ドラえもんではなくそのすぐ後ろでした   作:ひよっこ召喚士

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前後編で話を書こうとすると何故か中編が生えてくるのが私の七不思議の一つです。


鳴り響け祭囃子!!ロボット学校文化祭!!中編

 

 文化祭中は教職員を含めた仕事で出入りする者を除くと人の居ないロボット学校へ興味関心から多くの人が訪れる。

 

 そして昔を懐かしむのは今や人間の特権ではなく、卒業したOB・OGのロボットも来場し、そのロボットの職場の人間や家族なんかも共に訪れる。

 

 少し珍しいお客としては将来的に社会に出るロボットの中から優秀な存在を発掘しようと働きぶりや人柄を見に来る者もいる。

 

 他にも様々な理由で全国、いや全世界から多くのロボットと人が文化祭開催に合わせて集まり、空間拡張をフル稼働させた会場も既に満杯に近い状態になっている。

 

 文化祭開催まで残り五分を切ったその瞬間にメイン会場の明かりが段階的に消えていき、何事かと来客が騒ぎ出す前にそれは始まった。

 

『ご来場の皆様、泡沫の夢をお楽しみください』

 

 全員に届いたが、不思議と耳元で囁かれたのかと言う程に小さく、優しい声に来客達はその場に立ち尽くしたまま、その始まりを目の当たりにする。

 

 周囲の海から順々に立ち上る水の柱、そしてそれがまるでカーテンの様に広がり、会場だけでなくロボット学校全体をドーム状に包みこんだかと思うとその幕をスクリーンに鮮やかな色が映される。

 

 華やかな演出に観客たちが感嘆しているとその幕を突き破って待ちに待った出番に張り切っている出演者がその姿を現した。

 

 空中に浮く水から水へと泳ぎ進むドラゴン、飛沫を浴びながら紙吹雪を降らせながら上空を飛び回るペガサス、他にも光を浴びて踊る妖精等の小さく可愛らしい生き物が観客を祝福する。

 

 そして一際大きなグリフォンがメインステージの上を旋回するとその背に乗っていた一体のロボットが懐から道具を取り出した。

 

「さて、『安全花火』『花咲か灰』『乾杯の種』そしてフィニッシュです!!」

 

 そのロボットの声を合図にドラゴンが口からブレスで水を拡散する様に放つと、それに反応して『安全花火』が花開き、流れる様に桜の花びらが川を作り降り注ぐ、そして見惚れてボーっとしていると零してしまいそうなドリンクがいつの間にか手に握られている。

 

『手元に配られたのはウェルカムドリンクのジュースでございます。飲み終えるかその場に落とすと消えますのでお気を付けください』

 

 興奮から落ち着かせる為か、それとも演出への歓喜の叫びで乾いた喉を潤す為か、来場者達の中には呆けたままジュースを口に運ぶ者も多い。

 

 会場に響いた説明を聞いてようやく動き出した者もいるくらいで、そのショーは大成功と評するしかない感動を植え付けた。

 

『開催前の挨拶代わりのショーの演出を担当致しましたハイドラと申します。私もこの学校の一生徒ではございますがどうぞよろしくお願いいたします。演出には空想動物サファリパークの皆様にご協力いただきました』

 

 紹介と共に声を上げられる空想動物達は雄叫びや可愛らしい音を響かせて観客にアピールして、担当者であるサファリのスタッフも手を振っている。

 

『このロボット学校文化祭は生徒からしても特別なイベントであり、今年は過去最大と胸を張って言える規模での開催となりました』

 

 それを肯定するかの様にパンフレットがまだ展開されている水の壁に映し出され、その中には各イベントのデモ動画も浮かび上がっては消えていく。

 

『成果を見せ合うこの文化祭、我々も全力で挑ませていただきます。オープニング代わりの泡沫の夢ではなく、学校が支え導き、学生が描いていく現実の夢を皆様ぜひお楽しみください!!最後はこの方からスタートを切らせていただきます』

 

 そうしてハイドラが煙の様にドロンと消えると代わりにロボット学校のトップである寺尾台校長がそこに立っていた。

 

『ほっほっほっ、ご来場の皆様にはわしからも感謝の言葉を贈らせていただきます。オープニングを見てもらって分かるように優秀なロボットが数多く在籍しており、今から文化祭が素晴らしいものになると期待に胸を膨らませております。皆様と同じ気持ちを共有出来ているのであれば嬉しい限りで、なんて長い話は先程のショーの後には余計じゃな。ロボット学校文化祭の開催を宣言する!!』

 

 くどくど続く長話も校長らしいものではあるが、ご馳走を前に涎を垂らしているのと同じ来客達を前にして無粋だと途中で切り上げると歓声が上がる。

 

 

『ロボット学校文化祭スタートじゃ!!』

 

 

 怒号の様に声が学校一帯へと響き渡り、その振動は遠く離れた街まで届きそうな程であったと言う。なにはともあれ、ドラえもんズとハイドラの文化祭が今始まりを迎えるのであった。

 


 

 開始と共にあちらこちらへと歩みを進める来客達、散らばっている筈なのにそうとは感じさせないだけの人の波が各クラスや各出し物へと押し寄せる。それは歯に衣着せずに言えば色物揃いの特別クラスも変わらない。

 

「いらっしゃいませ〜!!こちら当クラスのメニューと演目の開始時間が纏められた物になります!!良ければお一つお持ちください」

 

 それは四コマの漫画雑誌くらいの厚さがあり、荷物を多く持ち運べるこの時代だからこそ許されている様な代物だった。しかし、それがむしろ笑いを誘うのかお客からの評判は悪くはなかった。

 

「席の方は空間拡張席と異空間拡張席があります。異空間は完全個室で演目はモニターでの鑑賞となりますのでご了承ください」

 

 実際の教室を広げて出来た席と本来は存在しない異空間、亜空間と呼ばれる様な場所に新たに作られた席となっている。公平性が失われない様に席の案内は空いてる時は決められた順番で、空いてない時は空いた席から案内する形式だ。

 

「現在の演目はおしゃべりロボットと営業ロボットによる漫才です。静かに飲食したい方は机内部に設置されております『吸音機』を起動してください。効果範囲をテーブルの周囲に設定してあります」

 

 先ほどのメニュー兼演目予定に載っており、初めの演目として既に漫才は始まっている。好き嫌いが別れそうな演目は勢いのある内にと早めの時間や何かしら他のイベント後の時間に置かれている。

 

 コンセプトからして多少の騒々しさは飲み込んでもらう必要があるが配慮の必要が無いわけではないときちんと設計段階から色々と設備は用意されている。

 

 純粋に休憩したい人は別の店に行くがあまり説明を見ずに来た人もおかげてどんな演目でもゆったりとした時間を過ごせており、演目の出来も合わせてそこそこ評判は広まりつつある。

 

「座れて良かったね。ネットに上がってたしゃべくり漫才はもう今日はやらないのかな?」

「この冊子を見るに昼くらいと午後にもやってるみたいだよ。内容は分からないけど何日も回すとなると演目自体は同じのも出てくるのかもね。私はこっちのダンスショーの方が気になるかな。演奏や演出までついてるんだって」

 

 この様に評判を聞きつけてやってくるお客も多く、情報の出回る速度に驚かされながらも好評な様子に既に演目を終えた面々は笑顔を浮かべ接客に回っている。

 

「へぇ、あ、駄目だ。漫才は見たかった公演イベントと被ってる…昼のは私の専攻してる奴だから外したくないし、午後の方は抽選が当たった貴重な奴だからなぁ」

「本当だ。私の予定は…っと、ダンスショーとは被ってない。と言うより大きなイベントと被らない時間になってるから、もしかしたらこのお店のメインイベントなのかも」

「混んでるから来れるか分からないけど公演を見たらもう一回来てみようか」

 

 賑やかさと心配り、そして豊富なメニューから尽きることのない客足を獲得して特別クラスの滑り出しは好調であった。

 


 

 一方でドラえもんズが設置したお祭り会場が置かれているブースはチラホラと客はいるが混み合う程ではなく、他のクラスなんかと比べると閑散としていた。

 

「らっしぇーらっしぇー!!」

「たこ焼きイカ焼き焼きそば焼き鳥、腹を満たすにゃぴったりだぜ!!」

「チョコバナナにりんごあめ、わたあめ、ベビーカステラ、素朴な甘いおやつもあるよ!!」

 

 やる気満々のお手伝いさん達の声だけが響き渡っており、たまに買っていく人もいるが、基本的に覗いては帰っていったり、再現時に調べて纏めた資料だけ見に来た人ばかりである。

 

「これ、マジーんじゃねぇか?」

「マズイなんてもんじゃないでしょう」

「お客さん来ないね〜」

「ワウゥ…」

 

 彼らは時間の経過と共に焦りばかりが増していき、意味もないのにうろちょろしだしていた。

 

「いやいや、まだ祭りのメインは先だしな。それに他のメインイベントに流れているだけだろ」

「そうだと良いであるが……」

「…………よし!!」

 

 実際、早い内に纏められているイベントは多いので人の流れは仕方のない部分もあり、祭りのメインは後からになっている。それでも、それだけと言い切るのは強がりだ。そんな微妙な雰囲気の中でドラえもんだけは黙って目を瞑っていたが、急に立ち上がった。

 

「ドラえもん、どうしたんだよ?」

「何か思いついたんですか?」

 

 ドラえもんズの名前からしてリーダーであるドラえもんの行動に皆の視線が集まる中でドラえもんは良い笑顔を浮かべた。

 

「ぼくたちも文化祭を回ろう!!」

「ん?!」

「へ?!」

「「「「「「えぇぇぇぇ?!」」」」」」

 

 突拍子もない、何の解決策にもなってない、何でもない様なただの提案にドラえもんズの面々は驚きの声を上げるのだった。

 


 

 オープニングを華々しく飾った後は講演のイベントの為に大講堂へと移動していた。それには空想動物サファリパークの担当者も同行している。

 

「いやあ、あんなにうちの子たちの見せ場を作ってくれて嬉しいよ」

 

「私は任された仕事を熟しただけですが、そこまで評価していただけると此方も嬉しいです。空想動物さんへの指揮も流石でしたよ。あのベテランのサブさんが推薦したのも頷ける腕前でした」

 

 お世辞とかではなく、空想動物は特殊な生態や力によってどの種であっても扱いは相当に難しい。それを構想通りに動かしてくれたのは流石としか言えない。

 

「彼らが居たからこそ出来たことで、私が誇るのは私自身でなく彼らですよ」

 

「そんな貴方だからだと思いますが…っといけない。この後は確か空想動物に関する講演が私より前の時間にありましたよね。話に付き合わせて申し訳ありません。行ってください」

 

 文化祭において確定している情報は一度入ってくるから覚えていたがふと時間を確認すると既にそれなりに時間が経過している。

 

「もうこんな時間でしたか、また何かあれば気軽に声を掛けてください。それでは!!」

 

 向こうも時計を確認するとそう言って講演会場の方へと少し早足で向かっていった。さて、私も午前の講演の準備はしておこうか。向こうも仕込みは終わってますが…とりあえず会場へ急ぐとしましょう。

 


 

「おっ、あっちの店からいい匂いがするぜ」

「それよりもまだ並んでいる人数の少ない内にこっちのアトラクションに行く方が良いのであ~る」

「わぁ!!あっちが面白そう!!」

「うわわ、待つであ〜る!?」

 

 ドラえもんの提案に乗ることになった面々はそれぞれの興味の向いた所に付き合う様にぞろぞろと歩いて回っていた。

 

「迷う事なく提案しましたが、これもそのメモに書いてあったのですか?」

 

 ハイドラが残した『ドラえもんズ対応メモ』はこれまで多くのトラブルに巻き込まれてきたハイドラの視点から的確なアドバイスが書かれており、準備期間もとても助けられていた。だが……

 

「ううん、何か思惑があったわけじゃなくて、ただ最後の文化祭なのにずっとうだうだしてるだけなのはいやだなぁって思って」

 

 ドラえもんの困った様に笑って告げたその言葉に聞こえた面々も困った様にそれでいて心の底から楽しげに笑った。

 

「まぁ、赤字で借金になっても俺たちならなんとかなるだろ?」

「バウゥ……」

「キッド…ドラニコフも言ってるように流石に金額が金額だと思いますが……まぁ客を待ち続けてても仕方ないですね」

 

 楽観的過ぎるのは危険だが、それでも落ちる時もみんなで、そんな確かな繋がりが何の根拠もないのに心強く思えた。

 

「回ってる内に何か思いつくかもしれないし、今はみんなで楽しもう!!」

「それじゃあ、私も出来れば見に行きたかった企画があるんですが……」

「おーい!!食べ歩けそうなもん見繕ってきたぜ!!」

 

 既に辛気臭い空気は何処にもなく、各々が好き勝手に動き回っているいつもの空気がそこにあった。改めて何処に行くのか、別れるなら誰と誰にするか話し合っていく…

 

「ところでさっき王ドラが行きたがってたのは何処なの?」

「えっと、宇宙に生息する植物に関する研究を発表しているブースがあって、それらを利用した漢方が少し興味深いと思ってて覗いてみたいんですよ」

 

 王ドラの得意とする漢方に関わるブースだとなり、納得の感情が聞いてた面々に広がる。

 

「なんとも王ドラが選びそうな堅苦しい企画だな」

「む、このサークルの代表さんはハイドラと同じ様に講演に選ばれるぐらい凄い方で、この人の講演を見るために別の星から大使が訪れてるんですよ」

「へぇ!!それは凄いであ~る!!」

「なんて星から来てるの?」

 

 間違えてはいけないと調べていたパンフの情報を確認してから王ドラは口を開いた。

 

「どうやら植物星の方みたいですね」

 


 

 自身の番が来るまで大講堂の用意されている席に座って前の講演者の発表内容を楽しく眺めさせて貰っていた。

 

『……この様に低重力、高重力などの星の条件に加えて特殊なエネルギー波を浴びる、エネルギー場の内側で生息する植物は極めて限定的な種として進化していくことがトカイトカイ星群に存在する鉱石ガルタイトと星群の星々の植生の関係からも証明されています…』

 

 これまでも専門性も高い中で一般の人でも興味の惹かれる人が出てくる良いラインの講演が多くて面白いし興味深い。

 

『また、銀河漂流団の神樹であるユグドの樹やSSS-BC-555、通称ネジマキプラネットとして有名な観光惑星の意志ある植物、他にもブッシュ星雲マングローブ星のウキキの木の協力を得まして特殊な力を持つ植物の発するエネルギーが周囲に与える影響も纏めてあります。これらの広い宇宙で植物に影響を与えるエネルギーと植物が与えるエネルギーの法則もまだまだ全てが解明されてはいませんが確かに存在し、宇宙植物の分類分けは細分化されるべきだと再度結論づけさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました』

 

 そして来賓席の所に私の記憶に焼き付いている姿に意識を持ってかれるが、下手に視線を送ってしまわないようにするのに少し気疲れした。

 

【続いては…】

 

 次の講演についてアナウンスが掛かったくらいでそっと席を立っておく、この次が私の順番なので舞台裏へと向かった。その途中で小さな人の輪が見え…

 

「おや、ハイドラさん。そうか次が『ひみつ道具の可能性』でしたね」

 

 その中に空想動物サファリパークの制服が確認出来たと思うと相手も此方に気付き声を掛けれれた。彼以外に二人の人影があり、彼らの顔も此方を向く。

 

「ハイドラと言うとあのひみつ道具研究で有名なハイドラ氏ですか!!」

「えぇ、我らがロボット学校の顔の一人です。」

 

 一人は今の講演の前に宇宙植物の講演を行った同じロボット学校の生徒だ。ロボット学校の顔だなんて持ち上げてくれるが、学生でありながら講演者側に選ばれてる彼も優秀なのは間違いない。

 

 もう一人も講演者なのは把握しているが生憎と私が会場入りした際には既に講演を終えていたので下手に振れにくいが、黙りっぱなしと言う訳にはいかない。

 

「後から来たので内容を見ることは叶わなかったのですが確か『宇宙動物の家畜化について』の方ですね。御三方で何を話されていたのですか?」

 

「あぁ、それぞれの研究と近しい部分や重なる部分があってね、話し始めたら止まらなくなってしまったんだよ」

「空想動物の中には当時未確認だった宇宙生物が由来のものもあるからね」

「その宇宙生物の疑似再現である空想動物の飼育例と言うのはとても勉強になっての。そして…」

「俺の研究である宇宙植物はそんな動物たちの餌となるものも多いだろ?植物と動物には切っても切れない繋がりがあるからな」

「彼の研究レポートの中でサファリの方で検討したいものがあって話しかけたのが始まりなんだ。講演の『空想動物の再現と実現』でも話したけど食性までも再現しようとすると知識を借りないといけない部分も多いんだ」

「飼育用となると見た目と味と栄養と全て調整したうえでか…それで宇宙植物となると環境整備も容易じゃないし、費用とかも問題ですか…」

「家畜化となると食す側の味や育て方への影響など更に項目は増えるから情報一つとっても貴重になる。合成食も多い世の中でも改良基準は残されておるしな。その点、空想動物は元より人工生物だから制限は少ないのでは?」

「保護の観点での制限は空想動物も多いので一概には言えませんね。航時法、倫理面と既存生物への影響から後回しにされる事は多いですよ」

「保護と言えば植物でも環境保護の必要性と種の保護と宇宙間、星間での価値観の差異が問題によく上がっていて……」

 

 それぞれが確かな研究畑の人間だから少し聞いただけでかなりの情報が落とされ、既に私を置いていきそうな勢いで話が弾み始めていた。

 

 流石にこのまま拘束され続ける訳にはいかないと夢中になってる所に小さく挨拶をしても特に気にされずに離れることに成功した。

 

 そのまま特に何もなく、講演も無事に終えられた事に安堵してまた見回る様に文化祭の熱気の中へ戻った。ただ一つ、データに残らないノイズに気付かないままに……

 


 

「わぁ、これほどまでに植物のサンプルが置かれてるとは圧巻の一言ですね」

「お、これ修行先で見たことがあるな。げっ?!絶滅危惧種だったのか、やべぇ……

「キッド、どうしたの?」

「な、なんでもないぜ?!」

 

 ドラえもんズ達は寄り道ばかりで中々進まない歩みでハイドラの午前の講演が終わりを迎えた頃にようやく王ドラの目当てのブースへとやってきていた。

 

「なるほど、危険な物に有益な物、特徴が面白い物とあえて分類ではなく来観者が楽しみやすい様に展示してるんですね」

「あれ、こっちのは結構普通というかありきたりな野菜や果物が多いね」

 

 エリア毎に分かれている展示を確認しているとその一角には時空間ごと固定されている地球における作物の数々が置かれており、一同が不思議そうに首を傾げていると…

 

「あぁ、知識としては有名な物だけど今時だとそのものを手にする人は少ないから展示してるんだよ。本当は味とかも体験して欲しいんだけど、ただでさえあちこちから宇宙植物を集めてるから資金面がね。それに完全加工食が当たり前の世の中で生食はハードル高いと感じる人も多いし、調理する時間までとなるとそもそも時間も人手も足りないしね」

 

 そんな風に語るのはこのブースの見回りをしていた一人の生徒だった。何処もそれぞれの苦労があるんだなと思いつつ、展示物に対して納得して説明を見ていると手作された物の美味しさを語る説明が多く、ドラえもんがあの…と声を上げた。

 

「なんだい?」

 

「ぼくたち、昔の日本の祭りの再現ブースをやってて手作の作物を使った料理を屋台形式で安く食べられるんですけど提携みたいな事は出来ないかなぁって……」

 

 作られたポスターを四次元ポケットから一枚取り出して見せながらそう告げると見回りの人は興味深そうに屋台の目録を見ていた。

 

「野菜や果物単体ではないけど体験するにはむしろちょうど良いのかもしれないな……俺はありだと思うがうちのトップがまだ帰ってきてなくてな。とりあえずポスターとかがあればもう何枚か貰えないか?」

 

「はい、多めに作ったので幾らでも渡せます」

「それならば、ついでにサンプルとして幾つかの料理も渡しましょう」

 

 そう言ってドラえもんの行動を見守っていた王ドラは『どこでも窓』を自分たちのブースに繋げると端的に要件を伝えて、各屋台から数個ずつ品を確保して渡した。

 

「うわぁ、昔学で見た姿まんまだ!! これだけでもうちの展示の例として取り扱いたいくらいだし、正直言うと匂いだけでお腹が空いてきたよ。わざわざありがとう、話が進んだらたぶん代表から連絡がいくからよろしく」

 

 それじゃ展示を楽しんでってね。と笑顔で伝えられると見回りの人は渡された物を器用に運んでブースの裏へと消えていった。

 

「こんな所で宣伝するとはやるなドラえもん!!」

「キッド、人様の展示ブースをこんな所なんて言い方は…」

「まぁまぁ、キッドもそう言うつもりで言った訳ではないであ~る。でもしっかりと提携出来れば効果は少なからず見込めそうであ~る」

 

 展示内容こそ興味が分かれそうなブースであるが注目度で言えば学業面で何の実績もないドラえもんズの遥か上をいってる相手である。会話に確かな手応えもあり、全員の不安が少し解消され、これまで以上に自然な笑みが溢れた。

 

「回ってる内に宣伝ですか、そう簡単にいくかは分かりませんが私たち自身が目立てばブースへ来てくれる方も居るかもしれませんね」

「目立つたって、騒動を起こすわけにはいかないだろ。しかも文化祭中であちこちイベントだらけなのにどう目立つんだ?」

「いや、イベント中だからこそだろ? 忘れたのかエル・マタドーラ、未来大学での数々を」

「ワフワフ!!」

「なるほどな、参加型のイベントで功績を残せば良いってことか!!」

 

 そうと決まれば先に行かせて貰うぜ。と言うと何があるか分かんねぇが、運動系も多いだろなんて甘い考えのもと、エル・マタドーラとドラニコフの二人を連れてキッドはブースを出ていった。

 

「全員で回る話は何処にいったのやら…」

「それならボクも行ってきま〜す!!」

「やれやれであ~るって?!ドラリーニョは待つであ~る!!」

「ぼくたちはゆっくり回りながらまた他の所で話せそうなら声掛けながらいこうか」

 

 思い付くやいなや早々に駆け出したキッドに呆れる王ドラとそれにつられて走り出そうとするドラリーニョを抑えるドラメッド、そんないつも通りの光景に笑顔で指示を出して、ドラえもんは笑って歩き出した。

 


 

 植物の分類は宇宙における植物の地位にも関係する重要事項、あの青年ロボットの講演は私にとっても興味深いものだった。

 

 それだけでも十分な収穫であり、あの講演を聞いて植物に正しく興味を持つ人間が増えてくれれば更に喜ばしい事だろう。

 

 ただ大講堂に居たあのよく知る友人に似ている…いや、まだこの時代では黄色い友人と同じ型のロボットである彼との接触が叶わなかったことだけは惜しむべきだろう。

 

 友人との接触は私が地球を訪れる事が決まった時点でタイムパトロールにより禁じられてしまった。友人と極めて近しい存在もその接触禁止に含められている。

 

 だがその中で例外的に接触禁止に含まれなかった彼と少しで良いから話をしてみたかったものだ。何故、彼だけが例外とされていたのかを気になる所だが、なにより大事な友人の学生時代について知りたかった。

 

 ふむ、もしかしたらタイムパトロールは接触出来ないのを分かっていて禁止しなかったのか、それともタイムパトロールとはまた別に彼に秘密があるのか……

 

 いや、会うことも叶わなかった友人の友人の事を変に邪推するのは彼にも友人にも失礼だろう。あの講演者の企画でも見に行くとしよう。

 

『こちらでしたか()()()()()

 

「あぁ、君か。待たせた様ですまない。あの講演者の企画を見に行こうと思ったのだが君もいくかい?」

 

『ぜひともお供させて頂きます』

 

 科学に満ち溢れ、宇宙的な注目度も高いこの星、かつての姿から遠く離れたがそれでも美しいこの故郷、久しぶりに満喫するのも悪くないだろう。

 


 

 色々な店を回っては宣伝をさせて貰えないかと交渉を始めたドラえもん達とイベントを利用して宣伝しようとしていてキッド達、そのどちらも自分たちのブースに集まっていた。

 

「その様子だと収穫はあまりなさそうだな」

 

 先に帰ってきていたドラえもん達の顔を見て、直ぐにそうこぼすキッドだが彼自身の表情もあまり明るいものではない。

 

「うん、ポスターを貼らせてくれる所は何個かあったけど、しっかり協力してくれるのは最初の植物展示の企画の人達ぐらいだったよ」

 

 植物展示の方々は代表から直々に協力体制を取らないかと連絡があったが、結局のところ分かれてからの大きな収穫はなかったと言う事である。

 

「そっちはどうだったんですか?」

 

 あちこち回ってきたからか少々疲労の色が見えるキッド達を見て王ドラが一応成果が無いかと返すように尋ねる。

 

「正直、ロボット学校の名声を舐めてたぜ。あくまで国内で有名な未来大学と比べて、世界的に有名なこの学校に集まる奴のレベルが違った」

 

 普段は文句をブーブー垂れながら勉強しているが、この学校で学べると言うのはかなり貴重なんだと再確認させられる事となった。

 

「比較的得意なイベントに出てみたが全員ボロ負け…とは言わねぇが優勝はできなかった。一番の特技じゃないとはいえ、不甲斐ないぜ」

「ワウワウ…」

 

 文化祭中のイベントの為、学生だけじゃなく見に来たお客からも参加者は出てくる。そのレベルが未来大学の数段上だったそうだ。

 

「明日もとりあえず同じ様に回りながら声を掛けたり、イベントに出たり出来そうならやっていこう。今日だって、売上がないわけじゃないし、三日目(最終日)までに人が来るようになれば良いんだもん」

 

 まだ全ての企画を回った訳ではない。それに明日以降もイベントだってある。まだ時間だって残っている。そう言って七人は笑って明日の動き方を話し合うのだった。

 


 

『安全花火』

 

水につけると反応して光を出す。水生火薬の発明で実現した燃えない花火。

 

 

『花咲か灰』

 

この灰をまけば、どんな場所にでも花を咲かせる事ができる。

 

 

『乾杯の種』

 

瓶のふたを開けると、中に入った黄色い種が飛び出してみんなの手元に落ち、ジュースが入ったガラスのコップに変化する。

 

 

『吸音機』

 

この機械は、どんな音でも吸い込んで缶詰めにしてしまう。音は空気が振動して伝わるが、吸音機の集音ラッパを音に向けると、その方向の空気の振動を集めて吸い込んでしまう。吸い込んだ振動はポット(缶)の中に保存される。缶を飲むと体中から騒音が溢れ出る。

 

 

『どこでも窓』

 

『どこでもドア』の窓タイプ。

 

 




前回の後書きとは予定が変わり、中編が文化祭の開始から初日、後編で二日目から最終日までを書く予定です。というか書いてる途中です。

中編は5回くらい書き直したり、設定を練り直して時間がかかったけど、流石に流れは確定出来たから後編はそんなに時間かからない。というかかけてられない。

そして地味に登場させた原作&映画キャラ、キー坊。直接関わる事は少ないけど、こんな感じで他のキャラもそのうち出るかもね。

いつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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