抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が14件9が50件…だと…!?
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ハイエンド編
ヒーロービルボードチャートJP


 文化祭が終わって数日後、ひなた達は元の生活に戻り、勉学に励んでいた。

 ある日の早朝、轟は家の都合で一度実家に帰る事になった。

 相澤からいち早くその事を聞いたひなたは、バタバタと慌ただしく『WAGASHI』と書かれた紙袋を持って轟に渡す。

 紙袋の中には、葛餅や栗蒸し羊羹、亥の子餅などの季節の和菓子が入っていた。

 

「焦ちゃん、はいこれ!」

 

 ひなたが紙袋を渡すと、轟はキョトンとした様子でひなたを見る。

 するとひなたは、アセアセしながら話す。

 

「えっと、早とちりかもしんないけど、久々に実家に帰るんだしお菓子とかどーかなって…」

 

「…ありがとな、相澤」

 

 ひなたが話すと、轟は紙袋を受け取った。

 するとひなたは、パァッと表情を明るくして触角をピコピコさせる。

 その後轟は、相澤の運転する車で実家へ帰った。

 すると、大分顔色が良くなった母親が轟を出迎える。

 

「おかえりなさい、焦凍」

 

「…ただいま、お母さん」

 

 母親が轟を出迎えると、轟は母親にただいまと伝えて居間に向かった。

 あれから轟の母親は、エンデヴァーがひなたと出会ってから改心し家族を思いやり始め、緑谷やひなたに心を救われた轟が病室を訪れて友達の事を楽しそうに話すのを聞いていたおかげで、少しずつ精神的に回復していた。

 順調にいけばもうすぐ退院できる程にまで回復しており、今日は家族で話をする為に外出許可を得て家に帰ってきたのだ。

 

「おかえり焦凍〜!」

 

「おかえり焦凍、元気そうだな」

 

「ああ。ただいま、姉さん、夏兄」

 

 居間にいた姉と次兄も轟に声をかけると、轟は二人にもただいまと伝えた。

 すると、エンデヴァーも轟に声をかける。

 

「おかえり、焦凍」

 

「……おう」

 

 エンデヴァーが声をかけると、轟は返事だけしてエンデヴァーの横を通り過ぎた。

 以前の轟なら、目も合わせずに憎悪の表情を浮かべながらエンデヴァーの横を素通りするだけだったので、目を合わせて返事をするようになったのは大きな進展だった。

 エンデヴァーは、家族全員を居間に集めると、今まで自分がしてきた事を家族に詫びた。

 

「お前達をここに呼んだのは、今までの事を詫びる為、そしてこれからの事を話し合う為だ。皆、今まですまなかった」

 

 エンデヴァーは、土下座をしながら家族一人一人に自分の罪を懺悔した。

 

「冷。俺はお前に自分のエゴを押し付けて、お前を追い込んでしまった。冬美。俺は、お前が望んでいた家族を壊してしまった。夏雄。俺は今まで、お前を見ようともしてこなかった。焦凍。俺は自分の野望を果たす為にお前を傷つけ、兄さん達と話す時間すら与えてやれなかった。だが、俺の最大の罪は───…」

 

 エンデヴァーは、自分の最大の罪を家族に話した。

 それは、今は亡き長男の燈矢に関わる事だった。

 エンデヴァーは、自分の罪を家族全員に懺悔した上で、これからの事を話した。

 

「冬美、お前はお母さんが安心して帰れる家を作ろうとしてくれていた。お前に全部押し付けてしまった。だが、もう大丈夫だ。二人の交通の便を考慮した土地に新しく家を建てる。そこでお母さんを迎えてあげてくれ。俺はここに残る。まだ清算しなくてはならないものが山ほどある」

 

「お父さん…」

 

「ふざけんなよ!!」

 

 エンデヴァーがこれからの事を話すと、夏雄がちゃぶ台にドンと拳を打ちつけて声を荒げた。

 

「お母さんも姉ちゃんも、何か許す流れなんだけどさ。俺の中じゃイカレ野郎絶賛継続中だよ。変わったようで何も変わってない。失敗作(俺達)は放ったらかし。聞こえてくるお母さんの悲鳴。焦凍の泣き声…燈矢兄の事もさ…今更あんたが反省したって、心から消えるハズない。勝手に心変わりして! 俺達には口出しさせずに一人で全部勝手に決めて、一方的に突き放してそれで解決ってか!? ふざけんな!! 体のいい事言ってるけど、自分の都合を押し付けてるだけだろ! あんたは昔っからそうだったよな!?」

 

「夏…!」

 

 夏雄は、一方的に別居の提案をしてきたエンデヴァーに対し怒りをぶつけた。

 夏雄は、姉が家族の絆を取り戻そうとしている事、母が過去の傷を乗り越えて父を許そうとしている事、弟が自分を傷つけた父をヒーローとして見ようとしている事を痛いほどわかっていた。

 だからこそ、自分達の気持ちを考えずに一方的に別居などと言い出したエンデヴァーが許せなかった。

 

「……すまない。俺は…」

 

「別に謝ってほしいわけじゃねえから!!」

 

 エンデヴァーが謝ると、夏雄は怒鳴りながら席を立ち、居間から去ろうとした。

 すると、母親の冷が夏雄を呼び留める。

 

「夏雄。あなたが怒る気持ちは分かるわ。いきなりこんな提案をされたって、受け入れられないのも無理はないと思う。だけど、家族を壊してしまった責任なら私にもあります。焦凍に消えない傷を負わせ、あなたと冬美にも苦しい思いをさせてしまった。燈矢の事も…あの子を見なかったのはお父さんだけじゃない」

 

「お母さん…!」

 

「それに、お父さんは何もあなた達の事を考えずに決めたわけじゃない。これは、お父さんがあなた達の為を思って決めた事なの。だから、最後まで聞いてあげて」

 

 冷がエンデヴァーの話を聞くよう言うと、夏雄は母親が歩み寄ろうとしているのを無下にする気は無いのか、嫌そうな表情を浮かべながらも大人しく席についた。

 

「俺はこれから、自分の罪を世間に告白しようと思う。罪と向き合う為だ。だが、それを聞いて俺を貶めようと考える者がいないとも言い切れん。俺だけならいいが、お前達を嗅ぎ回って生活を脅かす者が現れるかもしれない。今回の件は、お前達を守る為に俺なりに考えた最善だ」

 

 エンデヴァーは、別居の訳を全員に話した。

 エンデヴァーは、罪を償い先を見る為に自分の罪を国民の前で打ち明けるつもりでいた。

 だがそうなれば、無神経なマスコミや野次馬が自分の事を嗅ぎ回り、自分だけではなく妻や子供達にも火の粉が降りかかるのではないかと懸念していた。

 自分が今まで傷つけてきた分、せめて妻や子供達には火の粉が降りかからないように、少しでも早く傷が癒えるように新居に住まわせる事を考えていたのだ。

 当然家族だけでなくサイドキックにも既にその話はしており、サイドキックの家族にも引っ越しの準備を進めさせていた。

 エンデヴァーが話を終えると、冷はエンデヴァーの提案に返事をする。

 

「子供達の未来を考えての事なら、私は受け入れます。あなたが正しいと思った事なら、最後まで見届けます。だけど、自分だけの責任だと思わないで。清算すべきものなら、私にだってある。たとえ心が砕けても、子供達の事は私が守ります」

 

「……ありがとう、冷」

 

 冷が自分の考えを伝えると、エンデヴァーは謝罪の代わりに礼を言った。

 自分より苦しい思いをしてきたはずなのに、一人の母親として子供達を守る覚悟を決めてきた冷に対し、伝えるべきは謝罪ではなく感謝だと思ったからだ。

 

「お父さんが私達の事を考えて決めた事だっていうのはわかってる。でも、やっと“家族”になれるんだって思ってたんだよ…! それをこんな、まるでお父さんだけが勘定に入ってないみたいな…そんなの、受け入れられないよ…!」

 

 冬美は、涙目になりながらエンデヴァーの提案に反対した。

 母親の冷が最近笑顔を見せるようになり、次弟の焦凍がエンデヴァーとの距離を少しずつ縮め、ようやく家族の絆を取り戻せると希望を抱いていたのだ。

 守る為と言って家族を遠ざけ、自分だけ火の粉を浴びに行くような提案を、そう簡単に受け入れられるわけがなかった。

 

「すまない、冬美。だがこれが、“家族”の未来を考えた上での最善なんだ。今は無理でも、ほとぼりが冷めたらお前達に誇れるようなヒーローになって迎えに行く。それまで、待っていてくれないか」

 

「……本当に、全部終わったら、迎えに来てくれるんだよね? そしたら私達、今度こそ“家族”になれるんだよね?」

 

「ああ」

 

 エンデヴァーが頭を下げながら言うと、冬美は涙を拭いながら言った。

 

「……わかった。いつか必ず、迎えに来て。約束だよ」

 

「ああ。ありがとう、冬美」

 

 冬美がエンデヴァーの提案を飲むと、エンデヴァーは冬美に礼を言った。

 二人がエンデヴァーの提案を受け入れるのを聞いていた夏雄は、散々悩み、何とかエンデヴァーに怒鳴りそうになるのを堪えてポツポツと言葉を発した。

 

「俺はあんたを許しちゃいない。多分これからも、あんたを許せる時なんて来ない。でもさ、あんたが行動起こそうとしてんのを邪魔したいわけじゃないんだよ…! お母さんも姉ちゃんも受け入れてんのに、俺だけこのままでいいわけねぇじゃねぇか…!」

 

「ありがとう、夏雄」

 

 夏雄が渋々エンデヴァーの提案を受け入れると、エンデヴァーは夏雄にも礼を言った。

 エンデヴァーは、前を向いてエンデヴァーを受け入れようとしている母や姉の思いを汲んで自分も変わろうとしている夏雄の事を、優しくて強い男だと思った。

 するとその時、エンデヴァーの提案を黙って聞いていた轟が口を開く。

 

「俺もここに残る」

 

 轟が言うと、家族全員が轟の方を見る。

 一番苦しんできたはずの彼が、これから少なからず無神経な人々の敵意や好奇心に晒されるであろう実家に、それも原因を作ったエンデヴァーと一緒に残るというのは、到底信じがたい話だった。

 

「俺も親父がした事を許したわけじゃない。けど、お母さん自身が受け入れようとしてるんだ。だったら俺は、家族を繋ぎ留めたい。俺にそれができるかわかんねえけど…背中を押してくれてる奴もいるんだよ」

 

「焦凍…」

 

「見てるぞ、親父」

 

 轟は、エンデヴァーの目をまっすぐ見ながら言った。

 話が終わったところで、冬美がパンと手を合わせて話題を変える。

 

「さ、重苦しい話はここまで! おやつでも食べよっか! 焦凍、お菓子持って帰ってきてくれたんだよね?」

 

「ああ。友達が持たせてくれたんだ」

 

 冬美が尋ねると、轟は思い出したように紙袋の中の和菓子を出した。

 すると中からは、『わーがーしーがー来た!』という文と共にドアップのオールマイトのイラストが載った包装に包まれた箱が出てくる。

 完全に場違いな濃すぎる包装に、その場にいた全員が固まる。

 

「え゛、焦凍これって…」

 

(あの小娘……)

 

 包装を見た冬美は戸惑い、エンデヴァーはすぐにひなたの仕業だと勘付き若干苛立った表情を見せる。

 自分の好物の和菓子をオールマイトの包装で送りつけるという、何がしたいのかよくわからない事をしてくるのは、轟の言う『友達』の中ではひなたとしか考えられなかったからだ。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数週間後、ビルボードチャートの発表の数日前。

 エンデヴァーは急遽、謝罪会見を開いた。

 このタイミングでの突然の謝罪会見に、世間は騒然としていた。

 談話スペースのテレビで謝罪会見を見ていたひなたは、轟を呼んでテレビを見せた。

 

「焦ちゃん、これ…」

 

「親父…!」

 

 ひなたがテレビの画面を指差すと、轟は画面に目を向ける。

 そこには、スーツに身を包みカメラに向かって頭を下げているエンデヴァーの姿があった。

 

『この度は、私『エンデヴァー』が過去に犯した罪を国民の皆様に知っていただく為、会見を開きました。かつて私は力に焦がれ、No.1ヒーローになるという野望を抱いていました。自分ではオールマイトを越えられないと知った私は、より強い“個性”を持った子供を作り野望を継がせる為に妻を娶り、4人の子供を産ませました。子供をNo.1ヒーローに育て上げる事しか頭になかった私は、妻には自らの教育観を押しつけ精神を患うまで追い込み、子供達の育児を放棄し、末男には行き過ぎた指導を行ってきました。しかし私の最大の罪は、長男を一方的に見限って絶望に追いやり、“個性”事故で死亡させた事です。私は、自らの罪を棚に上げてヒーローを名乗り、今日まで皆様を欺いてきました。その事を心よりお詫び申し上げます』

 

 エンデヴァーは、カメラの前で自分の犯した罪を打ち明けた。

 想像以上に壮絶な内容のカミングアウトに、取材陣も言葉を失っていた。

 どうか嘘であってほしい、そう願った一人の記者が、エンデヴァーに尋ねる。

 

『エンデヴァーさん、今の話は…全て事実なんでしょうか?』

 

『はい。全て……真実です。誠に申し訳ございませんでした』

 

 エンデヴァーが深々と頭を下げながら事実を肯定すると、至る所からどよめきが聞こえる。

 中には、『ふざけんな』『信じてたのに』などとエンデヴァーに怒りや憎悪をぶつける声もあった。

 会見の場にいた記者の中には、歪んだ正義感に駆られてここぞとばかりに傷口に塩を塗ろうとする者、わざとエンデヴァーを挑発して本性をむき出しにしてやろうなどと邪な考えを持つ者もいたが、エンデヴァーは挑発には乗らず至って冷静に対応し、あくまで誠実に真実を告白する事に努めた。

 家族を侮辱するような失礼極まりない質問にも冷静さを欠かないエンデヴァーに対し、記者達も面白くなくなってきたのか、人間性を疑うような質問の数は次第に減っていった。

 だがそんな中、鴉のような翼を生やした若い女性記者が手を挙げながら発言した。

 

『あの、一つよろしいでしょうか? 謝罪の内容が全て真実であるという前提でお尋ねしますが、会見に至る経緯をお聞かせいただいても?』

 

『今お伝えしたように、私自身数え切れない程の罪を犯してきました。にもかかわらず、かつての私は、自分が間違っている事にすら気付きませんでした。しかし、ある少女とプロヒーローによって考えを変えられ、自分がいかに愚かで卑小だったかを思い知りました』

 

 そう言ってエンデヴァーは、折り畳まれた手紙を見せた。

 その手紙はひなたがエンデヴァーに体育祭での非礼を謝罪する為に書いたもので、非礼に対する謝罪と、轟から家の事情を聞きエンデヴァーの犯した罪を知った事、その上でヒーロー『エンデヴァー』を応援しているという内容が書かれていた。

 

『彼女は、焦凍と友達になってくれて、私が壊した家族を取り戻すきっかけを与えてくれました。妻や子供達は、恨んで当然の私を家族として受け入れようとしてくれています。私は…人に恵まれました。この度会見を開いたのは、罪を償う為…そして、私にやり直すチャンスを与えてくれた人達の思いに応える為です』

 

『オールマイト不在の今、こういったカミングアウトを受けて国民がヒーローに対しさらなる不安や不満を抱く事が予想されますが…その点に関して、今後はどういった対応をされていくおつもりでしょうか?』

 

『仰る通り、社会に不安を与えてしまったのは私の不徳の致すところです。だからこそ、社会の不安を一刻も早く取り除く為、周辺地域の警備の強化、(ヴィラン)犯罪の抑止・撃退、事故や自然災害などといった異常事態への迅速な対応…その全てに力を入れ、住民の方々の安全を保証します。初心に帰り、ヒーローとしてあるべき姿を社会に示す事。それが今、『エンデヴァー』にできる償いです』

 

 エンデヴァーは、これからの対応を記者の前で話すと、顔からゴウっと炎を出した。

 

『非難や不安は、全て私に向けていただきたい。皆で──…俺を、見ていてくれ』

 

 エンデヴァーが顔から炎を出しながら誠実な態度で話す姿が、テレビに映し出される。

 轟は最後まで一瞬も目を離さずに会見を見続け、クラスメイトや教師陣はそんな轟を見守った。

 一方で、ビルボードチャートJP発表前のエンデヴァーの突然のカミングアウトに、世間は騒然としていた。

 当然の事ながら、エンデヴァーの行いに失望する者、怒りや不満をぶつける者、これからの生活に不安を抱く者が多く現れ、支持率は一気に急降下した。

 しかしながら、自分の罪と誠実に向き合い先を見ようとしている姿に感銘を受けた者も少なからず存在し、ある者は彼を支持し続ける者は応援メッセージを送り、ある者は協力者を募ってエンデヴァーを支援する為の活動を行った。

 サイドキックや善良なファン達による懸命な支援活動により、カミングアウトによる炎上は最小限に抑えられた。

 そして、今回の件で注目されたのは、エンデヴァーだけではなかった。

 彼を変えるきっかけを作ったひなたや、彼の罪を受け入れ陰ながら支えてきた家族にも応援メッセージが送られ、サイドキック候補の『クレシェンド・モルト』と『ショート』の株が少しずつではあるものの右肩上がりの成長をした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、他のメンバーとは別行動を取り廃墟に潜んでいた荼毘はというと。

 

「クソッ!!」

 

 荼毘は、苛立ちを露わにしながら周囲のものに当たり散らした。

 家具は荼毘が当たり散らしたせいでボロボロになり、破れたソファーからは羽毛が飛び出て舞い散っていた。

 

「あの野郎、自分からカミングアウトしやがった! おかげで俺の計画が台無しだ! クソ、クソ、クソ!!」

 

 荼毘は、古びたテレビに空き瓶を投げつけて怒鳴り散らした。

 エンデヴァーを強く憎悪していた荼毘は、エンデヴァーの醜態を暴露し世間の信用を落とす計画をおじゃんにされ、カミングアウトによる炎上もすぐに沈静化した事に怒り狂っていた。

 するとその時、荼毘の携帯が鳴った。

 どうやら零がビデオ通話で連絡を寄越してきたらしく、苛立ちのあまり息を荒くしながらも電話に出ると、零がニヤニヤと煽り散らしたような表情で話しかけてくる。

 

『やっほー荼毘クン、TV見てるぅ? 今すげー事になってんね』

 

「何の用だシスコン。俺ァ今すこぶる機嫌が悪いんだ。くだらねえ話だったら焼くぞ」

 

『おー怖。せっかくの色男が台無しだぜ? 笑顔笑顔♪』

 

 荼毘が要件を尋ねると、零は自分の頬を摘んで持ち上げながら荼毘をおちょくった。

 零がやたらとおちょくってくると、荼毘は零に殺意を抱き始める。

 すると零は、わざとらしくため息をついてから言った。

 

『あーあ、聞く気無さそうだからやめだやめ! せっかくあの火事親父を陥れられる超弩級の爆弾を持ってきたっていうのにさぁ』

 

「………何だと?」

 

 エンデヴァーを陥れられると聞いた荼毘は、珍しく零の発言に食いつく。

 すると零は、持っている情報の一部を荼毘に見せ、ニヤリと笑いながら話し始める。

 

『お前がエンデを強く憎んでるのは知ってる。だから使えそうなネタは徹底的に拾ってきたのよ。どれも一級品のネタだ、使う価値は十二分にあると思うぜ?』

 

「…お前、何モンだ? 俺の素性を調べ上げられる奴なんて…」

 

『困った時はお互い様っしょ? 僕達は()()()()()なんだからさ』

 

 そう言って零は、荼毘に自分の素性を暴露した。

 零の過去を知った荼毘は、僅かに驚いたような表情を浮かべる。

 

「……それ、マジかよ」

 

『20年間、ずっとこの世界をぶち壊す事だけを考えて生きてきた。何もかもぶち壊したら、地獄で一緒に踊ろうぜ』

 

「…ああ、ありがとう零。お陰で、奴を引きずり堕とせるよ」

 

 零が言うと、荼毘はニィっと不気味な笑みを浮かべる。

 二人は、エンデヴァーを絶望の底に突き落とすべく、水面下で動き出していた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 11月も下旬に差し掛かる頃。

 インターン組は、相澤に呼ばれて一階に集まった。

 そこには、何故か寮のソファーに座り波動に髪を結われている壊理がいた。

 波動の他にも、通形と天喰がいた。

 

「雄英で預かる事になった」

 

「近い内にまた会えるどころか!!」

 

 相澤が報告すると、緑谷が目を丸くしてツッコんだ。 

 

「どういった経緯で…!?」

 

「いつまでも病院ってわけにはいかないからな」

 

 緑谷が尋ねると、相澤が答えた。

 

「わーエリちゃんやったー」

 

「良かったねーエリちゃん。カァイイねぇ」

 

「よろしくお願いします」

 

「うんよろしく」

 

「私妹を思い出しちゃうわ。よろしくね」

 

 麗日、ひなた、切島、心操、蛙吹の5人は、微笑ましそうに壊理と話す。

 すると、相澤と通形が手招きをし6人を寮の外へ連れ出した。

 

「エリちゃん、親に捨てられたそうだ。血縁にあたる八斎會組長も長い間意識不明のままらしくて、現状寄る辺が無い」

 

「そうですか…」

 

 相澤が言うと、ひなたは少し悲しそうな表情をする。

 親に愛されない事がどれほど心細いか、生みの親に散々いたぶられてきたひなたはよく知っていたからだ。

 すると通形が話し始める。

 

「そんでね。先生から聞いたかもしんないけど、“個性”の放出口になってる『角』」

 

「縮んでて今は大丈夫って聞きました…」

 

「僅かながらまた伸び始めてるそうなんだ」

 

「じゃあ…またああならないように…?」

 

 麗日が尋ねると、相澤が頷く。

 壊理は自身の“個性”をコントロールできておらず、一度暴走すれば相手が消滅するまで巻き戻してしまう可能性が高い。

 その為“個性”を消せる相澤やひなたがいる雄英で預かるのが最善という判断だった。

 

「そういう事で、養護施設じゃなく特別にウチが引き取り先となった。教師寮の空き部屋で監督する。様子を見て…強大すぎる力との付き合い方も模索していく。検証すべき事もあるし…まァ…おいおいだ」

 

「相澤先生が大変そう」

 

「そこはエリちゃんとも仲良しなこの俺がいるのさ! 忙しいだろうけど皆も顔出してよね」

 

「「「「「「もちろんです!」」」」」」

 

 通形が言うと、6人は即答した。

 すると天喰が通形の肩に手を置いた。

 

「エリちゃんが身体も心も安定するようになれば…無敵の男復活の日も遠くない」

 

「そうなれば嬉しいね」

 

 天喰が言うと、通形が笑う。

 すると相澤がビッグ3に話しかける。

 

「早速で悪いが3年しばらく頼めるか?」

 

「ラジャっすオセロやろっと!」

 

「僕らもいいですか!」

 

「A組は寮へ戻ってろ。この後来賓がある」

 

 緑谷はビッグ3と一緒に壊理と遊んでいいか尋ねるが、相澤に指示された6人は少し寂しそうな顔をした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてA組の寮では。

 

「へっちょい」

 

 突然常闇がクシャミをした。

 麗日が常闇を心配する。

 

「風邪? 大丈夫?」

 

「いや…! 息災! 我が粘膜が仕事をしたまで」

 

「何それ」

 

 麗日が常闇に尋ねると、常闇が通常運転で答え麗日が呆れ返る。

 すると上鳴が茶化す。

 

「噂されてんじゃね!? ファン出来たんじゃね!? ヤオヨロズー! みたいな」

 

「茶化さないで下さいまし、ありがたい事です!」

 

「でも確かにヤオモモ人気凄かったよね。やっぱCMのお陰かぁ。いいなー」

 

「ひなたもファンいるだろ。インターンとか文化祭で大活躍だったし」

 

「えっ嘘!?」

 

 上鳴が八百万を茶化すと、八百万が恥ずかしがりひなたは笑みを浮かべながら言った。

 ひなたが八百万を羨ましがると、心操はひなたを指差しながら言った。

 実のところ、普通科のとある生徒によってネット上で『ひなたちゃん親衛隊』なる気色の悪いストーカー団体が設立され、他の科の一部の生徒のみならず雄英外部の人間、果てにはランキング上位のプロヒーローまで所属していたのだが、インターンや文化祭で大活躍してからは会員がさらに増え賑わっていた。

 

「常闇くんはとっくにおるんやない? だってあのホークスのとこインターン行ったんやし」

 

「いいや、ないだろうな。あそこは速すぎるから」

 

 麗日と常闇が話していると、寮の扉が開く。

 すると飯田が扉を指差す。

 

「あ!! 来たぞ皆! お出迎えだ!!」

 

 扉からは、見覚えのある人物が4人入ってきた。

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「猫の手手助けやってくる!」

 

「どこからともなくやってくる」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」

 

 私服を着たプッシーキャッツ達が、土産を持って寮に入ってきた。

 4人の後ろには洸汰の姿もあった。

 すると、出迎えたA組は一斉に喜び出した。

 

「「「プッシーキャッツ! お久しぶりです!」」」

 

「元気そうねキティ達!」

 

「あん時ゃ守り切ってやれずすまなんだ」

 

「ほじくり返すんじゃねぇ」

 

「かっちゃん、心配してくれてたんだよ」

 

 虎が爆豪、ひなた、耳郎、葉隠に謝ると、爆豪は虎に背を向けひなたが爆豪に声をかける。

 

「ウチら大丈夫っスよ、ね」

 

「うん!」

 

「にくきゅーまんじゅー」

 

「にくきゅーまんじゅー!」

 

 耳郎、ひなた、葉隠の3人も林間合宿の事は全く気にしておらず、葉隠に至っては芦戸や麗日と一緒にはしゃいでいた。

 緑谷は、真っ先に洸汰の方へと走っていった。

 

「洸汰くん!! 久しぶり!!」

 

「手紙! ありがとうね! 宝物だよ!」

 

「別に…うん」

 

 緑谷は、洸汰の手を取って握手をする。

 するとマンダレイが緑谷に声をかける。

 

「緑谷くん、見てよ」

 

「え?」

 

「やっ、やめろよ」

 

 マンダレイが洸汰のシューズを指差すと、洸汰が恥ずかしがる。

 洸汰の靴は、緑谷と同じハイカットの赤いスニーカーだった。

 

「自分で選んだんだよ。『絶対赤だ』って」

 

「べっ…違っ…」

 

 洸汰は照れ臭そうに否定しようとするが、緑谷は自分と同じシューズを見て嬉しくなった。

 

「お揃いだ!」

 

 緑谷が喜ぶと、洸汰も嬉しそうな表情を浮かべる。

 すると、プッシーキャッツ達と挨拶をしたひなたが洸汰のところへ駆けつけてくる。

 

「あ、洸汰くん!」

 

「うわ!」

 

 ひなたが洸汰に抱きついてくると、洸汰が恥ずかしそうにする。

 ひなたは、前に会った時より洸汰の背が少し伸びている事に気がつく。

 

「あれ? ちょっと背伸びた?」

 

「別に、そんな変わんないだろ…」

 

「いや、絶対伸びてる! この時期の子供って成長早いもん! …あ、そうだ! もうすぐお誕生日だったよね? プレゼント何がいい!?」

 

「うわうわぁぁぁ」

 

 ひなたがグイグイ来ると、(一応)歳上の女性に話しかけられた洸汰は緊張で固まる。

 それを見た上鳴と峰田は、恐ろしいものを見るような目をひなたに向ける。

 

「魔性だ…見かけによらず魔性だぜ…!」

 

「相澤のくせに…!」

 

「………」

 

 上鳴と峰田はひなたの時折見せる魔性っぷりに慄き、心操は面白くなさそうに見ていた。

 そしてついに我慢ならなくなったのか、心操は、ひなたの襟首を掴んで引きずった。

 

「え、ちょ、ひー君!?」

 

「来い。洸汰くん困ってるだろ」

 

「あうあう」

 

「5歳児に妬いてら」

 

 心操が仏頂面でひなたを引き摺ると、瀬呂がツッコミを入れる。

 すると砂藤が5人の分の紅茶を出しながらピクシーボブに尋ねる。

 その後ろでは、麗日と障子が5人の為にテーブルセッティングをしていた。

 

「しかし何でまた雄英に?」

 

「復帰のご挨拶に来たのよ」

 

「復帰!!? おめでとうございます!!」

 

 プッシーキャッツの復帰の報告を聞いたA組は、一斉に喜び出した。

 緑谷は、オールフォーワンに“個性”を奪われたラグドールも復帰すると聞いて驚いていた。

 

「ラグドール戻ったんですか!? “個性”を奪われての活動見合わせだったんじゃ」

 

「戻ってないよ! アチキは事務仕事で3人をサポートしていくの! OLキャッツ!」

 

 ラグドールが猫の手をしながら言い、ピクシーボブが現状を説明する。

 

「タルタロスから報告は頂くんだけどね。どんな・どれだけの“個性”を内に秘めているか未だ追及してる状況。現状何もさせない事が奴を押さえる唯一の方法らしくてね」

 

 タルタロスに収監されているオールフォーワン曰く、良い“個性”を見るとつい欲しくなってしまい返したいのは山々だがその為には一度“個性”を使わなければならないとの事だった。

 当然オールフォーワンに“個性”を使わせるわけにはいかず、まだ安全にラグドールの“個性”を取り戻す方法が見つかっていないというのが現状だった。

 すると八百万がプッシーキャッツ達に尋ねる。

 

「……では何故このタイミングで復帰を?」

 

「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボードチャートJP下半期、私達411位だったんだ」

 

 八百万の質問に対しマンダレイが説明した。

 ヒーロービルボードチャートJPとは、事件解決数、社会貢献度、国民の支持率などを集計し毎年二回発表される現役ヒーロー番付の事で、上位に名を刻んだ者程人々に笑顔と平和をもたらしたヒーローなのだ。

 

「前回は32位でした」

 

「なる程急落したからか!! ファイトっす!!」

 

「違うにゃん! 全く活動してなかったにも拘らず3桁ってどゆことって事!!」

 

「支持率の項目が我々突出していた」

 

「待ってくれてる人がいる」

 

「立ち止まってなんかいられにゃい!!」

 

 前向きな姿勢で復帰する事を決意したプッシーキャッツに、A組の生徒達は感心していた。

 特に切島は、プッシーキャッツの姿勢に思わず涙していた。

 

「そういう事かよ男だワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」

 

「ビルボードかァ」

 

「そういえば下半期まだ発表されてなかったもんね」

 

「色々あったからな」

 

「オールマイトのいないビルボードチャートかァ」

 

「どうなってるんだろう楽しみだな」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして後日。

 

『神野以降初めてのビルボードチャート!! その意味の大きさは誰もが知るところであります!! これまで発表の場にヒーローが登壇することはありませんでした。しかし、今回はご覧下さい!!』

 

 記者の女性が、ビルボードチャート発表の場でリポートをしていた。

 

『No.10、前回9位からワンランクダウン!! ドラグーンヒーロー『リューキュウ』!!』

 

「今期は私正直見合ってないかな…」

 

 名前を呼ばれると、リューキュウは苦笑いを浮かべながら手を振った。

 

『No.9、こちらもダウン! しかし、未だ衰え知らず!! 具足ヒーロー『ヨロイムシャ』』

 

「フン…上位3名を除けば斯様な番付、全て時運による誤差」

 

 鎧に身を包んだヒーロー『ヨロイムシャ』は、ランクダウンにも動じていない様子だった。

 

『No.8、“キレイにツルツル”CMでおなじみ、洗濯ヒーロー『ウォッシュ』』

 

「ワシャシャシャシャシャシャ!!!」

 

 洗濯機のようなコスチュームを着たヒーロー『ウォッシュ』は、独特の笑い声を上げていた。

 

『No.7、大躍進!! 成長止まらぬ期待の男!! 『シンリンカムイ』』

 

「光栄」

 

 シンリンカムイは、観客席に向かって軽く手を振る。

 同じチームのMt.レディは、『同じチームとして励みになる』とコメントしていた。

 

『No.6、THE・正統派の男は堅実に順位をキープ! シールドヒーロー『クラスト』』

 

「オールマイト…」

 

 髪をオールバックにしたヒーロー『クラスト』は、涙を流しながらオールマイトの引退を悔やんでいた。

 

『No.5、勝ち気なバニーはランクアップ! ラビットヒーロー『ミルコ』』

 

「チーム組んだんだってな弱虫め!」

 

 兎の耳が生えた褐色肌の女性ヒーロー『ミルコ』は、エッジショットを挑発する。

 

『No.4、ミステリアスな忍は解決数も支持率もうなぎ上り! 忍者ヒーロー『エッジショット』』

 

「黙らっしゃい公の場だぞ」

 

 エッジショットは、忍者のポーズを取りながらミルコを窘める。

 

『今回、神野に関わったヒーローたちの支持率が軒並み上がっているようですね。それでいくとこの男!! 活動休止中にも拘わらずNo.3! 支持率は今期No.1! ファイバーヒーロー『ベストジーニスト』! 一刻も早い復帰を皆が待っています!! No.2、マイペースに! しかし猛々しく! 破竹の勢いで今! 2番手へ! ウィングヒーロー『ホークス』!!』

 

「んな大袈裟な」

 

 背中から翼が生えたヒーロー『ホークス』は、頭を掻きながらマイペースなコメントをしていた。

 そしてついに、No. 1が発表される。

 

『そして!! 衝撃の謝罪会見を経てもなお1位を保持し続けたこの男! 過去を乗り越え、暫定の1位から今日改めて正真正銘No.1の座へ! 長かった!! フレイムヒーロー『エンデヴァー』!!』

 

 名前を呼ばれたエンデヴァーは、以前の冷たい目つきとは打って変わった目をしていた。

 するとヒーロー公安委員会の会長が話を始める。

 

『今回このような場を設けたのは、節目であると判断したからであります。オールマイトの引退から約3か月、未だアイコン不在ばかりが取り沙汰されておりますが、次を担うヒーローたちはここにいます。彼らと共に平和な社会を目指していきましょう』

 

 会長が話している間、ホークスは話に飽きたのかソワソワしていた。

 そして、隣にいたエンデヴァーにコソッと話しかける。

 

「1位ってどんな気分なんスか?」

 

 ホークスが話しかけると、エンデヴァーはギロリとホークスを睨む。

 

『───それではお一人ずつコメントを!』

 

 司会の女性がマイクを向けると、リューキュウが話し始める。

 

「ありがとうございます。しかし、辞退できるものならしたかったというのが本音です。インターン生が命懸けで戦っている時、私はその場にいる事ができませんでした。頂いたNo.にふさわしいヒーローとなれるように邁進して参ります」

 

 リューキュウが話すと、ファットガムは涙しロックロックもその言葉を深く受け止めていた。

 するとクラストが割り込んでくる。

 

「わかるぞ、リューキュウ! お前の心の苦しみが! 自責の念が!! 我ら立たねばならぬ!! 頑張れリューキュウ!! 頑張ろう!!」

 

「クラスト順番…」

 

 クラストが割り込んでくるというハプニングがあったものの、司会の女性は次々とトップヒーロー達にコメントを求めていく。

 

「これからもやるべき事は変わらん」

 

 ヨロイムシャは、全く動じず一言そう言っただけだった。

 

「ワッシャ!!」

 

 ウォッシュは、独特の鳴き声を上げながら頷いた。

 

「チームに加えてくれたエッジショットをはじめ、諸先輩方に恥じぬ働きをしていく所存」

 

 シンリンカムイは、ストイックなコメントをした。

 

「何故あの日、私は神野にいなかった! その思いが未だ胸をしめつける!!」

 

 クラストは、涙を流しながら神野へ行かなかった事を悔やんでいた。

 

「今悪い事企んでる奴!! 私にぶっとばされる覚悟しとけよ」

 

 ミルコは、自信満々にコメントした。

 すると司会の女性は、今度はエッジショットにコメントを求める。

 

「支持率だけであればNo.3の座でした…!」

 

「数字に頓着はない。結果として多くの支持を頂いた事は感謝しているが、名声の為に活動しているのではない。安寧をもたらす事が本質だと考えている「それを聞いて誰が喜びます?」

 

 エッジショットがコメントすると、それをつまらなさそうに聞いていたホークスが口を挟む。

 すると、会場が一気にシン…と静かになった。

 

「良いぞ生意気だ!」

 

「……相変わらず和を乱すのが好きだな」

 

 ミルコはニカっと挑発的な笑みを浮かべ、エッジショットは呆れ返った。

 するとホークスは女性からマイクをひったくってコメントする。

 

「我慢が苦手なだけですよ。えーと? 支持率だけでいうとベストジーニストさん休止による応援ブーストがかかって1位。2位が俺、3位エッジショットさん、で、そっからざっと飛んで6位くらいにエンデヴァーさん。支持率って、俺は今一番大事な数字だと思っているんですけど、過ぎたことを引きずってる場合ですか。やる事変えなくていいんですか。象徴はもういない」

 

 ホークスは、大きな翼で宙を舞いながらコメントする。

 

「“節目”のこの日に俺より成果の出ない人たちがなァにを安パイ切ってンですか! もっとヒーローらしいこと言って下さいよ」

 

 ホークスが言うと、他のヒーロー達や記者達が呆れ返る。

 

 ウィングヒーロー『ホークス』、22歳。

 前回のチャートでトップ3入りを果たしたヒーロー。

 18歳で事務所立ち上げ、なんとその年の下半期には既にトップ10に入っている。

 十代でのトップ10入りは史上初、最速最年少。

 人は彼を速すぎる男と呼ぶ。

 

「俺は以上です。さァ、お次どうぞ! 支持率、俺以下No.1」

 

 ホークスは、そう言ってエンデヴァーにマイクを渡す。

 ホークスのせいで、エンデヴァーはコメントしづらくなっていた。

 どうなるかと観客席がざわついていると、エンデヴァーがコメントする。

 

「若輩にこうも煽られた以上、多くは語らん。俺を見ていてくれ」

 

 エンデヴァーが真っ直ぐな眼を向けて言うと、観客席にいた全員が驚く。

 するとホークスがエンデヴァーに拍手を送った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その後、エンデヴァーの控え室では。

 

「いやーゴメーワクオカケシャーシタ」

 

「どういうつもりだ小僧」

 

 ケラケラと笑うホークスの胸ぐらをエンデヴァーが引っ掴んで問い詰めていた。

 ホークスのコスチュームは、エンデヴァーの炎熱でチリチリと焦げていた。

 

「皆さんがあまりに普通のことしか言わないんで演出が必要だと」

 

「俺を試したな?」

 

「まさか! むしろアシストでしょ、良かったでしょ? 俺は別にオールマイトファンでもないし、ああなりたいとも思ってません。それでもあの人の引退はショックでした。あの人のようにアイコニックな存在とはいいません。しかし、新たな精神的支柱(リーダー)は今絶対に必要だと考えています。安心しました、かっこよかったですよ」

 

 ホークスが言うと、エンデヴァーはホークスのマイペースっぷりに呆れ返りながら尋ねる。

 

「自分がそうなろうとは考えんのか」

 

「俺がそんな器に見えます? もうちょい下で自由にやりたいので、20位~30位くらいで」

 

 ホークスがマイペース発言をすると、エンデヴァーはホークスに背を向ける。

 

「貴様のような人間が最も嫌いだ。話はお終いだ、他の者へ謝罪して来い」

 

「あ、こっから本題です」

 

「聞かん、失せろ」

 

 ホークスが本題に入ろうとすると、エンデヴァーが苛ついた様子で怒鳴る。

 だがホークスは、それを無視して話を始めた。

 

「チームアップのお願いです。俺の地元、今嫌な目撃談が増えてんですよ。脳無って覚えてます?」

 

 

 

 

 




職場体験の指名ですが、原作では二人まででしたが本作では三人まで出せる事になってます。
原作より指名数が多かったキャラがいるのはそのためです。
ちなみにホークスが指名したのはひーちゃん、ふみにゃん、焦ちゃんの3人です。
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