抹消ヴォイスのヒーローアカデミア   作:M.T.

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再臨祭

 12月中旬、(ヴィラン)連合はギガントマキアを屈服させるため戦いを続けていた。

 だがそんな中、異能解放軍から義爛の携帯で電話がかかってきて義爛を人質に取った事を伝え、一時間以内に愛知に来なければ義爛を殺し警察やヒーローに通報すると脅してきた。

 

「…一時間以内に愛知に来いってよ。転送ありきの制限かけやがった。衛星カメラでロック…マーキングされてる。そんなモン個人で使える奴…事実なら詰んでるぜ。ゴリラの調教も済んでねェってのに……どうすりゃいいんだ」

 

 Mr.コンプレスが空を見上げながら言うと、トゥワイスが叫ぶ。

 

「考える事があるか!? 無いだろ! 大腸みてーなマフラーに丸サングラス、あんな悪趣味他にいねェ! 義爛は俺に居場所をくれた…!! 助けに行こう、今すぐに!!」

 

「もう殺されてるかも。言ってた事全部嘘かも。言ってただけだし」

 

「そうねぇ。どう考えたって罠じゃない。一旦頭冷やしましょ」

 

 トガは指でバツを作って止め、マグネも年長者らしくトゥワイスを落ち着かせようとするが、トゥワイスは反論を続ける。

 

「ゼロじゃねェ!! 生きてる可能性が少しでもあンなら行くべきだ!」

 

「無策で突っ込めってか、落ち着け。お前は何だってそう友達想いになっちまったんだ」

 

「はぐれ者だからだ!!」

 

「トゥワイス、いいか聞け。俺に考えがある」

 

 死柄木は、耳につけた小型無線機のスイッチを入れて氏子に声をかける。

 

「ドクター、聞いてたんだろ?」

 

『お前達のラジオが最近のマイブームじゃい』

 

(殺す)

 

 死柄木の質問に対して氏子が上機嫌で答えると、零は氏子に対して殺意を抱く。

 

『異能解放軍が生きていたとは! 驚きじゃよ〜! お前達は闇の活性を上げよるのう!!』

 

「…そうか、荼毘が使ってたハイエンド脳無を───!」

 

『無ゥ理じゃよ。他の子らはまだテスト段階に至っておらん!! 荼毘がの〜、フードちゃんの回収に失敗しなければの〜。オールフォーワンなき今増産も難しい!』

 

 氏子が言うと、Mr.コンプレスはガッカリした表情を浮かべる。

 

「何でも屋じゃねーのかよ━━…」

 

「いいよ、そんな事アテにしてたわけじゃない」

 

「じゃあ何でドクターに…?」

 

 Mr.コンプレスが尋ねると、死柄木がMr.コンプレスに尋ね返す。

 

「あのデカブツ起きるまであと何時間ある?」

 

「邪魔が入らなきゃ2時間と35分後に起きる」

 

「ドクター、荼毘の居場所は」

 

『今は…三重と滋賀の県境じゃな』

 

 氏子が言うと、死柄木はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「いいとこ居やがる……よし、“転送”頼むぜ、行くぞ」

 

 死柄木が言うと、スピナーが反論してくる。

 

「突っ込むのかよ! 相手の事何もわかってねぇんだぞ!! 何者かも!! “11万人”がマジだったらどうするんだ!」

 

「約一ヶ月も戦ってるとわかる。アレは無敵じゃない。体力が多すぎなんだ」

 

 死柄木が言うと、スピナーと零がハッとする。

 

「……そういう事か、『死柄木がどこにいても探し当て追ってくる』…」

 

「はは、マジかよ。そんなのアリか?」

 

「ギガントマキアをぶつけて戦わせる。流石のデカブツも少しは疲れてくれるだろ」

 

 死柄木が言うと、氏子が大きな声で叫ぶ。

 小型無線機からは、キーンとハウリングする音が聞こえる。

 

『狡いのォ〜〜!! 逆に全部ハッタリだったらどうするんじゃ!!』

 

「馬鹿が死ぬだけだ」

 

「……………行くんだな」

 

「そう言ってるだろ。ブッ壊してやる」

 

 死柄木ニヤリと笑うと、(ヴィラン)連合は泥花市へと転送された。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 転送された(ヴィラン)連合は、崖の上から泥花市を見下ろしていた。

 

「ザ・地方だな。大きくもなく小さくもなく…」

 

「まあ11万人もの戦士を自然に潜伏させておくには合理的…か。ハッタリじゃなきゃだけど」

 

「雰囲気は好きだぜ。ムカつくぜ」

 

 スピナー、零、トゥワイスは、泥花市を見下ろしながら言った。

 

「奴が起きるまであと1時間40分。マキアをぶつけるには俺達が戦ってねェといけねェ。これよう……かなりキツいんじゃね。ひょっとして」

 

 Mr.コンプレスが仮面をつけながら言うと、荼毘は面倒臭そうにぼやく。

 

「ったく、何で俺までこんな面倒な事を…」

 

 荼毘が文句を言うと、トゥワイスがメジャーを伸ばして攻撃し荼毘はそれを軽々と避ける。

 

「お前も義爛に紹介してもらっただろ!」

 

「関係あんのか?」

 

「てめェエエエ!! おい零何か言ってやれ! お前は引っ込んでろ!」

 

「僕に振るなよ」

 

「ちょっとやめなさいよあんた達」

 

 荼毘が気怠そうに言うと、トゥワイスが荼毘に食ってかかり、さらには零まで巻き込んだ。

 二人の喧嘩が聞くに堪えないので、マグネが二人を止めた。

 

「……! 誰か来てます!」

 

 トガが言うと、全員戦闘態勢を取る。

 正面からは何者かが猛スピードで滑ってきた。

 

「ストップ!! 私は案内役を仰せつかった者!!」

 

 (ヴィラン)連合の前に現れたのは、筋骨隆々でパツパツスーツを着たヒーローだった。

 

「いや誰?」

 

「……ヒーロー…!? 知らん奴だが」

 

「解放軍指導者と話したければ、私に付いて来たまえ!!」

 

 (ヴィラン)連合は、ヒーローに案内されて泥花市の中を進んでいく。

 泥花市には不自然な程誰もおらず、表通りを歩いているにもかかわらず誰ともすれ違わなかった。

 

「人がいねェ…」

 

「でも視線は感じるんだよなァ、気色悪い」

 

 零がボソッと呟くと、死柄木が建物の屋上で見張っているヒーローを見つけて呟く。

 

「……この町全部…」

 

「私の管轄は別だが、今日は特別さ!」

 

「その通り! ここは泥花市。ヒーロー含め人口の九割が潜伏解放戦士の“解放区”なのであります!」

 

 ヒーローが言うと、正面から何者かが現れヒーローは頭を下げて礼をしながら下がっていく。

 正面から現れたのは、解放軍幹部のトランペットとキュリオスだった。

 

「遠路はるばるようこそお越し下さいました! 本日は記念すべき日、あなた方は主賓。さァ、始めて参ります。異能解放軍“再臨祭”!」

 

 トランペットが指を鳴らすと同時に、民間人に扮した潜伏解放戦士達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 いきなり攻撃を仕掛けられた(ヴィラン)連合は、態勢を崩す。

 

「心求党の花畑じゃねェかよ━━━!!」

 

「ウッソ政治家まで!」

 

「偉い人!?」

 

「そこそこ」

 

「これ11万人ガチであるぞ!」

 

「何でもいい! 来たぞ、義爛は!?」

 

 トゥワイスが尋ねると、トランペットが塔を指しながら言う。

 

「ブローカーなら最高指導者と共に彼処でお待ちです!」

 

「あ! 変テコタワー!」

 

「来たら返すっつったろーがよ前チョロが!」

 

「フン…」

 

「死柄木弔!!」

 

 解放戦士達が一斉に攻撃を仕掛けてくると、死柄木は解放戦士達に触れて崩壊させる。

 

「とりあえずタワーへ」

 

「そういう事なら得意です!」

 

「ん」

 

 トガが前に出たその時、零が左眼の“個性”を発動させ、地面に何かが仕掛けられている事に気がつく。

 すると零は、咄嗟にトガを突き飛ばした。

 その直後、トガが踏み込もうとしていたあたりの地面が突然大爆発を起こす。

 

「あーあ、おニューの服が台無し」

 

「零くん」

 

 地面の爆発を喰らった零は、『無効』の“個性”のおかげでダメージを負う事はなかったものの、爆発のせいで服が焦げてボロボロになっていた。

 零とトガは、今の爆発で他のメンバーと分断されてしまった。

 すると、二人の前にキュリオスが現れる。

 

「連続失血死事件、その犯人渡我被身子ちゃんね。『女子高生はなぜ狂気に至ったか、生前に語られていた衝撃のインタビュー!』受けて下さる?」

 

「え〜〜、や」

 

 キュリオスが言うと、トガは露骨に嫌そうな表情を浮かべる。

 

「潜伏戦士達は日々訓練を積んできたの。肉体を、心を打ち続けてきた。より人らしく生きる為に。だから迷惑なのよ。後発の…大義もないあなた達が取り沙汰される現状。トガヒミコ、インタビューは嫌いなようね。でもごめんなさい。ネタへの遠慮なんて一年目で捨てちゃった。トガヒミコ、あなたは今から丸裸よ。(ヴィラン)連合に興味は皆無。でもあなたは特別よ。少女の凶行とそのワケ…! とても良い記事になりそう。現役だった頃の血が疼いちゃう」

 

 キュリオスが話していると、キュリオスの隣にいた男の首にナイフが飛んでくる。

 キュリオスが前を見ると、いつの間にかトガと零がいなくなっていた。

 

「無神経な女は嫌われるぜ、オバサン」

 

 その言葉にキュリオスが後ろを振り向くと、後ろにいた解放戦士の顔が全員連合メンバーの顔になっていた。

 零は、“個性”を発動してキュリオス達解放戦士に幻覚を見せていた。

 トガは、キュリオスが零の幻覚に気を取られている隙に頭上からナイフを振り下ろそうとする。

 だがその時、キュリオスは周りの解放戦士達に触れて“個性”を発動した。

 

「っだ!?」

 

「行儀の悪い子達ね。取材中だというのに…」

 

 零は咄嗟に受け身を取ったが、“個性”の切り替えが間に合わずにダメージを負う。

 すると零の視線が逸れた事で解放戦士達にかけていた催眠が解け、自らを爆破して零を吹き飛ばした戦士達はニィッと笑う。

 解放戦士の自爆攻撃で吹き飛ばされたトガは、そのまま近くのラーメン屋のガラスの扉を突き破る。

 するとキュリオスは、興奮した様子でラーメン屋の床を指差す。

 

「ああ! そこ! 気をつけて!」

 

 

 

 BOOOOM

 

 

 

 突然、店内が大爆発を起こした。

 それを見た零は、思わず声を張り上げる。

 

「トガ!」

 

「戦士達に慈悲はないの」

 

 

 

 気月置歳

 解放コード キュリオス

 “異能”『地雷』

 触れた物を起爆装置に変える! 

 殺傷力は低いが数でカバー! 

 

 

 

「延命したければ受けて下さい、インタビュー」

 

 解放戦士が一斉にトガに襲いかかってくると、トガは注射器を戦士達に刺す。

 

「チウっ」

 

 トガは、マスクをつけて戦士達の血を吸おうとする。

 

「直飲みチウチウマスク───…」

 

「シリンジ! 血を摂取し変身する異能! なるほどそうやって! しかも…複数人の摂取でこちらに候補を絞らせない! 身のこなしもさることながら、只の殺人鬼だけでは説明のつかない生存スキルですよね! どういった経緯で身に付けたのでしょうか──!!?」

 

 

 

 BOOM

 

 

 

「!?」

 

 トガが血を飲むと、突然体内が爆発した。

 すると解放戦士達の体内も爆発し、爆発を喰らった戦士はニィと笑いながら倒れた。

 

「変身して紛れ込もうだなんて考えちゃダメ! あなたにお話伺う為にこっちも対策してるから! 自身が起爆装置になる事も厭わぬ戦士があなた達を異能で追い詰めますけど、こういった今の状況いかが思われますか!?」

 

「味方を爆弾にして総攻撃かい。御宅ら相当沸いてんな」

 

 キュリオスが不敵な笑みを浮かべると、零は口から流れた血を拭いながら言った。

 零は、右眼の“個性”で次々と解放戦士達を気絶させていく。

 だが解放戦士達は、キュリオスの合図で次々と爆発し、零の体力を奪っていく。

 

「いってええ!?」

 

 インターバルで左眼の“個性”が使えない零は、モロに爆発を喰らい大ダメージを負った。

 爆破を喰らった零がその場に倒れ込むと、キュリオスはゴミを見るような目で零を見下す。

 

「あなたには興味ありません。今は渡我被身子の取材中。大人しくそこで死んでなさい」

 

「ババア…!」

 

 キュリオスが零を見下すと、零が憎まれ口を叩く。

 するとキュリオスは零を足蹴にし、“個性”を発動した。

 

「がっ!!」

 

 キュリオスによって身体を爆弾に変えられた零は、全身を爆破される。

 身体の内側から爆発させられた零は、口から黒煙を吐き、意識を失って白目を剥く。

 戦士達は、零を確実に殺す為、意識を失い地面に伏した零をリンチした。

 一方でキュリオスは、戦士達の自爆攻撃を何度も喰らってボロボロのトガにインタビューをしていた。

 

「渡我家長女8月7日生まれ17歳! 中学卒業式出席後失踪! ご両親への突撃取材はご覧になられましたか!? 中学の同級生にインタビューした映像は!? 皆言ってましたよ! とても明るく聞き分けの良い子だったと! だからこそ何故!! 何故あんな事をと───!!」

 

 キュリオスが取材を続ける中、戦士達はトガを袋叩きにした。

 トガは、次々と襲いかかってくる戦士達の首にチューブを巻きつけ、そのまま首をへし折って返り討ちにした。

 血を浴びたら爆発するので、刺殺は得策ではない。

 トガが中年男性の戦士の首にチューブを巻き付けて頸椎をへし折ろうとしたその時、男性は“個性”を発動して手を鋭利なナイフに変形させ、自らの腹を掻っ捌いてトガに血と臓物を浴びせる。

 すると直接血や臓物を浴びたトガは、大爆発を喰らった。

 

「ぎゃ!!」

 

「何故普通の暮らしを捨てたのか!! 自身の口から聞かせて頂けますか!! 私は知っています、あなたの苦しみ!! 何故あなたは狂気に至ったか!!!」

 

 キュリオスが興奮気味に尋ねた直後、突然ゾワッと全身に寒気が襲う。

 

 

 

「普通の暮らしって、何ですか?」

 

 トガは、笑顔を浮かべてキュリオスに尋ねる。

 

「やっと答えてくれましたね」

 

「解放軍さん、とっても素敵な世の中作ろうとしてるので私あなた達好きですよ」

 

 トガは、ニィと口角を上げて不気味な笑みを浮かべた。

 

「私も普通に生きるのです」

 

 トガが言うと、キュリオスは興奮気味に舌舐めずりをする。

 

「普通に生きる、興味深い言葉です。それがあなたの素の顔。やはり私の勘は衰えてなかった…! あなたは超人社会の闇を体現する者」

 

「うぅ……」

 

「戦士達の捨て身の攻撃を喰らってボロボロ。可哀想に、異能の抑圧によって自分を殺した不幸な少女、それがあなたなんでしょ? 渡我被身子。『“個性”カウンセリング』、自他理解の歪みを矯正し社会性の擦り合わせを施すプログラム。もちろん完璧なプログラムではないし、個人差をより強く感じてしまうという問題を抱えています。血を飲み変身する、生まれつき持つその異能によってあなたは血に強い興味を引かれるようになった。しかし真の不幸は、憧れという誰もが抱く普通の感情。血と憧れ、噛み合ってしまった2つの要素は到底社会に受け入れられるものではなかった。だからあなたは蓋をした。自身を抑圧し仮面を作った」

 

「うるさいなあ!」

 

 トガがナイフを投げつけると、キュリオスは腕輪を盾に変えて“個性”を発動し、ナイフを吹き飛ばした。

 キュリオスは、貼り付けたような笑みを浮かべながらボロボロになったトガに歩み寄る。

 

「あなたの普通と解放軍の目的に相違はありません。なればこそあなたは解放軍の正しさを立証しうる人柱となれるのです。死して悲劇を確立しましょう。あなたの人生は、現代の聖典として語られるでしょう。私の推測、間違っていたらご指摘を。あなたの口からお聞かせ下さい。でなければこのインタビューは完成しません」

 

 キュリオスがそう言って倒れそうになるトガを抱きしめようとした、その時だった。

 

 

 

 BOOOM

 

 

 

「!」

 

 突然、キュリオスの後ろから爆発音が聞こえる。

 振り向くと、戦士達の身体が爆散して血肉が雨のように降り注ぎ、戦士達の血を浴びて真っ赤に染まっている零がいた。

 

「黙って聞いてりゃあ、ピーピーうるせえんだよクソババア。普通がどうとか幸せが何だとか、お前らの腐った常識を俺らに押し付けんなよ」

 

「な…!?」

 

 零が血塗れの姿で近づいてくると、キュリオスが目を見開く。

 どう見ても致命傷を受けたはずの零は、大量の血を浴びて真っ赤に染まり、血反吐を吐きながらも笑っていた。

 “個性”を発動して髪が逆立ち、両眼とも光っていた。

 命の危機が“個性”を急激に引き延ばし、両眼の“個性”を同時に使えるようになっていた。

 

「お前、どうして生きて…!?」

 

「道端の砂利に俺が殺れるかよ。大義? 信念? 鬱陶しいぜ。俺はただ、どうでもいいものを無関心に壊してく。それだけだ」

 

 零は、ニィッと不気味な笑みを浮かべた。

 するとトガも、倒れる前に足を踏み込んで笑ってみせた。

 

「嫌な人…私はちっとも不幸じゃない。嬉しい時にはニッコリ笑うの、あなた達が好きな人にキスするように、私は好きな人の血を啜るの。私は不幸なんかじゃないの」

 

 そう言ってトガは、腰のポーチから血の入った瓶を取り出す。

 戦士達が零にやったようにトガに纏わりついて自爆攻撃を浴びせようとすると、トガの身体が一回り小さくなり、トガは戦士達の隙間を縫って逃げ出した。

 トガはひなたの姿に変身し、小回りのきく体格になった事で戦士達の攻撃から逃げ切っていた。

 

「変身…!! なるほど血のストック! やだ…泣かせないで!! 知ってるわ! あなたの“異能”は外見だけしか変わらない、『せめて最期は可愛らしく』…ああ可哀想!!」

 

 ひなたの姿になったトガを見たキュリオスは、興奮気味に叫んだ。

 戦士達は、一方的にトガを追い詰めていく。

 まるで舞い踊るように大袈裟な身振り手振りをしていた零は、右眼を光らせたまま両手の指をパチンと弾く。

 するとその瞬間、キュリオスが戦士達に仕掛けた“個性”が暴発し、戦士達の身体が四散する。

 

「あはは、いけねえ、楽しくなってきた。ねえ誰か指揮棒持ってない?」

 

 零は、踊りながら戦士達の身体を次々と四散させていった。

 二人が戦士達を次々と殺しながら逃げると、キュリオスは右手の盾でトガに爆破を浴びせる。

 キュリオスの爆破を喰らって変身が解けたトガは、今度は麗日の血を使って変身する。

 

「ふふふ、ひなたちゃんの血も、お茶子ちゃんの血も素敵」

 

 麗日の姿に変身したトガは、恍惚とした表情を浮かべていた。

 そんなトガを左眼で見た零は、ある事に気がつき、ニィッと笑う。

 そしてコソッとトガに話しかけた。

 

「トガ、俺に触れろ」

 

「なんで?」

 

「いいから。お前が『好き』そうなもん見れるぜ」

 

 零が左眼の“個性”を解除しながら言うと、トガは零に向かって手を伸ばす。

 するとその時、キュリオスが右手の盾を振りかぶりながら接近してくる。

 

「あなたの言葉を!! 下さいよ!!」

 

 キュリオスがそう叫んだ瞬間、トガが零の手に触れた。

 すると次の瞬間、零の身体がふわりと空中に浮き上がる。

 

「お茶子ちゃんの“個性”が、使える…!」

 

 空中に浮いた零の姿を見たトガは、目を見開いて嬉しそうに笑う。

 キュリオスは、宙に浮いた零を見上げて驚いていた。

 

「何で…彼女の“個性”届では確かに外見だけと…まさか…今…伸ばしたとでも!? 死への恐怖が──“異能”を!!」

 

「ううん、私は恋して生きて普通に死ぬの。私はもっと好きになる」

 

 そう言ってトガは『無重力』を解除した。

 すると零の身体は、重力に従って急降下し、キュリオス目掛けて落下していく。

 それを見たキュリオスは、微笑みながら言った。

 

「とっても素敵な見出し。最高の記事に

 

 

 

 ドカァッ

 

 

 

 キュリオスの頭上に落下した零は、そのままキュリオスの頭を掴んで地面に叩きつけた。

 重力と零本人のパワーが相まって、キュリオスは地面にめり込んだ。

 

「「「キュリオス様ぁあああ!!」」」

 

 地面にめり込んで意識を失うキュリオスを見た戦士達は、涙を流しながら叫ぶ。

 そんな中、トガと零は、互いに肩を貸し合って物置の影へと隠れた。

 

「フフ…ボロボロ…負担が大っきい」

 

「あーあ、つい調子乗って殺りすぎた。デカゴリラ用の戦力が減っちゃった」

 

「仕方ないよね、だって、気に入らないものは壊すんだもんね、弔くん」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 一方、トガと零を除く(ヴィラン)連合のメンバーは解放戦士達と交戦していた。

 トランペットからキュリオスの敗北を聞かされた戦士達は、一斉に死柄木に襲いかかる。

 

「死柄木ィ!!」

 

 死柄木は、ブロック塀の上に飛び乗ると解放戦士の顔に触れて“個性”を発動した。

 すると、触れていない戦士にまで“個性”が伝播していく。

 死柄木は吐瀉物をぶち撒けながら、襲ってきた戦士全員に“個性”を伝播させて全員崩壊させた。

 それを見ていたスピナーとマグネは、思わず目を見開く。

 

「死柄木…お前…」

 

「嘘でしょ…今、触れてなかったわよね…?」

 

 塀から飛び降りた死柄木は、不気味な表情を浮かべていた。

 

「リーダーがやってんなら俺もいいよな。元より殺さず温存なんて向いて…」

 

 荼毘が言いかけたその時、巨大な氷の両手を生やした外典が飛び降りてくる。

 荼毘は、外典を見てポツポツと口を開く。

 

「氷…氷ね…俺もちょっとは強くなったかな、わかるようになってきた。強いだろ、お前」

 

「蒼炎の使い手荼毘。連合で唯一広域攻撃可能。何故すぐに炎を出さない…何かを待っているのか、はたまた“異能”に問題アリか」

 

「おいおいどうやら知らねェな!? 仕方ねェ、教えてやるよ。特別だぜ?」

 

 荼毘は、舌打ちをすると蒼炎を外典目掛けて放つ。

 

「氷は溶けちまう」

 

 外典は、氷の柱を伸ばして上空へ舞い上がり炎を回避した。

 

「そうか。それは大変だ」

 

 外典が“個性”を発動すると、至る所から氷が外典の元へと集まってくる。

 そして、集まった氷は巨大な龍となって空を舞う。

 

「知らないようだから教えてやる。僕は氷を操る。ずっと異能を鍛えてきた。学校も行かず、ヒーローなんかよりもずっと強く、最高指導者が僕を強くしてくれた」

 

「素敵な人生歩んだな! 可哀想に!」

 

「生半可な炎で氷が溶けると思うなよ」

 

 荼毘と外典は、それぞれ広範囲に及ぶ炎と氷をぶつけ合った。

 冷やされた空気が一気に熱された事で膨張し、突風を巻き起こす。

 

「うわっ!!」

 

「荼毘ィ! 加減を考えろ!!」

 

 Mr.コンプレスは、味方まで包まんとする勢いで炎を放つ荼毘に向かって叫ぶ。

 (ヴィラン)連合は分断され、スピナーとマグネは死柄木と一緒に塔へ向かい、Mr.コンプレスはトゥワイスを見失っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「ハァ、ハァ、嘘だろ。事実さ。どこに行っちまったんだって──…心配したんだ。へっちゃらだよ。あああ畜生!!! 何てこった!!」

 

 トゥワイスが見つけたのは、物置の中でボロボロの身を寄せ合っているトガと零だった。

 トゥワイスが物置に駆け込んでくると、二人とも目を覚ます。

 

「仁…くん……」

 

「トガちゃん! 零! しっかりしろ!」

 

「うる…せ……生きてるよ。今、回復中…静かにしてくれ」

 

 トゥワイスが二人のもとへ駆け寄ると、零は肩で息をしながら言った。

 零は、右眼の“個性”で自分とトガを治していたが、発動限界が近づいているらしく右眼の光が弱く点滅していた。

 

「これが黙ってられるかよ!! うるせえ黙ってろよ!! ああ、二人とも血だらけだ!! 敵の血か!? 君の血だ!」

 

「お前…何言ってんだよ……」

 

「ダメだ、生きてくれ。連合の皆は…俺の居場所なんだ…!! あぶれちまった人間を、必要としてくれた…唯一の…! クソ…!! 畜生! ブッ殺してやる宗教…!!」

 

 トゥワイスは、仲間をボロボロにした解放軍に対して殺意を抱いた。

 その直後、トゥワイスの背後にゾロゾロと何者かが現れる。

 トゥワイスの前に現れたのは、スーツを着た大量の『自分自身』だった。

 

 

 

 近属友保

 解放コード スケプティック

 “異能”『人形』

 冷蔵庫や机など人と同程度の大きさの物を操り人形に変えられる! 

 

 

 

「お前の異能があればリ・デストロに万が一の事があろうと復活させられる! デストロの悲劇は繰り返さない! 分倍河原仁、わかるか? 使い方だ! 何故己の価値を理解してない! お前は解放軍に引き入れる!」

 

 そう言ってスケプティックは、大量の人形を操る。

 トゥワイスは、トラウマに苛まれつつも、“個性”を出して抵抗した。

 

「うああああああやめろおおおおおお!!!」

 

 トゥワイスは、次々と分身を生み出してトガと零を守ろうとした。

 だが、スケプティックの人形達は、無表情のままトゥワイスの分身を押しのけ、トガと零を殺そうとする。

 二人を殺そうとする人形達を見て、トゥワイスは再びトラウマを呼び起こされた。

 だがその時だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数ヶ月前、零はトゥワイスと同じタバコを吸いながら話をしていた。

 

「お前さ、せっかく良い“個性”持ってんのに、自分生み出せねえの勿体なくないか?」

 

「その話はやめろ、零。へっちゃらだぜ!」

 

「…………」

 

 零が話すと、トゥワイスはデリケートな話をほじくり返されたせいか不機嫌になる。

 すると零は、何を考えたのか、無言でトゥワイスの覆面をひっぺがした。

 

「あぁっ!? おい、やめろ、何すんだ! ああああ裂ける!」

 

 零がトゥワイスの覆面をひっぺがすと、トゥワイスは頭を掻きむしる。

 すると零は、トゥワイスの顔を掴んで自分の方を向かせる。

 “個性”を発動して青い瞳でトゥワイスを直視し、トゥワイスの心を落ち着かせる。

 

「大丈夫。僕がついてる。僕なら、お前にいい夢を見せてやれる。ここにいる皆が、お前のおかげで幸せでいられる、最高の夢だ。一緒にいい夢を見よう」

 

「零…」

 

 零は、荒治療でトゥワイスの弱点を克服させた。

 トゥワイスは、少しずつ自分の分身を生み出せるようになり、5体までなら連続で自分を生み出せるまでにトラウマを克服していた。

 これで、死柄木達の役に立てると思っていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 そして現在。

 人形が二人を殺そうとした、その時だった。

 

「どけよ偽物」

 

 突然、何者かが人形達を吹き飛ばした。

 そこにいたのは、大量のトゥワイスだった。

 

「俺は仲間を殺さない。“個性”『二倍』、その恐ろしさ思い知れや解放軍!」

 

 トゥワイスは、死柄木に頼まれてひなたの複製を試みた事があった。

 だが出来上がったのは、見た目だけは同じだが身体の構造が何もかも違う“無個性”の人形だった。

 そこで数ヶ月前に八斎會から奪った弾の複製を試みたが、それも失敗した。

 トゥワイスは、その時から仲間の役に立てなかった事を後ろめたく思っていた。

 そして、必ず仲間に報いたいいつもと思っていた。

 

「行こうぜトゥワイス!! 皆殺しの時間だぜ」

 

 トゥワイスが指図すると、大量のトゥワイスが人形を蹴散らしていく。

 戦士達が見たのは、何百人、何千人と湧き出てくる大量のトゥワイスだった。

 

「無限増殖『哀れな行進(サッドマンズパレード)』」

 

 大量のトゥワイス達は、解放戦士達に襲いかかった。

 各々の“個性”でトゥワイス達を殺していく解放戦士達だったが、数の暴力の前では丸で歯が立たず道路はあっという間に大量のトゥワイスで埋め尽くされた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、Mr.コンプレスは、次々と襲いかかってくる解放戦士達から逃げ回っていた。

 

「ったく、俺は喧嘩弱いんだよっ、逃げ足の速さと小細工が俺の取り柄だってのに」

 

 Mr.コンプレスは、解放戦士に向かってビー玉を投げつける。

 そのまま“個性”を解除すると、中から煙が飛び出し、Mr.コンプレスは煙に紛れ、解放戦士の間を縫って逃げた。

 だがMr.コンプレスを殺す為だけに集められた解放戦士達の多くは、当然感知系の“個性”の持ち主だった。

 古風な学生服に身を包んだ戦士がMr.コンプレスに襲いかかると、Mr.コンプレスは近くにいた戦士を圧縮し、圧縮した玉を投げつける。

 Mr.コンプレスは、“個性”を解除し、他の戦士を盾にして学生服の“個性”の戦士から逃げた。

 身体に電撃を纏った学生戦士は、生体電流を感知しつつイオノクラフト効果で浮き上がってMr.コンプレスを追いかける。

 放電量、感知能力の精度、電流を自在に支配し多彩な攻撃を生み出す応用力、それら全てにおいて、学生でありながら並のプロヒーローをも凌駕していた。

 Mr.コンプレスは、学生戦士の攻撃を避けつつ、ミスディレクションで他の戦士に紛れながら尋ねる。

 

「純粋に疑問なんだがよぅ、あんたヒーロー向きの“個性”だろう? しかもまだ若い。何でヒーロー目指さずこんな所にいるんだい?」

 

「吾はヒーロー一家に生まれ、稀代の天才と持て囃されてきた。だが、No.13ヒーロー『イナズマ』。あの女が吾の家の近くに事務所を構えてからは、見る目のない無能共は手の平を返して吾を蔑ろにするようになった。何故だか分かるか? 莫迦共は、あの女さえいれば吾は不要と考えたからだ。おかげで家族からは家で一番の足手纏いの烙印を押され、受験にも落ちて引きこもりになったよ。そんな吾を解放軍に引き入れてくれたのが、リ・デストロだ。リ・デストロのお役に立つ事だけが、吾の存在意義だ!!」

 

 そう言って学生戦士は、電流で砂鉄を巻き上げMr.コンプレスに攻撃を仕掛ける。

 その精度は、学生戦士が稀代の天才と持て囃されるのも頷ける。

 だが哀しい事に、それでもイナズマの足元にも及ばない。

 電気系統の“個性”の持ち主は、口を揃えて語る。

 彼女は、()()()()()

 天賦の才を持った者が不眠不休で努力を積んでもその背中を拝む事すら叶わない遙か怪物、それが五常雷華という女だ。

 Mr.コンプレスは、化け物と比べられた人間がいかに惨めかを察し、敵でありながら僅かながらに学生戦士に同情した。

 

「だいぶ拗れてるねぇ。可哀想に、“個性”に頼ってばっかだから親から見捨てられたんじゃねえの?」

 

「っ、黙れぇえええええっ!!!」

 

 Mr.コンプレスが学生戦士の心の傷を抉ると、学生戦士は激昂し、全身に電撃を纏って特攻する。

 こうなっては完全にMr.コンプレスのペースだ。

 Mr.コンプレスは、再び玉を投げつけて“個性”を解除する。

 するとその直後、スタングレネードが炸裂し、瞬く間にMr.コンプレスは姿を消す。

 

「こんなもの…!」

 

 学生戦士は、スタングレネードの光で前が見えずとも、周囲の生体電流を感知しMr.コンプレスを探そうとする。

 だがMr.コンプレスは、どこにも見当たらなかった。

 

(いない!?)

 

「いくら感知系の“個性”を持っていようが、所詮は人だ。意識の隙間は必ずある」

 

 背後から声が聴こえ、学生戦士が振り向くが、後ろには誰もいなかった。

 その直後、他の戦士から奪った絶縁マントを羽織ったMr.コンプレスが学生戦士の死角から現れ、身体に触れる。

 すると、バツンっと音を立てながら学生戦士の目玉だけが圧縮される。

 学生戦士は、目から血を噴き出しながら、激痛のあまりのたうち回った。

 

「ぐあああああっ!!」

 

「どうせ目玉無くなっても視えるだろ。せいぜいデカゴリラの餌として頑張ってくれ」

 

 そう言ってMr.コンプレスは、絶縁マントと圧縮した目玉を投げ捨てて逃げ去る。

 Mr.コンプレスが投げつけたのは、電波による探知を無効化する為に使われる、チャフを含んだスタングレネードだった。

 Mr.コンプレスの“個性”は、ギガントマキアとの戦闘を経て成長していた。

 一つは、一度に圧縮できる範囲が増え、触れていないものを圧縮できるようになった事、そしてもう一つは触れたものに対して圧縮できる範囲を正確に選択できるようになった事だ。

 今となっては、その気になれば家一棟を丸ごと圧縮する事も、一人に触れただけで周囲にいる数人を一度に圧縮する事も、相手の身体に指一本でも触れれば心の臓のみを圧縮して外傷を一切残さず即死させる事も可能だ。

 

「さてと…トゥワイスとトガちゃん達のところに行かねえと…」

 

 Mr.コンプレスがトゥワイスとトガ達を探しに行こうとした、その時だった。

 

「荼毘!! Mr.コンプレス!! 助っ人トゥワイス参上だぜえ〜!! 「荼毘! 「皆殺しだ──! 「いてえどけよ「痛たたたたた「荼毘!! 「コンプレス! 「おーい! 「トガちゃんと零がボロボロだ「おーい! 「生きてるか二人とも「コンプレス「皆殺しだ「助っ人参上「まだまだ増やすぜぇ「助っ人参「足踏むんじゃねーよ!」

 

「うっうるせー!!」

 

 トゥワイス達が一斉に喋り出すと、Mr.コンプレスが思わずツッコむ。

 

「おまっ…そんなに増やせたっけ!? トラウマは!?」

 

「ぶえっ「愛と「愛と勇気が塗り潰してくれたよ!」

 

「…よくわかんねーけど、ヒーロー物語の一話目みてえだな。(ヴィラン)だろ」

 

 Mr.コンプレスが尋ねるとトゥワイスが答え、それに対しMr.コンプレスがツッコミを入れる。

 

(ヴィラン)が仲間ァ助けちゃおかしいか!? 「そうだぜ! 「大切なんだ「良い事言うんだ俺は「数少ねェ仲間だから大切なんだ! 「ハッ!! 待てよ俺は馬鹿か!? 「否定はしねェ! 「喧嘩は並のこの俺より「そうか天才かよ「よーしここらで一発!! いや二万発!! お前らも増やしてやるぜェ! 連合どころか県になっちまうぜ、総人口!! さァ行くぞ(ヴィラン)県!!」

 

 すると、Mr.コンプレスが小声でトゥワイス達に話しかける。

 

「待てトゥワイス! 相手を壊滅まで追いやると後に来るギガントマキアにぶつける駒が無くなっちまう!」

 

「あのデカ男後何分で起きるんだ!? 「ナメプか? 「じゃあ荼毘はやめとこう「よく燃やすからな「皆殺しは!?」

 

「1時間と5分!」

 

「任せとけ! それよりトガちゃんと零が大変だ、俺に場所聞いて至急向かっ

 

 

 

 トゥワイスのうちの一体が言ったその時、巨大な氷がトゥワイスを突き刺し大量のトゥワイスが一瞬にして消え去った。

 

「「「「「俺達ィイイ━━━━━!!!?」」」」」

 

 荼毘は、大量の氷を操る外典に尋ねる。

 

「この街氷が特産か? 量がおかしいぜ」

 

「氷を操ると言った筈だが」

 

「あ━━…なるほどね」

 

 荼毘は、自分にはねてきた水が一瞬で凍ったのを見て理解した。

 

「僕は氷の温度も操れる。水道に氷を送り込み温度を下げれば、水は僕の手足へと凝固する」

 

「ハナからやれよな、イラつくぜ」

 

「解放軍の目指す先の未来では、異能の強さが社会的地位に直結する。つまり“異能を高める”事こそが“生きる”事そのもの!」

 

 外典は、さらに大量の氷を操ってトゥワイス達を蹴散らしてく。

 

「俺達ィ━━!!」

 

「異能の強さ以外に、生の価値は無い」

 

「そりゃ哀しいな、死ね」

 

「死ぬのはそっちだ蒼炎。お前の身体、さっきから焦げ臭いんだよ。相手の異能を見極めるのは基本中の基本。その爛れて剥がれ落ちそうな皮膚……お前──長く戦えないんだろ、己の炎に身を焼かれるから」

 

「焼け死にたいらしいな。いいぜ、見せてやるよ。全力ってやつを」

 

 そう言って荼毘は、両手から炎を放つ。

 荼毘は、青い炎だけではなく、心臓のあたりから白い炎を放っていた。

 それを見た外典は、思わず目を見開く。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 その頃、死柄木、スピナー、マグネは、戦士達の“個性”と外典の氷を避けながら塔に向かっていた。

 戦士達が死柄木に攻撃しようとすると、マグネは“個性”を使って戦士達を引き寄せ、まとめて殴り殺した。

 

「ああんもう邪魔よ!」

 

 スピナーは、様子がおかしい死柄木を心配していた。

 

「死柄木…お前大丈夫か!?」

 

「お前らは? 待ってた方が良かったか?」

 

「それ、わざわざ聞く必要ある?」

 

「この街に来なけりゃ通報されて大量のヒーロー達に追われてた。どっちを選んでもピンチだったろーよ」

 

「そうなんだよな、嵌めやがって。見ろよマグネ、スピナー。タワーが近いぜ。人も多くなってきた」

 

 三人がタワーに近付くと、大勢の戦士達が待ち構えていた。

 

「ねえ、ちょっと待って…」

 

「どんどん増えてねェかァ!!?」

 

 スピナーが驚いて声を上げた、その時だった。

 

 

 

「とらぁあああ!!!」

 

 大量のトゥワイス達が、身を挺して三人を守った。

 

「トゥワイス!? 多くね!?」

 

「どうしたのよそれ!?」

 

「ようスピナー! 「スピナー「氷でだいぶ減ったけどな「マグ姉! 「無事か「痛い痛い押すな「膝が痛え「トガちゃんと零が大変なんだ「死柄木! 「俺消えやすくなってねェ!?」

 

 大量のトゥワイスが三人に向かって喋り、死柄木はいきなり増えたトゥワイスに驚いていた。

 

「おいおい、マジか増えたのか!」

 

「ああ「ああ! 「ああ! 「ああ! 「これで少しは役に立つかなリーダー「ああ! 「ああ!」

 

「お前がいくら増えようが再臨の贄となるだけだ!!」

 

「ひえ〜!! 「こエ!! 「気味が悪いぜオカルトだァ!!」

 

 解放戦士が一斉に襲いかかってくると、トゥワイスはさらに増殖する。

 

「凄いぜトゥワイス。ついでにタワーまでの道拓けるか? あそこにボスと義爛がいると言っていた。騙してンのかもしれないが…実際近付くにつれ敵が増えてる。タワーを守るように…マキア用の駒はさておきボスはちゃあんと殺さね━━となァ」

 

「リーダー、おめーは俺に揺られて寝てろ。うっかり俺達一人で解放軍を手篭めにしちまうぜ!! 「俺!! あっちは任せろ!! 「どけどけどけどけ「待ってろ義爛すぐ行くぜ!! 「いて! 「よっ」

 

 スピナーは、解放戦士達を蹴散らしていくトゥワイス達を見て呆然としていた。

 

「もう…トゥワイスだけでいいんじゃねーか?」

 

「いーや……あいつは義爛を好き過ぎる…人の心を弄びやがって…許せないぜ解放軍」

 

 死柄木が言ったその直後、曲がり角から選挙カーが飛び出してくる。

 すると、選挙カーに乗ったトランペットがいきなり演説を始めた。

 

(ヴィラン)連合!! その首魁!! ここまで好きにさせてしまった事、誠に遺憾であります!』

 

「…政治家! 忘れてた」

 

「しつこいわね!」

 

『人はか弱き存在ではありません!! 誰もが“力”を持っている! 『再臨祭』に於いて示されるべきは人々が異能で悪に打ち勝つ姿!! 生を勝ち取る生身の力!! 主賓(ヴィラン)連合の解体を!! さァ解放せよ!! 力を集結させ!! 切り開きましょう新たな時代を!! 世に示しましょう、誰もがヒーローである事! 誰も! ヒーローではない事を!!』

 

「「「「「おおおおおお!!!」」」」」」

 

 トランペットの演説を聞いた戦士達は、一斉にトゥワイス達に襲いかかり消していった。

 

「ぐわっ!!! 「後は任せた俺! 「ぎゃっ」

 

 再び窮地へと追い込まれる中、スピナーは塔を見上げていた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「よーう、てめーか!? 俺達の居場所をブッ潰してえバカ教祖ってのァ!?」

 

 突然、塔のエレベーターからトゥワイスが現れる。

 

「随分ハゲてんじゃねーかてめ━━━━、ハゲ教祖じゃね━━━か! 失礼しました」

 

 トゥワイスがリ・デストロを罵倒すると、義爛が目を見開く。

 

「分倍河原…!」

 

「宮下と違って、捻りがないな」

 

 リ・デストロの額には痣が広がっていた。

 

 

 

 

 

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