ドラえもんではなくそのすぐ後ろでした   作:ひよっこ召喚士

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なんとか活動報告で宣言した期限はギリギリ守れてホッとしました。ようやく書けた〜オリジナル疲れる〜でもたぶんまた書くんだろうなぁ〜



鳴り響け祭囃子!!ロボット学校文化祭!!後編

 

 文化祭の二日目と言うのは初日に来れなかった人が来ることもあれば、初日しか来れなかった人は来なくなる。当たり前の話であるがそれ故に毎年多少の増減はあれど初日と二日目は大差ない賑わいになる筈だった。

 

 だが今年は何処を見ても人、ロボット、ロボット、人、と大勢の来客で満ち溢れており、いつもとは違う様相を見せていた。

 

 単純に初日と二日目で違う点もあり、オープニングイベントが無いため、開始時刻になると共にそのまま来客達は学校中に散らばり、各ブースへと向かう。

 

 元々目当ての企画がある人とは別に初日の評判を聞いて向かう人などがいるのも二日目以降の醍醐味であり、初日よりも多い来客が群をなして移動していくのは中々に迫力がある。

 

「なんとしてでも整理券を手に入れないと!!」

「とりあえず講演イベントを目指そう」

「大講堂はこっちが近いはず」

 

 講演イベントは初日に見た人達の反応や専用のページに上げられた映像でさらに人気が高まり、手に入れる倍率が跳ね上がったと言う。

 

「これこれ、可愛いって話題のスイーツだ」

「うわっ、この飲み物おいしい」

 

 食べ物系のお店でもSNS等に上げられた画から話題になって客足が伸びている所も多い。そんな中でも特に伸びているのが…

 

「ようやく、座れた。本当にメニューがたくさんだ!!」

「人が多くて演目は狙えなかったけど、普通に面白いね」

 

 特別クラスの何でもありのごちゃ混ぜ企画が他とは一線を画す記録を出し、既に今回の文化祭での表彰は確実とも噂され、その噂が更に人を呼ぶという好循環に恵まれていた。

 

 そしてその特別クラスの枠から離れてブースを借りて再現されているドラえもんズによるお祭りエリアだが…

 

「へぇ、生の食材ってこんなに味が濃いんだ」

「食感がなんとも言えないな。合成食の方が圧倒的に食べやすいのになんともやめられない」

 

 初日の講演により人気が出た植物展示との協力により少ないながらも初日よりお客の姿が見られるようになって、二日目が開始されるのだった。

 


 

 それだけ話題になり、多くの人を呼び寄せるロボット学校文化祭の賑わいに運営側はにっこり笑顔…だけで済むわけがないんですよ。

 

「校長の人脈のおかげで最低限の人手は借りられそうですね。後は訪れているOB・OGにも声を掛けてみますか」

 

 闇雲に声を掛けた所で申し訳ないが役に立つとは限らない。それに急に組み込むにしてもある程度命令系統がはっきりしている方が動かしやすい。

 

「来客名簿と卒業名簿を照らし合わせ、その中からグループのトップをリスト化……めぼしい人材は1.2.3…いけそうですね。該当者と関わり深い教員ロボットから接触して協力へ繋げていきましょう」

 

 人間の教師は残念ながらいなくなってしまう方も少なくない。ロボットの教師だって場合によっては早くに居なくなることもある。

 

学校の歴史を考えるとロボット教師の方も居ない可能性もありますが、その場合は校長に出張ってもらいましょう。あの人は基本的に慕われていますからね。

 

「とりあえず立ちいかなく成りかけてる場所の一部にスタッフを増員させましたがまだ足りませんね」

 

 来客者数は過去最高を更新ですか…まぁ、関係者の人間は死ぬ事があってもロボットはそう簡単に廃棄される事はありませんから、毎年卒業生の少なくて四割、多いと六割が来客として増えるので来客増加も当たり前だが

 

「それでも今年は頭がおかしいレベルですね。OB・OGの手が借りられてもまだ怪しいか」

 

 一日目から二日目での来客者数が約1.5倍にまで増えたのは初めての事ですね。規模からして来客者数の母数が違うので増えた0.5の影響は多い。

 

 流石にこれ以上増えないとも思いたいですが、楽観視して文化祭が途中で終わってしまうなんて事態になれば洒落にならない。

 

 それでいて話題を呼んでいる要因の一つである講演イベントを潰す訳にはいかないので時間が来れば一部の教員に校長、そして私も運営から一時的に抜けないといけない。

 

「と言うか、私は本来は全体の運営ではないんですが……担当である閉会の催しだって手を入れる必要がありそうだと言うのに……」

 

 初日に使った会場のままでは来客全てを収められない。いや、閉会の時間まで残る来客ばかりでは無いだろうが、開会は待たないと入れないが閉会前に帰る分には問題ない。

 

 とは言え対策をせずに会場から人が溢れる事態になったら……その場合は校長に責任をなすりつけられない事もないがその前に対策を考えよう。

 

 会場の拡張は準備期間中に何度も行った為に調整は必要だが今日の文化祭終了後に少し残ればできる。ただ問題は拡張した分だけ閉会の演出に手を加えないとおかしくなってしまう。

 

 演出を空間に合わせてズラして調整すれば良いか、それとも増やせる場所は数自体を増やして対応するべきか、来客からの視点もシミュレーションとは変わってしまうだろうし、考える事が多すぎる。

 

「余計な事なんて考えてる暇もないですが……」

 

 頭の中と心の内で取捨選択を繰り返して、余計な事の枠へ入らなかった事柄を想ってただただやるべき事をやりましょう。

 


 

 祭りの会場はチラホラと客の姿が見えるようになり、その人の流れが出来てから無人の時間はほぼなくなったと言える。

 

「人が見えるなら呼び込みでもしてみるか?」

「何か分からない謎や正体不明に惹かれるのも人の真理であ~る。下手に誘導を考えると流れが途絶える可能性もあるであ~る」

 

 それでも祭り会場の客はまばらであり、祭りの食べ物というのは一部を除けばそう軽いものでは無いので何個も買っていく訳ではない。

 

 射的や輪投げ等のゲーム的な屋台も一度体験したらある程度満足するお客ばかりであり、これはムキになる程の空気感でないのもあるだろうが、どちらにせよ落とす金額は大きくない。

 

「協力してもおかしくない企画はあらかた声を掛けて断られてますからね。共通点のない企画が絡んでも逆効果ですし…」

 

 諦めずに他の企画に声を掛け続けて妨害行為と取られてしまうのも避けねばならず、これ以上の協力相手は見込めそうにない。

 

「昨日みたいに幾つかイベントはあるからとりあえず出てはみようぜ」

「わぁ、ボクが出れるのもあるかな〜?」

 

 駄目で元々と事前に知らされているイベントの中から出れそうな物を共有するが、得意分野には誰一人掠らないものばかりで、昨日の結果を考えると期待は出来そうにないのは確かである。

 

 石頭、大食い、射撃、功夫、漢方、魔術、占い、サッカー、運動能力、コサックダンス、怪力、闘牛、他にも上げようと思えば色々あるが、活かせる場とタイミングと言うものはどうしても存在する。

 

 それ以外の場所で応用的に使える事柄だってあるだろうが、ちゃんとした専門家には敵う事なく、成果は得られず時間だけが無情に過ぎていった。

 

「だめだったね」

「だー!!昨日よりも掠りもしねぇ!!」

「ワウワウ」

 

 これからの生活が掛かっておりみんな必死に頑張った。それ故にどうしようもないと言う力の無さに我慢がならない。

 

「…ブースからの連絡で少し客の入りが減ってきたって」

「昼を過ぎましたからね。食関係の伸びが悪くなって来ても仕方ないでしょう」

「今日また話題に上がってる所に人の流れが出来てる様であ〜る」

「残りの時間でせめてなんかやらねぇと…あと明日だけだしよ」

 

 昨日はまだ二日あると楽観視とは少し違い、どうにか自身を鼓舞させていたが、いよいよ不安が表に滲んでくる。どうしようかと思い悩むも良い案が簡単に出るわけもなく、揃って視線を下に向けるばかりである。

 

「ワウ…?…!!」

 

 そんな中で近くを歩いていたロボットの足が止まり、その影が動かなくなった事に気付いたドラニコフが顔を上げるとそこには見慣れた顔があった。

 

「…忙しくなったので顔を見せる事も出来てなかったんですが、あまり良い顔色とは言えそうにないですね?」

 


 

 準備であちこち回ってそろそろ大講堂へ向かおうと思って居た所に落ち込んだ様子の見慣れた七人の姿があり、声を掛けましたが……

 

「なんでまた…と訊くまでもないですね。調子はそんなに良くないんですか?」

 

 それこそ訊くまでも無い事にも思えるが、反応を見てみないことには彼らのダメージは測れないので仕方ない。

 

「いや、あはは…」

「客の入りがちょっとな」

 

 誤魔化す様に笑いつつも答えざるを得ない。いや、誤魔化しきれないと分かってしまうからなんとも言えない表情を見せている。

 

「思った以上に疲れてるみたいですね。それなら気分転換でもしなさい」

 

 そう言って私が差し出したのは講演イベントの講演者用のチケットだ。身内や関係者を呼びたい方向けの物で多めに席は確保してるから七人ぐらい問題なく座れる。

 

「そこまでの暇は……」

「暇が無いと私の講演なんて見れないと?」

「いや、そういう事じゃなくてよ……」

 

 断ろうとする空気を折るために少し食い気味に、分かりやすい嫌味を混ぜる。強く言い返せてない時点で元気が足りてないのがよく分かる。

 

「今の発言は冗談ですが、講演には来てみてください。少し必死にやり過ぎて何処かから回ってますよ」

 

 そう言うと自覚はあるのか乾いた笑いすら出ずに顔を逸らし、目線が遠くを向いている。そんな様子にため息を一つ吐くと彼らより上手く笑って見せた。

 

「約束と違って手は空いてませんが、知恵を貸しますよ」

 


 

 ハイドラに半ば無理やり連れていかれた先は講演イベントが行われている大講堂。講演者用にと取っておかれた席だけあってとても見やすい場所にぼく達は案内された。

 

 場所が場所である為にいつもは騒がしいみんなも雰囲気に呑まれて静かにハイドラの講演が始まるのを待っていると、アナウンスが掛かり、大講堂がさらに静かになっていき、そしてついにぼく達の友人が姿を現した。

 

「様々な事に首を突っ込んでますが、私には何よりも好きな物があります」 

 

 好きな物、ハイドラの好きな物と言われてぱっと思い付くのは以前キッドが勝手におやつを食べた際にきいたごま餡どら焼きくらいな事に気付き、意外と知らない事が多いと気が付いた。

 

「その好きが何かは恥ずかしいので言えませんが、私の好きに欠かせない存在があるのです」

 

 あのハイドラの語る好きやその好きに関わる物と言う事で講堂に集う者達はその話の上手さも相まって興味深そうに耳を傾けている。

 

「私が語るのはそんな欠かせない存在の一つであるひみつ道具について…そう『ひみつ道具の可能性』を皆様にお話させて頂きます」

 

 ひみつ道具、ぼく達が普段何気なく使っているとても便利な道具、そして便利な反面とても危険な道具。だけどその可能性とはいったいどういう事なのかあまり賢くないぼくにはピンと来なかった。

 

「ひみつ道具と聞いて皆さんは何を一番に思い浮かべますか?広い空を自由に飛ぶ『タケコプター』?敵を倒さんと突撃する『おもちゃの兵隊』?世界を一瞬で旅する『どこでもドア』?」

 

 なんでハイドラがその三つを例に挙げたのかは謎だけど、ひみつ道具ってたくさんの系統、たくさんの種類の物がある。ひみつ道具の定番なんてものは人によって違うはずだよね。

 

 キッドなら『空気砲』、エル・マタドーラなら『ひらりマント』がやっぱ一番なのかな?ぼくは色々使うしパッとは思い付かないかも……

 

「特定の物が出た人はその道具によく助けられているのでしょう。これと言った物が出なかった人も一つも思い浮かばないなんて事は少ないでしょう」

 

 あまりひみつ道具を使うのが上手くないぼくだって例に出てたから除外したけど『タケコプター』や『どこでもドア』はよく使うなぁって考えたくらいだし、他の人達もあれこれ思い付いてるのかな?

 

「全く思い付かないと言う人も知らない内に使っている筈です。それだけこの科学時代とも言える二十二世紀ではひみつ道具は生活と密接な関係にあります」

 

 そう言えばひみつ道具の数々は世界にこれでもかと広がってて、ぼく達も知らない間に使っている道具がたくさんあると前にハイドラから聞いて驚かされた事があったっけ。

 

「ひみつ道具は様々な物がありますがその定義は意外と曖昧な物で、ひみつ道具管理委員会の認証を得た物が正式にひみつ道具と呼ばれます」

 

 ひみつ道具管理委員会?と頭を捻っているとハイドラの説明が続いていくのでそのまま聞いてみると、何やらひみつ道具の管理運営を公的に行っている科学省の下部組織に当たる機関らしい。

 

 ぼく達ロボットを管理している大元も科学省だからそんな離れた存在では無いが、直接関わる事ない国の省庁や組織なんてわざわざ覚えてない。

 

「一応制限などはありますが、こうじゃないとダメと言う絶対的な定義はひみつ道具にはないのです」

 

 前にひみつ道具作成に使うフルメタルと言う物質を扱うのに資格がいると聞いたからそのフルメタルは条件だと勝手に思ってたけど違うみたい。

 

「それもその筈で、ひみつ道具はあんな事いいなこんな事いいなと言った願いを叶えたり、大変な時に助けてくれる何かでしかないからです」

 

 確かに道具と言ってもツールではないひみつ道具はたくさんある。願いを叶える、大変な時に助けてくれる何か…

 

 これ以上に分かりやすいひみつ道具の説明はないんじゃないかな。でもそんな単純な説明もハイドラが言うと深く思える。

 

「そう、今の世の中に存在しているひみつ道具は過去から現在までを生きてきた人達の願いの結晶とも言えます」

 

 そうか過去の人達のこうなったら良いなが形になったのが今あるひみつ道具なんだ。そう思うと普段何気なく使っているひみつ道具も誰がどんな想いを抱いて、誰がその想いを形にしたのか少し気になる気がした。それはきっとロボット(ぼく達)が生まれたのと同じだと思うから……

 

「では最近のひみつ道具はどうでしょう?かゆいところに手が届くと言えば聞こえは良いですが、その実はどこまでも的を絞った様な物、もしくは前から存在するひみつ道具と分野の似通った物ばかり…」

 

 文化祭でやる講演内容としては中々に過激な意見とも取られかねないが、発言しているのがひみつ道具で一目置かれているハイドラだからか驚きはあれど大きな反感は見られないけど、やっぱハイドラは怖いところあるのかも…頼りにはなるんだけどね。

 

「…私が作り出した物だって世間に評価こそされていますが私はそこまで凄い事だとは思っていません。まぁやりたい事はやっているので満足しているのは間違いないんですがね」

 

 ハイドラは色々なひみつ道具を作っているがそれを自慢する様な事はあまりしなかった。けどこの話を聞いてなんでなのかわかった。

 

 ハイドラは何処か完璧主義な一面があるけど、きっとひみつ道具もハイドラの中の基準に達した物は無かったんだね。

 

「過去の人々の願いは叶いました。ひみつ道具で何処にでも行ける。空を飛べる。時を超えれる。過去も未来も知れる。では今を生きる人々の願いはどうですか?」

 

 そのハイドラの問いかけで多くの人がハッとなった。講演を聞きに来る程の真面目な人達はやっぱ頭が良いんだろうななんて他人事を思いながらも、その雰囲気にぼくも必死に耳を傾けた。

 

「空を飛べるのにわざわざかっこいい飛び方を提示するのは余裕と言えば聞こえは良いですが、そんな物はただの停滞です。取るに足らないみみっちい願いが人々の願いで良いんですか?」

 

 「ひみつ道具があって手の届く距離は広がりました。ですが出来ない事が減ったわけではありません。新たに届いた手の中に新しい出来ないが、未知が、可能性がそこにあるのです」

 

「ひみつ道具の可能性は人々の願いの可能性、ひみつ道具の、技術の進歩は人々の願いをより大きく、輝かせます。あなたの夢は、願いはなんですか?」

 

「夢を叶えましょう。みんなで楽しみましょう。もっともっと我儘な方が良いんですから、その為に存在するのです。新たな未来を人々の未来を作り出したその時こそ私は真にひみつ道具職人だと胸を張り、笑って見せましょう」

 

 講演を聞いた人の中に黙って涙を流す人が居た。静かにそれでいて力強く拍手を送る人が居た。それを向けられるハイドラが言った言葉の数々はぼく達にも染み渡った。

 

 ぼく達も人に望まれて生まれた。ならば叶えなければ、楽しまなければ、笑わなければいけない。あぁ、なんて簡単で難しい事なんだろう。でもきっともう迷うことは無い。

 

 講演後の僅かな時間も人に囲まれているハイドラに小さくお礼代わりの合図を送って大講堂を離れたぼく達は誰が言うでもなく、この文化祭で一番人を楽しませている場所へ向かった。

 

「あら?ドラえもん!!それにみんなも!!そっちは大変そうだってハイドラから聞いてたけど、こっちに顔を出しても大丈夫なの?」

 

「うん、まだ明日(可能性)がぼく達にはあるからね。それに必要な物がここにあるから来たんだ。問題がなければ手伝わせて欲しいんだけど良いかな?」

 

「ふふ、何かは分からないけどみんなかっこいい顔をしてるわね。特別クラス(うち)は何でもありだから、飛び入り参加も予定変更も問題ないわ。でもその分だけ盛大に盛り上げてね」

 

「うん、頑張るよ」

 

 変に宣伝なんて挟むこともなく、ただ楽しませて、笑われて、それでこっちも楽しくなる。いつもの馬鹿騒ぎとなにも変わらない楽しい時間。

 

 急な変更に驚きはあったみたいだけど今までにないパフォーマンスにお客さん達からの文句はなくて安心した。

 

 ただただ時が過ぎていき、二日目は気付いたら終わっていた。それでもぼく達に悔いなんて物は欠片もなく、顔を見合わせると誰彼でもなく大笑いして、解散した。

 


 

 何もなければ時は常に過ぎていき翌日となる。ついに訪れた最終日、二日目の午前中なら悲観に暮れていたかもしれないが、今の彼らにはそんな様子は全くなく、希望に満ち溢れた姿で向かい合っていた。

 

 そんな彼らに朗報だが、最終日だけあってイベント等はかなり多く、その規模も大きい物が殆どなっており、さらに可能性は広がった。

 

「やれるだけの事をやろう」

「ええ」

「任せろ」

「腕の見せ所であ~る」

「今から勝利のシェスタが楽しみだぜ」

「ワウワウ」

「ガンバルぞ〜」

 

 意気込みは十分、後はその思いを全力でぶつけるだけ、迷う事はなく、目的を見据えると、全員で手を重ねる。

 

「「「「「「「我らドラえもんズ!!」」」」」」」

 

 ドラえもんズによる文化祭の最後の日が幕を開ける、それぞれが望んだ場所へと、楽しむ為にただ歩みを進めるのだった。

 


 

 ドラえもん達の体調は心身共に良好でしょう。やると決めたからには突き進む。そんな強さが彼らにはありますからね。

 

「どんな結果でもきっと笑える筈です」

 

 悪い事にはならない。そんな事はとっくの昔から確信している。だから無駄な心配はせずに自身の仕事を終える為に、私も既に見慣れた舞台へと姿を現す。

 

「皆さん、こんにちは。私、ハイドラの講演を始めさせていただきます。題は初日、二日目と変わらず『ひみつ道具の可能性』です。それではよろしくお願いします」

 


 

 最終日のイベントは多岐にわたる。それこそ普段はあまり聞かない様なマイナーなものからプロプレイヤーと呼ばれる者がいる競技まで存在する。

 

 そんな中で彼らがこれは得意だと胸を張れるものやこれはお前しかいないと推薦出来るものが七人分見つかったのは奇跡と言える。

 

 誰もが百点とは言えないが、最低でも八十点は取れる様な競技をただ心の底から楽しんでくる。そのために彼らは向かった。そして、一番早くに出場が決まったのはドラえもんだった。

 

「食べる事なら任せて!!」

 

 そのイベントと言うのはキッドが未来大学で優勝したものと同じ大食い大会だった。ドラえもんズの中でよく物を食べる姿があるのはキッドだが、ドラえもんも元のクラスの同級生達を驚愕させるレベルの大食いである。

 

 立ち並ぶのは大型のロボットが多く、中には強者であろう人間も少し、その中に混ざり込む比較的小型の子守用ロボットの姿は少々異質にも見える。

 

 だがそんな観客達のイメージは初戦が終わりを迎える頃にはすっかりなくなっていた。運び込まれる合成食を次々に口の中に放り込んで丸呑みしていくのはまるでブラックホールの様で圧巻だった。

 

 中には不正を疑い難癖をつけるものも居たが、文化祭と言えどしっかりしたイベントであり、『ミニブラックホール』の分解液は参加者全員が飲み込み済みであり、直ぐに疑いは晴れた。

 

 二回戦目では合成食ではなく、未来の時代まで残っている色んな国の伝統的な料理の数々が立ち並んだ。合成食に慣れ親しんでいる者の中からリタイア者が出たり、様々な国の食べ物で苦手なものが出てきたりが見られる。

 

 その点、ドラえもんは合成食だろうとそうじゃなかろうと全く気にしない。その上、仲間たちが色んな国の出身の為に他の国の食べ物も普通よりは慣れており、問題なく勝利した。残すは決勝戦のみとなった所で声が掛かる。

 

「対戦相手の一人は貴方かしら?」

 

 そこには比較的細めの人間の女性が立っており、ドラえもんは発言から大食い大会の対戦相手なのは分かっても直ぐに反応できなかった。

 

「私が言えた事じゃないけど、小柄なのに勝ち残るなんて凄いわね」

 

 それだけ言うと女性は去っていった。決勝は四人での対決であり、他の二人も少し遠くに見えたがドラえもんはもちろん、その女性よりも遥かに大きいロボットだった。

 

 でもそんな事は関係ないと言わんばかりにドラえもんは笑って、舞台へと上がるとそこに待っていたのはお菓子の山。どうやら食事は食べ慣れていても甘いものはどうだと言った思惑らしい。

 

 主催側の思惑通りか大型ロボット二人は甘いものは食べ慣れていないのか少し進みが悪い。その逆にドラえもんと女性は気にすることなくパクパクと食べ進めていく。

 

 最終的に他のロボット二人がリタイアし、この調子なら勝てるとドラえもんが希望を抱いて食べ続けるが女性のペースも止まらない。

 

 バクバクと食べ進めるもドラえもんの表情が段々と悪くなっていく、ドラえもんは確かに大食いである。だが、それに伴って動けなくなったり、お腹を壊す事も少なくない。

 

 食べるのが好きで人よりたくさん食べれるが、大食いしても問題ない体質のロボットとは言えないのだ。段々とふくれ具合から苦しくなるお腹を悟ったドラえもんは無理をしても楽しくないとリタイアして大食い大会の優勝を逃して終わった。

 

「流石に直ぐには動けないかな?もうドラニコフと王ドラのイベントが始まってる筈だけど行けそうにないな」

 

 大量に食べた事でコロコロ回れそうなほど丸くなったドラえもんはのそのそ会場を後にしながらイベントに臨んでいる親友の事を思うのだった。

 


 

 ここはクイズ大会の会場、ロボット学校は様々な専門ロボットに教えを施す為に多くの知識を内包しており、その蔵書や先生方の作られた問題に挑むのも自身の知恵に自信のある者ばかりだ。

 

「おっ、さすが秀才王ドラ。なんなく突破してるな」

「元学年一位だからな。流石に勝ち残ってくれねぇと困る」

 

 観客席にて見学しているキッドとエル・マタドーラは王ドラが勝ち残るのは当たり前と適当にその姿を俯瞰して眺めていた。

 

「ワフワフ!!」

「っておい、ドラニコフ?!」

「お前、イベントはどうした? それと応援してた筈の二人は?」

 

 ドラニコフがジェスチャーや文字も交えて説明していくと、ダンス大会の二戦目でミラーボールが出てきて野獣化してアウトになったそうだ。

 

 そして応援していた二人は忘れる前に会場入りしておくと言ってドラメッド三世がドラリーニョを引きずるように連れて行ったらしい。

 

「なるほどな。そういやもうすぐドラリーニョの出場するレース競技の時間だったな」

「あいつの身体能力を考えると問題なく勝てる筈だが…やっぱ物忘れがなぁ。って待てよドラリーニョの出場時間が近いって事は射撃大会の時間も近いじゃねぇか。行ってくるぜ。じゃあな!!」

 

 時計を確認するやいなや駆け出したキッドに呆れた目線を送りら気付いたら準決勝まで勝ち進んでいた王ドラへと視線を戻し、対戦相手を確認する。

 

「あ、負けたなあいつ」

「ワフワフ…」

 

 対決が始まる前に王ドラの負けを確信したエル・マタドーラとドラニコフは席を立って出場者が出てくる入口へと歩いていった。

 

 文武両道、紳士的で曲がった事を許さない真っ直ぐなロボットである王ドラ。少ない彼の欠点の一つが相手であればそれは仕方がない事だ。

 

「あいつに女の相手は無理だ」

「ワフ…」

 

 女性を前にするとふにゃふにゃになってしまう王ドラでは隣同士で早押し対決なんて物は勝ち目がないのが分かっている。

 

 そしてそんな二人の予想通り、一問も取れないまま負け、正気に戻って真っ白になっている王ドラを既に終わっているドラニコフが背負ってまだ出場していないエル・マタドーラの会場へと足を進めた。

 


 

 場所が変わりレース競技が行われる会場ではまだかまだかと落ち着きがない様子のドラリーニョの姿が確認された。

 

 既にスタートラインに立っていると言うのに興奮しているその姿にドラメッドは何処かいや~な予感がしてならなかった。

 

 ヨーイドンと合図がなるとドラリーニョは瞬時に走り出し、慣れていないものには姿が見えない程の高速でコースを走り出した。

 

 グングンと加速していき、対戦相手を置き去りにするその姿は流石の一言に尽きる。だが、調子が良いのは最初だけだった。

 

 物忘れの激しいドラリーニョ、彼の運動能力は素晴らしいが記憶力はどうしようもないレベルである。イベントになる様なレースとなると当たり前の様に長距離だが、走っているうちに彼の頭からすっぽりとコースの形が抜けてしまい、あらぬ方向へと突き進んでいった。

 

「ドラリーニョ!!追いかけなくては…でも今から追いかけたら追いつくまでには我輩の競技の時間が…でも放置したら何処まで行くか………ドラリーニョ、待つであ~る!!」

 

 ドラえもんズの中でもとりわけ面倒見が良く、普段からドラリーニョの世話を焼くことの多い彼に親友を捨て置くと言う選択肢は出てきても絶対に選べないのであった。

 


 

 そんな騒動が起きてるなんて知らず、ドラえもんと同じく観客席での応援がいない状態で射撃大会へと出場したドラ・ザ・キッド。

 

 ガンマンロボットだけあり、その腕前は並大抵の相手では破られることなく、順調に勝ち進んでいた。次の対戦まで待合室でのんびりしているとその隣に人間の男が一人やってきた。

 

「よう、ガンマン調子はどうだ?」

 

「ん、なんだ?俺様は絶好調だけどよ」

 

「そりゃ良かった。それなら倒しがいがあるってもんだからな」

 

 明らかにキッドに対して宣戦布告にしか取れない発言をしてみせた男だが、キッドには見覚えはなく、何故絡まれているのか分からない状態だが、売られた喧嘩を買わない様な利口な性格もしていない。

 

「なんだ恨みを買った覚えはねぇが。やんならとことんやるぞ!!」

 

「そりゃそうだろうな。俺とお前は初対面だし、別に恨みはねぇからな。ただ…」

 

「ただ…なんだよ」

 

「いや、なに。未来大学で景品という景品を漁ってった黄色い猫型ロボットの敵討ちをして欲しいと射的屋をしてた後輩に頼まれてな」

 

 聞いてみる限り今度は心当たりしかないと言った様子で冷や汗を流しだしたキッドだが、男はその背中をベシベシ叩いて笑った。

 

「言っただろ恨みはないってな。後輩の頼みはついでだ。射的屋を軒並みあらしたっていうガンマンと競いたくなっただけだからな」

 

 大きく笑い声を上げて男が出ていった。その背中には弓が見えた。この射撃大会は射撃と名が付くがその実は遠距離であればOKと言う緩いものだ。

 

 そもそも銃オンリーだったらキッドの『空気砲』だって怪しい所である。他の参加者の中には銃タイプのものが多いが、弓はおそらく彼一人だろう。

 

 気になったので打ち方を見てみるとえげつないとしか言えない速射能力を披露し、引き金を引くだけの筈の銃に大差を付けて勝っていた。

 

「面白ぇ、大砲と弓、どっちが強いか決めてやるよ」

 

 わざと自身の試合の前に声を掛けたのを挑戦状と受け取ったキッドは対戦相手を同じ様に得意の早撃ちを持って打ち破っていく。

 

 そして、ついに決勝戦まで勝ち抜いた二人は舞台の上で向かい合っていた。矢を番える必要のある弓とドカンと口に出さないといけない『空気砲』、どちらも射撃大会においては癖のある武器で勝ち抜いてきた強者である。

 

 両者の間に緊迫した空気が流れ、ひたすら開始の合図を待ち続け、静寂が辺りを包み込み十秒以上たったその時に審判の手が降りた。

 

 若干遅れてしまった事に気付いたキッドは咄嗟に上げきれていないままドカンと口に出し、両者のちょうど中間くらいに空気を撃ち出す。

 

 すると地面で破裂し既に飛んできていた矢の軌道をずらす事に成功し、反動で少し空いた距離も考えながら腕の向きを整えてもう一度ドカンと『空気砲』を撃つ。

 

 向こうも矢が逸れた時点で次の策は考えていた様で『空気砲』の弾を射抜くように矢を放ち、空気を霧散させる。

 

 そのまま外した方が負けの撃ち合いが始まると思いきや、キッドが狙いを定め直して『空気砲』を放つよりも先に、二度目に放った矢と全く同じ軌道で放ったもう一本の矢がキッドへと命中していた。

 

 矢は『キューピッドの矢』の様に刺さっても問題のない競技用の特別なものだった為に怪我などはないが、二の矢の存在を全く考えなかった自身の考えなさにイライラしながらも、人間でありながらガンマンロボットを打ち倒してみせた男と握手をして大会を後にした。

 


 

 ここは力比べ大会、これまた大型のロボット達がビルの様に立ち並ぶ中で角を付けた猫型ロボットが勇ましく堂々と立っていた。

 

「彼、緊張とかしませんよね」

「良い意味でも悪い意味でもマイペースな所はあるかもね」

「バウワウ」

 

 エル・マタドーラに付いてきた二人とお腹の調子が戻って合流したドラえもんを合わせた三人が観客席で彼の様子を見守っていた。

 

 キッドの結果は現時点でまだ届いていないが、彼とエル・マタドーラを除いた全員が既に負けている現状から応援にも力が入る。

 

「エル・マタドーラの力はドラえもんズ1とは言え、他でもない我々の力は彼と比べるまでもないレベルですからね」

「正直、エル・マタドーラが何処まで他の用途のロボットと戦えるのか分からないかもね」

「ワフワフワフ」

 

 つい最近、未来大学内での戦績を知っているドラニコフによってエル・マタドーラのパワーについてが二人に共有される。

 

「へぇ、未来大学では重機型のロボットと張り合って倒したんですか」

「荷運びの時の持ち方からして力持ちなのは分かってたけどそんなに凄いんだね」

 

 それなら優勝も全然あり得るとドラえもんがワクワクし始めたのを横目に王ドラは何かを懸念するようにエル・マタドーラを見つめている。

 

「後は彼がどれだけ保つかですね」

「エル・マタドーラの力なら何でも持てるでしょ?」

「いえ、彼の意識、要するに彼の悪い癖の事ですよ。初戦がふるい落としの為に耐久要素も加えて時間がかかってますから、二戦目が始まる頃まで保つかと…」

「あー」「ワフ…」

 

 エル・マタドーラは頑張った。初戦が終わって待っている間にシエスタをしたい気持ちを抑えてふらつきながらも会場へと現れた。

 

 そして二回戦目で使用されるバーベルを持ち上げた所で限界を迎え、それでもなおやる気はあった彼はなんとバーベルを持ったまま寝始めたのだ。

 

 重量挙げを完璧に成功させているが、意識がないものを参加させ続けられる訳もなく、続行不可能の判定を受けてエル・マタドーラの敗退もこうして決まったのだ。

 


 

 最後の講演を今までと変わらず、最善の出来で終えると舞台袖へとスッと消えて、ほんの少し溜まった疲れを吐き出す様にため息をついた。

 

「ふぅ、ようやく終わりですか。後は最後の締めで終わり……」

 

 準備を含めれば確かに長かったのだろうが、終わりに近づけば近づく程に短く感じる不思議で楽しい時間を振り返り、友人の顔を思い浮かべた。

 

「さて、彼らの様子を見に行きますか。それに仕込みもありますからね」

 

 せっかくの文化祭です。最後の最後くらい私も思い切り楽しまないと損というものでしょう。

 


 

 やれるだけの事をやった。ある程度の結果を残す事も出来た。それでも一歩及ばず、狙った様な宣伝も出来ず、ドラえもんズの面々は落ち込みながらも笑っていた。

 

「楽しかったね」

「あぁ、悔いはない!!ってのは嘘か…」

「それは強がりにも程がありますよ」

 

 楽しかったのは嘘ではなく、悔いがないとは言えなくてもそこまで深く残る様なものではなく、何処か清々しささえ湧いていた。

 

「忘れられない思い出だね!!」

「それをドラリーニョが言うであ〜るか」

 

 誰よりも楽しいと言った様子で、物忘れの激しい彼がそんな事を言い、彼のせいで疲れまくったドラメッドが苦笑交じりにコメントすると口から笑いがこぼれ、全員で笑い合う声が響く。

 

「借金の事も忘れるなよ」

「ワゥワゥ…」

 

 それを今言う?と呆れたように言いつつ、任せていた間にどれだけ人が来てたか次第だが確実に赤字であろう企画の後始末はしっかりしなくてはならない。

 

「ま、頑張ろう」

「そうですね」

「ああ、俺たちならなんとかなるさ。だって」

「「「「「「「我らドラえもんズ」」」」」」」

 

 誰にも負けない友情を誓い合うドラえもんズ、友が居れば乗り越えられない事はないのだ。そんな風に考えていると、急にドラえもんの持つ端末が激しく音を鳴らし始めた。

 

「うわわ、緊急呼び出し音だ?!えっとお祭りブースからってなんだろう…『はい、こちらドラぇ…』」

 

『何を悠長に出てんだ!!人手が足りねぇんだオメェらとっとと帰ってこい!!』

 

 耳元で鳴り響き、スピーカーにしてないと言うのに周りにいた面々にも届いたそのメッセージに全員が困惑を示す。

 

「ゴンスケさんからですか?」

「人手が足りないって片付けかなんかか?」

「いや、まだ文化祭中であ〜る」

「ワゥワゥ?」

「それじゃ、人手ってなんだ?」

「わからないけどとりあえず」

「急いで行ってみようか」

 

 自分たちが作り上げたお祭りブース、そこを目指して駆け出した七人はそこに近付く度に違和感を感じ、物音が聞こえる距離まで行くと更にその足は早まり、いざブースに入るとその光景に圧倒された。

 

「あれ、なんでこんなに人が?!」

「うわぁ、いっぱいだね」

 

 イベントではついぞ結果を出すことが出来ず、碌な宣伝が出来なかったと言うのにどう言うことだろうかと驚いていると、見知った顔が向こうから駆けてきた。

 

「コラァ、オメェら何してただ!!一気に人が来てんだボサッとしてねぇではよ手伝え!!」

 

 手伝いに来ていたゴンスケの言葉に我に返ると、念願の客に不満を持たせる訳にはいかないと慌てて手伝いが必要な場所に散らばっていった。

 

「よう、さっきぶりだなガンマン」

 

「あ、未来大学の?!」

 

「サークルの連中みんな呼んじまったからな。ざっと40人分頼むぜ」

 

 未来大学から挑戦に来た男が後輩に奢るためにと大量に買っていった。それなのに次の屋台へと視線を向けており、身体を動かした分だけ食べるつもりらしい。

 

「確かドラニコフくんだったかな?」

 

「ワフワフ!!」

 

「道具を譲った屋台がとうなってるのか見に来たんだけど、中々に好評みたいで嬉しいよ。それじゃ一回やらせて貰うね」

 

 こちらも未来大学からで設備を快く譲ってくれた人達が賑わってる様子を見て顔を出してくれた。

 

「王ドラくん、その様子だと嬉しい悲鳴というやつが出そうな感じかな?」

 

「武雄さん!!おかげさまで、と言えば良いんでしょうか、なんとか支払いは出来そうです!!」

 

「廃れるギリギリを生きてきた懐かしさに金を払う老人や簡単に腹の膨れない若いのを連れてきたからな。せいぜい搾り取ってくれ」

 

 『GODAFOODS』関係から貸し出された人材が多く、あちこちの屋台から武雄さんが連れてきた人との談笑が聞こえている。

 

「あ、その角…昼間のイベントに出てたロボットさんよね」

 

「パワー競ってる奴ならそうだぜセニョリータ」

 

「あら、お上手ね。せっかくだから幾つか貰ってくわね居眠りロボットさん」

 

「買ってくれたのはありがたいが居眠りロボットはないぜ…」

 

 直接的な宣伝にならずとも来てくれた人の中には覚えてくれている人もチラホラ見え、売上に繋がっていた。そしてエル・マタドーラに対する呼び方は妥当である。

 

「ほら、ドラリーニョお釣りを渡し忘れてるであ~る。ありがとうございましたであ~る」

「ごめんごめん。あ、いらっしゃいませ。今直ぐ作ります!!」

「こら!!まだ注文を聞いてないであ~る!!」

 

 慌ただしく走り回るドラリーニョをなんとか制御しててんやわんやな様子だが、お客さんは呆れることなく、何処か楽しそうに笑っていた。

 

「クスクス…あなた達、昨日特別クラスの演し物に出てたでしょう?」

 

「あれ、そうだっけ?」

「みんなで演目をやったであ~る!!」

 

「その子普段から物忘れが激しいのね。昨日の終わりまでの少しの時間にしか出なかった面白ロボットとして話題になってるのよあなた達、このブースが有名になって情報が流れてきたから会いに来てみたの」

 

 彼女の言葉は本当の様で、近くに俺も観たぞと声を上げる人やまたやらないのかと声が掛かる事もあった。

 

「そう言えば、他の子達はイベントに出てたみたいだけど、貴方だけ出なかったのはなんでなの?」

 

「あれ?ドラメッド、イベント出てないんだっけ?」

「誰のせいで出れなかったと思ってるであ~る!!」

 

 お客さんはその悲痛な叫びでなんとなく理由を把握して悪い事を聞いてしまったと更に追加で注文し、周りの人も同情して買っていき、ドラリーニョは喜び、ドラメッドはなんとも言えない気持ちになったのであった。

 

「あぁ、ようやく見つけた!!なぁ、君!!この植物展示で出してる料理ってこの屋台ので合ってるか?」

 

「はい!!提供している料理の一つです!!」

 

 ドラえもんが捌いていた屋台に少し慌てた様子で植物展示のポスターを見せながら訊いてくる男性がやってきた。

 

「良かった売り切れてなくて、植物展示の賑わいも凄いけど、植物星大臣が『故郷の古き良き文化の再現ブースに時間があれば行きたかった』なんてネットに発信したから心配だったんだ」

 

 植物展示から流れてきたお客さんらしく、彼の心配する気持ちはドラえもんにも分からなくはないだろう。公的な立場の高い人が興味を持っていたとなればどんなものなのか確かめたくなる人も多いのだろう。

 

「付け加えるとサンプルのおかげでうちの客入りも増え、尻込んでた方々も料理に手を伸ばし出してうちのサンプルは売り切れてしまったんだ」

 

「「あ、植物展示の!!」」

 

 ドラえもんとお客さんとで声が被ってしまったが、そこには植物展示のトップであり、植物に関する講演も任されていたロボット学校の有名ロボットが居た。

 

「うちのお客から流れてる人も多いし、マナー的にダメだが正直買い占めて持っていきたい所だよ。予算はどうにか確保したから買えるだけくれないか?」

 

「はい!!今直ぐ出せるだけ包みますね!!」

 

 ドラえもんズの関わった多くの人達が、興味を持ってやって来てくれた。些細なきっかけが、広がった輪が、実を結んだ。

 

 賑わいが賑わいを呼び、祭りの最後に侘び寂び溢れる会場を選び留まる人も少なくない。そんな中に一つの放送が流れる。

 

『ほれぇ、ブース中央の広場で太鼓を始めっぞ。祭りの花の踊り同じアホなら踊らにゃ損するぞぉ!!』

 

 乱暴な言い回しで好き勝手言い切ると同時に力強い太鼓の音が辺りへと広がり、ノリの良い奴らが広場へと足を進めていき、そしてハイドラの仕込みが音となって会場へと流れ出した。

 


 

『ハア〜ドラリドラリのドラえもんおんど』

 

「なんだなんだこの曲?!」

 

『みんなみんなでおどろうよ』

 

「ドラえもんの歌なんでしょうか…」

 

『あたまもおなかもまろやかに』

 

「分からねぇが雰囲気にあってるな」

 

『はずむたんそくかろやかに(ハ!)』

 

「誰が短足だ!!猫型ロボットの規格はみんな一緒だよ!!」

 

『ヨッタヨッタ ヨッタセ

 ヨッタヨッタ ヨッタセ』

 

「ヨッタセ!!イェーイ!!」

 

『うたいおどればうかれうかれて』

 

「浮かれ過ぎたドラリーニョは何処であ~る?!」

 

『オヤくものうえ』

 

「ワォーン!!」

 

 響き渡る不思議な歌にそれぞれ耳を傾ける。お客達も流れる歌と響く太鼓に合わせて身体を動かして、会場に温かい一体感が生まれていた。

 

「仕込みはまだありますよ。ゴンスケさん」

『任しとけ、まだまだ行くぞぉオメェら!!』

 

 最後まで曲が流れたかと思うと会場のスピーカーから流れる曲が変わり、情報が流れて集まってきた新たなお客達もワクワクとした様子で耳を傾けている。

 

『ゆめがいっぱいこのからだ』

 

「曲が変わったな」

 

『ただのおなかじゃありません』

 

「これももしかしてだが」

 

『はねるたんそくほがらかに』

 

「だから短足じゃないって普通なの!!」

 

『これでもみらいのロボットだいヨイショ』

 

「やはりドラえもんの…提供者はおそらく…」

 

『みぎにオットットひだりにオットット

 まえだうしろだジャンプだパン』

 

「パーン!!」

 

『ドリランパリランドンニャコンニャパッパ

 ドリランパリランドンニャコンニャパッパ』

 

「いま、あそこで飛び跳ねていたのは、とまるであ~るドラリーニョ!!」

 

『おどれどれドラドラえもんおんど』

 

「楽しい祭りの締めに向かうとしますか、終わりを告げないといけないなんてなんて無粋なんでしょうかね」

 

 お祭り会場が最高潮に達しているいまこの瞬間がずっと続けば素晴らしいが、もう夢から覚める時間がやってきたのだ。

 


 

 全ての店がブースが閉じられ、学生や教員達が片付けを始めた頃、チラホラと帰宅するお客の姿も見られるがその表情はどれも少し残念そうなものが多い。

 

 一方でまだ帰り始めていないお客達は何かを求める様に、惜しみつつも嬉しそうに初日よりも広くなるように手を加えられたメイン会場へと集まっていた。

 

『泡沫の夢は終わりました』

 

 会場に響き渡るその声は始まりの時と同じく優しく温かいものだったが、それ故に何処か儚ささえも感じられ、静かな会場がまた寂しく思えた。

 

 少し遠くの波の音さえ耳が少し良ければ捉えられる。それぐらいの静寂の中でハイドラの声は眠りにつく子どもに語り掛ける様なそんな声だ。

 

 ふと、気付くと既に会場のあちこちにふわふわと浮かんでは消える大きなシャボン玉があり、その表面には文化祭中のロボット学校の様子が映し出されていた。

 

 初日から最終日まで多くの場面が現れては消えてを繰り返し、最後には新しい泡が出た来なくなった事で本当に終わりだと言う気持ちがストンと胸に落ちる。

 

『夢で遊び疲れ眠って今度は現実と言う夢』

 

 お話を読む様な静かで少し不思議な言葉。

 

『夢は終わりません』

 

 力強い宣言、いいえ小さくて確かな願い。

 

『また夢を見てくれる様に』

 

 これだけ素晴らしい夢は他にないだろう。

 

『今日まで夢をみてくれた全ての人へ私から』

 

 そこまで言い切ってから一度目を瞑って。

 

『ありがとうございました』

 

 誰一人、喋る事なく、奏でられる拍手達。それを背にして笑って、また校長先生へとバトンを渡した。雰囲気をそのままに上位に選ばれた企画や賞が発表され、ロボット学校文化祭はそっと幕を閉じた。

 


 

『タケコプター』

 

気軽に空を飛ぶ事が出来る道具。体のどこにでも取り付けられる。

 

 

『おもちゃの兵隊』

 

命令を受けると忠実に遂行し、助けを求めると、相手を撃破するまで徹底的に守ってくれる小さなおもちゃの兵隊の人形。人やボールを黒焦げにする位の威力を持った銃を装備している。

 

 

『どこでもドア』

 

行きたい所を頭に思い浮かべてドアを開くだけで、どこへでも行く事ができる。

 

 

『空気砲』

 

空気圧を利用する武器。腕にはめて「ドカン」と言うと発射される。

 

 

『ひらりマント』

 

目の前に迫ってくる物に対してこのマントを振りかざすと、跳ね返す事が出来る。跳ね返せるのは物体だけでなく、光線などの不定形なものにも効果がある。電磁波の反発を利用している。

 

 

『ミニブラックホール』

 

あらゆる物体を引き寄せ、飲み込んでしまうブラックホールのミニ版。炊飯器みたいな物から専用の棒の先端に付着させて、使用したい箇所に持って行く。口の中に入れると空腹を感じ、何でも食べてしまう。量が多いと家まで丸ごと飲み込む力がある。これを消滅させる『ブラックホール分解液』という物がある。

 

 

『キューピッドの矢』

 

弓と矢からなる道具。この矢が当たった生き物は、矢を放った人が好きになる。矢に当たっても傷は付かず、痛くもない。人間だけでなく動物やロボットにも効果がある。手で直接相手に矢を突き刺しても良い。

 

 




なんやかんやでおまたせしました。

なんとか後編まで書き切りましたが、色々と書き直したりする事が多い話でした。私の中でのなんか違うやここ後で矛盾するかもなんて問題がいつもよりたくさん湧いて妙に大変だった。(大変なのを理由に作業から逃げてたら気付いたら一月以上経ってたなんて言えない)

次各予定の話は決まってるし、元ネタありなのでそこまで手間は掛からない筈だけど、先に別の作品の作業もあるので、少しまた時間はあくかもしれませんが、少しずつ書いていくので何卒お待ちください。

次は初めての映画、卒業前に行ってきます修学旅行。『ムシムシぴょんぴょん大作戦』からお送りする予定です。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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