その着せ替え人形はカフェに行く。   作:アテュ

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間が空きすぎるのでとりあえず前半投稿します。

後半は明日目標です。下書きは出来ているので(1敗


欧風アンティーク喫茶⑤

「ジュジュ様そのメイド服、ぐうかわ~♡いやもうマジで似合いすぎてます!!」

 

「はぁ……まぁもう白状するけど母が店長でたまに手伝ってるのよ」

 

喜多川さんとコスイベの帰りにオシャレなカフェ――Cafe Celebrate(カフェ セレブライト)――へ寄った、縁起のよい名前だ。

 

そこで季節のお茶と菓子を楽しみ「お試し紅茶教室」というものを見つけ申し込もうとした所店員さんに乾さん……コスプレイヤーのジュジュさんが何故かいた。

 

細かい事は当日にという事で今日伺った次第だ。

 

「そーなんですか?家が喫茶店なんてオシャレ~♡」

 

薄いブラウンのワンピースに白いエプロンドレス、メイド服の中では質素なデザインかもしれないが乾さんが着ると見事に引き立てていると感じる。

 

「あんまり広めないでよ?最近SNSでトラブル起こす子も多いから」

 

「モチですよ~。それにあたし最近は鍵垢にしてるんで!」

 

「それが一番ね。心寿は変なやり取りする事がないからあまり心配してないけどあなたも写真とか上げる時は注意なさい。ロックしててもアップロードした写真は残るのだから」

 

そう言いながら乾さんが案内してくれた席に座る。今回の参加者は2人だけのようだ。

 

「参加者2人って少なくないですか?」

 

「喜多川さん!?」

 

さすがにちょっとそれは失礼じゃ……。

 

「積極的に募集してるわけでも、これで儲けようなんて思ってないもの。500円なんて赤字に決まってるでしょ」

 

(人件費すら難しいですよね)

 

「お金は貰ってるけどサービスに近いわよ、正直。でも何飲んでいいか分からないっていう人も多いしきっかけ作りよ」

 

そう言いながらも乾さんの表情は自信ありげだ。

 

「ま、扱ってる物は私も美味しいと思うわ。特に紅茶は香りがいいものが多くて好きよ」

 

「この前季節のダージリンを頂きました。とても美味しかったです」

 

「素敵よね。夏は特にダージリンらしい香りが強いし」

 

「あたしはマロンアイスラテでした!栗めっちゃ美味しかったですよ~♪」

 

「……あなた、帰りも何か買ってSNSにあげてなかった?」

 

「あ、ス〇バで買ったコーヒーゼリーが入っててヤバうまでしたよ!ポーション入れると絶妙なほろ苦さですし!てかあたしのSNS見てくれてるんですか~♡」

 

「ちょ近い、近いわよ!」

 

サーセンwと言いながら少し離れる喜多川さんはとても嬉しそうだ。

 

「し、心寿も見てたけど好きそうだったわよ。……私も別に嫌いじゃないけど」

 

「妹さん、苦めのものも好きなんですか?」

 

「むしろ苦手なのだけれどね。あれはおいしそうってよく言ってたわ」

 

「わかりみが深い!ビター系ってふとした時に何か食べたくなるんですよね~。甘いもの食べた後とか」

 

「あなたよくそれでそのスタイル維持できてるわね……」

 

「いやー今はちょぉーっと……でも魚とかよく食べますよ!」

 

あれ確かに最近はちょっと魚に偏りすぎてたかな。いやでも魚の方が爺ちゃんも喜多川さんも喜ぶしなぁ、せめて焼く蒸す揚げるバリエーションはちょっと増やしていこう。

 

「よく食べると言えばサバこまのコスした時マンガにも出てきたチョコ好きでしたね」

 

「あれもうマジなめらかでぎゅっとでヤバい、ちょーリピっててオススメなんで~♪」

 

「多分濃厚だけど食べやすいって事だと思いますよ」

 

「翻訳早いわね?」

 

「まぁ今度教えてちょうだい。心寿と食べてみるわ」

 

そう言って笑う乾さんは凄くお姉さんという感じがした。自分に姉がいたらこんな風なんだろうか。

 

「そろそろ始めるわよ?今日はあなたたちしかいないけど公私混同はしないわ」

 

「は~い♪」

 

「よろしくお願いします」

 

「まず今回のテーマは紅茶、それもどんなものを頼めば買えばいいか。普段は飲む事あるかしら?」

 

「スタバでよく飲みますっ!」

 

「本当に最近ですがダージリンをたまに」

 

前回こちらに来た時も飲んだが本当にとても美味しい紅茶だった。

 

「あ~でもスタバのって紅茶っていうよりもジュースより?です?」

 

「確かに紅茶にアレンジしたというよりもジュースに紅茶を加えたっていうものも多いかもしれないわね」

 

でもと乾さんが続ける。

 

「よくこういった飲み物で話題に上がることがあるの。これが正式だとか正しい飲み方だとか」

 

「参考にするのもしないのも好きにすればいいわ。嗜好品なんだから自分がやりたい好きだと思った飲み方が一番よ」

 

「分かります!何かハードルめっちゃ上がってまぢぴえん!」

 

「ただお店なら注文すればいいけど、自分で淹れるとなると悩む事もあるわ。そんな時に昔から言われてる事とか正式なやり方とかを見てみると参考になる事も事実よ」

 

「そーなんですか?ファミレスとかで飲む時はさっとぱっとぎゅっって感じですかね」

 

(喜多川さん、大雑把……!)

 

「渋くなるわよ……まぁ特にミルクティーにしない時は渋みが目立つからあまり揺らさないようにしておきなさい。雑味やえぐみが出やすいわ」

 

「そーなんですか!?めっちゃ揺らしてました!笑」

 

「喜多川さん、何でそんなに嬉しそうなんですか……」

 

 

「乾さん質問が、そもそも茶葉とTB*1に違いはあるんでしょうか」

 

「そうね、じゃあ淹れながら説明していこうかしら」

 

そう言って準備を始める乾さんの動きは淀みない。まさにいつも通りの事なんだろう。

 

「まず結論から言うと茶葉用とTB用で分かれているものならほとんど同じことが多いわ。このお店で取り扱ってる物は中身の茶葉の大きさも変わらない簡単に言えばパックに分かれているかどうか程度の違いね」

 

「ただ市販品ではTB専用で販売されているものもあるわ。そういうものは少し細かめになっているものも多いわね」

 

「どちらか買おうか悩んだらTBの方を買っておきなさい。茶葉で買うと案外量が多くて飲み切れないものよ」

 

「確かに煎茶等の量で考えるとそれほど飲まないのに多いですね」

 

※煎茶 一般的な緑茶も紅茶も1杯分の量はざっくり同じです。

 

 

「今日淹れるのはスリランカのキャンディ。ストレート、ミルク、アイス、フレーバーティーのベースにも使える便利なものよ」

 

「産地とかってやっぱり飲んでみたら分かるんですかー?これは魚沼産コシヒカリだ的な」

 

「難しいわね、傾向は分かる事が多いけど。そもそも加工品ではあっても農産物であるからその年ごとに出来栄えも変わることが多いわ」

 

「よく茶園とか生産地とかでテイスティングできるっていう人いるけど覚えるのは現実的ではないわ」

 

「どうしてですか?」

 

そうねと乾さんが唇に手を当てながら考え込む。……計算している?

 

「生産地は色々あるけどほとんどがインド、スリランカ、中国あたりが多いわ。でもインドのダージリン地方にある茶園だけで100か所前後あるわ」

 

『え』

 

「ダージリンは四季で特徴がある紅茶だから×4ね」

 

『……』

 

「茶葉の等級、要するにTB用とか茶葉用とかで分けるとOP*2、BOP*3、F*4、CTC*5で4つ」

 

「この条件だけで1600通りね」

 

『多っ!!』

 

「この状態でも多いのに温度とか量とか細かく変えてたら覚えてらんないわよ」

 

「そ、それは何だか潔さすら感じますね」

 

「まぁ…本当なら全部覚えるべきっていうのが理想でしょうけど……それ説明されて聞きたい?」

 

「い、いやー「無理ですね!」」

 

喜多川さんの元気が一段と良い。

 

「コスなら自分の納得するまでやればいいわ。でもこれは仕事、求められてない事を喋られてもお客様は困るだけ。

自分の力不足は認めるけど、一番大事なのは『お客様が何を飲みたいか』それを探す手伝いをする事」

 

「そのための基準を見つけるというのならさっきの産地や茶園の特徴というのはとても参考になるの。味のイメージが膨らみやすいわ」

 

「なるほど、さっきのスタバの話でいえばベースが紅茶でオレンジや生クリームを使っているかなどで味の連想は確かにしやすいですね」

 

「わかりやすっ!」

 

「そう、まずは細かい事は抜きに自分が好きなものを1つ見つけそれと違ったタイプ、近いタイプを試してみる事をすすめるわ」

 

「なーるほど!……でもそれこそどんなタイプがあるかわかんないよーな」

 

「あら」

 

「そのために私がいるんじゃない」

 

「~~♡!!」

 

「んも~ジュジュサマ。可愛すぎ~♡激エモ~♡」

 

「ちょ、ちょっと!はなしなさい!こら!」

 

照れながら怒る乾さんに怒られながら喜ぶ喜多川さん。

 

「んんっというわけで今回は基本の淹れ方で3つの紅茶を淹れるわ。それをベースに考えればイメージがつきやすいはずよ」

 

「りょーかいです!」 「分かりました」

 

----------

 

「ジュジュサマっていつから紅茶飲んでるんですか?」

 

「随分突然ね?……まぁ別にいいけれども。飲もうって思って飲んでたわけじゃないわ、母が飲む時に一緒に淹れてもらっていたのがきっかけかしら」

 

「おかーさんも紅茶好きなんですか?」

 

「コーヒーと紅茶どっちも飲むけどね。まぁ気分よ気分」

 

乾さんはそう言いながらガラスのティーポットへお湯を注ぐ。

 

「コーヒーに比べて紅茶を淹れるのは難しくないわ。待つだけでいいから忙しい時でも気軽ね」

 

「淹れる時には()()()()()()()()()()()()()()。それだけよ」

 

「え、そんなにシンプルなんですか?」

 

「細かい事を考えすぎるとキリがないし、明確に効果があるって感じた事が少ないのも理由ね」

 

「これをベースに自分の好みにアレンジする事をすすめるわ。例えば100℃くらいよりも95℃くらいのお湯を使った方が紅茶の甘みを感じて美味しく思うの」

 

「マジで分かるんですか!?すごっっっ!!!!」

 

「私がそう感じるだけよ。でも何度も飲んでると分かってくる事があるのも本当ね」

 

「何だか分かります。俺も面相描きの技術はまだまだですが、手応えとか違いを感じる瞬間ってありますね」

 

「結局好き、可愛い、綺麗とかって主観だしそう感じる自分の気持ちを1番に考えればいいのよ」

 

なるほど、確かに理屈じゃない。思わず立ち止まってしまう歌声、圧倒的な星空、香りのよいパン、落ち着く喫茶店。明確な理由なんて分からない。でもまた聞きたい、見たい、食べたい、行きたい。……その思いはきっと大事なものだ。

 

「コスだって私が好きだからやってるし、これも美味しいから飲んでるだけよ。見栄か何かで飲みたいものを飲めない方がよっぽど損してるわ」

 

「そ……」

 

「そう『ですよね!』

 

好きなものを好きと言える事それはとても勇気のいる事だ、それに自分が本当にそれを好きなのか悩む事がある。

 

中には本当の素晴らしさ、美味しさ、楽しさに気づけずやめてしまったものもあるかもしれない――いやそういったものの方がきっと多い。

 

「なんかつながった感鬼ヤバっっ!!!ジュジュサマ言いたい事すご伝わった感!!!」

 

「何でも効率よく結果を出す必要なんて無いわ、回り道も楽しめるのならとてもいい趣味よ」

 

「少し気が楽になりました。どうにもこう……表現が難しいですが高尚そうで気が引けてしまって」

 

「わかりみ~。こーやって実際に飲むとやっぱりスタバの紅茶とは別物感!」

 

「それはそれ、これはこれ。どっちかしか楽しめないよりどっちも楽しんだ方がお得に決まってるじゃない」

 

「わからせ……!」

 

「……何だか乾さんお会いした当初から少し雰囲気が変わりましたね(わからせ?)」

 

「そう?コスの話はしてたけど……まぁ言ってしまえば業務的なやり取りが多かったわね」

 

「でもジュジュサマ今の方が絶対カワイーですよ~~♡もうさっきの『それはそれこれはこれ』って言ってた時の小悪魔感最高っっ!ランスの魔想たんデレたところ思い出したもっかいやろっっっ!!!!」

 

(ランス……?何かのゲームだろうか。今度調べてみよう)(ランス……?アニメか何かかしら)

 

-------

 

 

「一杯目、スリランカのキャンディって紅茶よ。飲みやすいクセのない紅茶」

 

紅茶が注がれたカップは口が広く、コーヒーカップに比べて少し浅くなっているように見える。漂う香りは実に華やかでまさにスタンダードな紅茶の香りのイメージだ。紅色でありながら薄っすらと輝くようにも見える明るさがとても美しい。

 

「すごく落ち着きます。ほうじ茶も好きですが紅茶もいいですね……」

 

「わかりみが深い!ほーじ茶には大福だけど紅茶にはケーキ的な!」

 

「あら、大福にも案外紅茶は合うわよ」

 

「そっちなんですか!?」

 

 

 

「そうね、相性の説明ついでに簡単だけどこんな図を用意したわ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あっさり、マイルド、コク深いですか。なるほど」

 

「わ!わかりやすっ!」

 

「こんな風に分けられるんですね……」

 

「本とかだとこれはどこの紅茶は~こんな風とかで書かれてるけどあんまり実感はわかないわね、例外なんていくらでもあるし」

 

「あくまで自分の嗜好を探るのならこういった図に自分が飲んだイメージの紅茶を書いておくのをオススメするわ。面倒なようだけど1回書いちゃうと案外覚えちゃうものよ。……それに自分で飲んでみて考えたほうがおもしろいわ」

 

「あ~確かに!オススメされてる以外の飲み方も試してみたらおいしいってこともありますし!」

 

「そう、別に一般的な感想と変えなさいってわけではないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。オススメっていうのは何かしら理由がある事も多いのだし」

 

「例えばコク深い紅茶ならアッサムやルフナっていう紅茶が多いわ。この紅茶はチャイ*6にも使われる事があるの。普通の紅茶だとミルクや香辛料に負けてしまうからそれに負けないような芯のある紅茶が求められているせいね」

 

「チャイ!凄い濃くて激ウマでしたっ!」

 

「アレンジも豊富で良いわ、こういうのはスタバとかの方が楽しめそうよね」

 

なるほど……茶葉によってアレンジに向いた紅茶もあるのか。

 

「あーでも言われてみればあたしミルクティーってけっこー好きかもしれません。そーゆー風な味のが案外多いよーな……」

 

「なら喜多川海夢、あなたはコク深いものの方が好みに合うかもしれないわね。あくまでミルクティーで飲むならだけど」

 

気になってしまい思わず手を挙げる。

 

「何?五条新菜」

 

「ハイ、ミルクティーでオススメとかって案内があったりしますがその飲み方以外も試してみていいんでしょうか?」

 

「もちろんよ。逆に1口目は何も加えず飲んでみるのをオススメするわ。抽出された紅茶の濃さなんていくらでも変わるのだから、飲んでみればミルクの量の参考にもなるの」

 

「確かにそうですね。薬味みたいなものですか」

 

「ミルクを薬味っていうのは初めて聞いたわね……」

 

乾さんが何とも言えない表情をしている。確かに薬味という表現は少々違う気がする。

 

「マヂ関係無いけど、この前食べたもみじおろし超美味だった」

 

「彩もよくていいですよね。鍋物にも合いますし」

 

「ポン酢と相性が良さそうね」

 

「おいしそー!今度お鍋やりましょーお鍋!」

 

「そろそろ寒くなってきましたしいいですね。」

 

「あー……あたしダイエット中だから出来れば鶏とか豚がいーなーって……」

 

「むしろそっちの方がもみじおろしとかと合うかもしれませんよ。さっぱりとしててきっと美味しいです」

 

ダイエット向きならやはり鶏だろうか?今度調べてみよう。

 

「乾さんは何か苦手なものはありますか?」

 

「何で鶏とか豚の話になってんのよ!」

 

「す、すいません」

 

 

 

「やっぱり乾さんはしゃぶしゃぶより豆乳鍋が良かったですか?」

 

「鍋の話から離れなさいよ!!!

 

「ごじょーくんボケ倒すし笑。ジュジュサマ、ゴリゴリのノリツッコミで草」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ティーバッグ

*2
主に茶葉用

*3
茶葉、TB用

*4
主にTB

*5
主にTB、一部茶葉

*6
インドでよく飲まれる煮出したミルクティー、砂糖や香辛料を加える事が多い




アニメは終わってしまいましたが一区切りを目標に続けていきます。
ようやく紅茶の話を本格的にできました。

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