前編と後編で終わる予定でした……予定というのはいつも何処かへ飛んでいくものです。
少しお試しで誰が話しているか分かりやすくなるかな?と会話の「 」の前に名前の一文字を入れてみました。今回は人数が多い所でやってます。お試しなので評判次第で続行か戻すかを決めます。
ドラえもん →え
王ドラ →王
ドラリーニョ →リ
エル・マタドーラ →エ
ドラ・ザ・キッド →キ
ドラニコフ →ニ
ドラメッド三世 →メ
初めの文字を取ると7人中5人が『ド』になってしまうのでこんな感じになってます。エル・マタドーラは『マ』にしようかと悩んだけどひらがなとカタカナだ違うから良いかな?って事で先頭の『エ』になりました。
無限に広がる海の上を彷徨うことになった6人。幸いな事に波も海流も無いのでじっとしていれば位置がズレることはない。
だが出入り口が消えて目印がない状態で待ち続けているというのはどうしても不安が募る。それ故に言い争いが絶えずにいたが、無駄に体力を消費するだけと学習し、今では喧嘩はおさまっていた。
え「試してみたけど『地平線テープ』と同じで『どこでもドア』も他の移動系の道具も使えなさそう」
キ「やっぱ助けを待つしかないな」
待つにしてもどれくらいかかるか分からないので各自で遊びに使ってた船等の設備をそれぞれ確認する。
王「食べ物は『絶対安全救命いかだ』からお弁当が取れます。水も真水なので煮沸さえすれば問題なく飲めますね」
キ「『救命イカダ』のテントで休めるか……『探検ごっこ用蒸気船』や『ほどほど海賊船』にも部屋はある。やろうと思えば『水加工用ふりかけ』で造れるしな」
リ「マタドーラがもう寝ようとしてるよ〜」
エ「待つしか出来ないんだから良いだろ。シエスタしてるから何かあったら声かけろよ」
王「まぁ実際休むのは悪くないですからね。本当に長引くようなら交代でスイッチをきるなども視野にいれないといけません」
退屈というのは長引くとかなり辛くなる。とはいえ遊んでるほど体力を無駄に使う余裕はない。なんとも微妙に面倒な事だ。
一方その頃、ドラリーニョが撒き散らした水から逃げ惑っていたドラメッドはテープがなくなっている壁に気付き、顔を青くしていた。
「まずいであ〜る!!早く出入り口を作らなくては……」
ドラメッドは辺りを見渡すと【水平線テープ】の本体を探し出し、それを手に取る。しかし、そのテープが貼られる事はなかった。
「テープが水に浸かってシナシナであ〜る!?ハイドラに連絡をいれなくては……」
ハイドラの行き先は分からないので電話を掛けるしか連絡手段はない。ハイドラが出てくれるのを祈りながら必死に電話をかけ続けるドラメッド。
『ドラメッドですか?何か問題が起こりましたか?』
「大変なのであ〜る!!テープが!みんなも!ドラリーニョが!!」
『落ち着いてください。なんとか山場は乗り越えたので少ししたら一度戻りますから』
忙しいのか中々ハイドラが電話を取ることはなかったが3度目にようやく繋がり、ドラメッドが早口でまくしたてるように状況を伝える。
そしてハイドラはドラメッドの慌てようから何かあったのは確実だろうとどうにか時間を作り、『どこでもドア』で家に戻ってきた。
「ドラメッド、状況を1から教えてください」
「わ、分かったであ〜る」
そこからは遊んでた時の様子から水で濡れた部屋について、そして問題のテープが外れた際の状況をドラメッドから聞き出した。
「テープは万が一外れた時の為に置いときましたよね?」
「それが水で濡れてこの有様であ〜る……」
ドラメッドが手に持っているテープは水で濡れてシワシワになっており、粘着力等は期待できそうにない。
「多少は水を弾く様にしていましたが、貼られていない状態で完全に浸かったのが不味かったですね…………やっぱり道具の内部にまで水が入り込み本体が機能不全を起こしてます」
「なんとかなるであ〜るか!?」
「修復はちょっと難しいです……それでも繋がってる空間は把握してるので手はあります」
それを聞いてドラメッドが安心したようで笑みを見せるがハイドラの表情は未だに優れない。
「その手というのもかなり曖昧な物です。他にも問題があり、このテープは販売用ではなく私用の半分実験場なんです。道具の影響を経過観察をするために出入り口が無いと内部空間の時間は早く進むんです」
「ということは?」
「何処に繋がるかは分かりませんが出入り口を作らないと何日、いえ下手をすれば何ヶ月も何年も待たせることになります」
急ぎましょうとハイドラが道具の残骸を手にしたまま自身の研究室に向かう。その後をドラメッドも慌ててついていくのであった。
キ「いつまで待っても迎えが来ねぇ……」
王「ハイドラの用事も緊急性が高そうでしたし、時間がかかるのかも……」
キ「それにしても、遅すぎだろ……」
何もない限りのない海の上でいつ来るか分からない助けを待つというのはかなり辛いものだ。1秒がどこまでも長く感じ、終わりの見えない時間に精神が削られる。
え「おーい、ご飯取ってきたよ〜」
ニ「ガウガウ」
太陽も星も無く、ずっと明るいこの空間では時間がどれだけ経ったか分かりにくいが、入ったのが昼くらいで既に夕飯を食べるくらいに時間が経っている。その事実には少なからず焦りはあるだろう。
王「さて、食べながらというのは少し行儀が悪いですが話もしていきましょうか」
キ「まぁ、食ってる時の方が落ち着いてられるからな」
変に頭を回すよりはながら作業で普段の雑談の様に話している方が気は楽だろう。
王「それでこれからどうしましょうか」
キ「どうするたって、助けを待つ以外に何も出来ないだろ?」
エ「待つにも色々あるってことだろ」
リ「いろいろ?」
え「ここで過ごす上でのルールとか、何か手はないかこっちでも探るとか?」
今は何も問題が起きていないがここにいるメンバーは常に一緒に生活してきた訳では無い。それ故に共にいる時間が長くなればぶつかり合う部分も出てくるかもしれない。
王「ドラえもんの考え方でだいたいあってます。それに加えてこの空間は過ごしやすいとは言えませんし、何かしら改善するための案でも良いですね」
ニ「バウ?」
王「例えば……ロボットでも休息は必要ですがこの空間は常に明るくて寝にくいです。なので休みやすい様に『暗くなる電球』を船内にセットするのはどうでしょう?」
エ「そりゃあ良いな!!」
王ドラが例を出すとそこから先は改善案やルール等をみんなで口々に言い始めた。
え「食事を取ってくるのは交代制で良いかな?」
ニ「ガウガウ」
キ「見張りと被らないようにしないとな」
エ「水もやらないといけないか」
王「いえそちらは『海水コントローラー』と『水加工用ふりかけ』で簡単に出来るので毎日やらなくても大丈夫かと、この後でみんなでやりましょう」
え「そう言えば時間ってどうなってるのかな?」
キ「正確なのって分かるのか?」
リ「時計の表示めちゃくちゃだよ」
エ「お前のそれ電波式だろ?」
王「そうですね。途中から経過時間をはかり始めましたけど外の時間はわかりませんね……入ってから大体ですが10時間、既に夜ですね」
え「そんなに経つんだ……」
ニ「ガウゥ」
王「私達が此処に居るのは知られているんです。辛抱強く待ちましょう」
そうして話し合いの中で出たルールや当番などを確認し、当面の順番などを確定してから当番以外の者は休息をとった。テープが切れたばかりの時に起きた喧嘩以外は問題なく初めの一日が終わりを迎えたのだ。
壊れたテープを手に研究室にやってきた二人であるが、ドラメッドはハイドラの邪魔にならないように見守ることしか出来ない。それがもどかしく、余計に焦燥感に襲われ、ついつい作業中のハイドラに声をかけてしまった。
「ハイドラ……どうであるか?」
「同じ空間に繋がるテープは問題なく作れます。しかし、彼等がいる場所に出入り口をひらける訳ではありません。何度も繰り返しで確認作業をする事になります」
作業をしながらドラメッドの疑問に答えるハイドラ自身もそれがどれだけ厳しい事かを思い、苦い表情を浮かべている。
「どうしてダメなんであるか?」
「同じテープであれば同じ場所に貼れば同じ場所に繋がります。それは無限に広がる異空間とこちらの世界を同期させているからです。例えるなら大きな紙の上に小さな紙を画鋲で繋ぎ合わせる様な物です」
そう言うとハイドラは空いてる机の上に白色の大きな画用紙を広げ、その上に分かりやすいように黒い紙を小さく切り取って画鋲で留めた。
■
「この黒い画用紙がこちらの世界、土台の白い画用紙がテープで繋がる異空間。実際には白い画用紙は永遠と広がってます。ここまでは良いですか?」
「なんとなくではあるが理解してるであ~る」
「それで十分です。前のテープが壊れたのは画鋲が壊れたと思ってください。説明の為に退かしはしませんが、先に落とした紙は動いてしまい使い物になりません。そして同じ空間に繋がるテープを作るというのはこの白い画用紙に新しく黒い紙を載せる作業です」
そう言ってハイドラは白い画用紙の上に手を持っていくと新たに黒い紙を落とし、紙はヒラヒラと揺れて落ちていった。
■
◆
「この様に同じ画用紙に載っても前のテープと新しいテープでは違う場所になります。それは無限に広がる空間に目印なんて無いからです。座標なんかは同期させた情報から作り出す事は出来ますが、同期させた位置が違うなら座標もその分ズレるので意味は無いです」
そもそも前のテープの修復が難しいと言った理由も本体が壊れた時点で同期が外れてしまうからである。本体を直したところでそれは壊れた画鋲を直すだけで画鋲を付け直す事にはならないのだ。
それならば新しく作るのとなんら変わりはない。いや、ボロボロになってしまった物を直すよりも新しく作る方が早いぐらいだ。
「テープを作ったら異空間と同期させ、出入り口を作っては道具を用いて彼等に呼びかけます。応答が無ければ同期を外し、再度同期させてからまた同じ作業を行います」
「繋げて探すのは……いや、それは無謀であるか」
「無限に広がる空間から彼らを探し出すのは宇宙で当もなく一つの砂粒を見つける様な物ですからね……出来ました!!」
同期させる探し方でさえも効率的とは決して言えない。それでも他に良い方法がない以上は仕方がない。そう結論づけているとハイドラがテープを完成させた。
その形は前のテープとは少し違い、本体は機械に接続されていたり、明らかにテープの長さが増している。
「同期接続・解除に加えて呼びかけは私が行います。ドラメッドは順次そちらの壁にテープを貼り付けと剥がす作業を!!」
「分かったであ~る!!」
直ぐにでも同期操作を行うためにこの形態となっており、テープの取り出し口のすぐ近くは綺麗に片付けられてテープを貼りやすくなっている。
「明日までは休みですが、救出を考えれば今日中には見つけたい所ですね………」
王「さて見張りを始めますか」
リ「食事取ってくるねー!」
え「ドラリーニョ、今からドラニコフは休むから少し静かにね」
リ「そうだったそうだった。ごめんごめん。それじゃ行ってくるね」
ドラリーニョは声の大きさを指摘したドラえもんに小声で謝るとドタバタと足音を立てて『絶対安全救命いかだ』の方へ走っていった。それを残された二人は苦笑して見送った。
王「ドラえもんは当番では無いですよね?」
え「心配だからドラリーニョの付き添いついでに水汲みをぼくがやっとこうかと思って、汲んでる分が無くなりかけてるんでしょ?」
王「それは助かります。ありがとうございます」
ルールを作り、救けを待つ時間を少しでも良くした王ドラの判断は正解だった。もし決めていなければこれまでの時間で問題が幾つ起こっていたか分かったものじゃない。
王「これでもう2週間が経ちましたね。外の様子が分かりませんが、長引くようなら水汲みも当番化した方が良いですかね?」
王ドラは先の事を考えるとしっかりとした方が良いだろうかと悩み、水の煮沸作業を始めたドラえもんに問いかけた。
え「うぅん、それなんだけど。ちょっとみんなイライラしてるみたいだから声かけてくれたらぼくがやっとくよ」
ドラえもんは少し言いにくそうではあったがそう伝えた。すると王ドラも少し気まずそうにしていたが直ぐに切り替えて答えた。
王「それは……有り難いですが任せきりにしてしまうのは悪いので私もやりましょう」
ドラリーニョは食事当番も忘れてないか確認が必要なので除くとして、ドラニコフも頼めばやってくれそうですかね?と二人での相談は進んでいった。
王「私も先程は少し迷惑をかけてしまいましたからね。まだまだ修行が足りません」
え「あれは仕方ないよ」
新しいルール等の話し合いの際に些細なことから口論になってしまい王ドラ、エル・マタドーラ、キッド等の普段から争いがちな面々の関係がよろしくない状態になってしまった事件があった。
いつまでこのままなのか分からないのに船を壊すような行為は憚られたのか暴れる事はなかったがそれがいっそうストレスになっている。
王「ドラえもんが間に入ってくれたおかげで大事にならなかっただけです。自分の考えをそのまま伝えがちなのは私の悪い癖です。結果的に不安を煽る様な時もあったでしょう?」
え「ぼくは正直、頭は良くないから色々と考える王ドラの事はすごいと思うよ。何かあってから対処するよりも起こるかもって身構えてた方が良いときもあるし」
王「それでも私はリーダー等に向いていないというのが良くわかりました。やはりハイドラはよく見ているんですね」
え「ん、ハイドラ?」
王ドラは何かを思い出す様にここにいない友の名を出したが、急にハイドラの名前が出てきた事でドラえもんは不思議そうに聞き返した。
王「彼がクラスに転入した頃に私は嫉妬からよく絡みに行っていたでしょう?実は本格的にこのメンバーで遊び始めたばかりの頃に少し話をしたことがあったんです。その時に興味深い話を聞けたんです」
王ドラとしては黒歴史……とまではいかないが少々恥ずかしい事ではあるようだが、話すことに問題はないようでその時の事をドラえもんに語り始めた。
彼がクラスに転入するまではずっと私がクラスで一番の成績を誇っていました。学年でも一位であり、負けることなくそれを鼻にかけて天狗になっていましたね。
えぇ、ドラえもんも疑問に思ったことでしょう。私も後で知ったんですが元々ドラえもん達が居た子守用ロボットだけを集めた学科と私達のクラスでは採点方式なども違うそうです。
それで学年成績等も同じランキングに載ることは無かったので私は学年一位だったんです。とても優秀だとされていた彼の事も当時は噂でちょろっと聞く程度でした。
優秀だと聞いた名前だけどあの時まではそこまで気にしていませんでした。同じネコ型なのかぐらいの認識でした。そして彼の転入してから最初の大きなテストの時です。私が彼にテストの順位で負けたのです。
後からこのクラスに来た生徒、それも同じネコ型ロボットにテストの点で負けた。その時のショックは今でも忘れません。結果が書かれた紙を呆然と見つめて私はその場に固まっていました。
「おやおや?いつも一番だと威張ってた王ドラ君が二番じゃないかぁ?!」
その様子を近くで見ていたエル・マタドーラが意気揚々と私の事をからかいに来てわざとらしく驚いた演技などもしていましたがその時の私は気にもとめていませんでした。今思い返すと少し腹が立ってきましたね。
私は一位の欄に書かれていたハイドラの名前をジッと見つめていたんです。そして殴り込むような勢いで私は彼の席まで駆け寄りました。
「……貴方がハイドラですね?」
「あぁ、貴方は王ドラ君でしたね。何か御用ですか?」
私は彼が気になっていたのに相手の平然とした態度が煽られているかのように感じて私は余計に苛立ちを感じていました。
「たった一度のテストで勝ったと思わないでください!!胡座をかいて座っている様なら一位の席なんて直ぐに奪い返して見せます!!覚悟していてください!!」
クラスに響き渡るどころか廊下の外にまで聴こえていたらしい私の宣戦布告はドラえもんも覚えているでしょう?
それから私は何かと授業やテストでハイドラを敵視して勝負を仕掛けていました。テスト前なんかはそれこそゾンビの様な風貌になるまで勉強漬けの日々でした。そしてそれでも勝てませんでした。
負ければ負けるほどに敵意は強まっていきました。ですが授業の内容によっては協力せざるを得ない時もあります。そういった際に足を引っ張るような事は憚られ、冷たく接しながらも共に作業し、彼の実力は認めざるを得ないと少し考え直す機会があったのです。
グループワークでも同じネコ型の中でも体格が同じであるこのメンバーで一緒にされる事もあったでしょう?私とハイドラに限った話だと先生に手伝いを頼まれて呼ばれた先で出会った事もありました。
そうしてよく顔を合わす私達が話すことも増え、今では揃って遊ぶような仲になりました。っとそうでした話がけっこうズレていましたね。
今では喧嘩はすれど確執なんてものはない仲です。それでも遊び始めたばかりの頃にはまだ私の思いは整理しきれていませんでした。
そんな折に少し話をする機会があったんです。私が教室に忘れ物をして取りに行くと先生とハイドラが話していたのを聞いたんです。
「いやぁ、ハイドラ君は本当に優秀だねぇ。手伝ってもらって本当に助かったよ」
「恐縮です。また何かあれば声をかけていただければ出来る限り手伝わせていただきます。ですが予定も多く……」
「分かっとる分かっとる。君ほどのロボットならばあちこちから引っ張りだこだものなぁ。それが無ければ来年の学級委員も頼めたんだが、本当に惜しい」
その時は私が学級委員でした。委員会や係を決めた際にハイドラは居ませんでした。それに忙しいハイドラは係や委員会に入る気はなかったそうです。それでも先生の口調は私が認められてないようで落ち込みました。そんな時にハイドラがこんな事を言い始めました。
「いえ、そもそも私は学級委員等のリーダーには向いていませんよ。人を仕切ったり纏めるのは大変ですから。そもそも今の学級委員もとても優秀でしょう。私よりも向いていますよ」
「リーダー性ねぇ…君にも十分にありそうに思えるが本人がそう言うならばなぁ。ならば来年も王ドラ君に頼むことになりそうだの」
「えぇ、リーダー云々はさておいて、責任感が強く真面目な彼は学級委員に向いてますよ」
「ふむ、リーダー性は彼以上が居ると?」
「……口が滑りました。忘れてください」
「ふっふっふっ、面白そうな話ではあるが仕事を頼んでる身だし追求はしないでおこう」
敵視していた彼から私を認めるような、擁護する様な発言が出てきたのは驚きでした。正直、私の印象はあまり良くないと思っていましたからね。
そして同時にリーダー性では私以上の者が居ると暗に示している彼の言葉は引っかかりました。彼が先生の手伝いを終えて教室に戻ったのを確認すると私は彼に話しかけました。
「ハイドラ」
「王ドラ?また何か私に用事でも?」
「先程、先生からの学級委員の推薦を断わりましたね」
盗み聞きしていた事を隠すことなく直球で私はハイドラに問いかけました。ハイドラは珍しく少し驚いた表情を一瞬浮かべていたのを覚えています。
「聞いていたんですか?そもそも推薦とは言えない世間話の延長線だとは思いますが、なにぶん忙しい身なので…」
「ならばその時に私を庇ったのは何故ですか」
ハイドラがまだ話している途中でしたがそんなのお構いなしに次々と質問をぶつけていました。本当に失礼な事をしたものです。
「庇ったつもりはないですよ。王ドラはとても優秀なのを私は知っています。そして真面目でルールを守ることの大切さを理解している。場を仕切るのも苦ではないでしょう?」
「……優秀と言ってもいつも貴方に負けていますよ……あんだけ色々な事が出来て、周りならも認められてる…そんな貴方にリーダー性が無い?ふざけるな!!私を憐れんでいるんですか?!」
ハイドラの言葉はとても信じられませんでした。先生は切り上げて気にしていないようでしたが適当な事を言って私をからかっていると感じ、叫びました。それでもハイドラは落ち着いていました。
「リーダーってどんな者だと王ドラは思いますか?」
「……周囲に認められた者ですか?指導者ってそう言う者でしょう」
急に何を言いたいのか分かりませんでした。それでも咄嗟に考えついた答えを私は口にしていました。そこから先はしばらくハイドラの話を聞いていました。
「王ドラの答えも正解の一つです。たしか中国では孫子が将、率いる者に必要なのは『智』『信』『仁』『勇』『厳』だとあげていましたね」
「少し省きますが『智』は物事の本質を見抜き深く考える力、『信』は周りからの信頼、『仁』は思いやりの心、『勇』はそのまま勇気あとは決断力等、『厳』は信賞必罰と言った厳格さ」
「『智』は互いに十分あるでしょう。『信』は王ドラはこれまでのクラスでの時間、私はこれまでの実績、『勇』は決めたことをやり抜く実行力にも繋ります。私は研究、王ドラなら修行ですかね。『厳』も問題なく、騒ぐことはあっても不正を働くような事はしないでしょう?いつも周りに注意を促してる姿も見ますしね」
「そして飛ばした『仁』、これは注意から言い争いに発展しているのを見かけます。相手の気持ちに立って落ちついて考える事に留意すればさらに良くなりますよ」
孫子の教えは私も少し聞いたことがあり理解している。ですがその後の話は聞けば聞くほどにぐらついていた心が熱くなっていきました。
「なんですか『智』なら成績は貴方が上でしょう?!『信』も貴方なら社会に通用する!!だから先生も貴方を押したんです!!『勇』だって『厳』だって勝ててるか分かりません……『仁』なんて指摘を否定出来ない……何なんですか?貴方は何を言いたいんですか?」
下手なフォローなのかそれとも遠回しな攻撃なのかハイドラの言いたいことが私には分かりませんでした。
「それでさっき上げた項目って全部完璧にいりますか?」
「……は、はい?」
「『智』なんて借りれば良いでしょう?全くないのは困りものですがかつての将も自分で全部決めた訳では無いでしょう?あ、ダジャレではないですからね。『信』なんて後から幾らでもついてきますし、後からしかついてきません。それにリーダーとか関係なく信じられない相手とは関われませんし、リーダー云々以前の話では?」
「それならば信頼を損なわない行動の方が大事じゃないですかね。となると信頼を失わないにはどうなんだっていうのは『勇』や『厳』です。決めたことをやり抜き、自分にも厳しく、手本となる姿勢、これは必要でしょう」
「そして『仁』、これは言い方が悪かったですが注意してるのもその相手の為を思ってですから、貴方の優しさは周りにもきっと伝わってます」
「何もかも完璧である必要はないんですよ。それにやり過ぎだってダメです。『勇』、『厳』なんかは将の五危にそのまま繋がりかねないですからね。『仁』だってそうです」
先までの話は何だったんだと言ったくらいに考え方が切り替わり、ついていけていませんでした。それでも次々と語られる彼の話には惹き込まれていました。
「王ドラは『信』を一番気にしていたようですが、私は『仁』が大事だと思っています。だからこそ私はリーダーには向いていません。なにより……」
「私ほど自分本意なロボットは居ないでしょうからね」
それを聞いて私はなんとも言えない気持ちになりました。あれだけ劣等感を感じてしまう相手であるハイドラも自分を認めていないのです。
彼が自分本位とはとても思えません。それなのにそう考える理由は何なのかと疑問に思えましたが、聞いてはいけない気がして聞けませんでした。
「それじゃあ、私よりもリーダーに向いてるとハイドラが思っているのは誰なんですか?」
「本人には内緒にしてくださいよ……ドラえもんです」
そう、そこでドラえもんの名前が出てきたんです。えぇ、話し始めて少ししてから口止めされてたことを思い出しました。ハイドラには黙っていてください。そして彼になぜそう思うのか理由も尋ねました。
「そうですねぇ、頭が良いわけではないですが、何処までも優しく、他者の為に頑張る事が出来、駄目な所の線引は知っている。周りを失望させる事はないと思わせる。安心感の塊と言いますか、いざという時に頼れます……たまに心配になって支えたくなるのもある意味リーダー向きです」
そんな話しをしたからかハイドラという相手の事をしっかり見るようになり、敵としての認識がへり、今のような関係に繋がっていきました。
「まぁ、そんな少し前の話をドラえもんが場を取り持ってくれたのを見て思い出したんですよ」
「恥ずかしそうに話してたけど聞いてるぼくも恥ずかしかったよ!それにぼくに内緒にって話だったのに、ハイドラと話すときにどんな顔すれば良いのさ?!」
「すみません。ですが口止めの事をすっかり忘れてまして……まぁ、そんな話があり、今日の事でドラえもんは確かにリーダーに向いてると感じたと言いたかったんですよ」
「そうなのかなぁ?自分では分からないけど褒められたのは嬉しいよ。っと水は出来たから持ってくね」
「えぇ、お疲れ様です。ドラリーニョは後は私が見ておきますから、運び終わったら休んでください。本来は休みなんですから、休む時はきちんと休む」
「はーい、それじゃあ王ドラも見張り頑張ってね」
去っていくドラえもんを笑顔で見送り、ドラリーニョが後10分経っても帰ってこなければ様子を見に行こうと決めながら先程までの話しを自分の中でまた振り返る。
『仁』を大切にしているとハイドラは言っていましたが、なんというかそれこそ絶対的な『信』をドラえもんに置いてるように私は感じました。
話しながら思い返してみて気付きましたが、語った内容というか形がハイドラらしくない気がします。何処かちぐはぐというか、発言に矛盾が見られます。
何か他に考えがあったのでは?伝えたい事が幾つもあってごっちゃに混ざったのでは?とちゃんと彼のことを知ったからこそ思います。
自惚れっぽくて恥ずかしいですが私を励まそうとはしていたんだと思います。次に自分がリーダーに向いてない事を伝えようともしていました。そしてドラえもんについても話そうとしていたのに間違いはない。
それら全てを同時に話そうとしたから、それら全てを同じ例えで話そうとしたから、それら全てに並々ならぬ思いがあったから、だからああなった。
「なんて、考え過ぎですかね?」
きっと救けに来てくれるであろう友の事に思考を巡らせながらその日の見張り番の時間は静かに過ぎていきました。
「王ドラ!!食事取ってきたよー!!」
いえ、少し煩いですかね?まったくドラリーニョの物忘れの激しさには困りものですね。そう感じながらも私の顔はきっとほころんでいるんでしょう。
登場したひみつ道具
『地平線テープ』
このテープを使うと、地平線を作る事ができる。部屋の壁と壁の間に張ると壁が消えて何も無い地平線が広がっている世界へ通じる。ただし、テープによって作られた世界は特別な場所で、地面と空がある以外は星や太陽などが一切なく、テープが切れると壁は元の壁へ戻ってしまい、二度と元の世界へ戻れなくなる。そこは異次元空間なので『どこでもドア』も使えない。
『どこでもドア』
行きたい所を頭に思い浮かべてドアを開くだけで、どこへでも行く事ができる。行き先受信ノブを握ると、頭に浮かべた行き先をノブ内蔵のコンピュータが読み取る。そして、宇宙地図の中から行き先を間違いなく探し出し、行き先の空間を歪曲装置が引っぱってきて、こちらの空間と向こうの空間がドアで接続される。ただし、10光年以上離れた星や、『地平線テープ』などで作られた特別な世界、地図に入力されていない場所には行けない。超空間にバリアーが張ってあると、ドアを通過できない。また、トイレや風呂など他人に見られたくない場所は、プライベートロックが役に立つ。個室に限るが、自分のどこでもドアに、来られたくない場所を入力すると、連鎖ユニットにより他のどこでもドアに指令が届き、ロックされた場所へは行けなくなる。学習機能があり、移動しながら地形データを記憶させる事も可能。オプションパーツもあり、ドアノブに付ける事で時間移動を可能にするダイヤル装置がある。ドラミの持つドアは、大きい物でも入るように自動的に伸び縮みする。この道具の発明により、銀河SL天の川鉄道が廃止になった。斜めの状態でも使用でき、通常通りドアの枠が境目になるが、どちらかで障害物があると、それ以上は倒れない。『昆虫探知カード』をドアに貼り付けると、描かれている昆虫がいる場所に繋がる。強引に突き破っても行けるが、壊れる。
『絶対安全救命いかだ』
どんな大嵐になっても、これに乗っていれば必ず助かる。
『救命イカダ』
使わないときは小さいが、いざというときに水に浮かべると大きくなる救命イカダ。
『探検ごっこ用蒸気船』
未来の子供が探検ごっこに使う、遊び専用の船。
『ほどほど海賊船』
見かけは立派な船だが、実はモーターボート。ボタンを押す事により、相手には当たらない「ほどほど大砲」が発射されたり、レースモードに切り替える事もできるが、故障すると実際に当たったりして程々ではなくなる。
『水加工用ふりかけ』
これを水にふりかけると、水を色々な物に変えられる。材質を変える粘土、スポンジ、鉄、発泡スチロールや、色を付けるペンキ、水に戻す水戻しなどがある。これで作った固まりは水と分離し、船や潜水艦を造ることもできる。『水ビル建築材』で建物を簡単に造ることも可能。
『暗くなる電球』
普通の電球とは逆で、この電球の光が当たった所は、暗くなってしまう。
『海水コントローラー』
これで囲んだ海は、波を静めたり、水をお湯にしたりして、思い通りの状態になる。
オリジナル道具
【水平線テープ】
『地平線テープ』の改造品。テープをくぐった先は波一つない静かな海が永遠と広がっている。海と称したが設定次第で水は変更可能である。
ここまで書きながら思うことが次回で終わらせられると良いなぁ。になるのは本当に問題だと思う。終わりを決めて書いてるけど、途中を膨らまし過ぎてしまう……
ひみつ道具の説明というか考察というか、矛盾が無いと良いんですが、無限をそのままに現実に入れ込むのは無理だし、『地平線テープ』でのび太の家としずかの家までがおそらく実際の家同士の距離と変わらないであろうと考え
(理由はのび太が帰れなくなった際にしずかの作った入り口から帰れている。道具を使ってるとはいえ小学生が移動できる範囲で入り口を視認できる範囲であることから。また、のび太が二階の家で地平線テープを使ったのに対してしずかが一階の風呂場で使っても同じ高さに出入り口が描かれている。それは地平線を作り出す上で異空間側の出入り口のy軸を固定化、一定の高さに繋がる様にするためであり、その為同期がある限りはテープで入り口を作れる範囲は地球の表面積までとなる。そう仮定した場合にx、z両軸の値が同じ場所にテープを貼った際に入り口がどの様になるのか等の疑問は残るが今回は置いておく)
現実と異空間の位置関係は同期設定が破棄されていない同じテープであれば高さを除いて変化はなしとする。
今回はその同期が外れた為に6人は異空間の迷子になってしまっている。そして、ハイドラとドラメッドは毎回、地球一個分の範囲を確認していく……鬼のような作業量だし、けっこう無茶。
販売元は同じ異空間に繋がる同じ同期設定のテープを保管するなどの対策をするべきだと思う。そうすればどんなに離れていても入り口から移動できる範囲内を探せる。
帰れない不安というのは大きいだろうけど、水と食料の不安がないだけのび太達の時よりはマシだと思う。いや、ドラえもんの道具で生活くらいは出来そうだけどね。
っと語り始めると何処までも自分の考えを話してしまいそうなので後書きはここいら編で終わりにしておきます。気なる点がある人や私と語りたいという人は感想やメッセージをお気軽にお送りください。
そして感想をくれる方々、評価してくださった方々、本当にありがとうございます。感想等は気付き次第返信させて頂いていまし、追記等がされてないか時折確認もしています。ですが追記は見逃す可能性も高いのでお手数で無ければ新しく感想を送って貰えると助かります
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
「 」前の一文字どう思います?
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分かり易いし読みやすい
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分かり易いが読みにくい
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分かり難いが読みやすい
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分かり難いし読みにくい
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率直に言ってやっても良い
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率直に言ってやめた方が良い