抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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10が14件9が51件…だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思って頂けましたら是非ともお気に入り登録、高評価(特に9、10あたり)よろしくお願いします。


第3試合

 そして休憩時間が終わり、他の生徒達の方はというと。

 

「えーではステージをちょっと移動させまして、次行くぞ! 第三セット、準備を!!」

 

 ブラドキングが言うと、A組チームとB組チームはそれぞれ持ち場に向かう。

 すると、リカバリーガールに薬を貰って回復した常闇が轟に声をかける。

 

「轟」

 

「ん」

 

 常闇が声をかけると、轟が返事をした。

 すると常闇が話し始める。

 

「轟。俺はお前の力を信じている。お前の役目を果たせ」

 

「何で俺に」

 

「ホークス、エンデヴァー。我々先の戦いの英雄に師事を仰ぐ者故に、No.1・No.2の名を背負う責務」

 

「…ああ」

 

 轟はエンデヴァーが重傷を負ったハイエンド事件を思い出し、それと同時にエンデヴァーに言われた事を思い出していた。

 すると飯田が轟に声をかける。

 

「轟くん!?」

 

 飯田の声に気が付いた轟は、ハッとして目を見開く。

 

「大丈夫かい!? 随分と怪訝な顔だが!!」

 

「そうか?」

 

「うん! 何か悩みでも!?」

 

「何でもねぇ。ありがとな」

 

 飯田が心配してくれていたので、轟は礼を言った。

 二人のやり取りを見て、尾白が呟く。

 

「轟そんなに表情変わらないからわかんなかったな」

 

「委員長たる者クラスの皆を見て悩む者には手を差し伸べるんだ」

 

「いやにハイだな。いつもだが」

 

 飯田が張り切っていると、障子が声をかけてきた。

 すると飯田が嬉しそうに答える。

 

「最近兄さんの経過が良好でね!!」

 

「おお! 良かった!」

 

「俺もまた兄さんの名を背負う者。皆を見るという事は、皆からも見られているという事。あまり活躍は出来なかったが俺も体育祭5位! 皆にも見せてやろう、継ぐ男の気概を!!」

 

 飯田はヘルメットを被ってさらに気合を入れた。

 

『それでは第三セット、スタート!!』

 

 ブラドキングの叫び声と共に第三セットが始まった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 B組が陣地に行って準備を進める中、鉄哲が急に語り出す。

 

「俺ァよ…よく馬鹿正直扱いされるわけだが、腐っても雄英合格した男。考えなしに生きてるわけじゃアねェのよ」

 

「急にどうした」

 

 鉄哲が言うと、回原がツッコミを入れる。

 

「このチーム!! 索敵搦め手からっきしな奴ばかり」

 

「確かになー」

 

 鉄哲が言うと、骨抜が納得する。

 鉄哲の言う通り、今回のB組チームはひなたのような索敵能力持ちや搦め手での戦略が得意なメンバーがいないため、その分慎重に立ち回らなければならなかった。

 このメンバーの中では最も頭の切れる骨抜も、それは理解していた。

 すると鉄哲が話し始める。

 

「ならどうする!? オイ!! 皆!!」

 

「そこはさっき話「なら当然!!」え?」

 

 

 

 ドゴォ ドカッ バキッ

 

「更地にするよなァ!!?」

 

「バカの考え!!」

 

 鉄哲が周りの鉄パイプを壊しながら直進すると、回原がツッコむ。

 すると、轟達が暴れ回る鉄哲に気がつく。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、モニターでそれを見ていたブラドキングはあんぐりと口を開けた。

 

「さっきの反省聞いとらんかったんか」

 

 そしてひなたも、苦笑いを浮かべながら鉄哲のやり方にツッコミを入れる。

 

「うーん…別にそこまで悪い手ではないんだけどな。向こうにめぞりんがいる時点でいくら小細工しようと筒抜けだし、こういう場合はわざと目立っちゃった方がいい事もある。ただ、二次被害は考えなあかんでてっちゃん」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 鉄哲は、鉄パイプを壊しながら突進して叫び散らす。

 

「小細工無用! 来いや死ようぜ真っ向勝負!!」

 

 

 

 リアルスティール

 本名 鉄哲徹鐡

 “個性”『スティール』

 身体が鋼のようになる! 

 最強の矛にも最強の盾にもなる! 

 

 

 

「もう! 向こうは轟いるんだぞ!!」

 

 鉄哲が大暴れしていると、メンバーの中で最も常識人な回原が注意をする。

 

「まァこれはこれでやれる事あるんじゃね」

 

「柔軟な思考かよ柔造!!」

 

 鉄哲の無茶に対して骨抜が柔軟に対応すると、回原がツッコミを入れる。

 すると角取が鉄哲に英語で注意をする。

 

Geez(もう!)! Don't keep us in the dark like that(闇雲な事しないで下さい!)!」

 

「ほらポニーも英語出ちゃってる!! 本怒り!」

 

Tetsutetsu doesn't mean any harm.(鉄哲もあながち間違っちゃいない) In fact, his approach plays to our strength.(彼のやってる事は俺達の強みになると思うよ)

 

「柔軟な応対かよ柔造!!」

 

 角取の怒りに対しても骨抜が柔軟に英語で対応すると、回原が再びツッコむ。

 その頃、鉄哲を見つけた轟達は鉄哲の方へ向かっていた。

 

「向こうの意図は恐らく正面戦闘」

 

「やるぞA組チーム3!!」

 

「そろそろ着くぞ。手筈通りに! 広がるよ」

 

 尾白が指示を出し、A組チーム4人は広がった陣形を取った。

 そしてその頃、鉄哲は高笑いしながら破壊を繰り返していた。

 すると角取が鉄哲にツッコミを入れる。

 

「鉄哲くん! 相手が馬鹿ショージキに来テくれるハズナイデショ! トラップと思ウヨ!!」

 

「いや! 俺が向こうなら行くね! 障子で状況把握、轟を軸に攻めるのが一番強い。一塊でこんな開けたとこいたら……」

 

 骨抜が言いかけたその時、突然B組チームへ高温の渦状の風が吹き付ける。

 それによって、B組チームは高熱に晒される。

 

「あっちいいいいい!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、それを見ていたひなた達はというと。

 

「熱風か。てっきり氷結で動きを封じるものだと思ってたけど」

 

「ん、向こうには柔ちゃんがいるからね。氷結だと却って向こうに有利なフィールド与えちゃうから、まずは熱で動けなくした方が合理的だと思うよ」

 

「しかも体育祭の時みたいに周り巻き込む暴風じゃないよ。改善しとる」

 

 心操が言うと、ひなたも腕を組んで頷き、麗日も轟の戦い方に感心していた。

 エンデヴァーに炎を使った戦い方を教わるまでは氷結で動きを封じる癖がついていた轟だったが、それだけだと勝てない相手がごまんといる事を知ってからは相手によって手を変える器用さを身につけていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「向こうは骨抜いるからな。熱で牽制しといた」

 

「でかした轟くん、あとは俺に任せろ!」

 

 轟が『膨冷熱波』でB組の陣形を崩すと、飯田が全速力で突撃しB組チームを一網打尽にしようとする。

 だがその時、飯田目掛けて柔らかくなった配管が襲いかかる。

 

「くっ…!?」

 

 配管が飯田の死角から迫ってくると、飯田は空中でエンジンを吹かして咄嗟に軌道を修正し、襲いかかってきた配管を回避した。

 

「あっぶねー、いきなり熱風で来られたもんだから打つ手無かったよ。ついこの前まではさ」

 

 骨抜は、轟が『膨冷熱波』を放った瞬間に『柔化』で地面に穴を掘りつつ防波堤を作り、自陣への被害を最小限に抑えていた。

 骨抜は、“個性”伸ばしの訓練により柔化できる範囲を広げただけではなく、ある程度なら柔化したものの形状を瞬時に変化させる事が可能になっていた。

 

 

 

 

 マッドマン

 本名 骨抜柔造

 “個性”『柔化』

 触れたものを柔らかくしてしまう! 

 生物には効果なし! 

 もう一度触れると解除! 

 “個性”伸ばしの訓練により、柔化中のものの形状を自在に変化させられるようになったぞ! 

 

 

 

「来いやぁ!!」

 

「サンキュー柔造、反撃が柔軟だぜ!!」

 

 鉄哲は、攻撃を仕掛けてきたA組チームを迎撃する姿勢を取った。

 即興で逃げ道を作りつつ防波堤を作った骨抜に対し回原が礼を言うと、骨抜がサムズアップをする。

 すると、尾白が立っていた配管が柔らかくなり尾白はバランスを崩す。

 

「うわっ!!」

 

「近辺適当に柔くしといたから足場信頼しない方がいいぜ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 戦いをモニターで見ていた砂藤は、骨抜の柔軟さに思わず舌を巻く。

 

「即興だよな……!? 読みが良いのか骨抜の奴、柔軟さは伊達じゃねぇ」

 

「柔化したものを操れるようになったのか」

 

「“個性”の応用さ。発想が柔軟な分、即興の新技もすぐに使せるんだ」

 

 砂藤が骨抜の立ち回りに驚き、心操も骨抜の“個性”の伸びに驚いていると、泡瀬が骨抜の必殺技の説明をした。

 そして、隣で見ていたひなたも目を見開く。

 

「やるなぁ柔ちゃん。流石焦ちゃんと同じ推薦入学者」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方体勢を崩した尾白の方へは、両腕をドリルのように高速回転させた回原が突っ込む。

 

「尾白は俺が相手する!!」

 

 

 

 スパイラル

 本名 回原旋

 “個性”『旋回』

 身体中どこでもドリルのように回転するぞ! 

 “個性”伸ばしの訓練により、回転数と回転速度が向上! 

 

 

 

「んのっ…!」

 

 尾白は、回原のドリルパンチを尾で受けた。

 尾に防刃カバーをつけていたおかげでダメージを受けずに済んだが、そのまま押されてしまう。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 それを見ていたひなたは、思わず左目を瞑る。

 

「うわ、アレカバーつけてなかったら抉られてたよ。旋ちゃん強いなぁ」

 

 地味に強い回原を見て、ひなたは回原の事をA組で言うところの尾白的なポジションだと考えていた。

 尾白と回原が普通に戦っているのを見て、ひなたはピンと触角を立てる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「尾白く、んっ」

 

 尾白に加勢しに行こうとする飯田だったが、足場の配管を柔らかくされバランスを崩し、さらに配管を操られて地面へと叩き落とされる。

 そして、そのまま柔らかくなった地面に沈み込んでしまい、柔らかくなった地面を操られて首から下を固められてしまう。

 

「踏みしめる土台があってこその脚力。あんたはとても面倒だ。沈めて固めて放っとく」

 

「俺達の連携を断つ気か…!! おのれ(ヴィラン)、狡猾なり!!」

 

 骨抜が言うと、飯田は完全に設定に入り込んで骨抜を(ヴィラン)呼ばわりした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 設定に入り込む飯田に対し、モニターで見ていた心操がツッコミを入れる。

 

「あいついつも設定に入り込むよね」

 

「飯田くん真面目やもんね」

 

「天ちゃん、設定に入りすぎるのもいい加減にしなさいとあれほど…」

 

 心操が言うと、麗日も頷く。

 ひなたは、毎度毎度設定に入り込みすぎる飯田を見て呆れ返っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、今度は轟と障子目掛けて角が飛んでくる。

 轟は氷で角を防ぐが、障子は角で両肩を掴まれる。

 

「障子!」

 

「ぐっ!!」

 

「捜索役の障子クンは安全圏にいるとノケンカーイです。そう! 例えば轟クンのバックとカネ!」

 

 角を飛ばしてきたのは、B組チームの角取だった。

 

 

 

 ロケッティ

 本名 角取ポニー

 “個性”『角砲(ホーンホウ)

 角を飛ばせマース!! 

 現在飛ばした角を6本までなら操作できマース! 

 角質のケアが欠かせません! 

 

 

 

「!」

 

 角に押された障子の方を轟が振り向いた、次の瞬間だった。

 

「角ダッシュハンマー!!!」

 

 突然、両脇に角取の角を挟んだ鉄哲が轟の方へ突っ込んできて轟の右腕と顔面を鷲掴みにした。

 轟は咄嗟に氷結で抵抗するが、身体を鉄に変えていた鉄哲にはまるで効かなかった。

 

「てめェよォオ、冷てェんだよなァオイ氷がよォォ、てつてつがきんきんだよ轟ィ!!! ステゴロでてめェよォなァ!? 俺に勝てるかァ!!?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 不意打ちで自身の得意分野に持ち込んだ鉄哲に対し、切島が感心していた。

 

「さすが鉄哲だ! あっという間に得意分野に持ち込みやがった!」

 

「いや、考えてないっしょそこまで。骨抜が流れ作ったよ」

 

 切島が言うと、上鳴がツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 尾白は回原に押され、轟と障子は鉄哲と角取に配管へと叩きつけられる。

 そして飯田は、骨抜が柔化を解除した地面で首から下をガチガチに固められていた。

 

「おのれェェ!!!」

 

「悪いね。レシプロって時限だろ? 開幕使用は良くなくね? じゃ、俺鉄哲の加勢行くから」

 

「時限? いつの話だマッドマン!」

 

「!?」

 

「インゲニウムはいつでもどこへでも駆けつける! その為の脚!! 俺はもう! ずっと! フルスロットルだ!!」

 

 飯田は、エンジンで爆発的な加速を生み出し削岩機のように地面を削りながら進んだ。

 

「新技『レシプロターボ』!!」

 

「マジか」

 

 まさか飯田がまだエンジンを使えるとは思わなかった骨抜は、僅かに目を見開く。

 実は飯田は、夏休み中に兄の天晴に飯田家で代々受け継がれてきた訓練法を教わっていた。

 飯田は、脹脛のマフラーを引き抜きエンジンの“チューニング”をして訓練を行う事で、負荷に耐えられるマフラーを新たに生やす事に成功していたのだ。

 

「レシプロの馬力を底上げし尚且つ掛かる燃費は最小限に!! 15分だ!! 15分! 誰も俺を止められない!!」

 

 飯田は、超加速で地面から抜け出すとそのまま骨抜の背後を取った。

 

「結局新技で初見殺しかよ!」

 

「君の“個性”は、地上だと凶悪極まりない。だから!」

 

「ぐぁ…!!」

 

 飯田は、目に留まらぬ速さで骨抜の背中を蹴り上げ、そのまま骨抜を空中へ蹴り上げた。

 そのまま飯田も空中へ飛び上がると、これ以上柔化で対応されないよう両腕を掴む。

 

「空中で畳みかける! お縄だマッドマン!!」

 

「がはっ……!!」

 

 飯田は、目に留まらぬスピードで畳み掛け、骨抜を気絶させにかかった。

 飯田は、空中で骨抜の頭に蹴りを叩き込む。

 

「クソッ…そんなのアリかよ…」

 

 飯田の蹴りを喰らった骨抜は、そのまま意識を手放し、“個性”も解除される。

 飯田は、骨抜を抱えたまま他の仲間のもとへ全力疾走した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方それを見ていた緑谷は、グラントリノより速く動き回る飯田に目を見開いていた。

 

「レシプロターボ…! グラントリノより断然速い」

 

「うわー…あの速さで蹴り喰らったらひとたまりもないね。柔ちゃん大丈夫かな」

 

 緑谷とひなたが驚いていると、峰田が横から口を挟む。

 

「お前らが蹴り技使ったり空飛んだりし出したから飯田頑張ってアイデンティティ取り戻したんだぞ」

 

「また蹴り教えてもらわなきゃ」

 

「それより見て!! 尾白が!」

 

 緑谷と峰田が話していると、芦戸がモニターを指差す。

 モニターに映っていた尾白は、劣勢でボロボロになりつつも頑張って回原の攻撃をうまくいなして戦っていた。

 

「普通に戦ってる!!」

 

「普通に押され気味だが尾白だって今までの尾白じゃねえ、ガンバレ!」

 

「お前ら普通普通言い過ぎじゃね?」

 

 A組は、回原と必死に戦っている尾白に対してかなり失礼な声援を送っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 A組が普通普通と連呼すると、モニター越しに心に響いたのか尾白は涙目になっていた。

 

「ぐ」

 

(何だこの胸の痛み)

 

「何だこの程度かァ!?」

 

 尾白が回原の攻撃をいなしていると、回原が尾白を挑発してくる。

 回原が両手を高速回転させながらラッシュを放ってくると、尾白はそれをいなして距離を詰める。

 最初は回原のペースに飲まれていた尾白だったが、攻撃を躱しているうちに目が慣れ、回原の動きを捕えられるようになっていた。

 尾白は、回原の回転する拳を軽く蹴って飛び上がると、回原の目の前で尾を振るう。

 予想外の動きに、回原は反応が遅れる。

 

「な…」

 

「『尾突』!!」

 

「ぐぁ!!」

 

 尾白は、完全に無防備となった回原の腹に尾で突きを放った。

 仮免取得後に習得した技で、尾のバネを生かし突きで局所的に渾身のパワーを込める技だった。

 尾白の攻撃を喰らった回原は、そのまま吹っ飛ばされて後ろの配管に叩きつけられる。

 

「俺だって、黙ってやられてるだけじゃないぞ!」

 

 尾白は、先程の回原の挑発に応えるかのように構えの姿勢を取る。

 すると回原は、崩れた配管を押し除けて起き上がる。

 

「やるじゃねえか、テイルマン! だったらこっちも出し惜しみはナシだ!」

 

 回原は、両脚を高速回転させて飛び上がると、空中で全身を高速回転させながら尾白に急接近する。

 一瞬にして尾白との距離を殺すと、身体の回転を生かして右脚で踵落としを放つ。

 

「『スパイラル・サイクロン』!!」

 

 回原が高速回転させた右脚に全体重を乗せて右脚を振り下ろすと、尾白は咄嗟に左腕でガードする。

 だが左腕の防具はいとも簡単に砕け、ミシッと左腕から嫌な音が響く。

 

「ぐ…!!」

 

 尾白が腕の痛みに顔を歪めると、回原はその隙に畳み掛けようとする。

 

「そらよっ───」

 

 だがその時、回原の背後に飯田が現れ回原を掴んだ。

 

「っ!?」

 

「飯田!!」

 

「スパイラルとマッドマンを牢に入れる!! しばし離脱するがすぐ戻る! 尾白くんは轟くんの加勢に!! すぐ戻る!!」

 

「わかった!」

 

 飯田が早口で尾白に指示を出すと、尾白は轟の元へ向かった。

 一方、飯田に捕まった回原は全身を回転させて暴れていた。

 

「離せ、まだ暴れ足りないんだよ!」

 

「痛たたたええい、大人しくしたまえ! (ヴィラン)に暴れさせてたまるか!」

 

 回原が暴れると、飯田は痛みに顔を歪めつつも完全に設定に入り込んで回原を(ヴィラン)呼ばわりした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして二分程前。

 轟は鉄哲と交戦していた。

 

「んのヤロウ…!」

 

「“俺拳”!!」

 

 轟が氷の形状を変化させて鉄哲に攻撃を仕掛けるが、鉄哲はいとも容易く轟の氷を拳で砕く。

 すると轟は、熱気と冷気を同時に放って蒸気を上げ、鉄哲の目を眩ませる。

 

「のわ!?」

 

 轟は、鉄哲が怯んだ隙に、今度は空気の膨張による衝撃波で攻撃を仕掛ける。

 衝撃波を喰らった鉄哲が一瞬よろめき、轟はその隙に鋭い氷の槍で攻撃を仕掛ける。

 だが鉄哲は、轟が出した氷の槍を鉄の身体で粉々に砕いた。

 

「ぬぅん!!」

 

 鉄哲は、そのまま轟に向かって拳を振りかぶる。

 轟は、氷の硬度を限界まで引き上げて盾を作ったが、鉄哲はいとも簡単に氷の盾ごと轟を殴り飛ばした。

 

「ぐ…!」

 

「そんな小細工が俺に通用するかァ!!」

 

 轟が態勢を立て直そうとすると、鉄哲が高笑いしてみせた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、それを見ていた砂藤と切島は舌を巻いていた。

 

「硬質化のお陰で多少凍ってようが平気で動きやがる」

 

「鉄哲…!! 参考にするぜ…!」

 

「轟ってあんな器用な事まで出来んのね。そういうイメージ無かったけど」

 

「僕が時間ある時に教えたからねぇ」

 

 取蔭が言うと、ひなたが答える。

 B組チームの一部の生徒は、轟の手数の多さに驚いている様子だった。

 ひなたが時間のある時に熱と冷気を使った応用技を教えており、轟は、熱気と冷気で霧や衝撃波を生み出す、衝撃波で身体を押し出して加速する、光の屈折率を変える、氷の温度を調節する事で硬度を変化させるといった応用技が使えるようになっていた。

 応用技そのものの攻撃力は高くないが、単純な範囲攻撃だけでは通用しない相手に対しても選局を有利に運ぶという意味では、どれも戦闘向きの技だった。

 一方で瀬呂は、鉄哲の硬度が以前より上がっている事に疑問を抱く。

 

「にしても、鉄哲の奴前より硬くなってね? あれも“個性”訓練の一環?」

 

「うーん…多分熱処理したんじゃないかなぁ」

 

「え?」

 

「ほら、金属を加工する時って、焼入れと焼戻しで硬度と靱性を上げるでしょ? てっちゃんも多分同じ方法で修行したんだと思うよ」

 

 ひなたは、鉄哲の修行方法について推測を話した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「氷の防御なんぞ正義の鉄拳でブチ破る!!」

 

「なら…炎の壁で!!」

 

 鉄哲が再び鉄の拳を振りかぶると、轟は大量の炎を放出した。

 すると、炎に巻き込まれそうになった角取が飛び出してくる。

 

「Ouch!」

 

「角取頼む」

 

「オウ」

 

 轟は、角取の相手を障子に頼んだ。

 轟はそのまま鉄哲を退けようとする。

 だが…

 

 

 

「なんで俺がてめェの相手かしてっか!! わかってねェなァア!?」

 

 炎の中から鉄哲の声が聞こえてくる。

 炎に映る人影は、倒れる事なくその場に立っていた。

 

「効かねェからだよ。今度ァてつてつがチンチンだよオイ…!!」

 

 炎の中から、熱で真っ赤になった鉄哲が現れた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「熱で赤く…!」

 

「ファイトねチンテツ!!」

 

「“個性”伸ばしの一環よ!! てめェ竃で暮らした事あるか!?」

 

 鉄哲が全身を真っ赤にしながら現れると、轟が驚き角取が鉄哲を応援した。

 すると鉄哲は、真っ赤に熱した拳で轟を殴りつける。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 鉄哲が轟を殴ると、ブラドキングが偏向実況を挟む。

 

『鉄哲! 轟を捕らえて逃がさない!! 圧倒的な近接に範囲攻撃も出す暇無し!!』

 

 ひなたは、ブラドキングの偏向実況に思わず顔を引き攣らせる。

 

「ブラド先生また偏向実況を…」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「半冷半燃、俺には効かねェ! これが限界を超えて手に入れた俺の最鋼峰!! このまま気ィ失うまでブン殴る!!」

 

「──クソ…」

 

 鉄哲が畳み掛けようとしたその時、轟は自身の熱を限界まで引き上げた。

 すると、あまりの熱量に鉄哲も耐えられなくなり轟から離れる。

 

「あちっ!!」

 

「退け。溶けちまうぞ」

 

 轟は、身体を熱しながら鉄哲を睨む。

 その火力は、父であるエンデヴァーを思わせる程だった。

 轟の炎は広範囲まで及び、炎の熱でカメラが壊れる。

 

「熱でカメラが…!」

 

「…轟少年…エンデヴァーの火力を…」

 

 カメラが壊れ映像が乱れると、ブラドキングとオールマイトが目を見開く。

 一方鉄哲は、轟の出す炎で悶えていた。

 

「あっちいいィイイ!!!」

 

 だが、それでも轟に立ち向かい左腕に喰らい付く。

 

「我慢比べは得意だぜェ!! さらに向こうへぁあ!!」

 

 そして、轟の腹に膝蹴りを叩き込んだ。

 すると轟が鉄哲の根性に驚いた様子で鉄哲に忠告する。

 

「お前…!! 火傷どころじゃ済まなくなっちまうぞ」

 

「訓練でタマ懸けねェ奴ぁ本番でも懸けらんねェよ!! 格上と限界は超える為に在る!!」

 

「────うるせェな」

 

 鉄哲が叫ぶと、轟はさらに炎を上げた。

 轟が火力を上げると、一瞬だけ轟の炎の色が青く変化した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、障子は角取と交戦していた。

 

「ソーリーテンタコル! 私アクアリウムでいつもタコ見ないスルー苦手」

 

「恐がられるのは慣れている」

 

「だから一気にプリズン勝負つけるね! 『THUNDER HORN』!!」

 

「そう来なくては。『オクトブロー』」

 

 角取は角を飛ばし、障子は腕を何本も生やし互いに猛攻を仕掛ける。

 角取は、角で予測不能な変化球を障子に浴びせる。

 だが障子は、死角にも目を生やして角取の角を見切り、圧倒的なパワーで角を砕くと、複製腕で角取にラッシュを放つ。

 角取は、障子のラッシュを角で全て防ぐと、すかさず再び攻撃に移る。

 

「「貰った!」」

 

 二人は、互いに決め手となる一撃を放つ。

 障子が攻撃を放った瞬間、背後から角取の角が迫ってくる。

 だが障子は複製腕で軽々と角を掴み、さらに畳み掛けようと角取が放った角は突然へし折られた。

 

「助かった、尾白」

 

「『尾空旋舞』!!」

 

 尾白は、空中を飛行する角を全て弾き飛ばすと角取の頭の角を掴んだ。

 

「操作する角発射させなきゃ脅威は無いね!」

 

Oh! The way you got me…So darn ordinary(しまった! こんな普通の手に…)

 

 尾白は、そのまま後ろから角取に組み付き尾で拘束した。

 普通の手に引っかかって拘束された角取は、英語で悔しがっていた。

 

「拘束し牢へ連れてく。お前は轟をサポートしろ!」

 

「わかった!」

 

 尾白が言うと、障子が頷く。

 尾白に拘束された角取は、尾白の尾の中で暴れていた。

 

Ouch! Where're you touching!? (痛い! どこ触ってるの!?)

 

「そういうのは、相手を見てやるんだね!」

 

 角取が暴れながら言うと、尾白がツッコミを入れながらA組陣地の檻に角取を放り込もうとする。

 だがその時、角取は死角から角を飛ばし、尾白の尾に刺した。

 

「っ…刺しても緩まな「緩まなくても大丈ブね。このまま4本パワーで牢まで直行でーす!」

 

 角取は、角の力で尾白を飛ばし牢の扉へと叩きつけた。

 尾白は、そのまま牢の中へと突っ込んでいき角取を手放してしまう。

 するとブラドキングが実況を挟む。

 

『どんな状況でも投獄されるまではリタイアにはならない! だがどんな状況でも“投獄されればリタイア”だ!! 拘束は解かねばならない。状況は2ー1! まだ逆転のチャンスはあるぞ! 頑張れ角取!』

 

 角取は、尾白を檻に投獄すると、その足で鉄哲の加勢に向かう。

 だがその時、複製腕で角取を察知していた障子が角取の前に立ちはだかった。

 

「またあなたデスか、テンタコル!」

 

「ここは通さないぞ、ロケッティ」

 

 角取が次の角をニョキっと生やすと、障子も臨戦態勢を取った。

 角取は、四方八方から角を障子目掛けて飛ばすが、障子は索敵を強化しつつ、複製した歯で角取の角を噛み砕いた。

 だが、障子の複製腕の死角から、角取の角が飛んでくる。

 するとその時だった。

 

「うおおおおおお!!」

 

「Huh!?」

 

 突然飯田が飛び出し、角取に飛びかかった。

 角取は、飯田のあまりのスピードに対処が追いつかず、角が生え変わる間もなく一瞬で叩かれ気絶させられた。

 

「Ugh!!」

 

 飯田に叩かれた角取が気を失うと、障子は瞬く間に角取を複製腕で拘束した。

 すると飯田は、何とかスピードを制御して急カーブし、轟の方へと向かう。

 

「轟くんの加勢に行く! 角取くんを投獄したらすぐに来てくれ!」

 

「ああ!」

 

 飯田が早口で障子に伝えると、障子は頷いて角取を檻へ連れて行った。

 一方、鉄哲は轟の炎に焼かれながらも猛攻を仕掛けていた。

 

「どうしたすっトロいぜ轟ィイイ゛ァア、あっちィイイイイ゛イ゛!!」

 

「お前も鈍くなってんぞ」

 

 轟は、さらに炎の熱量を上げようとする。

 するとその時だった。

 

 

 

「『レシプロハイスピン』!!」

 

「ぐぁっ!!」

 

 飯田が全速力で駆けつけ、鉄哲の頭に回し蹴りを叩き込んだ。

 いきなり頭を蹴られた鉄哲は、踏ん張りがきかずにそのまま吹き飛ばされる。

 飯田は、熱の出し過ぎでふらついている轟に駆け寄った。

 

「大丈夫か、轟くん!」

 

「飯田…!」

 

 飯田が轟に駆け寄ると、轟は息を切らしながら飯田の方を振り向く。

 するとその時、飯田に蹴飛ばされた鉄哲が立ち上がった。

 

「いってぇなぁ…! よくもやってくれたなこのヤロウ!! いいぜ、どっからでもかかってこいやぁ!! 俺が正義の鉄拳でブチのめしたらぁ!!」

 

「望むところだ、悪党め!」

 

 鉄哲がガキン! と拳を鳴らしながら飯田の前に立つと、飯田は轟を庇う形で鉄哲に立ち向かった。

 飯田は、鉄哲に向かって猛スピードで飛び出すと、鉄哲目掛けて再び蹴りを放つ。

 

「うおおおおおお!!」

 

「ぬぅっ!!」

 

 飯田が鉄哲に蹴りを喰らわせると、鉄哲は硬質化した身体で蹴りを受け止めた。

 飯田は、その勢いのまま鉄哲を拘束しようとする。

 だがその時、飯田の身体にズキッと痛みが走る。

 飯田の動きが一瞬止まると、鉄哲はその隙に飯田の脹脛に拳を叩き込む。

 

「喰らえ、俺・拳!!」

 

 鉄哲は、轟から喰らった熱を右拳に溜め込み、真っ赤に熱した拳で飯田の脹脛を殴った。

 すると飯田は、鉄哲の攻撃によって脹脛のエンジンがエンストしてしまう。

 

「くっ、エンジンが…!」

 

 エンジンがエンストした飯田がよろめくと、鉄哲は飯田の顔に左ストレートを叩き込む。

 

「っらァ!!」

 

「がはっ…!!」

 

 鉄哲が飯田を殴りつけると、飯田のヘルメットが粉々に割れ、飯田はそのまま地面に叩きつけられる。

 

『飯田、鉄哲の拳の前になす術なくダウン!! 地味に回原の暴れが効いたと見ている!! 俺は!! 投獄直前まで抵抗し、彼の足止めに尽力していた!』

 

「ちぇ…」

 

 ブラドキングが偏向実況をする中、飯田に投獄された回原は激カワ据置プリズンの中で若干悔しがりつつ体育座りをしていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

『いいぞ回原! お前がMVPだ回原!!』

 

「「「偏向実況に拍車が掛かってるブラド先生!!」」」

 

 ブラドキングが地味に飯田にダメージを与えた回原を褒めちぎっていると、ひなたを含めたA組がツッコんでくる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、飯田をダウンさせた鉄哲は、ボロボロの状態で立っていた。

 

「へへっ…やって…やったぜ……ざまあ、みやがれ……」

 

 鉄哲がニィッと笑ったその時、鉄哲目掛けて炎が飛んでくる。

 鉄哲が振り向くと、そこには、飯田を冷やしながらも鉄哲を睨みながら炎を放つ轟がいた。

 

「てめぇ…!」

 

 鉄哲がボロボロになった身体で轟に殴りかかろうとすると、轟はダメ押しと言わんばかりに鉄哲に炎を放つ。

 鉄哲は、轟の炎で焼かれながらも、一歩前に踏み出し、鉄拳で轟に右ストレートを喰らわせた。

 

「ぐぁあ…!!」

 

「ぐっ…!!」

 

 鉄哲は轟が最後に放ったトドメの炎で、轟は鉄哲の放った拳で、それぞれ同時に力尽きた。

 鉄哲の鋼鉄化が解け、轟の氷と炎も解けて二人が同時に地面に倒れ込んだ、その時だった。

 

「飯田! 轟!」

 

 ちょうど角取を投獄し終わった障子が駆けつけてきた。

 障子は、倒れている三人を見て状況を察すると、倒れている飯田と轟に声をかけた。

 

「…よくやった、二人とも。あとは俺に任せてくれ」

 

「障子くん…」

 

 障子が声をかけると、かろうじて意識があった飯田が反応する。

 障子は、気絶した鉄哲を複製腕で拘束すると、鉄哲を檻に投獄した。

 

『第三セット終了!! 4ー1でA組勝利!!』

 

 ブラドキングの宣言と共に第三試合は幕を閉じた。

 気を失った飯田と轟は、救助ロボットに担架で運ばれていく。

 

『気絶者多数につき第二セット同様反省会は後に回す!! よし、では第四セット準備を──…』

 

 麗日とひなたは、ロボットに運ばれていく二人を心配そうに見ていた。

 

「天ちゃん…焦ちゃん…」

 

「飯田くん、轟くんを守る為に戦ったんやね」

 

「うん…すごく、カッコよかった」

 

 麗日が言うと、緑谷が頷いた。

 三人は、第三試合のMVPは飯田だと、心の中で飯田を褒め称えていた。

 

 

 

 

 




                試合表

                      
                第一試合  
              試合時間 2分57秒
◯    相澤・蛙吹・上鳴・切島 5ー0 口田塩崎宍田円場  ×

                第二試合      
              試合時間 18分26秒
◯   青山・常闇・葉隠・八百万 4ー0 黒色拳藤小森吹出   ×  
 
                第三試合        
              試合時間 19分38秒
◯     飯田・尾白・障子・轟 4ー1 回原角取鉄哲骨抜   ×       
 
                第四試合       
      砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪 vs 泡瀬・鎌切・取蔭・凡戸
 
                第五試合    
   芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田 vs 小大・庄田・物間・柳



捏造技紹介コーナー

『尾突』
尾白の本作オリジナル技。
尾を丸め込んでからパワーを溜め、一気に突きを放つ。
緑谷の『エアフォース』に匹敵する威力を誇る。

『スパイラル・サイクロン』
回原の本作オリジナル技。
両脚を高速回転させて飛び上がり、そのまま全身を回転させた踵落とし。
鋼鉄の盾をも容易に粉砕する威力を誇る。
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