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『位置に着いたら始めるぞ! 第4セットスタートだ!』
ブラドキングが言うと、A組チームとB組チームはそれぞれ自分の陣地に向かった。
すると、爆豪が提案した策に他の三人が驚く。
「ちょ! 何ソレマジで言ってんの!?」
「嘘だろ、そんな策が…」
「だーってろ」
三人が爆豪の策に驚いていると、爆豪は先頭を歩き出した。
一方、モニターで試合を見ていた物間は高笑いしていた。
「アハハハハ!! あれれぇ!? おかしくない!? B組よりずぅぅぅっと優秀なはずのA組が、どうしてB組に一人捕まったのかなァ!? ねえおかしくない!?」
「発作的だよな」
「もう勝ちは無くなったのに何でこんな情緒不安定なんだろうな」
「僕もうツッコむ気すら起きない」
上鳴、心操、ひなたは、もはや驚かずに普通に聞き流していた。
三試合連続でA組が勝ってB組の勝ちが無くなった事でおかしくなったのか、第三試合の結果を持ち出して高笑いしていたが、どう負け惜しみを言おうとB組の3連敗という結果は覆らないため、自分で自分の傷口を抉っているようにしか見えなかった。
すると物間はヒーロー科らしからぬ笑みを浮かべながら口を開く。
「あー僕この第4セット楽しみだったんだよねぇぇ、何たってあの取蔭がいるからねえ〜〜〜ねえ爆豪くん!! 取蔭切奈!! B組もう一人の推薦入学者! 彼女はとってもやらしいぞ!!」
「モノマー、セクハラ発言は女の子に嫌われるよ」
「『やらしい』の意味が違うと思うぞ」
「よし、行こか」
物間が発作的に解説をしていると、ひなたが天然発言をし、心操がツッコミを入れる。
二人の漫才を他所に、取蔭は不敵な笑みを浮かべながら立ち上がった。
そしてその後、B組チームは作戦を立てて動き出した。
「ステージ的にさ、瀬呂くんとねえ、耳郎さんがねえ、ダメだよねえ…絶対メンドい」
「加えて砂藤・爆豪と火力の高い2人! バランス最高。後手に回ったらそのまま死ぬと思った方がいい」
凡戸が面倒臭そうに言い、泡瀬が妥当な意見を述べる。
凡戸は大柄な体格に反してマイペースなのんびり屋で、泡瀬はB組屈指の常識人で常に客観的に状況を判断し場を纏めるのは彼の役目だった。
すると鎌切が口を挟む。
「何だっていいぜェ…早く切り刻んじまおうぜェ…」
「ちょっと黙ってて」
鎌切が物騒な事を口走ると、泡瀬がツッコミを入れる。
好戦的で先走りがちな鎌切を宥めるのも泡瀬の役目だった。
すると取蔭は不敵な笑みを浮かべながらA組チームを倒す作戦を考える。
「先手必勝、倒しましょっと」
B組は、A組チームを倒す算段を立てて動き出した。
一方、モニターで試合の様子を見ていたブラドキングはまたしても偏向実況をしていた。
『さて第4セット!! 結果だけを見ればA組の三連勝!! だがしかし!! 第二第三試合では、俺の可愛い教え子達が一矢報いた!! 俺は、今回こそはB組が勝利を収めると信じているぞ!! 頑張れ取蔭!!』
「「偏向実況に拍車かかってるよブラド先生!!」」
ブラドキングが高笑いしていると、A組がツッコミを入れる。
それを見ていたミッドナイトとオールマイトも呆れ返っていた。
「『操血』のクセに頭に血ィ上っちゃってる」
「愛が行き過ぎている…!! しかし…」
一方、高笑いをして偏向実況をするブラドキングを見ていた心操とひなたも冷静にツッコミを入れていた。
「B組への愛がすごいねブラド先生」
「うん。でもまあ、言ってる事はあながち間違っちゃいないんだよなぁ…それはそれとして、建物への被害は注意しなきゃいかん気がするけど」
心操がツッコミを入れると、ひなたもコクンと頷く。
多少B組に熱が入りすぎている部分はあるが、ブラドキングの言う事は間違いではなかった。
第二第三試合は、結果だけを見ればA組の勝利だが、A組もB組の猛攻によって再起不能なダメージを負わされていた。
それ程までに、B組の力はA組の予想を上回っていた。
すると物間が口を挟んでくる。
「所詮トラブルメーカー! 知ってた!? トラブルってのは未熟者が引き起こすんだよ!! アハハハハハヴッ」
「ごめんな」
「ウワァ」
「苦労してるんだな…」
物間が発作を起こして笑っていると、いつの間にか背後に回り込んだ拳藤が手刀を叩き込んで気絶させた。
ひなたはそれを見て苦笑いを浮かべ、心操は苦労していそうな拳藤に同情した。
「確かにB組は日々鍛錬して力をつけている。だが、A組はピンチを糧に力を伸ばしている。今回も私達の予想を上回る活躍を見せてくれるはずだ」
「オールマイトA組好きですよねー」
「私は皆好きさ!」
オールマイトがA組の活躍に期待していると、ミッドナイトがオールマイトに話しかける。
オールマイトとミッドナイトは、モニターを見ながら生徒達の成長に期待していた。
一方ひなたも、モニターに映る爆豪達を見て次の試合を楽しみにしていた。
「次のB組は推薦入学者のせっつーがいるんだよね。かっちゃん達はちょっと考えて動かなきゃかもね」
「爆豪の奴、実力あるけどアレだからな。耳郎達の事振り回さなきゃいいけど…」
「うーん…まあ多分大丈夫じゃないかな」
「え?」
「見てればわかるさ」
ひなたはB組チームに推薦入学者の取蔭がいるので次の戦いがどう動くか気になっており、心操は爆豪の性格的に他の三人が苦労しているのではないかと心配していた。
だがひなたは、次の試合に関しては全く心配していなかった。
◇◇◇
「遅ェ━━━ンだよのろまが!!」
爆豪は、先頭を走りながら他の三人を罵倒していた。
「ウチ音聞きながらなんだけど!」
「いいからついて来いや!!」
索敵に集中したい耳郎の事などお構いなしに、爆豪は先頭を突っ走っていく。
爆豪の無茶振りに、他の三人は呆れ返っていた。
「相変わらずついて来いだな」
「体育祭の時から変わんねえや」
「何だかんだ協力してくれるけどでも…本当に大丈夫かな…」
砂藤と瀬呂は、爆豪の傍若無人っぷりにぼやく。
耳郎も、爆豪のやり方に不安を抱きつつも爆豪を追いかけていった。
すると、爆豪が突然叫ぶ。
「止まれ! いる!!」
爆豪は、配管の影に隠れて動く取蔭の髪を見つけた。
「耳!!」
「名前!」
「全員近くにいる筈だ、探れ!!」
爆豪は、耳郎に索敵の指示を出す。
耳郎は、両耳のジャックで周囲の音を拾いB組の足音を探る。
すると、四方八方から金属を殴るような音が聞こえてくる。
なかなか索敵の報告をしない耳郎に対し、爆豪が苛立った様子で急かす。
「早よしろや!!」
「待って… やっぱやられた!!」
耳郎が叫んだ、その直後だった。
「ハイしゅーりょー」
爆豪の背後には、口だけになった取蔭がいた。
爆豪は咄嗟に後ろを振り向いて攻撃を仕掛けるが的が小さすぎるため当たらず、取蔭の口はケタケタ笑いながら飛び回る。
リザーディ
本名 取蔭切奈
“個性”『トカゲのしっぽ切り』
全身バラバラに切り離し行動できる!
“個性”伸ばしにより現在60に分割可能!!
◇◇◇
取蔭は自身の肉片を四方八方に散らしており、それぞれが音を鳴らす事で耳郎の索敵を妨害していた。
取蔭は、予測不能な軌道で爆豪に肉片を飛ばして攻撃する。
「『バリケードテープ』!」
瀬呂は、自身と砂藤と耳郎の周りにテープを張り巡らせ、取蔭が自由に移動できないようにした。
「爆豪こっちへ」
だが…
「ハイしゅーりょー」
「『グルースコール』!!」
取蔭が顔をくっつけながらケタケタ笑った直後、死角にいた凡戸が三人目掛けて大量の接着剤を撒き散らした。
すると接着剤がテープにくっつき、A組チームの周りのテープがベトベトになってしまう。
瀬呂のテープ作戦を逆手に取られ、三人は身動きが取れなくなってしまった。
「ヤッベ嵌められた」
「ええー、やった。切奈のプラン通りじゃん」
プラモ
本名 凡戸固次郎
“個性”『セメダイン』
接着剤を噴出!!
乾きの早さは調整可能!
“個性”伸ばしにより、射出量と射出速度が向上!
◇◇◇
「下手に動いたらテープにくっついちまうってわけか」
「自分達の防御で首絞めさせるなんて、こじこじいやらしい手使ってくるなぁ…」
モニターで試合を見ていた心操とひなたは、凡戸のいやらしいやり方に思わず顔を引き攣らせていた。
◇◇◇
「こっちへ!」
瀬呂が安全な場所へ二人を連れて行こうとすると、今度は鎌切が飛び出し両腕から伸ばした刃物で三人の頭上の配管を斬り落とす。
「ヒャッヒャッヒャ、遅い遅い」
ジャックマンティス
本名 鎌切尖
“個性”『刃鋭』
全身から刃を出す事ができる!
“個性”伸ばしにより、刃の生成速度と切れ味が向上!
鎌切が斬り落とした配管には凡戸の接着剤がくっつきそのまま三人の頭上へと落ちる。
◇◇◇
「わー速い」
「A組の動きが全部逆手に…!!」
「何かさ、見るからに向こうのチーム爆豪にストレス与えに来てるよね」
モニターで試合を見ていたひなたと緑谷は思わず目を見開き、心操もモニターを指差しながらコメントする。
心操の言う通り、B組チームの作戦は、A組の軸である爆豪にストレスを与えてA組の連携を乱すというものだった。
◇◇◇
「せめて二人は──!!」
砂藤が両手を上に挙げて配管を受け止めようとしたその時、爆豪が爆破で配管を吹き飛ばした。
だが、それによって遮蔽物が無くなり鎌切が三人を狙いやすくなった。
「まず一番めんどい耳郎から」
取蔭は、耳郎を先に倒すよう鎌切に指示を出した。
鎌切は、真っ先に耳郎を倒そうとする。
すると、その時だった。
BOOM!!!
「「!?」」
突然爆豪が鎌切の前に立ち塞がり、耳郎を足蹴で押しのけつつ爆破で鎌切を吹き飛ばした。
鎌切は、腕と脚から刃物を出して爆発を防いだ。
「取蔭ぇ、何してンだァ!?」
「まァじ!?」
まさか爆豪が耳郎を庇うと思わなかった鎌切と取蔭は、目を見開いて驚いていた。
「防いだかよ! 虫は反射が速えーなァ!?」
爆豪がさらに爆発を起こして畳み掛けると、鎌切と取蔭は一旦退いた。
◇◇◇
一方、モニターで試合を見ていた物間は顔を歪めていた。
「あっれぇ僕の目が変なのかなァ? 彼、耳郎さんを庇ったように見えたなァ」
「庇ってたな! 足蹴で!」
「ん、かっちゃんナイス」
「物間! 大丈夫だ! あいつは意外とそういう奴だ!」
上鳴、ひなた、切島が言うと突然物間が発狂する。
「キャラを変えたっていうのか!!」
「…うんまァ身を挺すようなわかりやしーのは確かに初めて見るかもな!」
物間が発狂していると、切島が嬉しそうに言った。
物間にとって、爆豪の精神的な成長は完全に想定外だったようだ。
(わかってないね。かっちゃんはずっと根っこは変わってないよ。オールマイトを超える最高のヒーローになる為に、いつも完璧な勝利だけを見据えてもがいてる。皆実力とか粗暴さとか上辺だけしか見てないから気付いてないけど、実はウチのクラスで一番クソ真面目な奴なんだよね。…ま、本人の前でこんな事言ったらキレられるんだろうけど)
ひなたは、爆豪が耳郎を助けた事に驚いているB組に対して心の中で呟きつつモニターを眺めていた。
実のところ、ひなたは今回の試合に関してはそこまで心配していなかった。
爆豪が誰よりもオールマイトを超える最高のヒーローを見据えて懸命にもがいているのを知っていたからだ。
◇◇◇
耳郎が爆豪に礼を言おうとすると、爆豪は爆発で飛んで配管に着地した。
「ありがと「うるせェ逃げたぞ探せ!! 授業だろーが何だろーが関係ねェーんだよ。決めてンだよ俺ァ! 勝負は必ず完全勝利! 4−0無傷! 完膚なきまでにブッ潰す! これが本当に強え奴の“勝利”だろ! 触角チビにできて俺にできねえ訳がねえ! そうだろ!」
爆豪の言葉に、他の3人は心を動かされた。
爆豪は、第一試合で互いにライバル視しているひなたのいるチームが完勝した事で闘争心に火がつき、自分達はひなた達以上の完璧な勝利を収めてやろうと意気込んでいた。
一方、B組チームはというと、A組チームから逃げつつ取蔭の肉片で音を出して撹乱していた。
耳郎は、両耳のジャックで音を探っていく。
「うっさ…全体的に遠ざかってるよ! 邪魔されて捉えづらいけど……でも数減ってる! 集中すれば聞き分けられそ!」
「減ってんの?」
「仕切り直す気か──…クソが…! 舐めやがって……! 行くぞ」
爆豪は、『爆速ターボ』で空中を移動してB組チームを探す。
すると死角から泡瀬が飛び出してくる。
◇◇◇
「音を立てずに潜んでたのか! また逆手に…!」
「やっぱり爆豪にストレス与える作戦か…」
「そうだね。でも本当に最善手なのかな」
緑谷が驚いていると、心操も顎に手を当てて考え込む。
隣で見ていたひなたは、モニターを見ながらポツリと呟く。
◇◇◇
泡瀬は、ウエストポーチから金属の円柱を取り出し“個性”を発動する。
「早業着工『ウェルドクラフト』!!」
泡瀬は、円柱を使って目に留まらぬスピードで爆豪を柱に溶接した。
「竣工!!」
「把握されすぎー!!」
瀬呂はテープを伸ばすが、泡瀬には届かなかった。
「舐めんな」
「『シュガーラッシュ』!!」
砂糖でドーピングした砂藤は、連打で爆豪を溶接している柱を全て砕いた。
「行け!」
「くっつけてんじゃねェぞゴラァ!!」
逃げる泡瀬を爆豪が追いかけると、泡瀬は爆豪の顔面を溶接しようとする。
すると、泡瀬を追っていた爆豪は突然上へと方向転換した。
「任せたぞ」
「?」
その直後、爆炎の中から耳郎を抱えた瀬呂が飛び出してきた。
先程のテープは泡瀬を拘束するためではなく、自分達を上に引き上げるために配管に巻きつけていたのだ。
「「任された!」」
「『ハートビートサラウンド』!!」
耳郎が爆音攻撃で泡瀬を気絶させ、瀬呂がテープで泡瀬を拘束した。
一瞬で拘束されてしまった泡瀬を見て、凡戸が泣き喚く。
「うわあああ! 泡瀬くん!」
凡戸は、慌てふためきながらA組チームから逃げた。
爆豪は爆破を放って爆速で空中を移動し、逃げる凡戸を見つける。
すると取蔭が肉片を飛ばしてサポートに入り、凡戸が接着剤を爆豪目掛けて飛ばした。
だが…
「おせえ!!」
BBBBB!!
「確保だ━━!!」
爆豪が凡戸に連続爆破を浴びせ、砂藤が爆発で弱った凡戸を確保した。
◇◇◇
『──…何という迅速な連携…!! 一瞬で俺の可愛い二人を確保!!』
モニターで試合を見ていたブラドキングは思わず目を見開き、ひなたも嬉しそうに目を見開く。
「すごい、洋ちゃんとこじこじを倒しちゃったよ!」
一方物間は、悔しそうに歯を食いしばっていた。
「協調性皆無の暴君だっただろ…!? 丸くなったどころじゃないぞ───!!」
「違うんだって、かっちゃんは元々ああいう奴なの。なかなか素直になれないだけで」
「耳郎ちゃん達も信用してるから任せられるんだ」
「ドラムが効いたな」
「バンドが効いた」
物間が悔しがっていると、ひなた、葉隠、上鳴、切島が言った。
物間をはじめとしたB組が驚いている中、何だかんだで爆豪を理解していたA組は驚いていなかった。
◇◇◇
「爆豪!!」
耳郎は、鎌切のいる方向をジャックで指す。
すると爆豪は一瞬で鎌切を見つけて畳みかけ、トドメの一撃を浴びせ壁に叩きつけた。
「『
爆豪の必殺技を喰らった鎌切は気を失い、残るは取蔭だけとなった。
「俺らの知る取蔭の『しっぽ切り』、身体を50に分割し意のままに動かす。離れたパーツは一定時間で動かなくなり、欠けた部分が再生される…で、こっから推測。再生も無尽蔵ってわけじゃないと思うのよ。八百万もそうじゃん? 疲れちゃったら集中力も落ちるじゃん。音出すために目一杯分割してると思うんだけど、それって仕切り直しと相性悪いじゃん。パーツのいくつかは本体に戻して時間リセットしてんじゃね?」
瀬呂の読み通り、取蔭は自身のパーツを少しずつ元に戻していた。
すると、予め爆豪が配っておき瀬呂が取蔭のパーツにつけておいた手榴弾が小爆発を起こしていく。
「っぶなー…」
取蔭は、爆弾がついたパーツを切り離して逃げた。
だが既に目の前に爆豪が回り込んでいた。
「『ゼロ距離
「あんた変わりすぎなんだよー!!」
爆豪は、至近距離で取蔭に爆発を浴びせた。
ゼロ距離で爆破を喰らった取蔭は、意識を失って痙攣した。
「…変わってねェよ。昔も今も、俺の目標はオールマイトをも超えるNo. 1ヒーローだ」
4人は、気を失ったB組チーム4人を自分達の陣地の牢に投獄した。
◇◇◇
『僅か3分足らず…!! 思わぬチームワークでA組、4−0の勝利だ!!』
「わああああああ!!!」
爆豪達のチームが勝つと、ひなたは目を輝かせながら隣にいた心操の両肩を掴んで揺する。
こうして第四試合は、A組チームの圧勝で幕を閉じた。
◇◇◇
「必要以上の損壊も出さず捕捉からの確保も迅速。機動力・戦闘力に優れた爆豪を軸に3人共よく合わせた」
「過去のデータと戦闘力の差を考えた堅実な手法だった。が、固めすぎて骨抜のような柔軟さに欠けた!」
相澤は珍しくサムズアップをしながらA組チーム4人を褒め、ブラドキングは悔しそうにB組チーム4人にアドバイスをしていた。
4人のリーダー格だった取蔭は特に落ち込んでおり、自分達のチームが負けてしまった事に責任を感じていた。
「皆までダサい事になっちゃってゴメン…」
「いやぁ、あんだけ動ける奴が“いい子ちゃん”になっちゃったら、穴なんかねえよ…」
「この敗北を胸に刻もうぜぇ…」
取蔭が落ち込んでいると、泡瀬と鎌切がフォローした。
一方、A組はファインプレーをした爆豪を称賛していた。
「かっちゃん! おめーやりゃあできるのなァ! 耳郎完全ヒロインだったわ」
「ウチヒーローだし」
「不良が子猫拾った感じだよなー」
他のA組が今回健闘した爆豪チームを褒めちぎっていると、爆豪がひなたに歩み寄って声をかける。
「どーだ見たか触角! てめーより10秒早かったぞ!」
「うん! 凄かったねかっちゃん! 前から思ってたんだけどね、やっぱり君リーダーに向いてるよ! 君はアレだね、背中で語るタイプだ!」
「痛えわクソが!! 褒めながら叩くんじゃねー!!」
「しかもメッチャ強くなってたし! 『
爆豪がひなた達より早く勝った事をアピールすると、ひなたは嬉しさのあまり爆豪をバシバシ叩きながら誉めちぎる。
ひなたが少し強めに叩きながらしつこく誉めてくるので、爆豪はひなたに対してキレ散らした。
ひなたの悔しがる顔を見る為に煽りに来た爆豪だったが、ひなたが悔しがるどころか目を爛々と輝かせながら話しかけてくるので、爆豪は自分から話しかけておきながらひなたをうざがっていた。
すると、オールマイトが爆豪に声をかける。
「震えたよ!」
「風邪でも引いてんじゃねーの」
爆豪は、ムスッとした表情で頭を掻きながらオールマイトに背を向けて歩く。
すると今度は緑谷が横から声をかけてくる。
「かっちゃん!」
「どけカス!」
「進行方向上にいないけど…!!」
横から声をかけてきた緑谷に対し爆豪が凄むと、緑谷がツッコミを入れる。
すると爆豪は、緑谷に対して呟く。
「俺ァ進んでんぞ」
「うん、凄かった!」
「ケッ、てめーにゃ追いつけねえ速度でだ」
「超えるよ!」
「うるせえな、んな事言いに来たんか。てめーには絶対超えられねえよボケゴミカスが!」
「見ててよ」
爆豪は、ほぼ悪口ではあるものの緑谷に対して激励とも取れる言葉をかけた。
それに対して緑谷が笑顔で返すと、爆豪は去っていった。
「いい幼馴染を持った」
緑谷が自分も頑張ろうと意気込んでいると、オールマイトが緑谷に声をかけた。
すると心操が緑谷に声をかける。
「緑谷、俺達もそろそろプラン固めておかないと…」
「うん…!」
心操が言うと、緑谷は頷いて麗日達の元へ戻った。
心操が自分も麗日達の元へ戻ろうとすると、ひなたが心操に駆け寄る。
「ひー君!」
ひなたが声をかけると、心操は足を止めてひなたの方を振り向いた。
するとひなたは、ニカッと笑って拳を前に突き出した。
「ファイト!」
「うん。勝ってくる」
ひなたが笑顔で軽く拳を前に突き出すと、心操はひなたの拳に軽く自分の拳を突き合わせた。
◇◇◇
「あの激昂ヒステリック爆発男が…素晴らしいじゃないか」
物間は、B組が勝利を逃した事を悔しがるあまり顔を引き攣らせながら嫌味を吐いていた。
すると取蔭が落ち込んだ様子で物間に謝ってくる。
「物間〜〜ごめんなァまた負けちゃった」
「何を謝るんだい取蔭!! 未熟だった同胞が省みて成長している。いい事さ。確かにこれでB組の4連敗になってしまったが、このままA組の全勝で終わらせるつもりはない。僕はね、わかって欲しいだけさ。何のトラブルも起きない真面目な者と、悪目立ちして不相応な注目を浴びる者。どちらが正しいのか。誰もが他人の人生の脇役であり、自分の人生の主役なんだ」
物間が語ると、柳が聞いてくる。
「で、どーする?」
「“で”って言うなよォ!!」
柳が物間の言い分をスルーして作戦を尋ねると、物間がツッコミを入れる。
すると庄田が他の二人に作戦を話す。
「やはり取蔭さんと同様の形で良いと考える。バランス的にも彼女らと我々チームは類似している。テクニカルな“個性”の持ち主が揃っていて身を隠したままの攻撃手段が豊富だ。白兵戦を仕掛けるメリットが無い」
庄田が言うと、柳が唐突に呟く。
「でも今の戦い見るとやっぱ緑谷ウラメシくない?」
『ウラメシい』というのは、柳特有の言葉で『怖い』という意味だった。
柳は、緑谷を警戒すべき根拠を四人に説明した。
「緑谷は機動力と戦闘力で言えば爆豪と同等かそれ以上じゃんね。最近になって何か“個性”が発展したらしいし、初見殺しの技とかあるとウラメシイね。あと“個性”が厄介な心操も。仮免の時から新しいサポートアイテム付けてるみたいだし」
「なら緑谷くんと心操くん最優先で決定だね。二人は確かに厄介だが、僕達の力を合わせれば抑える事はできる。でもあまりアテにしすぎないでくれ。僕の方は『スカ』の可能性がある。何にせよ動きを止めなきゃ始まらない。…まあ、どうしても危なくなったら『奥の手』を使うけどね」
柳が言うと、物間はA組チーム5人に対抗する作戦を考え始めた。
物間は、何か考えがあるらしく、新たに装備していた右腕の白いバックラーに手を当てていた。
一方教師陣は、作戦を立てるA組チームとB組チームを見て話し合っていた。
「最終だ」
「どうなりますかね」
「人数で言えばA組が有利だが、B組も強いチームだ。どんな試合を見せてくれるのか楽しみだ」
◇◇◇
一方、最終チームの5人は自分達の陣地について準備をする。
「オイラの『モギモギグレープ畑作戦』どうよ!?」
「いや…それで引っ掛かったら逆にビックリだよ」
峰田が言うと、心操が首を手で押さえながらツッコミを入れる。
すると麗日が峰田に対して言った。
「気抜かんようにね、峰田くん。向こうは姿見せなくてもどっから来るかわかんない攻撃が揃っとるもん」
「とりあえず、まずは俺達に何ができるのかを確認しておこう」
心操が言うと、緑谷以外の4人が自分の“個性”をざっくりと説明した。
「浮かす!」
「溶かす!」
「操る」
「くっつける!」
麗日は自分のヘルメットを浮かしながら言い、芦戸は粘性の酸を撒きながら言い、心操は自身のペルソナコードのツマミをチキチキと回しながら言い、峰田は頭からボールをもぎながら言った。
「心操くん以外不利なんだよな━━━━…待てないし攻めれんし」
「索敵役いないのが痛いな」
麗日がガクッと落ち込みながら言い芦戸も麗日と一緒にガクッと落ち込んでいると、心操は頭を掻きながら自分の意見を言う。
一戦目はひなた、二戦目は常闇、三戦目は障子、四戦目は耳郎と、今までのA組のチームには必ず一人索敵役がいたのだが、五戦目のA組チームにだけは索敵役がいないため、立ち回りでB組チームを上回らなければならなかった。
「俺もあんまりアテにされても困るな…コレもタネが割れちゃえばそれまでだし、そうじゃなくても向こうのチームは一筋縄じゃいかない奴ばっかりだから、慎重に言葉選ばないと」
「やっぱオイラの『モギモギグレープ畑作戦』いこうぜ」
「誰も引っ掛かんないよ! とにかく! 先に見つけて罠にハメる! これね!」
心操が若干緊張した様子でペルソナコードに手を当てながら言い峰田が提案すると、芦戸が峰田にツッコミを入れる。
すると緑谷はワンフォーオールを発動して身体から緑色の火花を放ちながら駆け抜ける。
「その囮役に僕が──!!」
「おお、デクくんがやる気だ!」
「ただ…あの4セット目見せられたら向こうは僕を警戒すると思う…! いつも以上に動かなきゃ」
「大丈夫かよー、お前頼りだぜ?」
緑谷が言うと、峰田は心配そうに尋ねる。
すると緑谷は、軽く拳を握りしめながら笑顔を浮かべた。
「大丈夫、絶対勝てる」
「おう」
「前はもっとキョドってたのになァ…何か寂しい」
緑谷が自信満々に言うと心操が頷き芦戸と麗日も気合を入れ、峰田はいつの間にか成長していた緑谷を見て置いてけぼり感を味わっていた。
入学当初の緑谷ならこういう時はビクビクしていたのだが、緑谷は戦闘能力だけでなく精神的にも成長していた。
『第5セット目! 本日最後だ! 準備はいいか!? 最後まで気を抜かずに頑張れよ━━━!! スタートだ!』
ブラドキングの掛け声と共に、共同訓練の最終セットが始まった。
◇◇◇
そしてその頃、他の生徒達はというと、自分のクラスのチームをモニター越しに見守っていた。
「ひー君、みんな…! がんばれ!」
ひなたは、心操が出てくる試合という事もあり、期待に胸膨らませてそわそわしていた。
教師陣は、A組とB組の活躍を見るためモニターを見守っていた。
試合表
第一試合
試合時間 2分57秒
◯ 相澤・蛙吹・上鳴・切島 5ー0 口田・塩崎・宍田・円場・鱗 ×
第二試合
試合時間 18分26秒
◯ 青山・常闇・葉隠・八百万 4ー0 黒色・拳藤・小森・吹出 ×
第三試合
試合時間 19分38秒
◯ 飯田・尾白・障子・轟 4ー1 回原・角取・鉄哲・骨抜 ×
第四試合
試合時間 2分47秒
◯ 砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪 4ー0 泡瀬・鎌切・取蔭・凡戸 ×
第五試合
芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田 vs 小大・庄田・物間・柳