このままそっと抜け出す事が許されるのであればそうしてしまいたいと言う気持ちが頭の中に広がっています。
色々と覚悟を決めたつもりでもそう簡単に人間は…いえ、ロボットも変われないものですね。
立て続けに起きた衝撃的な出来事と目の前の光景に対する現実逃避はこれくらいにして、どうするかを考え無ければいけませんね。
「科学事案対策局は何を考えてるの!? 」
怒り心頭と言った様子で保護対象や接触対象と称されていた私の事も意識の外において声を荒げている。
なんと言ったら良いでしょうか…同じものと考えるのは辞めましたが、ついつい別れてからあまり時間が経ってなさそうだと推察してしまいますね。
タイムパトロールとしての心持ちと本人の気持ち…それらを加味したとしてもいささか感情的に見えます。
「何って仕事ですよ。そうでなきゃこんな所に出向きやしませんよ。そっちも仕事でしょう? 」
それに対してのらりくらりと躱す様にも見えるが、傍から見ても煽っているだけにしか見えない言動でまともに取り合わない相手。
わざとやっているのか、それとも素なのか、どちらか分からなくとも火に油を注ぐ所業なのは分かりやすいです。
見つめれば見つめるほどに目の前の面倒事から逃げ出したいと言う思いが湧いてきます。それでもここから立ち去って困るのは後々の私でしょうね。
とは言っても下手に横から口を出しても藪蛇になるだけでしょうし、流石に日没に間に合わなくなる様なら色々と考えないといけないでしょうが…
「上の命令で動く現場が言い合っても良いことないですよ」
「あれが化学省の総意とでも言うつもり!」
政府組織同士、省庁の下に位置する下部組織同士のやり取りがこれとは…不毛としか思えませんね。まぁ、私のボディもヒゲを除けば不毛ですけど…
ははは、いや何を考えてるんですかね。
…いや、全部終わったら一度
「んー拡大解釈持ち出しますねぇ…そんなに言うならそっちは法務省の総意で動いてるんですか?」
「そ、それは…」
そんな訳が無いのは分かっているでしょうに、あえて訊いてるあたり中々に厄介な人物ですね。
自然な流れで問う側と問われる側が逆転しているあたり、敵に回ると面倒なタイプです。
「 仕事にやり甲斐を見出すのは勝手ですが傾倒してんのは痛いですよ。っと他にもデータが拾えそうですね」
「っ…!? 言うことに事欠いておいて…」
男は話しながらずっと手元の機械をいじり続けており、何らかのデータを収集している様に見えます。
ギリギリ片手で持てなくもないぐらいのタブレット型ですね。あそこまでコンパクトなのに時空間のデータ収集が可能とは…
しかも収集用の別端末も無く、目に見えるアンテナも無いのにかなり高性能ですね。
「何を調べてるのか知らないけど、科対に逮捕権は無いんだからここから先の事はタイムパトロールに任せてもらいます」
「これほどの規模なら第一種緊急科学事案に振り分けられますからねぇ。現場の調査及び制圧、そして
一歩も引かない姿に呆れつつも科対の職員の発言に確かに緊急科学事案の適応は間違いないだろうと納得してしまいます。
科対の主な対応相手はひみつ道具を用いた犯罪、そして暴走ロボットや犯罪ロボット等の鎮圧ですからね。私も下手なことすれば追われる相手と言う訳です。
授業でも習う事がある組織なのでそれなりに科対の事は知っていますが、相手がDr.ブレンドとなると少し分かりませんね。
タイムマシンもひみつ道具に分類されますが、時間犯罪者と言うより航時法自体を扱っているのがタイムパトロールな為に微妙なラインになりますが、この場においては確かに権限があるでしょう。
「まぁ、どうせ追いかけ回すのはそっちの仕事ですし、調べきったら上伝いでデータは渡すんで放っててくれません?」
「貴方の方がよっぽど仕事に傾倒してる様に見えるけど」
黙々とデータを集め続ける姿へ皮肉を返している様だが、相手はキョトンとした後に笑い声を上げた。
「はは、面白い冗談言いますね…Dr.ブレンドの確保は上からの仕事ですけど現場を調べてるのは趣味ですよ」
見るからにそんなタイプではありますね。言動や行動からして好きな事をやっているだけの研究者タイプ、正直公務員とはかけ離れた存在でしょう。
それなのにその立場にいると言う事はそれだけ優秀な証拠であり、彼にとってそこに居るだけの価値が科対にはあるんでしょうね。
「はあ!? 本気で言っているなら笑えないわよ。私情で公務に携わって、ましてや邪魔までするなんて…やっぱり信用ならないわ。後の調査もこっちの人員でやるから貴方はさっさと帰還しなさい」
リーム・ストリームと言う記号上の情報しか知らないのに語るのもどうかと思いますが、真面目であろう彼女ならそう言うでしょうね。
「ひどい言い様ですね。ひみつ道具関連でうちがどれだけ協力してるか分かってます? それにT・P公安部が信用を語るとか、はは、本当に笑わせてくれますね」
笑えないと怒り、笑えると睨む、対照的と言いますか…オケラロボットさんは既に目を閉じて知らんぷりを決め込んでいますね。羨ましい限りです。
そして、これは私が知る事は叶わない情報ですが、科対の職員の言葉からして
裏付けはもちろんですが、理由の推察も不可能なあやふやな情報ですね。
ですが、本当にそんな部署に所属する事になったとしたら彼女の物語…いえ、人生も波乱が多くなりそうですね。
「はは、冗談ですよ。自分自身にT・P公安部に対して想いがないと言えば嘘ですが、どうせ後から調べろとか、人員だせとか言うのに何様だとか思いますがね」
止まらない物言いに黙り込んでしまう。何処までもつまらなそうに目の前の原稿を読むかの様な印象を受ける。
そしてその語りようからしてやはり科学省はその名に恥じないだけの科学に関する力を持っている様ですね。
「うちが干渉を許されてない不確かな未来とやらの情報に従うマリオネットに好感を持てる理由が何処にあるのやら…
自身は物理学者ではなく科学者だと紹介し、あれは同情する為の物語ではないと説く、その目は冷たさと熱さを併せ持っていました。
「……それでも、たとえ正しかろうと正しく無かろうと…
人からの悪意に対して耐性など無いであろう彼女だが、歴史の重みを人の命の重みと相対してきたのですから、慣れてなくとも弱くはない。
「へぇ…救助課上がりでしたか…珍しい」
感心した様に笑みを浮かべ、人には聴こえないであろう声量で呟かれた面白い物を見つけたとでも言うようであった。
「はぁ、大人にはなりたくないもんですね。忘れてないつもりで思い出せなくなるんですから、降参です、降参…」
大きなため息を吐いて、ガシガシと頭をかきながら雰囲気の変わった目の前の人物に今度はリームの方がキョトンとした顔をしている。
「二度手間はごめんなので調査は続けますが情報は全てそちらにしっかり渡します」
既に集め終わったデータらしきものを記憶媒体に移して渡しながら何らかの羅列が書かれた紙を渡している。おそらく端末に関わる何かでしょう。
「それと今後の捜査でうちの力が必要になる事態に出会したら直接連絡してください。今回の詫び代わりです」
言いたい事だけを言い切るとそれじゃと調査に戻った男に置いてけぼりをくらった子供のように訳が分からないと訴えています。
本当に置いてけぼりを食らっているのは私の方なんですがね。まだ余裕があるとは言え、これ再起動を待たないといけないんですかね。
場所は変わってロボット学校では、ペアを組むのが早く済み、真っ直ぐに迎えていた者たちが既に辿り着き始めていた。
「ほほう、今年は中々に優秀じゃな。例年より早いペースで帰ってきておる」
「校長…そんな事よりも先ほどのあれは」
虫ロボットと帰ってくる生徒達を遠くから楽しそうに眺めていると特別クラスの担任が険しい顔で自身だけでなく世界中へ届いた声についての心配をこぼす。
「おお、おお、分かっておる。ある意味ひみつ道具の使用禁止のおかげで卒業試験中の生徒達がパニックにならずに済んだが、校内は大騒ぎじゃろう」
ひみつ道具の使用禁止は他者に使用されて強制的に失格にならない様に学校側から対処がされていた。
その為に卒業試験中の生徒たちにはひみつ道具を介して伝えられたDr.ブレンドの声は届いていなかった。
だが、それ以外の生徒はもちろん、教職員たちの中にも先の一件で不安を示す者たちが少なくない。
「それぞれのクラスで生徒達を集め、担任からロボット学校のスタンスを説明して後は意地でもいつも通りやればよい。何事も日常が落ち着きを与えてくれるもんじゃ」
生徒を安心させる事くらい我がロボット学校の教職員なら問題なくこなせる筈だと豪語されて、先生もその役目を必死に果たした。
「それでまだ帰ってきていない生徒もおりますが、卒業試験の方は…」
「続行じゃ、何があってもな」
少なからず卒業試験をこのまま続けても良いのかと言う話は修学旅行について知っている職員からは上がっていた。しかし、校長はそんな事はせんと一蹴してみせた。
「これはロボット学校の恒例行事、クラス関係なく行われるロボット生徒たちの適性試験…これを変えてしまえば彼らの成績にケチをつけられかねん」
「とは言え世界中が荒れてる事を知らずに行動させて万が一何か事件に巻き込まれでもしましたら…」
「今のわしらに出来ることは生徒達を信じることだけじゃよ…」
人間よりもはるかに丈夫で強いロボットたちだ。生徒と言えどそう簡単にスクラップにはなり得ない。
(それに既に手遅れじゃろう…)
修学旅行前に直通で届いた連絡を思い出し、煮え滾る心を何とか静めると、難儀な星の下に生まれた生徒を頭に浮かべ、見守る事に徹した。
「まだ日は高いのぉ」
日が落ちて、月が昇り、星が煌めく夜がこれほどまでに待ち遠しくなる日が来る事は予想出来なかった様で、バレないようにそっとため息を吐いていた。
「ごめんなさい!!保護対象を放っておくばかりか、タイムパトロールとしてあるまじき姿まで見せてしまって」
目の前でひたすら頭を下げているのは既に謝罪の前に自己紹介もされたのですがやはりリーム・ストリームで間違いない。
まぁ、余裕がたっぷりあるわけでもないので思う所はありますがこれ以上連続で責め立てられるのもなんですからね。
私としては貴方がこぼしていた保護対象と接触対象と言う二つの言葉の意味を聞ければそれで構いません。
「謝罪の後に言うのは憚られるのですが、機密によって話せない事もあります」
謝罪の際には焦りがまだ強く、素らしきものが垣間見えた話し方でしたが、何処か業務的な口調にかわりました。
ここで楽にして良いと言うのもおかしな話ですね。少し違和感を覚えるのはそもそも失礼な事でもありますし、このままいきましょう。
「それはもちろん話さないで頂きたい。これ以上の面倒事はこちらとしてもまっぴらですので」
冒険に心躍るかと聞かれればその気持ちが少しもないとは言えませんが、そればかりを望むには私のレベルが足りていないんですよ。
「もう耳にしたかも知れませんが、私はタイムパトロールの公安部に所属しています。そしてここに来たのは未来から過去への干渉に従っての事です」
何処までも狙ったかのようなタイミングで来ていた事から予測はしていましたが、やはり知っていてこの場に来ていたんですね。
未来からの情報で何もかも知っていたのであればこんな結果にはならないでしょうから、断片的な知らせておくべき欠片だけと見るべきですね。
そして、Dr.ブレンドの発言、この現場で出会う必要性、それらを加味したならばその先も否応なしに読めてしまいます。
「貴方はこれから先もDr.ブレンドと関わることになるでしょう。詳細は私も知らされていません。ですがより良い未来の為に協力をお願いしたいのです」
……人によっては未来の為に犠牲になって欲しいと捉えかねない様な話ですね。
歴史にとって、人類にとっての良い未来が協力者にとっての良い未来とは限らないでしょう。
私はこの世界に生きている。生きたいと思っている。だからこそ大衆の為の犠牲になると言った殊勝な考え方は出来ません。
それでも…Dr.ブレンド相手にも啖呵を切ってしまいましたからね。私にも守りたいものがあります。
「えぇ、私たちは広義に言えばお世話ロボット。社会への奉仕とあれば喜んで協力させて貰います」
そう言うと不安そうだった表情が一気に晴れやかな笑顔へと変わりました。
自分の行動のせいで未来が変わったら、それも大犯罪者に関わる重要人物相手でと考えたら気が気で無いでしょう。
「ありがとう、本当にありがとう」
「今日は知っているか分かりませんが卒業試験の最中なので時間はとれませんが、連絡を頂ければ協力に関する話をしましょう」
「えぇ!?卒業試験中だったの!?」
おっと、未来からの情報の中に入って無かったのか、私との接触まで指示されていると言うのに不思議ですね。
となるとこの件は卒業試験と関係性は無いのか、それともより良い未来に私の卒業は関係無いのか…まぁ、後者だとしても諦める気も無いですがね。
「ふふ、それくらい感情を出して頂いた方が話もしやすそうですね。次からは一般ロボットとか保護対象とか考えず普通に話してくれて構いませんので、今後ともよろしくお願いします」
こっちも楽な口調で良いとか返されそうですが、この口調は癖…ではありませんが今更恥ずかしくてとれませんね。
素となると流石にこんなになっちゃうからな。これはおれであって私だけど、ハイドラではないからな。
頭の中とはいえ口調を崩した話し方を考えるのもずいぶん久しぶりな気がする。ある意味癖って言っても間違いは無いのかもしれないな。
っと、そんな事を考えているといつの間にやら調査から離れていたのか私の背後に確かな気配が感じとれた。
Dr.ブレンドが帰ってくる訳はなく、振り向いて確認してみるとその場に立っていたのは科対からやってきた職員でした。
あの言い争いの時から目はたまに合っていたので此方も何か用があるのではないかと思っていました。その際に話し掛けてくる事はありませんでしたが…
「いや、政府組織のいざこざに一般ロボットを巻き込まないだけの分別はありますよ。ましてや相手が友人の恩ロボットですからねぇ、ハイドラ技師」
ひみつ道具職人の免許を持っている事を把握しているのは科学省関連の組織であればおかしくは無いでしょう。
名前が知られているのもその過程で調べられれば簡単に出てくるので気にしませんが、恩とはいったい…
「天気局へ行った大学時代の同期兼友人が居るんですよ。アイツからテロの件や貴方の事も聞いてたりしまして」
ボランティア先でのあの事件ですか、確かにあの規模の事件となれば設備の整備や現場の検証に科対が出てくるのは納得です。
そして、天気局へ行ったと言う言葉で思いつく人物はいますが、そんなところで繋がりがあるとは想像もつきませんでした。
「ナキチさんと同じ大学だったのですね」
あの堅くて真面目過ぎるくらいのナキチさんと目の前の人物が友人と言う繋がりがある事と世間の狭さの衝撃でやられそうです。
「未来大学って括りは一緒ですけど正確には彼が第三で私は第七になりますねぇ。サークルでの付き合いからで、いや、本当に前でいやんなる」
嫌になると言いながらも楽しそうに笑みを浮かべ続けているのがチグハグですが、なんとなく気持ちはわかりますね。
それにしてもナキチさんが第三の出身ですか…玉石混交、学生数最多のトラブルメイカー集まるあそことは、なんとも意外と思いますが、そう言えば素の話し方は少し荒めでしたね。
もしかしたら昔と今では少し違うのかもしれませんね。目の前の人と友人になるくらいですからね。
「こっちとしてもDr.ブレンドは要注意対象でして、これから先も詫びも兼ねてあっちのお嬢さんに協力するつもりだったりもしますので会うことはあると思います」
よろしくお願いしますと何処か面白そうに言ってくる姿は何処となく胡散臭さがありますが、本当に楽しんでいるだけでしょう。
「そういえばこっちは自己紹介してませんでしたね。すっかり忘れてましたが
話すだけ話すとそのままスーッと戻っていきました。特に問題は無いのですがやはり少し変わった人なのは確かですね。
それにしても超空間異常ですか…時空乱流しかり、何かとトラブルの原因になり得るものですから少し心配ですね。
「まぁ、考えても仕方ない事です。私たちも行くとしましょうか」
「ケラケラケラ!!」
卒業試験と言っても虫ロボットに乗ってるだけ、特に面白い物もなくてツマンない。
どうしようもなくただただメンドイ。同じ考えの友達と途中で移動すらサボっていた。
「ねぇ、そろそろ行かないとチョーヤバいんじゃない」
「なんかかったりぃ〜」
そもそも学校だって惰性で通い続けてるみたいなところもあるし、とは言え流石に落第はしたくないじゃん。
「んん、でも学校行かなきゃ落第しちゃうし〜」
まぁ、ここから見える海の景色だけは悪く無いんじゃないかなと思っていたら…
「か〜のじょ、学校なんて行かなくて良いじゃん」
「
「俺たちとお茶しようじゃん」
聞き慣れたナンパ文句が聴こえてきた。こんな時ってのは分からないけど、まぁどうでもいっか。
それに普段なら向こうの奢りなら適当に付きあってやっても良いかなって所だけど…
「そうしたいけど〜時間ないし〜」
そう言ってやんわりと断ろうとしたらいきなり向こうの不良ロボットの角で身体が持ち上げられた。
「何すんのよ?!」
「離しなさいよ!!」
暴れても全く振りほどけないし、ジタバタ悶えることしか出来ない。これってちょっとどころじゃなくヤバいんじゃ。
「はははは、良いじゃん、付き合うじゃん」
「イヤ!!」
楽しそうに笑いながら言ってくるのがとにかくムカつく。
「良いじゃぁん?」
「イ〜ヤ〜!!」
譲歩でもしてるつもりなのか優しげな声で語りかけてきてもキモチワルイ。
「良いじゃん?」
「イヤ!!」
断り続けてると少し語気が強くなった。何されるか分からない怖さもあるけど、ついてっても絶対にろくなことになんない。
「良いじゃん!!」
「イヤァ!!」
目を合わせようとしてくるけど負けじと睨み返しながら断る。
「良いじゃん!!」
「ガウ」
完全に向こうも睨んできてゾッとしたけど、私たち以外の声が聴こえた気がする
「「「ガウ?!」」」
言いなりになっちゃダメって思いだけで否定してた所で割り込んだ声にアイツラも後ろを振り向いた。
「ドラニコフ…」
そこには同じクラスの少し鈍臭いロボットがペアのヤゴロボットと一緒にいつの間にか立っていた。
「ガウガウ」
名前を呼んだ事に対する返事なんだろうけど、呑気に会話してる場合じゃないでしょ。
「ガウガウ言ってないで早く助けて〜!!」
「ガウガウ」
道中で馬鹿にしたのに都合が良すぎると思ったけどドラニコフは表情を変えずに頷いている。
「何言ってるんだお前やる気か?」
「ガウガウガウガウ、フガウ…」
ドラニコフが腕を振り回しながら不良ロボットたちに立ち向かうけど片足で簡単に砂浜に踏みつけられた。
「めっちゃ弱い…」
助けてくれようとしてるのはありがたいけど、これじゃ意味ないって…そんな事を考えてると顔を上げたドラニコフの顔が変わった。
「アォーン!!!!」
鋭い吠え声を浴びせられた不良ロボットたちは驚いて転びながら私たちの事を角から離した。そう言えばドラニコフは変身型のロボットで学校でも暴れた事があるのを思い出した。
「今のうちよ!!」
「え…うん…」
友達の言葉につい頷いて慌てながらアメンボロボットに飛び乗ってその場から離れていく。
「ドラニコフ…」
いや、私が残ってもなんも出来ない。どうにか助けを呼ばないと…とにかく急いで、お願い。
そんな学生の騒動の裏で、既に終わった騒動の後片付けを始めている大人と子供。
社会の一員として動いてる以上はリームも大人の仲間として取り扱うべきだろうが、まだ未成年に変わりない。
「それで調査は終わったの?」
「そう急かさないでくれません? 結構慎重にやらないと二次災害待ったナシなぐらいなんですよ」
態度を変えることなく、淡々と作業をしている事から緊張感は少ないが、この場は実は少し危険な状態である事が告げられる。
「そんなにひどい状態ならもう少し焦って欲しいんだけど」
「応援を呼ぶのと帰るのはちゃんと止めたでしょう?」
こんな荒れに荒れた超空間で『タイムボート』や『タイムマリン』を運用すれば間違いなくバラバラになるとショウトは言う。
怒りのままにその場から帰ろうとしていたら自身がどうなってたか分からないと言われて少し血の気が引くリーム。
しかし、たらればを考え続けても仕方ないと次に湧いた疑問を投げかける事にした。
「それは元に戻るのよね」
「歴史の修正力は救助課だったなら知ってるでしょ。時間と同じで空間もそして混ざり合った超空間も元に戻る力が働きますので
「遠回りな言い回ししか出来ないの。段々と分かってきたけどそれじゃ他の所で起きる問題ってなんなの」
会って間もなく、関わりだってここ数時間に起きた言い争いぐらいなものだけど、年齢差を気にせず話せるだけの空気が出来ていた。
そしてリームは目の前の男の独特な話し方に一々腹を立てても無駄と落ち着いて聞きたい事を絞って会話する術を身につけた。
「超空間の戻る力と言うのはとても強い。普通の空間とは大きさが違うので当然ですけどね。そのエネルギーが漏れ出ない様に此方と向こうの間を先に直してやらないと…あ…マズイですね…くっ?!」
「えっ、ちょっと、何が…きゃあ?!」
空間が歪んだかと思うとピュンと光が周囲に溢れて広がり、その中から一筋だけが雷の様な姿だが、普通の雷とは違い少し上へと飛んでいってしまった。
「あれだけで済んで良かったと思っておく所ですね。今回ばかりは中々に肝を冷やせたかと」
「ビックリした…いったい何だったの…?」
「一瞬ですがエネルギーが漏れ出てしまったんですよ。超空間振動によって起こった疑似雷です。あれはひみつ道具やロボットの誤作動を引き起こす事もあるので危険なんです」
空間が歪んだ瞬間は流石に声を上げていたが既に元の調子に戻った男は作業を再会させながら説明を終える。
「飛んでいったあれは対処しなくて良いの?」
「光速で動けるなら追い掛けても良いと思いますよ。自分は遠慮させて頂きますけど」
当然の疑問ではあるが、その返答も当然のもので人間は光速で飛んでいったものには追いつけやしないのだ。
「私もできないわよ。そんな事、そうじゃなくて被害とか出ないのアレで」
「幸いにも少し上方へ飛んで行きましたから余程運が悪く無い限り、何かに当たる事は無いでしょう」
「当たったら被害が出るってことね」
無論、当たる様なら当たったものの対処は科対の仕事になるのだが、事が起きてからどうにかするしか無い以上は残業が増えない事を祈りながらただ作業を続けるショウトだった。
「うへぇ〜」
「やったであ~る」
「なんとか間に合ったみたいだぜ」
ドラニコフを除いたドラえもんズの面々は苦戦しながらもなんとかロボット学校に辿り着き、虫ロボットと共に休んでいる所だった。
「大変よ〜!!」
「んぇあ?」
そんな所にアメンボロボットの跳ねる音と共に明らかに焦りを帯びた声が届いた。
「ドラニコフが〜!!」
声の方向を向くとさらに続けてこの場にいない彼らの親友の最後の一人の名前が飛び出した。
「どうしたの?」
「ドラニコフとヤゴロボットが不良ロボに絡まれて!!」
ただ事ではない予感はしながらもドラえもんが何が起きたのか冷静に訊ねるととんでもない情報が伝えられた。
「なにぃ?!」
「「「「「「よぉし!!」」」」」」
全員が覚悟を決めるのは同時に事であり、自然と被った声に、今度は互いに分かった上で目を合わせる。
「日暮れまでに戻れる保証はありませんよ」
「不滅の友情に迷いなんかねぇぜ」
「友達を見捨てるくらいなら落第した方がマシであ~る」
「助けて貰った借りを返す時がきたぜ」
「ゴールする時はみんないっしょだよ」
「うん、ドラニコフを助けに行くぞ〜!!」
「「「「「「我らドラえもんズ」」」」」」
仲間のピンチを前にして悩むなんて無駄な時間は彼らには無かった。
疲れていた筈の虫ロボット達も彼らに力を貸さんと全力で地を駆け、空を翔けていった。
「ドラえもんズ」
少女ロボットは不安そうな顔を浮かべて送り出す事しか出来なかった。ただただドラニコフが助けられる事を祈りながら。
「急ぎましょう。大丈夫だと信じていますが、イヤな胸騒ぎがします」
「ケラ!!」
ドラえもんズがロボット学校を飛び出したのとほぼ同じ頃、もう一人もドラニコフの元を目指して歩みを進めていた。
「ははははは」
先ほどの戦っていた砂浜から少し離れた位置に柱状の岩場乱立している場所にドラニコフは縛られて吊らされていた。
クラスメイトを守らんとして挑んだ彼の奮闘すら嘲笑うかの様に眺めている彼らの足元に銃弾が着弾する。
「危ないじゃん?!」
「ドラニコフを離せ!!」
それはキッドが友達なったハチロボットの針の所に備えられている機関銃からの攻撃だった。
「「「飛ぶじゃん!!」」」
続けて放たれる銃弾を躱すように羽根を広げて飛んでくる虫ロボットを迎え撃とうとする。
「俺たちの恐ろしさを教えてやるじゃん」
「教えてもらおうじゃん!!どうだ、どうだ!!」
あくまで銃弾は牽制と挑発とでも言うかのように向かってくる不良ロボットを相手に今度はエル・マタドーラが最強パワーと評するカブトムシロボットの角による突撃が突き刺さる。
「うわぁ〜?!」
三匹同時に襲いかかったが最強の響きに違わぬパワーで強引に吹き飛ばすと、その先に待ち受けているのは脚力がずば抜けたバッタロボットと王ドラの姿。
「ホァチョ!!ホァチョ!!アチョー!!」
タイミングよく振り上げられた自慢の脚力から繰り出された蹴りによってさらに飛ばされる。
「せーの、シュート!!」
纏められた三匹にトドメを決めるのはエースストライカーであるドラリーニョと重厚なダンゴムシロボット。
「「「ターガーメー?!」」」
真っ直ぐに飛んでいったそのシュートは直撃しなくとも彼らを空に彼方へ吹き飛ばすには十分な威力があった。
「なんでぇ、めっちゃ弱いじゃん」
「ちょっとやりすぎたかな?」
「ドラニコフたちも無事であ~る」
「ワゥ…ワウ?!」
縛られていたドラニコフとヤゴロボットをドラえもんとドラメッド三世が救出するも、ドラニコフがふとみた光景に驚きの声を上げる。
「あぁ、夕日が沈んでいく」
「こりゃダメだ…間に合わねぇ」
「私たちそろって落第ですか」
「しかたねぇな」
始めからこうなる事は覚悟してこの場にきたが、いざ海面へと落ちていく太陽を眺めると少なからずやるせない気持ちが沸いてくる。
「ワウワゥアウアゥワウ!!」
皆が諦めの言葉を口にする中で別の事にも気付いたらドラニコフが必死に声を上げる。
「えぇ?!そろそろヤゴロボットが成長するって?」
「ワゥ!!」
初めに戦い始めた頃から一切の動きを止めていたヤゴロボットの変化を感じ取っていたドラニコフの言葉の通り、3…2…1と瞳に数字が浮かぶ。
最後に0を告げた瞬間に光り輝き、ヤゴロボットの背中が割れて、その身を組み替えながら空へと飛び上がった。
「ヤンマー!!」
「ヤゴロボットが成虫に!!」
「トンボロボットになった!!」
「スピード速そう!!」
「ワゥ!!」
これならば間に合うかもしれない。そんな期待を持って全員がトンボロボットへ乗り込んだ。
ハイドラは落ちていく夕日もよそにドラえもん達の活躍を少し、いやけっこう遠くから眺めていた。
「問題が無かったなら良かったです」
「ケラケラ!!」
ひみつ道具の使用は禁止されているが未来世界で扱われている『普通の望遠鏡』は使っても問題はなく、彼らはオケラロボットの速度でもギリギリ間に合う位置から覗いていた。
「さて、少し急ぎ足でお願いします」
「ケラケラ…ケラ?!」
「なんですか…ってアレはいったい?!」
自身が落第してはマズイとヤゴロボットの成長までは見守らずその場を発とうしたが遥か遠くから光が飛んでくるのが見えた。
それは見覚えがあるもので、いずれロボット学校を混乱に導く原因となるものやドラえもんに落ちた雷に酷似していた。
そしてその光より前に彼らが確認していたものと進行方向が交差しようとしている。
「なんて運の悪い連中なんですか?! このままじゃ光とタガメロボット達がぶつかります!!」
そう思った次の瞬間には光はタガメロボット達と衝突し、空中で光を飽和させながら静止し始めた。
そしてハイドラはその時には考察すら不可能であったが溢れたエネルギーが一点に留まった事で再度空間が捻れて、タガメロボットのうち、二匹が超空間へと消えていった。
そして残った取り巻きだったタガメロボットの中で一番背が低い一匹は怪しげな色へと変異した光を身に纏いガタガタと動き始めた。
「タァガァメー!!!!」
戦いは…修学旅行は…延長戦を迎えた。
「「「「「「速過ぎる〜!?」」」」」」
ドラえもんズはトンボロボットの背に、そして彼らの相棒である虫ロボットはトンボロボットの手の中に入って出発したのは良いが、その速さは想像以上だった。
全身で受ける風圧は目も開けられない程であるがなんとか飛ばされないようにしがみついていた。
このまま学校へたどり着ければ…速さに翻弄されながらも声や表情には喜びが見えていた。そんな中で聴こえる筈が無い声が彼らに追い付いた。
「タァガァメー!!!!」
その声には何処か聞き覚えがあった。ついさっき戦った相手である為に当たり前であるが何処か違和感も感じていた。
「あの声はさっきのタガメロボット?!」
「少し声が違う気もしますが…」
「おいおい、嘘だろ?!」
「トンボロボットに追い付けんのかよ!?」
「さすがにこのまま戦えないであ~る」
「ねぇねぇ〜もう一つ聴こえるよ〜」
「待ちなさい!!
皆に手は出させません!!」
「「「「「「ハイドラ!!」」」」」」
「ワゥ!!」
タガメロボットに振り払われないようにしがみつくオケラロボットとその背にはよく見知った友達の姿が見えた。
「オケラロボットさん、内部へ直接!!」
「ケラ!!」
オケラロボットは羽根を揺らすと音波をタガメロボットの内部へと響かせる。すると流石に堪えたのかタガメロボットは失速し、下へと落ち始める。無論、ハイドラとオケラロボットを伴って。
「おい!?ハイドラ!!」
先ほどまで不思議とくっきり見えていた筈のその姿が一瞬の内に離れていく。
戻るべきかとも、友達を見捨ててなるかとも、ドラニコフの時と同じく、今度こそ絶対に間に合わなくなってもと上がる声もあったが…
「馬鹿野郎!!絶対に助けるのも友達だが、その覚悟を踏み躙るのは友達じゃねぇ!!」
男気に溢れたキッドの一喝、そして自分たちの卒業を望む声を届けたハイドラの姿に迷いを残しつつもドラえもんズはそのままロボット学校を目指した。
「大丈夫だ!!アイツならあんなヤツ一瞬で片付けてロボット学校にも来るさ!!」
「キッド…うん、そうだね…って、もうロボット学校が見えてる!?ストップ、ストップ!?」
速度が…いや
タガメロボットが謎のエネルギーを纏っているとは言えトンボロボットに追い付くのはおかしい事です。
それにしがみついてから明らかにタガメロボットから一定の範囲の空間が、いや範囲内の
予想ですが暴走している中で無意識ながらも一度やられた相手に仕返しをしようと追い掛け始めたのでしょう。
そしてトンボロボットに追い付く為に足りないスピードを自身と周囲の時間を歪める事で補った。
それこそ【T・Pぼん】に出てくる『タイムコントローラー』の『コマ落とし』の様な効果を発揮しているのでしょう。
幸いな事に暴走のせいか、エネルギーの制御が完璧でないからか、大雑把にしか効果を発揮出来ない様で、目にも留まらぬ速度でヤラれる心配は無さそうです。
とりあえず落下の衝撃でタガメロボットが動けてない内に辺りを確認しておきましょう。
落ちた場所は山間部、不安定な足場や木々の間も猫型の身体能力を持ってすれば他愛もないでしょう。
「木々が邪魔をするので直接飛び掛かられたりは無さそうですが、無視して飛び立たれないように立ち回る必要はありますね」
「ケラ!!」
もしもの時は同じく飛ぶことが出来るオケラロボットさんに頼む必要がありますね。
幾ら私が山の中で最低限動けるとしても自然の中での活動が基本の虫型ロボットと比べると少しばかりアウェーではあります。
それでも私は卒業試験を諦めるつもりは全くありません。それはひみつ道具を使えないと言う事に他なりませんが、だとしてもこの選択を後悔なんてしません。
さて、落ち着いてこの身に出来ることを思い出しましょう。この猫型ロボットの身体は殆どの性能が129.3と言う数字で纏められています。
身長、体重、胸囲、ジャンプ力、パワー、走力、唯一座高のみは100きっかりになっていますが、それ以外は全て129.3です。
身体の大きさは置いておいて、ジャンプ力129.3cm、パワー129.3馬力、走力129.3km/h、単純な身体能力がこうなっています。
人間同等の思考回路と目の赤外線アイはあまり関係無いですね。
耳は高感度測定イヤーと強力鼻(人間の20倍)も微妙ですね。
ヒゲのレーダーと手のペタリハンド、足の反重力機構は役に立つでしょうか。
「起き上がりましたね。とりあえず出方をうかがいましょう」
向こうが直ぐにドラえもん達を追おうとするか、それとも邪魔をする私達の排除にかかるかでやり方は変わります。
相手のロボットは私たちと比べて明らかに背も高く、ガタイが良いと言えるでしょう。
普通の人型と違ってあるのは虫型特有の飛行能力、超パワー、そしてあの角の様な前足…の筈ですが本来のタガメと違って彼らの場合は角と呼んで問題無さそうですね。
タガメは水辺の王者とも呼ばれる強い虫です。そこに謎のエネルギーも関わってきたら厄介ですが、制御が効かないままな事を祈りましょう。
「真っ直ぐこっちに突っ込んできますか…速度はやはり速いですね…」
直線的だがその速度は明らかに覗き見していた時よりも強化されているみたいです。
繰り返し突っ込んで来ますが木から木へと足場を変えながらひらり躱していきます。
こうしてみるとフェイントも何も無く、回避予測も立てて無さそうな所をみるにまともな思考能力が発揮されて無いのは正直に言ってラッキーですね。
直感で避けられたり、強化された動きで見てから避けられる可能性もありますが基本的に此方の作戦が読まれる心配はありませんからね。
後は彼が何用のロボットなのかが分かればより対策も取りやすいんですがね。
三匹とも見た目が揃えられていて、言動はさておき見た目はかなり好まれそうな容姿でしたね。
そういった目的のロボットは倫理プログラムがより厳重だと聞くのでありえないでしょう。
今どきは性能よりも見た目を重視する人も多いですからそういった点で絞り込むのは難しいですね。
ロボットと言えど再現性が高いこの未来ならば取れる手段はタガメの弱点を利用していきましょう。
「とりあえずこっちを優先してくれるのであれば此方も取れる手が増えます」
オケラロボットさんを逃走防止として配置しなくても良さそうなのは幸いです。
音響兵器の効果があるのは墜落させた事からも分かりますが、それでも立ち上がってる事から少々威力不足。
何度も当ててる暇なんてありません。時間をかけずに倒すにはより強い一撃を確実に当てなければなりません。
「オケラロボットさんは準備を…私は消耗させてから誘導を図ります」
「ケラ……ケラ!!」
不安そうな表情を浮かべていましたが私が大丈夫と促すと離れて相手から見えない位置へと行きました。
「さて、しばらく鬼ごっこと行きましょう」
突進を繰り返す、意思なきタガメロボット…体躯で負けていますが本来、虫は猫の玩具でおやつ…負けてなんてられませんよ。
強化された速度で迫り続けるロボットの脅威は考えるまでもない。環境有利も相まって猫が虫に傷付けられてるのが見える。
『あれはエネルギーとしてはどうなんですか?』
それを見て共犯者が考えを口にする。虫型ロボットが纏っているアレを利用出来るのなら、かなり効率的なエネルギーと言えるのは確かだ。しかし…
『超空間どころか次元ごと揺るがしかねない
意識を飛ばして暴れている虫型ロボットがその証拠だなんて事は言わない。
どんな物もいずれ扱い方なんて判明する。
『やはり世界に関するモノは手を出すにはリスキーですか…』
エネルギーを取り出そうとする段階で次元毎崩壊なんてしたら過去も未来も関係ない。全てが無に還ったら良い方でしょう。
『あんなもの扱おうと思ったらそれこそ
超空間規模とは言え、アレを生身で扱ったDr.ブレンドねぇ…畑が違うからあんまり気にしてなかったけど、注意くらいしておくべきかもしれない。
まぁ、
謎の高エネルギー反応を追って来ただけの割には悪く無いものが見れた。アレは入りませんし帰るとしましょう。
『あの時の猫型ロボット仲間さん、すっかりやられてますけど大丈夫ですかね?』
あぁ、あれなら問題無いでしょう。全て
『それに向こうがもう持ちませんよ』
さて、色々と考えるべき事が増えました。向こうが時間犯罪者なのを考えると
なにせ私たちが必要とし、注目しているエネルギーがあるのは
『貴方ともまた会うかもしれませんね。ハイドラ』
そう残すと情報と言う名の収穫だけを手にしてその場からスッと消えていった。
ギリギリで攻撃を避け続け、少なからず木々に引っ掛けて小さい傷がボディに作られてしまいましたが、そろそろ塩時でしょう。
「タ…タガ…メ…」
「タガメは食べる量が多い虫、詳細は分かりませんがおそらく高所作業用の貴方達はエネルギーをかなり喰っている様ですね」
角と言う手を空けて作業する為の機構、そして十分な飛行能力を搭載した翅、そして力の強さを考えれば、おそらく合っている事でしょう。
そして作業用のロボット等は重機型と比べたらマシですがそれなりにエネルギーを使ってしまいます。
補給も、考えも無しで動き続けたりしたらパフォーマンスが落ちていくのは自明の理です。
初めの頃よりも襲いかかってくるスピードが落ちてきていますし、謎のエネルギー自体も弱まってる可能性がありますかね。
この状態なら私の足でも狙った場所に誘導する事が出来るでしょう。念の為にと考えた奥の手だってあります。
「タァガァメー!!!!」
細かく繰り返していた立体的な動きを止めて相棒の
火事場の馬鹿力でしょうか、確かにこのまま走り続けるのであれば私は追い付かれて溶かされてしまうかもしれませんが…
「奥の手です…『普通のライト』!!」
ポケットから取り出したのは何処にでも売っている『普通のライト』、まぁこれも未来仕様でコンパクトな割に強力です。
「タガメは水辺ではほぼ最強、成虫の天敵と言えるのは外来種と人間の文明くらいです」
食物連鎖を壊す外来種はさておき、人間の作った文明の農薬と照明が彼らの数を減らしました。
外来種も含めて人間の手によって絶滅危惧種になったと言って過言ではない存在です。
その中で利用できそうだったのは照明、そうタガメの持っている強い走光性の方です。
「タァガァメー!!!!」
光の方へと進んでしまう為に水辺に帰れず、そのまま干からびたり、子孫を残せず数を減らしたタガメ…
「ロボットとしての理性がない状態では予想通り強い光に惑わされてくれましたね…後はトドメをお願いします」
後は地中にて待機していたオケラロボットさんがそのまま地下の部屋で反響させた音の一撃を叩き込んだらおしまいです。
見えない奇襲を確実に食らわせる為、そして有効な威力を確保する為にはこの作戦が一番でした。
「ありがとうございました」
「ケラケラ!!」
囮であり、時間稼ぎ役の私の方が危険度が高い様に感じるかもしれませんがそれ以上に素早く仕事をしてくれたオケラロボットさんの方がお疲れでしょう。
山の中を気付かれないように掘り返し、音響兵器の強化を狙った巣を超特急で作って貰うのは流石に無茶振りだと思いましたが、どうにかやってくれて感謝しかありません。
色々と今日だけで普段は使わない機構を動かしていることでしょうし、全て終わったら整備などをして上げる必要がありそうですね。まぁ、それはずっと後になりそうですが…
「流石に疲れましたね」
タガメロボットほどエネルギー効率は悪く無い筈ですが、それ以上の稼働内容と稼働時間ですからね。卒業試験の事もあり、少々ボロボロです。
未だに消えない謎のエネルギーの領域の中でなら少し膝をついても構わないでしょう。
ハイドラに送り出されたドラえもん達は慌ててトンボロボットへの静止を頼み、ドラニコフが遠吠えで指示を届かせる。
「「「「「「うわぁ!?」」」」」」
「あっ!!」
静止の勢いで背中から振り落とされたドラえもんズ達が夕日と同じく空から落ち始める。
「「「「「「うわぁ〜!!」」」」」」
夕日が落ちきるかどうかスレスレのタイミング、既に残す所少しと言う所だ。
「「「「「「うわぁ〜〜!!」」」」」」
地面に近付くにつれて響いてくる彼らの声も大きくなっていく、もう少しで地面に着く、そんな時に既に海は暗く、カモメが鳴いている。
「「「「「「「うわっ!?」」」」」」」
「…へっ?」
七人は同時に地面を揺らしながらも潜っていく、落ちていくのを眺めていたモモは女の子らしくない声をあげて呆けていた。
そして七人が地面を揺らした音とは少しズレてもう一つの衝突音が近くから聴こえた。
音のした方向ではオケラロボットと灰色の猫型ロボットが折れた木の下敷きになっている。そちらも気になりはするが、モモは穴へ声をかける。
「ドラニコフ!!」
「ア…アゥ…アウ!」
その声に応えようと穴から這い出て来るがその顔は地面に叩きつけられた衝撃でぺちゃんこなっており、ヒゲを引っ張ってなんとか元に戻した。
「おい、大丈夫かハイドラ!!」
「はぁ、ドラニコフと違ってゴツい出迎えですね。ありがとうございますジャイベエ」
そんな微笑ましいお出迎えの傍らで木の下敷きになっていたハイドラとオケラロボットは音を聞きつけたジャイベエによって救出されていた。
ハイドラがこの場に間に合ったのにはもちろん理由があり、かなりの無茶をしたのは現状からよく分かるだろう。
「ふぅ…流石にもう間に合わないでしょうね」
ようやく一息つけましたが、流石にここからロボット学校までは遠すぎます。
今はまだタガメロボットに残っている謎のエネルギーで周辺の時が非常にゆっくり流れていますがそれが消えてしまえば即座に夜になってしまうでしょう。
そもそも日没ギリギリに辿り着いたとしても私にまで校長が手を差し伸べてくれるかどうかからして賭けでしたからね。
「ケラケラ」
「オケラロボットさん、本当にありがとうございました。貴方がいなければタガメロボットを倒す事は叶いませんでした。良ければまた来年も力を貸して頂けると助かります」
「ケラ……」
卒業試験が落第となれば留年は間違いなしでしょうからね。そうなればまた来年も此処に来るでしょう。
もしかしたら私だけ別になる可能性もありますが、此処に来れたなら嬉しいですね。
「ん、オケラロボットさん…何をしているんですか?」
「ケラ、ケラケラ!!」
オケラロボットさんが倒したタガメロボットの近くへ向かったかと思うと残っていたエネルギーをおそらく吸収し始めた。
「やめなさい!?雑食性とされる貴方でもそんなものを取り込むのは危険です!!」
取り込んだ分だけ大きくなっていくオケラロボットさん、そうしてタガメロボットからエネルギーが消え失せた頃には一回り以上大きくなりました。
「大丈夫…なんですか?」
「ケラ!!」
そう言えばオケラを特別な虫として崇める風習がありましたっけ、食べた分だけ育ち、罪のない者を助ける遣いとして。
「ふふ、本当に私を助けてくれますか?」
「ケラ!!」
そうなれば迷ってるのも勿体ないですね。慌て気味にオケラロボットさんの背中にしがみつくと、時の歪みの中で彼は力強く跳躍と飛翔を開始した。
時の流れから可能な限り乖離したまま進み続け、夕日が沈み始めてからのたった数秒を永遠に引き伸ばす。
物理法則を無視して加速している状態に我々はトンボロボットすらも凌ぐ速度で加速しています。
周りの景色が僅かにブレています…おそらく外部が遅延しているのも関係してますが光速に達しようとしています。
これ以上は不味いと呼び掛けようとしましたが、エネルギーが何処か不安定な様子を見せます。暴走の兆候は見えません…となるとエネルギーが尽きようとしている…!?
速度を下げれば残り時間でロボット学校に届くか分からなくなります。ですが、速度を維持すると私も彼も危険にさらされます。
はは、分が悪い賭けなんてするような性格じゃなかったんですが、こんなにも張り切っている相棒に頼らない手はありませんね。
「…行けますか!!」
「ケェラァア!!」
チカチカとした視界、その境界が崩れ始める。それでもこの先に確かにゴールがあるのなら信じて突っ込むだけです。
境界が消え去り、加速状態を維持したまま元の物理法則へと戻り、私たちは光速に到達し、それを越えることなく、段々と世界がバランスを保つかのように速度が強制的に落ちていく。
辻褄合わせの保護がおそらく私達にも適応されている予想よりも損耗が少ない。それでも掛かる負荷は果てしない。
少しだけ当たりの光景が見えるようになった。既にここはロボット学校の周囲の水辺でした。そろそろ音速すら下回りました。
少しすると目の前には見慣れた校舎が現れました。夕日は海面へと落ちようとしている。
意図的にブレーキは掛けれない。少しでも戸惑えば間に合わない。そのまま、速度のまま門を突き抜けて、突っ込む。
校内に生えている木々に思い切り打ちつける衝撃が電子頭脳に痛みを知らせる。
それでも止まれず、最後に回りより一回り大きい木にそのまま衝突してようやく身体が停止します。
そして全身がボロボロで身動きが取れない中で最後に突っ込んだ木が中ほどから折れて倒れかかってきた。
「流石に光速を出すのは無茶が過ぎましたね…」
「ケラケラ…」
互いに意識ははっきりしています。いっそのこと気絶出来たほうがマシかも知れませんが、ロボットにも防御機構はありますからアドレナリンに近いものが稼働を補助します。
「凄い音がしたかと思ったら何やってんだよハイドラ。ジャイベエ、こっちでハイドラが下敷きなってるぞ〜!!」
スネキチが音を聞きつけて駆け込み、この惨状を見かねて助けを呼んでくれました。
どうやらドラえもん達とほぼ同じタイミングで帰ってこれたみたいですね。
「おい、大丈夫かハイドラ!!」
「はぁ、ドラニコフと違ってゴツい出迎えですね。ありがとうございますジャイベエ」
向こうとの違いとお礼の言葉を呟いているとコツコツと足音を立てながらよく知った人物が近付いてきました。
「おや〜、日が暮れるまでに帰って来れなければ落第!!」
本当に人をからかう時のこの人はイヤな笑みを浮かべてくれますね。校長先生の悪癖であり、優しさ故でしょうがね。
「「「「「「「ら・く・だ・い!?」」」」」」」
全員が渋い顔で改めて突きつけられた現実に打ちのめされていますね。私はその近くへ行き、神妙な顔で成り行きを見守ります。
「ドラニコフ達は私達を助けるために仕方なく…だからお願いします落第だけは!!」
「規則は規則じゃ」
モモさんがドラニコフ達の落第について擁護してくれていますが、規則は変えられないと校長先生は突っぱねる。
本当にこう言った演技は上手いんですよね。普段のお茶目さと厳格な姿と何方も上手く使い分けてるからこそでしょう。
「校長先生!!」
「じゃからして…」
何か含みのある言い方をしたかと思うと首元に付けていたリボンを解いて広げる。
「あ、キュキュキュッア、キュキュキュッア、キュキュキュットの」
「「「「「「「ピカ〜ン」」」」」」」
そのリボンの布を上へ持っていき、皮膚に当てたかと思うと左右に磨くように動かしてその頭を輝かせました。
「おやぁ〜こぉんなに明るいという事はまだ日が暮れとらんということじゃなぁ…なので君たちは全員合格じゃ!!」
「「「「「「「ご・う・か・く!? 」」」」」」」
「「「「「「「ヤッター!!」」」」」」」
その声と共に虫ロボットがトンボロボットから飛び降り、先に着いていたクラスメイトも集合して胴上げと共に喜びを分かち合います。
この後でそれぞれ思い思いに過ごしながら卒業試験の思い出を振り返ったり、疲れを吹き飛ばす様に騒ぐのでしょう。その前に…
「校長先生…私まで良かったのですか?」
不良に絡まれていたドラニコフ、そして一度到着したのに助けに向かったドラえもんズ達は多目に見るのも分かりますが、私は正直微妙な所でしょう。
不安はありませんが、本当に良いのか確かめるように訊ねるもこの人は何も変わらなかったを
「ん~…なんの事じゃ? 君はキチンと日が暮れる前にここに辿り着いたじゃろう? ほれ君も行って来なさい」
そんな風にとぼけて笑うと私をみんなが集まっている輪へと押し出した。
「ほら、ハイドラも!!」
「楽しもうぜ!!」
まったく、校長にも彼らにも敵う気はしませんね。そうですね心機一転、羽目を外すには良い機会ですね。
「あぁ、今行く!!」
登場したひみつ道具?
『普通の望遠鏡』
未来の世界で一般販売されている望遠鏡。倍率は可変式で何処までもくっきり映し、ピント調整や対象のマーク等の補助機能が搭載されている。普通のと付くが未来において普通なだけで現代からしたら特殊な品。
『普通のライト』
未来の世界で一般販売されているライト。光量の調整が可能で強くしても人体に被害のでない安全設計。普通のと付くが未来において普通なだけで現代からしたら特殊な品。
『タイムマリン』
タイムパトロールが乗り込んでいる潜水艦型タイムマシン。別名「タイムスキッパー」。原作版での名称は不明で、上記の名称は『決定版ドラえもん大事典』、『映画ドラえもん のび太の恐竜2006 公式ファンブック』、『映画ドラえもん超全集 ドラえもん50周年特別企画本』等の書籍で設定されたもの。
通常の時空間移動だけでなく、現地調査の際にはマンモス等の大型動物に擬態して現実空間を移動したり、地中に潜ることも可能。参考として『映画アニメドラえもん』では、翼の部分に「原子力エンジン」、円柱型の足に「タキオンエンジン」が搭載されており、それだけでなく、時空間内で捜索を行う際に使用する「タイムソーナー」、時空間内に存在する対象を狙撃する「TPミサイル」も搭載されていると解説されている。
【T・Pぼん】より
『タイムボート』
【T・Pぼん】において使用される個人用のタイムマシン。外見はスノーモービルに似た流線型の機体の後部に大きなトランクが付属しており、オートバイのように直接またがって運転する。操縦はレバーを握ることでコンピューターが脳の電流を読み取り、自動的に調整を行う。
『タイムコントローラー』
正隊員にのみ支給されるステッキ型タイムマシン。本人や世界の時間の流れを変えることができる。要するにジョジョのラスボス。周囲の時間を遅くさせる「スローモーション」、逆に加速させる「コマ落とし」、一時停止させる「タイムロック」、時間を逆転させる「巻き戻し」などの操作を行うことができる。
登場したキャラについて
・ナキチ
はちゃめちゃボランティアで大忙し?!にて登場した天気局の職員。
Dr.ブレンドの台風テロの際に規約ギリギリな行動ではあったが解決へ導いた現場での功績が認められて昇進している。
現場主義の集まる天気局内では事件解決に関わったことで英雄的な存在として評判が良く、局内では気が早いが時期トップとも噂されている。
なお本人は自身の器と合ってないと周りからの扱いや増えた仕事も含めてストレスで胃痛気味。
第三未来大学時代から外れくじを引くタイプではあったが巻き込まれた事に負けじと喰らいついて突破するタイプだった。
社会へ出る事を考えるにつれて段々と消極的になっていったがエリートよりかは現場が良いと公務員の中でも現場主義と称される天気局を目指していた。
ボランティア時には少なからず鈍った身体と得意とする道具が無いために護衛対象だったがとあるひみつ道具を使用すると実はそれなりに戦える。
・ショウト
今回が初登場となった科学事案対策局の職員。
第七未来大学の出身であり、科学に対して深い造詣を持ち、特にひみつ道具に関しての知識量は凄まじい。
面白い物を見るために科学事案対策局へ就職を果たしているが、ひみつ道具職人の免許を持っており、自身で開発した作品も存在する。
技量は確かであるが独断専行が目立つ為に出世コースなどからは外れている。それでも科対に席があるのは確かな優秀さの証拠である。
運動音痴でも体力がない訳でもないが、戦闘は意欲がわかないために得意としていない。どうしても動きが鈍り、やろうとしても後手に回りがちになる。
それ故に仲間のサポートで全体の有利をとったり、事前準備などで場を整えて最初から詰みに持っていく事を得意としている
また3ヶ月近く空けてしまいました。
皆さん覚えておいででしょうか?
大変お待たせいたしました。
そして、これにてムシムシぴょんぴょん編の終了でございます。いやぁ、ムシムシぴょんぴょんの1話を投稿してから5ヶ月とちょっとの時間が掛かっております。
元ネタがある割りには時間をかけすぎなのと、ほぼほぼ原型がなくなってる事は気にしない気にしない。
そして普通のと付ければ何を持ってても良いと言う考え方は良くないですね。自分で使っておいてなんですが…
でも個人的には無限に物を持てるなら色々と使いやすい道具とか雑貨とかも持ち歩いててもおかしくないと思うんですよね。
むしろなんでドラえもんは普通の基準が過去の物なんでしょうかね。映画で普通のヤカンとか出しますけど、ひみつ道具じゃない未来の物って持ってないのかな?
そして名前だけですが皆さんからしたらまさかの再登場のナキチさん…名前が付いてるって事はそれだけの理由があると言う事でした。
(ナキチさんの場合は本当にそうだけど、話を進める上で付ける人もいるので一概に名前付き=今後も出るにはなりませんがね)
そしてチラッと顔を出してきたパンドラ&ジャムだったり、まぁ仲直りと言うには色々と微妙ですが関わることになる政府組織だったり、情報多めでしたね。
これで後はドラえもんもハイドラも卒業オーディションへと進める訳ですが、間になんか挟もうかな。
正直、敵キャラ達は情報隠し過ぎな気もするしなぁ。何かしら判明する要素があっても良いとは思う。上手く表現出来るかはさておいて…
でもDr.ブレンドは宿敵だし流石に引っ張りたい…パンドラは幾つかの映画と絡めてからのが良いと言う理由があるからなぁ。
いっそのこと、ナキチさん達の方で閑話書くのもワンチャンあり?(←錯乱中)
このままだと何も判明しないままどんどん新しい敵キャラが増える事になりかねないのが怖いんですよね。
ちょっと決めかねてるので、そのまま卒業オーディション行くか、閑話挟むかは未定と言う事にしときます。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。