ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
激突!A組VSB組
運動場γには、“個性”や必殺技に合わせ少しずつコスチュームを変えてきたA組がいた。
11月下旬という事で、露出度の高いコスチュームを着ている者は冬仕様にしていた。
「ワクワクするねー」
「ねー!」
「私冬仕様にしたんだー!」
「そうなんだ!」
「ごめん葉隠見えないからわかんない…」
葉隠とひなたがキャッキャと盛り上がっていると、耳郎がツッコミを入れる。
かく言うひなたは、防寒対策のため普段のコスチュームの上にワンピースと同じ素材の外套を羽織っていた。
八百万は普段のコスチュームの上に赤いマントを羽織っており、芦戸は首にモコモコをつけていた。
「私も冬仕様〜! カッコイーでしょーが」
冬仕様のコスチュームを着た芦戸は、自慢げにポーズを取っていた。
一方飯田は夏の頃とほとんどコスチュームが変わっていなかった。
「入学時と比べると大分皆のコスチュームも様変わりしてきたな」
「飯田それで夏耐え抜いたの凄いよな」
「これは内部に冷却装置が搭載されていてだな!」
「かっちゃんも変えてる」
爆豪は、ネックウォーマー付きの長袖のスーツを着ていた。
「あ━━━━━━!? 文句あんなら面と向かって言えやクソナードが」
「そのスーツ…防寒発熱機能付き? 汗腺が武器のかっちゃんにとってとても理に適った変更で素晴らしいと思「褒めてんじゃね━━!!!」
緑谷が爆豪のスーツを褒めちぎると、爆豪は何故か逆ギレした。
すると、尾白が緑谷のコスチュームに対しコメントした。
「緑谷が一番変化激しいよな。最近また何か付いたし」
「ね! そのグローブカッコいいね」
「ありがとう。僕もやれる事が増えてきたからさ、凄いんだよこのグローブ。実は既に二代目なんだけど、発目さん強度の調整までしてくれて!」
緑谷の話を聞いていた麗日は、緑谷がサポートアイテムの事で発目に相談した際発目に全身の至る所を触られていた事を思い出した。
「去れ!!」
「麗日ー!?」
麗日が湧いてきた記憶を消そうと自分の下顎を殴ると、尾白がドン引きした。
すると、ほとんどのA組にとっては耳障りな声が聞こえてくる。
「おいおい、まーずいぶんと弛んだ空気じゃないか。僕らを舐めているのかい」
「お! 来たなァ!! 舐めてねーよワクワクしてんだ」
「フフ…そうかいでも残念。波は今確実に僕らに来ているんだよ。さァA組!!! 今日こそ白黒つけようか!?」
高笑いする物間と共に、コスチュームに身を包んだB組の生徒達が現れた。
B組の生徒達は少しずつコスチュームを変えており、物間もサポートアイテムと思われる白いバックラーを右腕に装着していた。
物間は、笑いながら一枚の紙を見せてくる。
「見てよこのアンケート! 文化祭でとったんだけどさァーア! A組ライブとB組超ハイクオリティ演劇どちらが良かったか! 見える!? 2票差で僕らの勝利だったんだよねえ!! 入学時から続く君たちの悪目立ちの状況が変わりつつあるのさ!!」
物間が紙を見せてくると、ひなたが首を傾げながら口を開く。
「それ、雄英の公式HPのアンケートと結果違うね」
「へ?」
「あれ? モノマーもしかして学校のHP見てないの? 今年から雄英が公式にアンケート取ってるんだよ。ほら」
ひなたは、スマホでアンケートの結果の画面を見せた。
実はひなたは、来場者の意見を反映するため、『公式のアンケートを作らないか』と文化祭直前に相澤に提案し、相澤も『来場者の意見を可視化するのは合理的だ』との判断で校長に許可を取って学科ごとのアンケートフォームを作って公式HPに載せていたのだ。
そして今日、3票差でA組のライブが勝ったという結果が公式HPで発表されたのだ。
「実際に見に来てくれた人の意見を可視化した方が来年に活かせるかなって思って先生に提案してみたんだけど、やっぱりアンケートフォーム作ってもらって良かったね」
「ああ。ちゃんと建設的な意見書いてくれてる人もいるしな」
ひなたが言うと、心操も頷く。
他のB組の生徒は公式アンケートの存在を知っていたためノーコメントだったが、物間だけは納得いっていない様子だった。
「そ、そんなバカな…!! 憎きA組の提案だ、どうせA組に自動的に票が入るように細工されてたりとか「黙れ」
「ものまぁ!!!」
物間が聞き捨てならない事を言おうとすると、相澤が物間の首を捕縛布で縛る。
普段通り物間を手刀で黙らせようとしていた拳藤は目を丸くして驚いており、泡瀬が驚いて思わず声を上げた。
「じゃ、早速やりましょうかね」
「戦闘訓練!! 今回はA組とB組の対抗戦!! 舞台はここ、運動場γの一角!! 双方4人組を作り、一チームずつ戦ってもらう!!」
相澤とブラドキングが言うと、A組とB組のテンションが上がる。
「4人一チーム! 楽しそうだね」
「楽しそう」
「…あれ? でも、僕ら42人だから…2人余りますよね?」
「確かに…この半端はどう解決するのでしょうか」
ひなたと宍田が尋ねると、ブラドキングが答える。
「A組B組1組ずつ5人の組を作り、クジで組み合わせを決める! つまり、5試合中2試合が5対4か、1試合が5対5の訓練となる!」
「そんなん5対4になっちゃったら4人が不利じゃん!」
「それは実際戦ってみないと判断しかねるよとおるん…」
ブラドキングに葉隠が反論すると、ひなたがツッコミを入れる。
「そうだ。5人チームは数的有利を得られるが、ハンデもある。今回の状況設定は、『
「
「シンプルでいいぜ!」
ブラドキングが言うと、小森と鎌切が口を開く。
「ヒーローであり相手にとっては
「ヒーローでよろしいかと!」
「天ちゃん、役にはまりすぎるのも程々にね…」
飯田が頭を悩ませていると八百万が答え、ひなたが苦笑いを浮かべながらツッコミを入れる。
「双方の陣営には『激カワ据置プリズン』を設置。相手を投獄した時点で捕まえた判定になる」
「「「緊張感よ!!」」」
ブラドキングが『CHOEKI99999NEN』『ZANNEN MUNEN』『↑ONAWA』などと書かれた校長をモチーフにした檻を指しながら説明すると、生徒達がツッコミを入れた。
「自陣近くで戦闘不能に陥らせるのが最も効率的。しかしそう上手くはいかんですな…」
宍田が言うと、隣にいた口田が頷く。
「じゃ」
「クジな」
相澤とブラドキングは、それぞれクジが入った箱を出してきた。
そのままクジ引きが行われ、全5組の組み合わせが決定した。
第一試合 相澤・蛙吹・上鳴・切島vs口田・塩崎・宍田・円場・鱗
第二試合 青山・常闇・葉隠・八百万vs黒色・拳藤・小森・吹出
第三試合 飯田・尾白・障子・轟vs回原・角取・鉄哲・骨抜
第四試合 砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪vs泡瀬・鎌切・取蔭・凡戸
第五試合 芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田vs小大・庄田・物間・柳
「梅雨ちゃん! 鋭ちゃん! 電吉! 同じチームだね! やったぁ!」
「おう! 心強いなひなちゃん!」
「一緒に頑張ろうな!」
「ケロケロ、一緒に作戦考えましょひなたちゃん」
ひなたは、同じチームになった三人と一緒にキャイキャイはしゃいでいた。
奇しくも4人中3人はインターン経験者とかなり現場経験の豊富さが偏ったチーム分けになった。
すると、緑谷達と同じチームになった心操が声をかける。
「ひなた!」
心操の声にひなたが振り向くと、心操はひなたに応援の言葉をかけた。
「絶対勝てよ」
「……うん!」
心操がひなたを応援すると、ひなたは頬を染めてぱあっと表情を明るくし力強く頷く。
するとそれを見ていた峰田が血眼でその様子を眺めながら唾を吐き捨てる。
「何なん。毛根こそげ落ちろ」
嫉妬に狂った葡萄は、誰がどう見ても醜かった。
「スタートは自陣からだ。制限時間は20分。時間内に決着のつかない場合は残り人数の多い方が勝ち」
チーム分けが終わると、相澤とブラドキングが説明をする。
するとそこへ、ミッドナイトとオールマイトが来た。
「オールマイトとミッドナイトが来たー!」
二人が現れると、芦戸のテンションが上がる。
「どっちが勝つと思います?」
ミッドナイトが尋ねると、オールマイトは僅かに頭を悩ませる。
「どうだろうねぇ、多くのピンチを乗り越えてきたA組は確かに強い。だがB組は、トラブルが無い分着実に地力を底上げしている。どっちが勝つか楽しみだ」
ミッドナイトとオールマイトが話しているのを聞いて、相澤は自分のクラスの生徒に目を向けた。
(正直、俺よりブラドの方が上手だ。トラブルがあった分、当初の予定が大きく狂ったのは否めない。そこを十分にカバーできなかった俺の責任だ。…だが、ウチのクラスにはトラブル分の遅れをものともしない奴がいる。あいつに惹き寄せられて大きく力を伸ばした奴もいる。奴等がどこまで活躍できるかな)
相澤は、ひなたと心操の方を見ながら考えていた。
自分の娘と弟子がどこまで力を発揮できるか、楽しみにしていた。
「じゃ、第一試合START!」
ブラドキングの開始の合図と同時に、合同訓練第一試合が始まった。
◇◇◇
数分前。
ひなたは、くじ引きで決まったチームでどう勝とうかと考えていた。
(これといった弱点もなく柔軟に対応できる梅雨ちゃん、近接格闘に強い鋭ちゃん、一撃ブッパの電吉、そして索敵兼指揮官の僕。うん、割とバランスのいいチーム構成になったな。さぁてと、どう動くかね)
ひなたは、自分の唇に手を当てながら作戦を考えていた。
いつになく真剣に考えるひなたを見て、上鳴はただならぬ空気を感じていた。
「ひなちゃんがいつになく真剣な顔してる…!」
いつもは明るく無邪気に振る舞っているひなたが、今はそのうるささが鳴りをひそめ真剣な面持ちをしていた。
しばらく作戦を考えていたひなただったが、作戦を思いついたのか、ニヤリと笑みが溢れる。
「ひなたちゃん、その顔は何か思いついたのね」
「ん、まぁね」
蛙吹が尋ねると、ひなたは笑顔を浮かべる。
「あ、そうだ皆。これ持っといて耳栓。ちょっとうるさくしちゃうかもだから。あと、いざって時の為にこれ持っといて」
そう言ってひなたは、三人に遮音性の高い耳栓とバッヂ型の通信機を配った。
するとその直後、ブラドキングの試合開始の合図が鳴り響く。
『第一試合START!』
試合開始の合図が鳴ると、ひなた達は円陣を組む。
「よっしゃ! 行くよ皆!」
「「おう!」」
「ケロ!」
ひなたの声を合図に、三人が返事をした。
メンバー全員が気合いを入れると、ひなたは早速一際高い塔に登り、『
ひなたが半径500m周囲に超音波のドームを展開すると、B組チームの位置が手に取るようにわかる。
「いばっちゃん一人でこっち向かってるよ。蔓で索敵しながら距離詰めてってる。当初の予定通り動いてくれればOKだよ」
突然円場と口田を乗せた宍田が現れA組チームに奇襲を仕掛ける。
(っしゃ、完璧に背後を取った!! やっちまえ宍田!!)
(ひなた氏の索敵に捕捉されるのは折り込み済みですぞ! 塩崎氏を最も警戒するであろう事も! 彼女を囮に私は這い寄り近付く! 準備をさせればひなた氏と上鳴氏の独壇場となる可能性が高い! それ故愚直に攻め入る! 私は鼻が利くのですなァ!!)
ジェボーダン
本名 宍田獣郎太
“個性”『ビースト』
獣化し、体格・筋力・聴力・嗅力・視力の大幅アップ!
ただし、獣化中はとってもハイだぞ!
ツブラバ
本名 円場硬成
“個性”『空気凝固』
空気を固めて壁や足場に!!
肺活量で大きさが決まるぞ!
アニマ
本名 口田甲司
“個性”『生き物ボイス』
直接声に出して指示を出す事で、人以外の生き物達を操る事が出来る!
知能の高い鳥や哺乳類だけでなく、虫なども操れるぞ!
奇襲を仕掛けたB組チームの作戦はこうだった。
A組チームには本気を出させたら太刀打ちできなくなってしまうひなたと上鳴がいるため、二人に準備をさせないために速攻で勝負を決めに行く事にしたのだ。
だがA組チームにはエコーロケーションで索敵ができるひなたがおり普通に奇襲を仕掛けてもすぐにバレてしまうため、A組チームが最も警戒するであろう塩崎を囮にしつつ、口田が超音波を使う虫を大量に操ってひなたの耳をごまかし、宍田が気配を消しながら匂いで4人を探って奇襲を仕掛ける、という段取りだった。
宍田は、A組チームの背後から『ガオンレイジ』を放とうとする。
だがその瞬間だった。
「無差別放電130万ボルト!!」
宍田がひなたを掴もうとしたその瞬間、上鳴が電撃を放った。
すると、奇襲を仕掛けようとした三人が痺れて動けなくなる。
一方でひなたは、網状にした捕縛武器で蛙吹と切島を覆って電撃から守っていた。
「ぐぉお…!」
「『
三人が上鳴の電撃で痺れると、ひなたはその一瞬の隙に三人に爆音を浴びせた。
ひなたのけたたましい『声』を聞いた三人は、“個性”を麻痺させられ意識を失った。
「は、反則……だろ…!」
ひなたの声を浴びた円場は、意識を失う寸前にひなたと目が合い、悔しそうにぼやいた。
A組チームに対して行うはずだった奇襲作戦は、まず口田が広範囲の索敵を行ってA組チームの場所を特定し、宍田が『ガオンレイジ』でひなたを掴んで遠くへ投げ飛ばし、円場が空気の檻にひなたを閉じ込めるというものだった。
B組チームの作戦の要となるのは、円場だった。
円場は、“個性”訓練を重ねた事により、より硬くて厚い空気の檻を何重にも生み出せるようになっており、一度閉じ込められてしまえばひなたといえど脱出は容易ではなかった。
まずは何重にも重ねて強化した檻でひなたを完封してから他の三人を倒し、ひなたが十分に消耗したところを宍田がガオンレイジで塩崎のところへ放り込んで完封するという理に適った戦法だった。
だが予想外だったのは、それすらもひなたに想定されていた事だった。
円場の“個性”のパワーアップを警戒していたひなたは、円場に何かをさせる前に“個性”を消して完封し、円場ありきの作戦を完全に潰してしまったのだ。
「梅雨ちゃん、二人をお願い。あと電吉、一応梅雨ちゃんについてってあげて。僕達もすぐ行くから」
「ケロ!」
「お、おう!」
ひなたが指示を出すと、蛙吹と上鳴は、気絶した円場と口田の二人を先に激カワプリズンに運んだ。
ひなたと切島は、残った宍田を運ぼうとする。
だが…
「ぐ、ぅう……まだ、ですぞ……!」
宍田は、ひなたの爆音を喰らってもなお意識を失う事なく耐え凌いでいた。
虎の『我ーズブーストキャンプ』のおかげで体力を底上げされていた宍田は、“個性”を抜きにしてもあらゆる攻撃への耐久力を極限まで引き延ばす事に成功していた。
『
だが、『
「流石だね」
ひなたは、“個性”を失ってもなお理性を吹っ飛ばして一矢報いようとしてくる宍田に対し、格闘術で対応しようとする。
だがその時、切島が前に出て全身を硬化させる。
「俺に任せろ!」
インターン直後。
切島は、一緒にインターンに行ったひなたと一緒に戦闘訓練がてら反省会をしていた。
『『
『うーん…ねえ鋭ちゃん、『
切島は、ひなたのアドバイスを受けて習得した技を発動する。
宍田が拳を振りかぶってくると、切島はそれを避け宍田の懐に入り込むと、右腕だけを最大硬度まで引き上げる。
「『
「ごぼぁ!!」
切島は、宍田の腹に容赦なく重い一撃を叩き込んだ。
すると宍田は、踏ん張りがきかずに胃液をぶちまけながら吹っ飛ばされる。
「
切島がファットガムの受け売りを言うと、宍田はとうとう白目を剥いて意識を手放した。
するとひなたは、すかさず宍田を捕縛武器で拘束した。
「これであと二人か…」
「だね。このままスマートに攻めていきましょ」
宍田を倒した二人は、そのまま宍田を激カワプリズンに運んでいった。
◇◇◇
試合開始前、ひなたは相手が取ってくる作戦を予測して言った。
「んー…まあ囮だろうね」
「何でそんな事わかんの?」
「だって、僕らはいばっちゃんが厄介だって思ってるって向こうは思ってるわけでしょ? 実際その通りだしさ。相手の作戦は多分こう。いばっちゃんを囮にして、パワーとスピードに優れた獣くんと鉄壁防御の硬くんの二人が奇襲を仕掛ける。僕らは、逆にそれを利用してやればいい。まんまと誘き寄せられたフリをして、奇襲班を返り討ちにする」
「じゃあ、一旦塩崎は放置って事か?」
「うん。硬くんと獣くんを放置するのはシンプルに危険だもの。向こうには索敵ができる甲ちゃんもいるしさ。一応、プランの確認ね。もし向こうが全員で真っ先に僕を潰しに来たら、まずは僕がブッパでできるだけ戦力削るから皆はそれを合図に集中砲火。二手以上に分かれてきたら、まずは今言った二人を最優先に潰して檻にぶち込む。てな感じでどうですか」
ひなたは、割と自信満々に自分のプランを話した。
すると、ひなたのプランを聞いていた蛙吹が口を開く。
「ひなたちゃん。私、思った事を何でも言っちゃうの。ひなたちゃんって…たまにえげつない事考えるわよね」
「失敬な! 戦力差に基づいた合理的な戦法って言ってよね!」
蛙吹がひなたの考えに意見すると、ひなたは両手で拳を作りながら反論した。
すると切島がひなたに尋ねる。
「けどよ、その後どうするよ?」
「んー…そこなんですよねぇ。初見殺しの技とかあったら詰んじゃうし。やっぱり全員で一斉突撃っていうのは危険だよねぇ」
「なあ、俺かひなちゃんが一人で行ってテキトーにブッパすりゃ良くね?」
「一人になった後どうするか考えてっか?」
「う…!」
「あはは…」
上鳴の発言に切島がツッコミを入れると、ひなたが苦笑いを浮かべる。
すると蛙吹がステージを全体的に見渡し、手を挙げて言った。
「それについてなんだけど、私に考えがあるの。いいかしら」
蛙吹は、塩崎対策の作戦をチームメイトに話した。
その作戦を聞いたひなたは、少し顔を引き攣らせる。
「……梅雨ちゃんもなかなかえげつない事考えるね」
「ケロケロ、褒め言葉と受け取っておくわ」
◇◇◇
そして現在、試合の様子を映したモニターの前では。
A組とB組のチームの顔写真が表示されていたモニターの画面が切り替わり、閉じ込められた三人の顔にバツ印がつけられて残りの人数が4対2になる。
『な…何ィ!!? 俺の可愛い教え子達が、僅か1分で三人ダウン!! B組チーム、もう後がないぞ! 頑張れ塩崎、鱗━━━!! 相澤ひなた率いるA組チームを打ち砕くのだ!!』
「「偏向実況やめろー!」」
ブラドキングがB組に寄った実況をすると、青山・芦戸・耳郎がプラカードを掲げながら訴える。
物間は、悔しそうに顔を引き攣らせていた。
「くっ……少しは動ける奴がいるじゃないかA組…」
そして他のB組も、ひなた達のチームのファインプレーに驚いていた。
「先手打つはずが逆に先手取られただと!?」
「嘘だろ!? 宍田があんな簡単に…」
「相澤ってさ…ヒーローっていうかアサシンだよな」
B組チームの中には、ひなたの鬼畜っぷりに恐怖する者すらおり、内心『1回戦目じゃなくて良かった』と思っている者もいた。
一方、映像を見ていた峰田はというと。
「流石A組のSM嬢相澤…! 鞭遣いがエロいぜ!」
「峰田、お前いい加減にしとけよ」
峰田がひなたの捕縛武器を見てSM嬢を連想していると、自分の彼女をいやらしい目で見ている峰田に不快感を抱いた心操が珍しく低い声で脅す。
「A組相澤が強いな…! “個性”消せるってのは厄介だ」
B組の泡瀬が言うと、心操が口を挟む。
「少し違うな。ひなたは、相手の“個性”を消せるから強いんじゃない。敵も味方もちゃんとよく見て、先を読んでるから強いんだ。『あいつはああいう奴だからこう動く』、そういうの考えんのが得意なんだよあいつは」
「ケッ、惚気やがって…爪割れろ」
心操が画面を見ながら言うと、峰田が嫉妬をぶつけた。
7年間相澤の背中を見て育ったひなたは、トラブルによる遅れをものともしていなかった。
最高のヒーローに一歩でも近づく為、常に分析と予測を繰り返して自分をアップデートし続けていた。
緑谷は、どこからか取り出したノートにひなたの戦い方をメモしていた。
「相手をよく見て、行動を予測…相澤さん、インターンで学んだ事を早速実践してるのか…! 僕も見習わなくちゃ!」
◇◇◇
そしてその頃、合流した鱗と塩崎はというと。
「私を囮に奇襲…!? その上失敗して投獄…!? ああなんて罪深き所業でしょう鞭で打たねば」
「言ってる場合か! 俺か塩崎どっちかでも捕まっちまえば負けちまうぞ!」
自分を囮に奇襲を仕掛けた事、そしてそれが失敗して三人とも投獄されてしまった事を知った塩崎が口に手を当てて物騒な事を口走っていると、鱗がツッコミを入れる。
鱗は、物陰に隠れてA組の陣地の方角を見た。
ひなたは、B組陣地で作戦会議をしている二人を静かに見据えていた。
鱗は、こちらを睨んでくるひなたの殺気に気付いて冷や汗を流した。
(こんだけ距離が離れてても、ああやって睨んでるだけでこっちは手出しできねえ…! バケモンが…!!)
「相澤が厄介すぎる!! 桁違いの火力と射程距離、おまけにあいつ一人でほぼ全部の役割をカバーできちまう! この状況で勝つ為には、あいつをどうにかするしか…!」
鱗は、この絶体絶命の状況に頭を抱えていた。
一撃必殺の“個性”を持っている上に単純な戦闘力が頭ひとつ抜けており、戦局に応じて指揮官にも偵察員にも狙撃手にも戦闘員にもなれるオールマイティーさは、敵に回したら厄介以外の何者でもなかった。
強いていうなら“個性”発動までのタイムラグが弱点だが、それもこの距離では分かっていても突きようがない弱点だった。
鱗が頭を悩ませていると、塩崎は頭の蔓を操りながら言った。
「裏を返せば、相澤さんさえ捕らえてしまえば勝ったも同然…そうでしょう?」
塩崎は、蔓を伸ばして結界を張った。
塩崎の言う通り、ひなたさえ捕らえてしまえばあとは塩崎の“個性”で対応できるメンバーしかいないため、逆転勝利は十分可能だった。
「教えてあげなくては。謀は穢れに通ずると」
ヴァイン
本名 塩崎茨
“個性”『ツル』
頭髪のツルは伸縮自在!!
切り離す事もできる!
水と日光さえしっかり摂っていればすぐに生えてくる!
つまりハゲない!!
「我が真名『ヴァイン』の名に於いて、謀る者に裁きを。『ヴィアドロローサ』」
塩崎は、蔓を伸ばして索敵を行った。
索敵と防御の精度を上げるため、自陣内にある貯水槽へ蔓を伸ばし、貯水槽に蔓を侵入させて水を吸収し、さらには圧縮訓練の時から常備している肥料を頭に被って蔓を成長させた。
するとその直後、塩崎が結界内に侵入を確認する。
「4人捕獲。引きずり出します!」
塩崎は、即座に侵入してきた4つの影を捕らえた。
「『
塩崎は、捕らえた4つの影を雁字搦めにし、上鳴の電流とひなたの爆音対策に盾を張る。
そして、捕らえた4つの影を奥から引きずり出す。
だがその時、塩崎は4つの影のうち3つには封じた手応えがない事に気がつく。
そして蔓の繭から『バキ』『ゴキ』と金属がひしゃげるような音が聞こえる。
塩崎が引きずり出したのは、鉄クズで作られたカカシだった。
顔にあたる部分にはへのへのもへじが描かれ、胴体には『ハズレ』と書かれていた。
「何!?」
A組のメンバーだと思って捕らえた4つの影のうち3つは偽物で、二人とも目を見開いて驚いていた。
ひなたが捕縛武器を使って3体のカカシを操っていた。
蔓で絡め取られたひなたは、スゥっと息を吸い込む。
「『
ひなたは、“個性”を発動して耳を劈く叫び声を上げた。
すると空気がビリビリと振動し、ひなたを拘束していた蔓は消し飛んでいく。
「ぐぁ…!!」
「くっ…!」
鱗と塩崎は、咄嗟に耳を塞いで爆音に耐えた。
塩崎が咄嗟に蔓で自分達を守ったお陰でダメージは最小限で済んだが、結界を張る為に伸ばした蔓は大方消し飛んでしまった。
「卑怯な手を…! もう一度結界を張り直します!」
「させないわ」
塩崎が消し飛んでしまった結界を張り直そうとするが、どこからか打撃が飛んできて意識を刈り取られた。
塩崎の背後には、保護色で背景と同化した蛙吹が潜んでおり、蛙吹は意識を刈り取った塩崎を舌で拘束した。
蔓の結界が爆音攻撃によって消し飛んだので、その隙に保護色で身を隠しつつ回り込んで距離を詰めていたのだ。
「塩崎!!」
鱗は、捕まった塩崎を取り返そうと、鱗を飛ばす。
本名 鱗飛竜
“個性”『鱗』
身体中に硬質の鱗を生成!
飛ばせる!
鎧にもなる!
「『
鱗が鱗を飛ばすと、切島が前に出て鱗を全てガードすると、距離を詰めて鱗に右ストレートを放つ。
だが鱗も黙ってやられはせず、鱗で自分をガードして応戦した。
すると切島は、上鳴に合図を送る。
「今だチャージズマ!!」
「オッケー! 行くぜ全力全開!! 『ターゲットエレクト』!!」
切島が合図を送ると、上鳴はありったけの電気を放電した。
すると電気は鱗にだけ流れていき、鱗は上鳴の全開の電気を全て浴びてしまう。
「がぁああああっ!!?」
大量の電流を浴びた鱗は、そのまま意識を手放した。
鱗のコスチュームには、上鳴のポインターがついていた。
切島が攻撃を仕掛けた際、どさくさに紛れて鱗の服にポインターをつけていたのだ。
上鳴が鱗を倒すと、ひなたが捕縛武器で鱗を拘束する。
その後、倒した二人を激カワ据置プリズンに投獄して試合終了となった。
◇◇◇
試合開始前。
蛙吹は、自分の考えた作戦をひなた達に話した。
「思ったのだけれど、茨ちゃんの索敵って、触覚や気配を頼りにしているのよね。なら、相手の『数』と『大体の大きさ』くらいしかわからないと思うの。例えば…そこら辺に落ちてるドラム缶やパイプを組み合わせれば、それっぽくなると思わない?」
「確かに! それを僕が捕縛武器で操れば…うん! 完璧だ!」
蛙吹がドラム缶と鉄パイプを拾いながら言うと、ひなたが掌をポンと打つ。
◇◇◇
そしてB組チーム3人を投獄し、残った2人を罠に嵌める為の下準備を終えた後。
ひなたは、切島、上鳴、蛙吹に声をかけた。
「じゃ、皆! 作戦通りに!」
「おう!」
「っしゃ!」
「ケロ!」
ひなたが合図を送ると、蛙吹は左方向に、切島と上鳴は右方向に走り出した。
「向こうが一番警戒しているであろう僕が囮になって、その隙に皆が強引に敵地に侵入して近接格闘に持ち込む。自分の考えた作戦パクられた上に、それで完敗するのってメチャクチャ悔しいからね」
ひなたは、不敵な笑みを浮かべながら得意げに話した。
仮免試験以降、憑き物が落ちたひなたは、どこか吹っ切れた様子だった。
◇◇◇
そして現在。
B組チームを全滅させ、ひなたは無邪気な笑みを浮かべながら他の三人とハイタッチをした。
ひなたを軸にしつつも、全員の長所を活かして強引に短期決戦に持ち込んだ、完璧な勝利だった。
『第一セット、ぐぬぬぬぬA組チームの勝━━━━━利!!』
ブラドキングの声と共に、たったの3分足らずで第一試合は幕を閉じた。
A組チームは、一人も脱落者を出さずに勝利を飾ったのだった。
第一試合から第四試合の爆豪チーム並みの立ち回りをしたひーちゃんチーム優秀すぎw
試合表
第一試合
試合時間 2分57秒
◯ 相澤・蛙吹・上鳴・切島 5ー0 口田・塩崎・宍田・円場・鱗 ×
第二試合
青山・常闇・葉隠・八百万 vs 黒色・拳藤・小森・吹出
第三試合
飯田・尾白・障子・轟 vs 回原・角取・鉄哲・骨抜
第四試合
砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪 vs 泡瀬・鎌切・取蔭・凡戸
第五試合
芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田 vs 小大・庄田・物間・柳
本作捏造技紹介
『
切島の本作オリジナル技。
『
身体の一部分に硬化を集中させる分防御力は下がるが、機動力を落とさず攻撃力を上げる事ができるという利点がある。