ドラえもんではなくそのすぐ後ろでした   作:ひよっこ召喚士

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前編の4倍の文字数があるって、分け方下手くそ過ぎかな?前みたいに中編も入れるべきだったかな?しかし、もう作業がめんどいんだ……なんか普通に頭痛いし寝たいんだ……とりあえずなんとか活動報告の宣言には間に合わせたから許して。


ミュージアムで大騒動?!オカシナひみつ道具!! 後編

 

 

 ドラえもんとエル・マタドーラに追いかけられているパンドラ、このペアは逃走するうえでそこそこ厄介であった。それでも逃走を続けられているのはパンドラの持つ力量が故である。

 

 追跡を妨害しようと投じた物は『ひらりマント』によって弾かれてしまう。その時点でただ浪費するだけだと道具や持ち物を用いた妨害は諦めた。

 

 そしてこの超空間の禁止された場所では持ち込んだ道具以外は使えない。だがドラえもんは市に寄る為に持ち運びに便利なリュックを持ってきており、使えそうな道具をいくつか仕込んでからやってきていた。

 

「この壁の向こうに逃げだぞ」

 

 王ドラであれば身のこなしだけ追いかける事も可能だが二人には難しい為にドラえもんが荷物を漁り道具を取り出す。

 

「えっとえっと…『トランポリンゲン』!!」

 

 地面に撒き散らすと、そこを踏み台にして壁を飛び越えてる。華麗に着地とはいかないがなんとかパンドラを見失わずに走り続ける。

 

「ナイスだドラえもん!!」

 

「えへへ、割高な薬系も安く買えたから幾つかあるんだ」

 

『なんで警察より面倒なロボットが何体もいるのかなぁ?!』

 

 それが片方はまだ闘牛士ロボットと戦闘にも対応しそうなものだがもう一方が子守用なのだから笑えない話である。そうしてなんとか時間を稼ぎ続けようとパンドラは一つの建物へと入っていった。

 

 


 

 

 一方で少し時間は戻り、キッドと即席ロボットが戦い始めてすぐの頃、もう一体のロボットと警官達が戦っていた。

 

「『チーターローション』の加速が…くっ?!」

 

 『チーターローション』は効果時間こそ短いが効力自体はとても高い道具である。塗ることで得られる目にも止まらぬ早さというのは例えではなくそのままの意味であり、敵を捉える事が出来ずにいた。

 

 とにかく攻撃を食らうと不味いと判断して二人の警官は背中を預けるように陣取って防御態勢を取ることで相手の猛攻を凌ぎ切る。

 

 そして段々と動きが鈍くなっていく相手、再び『チーターローション』を使われる前に攻撃を仕掛けたい所だがそうは問屋が卸さない。

 

「こっちの攻撃は『でんでんはうす』に籠もられると通らない。ぐっ…おりゃあ!!」

 

 相手はこちらの攻撃が当たるかどうかという所で大部分を『でんでんはうす』に隠してしまう。全てでないのは即席故の粗さ故だろうが露出している部分を狙い撃つのは至難の技である。

 

 別に射撃の腕前がキッドと比べて警官達が大きく劣っている訳では無い。2つの意味で未来の宇宙一のガンマンであるキッドの方が腕前自体は確かに上ではある。

 

 それでも警官達だって訓練などを怠った事はなく、それなりの腕は持っている。それでも上手く当てられないのはこれもまた『チーターローション』のせいである。

 

 効力がきれて動きが少しずつ鈍くなったり、再び使用されて一気にフルスピードになったりの繰り返しで相手の移動予測がとてもではないが難しいのである。

 

 相手は意図していないが常に移動速度が変化している様な状態である。唯一変化がない時となればそれは使用してから数秒間のフルスピード状態だけだ。

 

 目にも止まらぬ速度の相手を捉えられず、変化の著しい相手の動きを予測してピンポイントを射抜くのは不可能に近い、この状況下で持ち堪えているだけでもそれなりのものである。

 

「なんとかして『チーターローション』の速度か『でんでんはうす』の防御を突破しなければこのままじゃジリ貧だぞ!!」

 

 防御を続けてはいるが攻撃を受けるたびに少しずつ腕の痺れが酷くなってきている。通常時の倍の力を発揮できる『スーパー手袋』を着けていてこれなのだから笑えない。

 

 まだ保たせられているがふとした瞬間に突破されてもおかしくはないのだ。焦りは禁物とは言え何か案はないかと声を上げて相談する。

 

「とはいっても武装で持ってるのは通常配備の『空気砲』と『ショックガン』ぐらいだ。突発的な事件だったからな俺は武装以外も標準装備だけで、申請制の物は持ってない。そっちは何かないのか?」

 

 警官とはいえ大きな被害が出るような物や殺傷性の高いひみつ道具はそれ相応の理由がなければ使用は出来ない。だが通常配備の装備では威力に欠ける。

 

 業務に必要のない物を持ち運ぶのは如何なものかと問われる為に配備物以外はあまり持ち歩いていない。しかも今日は超空間が禁止されている為に嵩張るものは持てていない。だが各個人で申請して持ち歩いてる物は別である。

 

 その中に逆転の手はないかと期待するが現実はそう甘くない。相方の問いかけに苦虫を潰した様な顔に変わったかと思うと曖昧に苦笑しながら口を開けた。

 

「……夜勤用に『眠くならない薬』、それと『コンクフード』なら申請して持ってる」

 

「はははは、そりゃあ美味そうでなによりだなぁこの野郎!!」

 

 こちとら最近はずっと申請要らずの『チューイングピザ』だよと悪態をつきながらもこの状況を打破する物が見つからずに必死に頭を働かせている。

 

 そんな警官をみてかどうかは知らないがロボットは殻に籠もったままその場で回転を始めた。スピードが倍々で上がっていく様子に血の気が引く。

 

 『チーターローション』で上がるのはあくまで足の速さである。そして効果が切れれば足の速さは落ちる。だがその足が生み出した速度によって転がる相手の速さはそのままである。

 

 速度が衰えにくいのは厄介だが『チーターローション』による速度と違って目で追える速度なのは確かである。それが救いになるかはまた別の話になる。

 

「鍛えてて40kgくらいまで持てるとして2倍で80kg、2人で160kg、抑え込むには弱すぎるな」

 

「相手が半径1.5mくらいの球体、体積が14㎥くらい、ぎゅうぎゅうにつまってなくて半分の7㎥くらいと考えても鉄製なら約8t×7で56t、2分の1で体感は28t、大型トラックの車両総重量を超えるぞ」

 

 絶望的な状況、血の気が引いて逆に落ち着いた頭が出した所で仕方のない計算の答えを導く。実際の所はひみつ道具に使用されている金属の関係でもう少し軽いのだが、それでも20t弱はある。

 

「何か挟み込んで上に跳ばすか?」

 

「下手にやれば周りの被害が馬鹿でかくなりそうだな」

 

 重さも硬さも超級の勢い付いた巨体が跳ねれば落下の際の衝撃も計り知れない。周辺に一般向けの建物はないので人命には及ばないが、施設などがある関係で被害額はかなりのものになる。軽々しく犠牲に出来るだけの判断は下っ端でなくとも出来ない。

 

「『空気砲』で速度軽減を図るか」

 

「威力最大で集中させればいけるか…微妙な所だな」

 

 ギュリギュリと地面を削るかの様な音を響かせているロボットは待ってはくれない。他に手が思いつかない以上は仕方ないと即座に空気砲を装備する。

 

「穴から飛び出した瞬間に」

 

「浮かせるんじゃなくて反す様にだろ」

 

 互いに黙り込んで相手の動き出しを待つ。そして、ロボットの動きが確かに変化し、鳴り響く音が変わったのを耳が捉える。

 

 

「3」

 

「2」

 

「1」

 

 

「「ドカン!!」」

 

 

 寸分違わず撃ち込まれた空気の弾丸は相手が無事な地面へと接地した瞬間に届き、確かにその動きを阻碍した。だが完全に停止させる事は叶わなかった。

 

「くそっ、防御を!!」

 

「駄目だ間に合わん?!」

 

 警官2人が『スーパー手袋』をつけ直して防御を試みるが相手の接近の方が早く、もう駄目かと目を瞑ったその瞬間。

 

〘私の部下に何してくれてるんだ?〙

 

 2人にとって聴き慣れた声が後ろから聴こえ、次の瞬間には警官達とロボットの間にその身体を挟み込んでいた。そして手に持っていた道具を1振りすると相手は3人を避ける様に真っ二つになった。

 

〘横倒しにしろ!!〙

 

 警部の咄嗟の指示に慌てながらも空気砲を真横から撃ち込み、勢いのままに転がり続けようとしていた半球2つはその場に横になった。

 

〘悪いな伝々虫、爆弾でも壊れない頑丈さも『チャンバラ刀』には関係ねぇんだよ〙

 

 本当に切れるが専用のノリでくっつけられるこの刀型のひみつ道具は壊してる訳では無いために防御も意味をなさない。とはいえ、猛スピードで迫りくるロボットに臆さず、弾かれずに刀を差し込んだ技量はかなりの物である。

 

「警部、おかげで助かりました。ありがとうございます」

「我々だけで倒すことが出来ず不甲斐ない思いです」

 

〘ああいった手合には非攻撃性のひみつ道具の方が相性が良いもんなんだよ。無理にスクラップにするよか動きを封じたほうがはやいだろ?その動きを封じるタイミングも『チーターローション』だと難しいがな〙

 

「なるほど『瞬間接着銃』等を使った方が良かったですかね」

 

〘アイツのパワー次第ではあるがありだな。だが後で回収が大変になるから係に嫌がられるぞ。超空間が禁止でなければ『即席落とし穴』とかもありだし、そもそも海まで何かしらのワープ装置で飛ばせるんだがな〙

 

「なるほど……勉強になります」

 

 警部から直々に教導のようなものを受けていると警部と共にやってきたであろう同僚が通信機を片手にやってきた。

 

「警部、パンドラの行き先が掴めました」

 

〘経緯は省け、やつは今何処だ〙

 

「特設エリアの一角、食品ひみつ道具部門貸し出し調理施設です。空間区画番号は4504-9114-7503、借り主である参加者はハイドラ&ジェドーラです」

 

 


 

 

「たくさん出来たねぇ」

 

「うん、さすがの出来ですね」

 

 【卵のボーロ】【恐竜変身ビスケット】【神社クッキー】等の焼き菓子系統はもちろん、【アンドゥナツ】【善哉善哉】【セイレーン印のおまんじゅう】と言った和菓子、【雪かき氷】【ジェラ〜ト】等の氷菓子、【ホットケーキとコールドケーキ】【ドリ安牌】等のパイやケーキも用意されている。

 

「ビスケットやクッキーなら商品化が決まれば高級志向のも作れそうですね」

「そん時は素材からもっとこだわって作りたいねぇ」

「『宇宙一サクサク焼ける小麦粉』でも用意しますか」

「流石に予算オーバーじゃない?」

「太陽系一くらいに抑えますかね。っとそんな事を言ってないで保存処理も施しませんとね」

 

 出来上がった特別美味しいひみつ道具たちを無駄にしてはジェドーラに頼み込んだ意味がない。そう思ってひみつ道具達に保護を施したり、一部を保存庫に入れていると何やらガタゴトと騒音が部屋の外から近付いてきた。

 

「待てー!!」

 

『待てと言われて待つ馬鹿が何処にいる!!』

 

 その音はどんどん近づいて来てついにはなんて言っているのか声が届く程になり、ついに扉が蹴破られる勢いで開かれ初めて見るネコ型ロボットが姿を見せた。

 

「あ、ハイドラにジェドーラ!!」

「そこのロボットを捕まえろ!!」

 

 その向こうにはドラえもんとエル・マタドーラもおり、すぐ近くに迫っているロボットを捕まえろと伝えられる。この数時間でいったい何に巻き込まれているのやら。

 

「うわぁ?!な、なにごと?!」

「分かりませんが…ここで暴れられても面倒です。とりあえず彼女を捕らえます」

 

『げっ、ここに来てさらに新手か?!んん〜良いモノ発見!!』

 

 彼女に道具を向けようとした瞬間、こちらへと視線を向け懐から何やら箱の様なものを取り出した。おそらくひみつ道具の類…まずいと感じた時にはもう遅かった。

 

『開いちゃえ〚パンドラボックス〛!!愉快な愉快な絶望(プレゼント)!!』

 

「『パンドラボックス』?!『正体スコープ』を…って違う?!」

 

 対応しようと道具を出すがそれはハイドラの知らない効果を見せた。〚パンドラボックス〛…そう口にされた道具は作り置かれた試作品の道具と材料を軒並み吸い込むと最悪な形で吐き出した。

 

 道具同士が混ざり合い、大きくなったのは目に見えてわかりやすい。そしてその姿は恐竜や鳥、爬虫類などを形取り一人で動いている。

 

「材料を元に道具のコピー及び改変?! 姿形は【恐竜変身ビスケット】に【卵のボーロ】からか、『おかし牧草』を使ったでもないのに動き出すとは、いったいどんな工程で効果を……」

 

「考察してる場合じゃ無いでしょハイドラ?! 」

 

『それじゃ足止めは頼んだよスイートちゃん達、それじゃバイバーイ!!』

 

 パンドラと呼ばれた者の声に反応するかのようにお菓子から作られた存在は周囲を壊しながらあちこちへと散らばっていく。

 

「…お菓子も彼女も逃す訳にはいきませんね。出てきなさい『通せんぼカバー』!!」

 

 作り変えられた道具たちの所為で距離があいてしまったパンドラを逃がすまいと施設をまるごと封鎖する様にバリアを張るひみつ道具を起動させる。

 

 そして気付けばパンドラはもちろん、作り変えられた道具たちも部屋からいなくなり、残ったのは吹き飛んだ天井…割れに割れた窓ガラス…天板に傷がついたテーブルや脚の折れたイスがそこら中に倒れ、調理器具も中身を溢しながら床に転がる惨状である。

 

「うぅう、いったいなんだったの……」

 

「ジェドーラ大丈夫?!」

 

「とりあえず被害を広げない為に出入りを封じました。エル・マタドーラ、説明をお願いします」

 

 ドラえもんに加えてドラえもんズの面々も居たのだ。何かしらの事態に巻き込まれたのだと察することが出来た。しかし、先程のロボットの姿は自分の記憶にはない。

 

 どういった存在なのか、先程使われた道具〚パンドラボックス〛とはなんなのか、どういった経緯で追いかける事になったのか、気になることは多い。

 

 とはいっても一から十まで聴いている様な時間的余裕はない。ざっくりで良いから流れを聴き出すと目を少し瞑って対策を考える。

 

……イベントの失敗はダメだ。理由があってもジェドーラの経歴に不要な傷がつくのはいけない。被害を出してしまっても全員に問題が出てくる。必要なのは道具の処理、お菓子の再度作製、パンドラの捕獲……

 

「ハイドラ…?」

 

「あぁ、ジェドーラ、おまえの癖と同じでありゃハイドラの癖だ。頭を働かせる上で思考を整理してるんだ。害はねぇし、そろそろだ」

 

 必要なひみつ道具、適切な人員、後は託すだけ、そうすれば彼らはやり遂げてくれる。

 

「私とジェドーラで会場とお菓子をどうにかします。二人は作り変えられたお菓子を倒してください」

 

「あ、うん。わかったよ」

 

「それは良いけどよ。パンドラはどうすんだ?」

 

 成り行きとはいえ追いかけていた犯罪者をそのまま野晒しには出来ないとエル・マタドーラが疑問を口に出しますがそれは最後です。

 

「パンドラを捕まえるにもあの改造お菓子は邪魔です。通常の手段では出れないのですから、落ち着いて障害を先に排除します」

 

 それを聴けばパンドラとお菓子を同時に相手取るのは厳しいのを認める様で少し悔しそうにしながらもエル・マタドーラも納得しました。次の疑問はジェドーラから……

 

「お菓子を作るにも材料が足りないよ……」

 

 潤沢にあった材料を全て使い切るつもりであのお菓子道具を作ったので残っているのは僅か、残ってる分だけでは少量の焼き菓子を作れれば御の字ですからね。ですがそれも問題なしです。

 

「材料ならあります。あの改造されたお菓子です。あれを倒してもらったら、特設エリアは超空間も使用可能なので『ブラックホールペン』『ホワイトホールペン』、これで倒したお菓子を直接こちらに送ってくれればそれを『原料ライト』で材料まで戻します」

 

 材料さえあればジェドーラの腕なら審査に必要なお菓子はどうにか間に合うだろう。ただ集める時間考えればギリギリになりそうでもあるが、そこは二人を信じよう。

 

「ぼくたちは『ブラックホールペン』を使えば大丈夫だよね」

 

「使ったら消すのを忘れずにお願いします。それでは全員、気を付けていきましょう」

 

 


 

 

 施設内での騒動が起きる前には周辺には警察が集まっていたのだが、突入を前にして『通せんぼカバー』が発動したために立ち往生していた。

 

「確認取れました『通せんぼカバー』で間違いありません」

「登録番号の照会もすみました。販売履歴からの予測ですが使用者はハイドラ氏で間違いないかと」

「展開前にエネルギー反応を確認、内部で〚パンドラボックス〛が使用されたものだと思われます」

 

〘よし、周囲の避難と封鎖を急げ。内部での動きが分からない以上は警戒を続けるんだ。効力が失われた時点で突入する部隊を編成しておけ〙

 

 逃げ場をなくす様に二重の網を用意する様に指示を出し、警部自身もその場の変化を見逃さないようにと施設を睨み続けている。そしてその網の外側からそれを眺める者が一人。

 

『ん〜、困りましたねぇ。合流しようにもこれではねぇ』

 

 建物の上から警察にみつからないように目の前にある透明な壁を確認していくが、隙間なんかはなさそうだ。

 

『なるほど、少しでも施設内に入れれば後は超空間も使える様ですねぇ……もう少し詳しく探ってみましょう』

 

 


 

 イベントの審査用の道具をなんとかもう一度用意するため、破壊されつくされた部屋の中にジェドーラと二人で残ったわけだが……

 

「それにしても困った困った?!」

 

「本当に困りものではありますがね……」

 

 この惨状を生み出した存在は他のみんなに任せたとしてここの修復はどこから取り掛かっていけば良いものか…いや、考えるのは後にするべきですね。

 

「ジェドーラ、部屋は私がなんとかします。『原料ライト』は貸し出しますので貴方は調理場だけでも整えて随時送られてくる素材で調理を!!」

 

「……そうだね、困ってても仕方ない!!とりあえず調理台周りを綺麗にして、大きな機材は幸い無事だから、オーブンの予熱もそれぞれして、調味料は残ってるから計量も済ませて並べて……やることだらけだ。それに道具もいるね!!」

 

 そう言うと彼は散らばった道具を集めて調理台の付近の片付けの為に部屋を駆け出した。明確なやることがあれば暴走の心配は無いでしょう。

 

「まずは部屋の外装をどうにかしないと、大物は『復元光線』の方が良いかな。修復時に周りの物を巻き込まない様にっと、小物は『タイムふろしき』で、あれ?なんか足りない……『全体復元液』でカバーして、余ったゴミに汚れは……下手なことをしても仕方ないですね『らくらくお掃除3点セット』」

 

 最終的には地道な作業の方が便利な時もあります。特にこの道具は汚れなどにしか反応しないから誤作動の心配がないですし、使い勝手が良いんです。

 

「さて、ジェドーラも調理を始めたみたいですし、ドラえもん達も戦ってるんです。私も精一杯頑張りますか」

 

 


 

 

「何処だお菓子野郎!!」

 

「ちょっと、エル・マタドーラペースがはやいって?!」

 

 部屋を出てからというもの、動くお菓子を見つけては倒し、倒しては探しに行きをハイペースで繰り返していた。

 

「はやいって言ってもよぉ。これぐらいでなければジェドーラ達のほうが間に合わなくなっちまうだろ」

 

「なおさら闇雲に追いかけても仕方ないんじゃない。段々とお菓子も数を減らしてきたんだしさぁ」

 

「なんか良い方法があんのかよ?」

 

「生き物型のお菓子たちは本当にそのままの動きをしていたからこれを着けてみたらどうかな『猛獣さそいよせマント』!!ただ、一気に来る可能性もあるから気を付けて使う必要はあるかも」

 

「上手くすれば向こうから寄ってくるって訳か、残りの奴らが一気に来たくらいで捌ききれなくなるオレサマじゃないぜ」

 

 意気揚々とマントを着けると無事に効果が発動した様で猛獣を怒らせて誘い出す光がマントから放たれた。後ろに『猛獣さそいよせマント』前には『ひらりマント』とマントだらけで少しマヌケにも見えるが戦いの最中の為に二人共気付かない。

 

「来たぜ、ひらり!!ひらり!!」

 

 一直線に向かってくるお菓子などは闘牛士ロボットであるエル・マタドーラからすればわけない相手である。跳んできた所を互いにぶつけ合わせ様に弾くだけで小さいものは方がつく。

 

「よし、ぼくも…『声カタマリン』!! ゴクゴク…せ~のでわっ!!

 

 形を得ることで空気抵抗の影響を受けるために音速とは比べ物にならない位遅くなるがそれでも十分な威力を持つ声の塊がお菓子を破壊して突き進む。

 

「おっ、それ良いな!!ドラえもん、こっちにも一発デカいの頼む!!」

 

「うん、いくよ〜せ~のでわっ!!

 

「おりゃ、ひらり!!」

 

 飛んできた『わ』を近寄ってきたお菓子達を大きく巻き込むように跳ね返して一気に倒し切る。そうして効果範囲のお菓子がいなくなったのか少し勢いが落ち着く。

 

「だいぶ片付いたんじゃないか?」

 

「そ…だね…あ~、あっあ〜でもちょっと喉が疲れたかな」

 

「とりあえず今倒した分も送っちまおう」

 

 『ブラックホールペン』で丸を描くと倒したお菓子の山を入れていく、しかし如何せん量が多く運んで入れてを繰り返すだけで重労働だ。

 

「単純な分、戦うより大変に思えてくるぜ」

 

「おーい、ドラえもん、エル・マタドーラ!!」

 

「ははは、ってあれは?!」

 

「二人ともこっちであ~る!!」

 

「あれってドラメットじゃねぇか?!」

 

 遠くの方から微かだが叫んでる声が聴こえ、そちらの方に顔を向けるとこちらへとまっすぐ駆け寄ってくる仲間(ドラメッド)の姿がそこにあった。

 

「やっと他の者と合流出来たであ~る」

 

「ドラメッド大丈夫?!」

 

「お前もこの建物の中にいたのか!!」

 

「ハイドラとジェドーラの一大イベント、見守る他はないとドラニコフにドラリーニョの二人と一緒に開始前にはこの建物に来ていたのであ~る。そしたら謎のお菓子に襲われて散り散りに……」

 

 何事かも分からないままに襲われてなんとかやってきたのか、少しボロボロの風体でこれまでの経緯を話すドラメッドを労る様に受け入れる。

 

 そしてどうしてこの様な事態になったのかの説明もして、今の二人の役割についても伝えた。

 

「なるほどその様な事になっていたであ~るか、それにしても友達の大事なイベントを破壊するとはパンドラとやら許さないであ~る!!っとイタタタ?!」

 

 立ち上がりながら怒りを示すドラメッドであったがその動きが傷に響いたのか身体を抑えながら少しだけうずくまった。

 

「うわぁ、無理しないでドラメッド?!」

 

「大丈夫であ~る。叫んで急に動いたせいで少し痛んだだけであ~る。そうと決まればお菓子の運送はワガハイに任せるであ~る!!」

 

 傷に響かない様に器用に声を出して二人に宣言するドラメッド、その姿に心配と呆れの視線が突き刺さるが本人はやる気満々の様だ。

 

「おいおい、ケガしてんだから無理はすんなよ…」

 

「ワガハイは魔術師であるぞ。いでよ魔法道具達よ!!」

 

 ドラメッドが唱えると空中からたくさんの道具が現れて倒されたお菓子達を次々にブラックホールへと運び込み始めた。

 

「へぇ~、こりゃはえぇな!!」

 

「ここいら辺は二人のおかげで残るお菓子は少そうであるからワガハイ一人でも大丈夫であ~る。二人はワガハイが来た向こうの方へ先行して欲しいであ~る」

 

「向こうの方?」

 

「分かれ道があって、その先に階段があるのであ~る。一階はぐるぐる回ったであるが他の二人はいなかったのであ~る。そうすると後は探してない二階の方にいるかも知れないのであ〜る。それに残りのお菓子もそっちにいる筈であ~る」

 

 はぐれた二人を探しながらお菓子の群れを突破する中でしっかりと館内の姿を把握しているあたりさすがである。ドラメッドからの情報をもとに二人は階段から上へ向かった。

 

「これお菓子の残骸だよね?」

 

「ドラリーニョかドラニコフ、どっちも二階に居るのは確かだな」

 

 確かにお菓子は居たのだろうが戦闘の跡を残してそれなりの数が倒れている。後から追うと言っていたドラメッドにお菓子の残骸は任せる事にして、跡が続く方へと足を進める。しばらく進んだ先で道が二手に分かれており、これまでは二人分の形跡が残っていたのだが……

 

「向こうにサッカーボールが落ちてたよ」

 

「こっちの残骸は噛み跡だな。野獣化してるなこりゃ」

 

「二人も逸れてるのかな?」

 

「ドラリーニョは後先考えねぇし、ドラニコフも野獣化してたら本能のままに暴れるからな……」

 

 はじめのうちは二人で行動していたのだろうがここから二手に分かれてしまった様だ。

 

「俺等まで分かれる訳にはいかねぇよな」

 

「確実に合流出来るならまだしも、敵がいるかもしれない状況で離れるのはちょっとね」

 

「どっちに行くよ?」

 

「うぅん……ドラリーニョの方かな? ドラニコフの野獣化が終わってなかったら下手したら同士討ちになっちゃうから、とりあえず話は通じるドラリーニョにしよう」

 

 普段落ち着いてる状況で野獣化したのであればある程度は抑れないようにドラニコフ自身も抑制出来るが、非常時に戦闘したままだと呑まれているだろうと思っての判断だ。

 

 ドラリーニョは思考と行動が直結しているが待つように言えば待つし、合流すればまず勝手に離れる様な事はしない。それに合流して三人になってからであればドラニコフに襲われても余裕をもって止められるだろう。

 

「はやく見つけよう」

 

「おう!!」

 

 


 

 

 施設が封鎖されてから少し時間が経った頃、王ドラと治療を終えたキッドが警察の包囲網を訪れていた。

 

「あなたが警部さんですか?」

 

〘あぁ、トゥマトという。トゥマト・K・チャップル〙

 

「トマトケチャップ?」

 

「キッド?!」

 

 王ドラも一瞬頭を過りはしたものの口には出さなかったというのに思ったままに口に出してしまった。

 

〘トゥマト・K・チャップルだ!!〙

 

「ひぇっ、ご、ごめんなさい。トゥマト警部だな」

 

「キッドがすみません。よろしくお願いしますトゥマト警部」

 

 直ぐにキッドが頭を下げ、一緒にやってきた身内として王ドラも謝罪した事で怒りは収まった様で話し合いが始まった。

 

〘初めての者には必ず言われるが私はケチャップ呼びは嫌いでな。過剰に反応してしまいすまないな。それで君等の友達が全員中に入っているんだな〙

 

「はい、イベントに参加している二人とイベントを見守りに行った三人、そしてパンドラを追っていた二人の計七人です」

 

〘本来であれば一般の者が犯罪者を追うなどは危険なのだがな〙

 

「うっ……」

 

 自分の事も言われているのでないかと思い、少し居心地が悪くなるキッドだがトゥマト警部は安心するように伝えた。

 

〘今回の件は捜査に協力してもらったという形で済ませるから諸々の事については心配しなくても良い。実際に一体のロボットの破壊に貢献してもらったしな〙

 

「ほっ、ドキドキしたぜ」

 

「まぁ、キッドはロボットの前から追いかけてましたけどね」

 

「頭をいきなり踏んづけられたんだ。仕方ねぇだろ?」

 

〘誰彼構わず殺すような相手でなくても良かったが短気過ぎると余計な危険を生むから程々にしておいた方が良いだろうがな〙

 

「ちぇっ、はーい」

 

「少しは反省してくださいよ……それでこの状況からどうなるとお考えですか?」

 

 不貞腐れた様に返事をしているキッドに呆れながらもこの後の警察の動きや中の仲間についてどうなるのか、どうしていくのかを尋ねる。

 

〘一応こちらでも『通せんぼカバー』を剥がす用意はしているんだが下手に剥がして逃げ道を増やすよりは動きを待った方が良さそうでな〙

 

 これがパンドラによる立て籠もりであるならば籠もらせた分だけ不利になるため素早く剥がしてしまうが、『通せんぼカバー』を張ったのはハイドラであり、張らざるを得ないような状況だった際に取り返しがつかなくなってしまう可能性があるのだ。

 

『流石に一日以上経過するようなら強行突破といくが、今のところは周囲の包囲網の維持と動きがあった際の突入の準備を整えている』

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

「突入っておれらも行って良いか?」

 

〘構わんよ。友達が中にいる以上、不安で当然。助けに行きたい気持ちはよく分か、ん?……はっ?!『通せんぼカバー』に動きありだ!!〙

 

 話してる途中で止まり、微かな変化が気の所為でないか確認すると急いで指示を出すがその最中、警察が集まっている場所に煙が立ち込めた。

 

〘くっ、私だけでも!!お前たちは包囲網を維持し続けろ!!〙

 

 僅かにだが間のあいているカバーと地面、その僅かな隙間が閉じてしまう前にとチャップル警部は駆け出して滑り込む様にして施設内に入った。そして……

 

「セ、セーフ?!」

 

「何がセーフですか万全じゃないのに無茶をして…」

 

〘良い判断力をしているな。来てしまった以上は仕方のない。それなりに働いてもらうからな〙

 

 キッド、王ドラ、チャップル警部の三人が施設内に入り込み、パンドラの捜索を始めた。そして、その裏側にて……

 

『なんとか気付かれてなさそうですね。少々力は使いましたが『ずらしんぼ』のおかげで無事入れましたし、合流を急ぎましょう』

 

 


 

 

「おーい、ドラリーニョ!!」

 

「あいつ何処にいるんだ? 」

 

 ドラリーニョの形に穴があいたお菓子が道中で見られたからこちらへと走って来ているのだろうがいっこうに姿を捉えられないうえにその痕跡すらなくなりつつあった。

 

「あっ、またボールがあった」

 

「ドラニコフが戻った時にまた野獣化してもなんだから回収しておくか」

 

 落ちているボールを拾おうとしゃがんだ瞬間に二人の上に影がかかり、見上げるとそこに口を大きくあけた恐竜が立っていた。

 

「「うわぁああ?!」」

 

「わぁ〜ドラえもんにエル・マタドーラ!!」

 

「「は?」」

 

 いかつい姿から放たれる声は少し高めで気が抜けてしまい。開けた口の形のまま疑問の息が溢れた。

 

「ぼくだよ〜!!」

 

「あっ、お前【恐竜変身ビスケット】食べたな?!」

 

 眼の前の恐竜は『動物変身ビスケット』を元にして作り上げたハイドラオリジナル道具【恐竜変身ビスケット】、それを食べたドラリーニョであった。

 

「変化しててもひみつ道具としての機能は残ってたんだ……」

 

 情報を共有しきれてない為に〚パンドラボックス〛によって変化した道具の詳細を知らなかったために少し焦りもあったが合流出来たのは良かったとあらためて一息つく。

 

「この姿になってから力が強いんだ!!」

 

「通りで途中からグシャグシャのお菓子が転がり始めたわけだ」

 

「あ、ドラリーニョ。一応聞いておくけどドラニコフの居場所知ってる?」

 

「うぅん、途中で分かれてから見てないよ!!」

 

 予想していたがこれで手掛かりはなくなったので少し残念に思いながらこの後どうするか話し合う。

 

「分かれ道の所まで戻ってそっちに行く?」

 

「けっこう距離あるぞ。ぐるっと回るようになってるけど繋がってんならこのまま進んだ方が出会える可能性は高いんじゃないか」

 

「あぁ、たしかに。仮にドラニコフが正気になって道を戻ってたらドラメッドとあってるかもしれないし、そこまで問題はないかな」

 

「すすめすすめ〜!!」

 

 どちらにせよドラニコフが単独になる事はよっぽど巡り合わせが悪くない限りない。そう考えて続きの道を進む事にした2人と特に考えてない1人。

 

 3人が戻っていても戻らなくてもドラニコフの所へ辿り着くには少し時間がかかり過ぎる。それ故にこの結果は変わらないままだ。

 

『はぁ…はぁ…ふぅ、流石に(あせ)らされたよ。本能のままに動かれる事の厄介さ……いやあの力で理性的に動かれるのも困りものか』

 

 熱い空気にさらされて掻いた汗をそっと拭うと、ボヤキを口にしながら今まで戦っていた相手について評価すると身嗜みを整えてからその場を去った。

 

 辺りには砕かれたり、焼かれて朽ち果てたお菓子が山の様になっており、壁や床もボロボロで一部は完全に穴が空き、隣の部屋や下の階が見えている。そして……通路の真ん中に落ちたマフラーが戦いの決着を告げていた。

 

 


 

 

 舞台は変わって一階特別調理室。こちらは次々に送られてくる食材を見事に捌き切り、お菓子の調理を終えた所だった。

 

「ハイドラ!!前みたいに予備も含めてとはいかないけど最低限の数は揃ったよ!!」

 

「こちらも審査に必要なスペース程度は片付き、なんとか体裁は整えられそうです。それにしても思ってたより食材の回収ペースが早かったですね」

 

 派手なことをしている様に見えるが基本的にハイドラの動き方は準備に準備を重ねて様々な事態に備えるタイプであり、コツコツとした作業は得意中の得意、片付け自体は早めに終わっており、飾りや備品などの修復も含めて終わらせていた。

 

 回収ペースについては2人は知る由もないが途中からドラメッドが魔法道具を用いて手伝い始めた事で純粋な人手として十倍以上の成果を果たしてくれたのだ。

 

「それにしてもどんどん残骸が送られるけど、このペースが続くと元の量より増える気がするんだけど?」

 

「【卵のボーロ】も取り込んでましたからね。成長して嵩増ししてるんでしょう」

 

 ハイドラオリジナル道具の【卵のボーロ】、そのまま食べても美味しいが時間が経過すると中から様々な卵生の動物が生まれるボーロで、放置しているとさらに大きくなるが、活発にもなるため捕まえて食べるのには苦労するという面白要素を加えた道具。

 

 それを取り込んだお菓子が成長すれば成長した分の体積は増す、なんならもし番でも作れば卵が産まれて数自体も増えるだろう。

 

「まだ作れるだけ作る?それともみんなにもう良いよって伝える?」

 

「我々に非はあまりないとはいえ騒動が起きてますし、別に贈答用の物があっても良いかもしれませんね。それと幾つか多めに作ってください。役立つかもしれませんので」

 

 少し前から建物全体に響くような音が大きくなったり、遠くから振動が伝わってきたりしていて向こうが大変なことには気が付いている。

 

「良いけど何を作っとけば良い?」

 

「それでは■■■をお願いします」

 

 多めにお菓子を作り、更にはハイドラの注文した物も用意すると2人も調理室を後にするのであった。

 

 


 

 

「いけいけ〜」

 

「恐竜パワーすげぇな。お菓子が簡単にバラバラだぜ」

 

「ぼくたち乗ってるだけで良いのかな?」

 

 ドラリーニョと合流した2人は恐竜化したドラリーニョの背に乗って通路を思い切り駆け抜けていた。卵生の動物程度では止められず、恐竜とはいえ元がお菓子、本物の恐竜に変身したドラリーニョとは耐久性能に差があり、まぁ負けることはなかった。

 

 調子に任せてぐんぐん進み、超空間を利用して拡張されている建物の奥側の方へと3人は入り込んでいき、ついに彼女の姿を見つけた。

 

「あっ、お前は!!」

 

『足止めのスイートちゃんはあまり役に立たなかったのかな。もう少しで解析も終わったというのに……』

 

 〚パンドラボックス〛を片手に建物を囲う透明な壁に手を当てていたパンドラはクルリと振り返ると解析をやめて周囲を観察した。

 

『もう少しだけ働いて貰おうか、〚パンドラボックス〛!!』

 

「うわっ?!後ろからお菓子の残骸が?!」

 

「あの箱に吸い込まれてるぞ!!」

 

「なになに、なんなの?!」

 

 お菓子の残骸が〚パンドラボックス〛目掛けて飛んでいき、避けないと危ないとドラえもんと、エル・マタドーラはドラリーニョの背中から降りて防御態勢を取る。

 

 ドラリーニョもドラメッドと同じ様に事のあらましは走りながら伝えているが急な展開に大慌てであった。恐竜ボディのおかげで怪我はなくお菓子の吸収は終わった。

 

『壊された恨みを果たしなさい。ベリースイートちゃん!!』

 

 その声と共に吸い込まれたお菓子の残骸を1つに纏めたかのような大きさをした様々な動物や恐竜のパーツのキメラの様なお菓子が飛び出てきた。

 

「何だありゃ?!」

 

「お菓子だろうけど…なんかヤバそう?!」

 

「よーし、ぼくにまかせて〜とりゃああ!!」

 

 その巨体と迫力に慄くドラえもんとエル・マタドーラを横目にドラリーニョが前に飛び出してお菓子キメラ目掛けて体当たりを食らわした。

 

『先程戦った獣のロボットもそうですが貴方がたも厄介ですね』

 

「獣ってまさかドラニコフ?!」

 

「まさかアイツやられたのか?!」

 

「ゆるさないぞ!!えーい!!」

 

 獣と称されるような者は1人しかいない。丸いものを見ることで野獣化してしまうドラニコフただ1人だ。パンドラの発言に驚き、ドラリーニョはさらに追撃を仕掛けに行った。

 

「おい、ドラリーニョ?!」

 

「とりあえず援護を…わっ!!

 

『させませんよ〚パンドラボックス〛!!』

 

「わぁ、声が吸われた?!」

 

『ふふふ、吸ってもそこまでエネルギーにはなりませんか

 

 『コエカタマリン』によって固形化した声も〚パンドラボックス〛を前にして無力化され、起き上がりを邪魔する事は出来ず、お菓子キメラはなんなく立ち上がった。

 

「もう一度だ!!」

 

『取っ組みなさい!!』

 

 もう一度突進を仕掛けようとしたドラリーニョの初動を潰して互いに掴み合う様な形になる。そうすると大きさで負けているドラリーニョの方が力負けしてしまう。そしてタイミングの悪いことにドラリーニョの姿が歪み始めた。

 

「うぐぐ、体が元に戻って力が……」

 

「ドラリーニョの変身が解けた」

 

「『動物変身ビスケット』と同じで効果時間がそんなに長くないんだ!!」

 

 『動物変身ビスケット』は5分で変身が解ける。長過ぎず短過ぎずでちょうど良いとハイドラは【恐竜変身ビスケット】も同じ設定にしていたのだ。

 

『形勢逆転のようですね。いきなさいベリースイートちゃん』

 

「あぁああ?!」

 

 そのまま捕まえていたドラリーニョを攻撃する様に指示し、ドラリーニョがお菓子キメラに握り潰され、苦悶の声を上げる。もう駄目かと思われたその時に巨大な白い球体がお菓子キメラを横から弾き飛ばした。

 

「わがはいの友達に何をしてるであ~る!!」

 

「ドラメッド!!」

 

 巨大な白い球体の正体は手だけを巨大化させたドラメッドであった。振りかぶって当たる瞬間に巨大化させた拳は強化されたお菓子キメラでもひとたまりもなかった。

 

「お菓子の残骸は大体集めきったので戦いの音を聞きつけて加勢に来たであ~る」

 

「助かったぜドラメッド!!」

 

「ドラリーニョ大丈夫?」

 

「な、なんとか〜」

 

 軽く目を回してふらついているが機体に損傷はなく、問題なく動ける様子のドラリーニョにパンドラを除く、その場の全員がホッとする。

 

『2回の改変でフルメタルのエネルギーも底をついたみたいだね……これ以上はお菓子を集めても無意味かな……』

 

 もう一度そのまま〚パンドラボックス〛を翳そうとしたパンドラであったが〚パンドラボックス〛から返ってくる反応をみてそれをとりやめる。その隙をチャンスとみたドラメッドが先手を取った。

 

「魔法道具達よ!!行くであ~る!!」

 

『この程度…ん…? これは『猛獣さそいよせマント』? 残った遠くのスイートちゃんを私に寄せるつもりなら無駄だな。ある程度の範囲内ならばあれ等は私の操作化にある』

 

 飛び交う魔法道具の嵐をヒョイヒョイと軽く避けて見せるパンドラ。だがドラメッドは魔法道具の攻撃に混ぜてドラえもん達が使っていた『猛獣さそいよせマント』を飛ばして、巻き付けた。動きの制限にはあまりならず、パンドラにはお菓子を引き寄せる事も出来ないと一笑にされるがドラメッドもニヤリと笑い返した。

 

「狙いが違うであ~る。いでよ火の魔術!!」

 

 ドラメッドが魔術を使うと周囲から火の手があがり、パンドラを囲い込むかの様に動いて攻撃を仕掛ける。

 

『熱いが…これと『猛獣さそいよせマント』がなんの関係が……』

 

「ガォオオオオン!!」

 

『あの声…しまったこの火は視界を、ぐぅ?!』

 

 周囲から襲い掛かる火はパンドラに掠ることもなかったが動きが制限され、視界も悪くなった所に何処からか駆けつけたドラニコフの攻撃が『猛獣さそいよせマント』越しにきれいにパンドラまで通った。

 

「うわぁ~マントボロボロだね〜」

 

「そこじゃねぇだろ?!」

 

「ドラニコフ無事だったの!!」

 

「ガウゥゥ!!」

 

「ドラニコフは確かにパンドラと戦って負けたであ~るが咄嗟に『四次元マフラー』に隠れてやり過ごしていたのであ~る」

 

 ドラニコフが口元を隠すように着けているマフラーは『四次元ポケット』の仲間であり、パンドラとの戦い時に本能的に危険を悟って、咄嗟に四次元空間へと入り込んだそうだ。

 

 野獣化を一度落ち着かせる為にそのまま四次元空間に留まり、出てきた所でボロボロになった床が崩れて下に落ちてドラメッドと合流したそうだ。

 

「こっちに来るまでに物音でみんなが戦っているのには気付けたであるからドラニコフとは挟みうちする形で奇襲を仕掛けたのであ~る」

 

「あぁ!!その為の『猛獣さそいよせマント』だったのか!!」

 

「それを目印にドラニコフなら攻撃が出来たんだね」

 

 普段から吐いている火については耐性があり、周囲を囲む火にも臆さずに立ち向かえ、野獣化すれば少なからず影響を受けるひみつ道具を利用して、視界が悪い中でも攻撃したくなる本能を目印に突き進んでパンドラに当たった訳だ。

 

『道具を使用する様子がなかったから肉弾戦専門かと誤解していしまいました。だが一撃当てたくらいで…ッ?!』

 

 『四次元マフラー』に気付かなかった事を反省しつつも余裕ぶって強がろうとしたがふとした時に痺れが走り、動きが一瞬固まってしまいそれが相手にもバレてしまう。

 

「先のキッドとの鬼ごっことドラニコフとの戦いで既に体力は消耗済みだろうよ」

 

「キッドの件はともかくとして野獣の獰猛さと執念深さは伊達じゃないであ~る」

 

「もう、逃さないよ」

 

「ガウガウ!!」

 

「やいやい、かんねんしろ〜!!」

 

 散々暴れ回り、逃げ続けてくれた犯罪者を壁際まで追い詰めた5人。それに対してパンドラは少し苦しい顔をしているが、まだ目は諦めきっていない。

 

『まだ動く分には問題ない。足は無事、痺れている腕も利き腕じゃない。時間を稼ぐか……さて悪役らしく悪足掻きといきましょう〚パンドラボックス〛!!』

 

「また何か作る気か?!」

 

「だけど周りには何もないけど?」

 

 しかしパンドラが〚パンドラボックス〛を起動してからというもののゴゴゴゴと何やら凄まじい音が響き、揺れが5人にも届いている。

 

「はったり?」

 

「いや、違うであ~る。これは……まずいであ~る?!」

 

「足元にヒビが?!」

 

 ドラメッドが変化に気付いた時には既に手遅れであった。床に大きなヒビが走り、次の瞬間には床の全てが崩壊しながら〚パンドラボックス〛へと吸い込まれていき、その場の全員が階下へと落ちていった。

 

「いててて……」

 

「突然とはいえ誰も着地出来ないとは……」

 

「ネコ型なのにねぇ〜……」

 

「情けないであ~る……」

 

「がうぅ……」

 

「「「「「ん?」」」」ガウ?」

 

 倒れている辺りが一気に暗くなり、顔を上げると全員を覆って余りある影の持ち主、お菓子キメラよりも大きい瓦礫で出来たであろう存在が5人を見下ろしていた。

 

「「「「うわぁああ?!」」」」

  「がうううう?!」

 

 全員がその存在に対して叫び声を上げ、ドラえもんの口からは『コエカタマリン』の効果を受けた塊が飛んでいくが、当たってもびくともしていない。

 

『それは解析中だった『通せんぼカバー』も一部吸収しているからねぇ。アーマー部分の頑丈さは並じゃないよ。さぁ、巨大な絶望に抗えるかな?』

 

 よく見なければ分からないが攻撃を受け止めた部分は瓦礫の身体ではなく、その僅か数センチ手前の空間であった。透明なアーマーは何処まで覆っているのか分からず厄介な事には変わりはない。

 

「やるしかないか、オレサマの剣捌きを見せてやる」

 

「わがはいも魔術で援護を」

 

「ボール効くかなぁ?」

 

「『コエカタマリン』は弾かれると邪魔になりそう……何か買った物に良いものは……」

 

「ガゥガゥ……」

 

 どうにかしてみせようと獲物や特技の準備をする3人と他に使えるものがないか探すドラえもんと瓦礫相手では爪や牙はもちろん、火を吹いても効きそうにないと悩ましい声を上げるドラニコフ。

 

「敵は待ってはくれねぇぞ」

 

「とりあえずわがはい達で引き付けるであ~る。その間に2人で何か良い手を考えて欲しいであ~る」

 

「たのんだよ〜」

 

 ドラリーニョがその素早さを活かして囮になったり、アーマーの範囲を探ろうとエル・マタドーラが剣であちこち叩いたり、動きを止めようとドラメッドが色々な魔術を試し時間を稼いでいる。

 

「どうしよう…とりあえず買った物を一緒に見よう」

 

「ガゥガゥ…ガゥ?」

 

「薬ばかりなのは薬系って何回か使えるのもあるけど基本的に使い切りだし高めだから余計に安く感じちゃってついつい買い漁っちゃって……」

 

「ガゥガゥガゥガ!!」

 

「これは確かに使えるかも…でもやるなら最後じゃないと危ないし、とりあえずはこれで行ってみる!!」

 

 2つの道具を選ぶと1つは先にドラえもんが使い、もう1つはドラニコフが周囲へと使いに行った。そして、3人に準備が出来た事を伝える。

 

「ドラえもん!!可動部分にはアーマーはつけれないみたいだ。関節はノーガードだ!!」

 

「足止め中に気付いたであ~るが、身体のアーマーは全体には張れずにその場その場で動かして防いでるアーマーというよりはシールドに近いであ~る!!」

 

 叩きつけた際に攻撃が通った場所からアーマーの有無を確認したエル・マタドーラと魔術で身体を覆った際に効かずとも魔術が身体に通ったのと、通った場所が毎回微妙に変わっていたのに気付いたドラメッドからの報告がドラえもんに届く。

 

「ワォオーーン!!」

 

 ドラニコフがすかさず火を吹きかけると手前で掻き消えている箇所と瓦礫に当たってから拡散している箇所の違いがはっきり分かった。

 

「ドラリーニョお願い!!」

 

「うん、いくよ!!シュート!!」

 

 ドラリーニョに頼んだドラえもんはその場で丸まって見せると、鋭い蹴りと共にアーマーのない部分に思い切り頭から突っ込んだ。

 

「特別石頭のドラえもんとはいえ瓦礫相手じゃ…?!」

 

「ガゥガゥ!!ガゥ!!」

 

「それなに〜?」

 

「なるほど『がんじょう』で全体的に硬化しているであ~るか」

 

 『がんじょう』は身体自体を固くする効果もあるが、身体の表面に形成される磁力膜由来の効果であり、守りをかたくするには持って来いであり、元々金属製のドラえもんでも耐久は増す。

 

 ドラえもんは瓦礫の身体を突き破る様にして敵の向こう側になんとか着地をしてあらためて敵の方へと向き直る。そして敵の向こうに見える仲間が避難したのを確認すると大きく息を吸って最後の攻撃に移った。

 

「トドメだ!!うわぁああ!!

 

 ドラえもんが『コエカタマリン』による声の塊を通路の壁に向けて撃ち放つと壁に当たった瞬間に声が倍増するかのように跳ね返り、数を増やし大きさを増していった。

 

「ガゥガゥ!!」

 

「『コエカタマリン』と『こだまラッカー』の合せ技か!!」

 

 ドラニコフが先駆けて壁に噴霧していたのは『こだまラッカー』という吹きかけると吹きかけた場所から音がこだまの様に返ってくる道具で音を《そのまま》反射させる効果を利用した合せ技である。

 

「ドラえもんも中々考えるであ~る」

 

「すごいねぇ〜」

 

 壁に反射する度に威力を増大させていく『うわぁああ!!』の声は通路の真ん中に立ち尽くしていた瓦礫の敵を目掛けて突き進んだ。

 

「「「「「いっけーー!!」」」」ガウ!!」

 

 ドスンとぶつかった音が響き、その音さえも反射させて少し耳が痛くなるが破壊された瓦礫による砂埃が立ち込め、音の山に埋まって動いていないのを確認する。

 

「やったのか?」

 

「見えてないから完全にやられているのかは分からないであ~る」

 

 ドラえもんも他の4人の所まで戻り様子を見守っていると急にガタガタと音が鳴り響く、そして声の塊が浮かび始めた。

 

『君たち私の事を忘れてないかい?』

 

 瓦礫の怪物を倒すのに必死になり過ぎてまだパンドラ自体を捕まえていなかった事を忘れていた5人の方に声の塊が倒れ掛かってきた。

 

「「「「うわぁ?!」」」」

 

「ドカン!!」

 

 スクラップになる事はないだろうがある程度の故障は覚悟しないといけない。そんな危機的な状況に対して全員が目を瞑った瞬間に聴き慣れた声と共に空気の弾が目の前に着弾した。

 

「おい、大丈夫だったかお前ら?」

 

 5人が声の聞こえた方を見ると壮大な事態のある意味引き金とも言えるキッドとその付き添いの王ドラと1人の人間の男性がそこに立っていた。

 

「キッド、それに王ドラも!!」

 

「そちらの人はどちら様?」

 

「こちらの方は警部さんですよドラえもん」

 

〘トゥマトだ。詳しい話はまたにして先ずはアイツの対処だ〙

 

 全員が相手の方に向き直り、お互いの距離を確かめながら逃げ道を塞ぐように囲いを作り出す。

 

『見たことある顔もそうじゃない顔も勢揃いですか?』

 

 ゆっくりと辺りを見渡すように身体ごと回転してみせるパンドラ。その中でもトゥマト警部の方を見やると笑みを深め、互いに見合い、懐に手を伸ばす。

 

『やる気ですか? 損傷は回復済みとはいえきついな……』

 

〘素直に捕まる気はないだろ?〙

 

『それでは…応戦(パワー)競走(スピード)耐久(ハード)鸚鵡(ミラー)合戦(ウォー)?』

 

鸚鵡(ミラー)だ〙

 

 2人の間に特殊な空気を感じるとそっとドラえもん達は距離を取り、2人のやり取りを見守り始めた。しかし、パンドラの問いかけもトゥマト警部の回答もいまいちわかっていないのが殆どであった。

 

「なに、なんのこと?」

 

「何かの名称に聞こえるであるが」

 

「ひみつ道具の代表的な勝負形式です。互いに即興でひみつ道具を出し合い道具自体の力関係の優劣で競う応戦(パワー)、ひみつ道具を用いて規定の距離を駆け抜ける妨害ありのレースの競走(スピード)、これはルールが複数ありますが今回はこの場でやれる交代で直接攻撃し合い、避けても防いでも良いですが最終的に立っていた方が勝ちという集中力や忍耐力を競う 耐久(ハード)合戦(ウォー)は本来なら同人数からなるチーム同士の戦いですがたぶん総力戦の意、そしてトゥマト警部が応えた鸚鵡(ミラー)は同じひみつ道具で戦い使い手の技量や智謀をはかるものです」

 

 誰も分からないで困惑していると口を開いた王ドラが殆ど休み無しで説明しきり、ある程度は共有された。

 

「やけに詳しいな王ドラ」

 

「武術の大会の会場に他のイベントのポスターなどが貼ってあり、そこから興味を持って個人的に調べたんですよ」

 

 修行の成果を確かめるために参加可能な大会には出るようにしている王ドラだからこその情報源である。

 

「そう言えばなんかテレビでひみつ道具を出し合ってる映像を見た気がするな。めちゃくちゃ早口で似たような効果の道具を出しててよ」

 

 ひみつ道具を用いたスポーツなんかが派手さも相まって人気ではあるがそれなりに参加している人数は多くテレビでも取り上げられており、キッドも一度だけ見たことがあるのを思い出した。

 

「それはおそらく応戦ですね。相手の問いに対して詰まったり、一度出したものを出したり、相手の出した道具より明らかに劣っていたら負けです。即興性と知識量、後はリズム感が物を言います」

 

「何処となくラップバトルみてぇだな」

 

「たしかに…それじゃ妨害ありのレースって奴はいつもの俺たちでやるおいかけっこが近いんじゃないか」

 

「その道のプロに一度怒られた方が良いであ~る」

 

「ところでさぁ。なんで、えっとえっと……トゥマト警部?は鸚鵡ってやつにしたの〜?」

 

「捕まえられる可能性が高いからっていうよりかは消去法ですかね。まず警察の立場からして僕たちを巻き込めないから合戦は候補から消えます」

 

 警察で保護したり、直ぐに治療が出来る状況ならばトゥマトは巻き込んだだろう。しかし流石に閉鎖された環境下でそれはまずいと判断したのだ。

 

「なんとなく分かったであ~る。応戦は持ち込みが制限されてる場所で犯罪者相手には不利であ~るな」

 

 警察もある程度は緩和されているだろうが何を持っているか分からない犯罪者と比べると選びにくい選択肢である。他の2つなんかはさらに選ばれない理由が鮮明だ。

 

「競走なんてのは途中で撒かれたらそのまま逃げられちまうしな」

 

「人間とロボットでは端から耐久じゃ勝負にならねぇ」

 

 競走は犯罪者有利が過ぎ、トゥマト警部は人間でパンドラがロボットである以上は耐久は不公平。そして鸚鵡では唯一無二の利点も存在する。

 

「同じ道具での勝負だとあの不思議な道具も封じれるし、一番勝算が出てくるんだよ」

 

「そっか〜」

 

「本当に分かってるであ~るか?」

 

「ガゥガゥ……」

 

「とりあえず相手が何かルール違反をしない限り見守るしかないですね」

 

 


 

 

 

『警察に配備されているひみつ道具と言うと『空気砲』『ショックガン』『タケコプター』…他に何がありますかね?』

 

 確信じみた声色で呼ぶ3つのひみつ道具はこれまで追いかけられた際に何度も見たからだろう。なんとも忌々しい事だが苛立ちは冷静さを欠く、勝負の邪魔だ。

 

〘特殊な物や明らかに不要な物は除いて良いだろう。『タイム電話』などが合っても意味はない。単純な方が決着も早い、後は『スーパー手袋』だけで良い〙

 

 こいつは複数の道具を組み合わせて効果を発揮させる程の知識の持ち主、下手に手数を増やせば辛くなるのは私の方になるかもしれない。

 

『それでは合図はこれで、ほっ』

 

〘『チクタクボンワッペン』……物騒な合図だな〙

 

 距離を取って出来た空間のその中心に放り込まれたのは殺傷性はないタイマー型の爆弾。静けさの中でチクタクと描かれた針の動く音だけが響き、そして零の合図と共に煙が放たれ、相手の姿が隠れた。

 

 それと同時に先程まで居た場所目掛けて煙を突き抜けて届いた光線。驚きはしない、それぐらいであればこちらもしているのだから。

 

 今度はその放たれた角度から何処に居たのかを割り出し、どちらへ向かうかを予測して撃ち合う。

 

 こちらの腕前はもちろん、相手の腕前も相当な物で、予測の精度も非常に高く、見えてないにも関わらず掠りそうになっている物がちらほらある。

 

 それでも見えない相手に焦りは見せてはいけない。光線が通る瞬間に晴れて出来る穴からの情報さえも見逃さず、相手を倒す事だけに集中する。

 

 このままでは鼬ごっこにしかならないが、対応に追われる側では勝てない。先に手を打つためにもう1つ撃つ事にする。

 

〘ドカン!!〙

 

 『ショックガン』から『空気砲』に一度持ち替えて放つ事で残った煙がパンドラ側へと流れる空気の流れが生まれる。

 

 こちらの煙がなくなることで身を隠す場所は減ったが視界は良好、そして動きの早い煙の中で壁でもないのに滞っている所があればそこだ。

 

〘喰らえ!!〙

 

 銃に限らず遠距離の得物では手応えという物がない。『ショックガン』では相手が気絶するために反応も返って来ない時があるために当たったかは確かではない。

 

〘くっ?!まだだ!!〙

 

 返すように攻撃が飛んできたが警戒は怠っていなかったので横に跳ぶことで避ける。向こう側の通路は煙が立ち込めているが飛んでくる場所が大体同じな事から何かを盾にしていると想像がつく。

 

 当たり方と返り方から腕を出すであろう場所、高さを確かめて少しずつ精度を高めていく、隠れているというのはヒットの可能性は下がるが身動きは取りにくくなる。

 

 相手の行動が制限されている今がチャンスである。そう思ったが相手も馬鹿ではない。『空気砲』が地面に向けて放たれ、先程まで散って落ちていた煙の粒子が舞い上がり、流れも変わった。

 

 その煙に紛れて逃げると考え、完全に把握した盾の周囲を絶え間なく撃つ事で封じる。だが少しの時間を与えたのが駄目だった。

 

〘『スーパー手袋』で盾ごと移動したか……〙

 

 当たり方が変わったのに気付いた時には少し遅く、煙に紛れている間に素早く『スーパー手袋』を着け、盾にしていたのであろう瓦礫を持ちながら奥へ移動していた。

 

 こちらが移動に気付いたのを把握してるのかは分からないが通路の奥の方から足音が聞こえ始めた。詰めた分だけまた離された形だ。

 

〘煙はもう味方ではないな〙

 

 問題になるだろうが仕方がないと近くの窓や扉を片っ端から『空気砲』で吹き飛ばしていく、限られた通路だから利用し続ける事が出来たが完全に逃がせば勝手に晴れる。

 

『後は盾ごと吹き飛ばしてから決めるだけだ』

 

 やはり使っていたのは瓦礫などだったのだろう。彼らの戦闘があった場所はけっこう広範囲であちらこちらに色々と転がっている。

 

 『スーパー手袋』で持てるサイズとなるとそれなりになるがあれだけ動いてるのであれば最大とまではいかない。それなら『空気砲』の直撃なら諸共吹き飛ばせる。

 

 追いかけていると流石に前方から光線が飛んでくるが、かなり視界が良くなっているため冷静に避けるか、こちらも瓦礫を利用する。

 

 詰めていると途端にプロペラの音が響き出す。立体的に動く事で瓦礫の合間から狙われる。それでも少し体勢を変えれば心配はない。

 

『ドカン』

 

 こちらを逆に吹き飛ばそうとしているのか少し浮いた位置から空気の弾が放たれるがそう簡単に吹き飛ばされる訳にはいかないと壁に手をつき踏ん張る。

 

 こちらは相手の位置が大体ではあるが把握出来る。プロペラの音と『空気砲』の発射位置を頼りに少し行った先の十字路を曲がったのを確認すると『空気砲』を撃ち放った。

 

 瓦礫が吹き飛んだのを確認し、煙が晴れていくのを待たずにそのまま『ショックガン』を撃とうとした時、何故かまだプロペラが回っている。

 

〘なっ?!『タケコプター』だけ……しまっ?!〙

 

『チェックメイト』

 

 盾にしている瓦礫に起動していない『タケコプター』と『空気砲』を取り付けて曲がる際に自分の『タケコプター』を切って騙したのだろう。『空気砲』も当てる気がなければ音声認識だけで撃てはする。やられた悔しさの中で聞こえたその声を最後に私の意識は途絶える事になった。

 

 


 

 

 逃げると見せかけて罠に嵌め込み、相手の動きを完全に読み切って、後ろから放たれた『ショックガン』、一言声を掛ける余裕がありながら避ける隙を与えないその采配にドラえもん達は口を開けていた。

 

「うわ〜」

 

「戦略の組み立て方が上手い……」

 

「ロボット任せにしているから本人はそこまでかと思ってたが武器だけ見ても中々だぞ。流石にあんな使い方はしねぇし、『空気砲』の腕だけなら負けねぇが勝てるかは……」

 

「ありゃ、相当な手練れだぞ。身のこなしがかなり軽い、動き慣れてる身体の使い方に見えるぞ」

 

「ワゥワゥ」

 

「僕たちで勝てるかな?」

 

 らしくない物言いだが不安を溢すのも無理はなく、技術の発展と共に多様化していく犯罪に対応する警察、その力量は確かな物であり、警部となると大きな都市におけるトップクラスの実力者に当たる。

 

 もちろん得意不得意もあり、必ずしも強さが必要となる訳では無いが直接現場に訪れ、後方で指揮を取るでもない様な人物は死にたがりでない限りはその腕は保証される。

 

『すぅはぁ…このまま見逃してくれるんなら楽なんだけどなぁ』

 

 多少は息が乱れている事から戦い自体でまったく損耗がない訳では無いのだろう。しかし、ドラえもん達と戦った時の損傷は全く残っていない様にも見える。

 

 ゆっくりとドラえもん達の方へと歩みを進めるその所作は綺麗であるが故に何処か不気味にも思え、恐怖に後退る者もいる。個と集団の距離が最初よりも半分程になった所でその歩みは止まった。

 

『今度はそっちが相手かな?』

 

「「「「「「「えっ?」」」」」」ワゥ?」

 

 パンドラはドラえもん達に背を向けるようにくるりと回ってみせると、通路の角の方へ分かっているぞと『ショックガン』を構えた。

 

「問題にならないのであれば私としては関わらないのも手なんですがね……」

 

 銃口の先、影となっている場所から一仕事終えたばかりで疲れているんだけどなとぼやきながらも彼はその姿を表した。

 

「「「「「「「ハイドラ!!」」」」」」ワゥ!!」

 

「これも社会貢献と考えてお相手します」

 

「ぼくはみんなの所に行ってるね」

 

 しれっと隣に立っていたジェドーラはドラえもん達に合流すると先程のトゥマト警部とパンドラの時の様に今度はハイドラとパンドラでの空間が出来上がった。

 

 


 

 

 調理場に現れたあの一瞬では完璧に把握出来たとは言えなかったけど、確実に見覚えのない顔ですね。とはいえDr.ブレンドと同様な存在の可能性もあるので気は抜けませんね。

 

『ルールは?』

 

手頃(シンプル)なんてのは?」

 

『マイナーですねぇ……路地裏の喧嘩かガチの殺り合いでしか使われない物を選ぶなんて』

 

 耐久よりもさらに殺伐としている細かいルールなどない殆どなんでもありの戦い方。私に限って言えばその方がやりやすいだろう。

 

 ルールや当て字の由来はシンプルな喧嘩から素手喧嘩(ステゴロ)を連想、しかし端からひみつ道具を使用した戦い、素手にはどうやってもならない。なので()()()()()()()()()()()()を使った手頃な戦いで手頃(シンプル)となった。

 

 そこから由来が由来であるために今では手に持てるだけしか使わなければ後は()()使()()()()()()()()()()()()()()()、実質的な()()()()()()のルールとして知れ渡っている。

 

「それで返答は?」

 

『悩みますが……YESで、っと危ない?!』

 

 YESと言い切った瞬間には牽制に『ショックガン』を撃ち放つ、手頃に合図なんて物はない。相手が了承した時点でそこは戦場である。

 

 だが流石に相手も理解しているのか答えながらもステップを踏んで綺麗に避けて見せる。もう少し早ければ撃ち抜けたか?だが私にはキッドやのび太くんレベルの腕はない。当てるならばもっと動きの制限をしなければならない。

 

「『手なげミサイル』」

 

 投げれば目標目掛けて飛んでいってくれるミサイル。説明では必ず当たると言われているが防ぎようも避けようも全然ある道具だ。

 

 飛行軌道の関係で急な動きに対応しきれずに障害物に当たって起爆してしまったり、先に起爆したものに誘爆したり、撃ち落とす事も可能だ。

 

 それでも近くで受ければ爆風の煽りを受けたり熱風で焼けてしまう。避けることを強要することで相手の動きを制限する事ができる。

 

『やられっぱではいられないよ。いけ『ミニ雷雲』!!』

 

「ミサイルに落ちて迎撃か……残ると厄介ですね強力うちわ『風神』!!」

 

 風を起こして接近や相手の攻撃の起こりを防ぎながら相手の生み出した雷雲を吹き飛ばして蹴散らす。そのまま追撃と思うが相手の判断が早かった。

 

『風には風で、舞え!!『つむじ風うちわ』!!』

 

「『風神』で起こした風を利用して……くっ目眩ましか?!」

 

 起きた風をつむじ風で吸収させてから操り、台風程ではないが厄介な風が周囲に集まってくる。複数のつむじ風を操っているからか明確な中心がなく、何処に避けても影響を受ける……これはまずい。

 

『風からのプレゼントだ『風合戦手袋』に『空気砲』ドカン!!』

 

「『風ため機』!!」

 

 固形化した空気を『空気砲』で放つなんて当たれば一溜まりもない。つむじ風のせいで軌道を読むのも難しいから『風合戦バット』で打ち返すのも不可能だ。

 

 そもそも捕まってるこの状況自体をどうにかしなければならないので風自体を封じる様に『風ため機』を置くことでつむじ風も固形化した空気も『空気砲』も防いで仕切り直す。

 

『もう少し踊って貰おうかな『おもちゃの兵隊』!!』

 

「『無生物指揮棒』!!瓦礫よ盾となれ!!そして落ちろ!!」

 

 自身の近くにある瓦礫を目の前に来させて盾とすることで『おもちゃの兵隊』の攻撃を防ぎ、そのまま余った瓦礫に跳び跳ねさせて相手目掛けて落としていく。

 

 防御と攻撃を同時に行うことでなんとかペースを取り戻す事が出来そうだ。そして瓦礫を移動させることで次のステージも用意してしまえば良い。

 

 狙う様に見せかけて瓦礫を動かし、相手を囲むように幾つかの壁を周りに作り出してしまえば第一段階終了。後は『ショックガン』に持ち替えて『チーターローション』をタンクから排出。

 

『この速度は『チーターローション』?! 使用している隙なんてなかったのに……』

 

「『材質変換機』!!」

 

 この光を浴びせる事で相手を囲い込む瓦礫を鏡に変質させる。こうすることで光を跳ね返す土台まで完成したが、『チーターローション』の効力が切れかけてきた。

 

『何を企んでるか大体分かったけど逆に利用してあげるよ』

 

 相手が『ショックガン』を持ち出し、鏡に反射させる事でこちらを狙ってきた。死角から飛んてくる光を避けるともう一発、タイミングを合わせてクロスするように撃ち込まれる。

 

 『チーターローション』の効力が完全に切れておらず、掛け直す事が出来ないタイミングを狙う当たり、ひみつ道具への知識量はかなりのものだと窺える。

 

 しかし、どれだけひみつ道具に詳しかろうが()()()()()であれば即座に対応は難しいだろう。

 

「【アンドゥナツ】!!」

 

『なにっ消えた?! 何処に……危ない後ろかっ?!』

 

 ジェドーラに多めに作るように頼んだ道具【アンドゥナツ】それを口に含んだ私は即座に呑み込み、その効果でパンドラの背後を取り、『ショックガン』を撃ち返したが勘が働くのか避けられた。

 

『どうやってそこまで移動を……『チーターローション』にしては今の挙動はそのままだし、くっまた?!』

 

 もう1つの口に含むとさらに移動して『ショックガン』を放つ。直接狙う時もあれば反射を狙い、チクチクと撃ち続ける事で相手の集中を奪う。

 

『空間転移にしては指定の動作がない。現れる場所…限定的な時間移動か? となればそこだ!!』

 

「おっと流石に頭が回るみたいですね。ですが残念、まだまだあるのでどれだけ戻るかは分かりませんよ」 

 

 十回程は撃った頃に相手もこちらの挙動から効果を推測し、現れる場所を予測して『ショックガン』が放たれる。しかし、もう1つ即座に食べる事で避けるのは他愛もない。

 

 私オリジナル道具の【アンドゥナツ】は『現実ビデオ化機』が近いだろうか。対象の行動を1つ分だけなかった事にするという巻き戻しを可能とする道具で、極めて限定的な過去改変の為に食べるというだけで効果を発揮させる事が出来ている。

 

 食べた対象の行動を1つ分巻き戻し、なかった事にするために対象以外が絡んだ事象は対象に付随したままで、無くなることはない。

 

 今やった様に当たる前に食べる事で攻撃を避ける事は可能だが、当たった事はなかった事にならないため、仮に当たってから食べたとすると私の移動だけがなかった事になり、殴られた私が過去の場所に現れる。

 

 また何処までを1つの行動とするかの判断が非常にシビアであり、状況の展開が激しい場面での使用にはかなりの技量を必要とするだろう。

 

 だがその技量さえあれば自身のリズムを用いた完璧な立ち回りが可能となり、戦いにおいても大きな効果を発揮してくれる。

 

 食べては撃ち、撃っては食べてを繰り返す事でとにかく逃げる隙を与えない。そうすれば確実に避けきれない盤面が訪れる。

 

「なんてしたっけ? あぁ、チェックメイト」

 

 多方向から飛んでくる攻撃を捌き避けてと対応に追われ続けるパンドラに向けて真っ直ぐに放った不可避の光線。向こうが気付いた時には逃げ場はなく、諦めに目を瞑ろうとする敵の姿を見たその瞬間。

 

『ジャムジャムジャミング!!』

 

 聞き覚えのない声と共に確かな妨害が入り、トドメとなる筈だった攻撃は霧散していくのをこの目が捉えた。()()()()というのはここまで厄介なのか……どうやらまだこの騒動は終わらないらしい。

 

 


 

 

『ジャムジャムジャミング!!』

 

 何処からか声が響いたかと思うもパンドラへと向かっていた攻撃が何もない空間で弾かれてしまった。

 

『ジャム!! ナイスタイミングだ!!』

 

「横入りとはずるいですよ!!」

 

「いえ、王ドラ。手頃はなんでもあり、縛らない限りは多対一も乱入も容認されるんです」

 

 仲間がいるとは知らなかったと心底悔しそうな表情を浮かべるハイドラ、その苦虫を噛み潰したような顔にはなぜそこまでと周囲の一部は疑問に思うが状況が状況なために直ぐに流れる。

 

「ジャム? アイツの味方か?!」

 

〘うぐぅ……あいつは厄介なサポート担当だ〙

 

「トゥマト警部無理しないで?!」

 

 攻撃を防いだ物が飛んできた方向へと視線を向けるとシャム猫型と思われるネコ型のロボットがそこに優雅に立っていた。そしてハイドラ達の戦いが長引いた事でトゥマト警部が目をさまし、謎の存在について補足する。

 

『お初の方もいらっしゃる様で、這々を転々とパンドラのサポート役、名前にもちょいと点々をシャム猫のジャムと申します。以後お見知りおきを!!飛び道具は厳禁、手詰まり行きのジャムルーム!!』

 

 トゥマト警部の簡易的な説明がなくとも十分なくらいに堂々と自己紹介をして優雅に一礼すると今度は手を広げて何かを宣言した。

 

「突っ立てりゃいい的だぜ。ドカン!!ってありゃ?!」

 

 呑気におしゃべりしている相手を撃ってやろうと『空気砲』を構えて叫んだキッドであったが、その腕の先から空気の弾が放たれる事はなかった。

 

〘サポート担当と言っただろう。あいつはこっちの行動の阻害もしてくる。まるで『キンシ標識』みたいにな。今は飛び道具が使えなくなってる筈だ〙

 

 だから俺は近接武器も用意する様にしているんだと『チャンバラ刀』を全員に見せるチャップル警部。

 

「なんだってー?!」

 

 自身が一番得意とする『空気砲』を封じられたキッドはその理不尽さに怒りを抱きながらも引き下がるしかなかった。そして、キッドに代わるように王ドラが前に出る。

 

「ならば近接戦の出番!!アチョー!! 」

 

『スリップ注意、甘いイタズラ、スイートジャム!!』

 

「へっ…足がとられ、うわぁああ?!」

 

 得意のカンフーでパンドラ達を攻撃しようと跳び跳ねて向かったがジャムが何かを撒くとそれに足をとられて床まで落ちてしまった。

 

 何事だと注目する中で匂いに気付いたジェドーラが撒かれた物をひと掬いして口に含んだ。犯罪者の出した物を安易に口に入れるべきではないが毒などはなく、甘い香りのそれが何かを答えた。

 

「これ、いちごジャムだね。食べ物を粗末にするなんて許さないぞ!!」

 

『とは言われましてもこれが私の戦い方ですのであしからず。それでは『通せんぼカバー』もだいぶボロボロになった様なのでここらで失礼します』

 

『それじゃバイバ〜イ!!』

 

「待て!!」

 

 手を伸ばしたり、何かないかと道具を取り出すも一歩遅く、空いた穴から出ていった2人組の姿は早々に見えなくなってしまい。事件は幕を閉じることになった。

 

 


 

 

 そこからは目まぐるしいぐらいの忙しさが嘘みたいに落ち着き、警察からの簡単な聴取を受けたらそのままイベントは開催され、企業からの審査を受けることが出来た。

 

「【卵のボーロ】最優秀賞獲得おめでとう」

 

「あれなぁ。強かったからなぁ納得だぜ」

 

「いや強さは基準じゃないでしょうよ。それにあれはパンドラの改造品ですよ」

 

 色々と作ったが企業から評価が高かったのは【卵のボーロ】だった。シンプルなお菓子でありながら詰め込まれた様々な動物のプログラムをまずは褒められた。

 

 そして、卵から何が生まれるか分からないドキドキ、成長することで食べごたえが増す点、戦うことでのアクション要素が他にないので話題になると売る側の視点での評価が大きい。

 

 原料が安く済む点と既にプログラム関係が設定され尽くしている為にそのまま作ろうと思えば即座に商品化が可能なのも企業としては良かったのだろう。

 

 こういった大会では一例だけを作って、他の部分は企業にお任せするという。商品のネタというか案と簡易的な仕組みだけを提出するのも珍しくはない中で完成度で勝ったとも言える。

 

「他のも商品化するんだろ?」

 

「お店に並ぶのが楽しみだね」

 

「ワゥワゥ!!」

 

 実際に店頭で見るようになるには流石にまだ時間はかかるだろうがこう楽しみにされると嬉しいものである。

 

「後は特別賞の味の評価であ~る」

 

「ジェドーラもおめでと〜」

 

「い、いやぁ~、嬉しいよ。みんなありがとう」

 

 調理を担当したジェドーラの方も無事に評価され、【ジェラ〜ト】が特別賞を受賞した。本来は妬ましい、羨ましい等の嫉妬を込めて混ぜることで完成するジェラートで、食べることで思いを消化し、気持ちを切り替える道具。

 

 嫉妬の強さでそのジェラートの味や温度が変わるのだが大まかな【ジェラ〜ト】の味のモデルを用意し、実際の変化も合わせて味わってもらった所、多彩な味と滑らかな舌触りで大人気となった。

 

 その評判の良さから他の参加者の放たれた嫉妬をさらに吸収したりもしたが、まぁ特に問題にはならずに終了し、そのまま開催中はひみつ道具ミュージアム周辺を全員で楽しみ尽くす事になった。

 

 


 

 

 事件が終わり、イベントも一部を除いて中止にはならずに済み、警察官の大半が撤収された頃にチャップル警部とひみつ道具ミュージアムの館長が秘密裏に会合していた。

 

 警部は出された茶を味わい、館長も話の前に落ち着くために一口含んで飲み干すと息を吐き出す。静けさによる緊張が残る中で警部から口を開けた。

 

〘それでは話を始めたいのですが、まず確認ですがひみつ道具ミュージアムから盗まれたものがあるというのは本当ですか?〙

 

 パンドラによる事件を追っているチャップル警部だからこそ気になる情報であり、公には出来ずにこうして機会を設ける程の事情とはなんなのか。鋭さを隠さない瞳が館長へ向く。

 

「はい……あれは危険性から存在を秘匿された道具でして、情報の流出時に備えて()()()()()が作られた程のものです」

 

〘そういった物は即座に破棄されるべきなのでは?〙

 

 安全面から考えればこれ以上ない方法だろうと簡単に返された警部の言葉に館長はひみつ道具に関わる一人の人間としてとても苦い顔を浮かべる。

 

「そうするべきなのでしょうが、流失した技術を復元しようと試みたプロジェクトの中で作られた物でして、技術的価値が高く、完全に消してしまうのは惜しまれたそうです。その為に万が一に対策が取りやすく、警備の厳重なここひみつ道具ミュージアムの秘匿展示室にて保管されていたのですが……」

 

 盗まれた現状があるということはその厳重な警備とやらは意味をなさなかった事になる。そもそも何処から隠された場所の情報が漏れたのか謎ばかりである。

 

〘パンドラにしてやられたという訳ですな。その現場は見せていただけると助かるのですが〙

 

()()()()()、あそこは館長のみが管理を許されている場所でして、他にも回収されている道具があります。その為に不用意に立ち入るだけでも危険性があるのです。それ以前に私の判断だけでお入れすることも難しく……」

 

 ミュージアムという優れた立地も相まって保管場所になり、ひみつ道具に詳しく、その扱いにも長けているのには間違いない為に管理人となったが全てを決定している訳ではなく、その上がいる。

 

 ただでさえ今回の一件で責任がどうなるか分からないというのに許可なくこれ以上の情報の開示は出来ないと暗に否定する。そして、上下関係については警察という組織に所属しているチャップル警部もよくよく理解しており、これ以上は踏み込まなかった。

 

〘パンドラは騒動を起こしたり、ひみつ道具を盗んだりしていますが、盗んだ物を使用した記録は今のところありません。おそらく〚パンドラボックス〛に何らかの形で使用しているのでしょう〙

 

「あれがそのままの形で出ていかないのであれば不幸中の幸いと言えるでしょう……あれはそれだけ強力な道具でした。心無い人間が持てば世界が危険になる…そんな道具です」

 

〘パンドラに対する捜査権は私に預けられています。念のためその盗まれた道具の詳細だけは教えて頂きたい〙

 

 盗まれたのはなんという名の道具で、いったいどの様な効果があるのか、それを知っているのと知らないのでは対策の立て方も違ってくる。館長は悩みながらも重い口を開けて、その名を告げた。

 

「あれは、【悪魔のパスポート】です」

 

〘『悪魔のパスポート』と言うとあの?〙

 

 赤い表紙に黒い悪魔の顔の描かれたパスポートであり、取り扱いに制限のある道具をチャップル警部は思い浮かべる。だが、その想像は直ぐに否定された。

 

「おそらく想像している物とは別物です。皆様が知っているのは本物の【悪魔のパスポート】を隠すために発売されたデコイ…本当の名前を悪魔に対抗する様に【天使のパスポート】と名付けられています」

 

〘ややこしくて頭がこんがらがりそうだが……世間に出回っている『悪魔のパスポート』が本当は【天使のパスポート】で、今回盗まれたのが本物の【悪魔のパスポート】であっているか?〙

 

 なんともややこしいが本物を隠して、偽物を本物として流してまで守るとはデコイを考えた者たちの執念を感じる。

 

「はい、先程も言いましたが技術の復元を目的としたプロジェクトの下で開発は進められ、犯罪心理学などの研究に役立つとも当時は期待されていました。しかし、偶然作り出されたそれは制御出来ない程のそれは恐ろしい効果を有してしまった」

 

 詳細を知るからこその恐怖に館長は唇を少し青くさせ、顔の血色も悪くし、細かく震える腕をさすっている。

 

〘あなたがそこまで強調して言うほどの代物ですか…警察という立場からしても本物の【悪魔のパスポート】というのはかなり厄介に思えますが、そもそもそれほどの技術が失われる程の過去に存在したのですか?〙

 

 技術が失われるというのはそんなに単純な話ではない。一子相伝の秘法などであれば近年になって急に失われる事もあるだろう。

 

 この様な道具の元になるほどの技術が急に失われるのかは疑問に思える。だが館長の次の言葉でその疑問は掻き消えることになった。

 

「今も続くあの()()の家系、そこが源流となる技術です」

 

〘っ?! 日本のエジソンとも呼ばれ、現在の自動調理器の先駆けとなった『包丁いらず』やタイムマシンの一般普及や航時法の制定時にも大きく貢献した21世紀の天才()()()()、そしてかの江戸の時代にこの時代のひみつ道具と遜色ない品を作り上げた()()()()の……確か発明家として今も家が続いていたと思うが?〙

 

 はるか未来にまで語り継がれる様な偉人が排出された家の名の前には先程までの疑問なんて吹けば飛ぶ物である。

 

「えぇ、その内の一人がひみつ道具研究に携わりプロジェクトにも参加していました。そのおかげで木手の一族に伝わる知識の一端、そして受け継がれてきた頭脳による閃きを利用でき、プロジェクトは順調に進んでしまいました。【悪魔のパスポート】は奇天烈斎の『御赦免印籠』という道具の技術を利用した物です。それ自体も悪人が持てば危険な代物ですが使い続ければ壊れる欠陥品だったそうです。ある意味欠陥品だからこそセーフティが掛かっていたんですが……」

 

〘【悪魔のパスポート】はそれも克服してしまった。だが二つとない一点物であり、現在の技術では取り押さえることが出来ないオーパーツとしてか……〙

 

「オーパーツ……言い得て妙ですね。それほど表すのに適した言葉はないでしょう。木手一族の発明品は何時の時代においても未来を生きているとしか思えないものばかり、それを再生しようとしたのが間違いだったのでしょう」

 

 何処か遠い目をして当時のプロジェクトに思いを馳せる館長、天才とそうでない者との差とはこれほどまでに辛いものなのかと悩ませるがこのままでは話がそれてしまうと声を掛ける警部。

 

〘大変貴重なお話、そしてご協力に感謝します〙

 

「いえ、こちらこそ配慮頂きありがとうございます。他に何か聞いておきたい事とかがありましたらまだお時間ありますが」

 

〘それでしたら【悪魔のパスポート】の話を聞いてから気になっている事があったのですがいいですか?〙

 

「機密に関わる事でなければ」

 

〘いえいえ、そちらの事に関することではないのです。ただ今回の盗みを働いた犯人であるパンドラ、彼女が使う〚パンドラボックス〛…あれと同名のひみつ道具がありましたね〙

 

「えぇ『パンドラボックス』、危険性もない道具のためこのミュージアムにも展示されています」

 

〘あれと彼女の持つ道具では類似性はありませんが……あれが()()()()()である可能性を私は追っています〙

 

「あれがデコイですか……パンドラの持つ〚パンドラボックス〛を本物としてそれを隠すために『パンドラボックス』が作られたとして、パンドラが暴れているのを考えると意味がないのでは?」

 

〘いや、『パンドラボックス』の方が初めて販売されたのはかなり前だ。その頃にパンドラはまだ活動していないし、販売されてからもそれなりに時間があいている。あれが本当の意味でパンドラの箱だったとしたら?〙

 

「……?!も、もしや 、オーパーツに数えられる様な強力なひみつ道具、いや正確にはひみつ道具ですらないかもしれない秘宝!! それを確実に手に入れるため、独占するために『パンドラボックス』を普及させる事で他の者が〚パンドラボックス〛にたどり着けないようにした?!」

 

〘あぁ、仮定通りだとすれば『パンドラボックス』の開発者とパンドラには何らかの関係性があるはずだ。ジャム同様に共犯なのか、それとも〚パンドラボックス〛を狙い合う敵同士なのか、目的すら掴めない謎に包まれたパンドラのベールを剥がせる切っ掛けに成り得る〙

 

「ひみつ道具職人の資格取得者の情報は調べられます。販売されるレベルの道具を作っていれば検索にも引っかかる……出ました!!」

 

〘どれどれ……これは?!〙

 

 

 

 

・制作者

:バクスィー・テウス

 

・所属

:第六未来大学・昔年時代学科・エネルギー研究室

 

・代表作

:『パンドラボックス』『ゴルゴンの首』

 『ジークフリート』『ポータブルピラミッド』

 『モーゼステッキ』『うちでの小づち』

 『アラビンのランプ』『バショー扇』

 『キューピッドの矢』+etc

 

・備考

:研究調査に同行後死亡

:教授及び室員も同時期に死亡

:研究室は閉鎖済

 

 

 

〘詳しく調べる価値がありそうだな〙

 

 

 


 

 

『いてて、けっこうあちこちにガタがきてるな』

 

『そんなにやる人たちだったんですか』

 

『個々に力もあったけど連携するとかなり厄介かな?』

 

『あの警部もそうですが面倒ですね』

 

()()()()()()だからね』

 

『まぁ、必要な物は手に入れられたんでしょう? それなら身体をはった価値に見合うでしょうね』

 

『そうだね。【悪魔のパスポート】、これを取り込めば精神耐性は十分な筈』

 

『それでは養生を終えたら行きますか?』

 

『エネルギーの確保もしてからになるが……()()()()に挑むぞ』

 

 


 

登場したひみつ道具

 

 

『ひらりマント』

 

目の前に迫ってくる物に対してこのマントを振りかざすと、跳ね返す事が出来る。跳ね返せるのは物体だけでなく、光線などの不定形なものにも効果がある。電磁波の反発を利用している。ドラえもんズのエル・マタドーラはこの道具を使うのが得意。また、怪盗ドラパンの普段付けている黒いマントもひらりマント。

 

 

『トランポリンゲン』

 

これを吹き付けると、その場所がトランポリンのようになる。人間だとトランポリンのように跳ねる。殴られても痛みは感じないのでテニスボールになることもできる。

 

 

『チーターローション』

 

これを足に塗れば、目にも止まらぬ速さで走ることができる。

 

 

『でんでんはうす』

 

この中に入ってしまうと、外で何が起きても平気。エアコン付きの快適な住まい。まず、おしりをデンデンハウスの吸排出口に押し付ける。すると、吸い込まれながら伸縮機によって小さくされる。転がされたりしても中はいつも水平に保たれ、壁のパネルスイッチ(エアコン、カーペット、スピーカー、ベッド)を押せば、4つの設備が出てくる。

 

 

『スーパー手袋』

 

この手袋を付けると、怪力の持ち主になれる。重力を半分にしてしまう重力打ち消し粒子層と、はめた者の力を2倍に強めるパワー倍増粒子層の二重構造の特殊合成ゴムでできている。

 

 

『空気砲』

 

空気圧を利用する武器。腕にはめて「ドカン」と言うと発射される。ドラえもんズの一人、ドラ・ザ・キッドが使う武器。

 

 

『ショックガン』

 

相手を傷つけることはないが、気絶させることができる武器。

 

 

『眠くならない薬』

 

1粒飲めば24時間、眠くもならないし疲れもしない。これには、夜行性動物、特にフクロウと同じエキスが含まれていて、他にも薬草、強性エキスなども含まれている

 

 

『コンクフード』

 

色々な食べ物が半練り状態で入っていて、缶から出ているチューブから吸い出して食べる。中身が濃く、一缶30食分。海の中でも食べられる。圧縮ミート製法で作られた、体に吸収しやすい食べ物。

 

 

『チューイングピザ』

 

1粒で満腹感を得られる食料。

味はサラミ味になっている。

恐竜ロボットも喜ぶ一品。

 

 

『チャンバラ刀』

 

この刀で切ると本当に切れるが、セットになっているノリですぐにくっつけられる。

 

 

『瞬間接着銃』

 

一瞬で敵を接着してしまう銃。

 

 

『即席落とし穴』

 

いつでもどこにでも置くと輪に穴が開き、落とし穴になる。

 

 

『正体スコープ』

 

これを覗けば色んな怪奇現象の正体が分かる。

 

 

『おかし牧草』

 

この牧草を食べさせると、どんなお菓子でも増やす事ができる。草をあげていれば自然に繁殖して増えるが、1時間以上食べさせないと元のお菓子に戻り、二度と動かない。

 

 

『通せんぼカバー』

 

【ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?】に登場したロボット学校を覆った透明な壁を作り出す道具。これで覆われて場所は出ることも入ることも出来なくなる。

 

 

『ブラックホールペン』

 

このペンで書いた円の中に物を入れると、『ホワイトホールペン』で書いた円から出てくる。用が済んだらすぐ消さないと、飲み込まれてしまう。

 

 

『ホワイトホールペン』

 

このペンで書いた円から、『ブラックホールペン』で書いた円に入れた物が出てくる。これを書かないと、入れた物はずっと出てこない。

 

 

『原料ライト』

 

光を浴びさせると元の材料に戻る。例えば料理に失敗した時、これを使えば材料からやり直せる。光を浴びさせる程原型に戻る。

 

 

『タイムふろしき』

 

生き物をこれで包むと、若くなったり年を取ったりする。物なら、新品にしたり古くしたりできる。裏返しに使うと古くなる。見かけは薄い布だが、時流漏洩防止膜、未来流ファイバー、タキオン織りこみゾーン、過去流ファイバー、時流漏洩防止膜の五重構造になっている。中央から放出されるタキオンエネルギーが、過去流ファイバーを通してふろしきで包まれた空間に作用して、包んだ物が新しくなる。人間の年齢を若くしても、風呂敷をかぶる前の記憶は持続する。

 

 

『復元光線』

 

懐中電灯のような形をした道具。 壊れた物体にこの道具から発する光線を浴びせると、壊れる前の状態に戻してくれる。 テレビアニメ第2作第2期では生物にも有効とされており、汚れている人間の体と服を綺麗にしている。

 

 

『全体復元液』

 

どんなに小さな欠片でも、この液をかけると、欠けた部分から泡が出てきて元の全体の姿に戻る。

 

 

 

『らくらくお掃除3点セット』

 

スーパーはたき、ウルトラほうき、バイパぞうきんのセット。スーパーはたき 1回はたけば、あらゆる汚れを落とすことができるというはたき。 ウルトラほうき 1回はけば、あらゆる汚れもきれいにすることができるというほうき。 ハイパーぞうきん 1回ふけば、どんな頑固な汚れでもピカピカにすることができるという雑巾。

 

 

『猛獣さそいよせマント』

 

これを付けると、猛獣を怒らせ、誘い寄せる光が出る。

 

 

『声カタマリン』

 

液体の薬で、これを飲んで大きな声を出すと、声がカタカナの文字をして固まってしまう。硬い物質でできていて、飛んできた文字にぶつかって怪我をすることもある。効き目は翌日まで続く。この薬を飲んだ後に風邪を引いたりしてくしゃみが止まらなくなると、文字も止まらずに出てくる。壁に向かって叫べば、一応音なので跳ね返る。

 

 

『ずらしんぼ』

 

本の汚れ、ふすまの穴、アイロンによる床の焦げ、水たまり、庭の池、本の中身など、どんな物でも場所をずらす事ができる。汚れや穴など、不要な物は紙に移動させてそのまま捨てれば良い。

 

 

『動物変身ビスケット』

 

これを食べるとビスケットの形の動物に変身して、鳴き声も仕草もそっくりになる。ビスケットの組成は時限変身薬、各動物のエキス、小麦粉、砂糖、バター。ビスケットを食べると、時限変身薬が細胞に浸透し、外見も体質もビスケットと同じ動物に変身する。効き目は5分程度。コミックスでは、ネコ、ワニ、ウマ、ニワトリ、チンパンジー、カエル、ウサギが登場した。

 

 

『四次元マフラー』

 

『四次元ポケット』の一種。

 

 

『四次元ポケット』

 

正式名称は「ロボット専用四次元空間内蔵秘密道具格納ポケット(四次元空間使用許可管理局承認番号D7E1293)」。ドラえもんのポケットのこと。中にいくらでも物を入れる事が出来るが、あまり乱雑に入れておくと目的の物を取り出すのに時間がかかる。伸縮自在の繊維で出来ていて、裏側はどこにでもくっ付くようになっている。四次元ポケットの中は超空間になっていて、三次元の物体をほぼ無限に収納出来る。ポケットの入り口にイメージ検索機能が付いているので、出したい道具を頭の中でイメージするだけでポケットの中のコンピュータが探しだしてくれる。また、スペアポケットは四次元ポケットと超空間で繋がっていて、どちらからでも道具が取り出せるようになっている。スペアポケットに入って四次元ポケットに出ることも可能。ドラえもんが自分のポケットから同名・同型の『四次元ポケット』を出した事があるが、こちらには普段使わない物を入れておく道具としてのみ使われている。バリエーションとして、ドラえもんズのドラ・ザ・キッドの四次元ハット、王ドラの四次元そで、ドラメッドⅢ世の四次元ランプ、ドラニコフの四次元マフラーがある。

 

 

『がんじょう』

 

飲むと、体が鉄のようになる錠剤タイプの薬。アイスクリームの味がするバニラ味コーティング、体を鉄のように固くする第2強化剤、体を石のように固くする第1強化剤からなる。これを飲むと体の表面に固い磁力膜ができ、だんだん体を鉄のように固くする。有効時間は10分。

 

 

『こだまラッカー』

 

このラッカーを吹き付けると、音がこだまのように返ってくる。例えばドアに吹き付けると、中に誰も入っていなくても、こちらのノックに対してノックの音を返してくる。

 

 

『現実ビデオ化機』

 

現実をビデオみたいに巻き戻し、早送り、一時停止などの操作出来る機械。3~20倍速まで調節が出来る。

 

 

『タケコプター』

 

気軽に空を飛ぶ事が出来る道具。体のどこにでも取り付けられる。吸着の方法には万能吸着盤とけん引ビームの2種類がある。超小型の電池を内蔵。時速80kmで連続8時間の運転が可能。休み休み飛ぶと、電池も長持ちする。頭に付けてスイッチを入れると、反重力ボードと呼ばれるプロペラが回りだし、反重力場が体の周りにでき、地球の重力を遮断して浮上する。方向やスピードを思い浮かべるだけで、脳波がコンピューターに伝わり、プロペラの回る速度が変わっていく。その回転速度の変化によって重力場の方向が移動して、前後・左右・上下と自由自在に飛ぶ事が出来る。連載初期は「ヘリトンボ」と名付けられていたが、2度目のアニメ化の際、呼びにくいという事でこの名前へ改名された。

 

 

『タイム電話』

 

時間を超えて過去や未来と連絡が取れる電話。旅先で『タイムマシン』が無くなった時、これでドラミを呼んだりする。

 

 

『チクタクボンワッペン』

 

針を書き込むと、それが動き出して予定した時間に爆発する。

 

 

『手なげミサイル』

 

投げると目標に必ず当たるミサイル。

 

 

『風神』

 

空気抵抗が大きいうちわで、かすかに動かすだけで風を起こす事ができる。大きく動かすと人間も吹き飛ばせる。柄を握るとスイッチが入る。空気抵抗削減機と空気反発増幅機が働き、少し扇ぐと凄い風力が出る。最高出力は、ひと振り秒速100mにもなる。また、扇ぐ事で発生する摩擦熱をエネルギーに変える温度差エネルギー発生装置が付いており、充電の必要は無い。これを2つ持って地面を仰ぐと空を飛ぶ事ができ、考案したのび太は「バタバタヒラヒラ」と命名した。

 

※『強力うちわ風神』と『風神うちわ』とあったから共通してる『風神』だけで使用。

 

 

『つむじ風うちわ』

 

このうちわをあおぐと、つむじ風が発生する。発生したつむじ風は、うちわで自在に操ることができる。

 

 

『風合戦手袋』

 

雪合戦の風版。空気の玉を相手にぶつけられる。使い方は団子を作るように空気を丸めて投げるだけ。

 

 

『風ため機』

 

この機械で貯めた風を袋に詰めてコックをひねると、空を飛ぶことができる。

 

 

『風合戦バット』

 

『風合戦手袋』で作った風の固まりを打つことができるバット。

 

 

『おもちゃの兵隊』

 

命令を受けると忠実に遂行し、助けを求めると、相手を撃破するまで徹底的に守ってくれる小さなおもちゃの兵隊の人形。人やボールを黒焦げにする位の威力を持った銃を装備している。

 

 

『無生物指揮棒』

 

生きていない物をまとめて動かすことができる。

 

 

『材質変換機』

 

この機械の光を当てると、物の材料を変える事ができる。例えば、木を紙に、布を金属に、ガラスをビニールに…などなど。

 

 

『キンシ標識』

 

禁止にしたい事を書いて畳などに突き刺すと、その事が絶対に出来なくなる

 

 

『悪魔のパスポート』

 

窃盗や痴漢等の犯罪行為からテストのカンニングといったどんな悪い事をしても、このパスポートを見せると許されてしまう。効力を発するときには、パスポートが光り、パスポートを使用した人の影が悪魔のような形になる。表紙には悪魔の顔のシルエットの絵柄が描かれ、「PASSPORT OF SATAN」の表記がある。

 

※この作品においては【天使のパスポート】と同一である

 

 

『パンドラボックス』

 

強い意志を育てるための箱。いろいろな誘惑で開けさせようとするが、開けるとお化けが出てくる。

 

 

 

『ゴルゴンの首』

 

ウオ~ンという鳴き声と共に、目から出る光線に当たると、生物の筋肉は強張り、石のようになって動けなくなる恐怖の道具だが、使いようによっては、廊下で立たされた時に、足だけ石にして立つのが楽なるような使い方ができる。へびのような髪の毛を引っ張ると元に戻る。通常は箱に入っており、出るとカメのようなゆっくりとした速度で動き回る事ができ、近づいた物を石に変えてしまう。

 

 

『ジークフリート』

 

ドイツの英雄で、巨大な竜を倒した時にその血を浴びて不死身の体になったという伝説から生まれた道具。真っ赤な入浴剤で、5分間全身が真っ赤になるまでお風呂に入ると、30分間は不死身の体になれる。

 

 

『ポータブルピラミッド』

 

小さなピラミッドの模型で、これを頭の上に乗せると、その人が持っている様々な能力を高めてくれる。

 

 

『モーゼステッキ』

 

このステッキを持ってボタンを押すと水が2つに分かれて、その底を歩くことができる。電池式。

 

 

『うちでの小づち』

 

ちょっと振るだけでどんな望みも叶えてくれる。でも、すんなりとはいかない。

 

 

『アラビンのランプ』

 

このランプを擦ると煙のロボットが出てきて、擦った人をご主人様と呼び、何でも言うことを聞いてくれる。ランプの側面はセンサースイッチになっていて、こするとコンピュータが作動する。すると粒子ロボットが出てきて、けむりロボットを形成する。粒子ロボットは、番号順に組み合わさるように記憶素子が内蔵されている。このロボットは全てランプ内の指令コンピュータでコントロールされていて、命令を取り消す場合はランプのふたの命令取り消しボタンを押す。

 

 

『バショー扇』

 

風の吹き続ける時間をダイヤルで指定し、どんな風かをマイクに指令してこの扇をふると、さわやかな風、南極のブリザード、甘い果物の匂いがする南国の風、暑くてじっとりと湿っぽい真夏の熱帯の風など、どんな風でも起こす事ができる。風向きや強さはふり方で調節する。向こうからこちらへ吹かせる事もできるし、下から上へ上昇気流を作り出す事もできる。もちろん台風も作れる。

 

 

『キューピッドの矢』

 

弓と矢からなる道具。この矢が当たった生き物は、矢を放った人が好きになる。矢に当たっても傷は付かず、痛くもない。人間だけでなく動物やロボットにも効果がある。手で直接相手に矢を突き刺しても良い。

 

 

 

オリジナルひみつ道具

 

 

【卵のボーロ】

 

そのまま食べても美味しいが時間が経過すると中から様々な卵生の動物が生まれる。放置しているとさらに大きくなるが、活発にもなるため捕まえて食べるのには苦労する。

 

 

【恐竜変身ビスケット】

 

『動物変身ビスケット』と根本的には同じ道具であり、食べることで一定時間恐竜に変身する。

 

 

【神社クッキー】

 

鳥居形のジンジャークッキー。忙しくて中々お参り出来ない人向けの道具で、祈りながら食べるとその神社までワープする。正しい手順でお参りする事で元の場所へと帰れる。

 

 

【ホットケーキとコールドケーキ】

 

見た目は普通のホットケーキだが食べるとそれぞれ暖房や冷房の様に温度を調整する機能がある。

 

 

【ドリ安牌】

 

ドリアンで出来た美味しいパイのお菓子。安牌をきると言うように、このパイを切って食べると中から今の現状を抜け出す上で無難な策を授けてくれる。

 

 

【雪かき氷】

 

食べると雪かきが出来るかき氷。お皿に付いてるボタンを押すとかき氷と周辺の雪がリンクして、かき氷を食べた分だけ雪が消える。

 

 

【ジェラ〜ト】

 

妬ましい、羨ましい等の嫉妬を込めて混ぜることで完成するジェラート。食べることで思いをしょうかし、気持ちを切り替える道具。嫉妬の強さでそのジェラートの味と温度は変わる。

 

 

【アンドゥナツ】

 

多くのソフトウェアが持つ機能および操作の一つで、直前に行った操作や処理を取り消し、元の状態に戻すアンドゥが由来であり、食べた人の直前の行動を取り消す事が出来る。

 

 

【善哉善哉】

 

よいかなぜんざい、ぜんざいの元々の由来から取った道具であり、これを食べると美味しさから食べた人を暖かな心持ちにし、周囲の人を褒めたり、優しく接するようになる。

 

 

【セイレーン印のおまんじゅう】

 

『うぐいす印のおまんじゅう』の改造品。とてつもない美声と歌のセンスに加えて、しばらくの間、歌を聞いた人を魅了する効果がある。

 

 

【天使のパスポート】

 

犯罪心理学の観点や心理実験、技術再生のために開発された『悪魔のパスポート』であったが、製造後にその危険性を考慮して研究を凍結、外部への公開を禁止したが何処からか漏れ出た情報を隠すために作られたデコイ道具。

 

外見は原本である『悪魔のパスポート』と変わらず、使われた際には防衛機能が働き、罪悪感を増幅させ、使用者を反省させ、償いをするように促す。これの発売により社会性の向上に貢献したが、効力は弱いが防衛機能の無い、海賊版が裏で使用されたり、製品に紛れ込ませるなどの犯罪行為も後を絶たない。

 

危険性を考慮して秘密道具ミュージアムにおいても、展示室には『天使のパスポート』が置かれており、非公開エリアには厳重な管理の元、本物の【悪魔のパスポート】が置かれていた。

 

 

【悪魔のパスポート】

 

奇天烈斎こと木手英乃進が作り出した御赦免印籠の技術を復活させ、それをひみつ道具に流用しようとした技術再生プロジェクトによって偶然にも生み出されたまさに悪魔の道具。使い過ぎると壊れてしまう不具合がなくなった本来の通り、何をしても許され、何をしても捕まる事はない恐ろしい道具。ひみつ道具ミュージアムの非公開エリアに秘匿され、管理保管されていたがパンドラによって盗まれている。

 

 

 

 

 

オリジナルひみつ道具?

 

 

『宇宙一サクサク焼ける小麦粉』

 

『宇宙一ふんわり焼ける小麦粉』のパロディ…【ザ☆ドラえもんズ おかしなお菓子なオカシナナ?】に登場する『宇宙一ふんわり焼ける小麦粉』のシリーズ商品。

 

 

〚パンドラボックス〛

 

指名手配犯パンドラの持つ特別製の道具、その全容は彼女を追いかけ続けてる警察も把握しきれておらず、取り込んだ物をその場に合わせて作り変えるなどその機能には目を見張る物が多い。

 

 

キテレツ大百科より

 

『御赦免印籠』

 

アニメ第101回「真夏の花博で大百科外伝をみつけ出せ!」に登場、大百科には未掲載で、改良の余地がある失敗作を掲載した「奇天烈大百科外伝」にのみ掲載された道具。相手に向けるとその動きを止め、何をしても許されるようになる。未完成であるため、使いすぎると壊れる。

 

 

『包丁いらず』

 

アニメ第97回「21世紀からブタゴリラ親子がやって来た」に登場、材料だけ入れておけば、包丁や鍋も一切使わず料理が出来る優れものであり、未来のキテレツこと木手栄一が作成した。

 

 

 

 





怒涛のひみつ道具量ですね。原本もオリジナルもそれなりに登場しましたが、戦闘描写もう少し格好良くしたかったなぁ。技量不足は否めない。

トゥマト警部とパンドラはまだまだ登場予定です。たぶん、因縁のあるDr.ブレンドよりも早く何度も登場すると思う。あっちは一応宿敵なので直接対決して決着つくときはこの話が終わる時だしね。引っ張るだけ引っ張ります。

今回名前もなく登場したミュージアムの館長は映画の人の前任だと思ってください。時系列おかしいかもしれないけど、そこは時空の歪みという事で。

そして少しだけですが登場したキテレツ大百科の要素です。基本的に矛盾しない程度にF組の世界は繋がってる事にしてます。

並行世界だったり、別の星だったり、時代が違ったり、色々と理由を用意しながら登場することがあるかもしれません。さぁてタグ足しとかないとなぁ……F組で纏めて良いかなぁ?だめかなぁ?とりあえずキテレツ大百科はたしとこ。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
それと感想評価、誤字報告もありがとう。
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