抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

95 / 153
10が15件9が51件…だと…!?
感謝感激雨霰。
面白いと思って頂けましたら是非ともお気に入り登録、高評価(特に9、10あたり)よろしくお願いします。


ぼくらの大乱戦

『第5セット目! 本日最後だ! 準備はいいか!? 最後まで気を抜かずに頑張れよ━━━!! スタートだ!』

 

 ブラドキングの掛け声と共に、共同訓練の最終セットが始まった。

 5人は、緑谷が先頭に立つ形でB組を探していた。

 緑谷が囮になってB組を誘き寄せ、心操がペルソナコードでB組の統率を乱し芦戸、麗日、峰田の三人が確実に一人ずつ罠に嵌めていくという作戦だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「緑谷くん達のフォーメーション、第4セットの爆豪くん達と似てるな」

 

「バランスも似てるからなー。ただ索敵係がいない分、心操がいるとはいえ向こうも厄介な“個性”揃ってるし俺らよりも慎重に動かないとすぐやられそう」

 

「そうだね、さっきみたいに誘い出して位置特定するンなら、緑谷が爆豪以上の働きをしなきゃだね」

 

 飯田、瀬呂、耳郎は、緑谷に比重が寄ったフォーメーションでどう動くのかをモニターを見ながら考えていた。

 一方B組も、人数で有利なA組相手にどう動くか分析していた。

 

「なあ徹鐡、お前ならどうするよ?」

 

「こういうのは頭脳プレーよ。向こうは心操と峰田が近接苦手だし、“個性”も決定打に欠ける奴ばかりだ。つまり力でゴリ押しすりゃあ勝てる!!」

 

「「「「バカの考え!!!」」」」

 

「まあでも、あながち間違ってはなくね?」

 

「「「「対応も柔軟かよ骨抜!!!」」」」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 A組チームは、一番スピードのある緑谷が先頭を走って目立つ事で標的となり、B組に攻撃させて全員の居場所を割り出したところを、身を隠した心操がペルソナコードで声を変えて『洗脳』を仕掛けB組チームの統率を乱し、他の3人と協力してB組チームを捕らえる作戦を取っていた。

 ひなたや爆豪の試合を見ているなら尚更、一番パワーとスピードがあり頭の回転も速い緑谷を放っておくわけがないため、緑谷が囮になるのが一番成功確率が高かった。

 そして心操は建物の影に身を隠しながら緑谷の後に続き、B組が攻撃を仕掛けてきた瞬間に誰か一人を洗脳してB組を混乱させる役割だった。

 緑谷は、『黒鞭』と『浮遊』を使った立体機動で素早く動きながら索敵をする。

 すると突然、粗大ゴミが死角から飛んでくる。

 

「…! 柳さんの…!!」

 

 突然飛んできたゴミを見て、緑谷はすぐに柳の“個性”だと判断する。

 それを見た緑谷は、近くに隠れていた心操に合図を送る。

 緑谷の合図を受けた心操は、自身の声を変えて叫び声を上げた。

 

『キャア!』

 

 心操は、自分の声を小大の声に変えて叫んだ。

 だがゴミを投げてきた人物は、心操の声に反応せずそのまま攻撃を仕掛けてきた。

 緑谷がゴミを投げつけられた方向を見ると、そこには物間がいた。

 

「あれ? 見つかっちゃったか」

 

(物間くん…!!)

 

(クソ、やられた…! そういう作戦か!)

 

 緑谷に攻撃を仕掛けてきたのは、物間一人だった。

 すると緑谷が目を見開き、柱の影に隠れていた心操がB組チームの作戦を察してギリっと奥歯を噛み締めた。

 心操がボイスチェンジで声を再現した小大はその場にいなかったためすぐにハッタリだとバレ、B組を罠に嵌める作戦が失敗したのだ。

 

「爆豪くんの活躍を見た後で、君を警戒しないわけがない。君みたいに動けて強い人間を警戒する。クレバーな人間はそう考える。その一方で、クレバーな人間はこうも考える。『さっきの彼の強さは他の3人によって引き出された』と、『先に潰すべきは3人だ』と。わざわざ目立って居場所を教えてくれたね。今頃僕の仲間が君達の仲間を探しているだろう。すぐにでも彼らの元へ駆けつけなきゃあ……君もそう思うだろ? 心操くん」

 

「…………!」

 

 物間が不敵な笑みを浮かべながら言うと、心操が目を見開く。

 物間は、近くに心操が隠れている事に気付いていたのだ。

 すると物間はさらに煽ってくる。

 

「緑谷くんを囮にするなら、すぐ近くに心操くんを置いておくのがクレバーなやり方だ。彼の“個性”なら姿が見えなくても居場所さえわかれば攻撃が仕掛けられるからね。僕がこうして喋っている間にも、そこら辺に隠れて寝首を掻こうとしているのかな!? ああ怖い! でもいいのかい!? 他の3人を助けに行かなくて!」

 

「…………」

 

 物間は、やたらと緑谷を煽ってくる。

 緑谷は、物間の挑発には乗らず冷静さを欠く事なく物間を追い詰めようとする。

 だが…

 

「僕はね、時々思うんだ。“恵まれた人間が世の中をブチ壊す”。爆豪くんと相澤さんがまさにそうだよね! 何故あの二人は平然と笑ってられるんだ? 平和の象徴を終わらせた張本人がさァ!!」

 

 そう言って物間は、手からバラっと大量のボルトを出す。

 すると緑谷は、幼馴染みと親友を侮辱された怒りで我を失い激昂する。

 

「何だと!!」

 

 緑谷は、ワンフォーオールを50%まで解放して物間に殴りかかろうとする。

 だがその拳が物間に届く事はなく、緑谷は急停止した。

 それを見た心操は、思わず目を見開く。

 

「な………!?」

 

「僕の勝ちだ」

 

 物間は、ニヤリと笑いながら右腕に装着したバックラーのスイッチを押す。

 するとバックラーの排出口からは、小さな紫色のコインのような物体が排出される。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、それをモニターで見ていたA組はというと。

 突然固まった緑谷を見て、クラスメイトが動揺する。

 

「な…!? おい、どうしちまったんだよ緑谷!」

 

 砂藤は、びくともしない緑谷を不審がって声を上げる。

 するとひなたは、画面を見据えながら推測を話す。

 

「洗脳されてる」

 

「洗脳!? バカ言うな、それは心操の“個性”だろ! 何であいつに触れてもいない物間が使えるんだよ!?」

 

 ひなたが推測を話すと、切島が反論する。

 物間は心操に触れていないので、心操の“個性”を使えるはずがなかった。

 すると近くでモニターを見ていた取蔭が、呆れながら口を開く。

 

「…まあさ、私らもそれなりには強くなったよ。けどさ、ぶっちゃけB組(うちら)の中で一番成長したのって物間(あいつ)だよね」

 

「まさか、“個性”が伸びて()()()()()()()()()()に触れるだけで“個性”をコピーできるようになったとか…?」

 

 ひなたの推測を、B組の生徒は否定しなかった。

 ひなたの推測通り、物間は、“個性”伸ばしの訓練により、もともと身体の一部だったもの、例えば切った後の髪や爪、滴り落ちた血や涙に触れただけで“個性”をコピーできるようになっていた。

 その性質を利用したサポートアイテムが、右腕のバックラーだった。

 バックラーはコイン状のカートリッジとセットで使うサポートアイテムで、あらかじめ相手の体細胞を加工して作っておいたカートリッジをバックラーに装填する事で“個性”をコピーできるというものだった。

 ただしその性能も万能ではなく、あくまでカートリッジの材料が身体から離れた時点での“個性”しかコピーできない、一度使ったカートリッジは再利用できない、そしてその方法でコピーした“個性”は最大で10秒しか維持できないという弱点があった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして数秒前。

 他の三人はというと。

 峰田は、もぎもぎの球で作ったロープを自分達の近くに張っていた。

 自分達は索敵の“個性”を持っていないため、自分達の方へB組が来た時のための対策を事前に考えていたのだ。

 するとその時、峰田がボールのロープの異変に気付く。

 

「何かくっついた!」

 

 すると三人は、すぐさま戦闘態勢を取った。

 その直後、三人目掛けて大量の金属部品が降ってくる。

 

「『アシッドベール』!」

 

 芦戸は、粘性の高い酸で膜を張って攻撃を防ぐ。

 庄田は、物陰に隠れながら柳が飛ばす武器の場所を探っていた。

 

「消えた…防いだのかはたまた罠か…」

 

 柳が“個性”で攻撃を仕掛けてくると、麗日と峰田が驚く。

 

「柳さんの『ポルターガイスト』!」

 

「当てずっぽーだ!」

 

 芦戸は、酸の膜で金属部品を溶かそうとする。

 だが…

 

「解除」

 

 小大が“個性”を解除すると、小さくなった粗大ゴミが元の大きさに戻る。

 麗日は、大きくなった粗大ゴミを浮かせていく。

 

「ツインインパクト『解放(ファイア)』!」

 

 庄田が“個性”を発動すると、麗日が浮かせた粗大ゴミが弾き飛ばされた。

 

「どわァ!!」

 

 三人は、庄田の“個性”の衝撃で吹き飛ばされる。

 すると庄田が二人に指示を出す。

 

「およそどの方向にいるかはわかった。姿を見られないよう展開、第二弾装填」

 

 

 

 エミリー

 本名 柳レイ子

 “個性”『ポルターガイスト』

 身近にあるものを操る事ができる! 

 ただし動かせるのは人一人分程の重量! 

 

 ルール

 本名 小大唯

 “個性”『サイズ』

 触れた物の大きさを変えてしまう! 

 生物には適用されない! 

 

 マインズ

 本名 庄田二連撃

 “個性”『ツインインパクト』

 打撃を与えた箇所に任意のタイミングでもう一度打撃を発生させられる! 

 二度目の打撃は数倍の威力になる! 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「レイちゃんとゆいゆいとにっくんのコンボ…! 姿が見えなくても遠距離攻撃できるってのが厄介だな…頑張れー! お茶子っち、みなっち! あと峰田!」

 

 ひなたは、B組チーム3人のコンボに驚きつつA組チーム3人を応援していた。

 そして物間と戦っている緑谷と心操の方を見る。

 

「ひー君とデッくんは……」

 

 そう言ってモニターに目を向けた瞬間、ひなたは目を見開いていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 緑谷を洗脳した物間は、不敵な笑みを浮かべながら緑谷に命令する。

 

「かかったね、緑谷くん。そのままB組陣地の檻へと走っていけ!」

 

「待て、行くな緑谷!」

 

 物間が緑谷に命令すると、緑谷はB組の陣地の方を向く。

 心操は、緑谷を行かせまいと捕縛武器を巻きつけて止める。

 すると物間は、さらに緑谷に命令する。

 

「おっと、それから君を邪魔する奴はちゃんと返り討ちにするんだ。そのまま一緒に檻に連れてってあげてよ」

 

 物間が命令すると、緑谷は心操の捕縛武器を掴み、そのまま力任せに心操を投げ飛ばした。

 緑谷に投げ飛ばされた心操は、そのまま後ろの配管へと叩きつけられる。

 

「ぐぁ…!!」

 

 緑谷に投げ飛ばされた心操は咄嗟に受け身を取るが、衝撃までは殺し切れずに頭を負傷し、額から血を流す。

 心操は、緑谷に攻撃されて決して軽傷ではない傷を負ったが、それでも緑谷に喰らいついた。

 だが今の緑谷の前では無力に等しく、あっさり返り討ちにされる。

 

「これで厄介な二人は喧嘩モード。さて、庄田達のところへ行くか」

 

 物間は、緑谷と心操が交戦している間に軽い身のこなしで他の三人と合流しに行く。

 心操は、緑谷を激カワプリズンへ行かせまいと捕縛武器で縛りつけて喰らいついた。

 だがワンフォーオールで身体能力を増強している緑谷相手にはまるで歯が立たず、洗脳を解くどころか触れる事もできずにボロボロになっていく一方だった。

 それでも心操は、操られている緑谷を助けようと喰らいついた。

 

「緑谷!! 俺は自分の為に言ってるんじゃない!! お前を助けたいんだ!! だから頼む!! 話を聞いてくれ!!!」

 

 心操が叫ぶと、心操の声が緑谷に響いたのか、緑谷の動きが一瞬止まる。

 すると、その瞬間だった。

 緑谷の背後から人影が現れ、緑谷に急接近すると体当たりを仕掛けた。

 その人物を目に捉えた心操は、僅かに目を見開く。

 

「麗日!」

 

 緑谷に体当たりを仕掛けたのは、麗日だった。

 心操を一方的に攻撃する緑谷をその目で捉えた麗日が、二人を助ける為に全速力で駆けつけてきたのだ。

 麗日は、緑谷を正気に戻そうと、自分にかけていた“個性”を解除して緑谷に体当たりを仕掛けた。

 だが捨て身の体当たりも虚しく、『黒鞭』で防がれて逆に衝撃波を喰らい、ヘルメットを吹き飛ばされて頭を負傷する。

 それでも麗日は、怯む事なく右手を振り上げると、緑谷にビンタをかました。

 

「デクくん、しっかりして!」

 

 麗日が危険を顧みずに緑谷にビンタをして叫ぶと、緑谷の目に光が灯る。

 ようやく正気に戻った緑谷は、ボロボロになった心操と麗日を見て自分のしてしまった事を悟った。

 

「…! 麗日さん、心操くん…その怪我…僕は何て事を…! 本当にごめん!」

 

「それより、物間を止めるぞ!」

 

 仲間を傷つけてしまった緑谷が狼狽えていると、心操が緑谷に今すべき事を話す。

 緑谷は、洗脳されていた時の心操の言葉を思い出し、心操の意図を汲んで頷いた。

 

「うん!」

 

 緑谷は、心操の言葉に頷くと、物間のいる方を振り向く。

 緑谷は、物間の洗脳をトリガーに発現した“個性”を発動しており、物間の方を向くと頭の中で鳴り響く警鐘の音が大きくなる。

 

(4代目の“個性”、『危機感知』…!)

 

「あっちだ!」

 

「うん!」

 

 緑谷は、『危機感知』で物間を見つけると、心操と麗日と一緒に物間を追った。

 一方で物間は、緑谷、心操、麗日の三人に追われていた。

 

「ちっ、3対1か…立て直す暇もくれなさそうだ」

 

 そして心操が捕縛武器を物間に投げつけようとしたその時、三人目掛けて粗大ゴミが降ってくる。

 三人は、咄嗟に降ってきた粗大ゴミを避けた。

 三人が視線を向けた先には、粗大ゴミを操る柳がいた。

 

「物間大丈夫?」

 

「ナァァイスポルターガイスト!」

 

 すると、庄田と小大も駆けつけてくる。

 

「麗日さんが急にそっちに行ったから何事かと思ったら…」

 

「ん」

 

「いたァアオラアア!!」

 

 三人の姿を目で捉えた芦戸と峰田は、酸とボールで攻撃を仕掛ける。

 

「ん」

 

 だが、小大によってあっさり防がれた。

 すると芦戸が緑谷達三人に尋ねる。

 

「三人共ブジ!?」

 

「皆集まった!」

 

「「乱戦だ!」」

 

 A組チームの叫び声を皮切りに、戦いを観ていた誰もが予想していなかった乱戦が始まった。

 一方で、物間はというと、小大の“個性”でボルトを大きくし、柳の“個性”で巨大ボルトを操って投げつけていた。

 心操は、捕縛武器でボルトをいなすと、捕縛武器を構えながら緑谷と麗日に向かって叫ぶ。

 

「緑谷、麗日! 行け!」

 

「でも、心操くんは…」

 

「俺はここであのバカを迎え討つ。お前らは芦戸と峰田を助けてやってくれ」

 

 心操は、真っ直ぐ物間を見据えながら言った。

 その目を見た麗日は、男同士の真剣勝負の邪魔をするのは野暮だと考え、心操の指示に従う事にした。

 

「デクくん、行こう」

 

「うん! 麗日さん、掴まって!」

 

 麗日が言うと、緑谷が頷く。

 だがそうはさせまいと物間が大量のゴミを投げつけてくる。

 

「だァれがバカだって!?」

 

 物間は、三人目掛けて大量のゴミを投げつけた。

 だが心操は、物間の投げつけてきたゴミを全て捕縛武器で防ぎ、緑谷と麗日を逃がした。

 そして、捕縛武器で掴んだドラム缶を物間目掛けて投げ返す。

 

「事実だろ。バカにバカって言って何が悪い」

 

「!」

 

「おい物間。お前には、前からずっと言いたかった事が山ほどある。覚悟しとけよ」

 

 心操は、額に青筋を浮かせて物間を睨みつけていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、その様子をモニターで見ていたA組はというと。

 

「何か…心操の奴、キレてねーか?」

 

「大丈夫だよ」

 

 不安がる瀬呂に対し、ひなたが声をかけた。

 

「ひー君、怒ってるけど目は冷静だ。ひー君はああいう時が一番強いから」

 

「旦那自慢かよひなたちゃん!」

 

「ちょ、やめて」

 

 ひなたが心操の事を信じてモニターをまっすぐ見据えていると、葉隠がひなたを冷やかし、ひなたは顔を真っ赤にした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、心操は、物間と対峙していた。

 

「物間。確かにさっきはしてやられたよ。俺達がお前の成長を知らないのをいい事に、緑谷を煽りまくって俺の“個性”で洗脳した。まぁ、良い手だとは思うぜ。自分の専売特許を真似されて負ける事程悔しい事は無いもんな。()()()、言われた事は無いか? オリジナルに比べて“個性”の使い方が雑で未熟だって」

 

 心操が物間を煽ると、物間の表情が引き攣る。

 心操の言葉は、一学期に物間が試験で赤点を取った時にブラドキングに言われた言葉だった。

 

「お前は、どんなに強え奴の“個性”をコピーしようと、そいつ以上になれる事は絶対にない。お前にできる事なんか、他の誰かがお前よりずっと上手くできる事なんだよ。何でもできるってのはな、逆に言えば()()()()()()()()って事だ」

 

 心操は、物間の弱みを的確に見抜いて煽りまくった。

『何でもできるが何者にもなれない』、それは物間のような他人の“個性”を使う“個性”を持つ者が必ず突き当たる壁だった。

 心操はわざとこのような言い方をしたが、本来物間の“個性”であれば、使い方次第で誰よりも強くなれる“個性”だった。

 だが物間自身が燻っているせいで『何でもできる』という強みを活かし切れず、ヒーロー科の中でも赤点の常連という醜態を晒している事が、似た悩みを抱えつつも努力で克服した心操を怒らせる事に繋がったのだ。

 

「何で俺がお前の相手をしてるかわかるか? 似た者同士だからだよ。俺は弱いから、一人じゃ何もできない“個性”だから、どんなに足掻いたって他人頼りの脇役止まりだ。だけど、何者にもなれないお前はそれ以下だって言ってんだ」

 

 心操は、冷静に怒りながら物間を煽る。

 普段の物間なら嫌味の一つでも返してやるところだったが、『洗脳』の“個性”を使っている心操には反論すらできなかった。

 

「俺の言ってる事が間違ってるっていうなら、この場で俺を倒して証明してみろよ。何者かになれるなら、俺を倒す事くらいわけはないだろう!?」

 

 心操は、物間に投げつけられたボルトやナットの雨を捕縛武器でいなしながら煽った。

 心操を黙らせたかったら、力強くで止めるしかなかった。

 

「何だ、この程度か? 言っておくが、俺はまだ言いたい事の1割も言い切れてねえぞ」

 

 心操が降り注ぐ鉄屑をいなして距離を詰めていくと、物間は爆豪の“個性”のカートリッジを使って右手から爆破を放つ。

 だが心操は、爆破にも一切怯まずにさらに距離を詰め、物間が投げてきたドラム缶を盾にして爆破を防ぐと逆に物間にドラム缶を投げ返す。

 

「爆豪はもっと凄かった」

 

 心操が爆破をものともせずに逆にドラム缶を投げ返してくると、物間は咄嗟に切島の“個性”に切り替え、心操の攻撃を防ぐ。

 だが心操は絶え間なく鉄屑を投げ返し、物間に決して浅くはないダメージを与えた。

 

「切島はもっと硬かった」

 

「っ……」

 

 心操が歩み寄ってくると、物間は顔を引き攣らせてひくっと口角を吊り上げながら冷や汗を流す。

 サポートアイテムを使ってコピーした“個性”も簡単に対応され、“個性”の残機が減っていく一方だった。

 バックラーに装填した“個性”も時間切れとなり、小大と柳の“個性”も10秒ほどしか残っていなかった。

 

「相手をよく見て、予測する。ひなたや先生、先輩方に習った事だ。本気で来いよ、物間。どんな小細工しようと、真っ向から叩き潰してやる」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、その様子をモニターで見ていたB組はというと。

 

「心操の奴、あんなに強かったのか…!?」

 

「生身でアレだよな…?」

 

「誰だよ心操は力でゴリ押しすれば勝てるって言った奴!? どう見てもゴリゴリの武闘派じゃねーか!!」

 

 B組は、生身で小大と柳の“個性”を受け流す心操に対して驚いていた。

 それを見たひなたは、得意げに笑っていた。

 

「ふふふ、これがウチのひー君よ。ひー君は、冷静に怒ってる時が一番強いからね」

 

「彼氏自慢が露骨ねひなたちゃん」

 

 ひなたが調子に乗って彼氏自慢をすると、蛙吹がツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方で、物間は心操と交戦していた。

 最初はコピーした“個性”で一方的に心操を攻撃していた物間も、小大と柳の“個性”が時間切れとなり、ナットやボルトによる攻撃が使えなくなってしまった。

 物間はバックラーに新たなカートリッジを装填して対応しようとするが、腕を捕縛武器で絡め取られ、そのまま引き寄せられて蹴りを喰らう。

 

「ぐ…!」

 

 物間は、咄嗟に右腕のバックラーで心操の蹴りを防いだ。

 だが次の瞬間には、心操の肘が物間の鳩尾に突き刺さっていた。

 

「遅い」

 

「かはっ…!!」

 

 心操は物間に肘打ちを叩き込み、ひなたと相澤に習った格闘術で一瞬のうちに物間を組み伏せた。

 心操は、捕縛武器で物間をギチギチに拘束しながら『問いかけ』を行う。

 

「なあ、今どんな気分だ? 散々煽ってきたA組に煽られて、頼みの綱の“個性”も生身で躱されて負ける気分は」

 

 心操が尋ねると、物間は薄ら笑いを浮かべる。

 この状況では何もできないと悟ったのか、洗脳されるリスクを知りながら口を開いた。

 

「気分? アハハ、そうだなァ…『解放(ファイア)!!』」

 

 物間が庄田の“個性”の発動条件を満たした瞬間、物間の右頬にドンッと衝撃が走り、その衝撃で洗脳が解除される。

 物間は、あらかじめ庄田の“個性”を発動した状態で自分に触れ、心操に話しかけられた時に自分で洗脳を解除できるように対策していたのだ。

 物間は、してやったりと言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「…って感じかな」

 

 物間がそう言って笑った、次の瞬間だった。

 

 

 

「「うわあああああああ!!?」」

 

 突然、どこからか芦戸と峰田の叫び声が聞こえる。

 それを聞いた心操は、僅かに目を見開く。

 

「…!!」

 

「確かに君の言う通りだ。でも、だからって黙ってやられる気はない。脇役なりに悪あがきさせてもらったよ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数秒前。

 芦戸と峰田は小大・庄田・柳の三人と交戦していた。

 

「アシッドショットー!! ピリピリ痛むよー」

 

「大」

 

 芦戸が酸の雫を三人目掛けて投げつけると、小大は粗大ゴミをさらに大きくして酸の雫を防ぎ、庄田は酸の雫を掻い潜りながら芦戸に接近する。

 

「この乱戦で持続ダメージはいただけない」

 

 庄田は、近くにあった鉄製のハンドルを芦戸目掛けて投げつける。

 

「ツインインパクト『解放(ファイア)』!!」

 

 庄田が“個性”を発動すると、弾き飛ばされたハンドルが芦戸目掛けて猛スピードで飛んでくる。

 すると、その直後だった。

 

「『グレープバックラー』!!」

 

 峰田は、マンホールの蓋にボールを貼りつけて作った盾でハンドルを防いだ。

 

「危ねェ!」

 

「峰田ァ!」

 

 峰田は、自身のボールが自分にはくっつかず跳ねる性質があるのを利用し、ボールを投げてそれをトランポリン代わりにする事で高速移動を可能にしていた。

 

「全て計算通りよ! そうさ庄田二連撃!! 計算通り! オイラが『ツインインパクト』の威力に耐え切れずこうなる事もな!!」

 

「余裕か!!」

 

 峰田が庄田の攻撃の衝撃で飛ばされ顔面を芦戸の胸に押し付けられて幸せそうな顔をしていると、芦戸がツッコんできた。

 

「もー!! こうだ!! 『アシッドレイバック』!!」

 

 芦戸は、峰田の頭を掴んで配管の上に着地し酸を靴底から出して滑ると、その勢いを利用して高速回転し峰田を投げ飛ばした。

 すると、峰田は自分でくっつけたボールで跳ね予測不能な軌道を描く。

 

「『グレープピンキーコンボ跳峰田』!!」

 

 峰田は、空中を高速移動しながら三人目掛けてボールを投げつける。

 すると柳は嫌悪感を剥き出しにして受け身を取った。

 

「最悪」

 

「避けるなよーぅ」

 

「退きたいところだが──…なかなかどうして機転の効いた立ち回り。策を講じる暇無し!!」

 

「ね」

 

 B組三人は、芦戸と峰田のコンボの前に苦戦していた。

 芦戸と峰田は、B組チーム三人にトドメの必殺技を浴びせようとした。

 

「「もらった!!」」

 

 だが、その時だった。

 

 

 

「「え」」

 

 突然、二人の足元の配管を固定していたボルトが全て弾け飛び、真下の配管が全て崩れる。

 高所で暴れ回っていた二人は、下の配管が全て崩れた事で真っ逆さまに落ちていく。

 

「「うわあああああああ!!?」」

 

 完全に足場から意識が逸れていた芦戸と峰田は、叫び声を上げながら下へ下へと落ちていった。

 それを見た柳は、この場にいない物間の仕業ではないかと勘付く。

 

「今の、まさか物間…?」

 

 柳の考え通り、このタイミングでボルトが外れたのは物間の仕業だった。

 物間は、自分が負けて捕まった時のせめてもの悪足掻きとして、あらかじめA組を嵌める為の罠を配管に仕込んでおいたのだ。

 

「何にせよ、今がチャンスだ。二人とも」

 

「ん」

 

 庄田が指示を出すと、小大と柳が頷く。

 小大は鉄屑を片っ端から大きくしていき、柳がそれを操り下の二人に投げつけようとする。

 だが、その時だった。

 

 

 

「『黒鞭』!!」

 

 突然、どこからか伸びてきた黒鞭が芦戸と峰田を絡め取り、落下を防いだ。

 鞭で絡め取られた二人の視線の先には、“個性”を発動して宙に浮く緑谷がいた。

 

「みど…「緑谷ァアア!!」

 

 緑谷に助けられた芦戸は目を見開き、峰田は思わずドバッと涙を流す。

 緑谷が芦戸と峰田を抱えて浮き上がると、B組チーム三人は緑谷達三人に狙いを定める。

 柳は、当初の予定通り『ポルターガイスト』で鉄屑を投げつけようとした。

 

「ウラメシい奴…!」

 

 だが次の瞬間、気配を消して柳の背後に忍び寄った麗日が、柳を手刀で気絶させた。

 柳を気絶させた麗日は、そのまま流れるように柳を組み伏せた。

 

「確保!!」

 

 麗日が柳を組み伏せると、庄田と小大が目を見開く。

 

「な…」

 

「レイ子!?」

 

 庄田と小大は、何が起こったのか理解できないまま柳を倒されたので動揺していた。

 そんな中、緑谷、芦戸、峰田の三人が庄田と小大の目の前に現れる。

 峰田は、庄田と小大目掛けてやたらめったらに頭のボールを投げた。

 

「オラアアアア喰らえ『GRAPE RUSH』!!」

 

「『アシッドショット』!!」

 

「ん」

 

 峰田がボールを投げ、芦戸が酸を浴びせてくると、小大はドラム缶を盾にして防いだ。

 すると芦戸は、次の盾を用意しようとした小大にドロップキックを仕掛ける。

 

「っだぁ!!」

 

「んんっ!」

 

 芦戸がドロップキックを仕掛けると、小大は巨大化したナットを盾にして防いだ。

 だが芦戸のキックによって重心がズレ、先程の攻撃で芦戸が撒いた酸で足を滑らせてしまい、そのまま峰田のボールがくっついたドラム缶に叩きつけられて拘束されてしまった。

 一方で緑谷は、黒鞭の反動を利用して一瞬で庄田との距離を殺すと、渾身の蹴りを庄田の鳩尾に叩き込んだ。

 

「『ネブラスカスマッシュ』!!」

 

「ゴハァ!!」

 

 緑谷の蹴りを喰らった庄田は、そのまま吹き飛ばされて意識を失う。

 B組3人を倒したA組4人は、倒した3人を連れて自陣の激カワプリズンに向かった。

 4人が自陣に到着すると、ちょうど物間を気絶させて拘束した心操が、激カワプリズンに物間を投獄していた。

 

「心操くん…! 勝ったんだ」

 

「うん、メチャクチャ暴れてきたから叩いて気絶させた。…けど、完全にしてやられたよ。これじゃいまいち締まらないな」

 

 緑谷が声をかけると、心操は若干引き攣った表情を浮かべながら言った。

 

『第5セット! 何だか危険な場面もあったけど、5ー0でA組の勝利よ!』

 

 ミッドナイトが勝敗を言い渡し、最終試合が幕を閉じた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

『これにて5セット全て終了です。全セット皆敵を知り己を知りよく健闘しました』

 

 ミッドナイトが実況をすると、A組はブラドキングとは対照的に公平な実況をするミッドナイトを支持した。

 ミッドナイトは、続けて試合全体の勝敗を発表する。

 

『第1セットA、第2セットA、第3セットA、第4セットA、第5セットA、よって今回の対抗戦! A組の勝利です!!!』

 

「「「YEAAHH!!!」」」

 

 ミッドナイトが全試合の勝敗を言い渡すと、A組はガッツポーズをして喜んだ。

 

「ほぼ全員謀ってた」

 

「そこまで対抗心メラメラだったわけじゃないけど…」

 

「ね、何だかんだ悔しいよねー、むー」

 

 塩崎は涙を流しながら心を痛め、吹出と小森は試合に勝った分余計に悔しがっていた。

 そしてその後、第五試合の講評が行われる。

 

「今回のベストは麗日と心操だ。あの状況でよく咄嗟の判断ができた」

 

「本当ね! 緑谷くんを正気に戻した心操くんと麗日さんの迅速な判断、素晴らしかったわ。友を落ち着かせる為に身体を張って止めに出る! そうよそういうのでいいの! 好きよ!」

 

 相澤とミッドナイトは、麗日と心操を褒めた。

 すると、芦戸が麗日を冷やかす。

 

「麗日ぴゅーんってすぐ飛んでったもんねえ。速かったもんねえ!」

 

 芦戸が揶揄うと、麗日は顔を真っ赤にしながら反省点を言った。

 

「考え無しに飛び出しちゃったので、もうちょい冷静にならんといかんでした…でも…何も出来なくて後悔するよりは良かったかな」

 

「良い成長をしてるな。麗日」

 

「麗日さんと心操くんが僕を正気に戻してくれなかったら、今頃どうなってたかわからなかった。二人とも、ありがとう!」

 

「いや、そんな…」

 

 麗日が照れながらも嬉しそうにしていると、相澤は麗日を褒める。

 緑谷も、自分を助けてくれた二人に礼を言った。

 一方ブラドキングも、B組に対し講評をしていた。

 ブラドキングがB組の講評を終えると、心操が物間に歩み寄り、試合中の無礼について頭を下げて謝った。

 

「悪い。捕まえる為とはいえ言い過ぎた」

 

「ハハッ、何を謝る事があるんだい心操くん? 君は僕を止める為に最善を尽くした。君がズバッと言ってくれたおかげで気付いた事もあるしね。しかしまあ君、とんだ役者だよ。僕を焚き付ける為にわざと悪役を演じたんだろ?」

 

「いや、怒ってたのは本当。お前に言った事も全部本心。けど、最後の反撃は予測できなかった。『真っ向から叩き潰す』とか大口叩いといてあのザマじゃ、こっちの立場が無いよ。あの時のお前は、誰よりも主役だったと思うぜ」

 

 心操は、思った事を包み隠さずに物間に伝えた。

 物間はポカンとした表情を浮かべていたが、すぐにいつもの調子に戻った。

 

「フフ、君の悔しがる顔が見れなかったのは残念だったけどね」

 

「こっちこそ」

 

「ワァー」

 

 物間が心操に嫌味を言うと、心操も言い返し、それを見ていたひなたは間の抜けた声を出す。

 お互い全力をぶつけ合ってどこかスッキリした表情を浮かべており、二人の間には友情のようなものが生まれていた。

 心操がA組のところへ戻ってくると、ひなたが真っ先に声をかける。

 

「ひー君! また腕を上げたね! デッくん正気に戻してからの立ち回りとかマジファインプレーだったし! 僕、思わず『わー!』って言っちゃったもん!」

 

 ひなたが感動した様子で話しかけると、心操は微笑みながらひなたの頭を撫でる。

 

「……ありがとな」

 

「えへへー」

 

 心操がひなたの頭を撫でると、ひなたは嬉しそうに顔を蕩けさせた。

 すると他の生徒達が二人を冷やかす。

 

「相変わらず仲がよろしいようで」

 

「カップルだカップル!」

 

「ヒューヒュー!」

 

 他の生徒達が二人を冷やかすと、心操はやれやれと言った様子で頭を掻きひなたは顔を真っ赤にして両手で顔を覆い隠していた。

 

「ちょっと、やめてよ…!」

 

「まあでも…な」

 

 ひなたが顔を真っ赤にして冷やかしを止めようとすると、心操は『事実だしな』と言わんばかりに軽くひなたを肘で小突き、ひなたはさらに顔を赤くしてついには蹲ってしまう。

 すると峰田が喚き散らす。

 

「死にさらせェェェ!!! リア充は死刑!! 炙れェェェ「黙れ」

 

 峰田が血眼で嫉妬を爆発させていると、相澤が峰田を捕縛して黙らせた。

 相澤は、峰田を捕縛したついでに二人を冷やかした生徒達も睨みつける。

 

「お前らもだ。静かにしろ。まだ講評続いてるぞ」

 

「てゆーか先生ー、峰田最低だったんでもっと断罪して下さーい」

 

「はァ!? オイラは庄田達を身体張って翻弄したんだが!?」

 

 芦戸が訴えると、峰田が不満そうに叫んだ。

 ちょうどその時、物間が高笑いをする。

 

「フフ…今回は確かに僕らB組に黒星がついた。しかし!! 内容に於いては決して負けてはいなかった! つまりだよ!? 今からもう一回やれば次はわからない!!」

 

「やんねえよ。もう今日の授業終わりだ」

 

 物間が高笑いしていると、ブラドキングがツッコミを入れる。

 それを見た心操は、呆れたような笑みを浮かべていた。

 

「諦め悪いなぁ物間の奴」

 

 心操が物間を見て笑っていると、ひなたは心操と物間の距離が縮まった事に驚いて二度見していた。

 すると、相澤が物間に声をかける。

 

「ああそうだ。話のついでで悪いが、物間、相澤。お前らちょっと明日エリちゃんのとこ来い」

 

「…………?」

 

 相澤が言うと、ひなたはキョトンとした様子で物間の方を見た。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そしてその後、A組寮では。

 B組の何人かがA組と話していた。

 ちなみに峰田はというと、芦戸にルドヴィコ療法をされ断罪されていた。

 

「ね、ホークスの写真無いの? プライベート!」

 

「ム…今丁度…」

 

 小森がグイグイくると、常闇は少し戸惑った様子で答える。

 一方で、A組の女子達も、B組の女子達と交流を深めていた。

 

「ゆいゆいマトリョーシカあげる」

 

「んん!」

 

「拳藤さん、今度の期末は合同でお勉強会をやりません?」

 

「おぉ! それ良いな!」

 

「今度ウラメシい映画の鑑賞会やるけど来る?」

 

「ウチ怖いの苦手…」

 

 一方、麗日、葉隠、蛙吹の三人は口田が連れてきたペットのウサギを見て盛り上がっていた。

 

「ウサギだー!! 可愛いいい!!」

 

「ケロ」

 

 麗日、葉隠、蛙吹が口田のウサギを可愛がっていると、ひなたも一緒に混じって口田に尋ねる。

 

「わああ!! カァイイねぇ。甲ちゃん、この子名前なんていうの?」

 

「結…バナナが好物なんだ」

 

「「「可愛いいいいい!!」」」

 

「ねえ抱っこしていい!?」

 

「………!」

 

「やったあ!! 正義は勝つんや!!」

 

 ひなたが尋ねると口田はオドオドしながら意外と高い声で答え、女子達は結を撫でながら可愛がっていた。

 口田に許可を取ったひなたは、結を抱き上げる。

 心操がその様子を微笑ましそうに見ていると、B組の常識人男子四天王が心操に声をかける。

 

「心操お前ちょっとこっち来い」

 

「ん」

 

 回原が心操の腕を引いて連れていくと、その様子をひなたが目撃し怪訝そうな表情を浮かべる。

 4人は、ひなたに聞かれないくらいの距離を取ってから本題に入った。

 

「お前さ、相澤と付き合ってんだろ!」

 

「…何でそう思うんだ?」

 

「いやわかるわ! あれだけイチャついてて気付かない方がおかしいって!」

 

「そういうもんかな」

 

 円場がコソッと心操に尋ねると、周りには付き合っている事を伝えていないので心操は一応シラを切るが、側から見たらどう見ても隠す気がないくらい距離が近いので鱗がツッコミを入れる。

 

「ちなみにさ、どっちから告ったの?」

 

「俺」

 

「マジかぁ!」

 

 泡瀬が尋ねると心操が即答し、4人は意外と言いたげなリアクションをする。

 ヒーローの卵といえど男子高校生なので、4人ともそういった話題には興味があった。

 4人が色々と尋ねると、心操は微かに顔を赤らめながら照れ臭そうにボソボソと話す。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして翌日。

 

「ゆうえいの…ふのめん…」

 

 壊理が怯えた様子で通形の後ろに隠れると、物間が発作を起こして笑い出した。

 

「アハハハ何言ってんのかなァこの子ォ! 何言ってんのこの子ォ!?」

 

「文化祭の時君の事『雄英の負の面』*1と教えたんだ」

 

「僕こそ正道を征く男ですけどォ!?」

 

「よく言うよ…」

 

 物間が高笑いをしながら尋ねると通形が答え、さらに物間が発作を起こして高笑いする。

 するとひなたは苦笑いを浮かべてツッコミを入れた。

 

「エリちゃん冬服カァイイねぇ。後で焼きリンゴ作って一緒に食べよっか」

 

「ありがとうございます」

 

 ひなたが上機嫌で話しかけると、壊理がペコリとお辞儀をする。

 すると緑谷が通形に尋ねる。

 

「あの…一体何が始まるのでしょうか」

 

 緑谷が通形に尋ねると、相澤が現れた。

 

「おう、緑谷、通形、悪いな呼びつけて。物間と相澤に頼みたい事があったんだが、如何せんエリちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎるんでな」

 

「僕を何だと思ってるんですかぁアハハハハ」

 

「食い合わせて」

 

 相澤が言うと物間が高笑いし、ひなたがツッコミを入れる。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「うーん…“スカ”ですね。残念ながらご期待には添えられませんイレイザー」

 

 そう言う物間の額からは、壊理と同じ角が生えていた。

 すると相澤が少し残念がる。

 

「…そうか。残念だ」

 

「エリちゃんの“個性”をコピー…!? 一体何を? それに物間くん、スカって…」

 

「溜め込む系の“個性”って事。僕は“個性”の性質そのものをコピーする。何かしらを蓄積してエネルギーに変えるような“個性”だった場合、その蓄積まではコピーできないんだよ。たまにいるんだよね」

 

「えっと…例えば、ファットさんの“個性”とかだったら身体に脂肪を溜め込んで初めて“個性”が発揮されるから、モノマーが“個性”をコピーしても脂肪の蓄積が無いとファットさんみたいな防御力は得られないって事だよね?」

 

「そういう事さ。っていうか呼び方!」

 

 物間がひなたを指差しながら言うと、ひなたは物間に尋ね、物間が答える。

 すると通形が相澤に尋ねる。

 

「何でコピーを?」

 

「エリちゃんが“個性”を発動させられるようになったとしても、使い方がわからない以上また暴走するかもしれない。だから物間がコピーして使い方を直に教えられたら彼女も楽かと思ってな。そう上手くはいかないか」

 

 相澤が言うと、壊理は申し訳なさそうに俯く。

 

「…ごめんなさい。私のせいで困らせちゃって。私の力、皆を困らせちゃう。こんな力、無ければよかったなぁ」

 

「エリちゃん…」

 

 壊理が角を押さえながら涙目になっていると、通形が壊理を心配し、物間は相澤を軽く小突いていた。

 すると緑谷は、壊理に話しかける。

 

「あのさ、使い方だと思うんだ。ホラ…例えば包丁だってさ、危ないけどよく切れるもの程おいしい料理がつくれるんだ。だから、君の力は素晴らしい力だよ!」

 

「私、やっぱりがんばる」

 

 緑谷が壊理にアドバイスをすると、壊理は顔を上げて微笑んだ。

 その様子をひなたが微笑ましそうに見ていると、相澤がひなたの頭に手を置きながら言った。

 

「心配するな、俺も何も物間一人をアテにしてたわけじゃない。こいつの“個性”はエリちゃんの“個性”とよく似てる。だからどのみちエリちゃんが回復したら“個性”の使い方を教えさせるつもりだった。安心しろ、エリちゃん。こいつは昔、“個性”を全く使いこなせなかったんだからな。夜中にトイレ行くのにも俺がわざわざついていかなきゃならなかったんだ。笑えるだろ?」

 

「な…!? ちょっと、バラさないで!?」

 

 相澤がひなたを親指で差して意地の悪い笑みを浮かべながら言うと、ひなたは慌てて相澤を止めようとした。

 すると相澤は、急に真剣な表情を浮かべて言った。

 

「最初のうちは周りに迷惑かけて、いっぱい苦しい思いをして、『こんな“個性”無ければ良かった』、それが口癖だった。でもな。そんな奴でも誰かを救けるヒーローになる為に力の使い方を覚えたんだ。だから、ここにいる誰よりもエリちゃんの気持ちをわかってやれる。“個性”の事で何か困ったらこいつに聞くといい」

 

「はい…! よろしくお願いします」

 

 相澤が言うと壊理がひなたに向かってお辞儀をした。

 するとひなたは、笑顔を浮かべて言った。

 

「じゃあこうしよっか。ここにいる皆は、今日からエリちゃんの先生でヒーローね。僕達は、“個性”の使い方とか、楽しい事とか、何でも教えるし、エリちゃんが困ったらいつでも駆けつけて助ける。その代わり、もし僕達が困って、エリちゃんに頼らなきゃいけない時が来たら、その時は助けてくれる?」

 

「……うん。がんばってみる」

 

「ありがとう! 改めて今日からよろしく!」

 

 ひなたがしゃがんで話しかけると、壊理ははにかみながら頷いた。

 こうしてひなたは、壊理に“個性”の指導をする事になった。

 

 

 

 

 

*1
83話で言ってるぞ! 酷いぞミリオ! 




個人的には、心操君と物間君の関係性が好きなので、原作では共闘したのをきっかけに仲良くなるなら本作では対峙したのをきっかけにお互いを意識する様になってほしいなぁと。
そんなわけでひー君は5回戦目で戦わせました。



                 試合表
             
                第一試合  
              試合時間 2分57秒
◯    相澤・蛙吹・上鳴・切島 5ー0 口田塩崎宍田円場  ×

                第二試合      
              試合時間 18分26秒
◯   青山・常闇・葉隠・八百万 4ー0 黒色拳藤小森吹出   ×  
 
                第三試合        
              試合時間 19分38秒
◯     飯田・尾白・障子・轟 4ー1 回原角取鉄哲骨抜   ×       
 
                第四試合       
              試合時間 2分47秒
◯    砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪 4ー0 泡瀬鎌切取蔭凡戸    ×

                第五試合    
              試合時間 6分40秒
◯ 芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田 4ー0 小大庄田物間     ×



本作の捏造技

『ネブラスカスマッシュ』
緑谷の本作オリジナル技。
『黒鞭』の反動を生かしたドロップキック。
『エアフォース』の要領で空気砲を足から噴射する事で威力が倍増する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。