ハイエンド事件の翌日、A組の教室では。
上鳴が、切島と一緒に昨日のハイエンド事件について話していた。
「凄かったよな~、昨日のエンデヴァー!」
「ああ、脳無にブッ倒されたときには肝冷やしたけどよ…!」
切島は、拳を握りながらエンデヴァーの戦いを思い出して思わず涙ぐむ。
「最後は勝利とガッツのスタンディング…! くぅぅ! 漢だぜ!」
「流石No.1だよね」
「ふっ、職場体験先に選んだ僕の目に狂いはなかった…」
「いや指名さえ貰えてたら誰だって行ってたでしょ」
尾白が言うとひなたがうんうんと頷き、それに対して心操がツッコミを入れる。
すると麗日、葉隠、瀬呂も会話に加わる。
「ホークスも凄かったよ」
「イケメンだしー!」
「“速すぎる男”の異名は伊達じゃねぇよな」
するとその時、教室のドアが開き轟が中に入ってくる。
緑谷とひなたは、すぐに轟の方へ駆けつけた。
「焦ちゃん!」
「轟くん。エンデヴァーの容体は…」
「命に別状はないそうだ」
緑谷が轟に尋ねると、轟が答える。
すると緑谷とひなたが安心する。
「そっか、良かった」
「ホントホント。心配したんだから」
「自慢の父ちゃんだな轟!」
「あぁ…そうだな」
峰田が言うと、轟は前を向いて言った。
自分の力を封印する程憎かった父親を自慢できるようになった轟を見て、緑谷とひなたは笑顔を浮かべる。
すると教室のドアが開き、相澤が声をかけてくる。
「おい! チャイムはとっくに…」
相澤が注意をしようとすると、生徒達は全員席について静まり返った。
すると相澤が教卓に着いて話し始める。
「よし。いつまでも浮かれてないで少しは自覚しろ。仮免許とはいえ、お前らはもう公にヒーロー活動ができる資格と責任を与えられている。その事を忘れるな。…とはいえ2名ほど仮免講習を補習中の者もいるが…」
「ケッ」
(うわあ抉るなあお父さん…)
相澤が言うと爆豪は見るからに不機嫌になり、それを見たひなたは苦笑いを浮かべていた。
かく言うひなたも仮免試験はギリギリ合格だったため、他人事とは言えなかった。
「今後授業もギアを一段あげていくからそのつもりでいろ。さて今日のホームルームだが…」
相澤が話そうとすると、突然警告音が鳴り部屋全体が赤く光った。
黒板には警告画面が表示され、アナウンスが鳴る。
『緊急訓練! 緊急訓練! 想定、雄英高校敷地内ニ
アナウンスが鳴ると、飯田が立ち上がって指示を出す。
「ヒーロー科1年A組出動だ!!」
◇◇◇
その後、グラウンドβにて。
「“グラウンドβに
「まずは状況の把握からですわ。偵察班のみなさんお願いします」
「うむ」
「OK!」
「任せて」
飯田と八百万が言うと、偵察係の障子、ひなた、耳郎が頷く。
ひなたは、現場に向かう前に心操に布でできた大きな袋を渡した。
「そうだひー君これあげる」
「重…何だこれ」
「んじゃまた後で」
ひなたは、心操に袋を渡すとそのまま現場の方角へと向かった。
耳郎は、地面にプラグを刺して小さな音を拾い報告する。
「北東…約900m、断続的な破壊音!」
耳郎響香
ヒーロー名:ヒアヒーロー イヤホン=ジャック
“個性”:『イヤホンジャック』
すると障子が目を大量に複製し、耳郎が音を聞いた方角を凝視する。
「イヤホン=ジャックの報告地点に爆煙を確認。ビルが川に向かって倒壊。火災が発生している。周辺に
障子目蔵
ヒーロー名:触手ヒーロー テンタコル
“個性”:『複製腕』
「わかった。じゃ、こっからは僕の出番だね」
そう言ってひなたは、耳郎と障子が偵察をした方向に向かって超音波を飛ばす。
するとその直後、ひなたが目を見開く。
「ん! 川の方に一人発見!」
相澤ひなた
ヒーロー名:共鳴ヒーロー Cresc.molto
“個性”:『共鳴』
一方、障子からの連絡を受けた飯田はというと。
「了解した。まずは現場の消火活動が必要だ」
「わかりましたわ」
飯田が言うと、八百万は胸元をはだけさせて“個性”を使う。
すると上鳴と峰田がそれを凝視したので、芦戸と葉隠がタライを二人の頭にぶつけて気絶させた。
八百万は、“個性”で巨大なリヤカーを創造する。
八百万百
ヒーロー名:万物ヒーロー クリエティ
“個性”:『創造』
「時間がありません。消火班を編成して現場へ向かってください。インゲニウム」
八百万が指示を出すと、飯田は轟に声をかける。
「ショートくん」
「分かってる」
「俺も行こう」
「俺も!」
「僕も☆」
飯田が先に行くと、轟、常闇、砂藤、青山がついて行った。
するとその時、ひなたが報告する。
『大変! 川で誰か流されてる!!』
「何だって!?」
ひなたが報告すると、飯田が驚く。
すると蛙吹が峰田に声をかける。
「私達の出番よ、グレープジュース」
「おお!」
「よし! 救助班も現場へ先行しよう! インゲニウム…ゴー!!」
飯田は、消火班と救助班を乗せたリアカーを引いて爆速で現場へと向かう。
飯田天哉
ヒーロー名:ターボヒーロー インゲニウム
“個性”:『エンジン』
すると緑谷が他のメンバーに声をかける。
「僕らも行こう!」
「うん」
「ああ」
緑谷が言うと、麗日と心操が頷く。
上鳴、切島、爆豪を除く8人が現場へ直行した。
すると切島が爆豪に声をかける。
「バクゴー行かねえのかよ?」
「うお!?」
切島が言うと、爆豪は上鳴の襟首を掴んで引きずる。
「う、何だよ!?」
上鳴が困惑した様子で尋ねると、爆豪が話す。
「
「ええ!? ウェッ、ウェエエ!?」
爆豪が言うと、上鳴がさらに困惑した。
◇◇◇
その頃、現場に直行した飯田達はというと。
飯田が急ブレーキをかけると、リアカーに乗っていた6人が投げ出される。
7人が駆けつけた現場は、炎に囲まれていた。
「ショートくん頼む!」
「任せろ」
飯田が指示を出すと、轟が氷結で炎を全て消した。
轟焦凍
ヒーロー名:ショート
“個性”:『半冷半燃』
「よし、やったぞ!」
「俺らの出番…」
「なくなっちゃったね☆」
轟が一人で火災を解決してしまうと、砂藤がガッカリし青山が困り果てる。
すると常闇が蛙吹に連絡をする。
「要救助者はどうだ? フロッピー」
◇◇◇
一方、川の近くを探していた蛙吹はというと。
「見つけたわ!」
「どこだ!? フロッピー」
「あそこよ!」
峰田が尋ねると、蛙吹が指を差す。
その先には、川に流されている通形がいた。
「アハハハハ…何故だか知らないけど流されちゃってるんだよね~アハハハ」
通形が呑気に笑っていると、A組が驚く。
「通形先輩じゃねえか!」
「どうしてここに!?」
「何でだろうねー、マズいねー」
峰田、砂藤、飯田が驚いていると、通形は呑気に笑いながら川に流されていく。
その先では、橋が崩落していた。
「橋が…」
「オイラを投げ飛ばしてくれツクヨミ!」
「分かった」
「私もお願い、シュガーマン」
「おう!」
橋が崩落しているのを見た峰田は常闇に、蛙吹は砂藤に指示を出す。
すると常闇は、身体から
「
「アイヨ!」
常闇は
常闇踏陰
ヒーロー名:漆黒ヒーロー ツクヨミ
“個性”:『
砂藤力道
ヒーロー名:甘味ヒーロー シュガーマン
“個性”:『シュガードープ』
「いっけえええええ!!!」
「『グレープラッシュ』!!!」
峰田は、橋に向かって大量のボールを投げ、川に落ちそうになっていた瓦礫を橋にくっつけて崩落を防いだ。
「ケロ!」
蛙吹は、舌を伸ばして通形に巻きつけ引き上げて回収する。
峰田実
ヒーロー名:モギタテヒーロー GRAPE JUICE
“個性”:『もぎもぎ』
蛙吹梅雨
ヒーロー名:梅雨入りヒーロー FROPPY
“個性”:『蛙』
「ありがとう! 助かったよね」
通形が蛙吹に礼を言うと、砂藤が喜ぶ。
「よっしゃ!」
「偵察班、
飯田が尋ねると、飯田と連絡を取っていた障子が耳郎とひなたに確認する。
すると耳郎は首を横に振り、ひなたは指でバツマークを作る。
すると障子が飯田に報告をする。
『ダメだ、まだ発見できない』
「了解した。引き続き頼…」
飯田が指示を出そうとしたその時、飯田と轟の背後で爆炎が起こる。
火はあっという間に広がり、目の前は火の海と化してしまった。
「氷結で塞ぎきれていなかったのか!?」
◇◇◇
その頃、緑谷達は現場へと急行していた。
爆煙が上がっているのを見た緑谷は、大きく目を見開く。
「また火の手が…!」
「さっきより勢いが強いぞ…!」
「このままでは、延焼してしまいますわ!」
緑谷、尾白、八百万が驚いていると、芦戸が言った。
「火の手を止めればいいんでしょ!?」
「はい!」
芦戸が尋ねると、八百万が頷く。
すると芦戸は、瀬呂と麗日に話しかける。
「前言ってたアレやろう? ウラビティセロファン!」
「アレか!」
「うん!」
芦戸が作戦を話すと、瀬呂と麗日が頷いた。
麗日は、左手で芦戸に触れて芦戸を浮かせる。
麗日お茶子
ヒーロー名:ウラビティ
“個性”:『
「行ってこい、ピンキー!!」
瀬呂は、芦戸に向かって叫びながら肘からテープを伸ばす。
瀬呂範太
ヒーロー名:テーピンヒーロー セロファン
“個性”:『テープ』
麗日の“個性”で宙に浮いた芦戸は、瀬呂のテープを掴む。
「チームレイニーデイ! いっくよー!!」
芦戸は、空中で右手から酸を出して撒き散らした。
芦戸三奈
ヒーロー名:ピンキー
“個性”:『酸』
「僕も☆」
青山は、『ネビルビュッフェ』を目の前の炎目がけて放ち炎を消した。
青山優雅
ヒーロー名:輝きヒーロー Can't stop twinkling. 〜キラキラが止められないよ☆〜
“個性”:『ネビルレーザー』
「よし! これで延焼は防げる!」
「今度は確実に閉じ込める」
そう言って轟は、巨大な氷塊で炎を閉じ込めた。
◇◇◇
障子は、目視で轟が氷結で火災を止めたのを確認した。
轟の“個性”を感知したひなたも、ホッと一息つく。
「焦ちゃんがやってくれたんだね」
「火災は収まったようだ」
「シッ、静かに」
ひなたと障子が言うと、耳郎は静かにするよう言った。
耳郎は、音で探りながら報告をする。
「嫌な音がする…」
「ん…」
耳郎が言うと、ひなたも『
すると強大な“個性”を感知したひなたが大きく目を見開く。
「!! 全員警戒態勢に入って!!
◇◇◇
その頃、突然“個性”を使った攻撃が緑谷達を襲っていた。
「「「うわあっ!!」」」
「うわっ!」
緑谷達と芦戸は、“個性”で起こされた波動で吹き飛ばされ、芦戸はテープを掴まれて拘束される。
すると、それを見た緑谷と心操が目を見開く。
「ま…まさか…」
「波動先輩…!」
波動は、芦戸を拘束しているテープを掴みながら話しかける。
「覚えてる? 忘れちゃった? まだ
波動ねじれ
ヒーロー名:ネジレチャン
“個性”:『波動』
「波動先輩が
波動が言うと、緑谷が驚く。
すると背後から、もう一人の声が聞こえてくる。
「もう一人…
天喰環
ヒーロー名:サンイーター
“個性”:『再現』
「天喰先輩まで!?」
天喰が言うと、緑谷が驚く。
すると天喰は、俯きながらブツブツとネガティブ発言をし出す。
「ああ…何故俺が
「帰った!!」
天喰が踵を返して帰っていくと、緑谷が目を見開いてツッコミを入れる。
「天喰先輩ホントに帰ってくけど…」
「いいのかな? それで…」
「ホントプレッシャーに弱いなあの人…」
麗日、尾白、心操は帰っていく天喰に対して呆れていた。
すると波動が天喰を止める。
「ストーップ天喰くん! ダメだよちゃんと役に徹しなきゃ! 動かないでね、危ないから。私、
そう言って波動は、芦戸を人質に取った。
「まさか、ビッグ3が
「ピンキーが人質に」
「ここからなら背後に回り込める」
「うむ」
「行こう」
飯田、常闇、轟は波動の背後から回り込んで芦戸を救出しようとする。
すると波動が振り向き、頬を膨らませる。
「む~っ! 動かないでって言ったのに、聞こえなかった? そういう子はお仕置き!」
「あれは…!」
「チャージ満タン出力30!」
波動は、右手からねじれた波動を放出した。
すると轟の氷が粉々に砕かれ、衝撃波が三人の方へ飛んでくる。
轟は咄嗟に巨大な氷塊を盾にして波動を防いだが、衝撃波は緑谷達の方へも飛んできていた。
するとその時、蛙吹に助け出された通形がどさくさに紛れてわざと川に落ちる。
「わぁ〜!」
「ああっ!!」
「ケロ」
通形が川に落ちると、峰田が慌てふためき蛙吹が目を見開く。
そのまま通形は、桃太郎に出てくる桃のようにどんぶらこどんぶらこと流されていく。
「また流されちゃったね〜」
「救助に行きましょう」
「わざとやってんじゃねーのかあの人!?」
蛙吹が言うと、峰田はツッコミを入れつつも通形を救出しに行った。
すると常闇が飯田に話しかける。
「インゲニウム」
「ああ! 人命優先だ。波動先輩は緑谷くん達に任せて我々も救助に向かおう!」
「分かった」
飯田が言うと、轟と常闇が頷く。
飯田は超スピードで通形の元へ向かい、轟は氷塊の上に常闇を乗せて一緒に飯田を追った。
一方、偵察班のひなた、耳郎、障子はというと。
「音がグチャグチャで状況がわかんない! どうなってるの!?」
「ピンキーが人質に取られた!」
「
「ウソ!」
耳郎が尋ねると障子とひなたが報告し、それに対して耳郎が驚く。
「…あと、要救助者役のルミリオンがまた落っこちてフロッピー、グレープジュース、インゲニウム、ショート、ツクヨミの5人が救助に向かってる」
「また!?」
ついでに通形が再び流された事をひなたが報告すると、耳郎は呆れ返る。
「ウチらも救けに行こう!」
「ダメだ!」
耳郎が現場に直行しようとすると、障子が止めた。
「俺達はここで偵察を続ける。
「要救助者役も一人とは限らないしね。偵察だって立派なヒーロー活動、でしょ?」
「…うん!」
障子の意見にひなたが賛成し、髪を逆立てて瞳から淡いエメラルドグリーンの光を放ちながら“個性”で偵察を続けていると、耳郎が頷く。
するとその時だった。
「ぶっ飛べやぁあああああ!!」
「「「!!」」」
突然、豪快な女性の声が聞こえ、こちらへ猛スピードで突っ込んでくる。
それと同時に強風が吹き付け、一瞬三人の身体を宙に浮かせる。
「うわ!?」
「耳郎!」
耳郎が風で浮かされると障子が耳郎の身体を掴み、ひなたが捕縛武器で二人を確保して吹き飛ばされるのを防いだ。
するとその直後、くノ一のコスプレ衣装のような緑色のミニ着物、黒い肩巾、白い風袋といったまるで風神を思わせるようなコスチュームを着た女子が現れる。
「やっぱりうちの思た通りやわぁ! 索敵役は安全地帯が仕事場やもんね!」
五常風華
ヒーロー名:風神ヒーロー イブキ
“個性”:『息吹』
「
女子が風で浮きながら三人に話しかけると、ひなたが目を見開く。
三人の前に現れたのは、イナズマの実妹で通形のクラスメイトの『イブキ』こと五常風華だった。
「えっと、クレシェンドちゃんにイヤホンジャックちゃん、テンタコルくんやったよね? ごめんね! そう簡単に勝たせたらあかんて相澤先生に言われてんねん! 悪いけど邪魔させてもらうで!」
イブキは、早速風で三人を吹き飛ばし、索敵を妨害しようとした。
するとひなたと耳郎は、咄嗟に五常に音波攻撃を浴びせる。
「『
「『ハートビートサラウンド』!!」
「ほよ?」
二人は、同時に五常に爆音攻撃を浴びせた。
だが爆音攻撃は五常の手前で弾かれ、五常はピンピンしていた。
「無ぅ駄!」
「弾かれた…!?」
「風で音を曲げたんだと思う!」
五常が二人の攻撃を弾いてみせると、障子が驚き耳郎が自身の推測を話した。
五常は、風の盾で自分を守りつつ、ニヤニヤと笑ってみせた。
「ほらほら、そちらさんが来えへんならうちが行くで! 『天狗風』!」
五常は、風袋に溜めた風を一気に放出し巨大な竜巻を生成した。
そして三人を竜巻の中に閉じ込め、脱出不可能な竜巻の檻を作り上げてしまった。
「即席の竜巻の牢獄やで! 一度入ったら絶対出られへん! ま、プルスウルトラの精神で頑張りぃや!」
五常は、“個性”で熱風を吹き出して上昇気流を作り出し、竜巻の威力をさらに上げていく。
一方で相澤は、遠くから偵察隊の様子を見ていた。
(3年B組所属、五常風華。雷神ヒーロー『イナズマ』の妹にして、ビッグ3の次に名の上がるヒーロー科屈指の実力者。気分のムラのデカさとサボり癖が難点だが、桁外れの“強個性”にビッグ3とほとんど遜色ない戦闘センスを持つ優等生で、時にはあいつも含めて『ビッグ4』と呼ばれるくらいだ。さて、五常相手にどう戦うかな)
相澤は、五常の実力を冷静に分析していた。
気分のムラが激しくサボり魔であるため教師陣の間では悪い意味で有名人だが、彼女の“個性”である『息吹』は自身の吐息から風を生み出しそよ風から竜巻まで自由自在に操れるという“強個性”で、戦闘センスもビッグ3と互角なので、教師陣からも一目置かれている存在だった。
ひなたは、この状況を打開するには声を全開にする他ないと考え、二人に合図を送った。
「しょうがない…! 二人とも、耳塞いで!」
「…! ああ!」
「わかった!」
ひなたが合図を送ると、二人は咄嗟に耳を塞いだ。
するとその直後、ひなたは“個性”を全開にして叫んだ。
「『
ひなたが“個性”を全開にして叫ぶと、周囲数百メートルにわたって爆音が響き渡り、一瞬にして竜巻の牢獄が消し飛ぶ。
そして声の勢いはそれだけに留まらず、近くにいた五常も強烈な音波を防ぎ切れずに“個性”を無効化される。
いきなり爆音に晒されて“個性”を消された五常は、目を丸くして飛び上がる。
「はぁ━━━━━!!?」
ひなたに“個性”を壊された五常は、戦略的撤退をしようとする。
だがひなたが大技を放った直後、障子が五常に詰め寄り、腕を大量に複製してラッシュを仕掛ける。
「『オクトブロー』!!」
「もおおお堪忍してやああ!」
障子が五常にラッシュを仕掛けると、五常は常人離れした身のこなしで障子の拳ひとつひとつをいなしつつ退けるチャンスを伺った。
五常は、一旦態勢を整える為あらかじめ風袋に収納しておいた風を取り出そうとする。
自身の“個性”が消されても、風のストックさえあればまだ反撃の目はあると考えていたのだ。
だが気がつくと、風をストックしておくための風袋がなくなっていた。
「あり!?」
「これをお探しですか?」
「なあ!? いつの間に!?」
障子が手に握っていた風袋を見せると、五常が目を丸くする。
障子は、五常が袋の中に詰めた風を使って反撃してくるであろうと考え、初めから風袋を奪う為にラッシュを仕掛けていたのだ。
武器を奪われた事で五常が動揺していると、背後から耳郎が忍び寄り音響増幅装置を五常に向ける。
寸分のところでそれに気付いた五常は、さらに激しく動揺した。
(えっ嘘何やコレ!? 聞いとった話と全然ちゃうやんか! 1年と戯れるだけの楽なお仕事て聞いたから引き受けたのに! こいつら強くなりすぎやで!)
「相澤先生の嘘つきぃぃぃぃ!!!」
五常は、A組の実力を弱く見積もって伝えた相澤に恨み言を吐く。
するとその直後、耳郎の爆音攻撃が至近距離で炸裂した。
「ぎゃびゃああああああああ!!!」
耳郎の爆音攻撃をまともに喰らった五常は、情けない叫び声を上げながら撃沈する。
三人の協力プレイによって完封された五常は、地面に仰向けに倒れ込んでピクピクしていた。
「か、堪忍……してや……」
五常が爆音でダウンさせられて伸びていると、ひなたが捕縛武器を伸ばして五常を捕獲する。
「捕獲完了!」
「強かった…三人がかりで、しかも向こうの慢心があってやっと勝てた」
「うん…他の皆は大丈夫かな」
障子は、ビッグ3とほぼ互角の五常の強さを改めて実感し、耳郎はビッグ3と戦っているクラスメイトを心配した。
◇◇◇
時は遡り、ちょうど五常が現れた頃。
緑谷が
「要求は何ですか?
「帰りたい!」
緑谷が尋ねると、天喰は本音を言った。
するとA組が呆れ返り、尾白がツッコミを入れる。
「帰ればいいじゃないですか…」
「帰ったら、波動さんに怒られる。ミリオにも言われてる。君達が1日でも早く一人前のヒーローになれるよう、できる限りのことをしてやってくれと…! だから帰れない!!」
そう言って天喰は、右手からタコの触腕(タコ焼き)、左手から貝殻(アサリの味噌汁)、背中から翼(鶏の唐揚げ)を生やしてA組の前に立ちはだかる。
するとA組は全員身構えた。
「ビッグ3が僕らのために…」
「ありがてえけど…高いハードルだぜ」
「うん」
緑谷、瀬呂、心操は、天喰に立ちはだかった。
すると天喰は、葉隠がいなくなっている事に気がつく。
「麗日さん!」
「解除!」
緑谷が言うと、麗日は“個性”を解除する。
すると芦戸の身体が下に沈んだ。
「あっ」
「え?」
芦戸の身体が下に沈むと、波動も引っ張られて下に落ちる。
葉隠は、芦戸を空中でキャッチする。
すると突然芦戸の落下が止まったのを見た波動は、葉隠の仕業だと気がつく。
「わかった! 葉隠さんでしょ?」
そう言って波動は、波動で空中に浮き上がって葉隠に攻撃を仕掛けようとする。
「集光屈折…」
「!」
葉隠が必殺技を出そうとすると、芦戸は咄嗟に目を瞑った。
するとその直後、葉隠の身体が眩しく光る。
葉隠透
ヒーロー名:ステルスヒーロー インビジブルガール
“個性”:『透明化』
「何これ…!?」
葉隠が光を放つと、波動は眩しさのあまり怯む。
天喰は、咄嗟にアサリの貝殻で光を防いだ。
すると波動は、頬を膨らませて波動を放とうとする。
「むぅ〜! 動かないでって…言ったでしょ!?」
『波動さん! 後ろ!』
「えっ、何?」
突然天喰の声が聞こえ、それに反応した波動が振り向くと、波動の目から光が消える。
その真下には、チキチキとペルソナコードのプレートを動かす心操がいた。
心操人使
ヒーロー名:ヒトシ(仮名)
“個性”:『洗脳』
「セロファン!」
「はあっ!!」
心操が指示を出すと、瀬呂がテープで波動を拘束する。
するとその時の衝撃で洗脳が解けた波動がハッとする。
「しまった!」
するとすかさず八百万がバズーカで捕縛用ネットを撃ち、波動を拘束した。
一方葉隠は、無事芦戸を助け出していた。
「よいしょ」
「波動さん…あっ」
天喰が咄嗟に後ろを振り向くと、尾を振りかぶっている尾白がいた。
尾白はそのまま身体を回転させながら尾を振り下ろすが、天喰はタコの触腕を伸ばしてガードした。
尾白は絶え間なく特攻を仕掛けていくが、その度に天喰がガードする。
尾白猿夫
ヒーロー名:武闘ヒーロー テイルマン
“個性”:『尻尾』
天喰は、何度も特攻を仕掛けてくる尾白の足をタコの触腕で絡め取った。
天喰が尾白を拘束すると、尾白は緑谷に向かって叫ぶ。
「くっ、今だ! デク!」
尾白が合図をすると、緑谷が黒鞭を天喰に絡めつけ、空中に浮き上がってスマッシュを放つ。
緑谷出久
ヒーロー名:デク
“個性”:『ワンフォーオール』
「SMAAAASH!!!」
緑谷は天喰目掛けて拳を振りかぶるが、緑谷は拳を天喰の腹の前で寸止めする。
「…投降してください」
「何故打たなかった」
「できませんでした」
「詰めの甘さは命取りになる」
そう言って天喰は、鳥の足で緑谷を蹴り飛ばした。
「今の俺は
「デクくん!!」
「勝たせてもらうよ!!」
天喰は、翼で飛び上がると緑谷目掛けて攻撃を仕掛けようとする。
するとその時、自動車が天喰の方へと爆走し、爆破で前に吹き飛ばされた切島が天喰にタックルを仕掛けてきた。
「
切島鋭児郎
ヒーロー名:剛健ヒーロー
“個性”:『硬化』
「今だ!!」
切島のタックルに天喰が驚いている隙に、心操は捕縛武器を天喰目がけて投げつける。
天喰は、タコの触腕で軽く捕縛武器を薙ぎ払った。
だがその時、捕縛武器の先端に結び付けられていた大きな袋の中身が空中に散らばる。
袋の中に入っていたのは、大量の手榴弾だった。
「『
心操が叫ぶと、手榴弾が一斉に起爆し、手榴弾一つ一つから爆音が放たれる。
「くっ…これは……相澤さんの『共鳴』…!」
いきなり爆音を喰らった天喰は、怯みながら耳を塞ぐ。
すると尾白を拘束していた触腕が光の粒になって消え、その隙に心操が尾白を捕縛武器で絡め取って救出した。
「テイルマン!」
「助かった!!」
心操に助けられた尾白は、心操に礼を言う。
一方で、緑谷は自分を助けてくれた切島に礼を言った。
「ありがとう、切島くん!」
「来るぜ、真打ちが!」
切島が言った直後、爆煙の中から自動車が現れる。
自動車のボンネットの上には、爆豪が立っていた。
「充電が遅ぇんだよアホ面!」
「これでも急いだんだってば!」
爆豪が上鳴を急かすと、上鳴はバッテリーの導線を噛んで充電して車を運転しながら言い返した。
上鳴電気
ヒーロー名:スタンガンヒーロー チャージズマ
“個性”:帯電
爆豪は、ボンネットから飛び上がると天喰目掛けて特攻を仕掛ける。
すると“個性”が戻った天喰は、タコの触腕で爆豪を薙ぎ払おうとする。
爆豪は、天喰のタコの触腕を爆破で退けた。
爆豪勝己
ヒーロー名:未定
“個性”:爆破
爆豪は、そのまま爆破で空中を舞い天喰の背後を取る。
すると天喰は、咄嗟に後ろを振り向いた。
「そこだ!!」
「ゲームオーバーだぁ!!!」
「ヒィイ!」
爆豪がヒーローらしからぬ悪人面を浮かべて怒鳴りつけると、天喰が悲鳴を上げて怯む。
するとその隙に、爆豪が天喰に爆破を浴びせてそのまま組み伏せた。
それを見た切島は、グッと拳を握る。
「凄えぜ爆豪」
「あの天喰先輩を…」
「訓練クリアですわ!」
「うん!」
「「やったあ!!」」
切島と緑谷は爆豪の必殺攻撃に舌を巻き、八百万と麗日が喜び、芦戸と葉隠は嬉しそうにハイタッチをしていた。
一方で、五常を倒し偵察を続けていたひなた達はというと。
「向こうも終わったようだ」
「これで一件落着、ってところかな」
「うん!」
「ねぇ〜、どうでもええけどうち放置して盛り上がらんといて〜」
障子、耳郎、ひなたが事件解決を喜んでいると、後ろから五常が文句を言った。
一方で、通形を救出しに行っていた蛙吹達はというと。
5人が通形を助け出すと、通形は笑顔で礼を言った。
「アハハハハハッ、助かったよね。ありがとう」
するとその時、アナウンスが鳴る。
『訓練終了! 訓練終了!』
「あっちも終わったって事か」
「ああ、そうらしい」
アナウンスが鳴ると、轟と常闇が呟く。
一方、爆豪はというと。
「まだだ!!」
「え?」
「てめえ、さっき手ぇ抜いたな!?」
「いや、あれは君の顔が…「舐めたマネしてんじゃねぇ!!」
爆豪が怒鳴ると、天喰は言い訳をしようとする。
すると爆豪が怒鳴り散らした。
「それにたとえ演じていようが、先輩だろうがなんだろうが…
(帰れば良かった)
爆豪が爆破を放とうとすると、天喰は全てを諦めた表情を浮かべた。
「死ねえ!!!」
その直後、グラウンドβの中心で大爆発が起こった。
爆豪の爆破によって起こった髑髏型の煙を見たオールマイトはガクッと肩を落とし、相澤も呆れ返る。
「爆豪を職員室に連れてこい」
『了解シマシタ』
相澤が言うと、ロボットが返事をして現場に向かう。
その頃ひなたはというと、爆豪の爆破で耳をやられてピクピク痙攣しながら仰け反っていた。
「あ…ああ…綺麗なお星様……」
「何やってんだ爆豪…」
少し離れたところで爆発を見ていた耳郎は、呆れた表情を浮かべる。
そして心操達はというと、爆豪の爆破に巻き込まれて全員アフロヘアーになっていた。
◇◇◇
ハイエンド事件から二日後。
エンデヴァーは、重傷を負うも手術とリカバリーガールの“治癒”により一命を取りとめた。
あれからイナズマはというと、別件があるとの事で本場の博多ラーメンで腹拵えをしてから一足先に大阪へ戻っていった。
ミルコも、
帰路につくエンデヴァーを、ホークスが駅まで見送りに来た。
「左目良かったです、残ってて。俺のせいでマジですみません」
「思いあがるな。俺の怪我は俺の責任だ」
「それ…俺も怪我した時、使っていいですか?」
ホークスがエンデヴァーの怪我に責任を感じていると、エンデヴァーが言い方こそ厳しかったものの遠回しに『気にするな』と伝えた。
エンデヴァーの言葉に対してホークスが返すと、エンデヴァーが呆れ返りつつホークスに尋ねる。
「謝るつもりないだろ。それより貴様、あの脳無真っすぐ我々を狙いに来た。我々が到着したその日に…あれは偶然だろうか」
「あ━━━━新トップ2が駅前歩いてりゃ目立つしワンチャン狙ってた敵さんの目についたんでしょうかね」
わざわざ荼毘が脳無を送りつける予定の日の前日に自分達の存在をアピールしたのは、言い訳作りのためだった。
「”脳無の噂”自体がヒーロー狩りのまき餌って可能性ありますね。連合捜索チームに連絡つけないとですね」
「気をつける事だ」
ホークスがそれっぽい話をして誤魔化していると、エンデヴァーが口を開く。
「今後もその調査続けるのなら、あれクラスが現れても対抗できるよう協力を仰いだ方が良い」
エンデヴァーが言うと、ホークスは少し考え込みそしてニカッと笑みを浮かべた。
「”エンデヴァーはそんな気遣いせん! ”でしたっけ?」
「灼くぞ貴様」
ホークスがヘラヘラ笑いながら言うと、エンデヴァーは苛ついた表情を浮かべながらホークスを脅す。
二人は、改札の前で今後の事について話し合った。
「羽がちゃんと生え揃ったらまた活動再開です。多分もう一日くらいですかね」
「フン」
「エンデヴァーさん、休まないんですか?」
「そうだな」
「じゃあまた」
改札を通ってエスカレーターに乗って行くエンデヴァーにホークスが手を振ると、エンデヴァーは振り向かずに手を振り返した。
その後実家に帰ると、轟が外出許可を貰って家に帰っていた。
エンデヴァーは、久々に焦凍と家族水入らずで話をした。
エンデヴァーも、少しずつ家族に誇れるようなヒーローになり始めていたのだった。