙り出して連れて来い!」

 

「いいやめろ、やめろもう」

 

「感じ悪いよお前」

 

 荒れる爆豪を、尾白と心操が何とか宥める。

 するとその時、影山が声をかける。

 

「ひなたちゃんひなたちゃん! 最後熱唱してたの、すごく良かったですよ! 凛としていて、それでいてビブラートのかかったセクシーな歌声…普段の可愛らしい声とのギャップがもう本当に尊かったです!」

 

「幽華ちゃん! 見に来てくれたんだねぇ」

 

「当然ですよ! だってひなたちゃんが歌うって聞いたら行かないわけにはいかないじゃないですか! ハッ、もしかしてわざわざステージの中心で熱唱したのは私の為に…!?」

 

「別にお前の為にあのライブ企画したわけじゃないけどな」

 

 影山が勝手に過大解釈をしていると、心操がツッコミを入れる。

 すると影山は、思い出したように先程A組が話していた話をする。

 

「ああそうそう、さっき見なかった奴がどうのこうのって言ってましたよね? 安心して下さい! ひなたちゃんの素晴らしい歌声を聴きに来なかった奴は全員消します。社会的に」

 

「ダメだろ色々と」

 

 影山がドス黒いオーラを放ちながら過激な発言をすると、心操がツッコミを入れた。

 ひなたはその様子を苦笑いを浮かべながら見ていた。

 

「僕は幽華ちゃんが来てくれただけで十分嬉しいよ!」

 

「ん゛っっっっ…!! 天使…いや女神…!! もうこの手は一生洗わない!!」

 

「きったね」

 

 ひなたが慌てて影山の手を握りながら喜ばせる言葉をかけると、影山はひなたにかけられた言葉が嬉しすぎて悶絶した。

 影山が喜びのあまり手を一生洗わないなどと衛生的にどうなのかという発言をしたため、心操がツッコミを入れる。

 するとその時、手が止まっているクラスメイト達に峰田が血眼で注意する。

 

「早く氷全部!! 片付け!! 済ませようや!!」

 

「あ、ワリ! 峰田さっきからカリカリだな」

 

「うーん、ハーレムパートがブーイングの嵐だったからかな」

 

「いや違うでしょ。何であんなカリカリしてんのかは知らんけど」

 

 切島は、やけにカリカリしている峰田の態度が気になっていた。

 ひなたは峰田のハーレムパートが不評だったためカリカリしているのかと思っていたが、心操が否定する。

 峰田は周りからどう思われようが女子に囲まれていれば上機嫌というある意味幸せなメンタルの持ち主だったため、ハーレムパートの不評を気にしている可能性は低かった。

 すると峰田が血眼で言った。

 

「早くしねえとミスコン良い席取られるぞ」

 

 峰田は、本気の目で叫んだ。

 その言葉に一部の男子達は急いで片付けをし、その他は『心配して損した』と呆れ返っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして主に峰田の頑張りのお陰で掃除が早く終わり、A組は見やすい席を確保する事ができた。

 緑谷、通形、ひなた、心操の4人は壊理と一緒にミスコンを見ていた。

 

『さあ今年も始まります!! ミス雄英コンテスト!! 今年もミスコンの女王は3年サポート科絢爛崎か!? それとも前年度は惜しくも優勝を逃した3年ヒーロー科波動か!? はたまた新手の女子か!? それでは始めて参りましょう! どうぞ!!』

 

 司会が言うと、エントリーナンバー1番の女子が個性を使ってパフォーマンスをした。

 雄英のミスコンは、エントリーした女子達が自分の個性や特技を最大限アピールしたパフォーマンスを行い、そのパフォーマンスの優劣が投票によって競われるのだ。

 そして、次々とエントリーした女子達がパフォーマンスをし、次は拳藤の番となった。

 実行委員は、ステージ上に板を4枚ずつ二列に並べ準備をした。

 するとセットを終えたのを確認した司会が紹介を始める。

 

『ヘアスプレーのCMで話題沸騰!! 人気も急上昇中の1年ヒーロー科拳藤一佳!!』

 

 司会が紹介すると、青いドレスに身を包んだ拳藤がステージに上がる。

 

『それではスタート!!』

 

 拳藤は、司会の合図と同時にドレスのスカートを破り即席のスリットを作った。

 すると観客や司会が目を点にして驚く。

 

「え!?」

 

「ふっ!」

 

 観客や司会が驚く中、拳藤は一列目の板を全て『大拳』で割った。

 すると観客席から「おおっ!」と声が上がる。

 

「ケンドー!!」

 

「シュシュッと一吹きケンドー!!」

 

 観客達は、拳藤に歓声を送る。

 CMに出演して以降拳藤には熱狂的なファンがおり、声援を送っているのは彼女のファン達だった。

 

「ハッ!!」

 

漂亮(お見事)!」

 

 拳藤は、大拳で二列目の板を割った。

 ひなたは、拳藤の美しい手刀の構えと見事なパフォーマンス見て『おおっ』と声を上げていた。

 

『華麗なドレスを裂いての演武!! 強さと美しさの共存、素晴らしいパフォーマンスです!!』

 

「なかなか見応えあったな」

 

「すごかった…!」

 

 司会は拳藤のパフォーマンスを褒め称えており、心操や壊理も彼女のパフォーマンスに魅入っている様子だった。

 だがそれを見ていた絢爛崎は、勝ったと言わんばかりに心の中で高笑いしていた。

 

(地味!! 何もわかっていないようですね。この程度で私と張り合おうだなんて!! 絢爛豪華こそが美の終着点!)

 

 次は、昨年度見事ミスコン女王に輝いた絢爛崎の番だった。

 絢爛崎は、自身の顔面を模した巨大な乗り物に乗って登場した。

 

『3年サポート科ミスコン女王!! 高い技術で顔面力をアピール! 圧巻のパフォーマンス!』

 

 絢爛崎の顔面を模した乗り物は、ガコンガコンと音を立てながら動きその技術力の高さをアピールしていた。

 かなり好き嫌いが分かれそうな風貌をしている絢爛崎だったが、雄英女子の中では右に出る者がいない美貌を持つ波動が昨年ミスコンで敗れたのは、派手さで絢爛崎に勝てなかったからだった。

 

「すごいド迫力…!!」

 

「これは何する出し物?」

 

「ちょうど今わからなくなったとこだよね」

 

 あまりの顔面力に、ひなたは目を点にして感心していた。

 壊理は絢爛崎の乗り物を指差しながら尋ね、通形も苦笑いを浮かべながら見ていた。

 

「ホホゥ3年…やるじゃないですか」

 

「劇ウケたってな、やったなア」

 

「そっちこそ!」

 

 絢爛崎のパフォーマンスに物間が顔を歪め、後ろでは切島と鉄哲が楽しそうに話していた。

 そして次は波動の番となった。

 波動の親友の有弓が不安そうに見守り、天喰がキツそうに腹を抱えていた。

 

「ねじれ…」

 

「波動さん…人間だって動物、哺乳類だと思えば楽になる」

 

「環くん環くん、ねじれちゃんはあんたと違うてヘボメンタルちゃうで」

 

「五常さんやめてお腹に悪い…」

 

 天喰がキツそうに腹を抱えていると、五常が天喰の肩をペチペチ叩きながらツッコミを入れる。

 五常が天喰に話しかけると、天喰の腹痛がさらに悪化する。

 

 そしてついに波動の番がやって来て、波動は、自信を持って笑顔を浮かべながらステージに上がる。

 エメラルドグリーンの可愛らしいドレスに身を包んだ波動は、“個性”を使ってフワリと宙を舞った。

 観客達は、その姿に思わず目を奪われる。

 

「わぁ…! 先輩キレイ…!」

 

 ひなたもまた、波動の姿に目を奪われていた。

 美しく舞い踊る姿はまるで、純真無垢な妖精のようだった。

 

『幻想的な宙の舞! 引き込まれました! さァお次は…』

 

 観客達は波動に歓声と拍手を送った。

 波動も、やり切ったという表情だった。

 しばらくしてミスコンの全てのパフォーマンスが終わった。

 

『投票はこちらへ!! 結果発表は夕方5時!! シメのイベントです!』

 

「B組拳藤! 拳藤B組に清き複数票を!!」

 

「誰に入れようかな」

 

「今夜は捗るぞー」

 

「ねえひー君誰に入れる?」

 

「波動先輩」

 

「だよね! 僕も〜!」

 

 物間は必死に拳藤への投票を募っており、峰田はミスコンを良い席で見る事ができたので上機嫌だったが、『捗る』という発言に周囲はドン引きしていた。

 心操とひなたは誰に票を入れるか話し合い、結局二人とも波動に投票した。

 A組は、それぞれ他の学年学科の出し物を見て回る事になった。

 

「C組の心霊迷宮ヤバそー! 行かねぇ!?」

 

「行くー!!」

 

「ヤダウチヤダ」

 

「幽華ちゃんが誘ってくれたんだから、行かなきゃ…!」

 

「無理する事ないと思うぞ、ひなた」

 

 ひなたが心操の頭にしがみついてガタガタ震えていると、心操がツッコミを入れる。

 

「アスレチックあるんだ、勝負しようぜ」

 

「くれえぷ」

 

 その後は、それぞれが文化祭を楽しんだ。

 

「エリちゃん、どこか見たいとこあるかな?」  

 

 緑谷が持っていた文化祭のパンフレットを広げてみせる。

 それぞれ趣向を凝らした出店やアトラクションなどが地図になってわかりやすく載っている。

 壊理は真剣な様子で見るが、困ったように眉を寄せた。

 

「いっぱいあってえらべないや……」

 

「そっか! じゃあ歩いていって寄りたいとこがあったら言ってね!」  

 

 通形の言葉に「うん」と頷く壊理に、緑谷は手を差し出した。

 

「エリちゃん、迷子になるといけないから手をつなごうか」  

 

 出店が並ぶ通りは、わいわいと混雑している。

 緑谷が差し出した傷だらけの手を、壊理はじっと見つめた。

 

「……あっ、ごめん! 怖かったかなっ?」  

 

 緑谷が傷だらけの手がいやだったかとあわてて引っこめようとする。

 だが、それを壊理はギュッと両手で握った。

 そしてふるふると首を振る。

 

「怖くないよ……っ、……やさしかったから」  

 

 小さな呟きに緑谷はきょとんとするが、拒否されたわけじゃなかったとわかり「よかった」と微笑む。

 壊理もつられて微笑んだ。

 そんな壊理の隣から通形が言う。

 

「じゃあこっちの手は俺とつなごうか!」

 

「うん!」  

 

 緑谷と通形と手をつなぎ、壊理は笑顔を見せる。

 緑谷と通形は顔を見合わせて「それ ー!」と歩きながら壊理を浮かせる。

 世界で一番大好きなヒーロー二人に手をつないでもらい、「きゃあ」と壊理は嬉しそうにぴょんっと跳ねた。

 

「三人とも、なんか家族みたい!」

 

「お兄ちゃん二人に、歳の離れたかわいい妹って感じね。ケロ」  

 

「わかる…まとめて家族にしたくなる」

 

「えっ、ひなたお前それは…」

 

 三人の光景を後ろから見ていた麗日、蛙吹、ひなた、心操の言葉に、隣を歩く相澤がわずかに表情を緩ませた。  

 

「あっ、くれえぷだ!」

 

「くれえぷ!」

 

 麗日がクレープの出店を指差すと、壊理が目を輝かせる。

 すると麗日は、壊理がクレープを知っているのかと思いつつも、壊理に尋ねる。

 

「エリちゃんくれえぷ好き?」

 

「食べたことないからわかんない…けど、クレシェンドさんがね…とっても、あまくて、おいしい食べものだって言ってた…!」

 

「じゃあクレープ食べましょうか」

 

 蛙吹が出店に近づく。

 バナナや桃、みかん、チョコなど無難なものが並ぶなか、壊理はメニューを見ておずおずと尋ねる。

 

「あの……リンゴのやつありますか……?」

 

 だがリンゴは用意されていなかった。

 少し残念そうにうつむく壊理に、通形が励ますように声をかけた。

 

「大丈夫! リンゴ飴あとで食べようね!」  

 

 その言葉に壊理が「あ……」と小さく反応する。

 

「……うん!」  

 

 リンゴ飴を思い出し、笑顔になった壊理はどれにしようかと真剣に悩む。

 通形はその様子を見て、張りきって言った。

 

「エリちゃんが何を選ぶか当ててみせるよ! 今度こそ桃だよね!」

 

「みかん」

 

「だと思ったよね! もしかして桃キライなのかな!?」  

 

「先輩がしつこいからでは?」

 

 通形が少しショックを受けた様子で言うと、心操がツッコミを入れた。

 麗日も悩みに悩んでチョコを選び、蛙吹はバナナを選ぶ。

 ひなたはイチゴを、心操はツナサラダを選んだ。

 

「あ、ひー君はおかずクレープにしたんだ」

 

「うん。皆甘いやつ頼んでるから俺は違うのにしようと思って」

 

 壊理もみかんのクレープを受け取り、そっと食べる。

 

「……あまくておいしい」

 

 幸せそうに目を閉じる様子に、緑谷達の胸がいっぱいになった。  

 ひなた達は、クレープを食べながら校内へと歩いた。

 

「お茶子ちゃん、ほっぺにクリームついてるわ」

 

「ん」

 

 蛙吹が麗日の頬についたクリームを取ると、それを見ていたひなたが(イケる…!)などと考える。

 そして何か考えがある様子で、心操に声をかけた。

 

「ひー君!」

 

 心操がその声に振り向くと、ひなたの顔がクリームまみれになっていた。

 

「浴びてんのかそれ」

 

 心操がツッコミを入れると、ひなたは調子に乗ったのか、ニコニコしながら自分の顔にクレープをぶつけてさらに顔をクリームまみれにした。

 自分の顔にクリームを塗りながら浮かべる笑顔は、もはやシリアルキラーのそれだった。

 

「何がしてえんだお前! せめて食えよ!」

 

 ひなたの猟奇的な行動に、心操はドン引きしつつも、クレープを買った時に受け取った紙おしぼりでひなたの顔を拭いた。

 ひなたは、心操に顔を拭いてもらいながら、壊理の方を向いて言った。

 

「エリちゃん、これがアオハルだよ」

 

「嘘を教えるな!」

 

 ひなたがドヤ顔しながら言うと、心操がツッコミを入れる。

 だが仲良さそうな二人を見て、壊理は笑っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 クレープを食べながら校内へと入っていく。

 途中、通形がお笑いライブに興味をひかれたりしながら、賑やかな校内を歩いていると緑谷がハッとした。

 

「ヒーロークイズ大会……景品、雄英プロヒーロー教師のサイン寄せ書き……!?」  

 

 あるクラスの出し物のヒーロークイズ大会で、優勝賞品として飾られているのはオールマイトをはじめとする雄英高校ヒーロー科の教師達のサインの寄せ書きだった。

 その中にはもちろん、イレイザーヘッドこと相澤のサインもある。

 

「ちょっと待って、こんな豪華なサインの寄せ書きありえない……」  

 

「たかがサインだろうが」

 

「何をおっしゃってるんですかっ! オールマイトと、めったに姿を現さない抹消ヒーロー・イレイザーヘッドのサインが一緒に書かれているなんて世界に一枚だけのレア物ですよ!? しかもプレゼントマイクにブラドキングにミッドナイトに 13号にセメントスにエクトプラズムにスナイプにパワーローダーにリカバリーガールのサインも一緒なんて、月刊ヒーローにも出てこないような夢のサインじゃないですかっ!」

 

「そうか」

 

 ただのヒーローオタクとして愕然とする緑谷に、相澤が言うと、緑谷は鼻息荒く反論する。 

 緑谷の勢いを、相澤はさらっと受け流した。

 

「クイズ大会、まだ受付中やって!」

 

 麗日が緑谷に勧める。

 

「え、でも」

 

「参加してきなよ! クイズ見てるのも面白そうだしさ! ね、エリちゃん」  

 

「うん」

 

 通形にそう言われ、壊理も頷く。  

 よくわからないが、どうやら勝つとすごいものをもらえるらしい大会に緑谷が出ると感じ、少し恥ずかしそうにしながらも応援する。

 

「がんばって、デクさん……!」

 

「うん! がんばるよ!!」  

 

 壊理の声援を受けて、緑谷は意気ごみエントリーし、他の出場者とともに一列に並べられた席につく。

 机には早押しボタンがついている。

 

「デクくん! めざせ、ゆうしょー!」

 

「緑谷ちゃんなら大丈夫よ。ケロ!」  

 

「頑張ってー、デッくーん!」

 

「程々になー…」

 

 嫌な予感がした心操は、苦笑いを浮かべながら言った。

 麗日、蛙吹、ひなた、心操が声援を送る中、 MC役の生徒が歓声を受けながら出てくる。

 会場を盛りあげてから、さっそく問題が始まった。

 

「さぁ第1問! 人気急上昇中の若手ヒーロー、シンリンカムイのデビューは──」  

 

 ピンポン!  

 

 緑谷のボタンが光る。

 

「銀行強盗犯を先制必縛ウルシ鎖牢で7人いっぺんに確保!」

 

「1年A組、緑谷くん、正解です! では第2問! フレイムヒーロー・エンデヴァーの好物──」  

 

 ピンポン! 

 

「葛餅!」

 

「正解!」  

 

 他を寄せつけない早さで二連続正解した緑谷の活躍に会場が盛りあがる。

 しかし。

 

「第8問! プレゼントマイク『ぷちゃへんざレディオ』のヘビーリスナーの愛称──」  

 

 ピンポン! 

 

「マイキッズ!」

 

「第14問! デビュー直後、Mt.レディに決まったCM──」  

 

 ピンポン! 

 

「レディヘア、シャンプー&トリートメント! キャッチコピーは『美しく、大らかなツヤに』」

 

「第25問! 洗濯ヒーロー・ウォッシュがCMで──」

 

 ピンポン! 

 

「ワシャシャシャシャ! 5回!」  

 

 独壇場の緑谷は優勝に向けて尋常ならざる気合が入っていた。

 血走る目に、一言たりとも問題を聞き逃すまいと集中し、殺気立って微動だにしないその姿には戦慄を禁じえない。

 その鬼気迫る顔に、通形が真顔で「教育上よくない」と壊理の目をそっと塞いだ。

 

「いいそーデッくーん! ぶっちぎれー!」

 

「あーあ、こうなると思った」

 

 純粋に緑谷を応援しているひなたとは対照的に、心操は呆れ返っていた。

 

「では最後の問題……オールマ──」  

 

 ピンポン!!  

 

 問題の初っぱなでボタンを押した緑谷に、会場が異様な緊張感に包まれる。

 そんな中、真剣な様子で考えていた緑谷はそっと口を開いた。

 

「──7分31秒」  

 

 謎の答えに会場がきょとんとするなかで、緑谷の答えにMCがゴクリと息を飲んだ。

 

「問題は、オールマイトの伝説のデビュー動画の時間は何分何秒というものでしたが……7分31秒、正解! 優勝はぶっちぎりで1年A組緑谷くん!」

 

「やったぁ!」  

 

 鬼気迫る形相から一転、無邪気に喜ぶ緑谷に、サイン色紙が送られた。

 

「なんでオールマ…でわかるんやろ」

 

「きっとオタクの神様が降りてきたのね」  

 

「あいつ、下手したらオールマイトのホクロの数とか銀行口座の暗証番号とかも知ってるんじゃ…」

 

「まさかぁ!」

 

「いや…緑谷ちゃんならあり得るわ」

 

 緑谷のヒーローオタクっぷりに少々引いている麗日と蛙吹と心操の横で、壊理がどうやら勝ったらしい緑谷に「すごい」と尊敬のまなざしを送る。

 緑谷も壊理に照れ臭そうに笑顔を返した。

 ひなたと心操は、その後影山に誘われたC組のお化け屋敷に行く為、後で合流する約束をして一旦壊理達と分かれた。

 壊理はひなた達と一緒に回りたそうにしていたが、お化け屋敷がトラウマになってしまうといけないので、通形は二人が戻ってくるまで別の事をして待とうと提案した。

 緑谷達は、出店で食べ物を買って食べたり、雄英のパネルで記念撮影をしたりしながら時間を潰した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃ひなた達はというと、C組のお化け屋敷に来ていた。

 

「ひなた。引き返すなら今だぞ」

 

「はぁ? まさか。僕が怖がってる? Good one(面白い冗談)!」

 

「それはこっちのセリフだ。動物園でもないのにコアラが見られるなんて驚きだね」

 

 心配する心操にひなたが強がってみせると、心操はひなたに対し皮肉を言った。

 ひなたは、まるでコアラのように心操の身体にひっついていた。

 50年前、凄惨な一家殺人事件があったという設定のお屋敷は、細部までリアリティに凝っている。

 歩くたび軋む床には時間の経過を物語る埃が積もっていて、生前の子供が壁に描いたらしい微笑ましいはずの拙い落書きが、まがまがしく見えた。

 

『50年経った今でも、なぜか長女の死体だけ見つかっていない……空き家のはずが、なぜか人のいる気配がすると近所の人は言う……』  

 

 意味ありげなナレーションを聞きながら、二人は奥へと進んだ。

 斧が落ちていたり、わずかに開いたドアから誰かが覗いていたり、廊下に赤ちゃんの赤い手形がついていたり、古時計から赤ちゃんの泣き声が聞こえたり、あげく、赤ちゃんの赤い手形が壁や廊下を埋め尽くすようについていたりしたあとには、僅かに冷や汗をかいている心操と、もはやコアラの剥製と化しているひなたがいた。

 

「ひなた、降りろ。歩きにくい。お前のせいで怖さ半減だし」

 

 心操の身体にしがみついてガタガタ震えているひなたに対し、心操は呆れたように言った。

 だがその時、天井からポタ、ポタポタッと血糊が垂れてくる。

 心操は、出来るだけ服を汚さないよう腕でガードしながらも一歩進んだ。

 だが、その時だった。

 

「イタイ…タスケテ……ココカラダシテェェ!!」

 

「おっ」

 

 突然天井からバッと血塗れの

 流石の心操もビクッと肩を跳ね上がらせる。

 心操は、胸を手で押さえながら早足でお化け屋敷を後にした。

 

「いやぁ、アレ心臓に悪いよ…って、ひなた?」

 

 心操がふと身体にしがみついているひなたの方を見ると、ひなたは心操にしがみついたまま意識を失っていた。

 心操がもしやと思い近くのベンチにひなたを下ろし、脈を測ると、案の定脈が無かった。

 

「死んでる…」

 

 その後、心操がひなたの介抱をし、そこへ壊理達が戻ってきてしまい事態がややこしくなったりしたものの、何とかひなたが息を吹き返し、再び壊理達と出し物を見て回った。

 すると途中で、飯田と轟に鉢合った。

 

「あら、飯田ちゃんに轟ちゃん」

 

「梅雨ちゃん君」  

 

 声をかけてきた蛙吹に、飯田と轟が振り返る。

 麗日も気づいて近づいてきた。

 

「なにしてるん?」

 

 緑谷と通形と壊理、ひなたと心操、相澤もやってくる。

 

「常闇くんが今、セメントス先生のジュースを買いにいっているんだ」

 

「へー」

 

 飯田が言うと、ひなたはなるほどと言わんばかりに頷いた。

 キョロキョロと教室を見渡してどこに入ろうかとワクワクしている壊理を見て、相澤が言う。

 

「エリちゃん、猫は好きかな。人間猫カフェに行ってみようか」

 

「にんげんなの? ネコなの?」  

 

 謎のワードに、壊理は興味を示す。

 するとひなたは、パァッと笑みを浮かべながら言った。

 

「どっちだろうねぇ!」

 

「きっと楽しいよ!」

 

 ひなたと緑谷が笑顔で言うと、壊理も笑顔を浮かべた。

 だが『人間猫カフェ』という単語に、遺憾を覚える者がいた。

 

「猫は猫だから可愛いんだろうが…!」

 

 心操がボソッと小声で言うと、相澤が密かにうんうんと頷く。

 猫ガチ勢の男が二人、そこにいた。

 だが行ってみると案外クセになる楽しさがそこにあり、心操や相澤も満更でもなさそうな表情をしていた。

 雄英の生徒達は、それぞれ出し物を周りに行き、文化祭はミスコンの結果発表で締め括られた。

 今年のミスコン女王に輝いたのは、波動だった。

 3位だった拳藤は物間に責められたものの全力を出し切ったからかどこか清々しい表情を浮かべており、2位だった絢爛崎は好敵手として波動に手を差し伸べた。

 こうして、雄英文化祭は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 文化祭が終わり、ひなたは緑谷と一緒に壊理を見送りに行く。

 

「今日はありがとう! 楽しかった!」

 

「…うん」

 

 壊理が俯いていると、緑谷が声をかける。

 

「エリちゃん、顔を上げて」

 

 緑谷は、壊理にリンゴ飴を差し出した。

 すると壊理は目を丸くする。

 

「「サプライズ!」」

 

 緑谷とひなたは、笑顔を浮かべながら言った。

 緑谷が通形にもリンゴ飴を渡すと、通形は驚いていた。

 

「リンゴ飴!! 売ってた!? 俺探したよ!?」

 

「プログラム見て無いかもと思ったんで、僕達で作る事にしたんです。作り方意外に簡単で! 材料は相澤さんに買ってもらって、空き時間に一緒に作っといたんです」

 

「そうそう、デッくんたら、当日の朝に買いに行くつもりだったみたいで。僕が3日前に材料買っといたんですよ」

 

 緑谷が訳を話すと、ひなたは緑谷を肘で小突きながら言った。

 

「まァ近いうちにすぐまた会えるはずだ」

 

 緑谷が言うとひなたも頷き、相澤が口を開く。

 壊理は、緑谷に貰ったリンゴ飴を一口齧る。

 壊理は、口の周りに赤い飴をつけて笑っていた。

 

「フフ…さらに甘い」

 

 壊理が幸せそうにリンゴ飴を齧っていると、緑谷は笑顔を浮かべた。

 

「また作るよ。楽しみにしてて」

 

 通形は二人に手を振り、壊理と相澤と一緒に校舎を去っていった。

 緑谷は、手を振る通形に手を振り返した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「「ただいま」」

 

 寮に戻ってきた緑谷とひなたを、一階の共有スペースでワイワイやっていたA組の面々が出迎える。

 

「デクくん、ひなたちゃん。エリちゃん喜んでた?」  

 

「うん」

 

「とっても!」

 

 リンゴ飴のことを聞いた麗日に、緑谷とひなたは笑顔を浮かべた。

 それを見ていた飯田と轟も笑みを浮かべる。

 

「よかったな、緑谷くん、ひなた君!」

 

「うん。喜んで貰えてよかった」  

 

 そう言った緑谷だったが、漂ってきた甘い匂いに気づいた。

 

「おーい、皆できたぞ」  

 

 そう言って砂藤が持ってきたのは、リンゴやイチゴ、みかん、ぶどうなどのフルーツ飴だった。

 一口サイズに作られたカラフルポップなフルーツ飴は、メルヘンかわいい。

 

「わぁ、どうしたの、それ!」  

 

 驚く緑谷に砂藤が答える。

 

「実はたこ焼き屋の店番やったお礼に、フルーツもらったんだよ。緑谷と相澤がリンゴ飴作ったっていうから、じゃあフルーツ飴にしたら皆食べられるかなと思ってよォ」

 

「フルーツ飴で打ち上げだよー!」  

 

 ぴょんっとジャンプする芦戸と葉隠。

 その近くで峰田がでへへっと笑った。

 

「女子にはこの俺特製バナナ一本飴をやるぜ! だが条件がある! 舐めるところをじっくり観察させてもら──」

 

「キモっ」

 

「自分で舐めなさい」

 

「ぐへっ」  

 

 芦戸達にげへげへとニヤつきながら近づく峰田に、ひなたがマジトーンの罵倒を言い放ち、蛙吹が舌で成敗した。

 

「わぁ、どれにしようかな」

 

「私、イチゴ!」

 

「俺はリンゴだ、絶対に」  

 

「ひー君どれにする?」

 

「みかん」

 

「じゃあ僕は…うーん、桃かさくらんぼか迷うなぁ…よし、決めた! パイン!」

 

 それぞれ飴を選んでいたが、爆豪は一人どっかとソファに座ったままだ。

 

「ほら、爆豪も」

 

「んな甘えモン、食えるか」

 

 切島がフルーツ飴を勧めるが、爆豪は毒づいた。

 そんな爆豪に砂藤がサッと尖った赤い飴を差し出し、ウィンクしながらサムズアップする。

 

「そう言うかと思って、トウガラシ飴作っといたぜ!」  

 

 赤い飴は、そのままのトウガラシに飴がからんでいる。

 爆豪は辛い食べ物が好物なのだ。

 

「変な気遣いしてくれてんじゃねえ! 辛えか甘えかわけわかんねえだろうがぁ!」  

 

「まぁまぁせっかく作ったんだし」

 

 手のひらで爆破させ怒る爆豪に、瀬呂がトウガラシ飴を無理やり渡す。

 それを苦笑しながら見ていた緑谷に、爆豪が気づき、近づいていく。

 

「おいクソデク……てめえ、あのアスレチックやったんか」

 

「アスレチック?」

 

「在学中のオールマイトの記録がまだ抜かれてないヤツだよ」  

 

 近くにいた尾白がそう説明すると、緑谷の顔色が変わった。

 

「えっ!? そんなのあったの!? オールマイトもやったアスレチックなんて!!」  

 

 知らなかったなどファンとして一生の不覚と言わんばかりに愕然とする緑谷に、爆豪は「ざまぁ」と言わんばかりに小気味よさそうにケッと笑う。

 

「爆豪も何回も挑戦したんだけど、結局オールマイトの記録は抜けなかったんだよなー」  

 

「余計な事言うんじゃねえっ」

 

 残念そうに言う切島を、爆豪が小突く。そして緑谷にトウガラシ飴を突きつけた。

 

「来年の文化祭でてめぇもやれや。俺はてめえもオールマイトの記録も抜かすからな」

 

「……わかった! 僕も負けないようにがんばるよ!」  

 

 爆豪からの挑戦に、緑谷が触発されたように両手で拳をギュッと握って意気ごむ。  

 それを横で聞いていた飯田がパッとひらめいたように手を打った。

 

「おお、オールマイトの記録に挑戦か! いいじゃないか! いっそ皆で挑戦するっていうのはどうだろう!? 競争力を養う事で、クラスのモチベーションが上がり、団結力も高まるというわけだ! ヒーローとして必要な素養を学べるアトラクションだ!」  

 

 飯田の提案に、皆がそれぞれ反応する。

 

「いいな! やろうぜ!」

 

「記録に挑戦ってやっぱ燃えるよなー」  

 

「まぁそれも一興……」

 

「僕だって、次こそは負けないんだから!」

 

 切島や砂藤がはりきる近くで、常闇も頷く。

 ひなたも、体育祭の時のリベンジマッチをしようと意気込む。

 

「運動場γってアスレチックの動きに効きそう」

 

「こう、くびれがつく感じだよね!」  

 

 麗日と葉隠が話している横で、八百万が声をかけた。

 

「皆さん。来年のお話も結構ですけれど、とりあえず今日のシメをなさっては?」

 

「そうね、せっかく作ってくれた飴、早く食べたいわ」  

 

 蛙吹が持っている飴を見て、他の全員も飴を持ち、なんとなく円になる。

 しぶしぶといった様子の爆豪を切島たちが輪に招き、飯田がかしこまったように口を開いた。

 

「えー、今日という文化祭の為に、全員で寝る間も惜しんで準備してきました。ですが、思えば出し物を決めるのにひと苦労したのが昨日のことのよう……あのときは出し物も決められず相澤先生にお叱りを受け、それから俺達は──」

 

「そっから振り返るのかよ! こういうのは手短に!」

 

「俺とした事が」

 

 思わず上鳴がツッコむと、飯田は咳払いをして改めて皆を見回してから持っていた飴を掲げる。

 

「それでは簡素に……皆、お疲れさまでした!」

 

「おつかれさまー!!」  

 

 皆もそれに合わせ、飴を掲げて叫ぶ。

 そして乾杯するように飴にパクついた。  

 飴の甘さと、フルーツの酸味が口のなかで溶けながら合わさっていく。  

 それは、甘酸っぱい青春の味がした。

 

 

 

 

 

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