何とか赤バー維持してるぜ…ヤッタァ
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インタビュー
12月下旬、終業まであと数日。
「本日はよろしくお願いします」
男性が爆豪と轟に挨拶する。
A組の寮に訪ねてきたのは、記者達だった。
轟と爆豪は先日仮免を取得しその日に事件を解決したため注目を浴びており、現在注目の的となっている二人に取材を行うため記者達がA組寮に訪ねてきたのだ。
「あ!? 誰が「こちらこそよろしくお願いします」遮んな半分野郎!!」
爆豪が何かを言いかけると、轟が遮って挨拶をし爆豪が轟に対して怒鳴りつける。
その様子を、A組は少し離れた所で心配そうに見守っていた。
「大丈夫なんかなぁ…」
「かっちゃんは平常運転だね」
「聞こえてんぞてめぇら!」
不安そうに麗日とひなたが言うと、二人の会話を聞いていた爆豪がキレ散らかした。
かなりの不安要素を抱えつつ、轟と爆豪のインタビューが始まった。
「仮免取得から僅か30分後にプロ顔負けの活躍!! 普段から仲良く訓練されてるんでしょうか!?」
男性スタッフがカメラを向け、女性記者は若干引き攣った笑みを浮かべて二人に尋ねる。
すると案の定爆豪はムッスとした表情を浮かべて悪態をつく。
「そう見えンなら眼科か脳外科行った方がいいぜ」
「仲は良いです」
一方、轟はホケーとした表情を浮かべて平然と嘘をついた。
轟と一緒くたにされている事に苛ついて悪態をつく爆豪に対し、轟は記者達に失礼のないよう当たり障りのない受け答えをしていた。
すると爆豪が轟の返事に対してキレて怒鳴ってきた。
「ハア!? テキトーこいてンじゃねーぞいつ仲良くなったんだコラ」
「仮免補講で二人一緒にいる事多かっただろ」
「何だそのシステムは! 時間と親交は比例しねェンだよ」
「システムって何だ」
「知らねーよてめーも脳外科「あー…ダメだこりゃ」
二人の地獄のような温度差にA組は目を見開いて固まっており、心操が深くため息をついて呆れ返る。
◇◇◇
そして後日、A組の教室では。
「「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」」
上鳴と瀬呂は、携帯を見て爆笑するあまり涙を流していた。
二人が見ていたのは、轟と爆豪のインタビュー映像だった。
ただし、爆豪の台詞は丸々カットされており顔も見切れていた。
『仲は良いです』
「一時間もインタビュー受けて!!」
『はい、恐怖なく──…』
「爆豪丸々カット!! 見切れっぱなし!!」
上鳴と瀬呂が笑いすぎて滝のような涙を流しながら携帯を見せつけると、爆豪がイラついた様子で歯をガチガチ鳴らす。
「お蔵入りにならなくて良かったね」
「良くねえんだわ…!」
心操がフォローになっていないフォローをすると、爆豪がキレながらツッコミを入れる。
「ある意味守ってくれてたんやね」
「使えやぁああ…!!!」
麗日と蛙吹が憐れむような目を向けると、笑い者にされた爆豪は歯をカスタネットのように鳴らしていた。
すると後ろからヒョコッとひなたが現れ、爆豪の肩を軽く叩きながら声をかける。
「かっちゃん! あのね、物怖じせずに自分を態度で示せるのって、ヒーローに大事な素質なんだって! 知ってた?」
「ひなたちゃんそれ追い討ち」
「クソが!!」
ひなたは笑い者にされている爆豪を何とかフォローしようとするがフォローどころか傷口に塩を塗る発言をしてしまい、蛙吹がツッコミをいれ、ひなたに無自覚の追い討ちをかけられた爆豪はさらに荒れた。
ひなたが『常にブレずに自分を態度で示せるところは尊敬している』と伝えるつもりで放った言葉は、実際は爆豪が自分を態度で示しすぎたのが原因で全カットされているため完全に追い討ちでしかなかった。
「オールマイトから遠ざかってない…?」
「イカレてんだ」
「聞こえてんぞクソデクと玉ァ!!」
勉強をしていた緑谷と、緑谷の机に座って携帯を見ていた峰田が言うと、爆豪が指を差して怒鳴りつける。
「もう三本目の取材でしたのに…」
「“仮免事件”の好評価が台無し」
八百万と耳郎も、爆豪に呆れた視線を送っていた。
実は轟と爆豪はこのインタビュー映像を撮る前に既に取材を二本受けており、他二本の取材でも爆豪が問題発言をしていたのだ。
「峰田くん机から降りたまえ」
飯田が峰田を緑谷の机から下ろすと、緑谷は携帯でニュースをチェックする。
緑谷が見ていたニュース番組では、轟と爆豪が仮免取得当日に強盗犯を捕まえた功績が報道されていた。
『初々しくも頼もしい仮免ヒーローでした。彼らには一刻も早くプロとして活動して欲しいですね。泥花市の悲劇を繰り返さない為にも─────…』
轟と爆豪のニュースの次は、表向きは『泥花市の悲劇』と呼ばれている連合と解放軍の戦いがニュースで報道される。
『事件から今日で9日。たった20人の暴動、約50分程で泥花市は壊滅に追い込まれたのです』
「被害規模は“神野”以上らしいが、地方だった為死傷者数は抑えられたそうだ」
「ここ最近不穏やね」
アナウンサーが言うと、飯田が深刻そうな表情を浮かべながら言った。
するとひなたも頷きながら口を開き、飯田同様複雑そうな表情を浮かべる。
神野の悲劇を目の当たりにした二人にとっては、他のクラスメイトよりも深刻なニュースだった。
すると映像が切り替わり、街頭インタビューの映像が流れる。
『ヒーローの失墜を狙った計画的犯行と見られていますが、街の声は──』
『泥花の英雄達を責めるのは愚かしい。制度の緩和を議論していくべきです』
『泥花のヒーローも責められないよ。要請の精査をしろって? 後だから言える事さ』
『ヒーローもっと頑張ってほしー!』
『私達もガンバルからーみたいな!?』
街頭インタビューでは、年配の男性、若い男性、若い女性二人が質問に答えていた。
すると再び映像がニューススタジオに戻り、専門家の男性が自身の見解を述べる。
『以前ですとこういったヒーローが“嵌められた”事件に関してはヒーローへの非難一色だったわけですが、しかしまさに今時代の節目と言いましょうか…『非難』が『叱咤激励』へと変化してきているんですよね』
「謝罪会見と『見ろやくん』から何か違うよね」
「エンデヴァーが頑張ったからかな!」
「ホント勝ってくれてよかったよ…僕心臓止まるとこだった」
麗日と芦戸は、両手の親指と人差し指で輪を作って覗き込むポーズをしながら轟の方を見る。
エンデヴァーの元へ職場体験に行っていたひなたは、エンデヴァーがハイエンドを倒した時に安堵した事を思い出しながら胸を撫で下ろしてため息をついていた。
するとその時突然教室のドアが開き、聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。
「楽観しないで!! いい風向きに思えるけれど、裏を返せばそこにあるのは“危機”に対する切迫感! 勝利を約束された者への声援は、果たして勝利を願う祈りだったのでしょうか!? ショービズ色濃くなっていたヒーローに今、真の意味が求められている!」
Mt.レディとミッドナイトが、謎のポーズを決めながら入ってくる。
すると緑谷が目を見開いて声を上げる。
「Mt.レディ!?」
「相変わらずキワドイぜMt.レディ…」
「峰田、そろそろダメだぞお前」
峰田が目を血走らせながら息を荒くし完全に性犯罪者の表情をしていると、近くにいた心操が冷ややかな視線を向けながら峰田を窘めた。
峰田は、相澤に半ば強制的にオネエヒーロー『プリンセスプリティハニー』の元へ職場体験に行かされ女性に飢えた一週間を過ごしたせいか(実のところ相澤自身自分の手に負えないエロブドウを矯正するため先輩であるプリンセスプリティハニーの元へ送り込んだ節があった)、かえって変態具合に拍車がかかってしまい女性ヒーローを性犯罪者の目つきで見るようになってしまったのだ。
すると、後ろからヒョコッと相澤が顔を出す。
「特別講師として招いたんだ。お前ら露出も増えてきたしな。ミッドナイトは付き添い」
「増えてねンだよ」
「どんまい!」
「次から頑張ろーぜ!!」
爆豪が歯をカスタネットのようにガチガチ鳴らすと、ひなたと切島が爆豪を励ました。
「オイラが言うのもアレだけど一番ショービズに染まってんだろ「お黙り!!」
「峰田さ、君ホント失礼だよ」
峰田がMt.レディを指差して叫ぶと、Mt.レディが峰田の指を引っ叩いて黙らせひなたも峰田に対して注意をする。
そして、『MEDIA』と書かれたカードを取り出した。
「今日行うは『メディア演習』!
(
自分の事を現役美麗注目株と呼ぶMt.レディに対し、ひなたが心の中でツッコミを入れる(流石に女性に対して直接ツッコミを入れるのは失礼なので心の声だけで留めておいた)。
すると切島が気合を入れて他のA組に対して叫ぶ。
「何するかわかんねェが…みんなぁ!! プルスウルトラで乗り越えるぜ!!」
「うん! やったろ皆!」
切島に続けてひなたもクラスメイトを鼓舞すると、他のクラスメイト達は二人のノリを熱苦しく感じつつも二人に乗っかった。
◇◇◇
「“ヒーローインタビューの練習”よ!!」
(((緩い)))
Mt.レディは、用意されたステージの上で演習内容を発表した。
ステージの下では、それらしくヒーロー達がカメラを構えていた。
どんな試練が待ち構えているのかと気合を入れていた切島とひなただったが、その緩さに思わず表情まで緩んでしまった。
インタビューのトップバッターは、実際に先日インタビューを受けた轟だった。
Mt.レディは、早速轟にインタビューをする。
『凄い活躍でしたねショートさん!』
「何の話ですか?」
『何か一仕事終えた体で! はい!!』
「はい」
Mt.レディのインタビューに対し轟が若干天然発言をすると、Mt.レディが何か活躍をした体でインタビューに答えるように言い、轟が頷く。
するとMt.レディが轟に質問する。
『ショートさんはどのようなヒーローを目指しているのでしょう!?』
「始めおった」
「雄英って何でもいきなりやね」
Mt.レディが轟に質問すると、下にいたクラスメイトがツッコミを入れる。
ひなたも、何でもかんでもいきなり始める雄英のスタイルにツッコミを入れていた。
すると轟がMt.レディの質問に答える。
「俺が来て…皆が安心できるような…」
『素晴らしい!! あなたみたいなイケメンが助けに来てくれたら私、逆に心臓バクバクよ』
Mt.レディが気を利かせたジョークを言うと、それを聞いた轟が本気でMt.レディの心臓病を疑い心配する。
「心臓…悪いんですか…」
『やだ何この子!』
(ド天然!!)
天然発言をする轟に、Mt.レディは内心ほっこりし轟を引き入れたがっていた。
そしてひなたも、ほっこりしつつ轟の天然発言に心の中でツッコミを入れていた。
『どのような必殺技をお持ちで?』
Mt.レディが尋ねると、轟は“個性”で氷山を出現させる。
「『穿天氷壁』。広域制圧や足止め・足場作り等幅広く使えます。あとはもう少し手荒な『膨冷熱波』という技も…」
(『膨冷熱波』…対抗戦でやったやつかな)
轟が必殺技を出しながら説明すると、ひなたは少し考え込む。
『膨冷熱波』という技は、名前からして体育祭や対抗戦で使った大技なのではないかとひなたは考えていた。
すると耳郎、砂藤、葉隠が尋ねる。
「あれ? B組との対抗戦で使ってたやつは?」
「エンデヴァーの」
「『赫灼熱拳』!」
「…は親父の技だ」
「?」
耳郎と砂藤が尋ね葉隠がカッと自分の身体を光らせると轟が答え、三人が首を傾げる。
すると轟が話し始める。
「俺はまだあいつに及ばない」
そう言って轟はステージへと上がっていく。
それを見たひなたは、轟がエンデヴァーをヒーローとして認めているのを見て僅かに笑みをこぼした。
体育祭以前の轟は父親への憎悪に囚われて苦しんでいるように見えたので、少しずつ前向きになっていたのが嬉しかったのだ。
Mt.レディは、ステージへと上がった轟に対してアドバイスをする。
「パーソナルなとこまで否定しないけど…安心させたいなら笑顔を作れるといいかもね。あなたの微笑みなんて見たら女性はイチコロよ♡」
「俺が笑うと死ぬ…!?」
「もういいわ!」
「あはは…」
轟が再び天然発言をすると、Mt.レディがツッコミを入れる。
ひなたも、轟の天然発言に控えめな笑みをこぼしていた。
すると常闇が質問をしてきた。
「技も披露するのか? インタビューでは?」
「あらら! ヤだわ雄英生。皆があなた達の事知ってる訳じゃありません! 必殺技は己の象徴! 何が出来るかは技で知って貰うの。即時チームアップ連携、
Mt.レディが言うと、ひなたがメモを取りながら感心する。
「なるほど…! Mt.レディって何かすごいカメラ映り意識してるイメージあったけど、こうして授業受けてると何かこうすごい説得力あるんだよなぁ」
「だな」
ひなたは、Mt.レディの言葉に感銘を受けており、隣にいた心操も頷いていた。
ついこの前まではカメラ映りばかり気にしている節がありヒーローとしても未熟な部分が目立っていたが、ハイエンド以降はヒーローとしての成長が見られていた。
すると相澤もMt.レディの方を見ながら言った。
「Mt.レディだけじゃないよ。今ヒーロー達皆引っ張られてるんだ。No.1ヒーローに」
相澤が言うと、ひなたは真剣そうな表情を浮かべて今回の演習も頑張ろうと意気込んだ。
◇◇◇
こうしてメディア演習が始まり、A組は次々と受け答えをする。
「兄・インゲニウムの意志を受け継ぎ駆ける者であります!」
『誠実さが伝わるね!』
「博覧強記、一切合切お任せ下さい!」
『自信は人を頼もしくするの!』
「私の前では全てが0kgなのですっ」
『和らげるのも一つの才よ!』
「特技は人心掌握です」
『
「闇を知らぬ者に栄光は訪れぬ」
『良い〜〜雰囲気良いよ━━』
「俺の後ろに血は流れねェ!」
『ああ━━兄貴ー!!』
飯田、八百万、麗日、心操、常闇、切島が受け答えをすると、Mt.レディがコメントする。
『何もう皆! 心配して損しちゃった! 意外にちゃんと出来るじゃない!』
Mt.レディは、思いの外しっかりと受け答えできているA組に対して感心していた。
だが、一番の懸念要素はというと。
「俺ァテキトーな事ァ言わねェ! 黙ってついて来い」
『一人だとまだマシね…わかった、反りが合わないのね。人類と』
(かっちゃんも単体なら割と大丈夫なんだけど、焦ちゃんと絶望的に食い合わせが悪すぎるんだよなぁ。まあ悪いの10:0でかっちゃんなんだけど)
爆豪が言うと、Mt.レディがツッコミを入れ、ひなたも心の中でツッコミを入れつつどこか悟ったような表情を浮かべていた。
轟の発言に反発して荒れていた時に比べれば、意外とまともに受け答えができていた。
爆豪自身は精神的な成長をしていた事もあり、そこまで問題があるわけではなかったのだが、テレビでのインタビューの時は轟との食い合わせが悪すぎたのだ。
すると轟が深刻そうな表情を浮かべて爆豪に謝る。
「ワリィ、俺がいたから丸々カットに…」
「思い上がんな! てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねェだろが!!」
「そうか」
(かっちゃんなりにフォローしてあげてる…のかな? うん、そういう事にしておこう)
自分のせいで爆豪が丸々カットになってしまったのかと思い轟が謝ると、爆豪がキレる。
落ち込む轟をフォローしていると取れなくもない爆豪の発言に、ひなたはポジティブな解釈をしていた。
ミッドナイトは、爆豪の問題だらけのインタビューに呆れ返っていた。
「相澤くんのメディア避けを参考にさせるべきかも」
「いや…あいつが今参考にすべきは他にいます」
ミッドナイトが言うと、相澤はステージ上に目を向ける。
ステージでは、Mt.レディが緑谷に質問していた。
『デクくんでしたっけ!? 活躍見ました!』
「それは…良かった、良かったです…!」
緑谷は、緊張のあまりガチガチに固まっていた。
ひなたは、それを見て思わず目を点にする。
するとMt.レディが緑谷に質問をする。
『ご自身ではどのようにお考えでしょうか!?』
「それは…良かった…!」
Mt.レディが尋ねると、緑谷は緊張のあまり固まったまま先程の質問に対する答えをそのまま繰り返していた。
「あいつ俺の硬化を!!」
「アガりすぎ。そういえばこういう機会には恵まれてないものね」
「デッくんこういうの苦手そうだもんなー」
切島は緑谷のガチガチを硬化と勘違いし、蛙吹とひなたは呆れていた。
ステージ上では、Mt.レディがさらに緑谷に質問をしていた。
『あなたの技はオールマイトリスペクトが多いように思いましたがやっぱり憧れてる? 「はい」ここは声デカいんかい』
Mt.レディがオールマイト絡みの質問をすると、緑谷が食い気味に答えるのでMt.レディがツッコミを入れる。
すると緑谷はブツブツと早口で話し始める。
「でも…それだけじゃダメだと思って、自分なりにオールマイトの技をカスタマイズしてみたりもしてます例えば『デラウェアスマッシュ』はオールマイトのレパートリーにはない州名からつけた技名で最近は訓練の一環をそのまま技にした『デラウェア・スマッシュ・エアフォース』や、高所から蹴りつける『マンチェスター・スマッシュ』、『黒鞭』と『浮遊』を使った立体機動を使った『ネブラスカ・スマッシュ「ボソボソ長ェ━━━」
『ええーっと…じゃあ、何か必殺技を見せていただいても?』
「はい!」
Mt.レディが尋ねると、緑谷は笑顔で頷く。
緑谷は、『浮遊』と『黒鞭』を使ってセメントスが用意したセメントの柱の上まで移動すると、踵落としで柱を砕いた。
「『マンチェスター・スマッシュ』!!」
緑谷が踵落としでセメントの柱を砕くと、セメントは無駄に分散せずに綺麗に崩れていく。
全員の前で技を成功させた緑谷は、ガッツポーズをする。
「っしゃ!」
『おお〜!!』
◇◇◇
そして次はひなたの番となった。
ひなたが『よしっ』と気合を入れていると、隣にいた心操が声をかける。
「頑張れよ」
「うん!」
心操が言うと、ひなたは軽く拳を握って頷き、そのままステージへと上がっていく。
ひなたがステージ上に上がると、早速Mt.レディがインタビューをする。
『素晴らしい活躍でしたね、クレシェンドモルトさん!』
「ありがとうございます」
『ご自身ではどのようにお考えでしょうか?』
「そうですね…まだ未熟な部分が目立っていたかと思いますが、事件当時その場にいた方達が全員無事だったのでヒーローとしてやるべき事はできたんじゃないかと思います」
Mt.レディが言うと、ひなたは笑顔を浮かべてハキハキと返事をする。
父親の相澤とは対照的に、お手本のような受け答えだった。
メディア嫌いの相澤に育てられたためひなたもメディア嫌いなのかといったらそうでもなく、このような場面での受け答えの仕方は山田や福門に教わっていたため以外にもメディア演習に対する抵抗はほとんど無かった。
『どのようなヒーローを目指しているのでしょうか!?』
「皆の笑顔を守るヒーローを目指しています。いつ来るかわからない危機に怯える事なく皆が安心して暮らせるような、そんな世の中を作りたいです」
Mt.レディの質問に対し、ひなたは一切包み隠す事なく自分の理想を語った。
『素晴らしい! ちなみに“個性”を消す声をお持ちとの事ですが、どういった戦闘スタイルをお持ちで?』
「はい、まず
Mt.レディが尋ねると、ひなたは触手のような捕縛武器を手首から伸ばしながら答える。
ひなたが捕縛武器を振り回しながら言うと、Mt.レディがカメラを差しながら言った。
『それでは最後にカメラに向かって一言!』
「はい! どんな
『頼もしい! あなたみたいなヒーローが来てくれたら安心ね!』
ひなたがポーズを決めながら言うと、Mt.レディが感心する。
こうしてひなたのメディア演習も終わった。
◇◇◇
そしてその後、A組寮では。
「あー終わったー」
「キンチョーしたね」
メディア演習を終えたA組は、寮の談話スペースに集まって会話をしていた。
するとひなたが淹れたての紅茶と茶菓子を持ってくる。
今日の茶菓子は、砂藤お手製のスフレケーキだった。
「皆お疲れ様ー、お茶持ってきましたよーっと。りっきーが焼いてくれたケーキと一緒にどーぞ」
「おお、サンキューひなちゃん!」
ひなたが紅茶とケーキを運びながらクラスメイトに声をかけると、切島が礼を言った。
ひなたは、紅茶とケーキをテーブルの上に置いてソファーに座った。
「今日のメディア演習楽しかったね。色々勉強になったし」
「ウチメッチャ緊張した。アレで上手くやれてたのかなぁ」
ひなたが紅茶を飲みながら言うと、緊張しいの耳郎はため息をつく。
すると上鳴と葉隠がひなたに話しかける。
「つーかひなちゃんがあんなに抵抗なく受け答えできんの意外だったわ」
「相澤先生がメディア嫌いだもんね」
「いやお父さんが特殊なだけだから。僕はああいうのいいと思うよ? 流石に入学直後の迷惑なマスコミみたいなのはヤだけど、やっぱり皆に僕の事知ってもらえるのって嬉しいもんね。メディアに媚び売るとかそういうんじゃなくて、皆に自分に何が出来るのかを知ってもらう為にメディアを利用するのはヒーロー活動をする上での合理的な手段だと思うんだ。ほら、Mt.レディも言ってたけど、チームアップとか
「なるほど…」
ひなたがケーキを食べながら言うと、説得力のある意見にほとんど全員が納得する。
『仕事に差し支える』と言って徹底的にメディアを避けている相澤とは対照的に、ひなたは他のヒーローや守るべき市民に自分をよく知ってもらう為にメディアを積極的に利用していくスタンスだった。
すると心操がひなたに声をかける。
「ひなた、そろそろ続きやろうぜ」
「あ、そうだった。続き編まなきゃ」
心操が言うと、ひなたは思い出したように触角をピンと立て、手をパンと合わせた。
心操が毛糸の入った籠を持ってくると、ひなたは籠から毛糸と棒針を取り出して作業を始める。
すると瀬呂がひなたに尋ねる。
「編む? 何を?」
「マフラー。もうすぐクリスマスでしょ? だからプレゼント用意しなきゃと思って、今月の頭から勉強と訓練の合間の時間を見つけてちょっとずつ編んでたの」
「「「ガチ勢!!」」」
ひなたが言うと、賑やかし組がツッコミを入れる。
最近ひなたが心操と一緒にコソコソ何かをしているのは知っていたが、まさか2週間以上前から手作りのクリスマスプレゼントを用意しているとは思わなかったので驚いていた。
すると尾白が思い出したように言った。
「そういや勉強と訓練で忙しくて何も準備してなかったな」
「せっかくだしパーティーやろうよ!」
「おお、いいなそれ!」
「降誕祭…」
葉隠が提案すると砂藤が乗っかり、常闇はソワッとしながらポツリと呟いていた。
すると飯田が手を大袈裟に動かしながらフルスロットルで仕切る。
「静粛に!! パーティーをやるのはいいが、まずは先生に許可を取ってだな…」
「あ、だったら僕言ってくるよ。お父さんも僕の頼みだったらOKしてくれると思うし」
「「「ヒナチャアアアアン!!!」」」
寮内でパーティーをやるならまず相澤に許可を取るべきだと飯田が言うと、ひなたがピンと触角を立て手を挙げてソファーから立ち上がる。
ひなたが相澤を説得しに行こうとすると、主に賑やかし組がひなひな音頭を踊って喜んだ。
◇◇◇
そしてその後、ひなたは相澤を捕まえてクリスマスパーティーをやりたいという旨を伝えた。
「てなわけで寮でクリスマスパーティーをやりたいんだけど、いいかな?」
「それはいいが、ちゃんとパーティー後の事も考えてるんだろうな? 騒ぐだけ騒いで大量のゴミを出すのは非合理の極みだ」
「ああ、それなら心配しないで? デコレーションとかはヤオモモとかはーちんとか峰田に手伝ってもらって、片付ける時は僕の“個性”で消そうと思ってるの。それならエコだしコストもかからないからいいでしょ?」
「成る程な。合理的な判断だ。それなら好きにするといい」
「やった!」
ひなたが相澤を説得すると、割とすんなり相澤の了承を得た。
実は相澤がすんなり許可を出したのには理由があり、相澤はひなたに話しかける。
「あと、パーティーをやるなら一ついいか」
「ん? 何?」
「エリちゃんを連れて行きたいんだが、大丈夫か?」
相澤が言うと、ひなたはパアッと表情を明るくする。
「え、エリちゃん来るの!? やった! 全然OKだよ! むしろこっちが来て欲しい!」
「決まりだな。当日エリちゃんを連れてくから、お前らは先にパーティーの準備を進めててくれ」
「わかった!」
相澤が言うと、ひなたは触角をピンと立てて答えた。
相澤の許可を無事得たので、A組は必要なものの買い出しなどパーティーの準備を始める事になった。