「やっぱりなァ、他のモンと自分じゃ出来上がるスピードが違うのよ。自分の事は自分が一番よく知ってるからなァ! 失禁しながら許しを乞えやハゲ教祖!」
トゥワイスは、次々と自身と連合メンバーを増やしていく。
するとそれを見たデストロは感心した。
「下にも相当数の兵士がいたはずだが…スケプティックの言う通り素晴らしい異能だ」
「いいかてめーら! てめーらは! コピーだ!! よって! 死んでも存在が消える事はない! 安心しろ、お前らの墓は立ててやる」
「死ぬ前提でリーダーを増やすなよ」
トゥワイスがコピーの死柄木に声をかけると、死柄木は鬱陶しそうに言った。
「心配すんな! てめーらの遺志はてめーらの本物が受け継ぐ! 安心して特攻しろ! 復唱しろ! 『僕達は複製、死んでも死ぬ事はない!』心がスッと軽くなるハ「しねェよ誰だこいつら」
トゥワイスがコピーの荼毘に言うと、荼毘は不機嫌そうな表情をする。
「目の前のハゲが解放軍のボスだ!」
「え!? つーかお前そんな増やせたっけ!?」
トゥワイスがMr.コンプレスのコピーを作ると、Mr.コンプレスは驚いていた。
「そっか荼毘とコンプレスには道中会ってなかったな! 成長したんだよ!」
「え!? じゃあお前も複製なの?」
「馬鹿いえ俺は本物だ!」
「は? 俺が本物だが?」
「うるせェ! 誰が何だろうと今は皆の為ならタマ張れる、全員気持ちは同じだろ!」
Mr.コンプレスが尋ねると、トゥワイス達は次々に自分が本物だと主張し始める。
するとトゥワイスのうちの一体が他のトゥワイス達を黙らせて義爛の方へ走っていった。
だがその直後、トゥワイスの顔がパンッと弾け飛ぶ。
「!?」
「ホラな!? あいつは偽物だった!」
溶けて消えるトゥワイスの近くには、いつの間にかリ・デストロが立っていた。
「随分脆い。ところで君、人質の意味は理解しているのかね?」
「何したか見えた?」
「……聞くな」
Mr.コンプレスが尋ねると、荼毘が口を開く。
三人共リ・デストロの動きが見えていない様子だった。
「分倍河原、それ以上増やせば義爛を殺す。正規メンバーではない彼を殺すのは私も本意ではない」
リ・デストロがトゥワイスを脅すと、トゥワイスはその場で固まる。
すると死柄木がトゥワイスに声をかけた。
「大丈夫だトゥワイス。お前が作ったこの状況、1対…たくさんだ」
「俺達に分がある!」
「取り返しゃアいいんだな」
「「「「待て!!!」」」」
Mr.コンプレスと荼毘が飛びかかると、トゥワイス達は一斉に叫んで止めようとする。
その直後だった。
ボッ
突然リ・デストロの左腕が巨大化し、コピーを蹴散らした。
すると展望スペースの窓が割れ、暴風が突き抜ける。
「酷い連中だ。同じ土俵で争っているのが馬鹿馬鹿し…」
リ・デストロが目を向けた先には、ドロドロに溶け力尽きそうになっていたトゥワイスがコピーを増やしていた。
「義爛…」
「義爛!」
新たに増えたトゥワイスは、義爛を助け出す。
「いってえ…」
トゥワイスは、指がなくなった義爛の右手を見て思わず目に涙を浮かべる。
「指…マジで無くなってンのな…ああ畜生…! くそっ、右手だ、右手の指じゃねェかよ…!! お前右手でタバコを吸ってたよなぁ」
「ったく申し訳ねェ…俺から情報漏れちまった。商売人失格だ」
「…謝るな…! 悪い事してねェ奴は謝んなくていいんだよォ…」
義爛が悔しそうに謝ると、トゥワイスは泣きながら解放軍に怒りを抱く。
すると、背後からリ・デストロが近づいてくる。
「やはり“ごっこレベル”だな。組織としての目的がある以上、過度な情は枷にしかならない。我々の意志の前に散るといい」
リ・デストロが手を伸ばした、その時だった。
「高尚な夢をお持ちのようで」
突然、死柄木が背後から飛び出してきてリ・デストロの頭を狙って腕を振り抜く。
リ・デストロは、咄嗟に顔を逸らして回避し振り向くと、死柄木を見て目を見開く。
「生きているとは! 高尚な夢か…フフ…丁度良い! 君を量ろう」
「?」
「かつて一人の女性が異能を持つ子を産んだ。まだ異能に対し偏見の強かった混乱の世、止まぬ雑言、溢れる差別、愛しい我が子に石を投げられる日々。女性は小さな声で世の中に訴えた!」
リ・デストロが語りながら左腕を振るって攻撃を仕掛けると、攻撃が掠った死柄木の左耳が削ぎ落とされる。
「『これはこの子の“個性”です。この子が自由に生きられる世の中を』! しかし訴えは嘲笑と共に埋もれていった! 彼女が声を上げる事は二度となかった! 何故か!? 反異能の人々に殺されたからだ」
リ・デストロの巨大な左腕は、窓ガラスを突き破りさらに塔を破壊した。
「『“個性”の母』だろ馬鹿にしてんな?」
「失礼! 義務教育を受けていないものと。そしてヒーロー…ヴィジランテの隆盛と共に政府も混乱を是正し始める中、政策の一環で彼女の訴えが掘り返される。『異能は“個性”の範疇!』多様性だ! 意識改革! だが!」
リ・デストロは、死柄木の身体を掴んで振り上げる。
「実際に施行された政策はどれも今以上の異能の抑圧! 呼び名を変えても意味は無い。奴等が忌避したのは能力の使用そのもの。万人が自由に能力を使えなければ、真の自由は訪れない。デストロは想った! 『母さんの願った未来はこれではない』! 真の意味で異能を“個性”と呼べる世に!」
「母さん……?」
「奴等に都合の悪い真実だ。デストロの手記が何故売れているかわかるかね!? 国への反発! 真の自由! それらを背負い私はデストロの本懐を遂げる! デストロの末裔、血を継ぐ者! 私がリ・デストロだ! 歴史もないチンピラの破壊衝動に、我々以上の重みがあると思うか?」
リ・デストロは、死柄木にズイと顔を近づけながら尋ねる。
すると死柄木がトゥワイスに向かって言った。
「トゥワイス、義爛守るならクッション出しとけ」
「?」
「最初の一撃で…窓枠に引っ掛かってよ。眼下のあいつと目が合った」
死柄木が言うと、死柄木の意図に気付いたトゥワイスがハッとする。
「来てるぜ。あいつはきっとタワーに触る。俺ならそうする」
その直後だった。
ビキビキビキッ
本物の死柄木が塔に触れ、『崩壊』が塔全体に広がっていく。
すると塔は塵となって崩れ去った。
塔から落ちたリ・デストロの前にいたのは、手を翳している本物の死柄木だった。
「高いところから落ちたら死ねよなァ人として…お前がボスか? ……あれ? ……あれ…? お前…デトネラットのCM出てたよな…!?」
「答えを聞きそびれてしまったな…」
リ・デストロが不敵な笑みを浮かべると、額のアザがザワザワと広がっていく。
◇◇◇
時は少し遡りトゥワイス増殖直後、本物のトゥワイスはトガと零を介抱していた。
トゥワイスのコピーが喧嘩していると、本物のトゥワイスが黙らせる。
するとその直後、トゥワイスのコピーが吹き飛ばされる。
「!?」
その直後、人形達が次々とトゥワイスの元へやってくる。
スケプティックは、血眼でトゥワイスの元へ向かいながら人形を増やしていた。
◇◇◇
そして時は現在に戻り、スピナーとマグネはトランペットの演説を聞いてパワーアップした解放戦士達と戦っていた。
トゥワイス達とスピナーとマグネは、トランペットの方へと一直線に向かっていく。
「“バフ掛け”のお偉いさんが前線立つなよな! ロールも知らねー奴ァ即ブロックされちまうぜ」
「若者言葉か何かでしょうか? 意味はともかく…聡い判断であります。ただ、異能弱者にそれが敵うのでありましょうか。伊口秀一!」
トランペットは、両腕の腕輪をマスク型の拡声器に変形させると顔にはめて“個性”を使う。
花畑孔腔
解放コード トランペット
“異能”『煽動』
彼の声に宿る特殊な電磁波は、彼に心を許す者を高揚させ肉体・精神をブーストさせる!
声・すなわち空気の振動が大きければ大きい程効果は上がる!
「皆さん! 我々を脅かす敵に天誅を!」
「「「「うおお!!」」」」
トランペットが“個性”で煽動すると、パワーアップした解放戦士達は一斉にスピナー達に攻撃を仕掛ける。
トランペットは、壁に張り付いて移動するスピナーに向かって言った。
「“異能”『ヤモリ』。出来る事といえば壁に張り付くくらい。君は…いわゆる引きこもりだったそうですね。いじめられて。今此処にいる理由はその怨嗟でしょうか? 残念ながら、私には君が何かを為せる人間には見えません」
スピナーが崩れる塔に気をとられた一瞬の隙に、戦士の一人が這い寄ってスピナーに攻撃を仕掛けようとする。
するとマグネは、スピナーと戦士に磁力を付与し、戦士を弾き飛ばした。
「しん!!」
マグネが戦士を弾き飛ばすと、スピナーは弾かれた戦士を斬りつける。
マグネは、巨大な磁石を構えながらトランペットに突進した。
「ええそうよ。彼はステインに憧れて、流されてこんな場所まで来ちゃったコスプレ野郎よ。でもね。こんな奴でもリーダーを助けたくてここまで来たの。あんた達にケチをつけられる筋合いは無いわ!」
マグネは、トランペットに磁力を付与し選挙カーから引きずり下ろすと、巨大磁石で頭を殴りつけた。
するとトランペットのマスクにヒビが入り、戦士達が声を上げる。
「トランペット様!」
「引石健磁。“異能”『磁力』。『自身から半径4、5m以内の人物に磁力を付加できる』…でしたね。性別不合に理解のない周囲の人間から迫害を受けていたそうですね。貴方も伊口くん同様過去の怨嗟を晴らす為にここまで来たのでしょうか?」
「ねえ政治家さん。その情報、古いわよ!!」
マグネに殴られたトランペットが立ち上がり、距離を取りながら尋ねると、マグネは再び“個性”を発動する。
するとトランペットの頭上に、全身に鱗のようなものを纏った巨躯の女性戦士が降ってくる。
「避けて下さいトランペット様ぁあああああ!!」
飛んできた女性戦士は、空中で暴れながら叫んだ。
女性戦士は、マグネの“個性”で磁力を付与されていた。
マグネは、ギガントマキアや異能解放軍との戦いで“個性”が急成長し、磁力を付与できる範囲が以前の10倍の45mにまで増えていた。
そしてそのまま、女性戦士はトランペットに引き寄せられ、勢いよく地面に激突する。
「グァアアア!!!」
トランペットを下敷きにする為に磁力を付与された女性戦士は、無理な体勢で地面に叩きつけられたせいか、地面に後頭部を打ちつけて悲鳴を上げながら気絶していた。
咄嗟にサポートアイテムのシェルターを展開し、女性戦士の下敷きになるのを防いだトランペットは、グシャグシャにひしゃげたシェルターの中から出てくる。
「これは…なるほど、危機的状況が貴方の異能をさらに高次なものへと進化させたというわけですか」
「あんた達に教える事は何もないわ!」
トランペットがシェルターから出てくると、マグネは再び磁石を振りかぶる。
スピナーも、周りにいた戦士達をナイフで斬りつけて大きく飛び出すと、トランペット目掛けてナイフを振り下ろす。
トランペットは、咄嗟に後ろに退いてスピナーの振り下ろしたナイフを避けた。
「そういうこった、政治家さんよ!」
スピナーが言うと、トランペットは軽蔑したかのようにため息を漏らす。
◇◇◇
その頃、大量の溶けたトゥワイスの中に埋もれていた義爛とコピーのトゥワイスが顔を出す。
「生きてる…!」
「死柄木ならやると思ったぜ」
二人は、死柄木とリ・デストロの方に目を向ける。
リ・デストロは、“個性”によるものかいつの間にか巨大化していた。
「こんなデカかったっけな……? なァデトネラット、今どんな気持ちなんだ? いや、な? 11万何人だっけ? 数に任せて高みの見物決め込んでたんだろ? 格下相手にわざわざリンチの場ァ設けてさァ。ここまで来るこたーないとタカくくってよォ。その挙句に落っことされた気分はさ。どうなんだって聞いてんだよ」
死柄木が地面に触れると、崩壊が伝わっていき死柄木の靴まで塵になる。
「触れてないもんにまで崩壊が!? 義爛離れるぞ」
トゥワイスは、崩壊が伝わる前に義爛を抱えて走り出した。
リ・デストロは、崩壊が伝わる前に跳び上がって回避し拳を振りかぶる。
「怒ってるよ」
ドオッ
リ・デストロが拳を地面に叩きつけると、衝撃波が死柄木を襲う。
「私は怒りを溜め込むタチでね。お陰で額もこの通りさ。戦士達をたくさん殺してここに来たね!?」
リ・デストロは、痣で顔が真っ黒になっていた。
リ・デストロの放った衝撃波によって、死柄木の左手が弾け飛ぶ。
四ツ橋力也
解放コード リ・デストロ
“異能”『ストレス』
ストレスを溜めてパワーに変える。
溜め込む程に強靭・巨躯となっていく。
「悪さをするのはこの掌か!?」
リ・デストロは、死柄木の左の掌を摘んで潰す。
「『“個性”で為人を判断するのはやめよう』良い教えだ、私もそう育った! だが! “個性”は人格に直結するものだ! “五指で触れあらゆる物を崩壊させる”。君はどうだろう!? 先程は聞きそびれてしまったね! 死柄木弔! 君は何を背負い何を作る!? それすら虚ろの、何も生まない破壊を貪るだけの人間なのか!?」
リ・デストロがそう言って死柄木の左手を握り潰そうとする中、死柄木の目にボロボロになった少女の手が映り込む。
すると死柄木の脳裏に昔の思い出が駆け巡る。
「ならば君は、私に及ばない」
リ・デストロが死柄木の手を握り潰そうとすると、死柄木は薬指と小指でリ・デストロの人差し指に触れた。
すると、リ・デストロの指の表皮が剥がれ落ちる。
「!」
リ・デストロは、痛みのあまり死柄木の身体を弾き飛ばした。
死柄木は、頭と首を掻きむしりもがき苦しんでいた。
「ゲェッ、ア゛ア゛、あ゛──あ゛あ゛っ頭が…割れるっ」
死柄木がフラフラの状態で立ち上がった直後猛スピードでリ・デストロに接近すると、リ・デストロは痣で全身が真っ黒になる。
「私も、この『ストレス』を鍛えてきた…! だからわかる。格下と断ずるのは尚早だったな。そのダメージでも消えないところを見るに君は“本物”だろ?」
リ・デストロは、さらに巨大化し怪物と化しストレスで生み出した黒い物体を死柄木目掛けて投げつける。
「解放80%。戯れはここまでだ。『ストレスアウトプット』『負荷塊』」
ボォアッ
リ・デストロの攻撃を喰らった死柄木は、凄まじい威力の衝撃波を受け街ごと吹き飛んでいく。
吹き飛ばされた死柄木は、ボロボロの状態で地面に臥した。
「………まさかな…」
するとその時、リ・デストロの携帯が鳴る。
「どうしたスケプティック」
『リ・デストロ!! 気をつけて下さい! そっちに向かっている!』
「?」
『とんでもない奴が控えていた! リ・デストロ!! こいつら!! 隠してやがったんだ!! リ・デストロ! 聞こえていますか!? リ・デストロ!! 御身の安全を──』
スケプティックが叫ぶが、リ・デストロは負荷塊を喰らったにもかかわらず立ち上がれる死柄木を見て目を見開いていた。
死柄木は、負荷塊を投げつけられた際自身の防衛本能をも押し退けて『ただ壊す』ためだけに負荷塊に触れ崩壊させていたのだ。
「俺が何を作るって…? 当たり前だよお前…俺は本当にただ、壊すだけだ」
死柄木は、ポケットの中から手を取り出すと不気味な笑みを浮かべた。
「ならば消えろ。創造無き世に未来無し!」
「未来なんか、要らないんだ。その先はあいつらが好きにすればいい」
志村転弧は、ヒーローに憧れる普通の少年だった。
だがヒーローだった母親の菜奈を亡くした弧太郎は、そのトラウマから息子の転弧にヒーローの話をする事を禁止していた。
転弧の母親も祖父母も、転弧を心配はしたが弧太郎の味方をし夢を応援する事はなかった。
そんな中姉だけは転弧の夢を応援していたが、弧太郎が姉と一緒に勝手に書斎に入り菜奈と子供の頃の弧太郎の写真を見た転弧を叩き怒鳴ると、泣きながら責任を転弧に押し付けた。
罰として庭に置き去りにされた転弧は、愛犬を抱えながら泣いた。
『みんな…嫌いだ…』
その時、“個性”が発現し愛犬の身体が崩れる。
転弧は、訳の分からないまま姉と母親、そして祖父母に対しても“個性”を発動してしまい、次々とバラバラにしてしまった。
だが父親の表情と制止の言葉によって、家族を殺したのが自分の力である事、そして今まで望んでいた事を理解し、明確な殺意をもって父親を殺した。
家族を殺した転弧は、その後誰からも手を差し伸べられず途方に暮れていた。
だがそんな中、唯一転弧に手を差し伸べたのがオールフォーワンだった。
オールフォーワンは、転弧に家族の手を与え、新しい名前を与えた。
『死柄木弔』、それが転弧の新しい名前だった。
◇◇◇
一方、泥花市では死柄木を追ってきたギガントマキアが暴れ解放軍やトゥワイス達を蹴散らしていた。
「ぐあっ」
「止まらない!」
「止めろ!」
ギガントマキアが暴れる中、トゥワイスはトガを抱えて逃げていた。
零も、トゥワイスに肩を借りて一緒に走って逃げていた。
「ギガントマキア!! 解放軍頑張れよアリとゾウじゃねェか!!」
「あれじゃ体力削れねェぞ! 前よりデカくなってねェか!?」
「あいつ、死柄木の元に向かってる!」
一方Mr.コンプレスは、未だ外典と交戦している荼毘に声をかける。
「荼毘ィ!! 甘かった! 俺達とやってる時は本気じゃなかったんだ…! ギガントマキアは止まらない! 死柄木が危ねェぞ!! 早よケリつけろォ!!」
スピナーとマグネも、ギガントマキアから距離を取りつつ死柄木を心配していた。
「死柄木ィィイ!」
スピナーは、死柄木に向かって叫ぶ。
「こんなものも全て、要らない」
死柄木は、不気味な笑みを浮かべると父親の手を壊した。
「ストレス100%!!」
リ・デストロは、猛スピードで距離を詰めると両手に抱えたストレスの塊を死柄木にぶつける。
死柄木が振り切る前に塊を全て壊すと、衝撃波が街全体を襲い街が崩れていく。
「振り切る前に壊せばそこまででもないな」
そこには、ボロボロになりつつも笑顔を浮かべる死柄木が立っていた。
死柄木の姿を見たリ・デストロは、思わず目を見開く。
「デカいだけだなァ。わかるよ、目障りなものを思いっきり壊すと…愉しいよな」
「私の力は手段である! 人々を解放する為の! デストロの遺志を完遂する為の!」
リ・デストロがスイッチを押すと、地面から機械が飛び出してきてリ・デストロに装備されていく。
「窮屈そうだな、リ・デストロ」
死柄木は、うっすら笑みを浮かべながらリ・デストロを見据える。
リ・デストロは、全身に機械を纏った。
「デトネラット社謹製負荷増幅鋼圧機構『クレストロ』、150%だ」
「ああそう、そりゃいいや」
一方、トゥワイスはコピーに抱えられトガや零と一緒に逃げていた。
「近付き過ぎんなよ!? 俺らに気付いてねェ」
「あいつらを引きつけてくれてンのァ良いが──…圧倒的過ぎる。今のうちに皆と合流できれば…」
そしてMr.コンプレスと荼毘も、その場から離れようとしていた。
「珍しく早起きしやがって…! 今アレとぶつかりゃ連合全滅だ」
「氷野郎…もう少しで燃やしてやれたのに」
荼毘は悔しそうに“個性”を解除し、Mr.コンプレスは荼毘の方へ駆け寄ると小型無線機で氏子に助けを求める。
「ドクター! 聞いてんだろ! 転送頼む! マキアヤバ過ぎ! 皆死んじまう」
『ジョンちゃんを殺す気か』
「は!?」
『ジョンちゃんは転送を使う度に扁桃炎になるんじゃ!』
「知るか頑張れ! つーか嘘つけポンポン使ってただろうが!」
氏子が適当な嘘をついて転送を渋ると、Mr.コンプレスがツッコミを入れる。
すると氏子がさらに無茶振りをする。
『第三者に居場所が知られとる者と濃い付き合いをするつもりはない。解放軍のマーキングを外して出直して来なさい』
「あんた死柄木が死んでもいいのか? オールフォーワンの後継なんだろ!?」
『だからこそ追い込む必要がある』
一方外典は、氷に乗ってギガントマキアの元へ向かっていた。
外典は、大量の氷をギガントマキアにぶつける。
だがギガントマキアは、軽々と氷を弾き飛ばし瓦礫を外典に投げつけた。
外典は、氷の盾を作って瓦礫を防いだ。
「外典様!!」
そしてスピナーとマグネはというと、トランペットの選挙カーにしがみついていた。
「ぐっ、うぁあ!!」
「もっと早く走らせなさいよ! 追いつかれるわよ!」
ギガントマキアは、解放軍を蹴散らしながら一直線に死柄木の方へ向かっていた。
「主の後継!!」
だが、ギガントマキアは突然目を見開くと動きを止める。
ギガントマキアの視線の先には、死柄木がいた。
「150%ね。プルスウルトラってやつだ?」
死柄木は、不気味な笑みを浮かべると地面に手を触れて“個性”を発動する。
すると崩壊が地面に伝わっていき、街が崩れていく。
死柄木の“個性”は、トランペットの方にまで伝わってきた。
選挙カーと解放軍は、崩壊が伝わる前に逃げ出した。
スピナーやマグネも、選挙カーに押される形で死柄木のいる方角から遠ざかっていく。
一方トゥワイスのコピーは、義爛を連れて逃げていた。
一方スケプティックは、リ・デストロの身を案じていた。
死柄木は、地面に触れて次々と崩壊を伝播させていく。
重装甲を身に纏っていたリ・デストロだったが、装甲にも崩壊が伝わる。
リ・デストロは、崩壊が伝わる前に地面から飛び上がり“個性”の範囲外へと逃れようとする。
死柄木は、自分の“個性”で身体が壊れるのもお構いなしに破壊を続ける。
「ハハッ、ハハハ、ブッ壊れろ!!」
ズッ
死柄木は、高笑いしながら街を粉々に破壊していく。
リ・デストロの目に映ったのは、破壊衝動に身を蝕まれながらも満面の笑みを浮かべる青年の姿だった。
やがて崩壊が止まり、ギガントマキアはその光景を見て目を見開く。
リ・デストロは血塗れの鉄の破片を抱え両脚を失っており、巻き起こる煙の中から人影が現れる。
「脚、地面に触れちまったか。全身壊れる前に切り離したんだな。なァ、何で戦ってんだっけ?」
全身ボロボロになった死柄木は、左足を引き摺りながらリ・デストロの前に立つ。
「お前が喧嘩売ったからだよなァ」
するとそこへ、選挙カーと戦士達が駆けつけてくる。
「リ・デストロォ!!」
「最高指導者…あれが…」
「そんな…」
「皆さん! 最高指導者を救うのです!」
トランペットが“個性”を使って戦士達を煽動するが、死柄木の不気味な瞳に見つめられた戦士達は思わず慄き後退りをした。
すると、リ・デストロが右腕を挙げる。
「トランペット。これ以上は…無駄な死だ」
リ・デストロが言うと、トランペットはマスク型の拡声器を腕輪の形に戻す。
「彼らは皆私…いや、デストロの遺志に賛同し殉ずる覚悟を培ってきた者達。君の言う通り、喧嘩を売って負けた。殺るなら殺れ。私もまたデストロの遺志に殉ずる覚悟」
リ・デストロは、死柄木に向かって頭を下げた。
「異能解放軍はお前の後についていく」
すると、それを見ていたギガントマキアは死柄木にかつてのオールフォーワンを重ねて涙を流した。
「後継…!」
選挙カーにしがみついていたスピナーとマグネも、死柄木を見て目を見開いていた。
すると死柄木は、何かを思い出したように僅かに目を見開くと、ニカッと笑みを浮かべる。
「お前社長だから金あるよな!」
◇◇◇
泥花市再臨祭より一週間経過。
平穏な街で起きた悲劇。
犯人はヒーローに恨みを持った20名の男女グループ(目撃者談)。
計画的犯行と見られ、偽の情報でヒーローを街の外へ誘導し街を襲撃。
突然の災禍に見舞われた泥花市民が結託し抗戦。
ヒーロー達も合流し戦闘。
泥花市民に多くの犠牲者を出しながら最終的に犯人グループ20名全員死亡。
尚泥花市にはデトネラット社代表取締役社長四ツ橋力也氏も居合わせており、両脚切断の重傷を負うも一命を取り留める。
『訓練を受けていない一般市民の“個性”行使が被害拡大を招いた』とされる一方、世間では住民達の行動を英雄視する声が止まない。
不明な点が多く、捜査は続いている。
… ──というのが表向きのニュースで、
「いやー、雨降って地固まるとはこの事だね」
Mr.コンプレスが寿司を頬張りながら言うと、荼毘がツッコミを入れる。
「何もしてなかっただろ」
「ハッハ抜かせちゃんと逃げ回ってた」
「荼毘、食わねェなら貰うぞ!!」
「あァ魚嫌いなんだ」
スピナーが寿司を頬張りながら言うと、荼毘が軽く手を振った。
一方トゥワイスは、コピーのトガの葬式をしていた。
「うっう…トガちゃんごめんなァ…トガちゃんが血を分けてくれなかったら…今頃トガちゃんは…うう…」
「それやめて下さい」
トゥワイスが泣きながらりんを鳴らしていると、トガが寿司を食べながら不機嫌そうに言い放つ。
「私が生きてるので嫌です」
するとトゥワイスは、りん棒を捨てトガの遺影が飾られた台を蹴飛ばす。
「人の嫌がる事はやめましょう。ああ〜〜! 足が勝手に! 何してんだ足!! ボク悪い子…ぶたないで。ええ!? 何言ってんだ俺ァ!?」
「克服したんじゃねェのか。増えてねェか?」
「無理矢理な療法は却って悪化するらしい」
トゥワイスが一人芝居をしていると、他のメンバーが呆れた様子で見ていた。
するとそこへ、シャワーを浴びてきた零が戻ってくる。
「うーっす皆さんお揃いで」
「アラァ! ゼロちゃんカワイイ! どうしたのその格好!」
「ハゲが服くれた。僕の服ボロボロになっちゃったからさ。前の服ブカブカだったし、ちょうど良かったわ。ちょっと女っぽいのが気になるけど」
零が戻ってくると、マグネは零のニュースタイルにはしゃいでいた。
長い髪はポニーテールにしており、新しいコートにロング丈のトップス、防刃仕様のレギンスとブーツといった格好をしていた。
本人も自覚している通り、フェミニン系のアイテムで統一されており、黙っていれば美女に間違われる容貌だった。
零は、テーブルの上に置いてある寿司桶に目を移すと、軽い足取りでテーブルの前に座る。
「わーい寿司。あいついいハゲだ」
零は、上機嫌で席につくと、どこからかチョコソースとホイップクリームの絞り袋を取り出し、自分の分の寿司に勢いよくチョコソースとホイップクリームをぶっかけた。
それを見ていたスピナーは、顔を引き攣らせる。
「うげぇ…」
「んまいんまい」
食事中にゲテモノを見せられたスピナーは、わかりやすく顔色を悪くする。
零の寿司の食べ方を気持ち悪がるメンバー、周りの視線はお構いなしに寿司を頬張る零、そしてその零の髪を編み込むマグネと、中々にシュールな構図が出来上がった。
するとそこへ、スケプティック、トランペット、キュリオスが入ってくる。
零は、二人が寿司の注文を受けに来たのかと思いヒラヒラと手を振った。
「おー、来た来た。こっち寿司追加───…「時間だ来い」
「うるせーまだ寿司食ってるでしょーが!!」
零の注文を無視してスケプティックが指図すると、トゥワイスがキレて叫んだ。
数分後。
「あら零くん! ウロボロスについてのインタビュー受けてくれる!?」
(ババア…)
いつの間にか零の素性を知ったキュリオスは、つい先日までの態度が嘘のように興奮気味に零にインタビューを迫っていた。
結局連合の準備が終わるのを待っていたスケプティックは、ネチネチと愚痴を吐く。
「大体その寿司はウチの金で買ったものだが? 治療も映像編集も零とトガのコートもウチからの提供であってだな」
「ああ〜? 病院にいる筈のハゲがこのアジトにいるのは誰のお陰だっけ!?」
「ハゲのやらかしの慰謝料だと思えば安いもんじゃない?」
「やめましょうスケプティック。最高指ど…ン゛ン゛ッン゛、リ・デストロがお決めになられた方達です。リ・デストロの御言葉は依然、デストロの御言葉に変わりありません」
スケプティックが愚痴を吐くと、トゥワイスと零が反論しトランペットがスケプティックを窘めた。
連合メンバーは、地下の暗いホールへと招かれる。
そこには、かつて死闘を繰り広げた解放戦士の生き残り達、そしてギガントマキアがいた。
「解放戦士諸君!! リ・デストロである! これより、異能解放軍は生まれ変わる!!」
変わったデザインの車椅子に乗ったリ・デストロが、解放戦士達に向かって叫ぶ。
用意されたソファーには、死柄木が腰掛けていた。
「弔くんお手手全部壊れたんじゃなかったのですか?」
「一つだけ無事だったんだと。あの中で原型留めてたのは奇跡だよ」
「トレードマークにする気ですね」
トガとスピナーは、ヒソヒソと話し合っていた。
「デストロの遺志を世に啓蒙するにあたって、連合の存在は障壁であると!! 私はあの日まで! 信じて疑わなかった! 私の眼はあまりに狭窄であった! 血に捉われ! 教えに縛られた私はあそこで真の解放を見た! これは降伏ではない!! この死柄木弔こそが真の解放者であると! 畏敬の念に打たれたものであり、必然の譲位である! 今より解放軍は、死柄木弔を最高指導者とし再臨を果たす! より深化した解放の道を辿るにあたり、異能解放軍及び
「あ、行こ行こ」
連合メンバーは、一斉に壇上へ上がった。
すると死柄木が新たな名前を発表する。
「『超常解放戦線』。『
死柄木が言うと、元解放戦士達は一斉に雄叫びを上げる。
戦士達の中に紛れ込んでいたホークスは、内心焦っていた。
ホークスは、荼毘にベストジーニストの死体を差し出す事で超常解放戦線への潜入に成功していた。
死柄木は、ヒーロー溢れる超人社会でヒーロー以上の戦力を持ってしまったのだ。
「お疲れ様でございました、何かお飲み物でも」
演説が終わると、リ・デストロは死柄木に擦り寄ってきた。
すると死柄木は鬱陶しそうに言い放つ。
「失せろ」
「喜んで! 失せるぞトランペット!」
リ・デストロは、トランペットを連れて猛スピードで去っていった。
「ああやってのし上がってきたんかな」
「ああいう風にはなりたくないですねぇ」
スピナーは呆れ顔でリ・デストロが去っていく様子を目で追い、零は頭の後ろで手を組んでいった。
すると、突然死柄木が倒れる。
「っ…」
「おい」
「大丈夫かよリーダー」
「生きてんのが奇跡レベルのダメージだったからな…」
すると、今まで連絡を寄越さなかったドクターが小型無線機越しに話しかける。
『仰々しい名前じゃのう、まァ
「マキアは従った。あんたの言ってた“最低限の格”はついたと思うぜ」
「氏子ドクターか!?」
『記憶も戻り、“個性”も含め本来のお前に戻った。約束通り───…力を授けよう。お前がそれを望むなら。だが…その前に少々やってほしい事があっての。あるものを運んでほしい』
ホークスが『剛翼』で会話を盗聴しつつ元解放戦士達に声をかけていると、荼毘がホークスに声をかける。
「おい、何してるNo.2。嬉しそうだな」
「ああ! 皆に紹介頼むよ」
ホークスは、表面上は笑顔を浮かべつつ超常解放戦線を止めるための策を講じていた。