上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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16話 宣戦布告とチャンスです

 

 

 気づいたら、保健室のベッドで寝ていました。

 

 そして、傍に控えていたリカバリーガールに目覚めの一発、とばかりに怒られました。怖かったです。

 

(……例えるなら、正論の銃弾でパリィとられて内臓抜きされた気分です)

 

 意気消沈しすぎて、弱々しい溜息が漏れる。

 

 リカバリーガールに『次にクラスメイトに迷惑をかけたり、保健室に来るのを忘れる様なら即入院手続きを取るからね!』ってぷんぷん言われました。これに関しては私が悪すぎるので、迷惑をかけた皆にはちゃんとごめんなさいして、昼休みいっぱいお説教を聞いて凄く反省しました。

 

(……私は、何をしているのでしょう?)

 

 口元を押さえて、冷静にならなければ血を欲してしまいそうだと、自分の舌に歯をたてる。

 

(……私って、人を超越してる存在でしたよね? もしや、まだ悪夢を巡ってます?)

 

 そんな事を考えるぐらいには、気落ちしている。でも、リカバリーガールのおかげで目が冴えてきた。

 

(……お婆ちゃんの言う通りです。我が儘を言って登校しているのに、誰かに迷惑をかけるのはダメダメです)

 

 このままではいけないと、自分が『普通』じゃない事も、クラスメイト達より薄っぺらい事も、とっくに分かっていただろうと切り替える。

 保健室からとぼとぼと戻ってきたら、皆に驚かれて心配されましたが、大丈夫だと胸を張り、午後の授業はキリッとした面持ちで受けました。チャイムの音と同時に寝落ちますが、私はできる子です。

 

 

(―――そうです。私は、元の渡我被身子や()とは違うのです!)

 

 

 そうして集中していると、すぐに放課後になる。午後の授業を卒なくこなせた事にホッとする。

 

「……ん」

 

 そういえば、職員室に呼ばれているんでした。

 これも、しっかりこなさなくてはと。知らず突っ伏していた身体を起こそうとする、が。ふわふわ柔らかい枕の感触に、顔をあげられない………すぅ。

 

(―――ハッ。寝ちゃダメです! ……くっ、なんて凶悪な枕……が、なんで学校にあるんです? あと、背中の毛布といい誰のです?)

 

 今更な驚きに目を丸くする。

 しかし、頬に当たる極上のすべすべ弾力はふわふわ、魔性ともいえる魅力に、瞼がどんどん重くなっていく。

 

「……ぁう」

 

 寝ちゃい、そうです。

 

 ああ、ダメです、この枕はぜったいお高いやつです。でも、私は負けないのですっ。大体、思い返せばおかしな事だらけです。毛布は羽織っているし、冷えピタは額についているし、机の上が片付いていたり、気づいたら次の授業の準備がされていて……あれ?

 

(私は、ちゃんとしているつもりで、実は誰かに助けられているのでは?)

 

 驚愕な気づきだった。

 あまりの衝撃に愕然とする、が。……優しい睡魔の誘惑に『ふわあ』っと意識が飛んでいく。……私の幼年期って、いつ終わるんですか?

 

「んぅうう……っ!」

 

 不機嫌に唸ると「あらあら」心配そうな百ちゃんが、優しく頭を撫でてくれる。

 そして、スッと勝手知ったるとばかりに冷えピタを取り換えられ、良い匂いがするハンカチで汗を拭かれ、ずれた毛布を肩にかけられ、帰り支度の準備を―――って、犯人は百ちゃんでしたかー!? ありがとうございます甘やかしちゃダメです!!

 

「……んんんんっ!!」

 

 な、なんたる不覚と不甲斐なさだと「まあ!」百ちゃんの手を引っ張り、衝動のままかぷっ! と噛みつく。

 

「ひ、被身子さん……!?」

 

 嬉しいけど、ありがたいけど「あ、あの。くすぐったいですわ」次からは、自分で頑張りますから私に優しくしないでください! かぷかぷして、でも、チウチウは我慢なんです……!

 

 これ以上、百ちゃんに迷惑かけたくないのです!

 

 そういう意志を込めて、ハムハムして……でも、別にヤって訳じゃないです……だんだん、歯に力が入らなくて、ぐりぐりと頬を押し付ける。

 

(……ああ、百ちゃんの手、ポカポカしています)

 

 このまま、もっと、噛みたい……がま……寝ちゃ、ダメで…………すぅ。

 

 

「――――被身子さんは、私の子供だった……?」

「なんで!?」

 

 あ、うるさい。寝れないです。

 

「落ち着けヤオモモ!!??」

「ダメだよ!? トガちゃんはトガ家の子供だから正気に戻って!?」

「気持ちは分かるわ。……でも、それ以上はいけないわ」

「あわわ……!? 起きて被身子ちゃん!!」

 

 あ、お茶子ちゃんの声ぇ……

 

 ゆさゆさされて、気づけば百ちゃんの指をチゥと咥えている。……あ、汚いって思われちゃう。

 

 ねむねむのまま、取り出したハンカチでごしごしして「ごめんねぇ……」すると、百ちゃんが感極まった様な顔で「被身子ちゃん! 今はダメー!」ぐいーっと、引っ張られる。

 

(どう、したんですかね……?)

 

 ……眠くて、状況、さっぱり。

 そういえば……お茶子ちゃんに……アパートの解約……きいてない……

 

「被身子ちゃーん! 職員室に呼ばれてたよね!? 一緒に行こうか!!」

「…………ぅ」

 

 そう、です! 眠いけど、頑張ります……!

 

 私の方が、お茶子ちゃんよりお姉ちゃんです。ぬくぬく毛布だけは手放しがたくて羽織りながら、お茶子ちゃんに手を引かれて歩く。

 

「じゃあ、行こうって……うおおお」

「……?」

「何ごとだあ!!??」

 

 ……? あ、人がいっぱいですね。

 

 眠くて、気づけませんでした。……でも、別に気にしなくて良いのでは? ふらつきながら、お茶子ちゃんの腰に右手を回そうとして「ダメ!」と怒られる。

 

(……え?)

 

 ヒュン、と。お茶子ちゃんに怒られたと眠気が飛ぶ。

 

 え? ……え? 予想外に大きなショックを受けてオロオロするも(……あ)今のは拒絶されている訳ではなく、怪我をしているからダメなのでは? と気づいて、持ち直す。お茶子ちゃんはやっぱり優しいです。

 

「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ」

「敵情視察だろザコ」

 

 お茶子ちゃんに「チガウヨ!? 違うからね!?」って、いっぱい頭をなでなでされる。お団子を崩さない様にしてくれてますます優しい。でも、何が違うんですか?

 

 あ、爆豪くんはちゃんと教えてくれて優しいねぇ。

 

「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてえんだろ」

 

 安心したら眠くなって、お茶子ちゃんの肩に額を乗せる。……何か頑張ろうと思っていた記憶がありますが、今日はもう失敗している気がするので、明日から頑張ります。

 

「意味ねぇからどけ、モブ共」

「知らない人の事、とりあえずモブっていうのやめなよ!!」

 

 ふぁ。知らない人にモブって言うの、ダメなんですねぇ。覚えました。

 爆豪くんを見ていると、ダメな事が事前に分かって安心します。良い子ですよね。

 

「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

 うとうとしていると、お茶子ちゃんが背中を撫でてくれる。暖かいです。

 

「ああ!?」

「こういうの見ちゃうと、ちょっと幻滅するなぁ。普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴、けっこういるんだ。知ってた?」

 

 え?

 

 ぴくっと、目を開く。……『普通』科?

 

 そこに、憧れの普通科さんが、いるのです……? 纏わりつく眠気を振り払う様に、ゆっくりと顔をあげる。

 そこには、気怠そうな紫髪の少年(『洗脳』ですか)がいる。

 

 

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ……」

 

 

 ―――え。

 

 予想外の情報に、肩を震わせて固まる。

 

(……ウソ)

 

 それ、本当のお話ですか? ……合理的虚偽とか、夢ではなく?

 

 ガーゼをつけた頬を引っ張ろうとしたら「痒くても触っちゃダメ!」ってきつめに止められて断念する。

 

(……い、いえ()がいない時点で、此処は現実ですね……!?)

 

 っ、じゃあ、雄英って理不尽なだけじゃなくて、ちゃんと救済措置があったのですね……!

 ぱあっと、目の前が拓けた様な気持ちになる。

 

「敵情視察? 少なくとも普通科は。調子のってっと、足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー、宣戦布告しに来たつもり」

 

 そんな、奇跡みたいな事、あるんですね……!

 

(じゃあ、私が憧れの普通科に入れる事もあるんですね!?)

 

 可能性が現実味を帯びて広がり、今日ごちゃごちゃ考えていた気持ちが一気に晴れ渡っていく。

 

 私には合わない、勿体ない、ヒーロー科しかないって……言われ続けて、だから普通科を諦めました。

 でも、雄英では『ヒーロー科』こそが、私には合わなくて、勿体なくて、分不相応じゃないかと思うのです。

 

 そして此処ならば、こんな私でも『普通』の代表みたいな『普通科』に通える可能性があるのだと、頬が緩む。

 

「隣のB組のモンだけどよぅ!! 敵と戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!! エラく調子づいちゃってんなオイ!!!!」

 

 っ、そうです。彼の言う通り、少し冷静になるのです!

 

 改めて記憶を呼び起こして、雄英体育祭の仕組みを思い出します。

 確か、各学科でわちゃわちゃして、学年ごとに各種競技の予選を行い、勝ち抜いた生徒が本戦で競う……学年別総当たりの全国で有名な奴です!

 

(……つまり、本戦に普通科さんが残り、私が最下位、いいえ、もっとダメダメな印象を残せば、ヒーロー科を晴れて除籍されて、普通科への夢が開かれる……!?)

 

 高鳴りすぎて、そわそわする鼓動と期待を抑えて、真剣に考える。

 

「本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」

 

 そう。今こそ参加する気も無かった体育祭へのやる気が生まれている。

 

「…………」

「待てコラどうしてくれんだ、おめーのせいでヘイト集まってんじゃねえか!!」

 

 お茶子ちゃんの支えてくれる手をそっと外して、静かに歩んでいく。「被身子ちゃん……?」お茶子ちゃんの戸惑う声を背に、足取りに迷いは無い。

 

「関係ねえよ……」

「はあ―――――!?」

「上に上がりゃ、関係ねえ―――あ?」

 

 そんな、爆豪くんの隣をスッと通り抜けていく。

 

 そして「え!?」彼ら彼女らの前に「トガさん!?」静かに立つ。

 

「……?」

 

 毛布を羽織る私を見下ろす『洗脳』くんが、いぶかしげな表情をする。

 

 その場の全員から誰だこいつ……? という視線を向けられ、ここで自己紹介を……いいえ、このままでは失礼ですね。

 スッと、首から下に纏っていた毛布を脱いで、剥き出しになったギプスにひっかける。

 

 改めて「トガです。トガヒミコです!」胸をはって自己紹介。

 

 

 ザワッ、と。

 

 

 さっきまで、ひっそりと昂っていた熱が、何故か急激に冷えていく。

 私を見る瞳に、驚愕と動揺、微かな恐怖がいり混じっているのが不思議で、普通科代表だと言う『洗脳』くんも、目を見開いて息を呑み、湧き上がる感情を何とか堪えようとしている。

 

(……もしかして、ギプスですか?)

 

 腕を吊っているJKとはそんなに痛々しいものなのか、もしくは珍しい? 内心で首を傾げながら、目的を忘れてはいけないと、口を開く。

 

 

「応援しています」

 

 

 あえて、普通科代表の『洗脳』くんを見上げて伝える。

 

「……は、ぁ?」

「心から、貴方達に期待しています」

「……何を」

「頑張ってください。……こんな事を私が言うのは、気に障るかもしれませんが」

 

 胸に、包帯だらけの右手を当てる。

 ヒーロー科に在籍する私が、憧れの普通科さんに言うのは図々しいでしょうが。私は―――そんな普通科さんになりたいのです! という気持ちを込めて口を開く。

 

()()に、丁度良く足を掬える人間がいます!」

 

「―――――!?」

 

 

 ザワリ!! 先程とは違う意味で周りがざわめく。

 

 

 よし……! 掴みは上々ですと満足しながら、まっすぐに彼ら彼女らの視線を受け止める。

 

 伝わったでしょうか? 伝わったと信じますよ! そうです、私です、私こそをターゲットにするのです!

 

(私を狙うのです! おもいっきり恥をかかせて蹴落とすのです! 怪我人だからチャンスはたっぷりです! 頑張って私をこきおろすのです!)

 

 そんな気持ちを瞳に込めて、自らを差し出す様に目を細める。

 

 ここにいる彼ら彼女らが、もれなく私を普通科に昇らせてくれる蜘蛛の糸に成りえるのです!

 

 

「足元を掬う、なんて生温いです。―――足首からその先まで、全てを砕く勢いで私と舞いましょう。私と貴方達で、悔いの無い素晴らしい戦いをしましょう!」

 

 

 今だけは、不気味に笑ってやります。

 

 さあ、この邪悪な笑顔を見れば、私を狙う事への罪悪感などバカらしいと……いえ、ちょっと強張っていますね。あえて笑おうとするのは久しぶりで……もういいです、やめます。

 

 大きく目を見開いて、息を呑んでいる『洗脳』くんに手を差し出す。

 

「よろしくです。……本気で私に、普通科への招待状を叩きつけてください」

「……ああ」

 

 彼と目が合い、視線と視線が混じりあう。

 

(想いは通じ合った、筈です! きっと曲解ではありません! 裏取引が成立しましたよね!?)

 

 彼に、私の気持ちは(恐らく)通じた筈です。

 そして伸ばされる、彼の手は大きく、取引成立の握手は、あれ?

 

 そっと、包まれる様に、両手で握られる。

 

「……?」

 

 あの、気にせずバキバキって握り潰さないんです? むしろ、バキバキチャンスですよ? 全然力が入ってないですよ?

 

 あの、本当に潰さなくて良いのです?

 

 

「く……っ。トガの奴、男らしいじゃねえか……っ!!」

「普通科であろうと、好敵手として認める、という事か……」

「……自分を、奮い立たせてもいるんだろうな」

「くそっ。……あんな大怪我しといて、やる気満々ってか!? 負けられないな!!」

 

 

 ん……?

 

 外野から感じる空気、少しおかしくないです?

 あと、爆豪くんの、言葉にするなら『そんなザコ共より、俺を見とけやあ!!!!』みたいな視線が不穏で凶悪です。

 

 あと、怖い顔をしているB組の人は「……」暫く無言だったかと思えば、ズンズンっ威圧的にこっちに来て、その勢いに似合わないちっちゃい動きで毛布をバッと取って、バサッ! と肩に被せてくる。

 

「……おう! 事情を碌に知りもしねぇのに、まとめて煽っちまって悪かったな! 俺は鉄哲徹鐵だ!」

「よ、よろしくお願いします」

 

 なんか、カァイイ名前ですね。この人からは切島くんと似た空気を感じます。

 

 でも、何で毛布を被せるのです? 脱ごうとすると、強い力で阻止するの何でです? もしかして、この場では着てた方が良いのですか?

 

「……心操人使だ。……渡我、さん。当日は覚悟しておいてくれ」

「ええ、勿論です。どうか、私を喰らい尽くすつもりで来てください。―――こんなチャンス、滅多に無いですよ?」

 

 ニィ、と。

 今度の笑顔は成功しました。

 

 

(……ええ。とても、良い感じです!)

 

 

 これは、普通科に行っても上手くやれそうですね!

 

 ヒーロー科の私が、自らトレードを望んでいると大々的にアピールできた筈です!

 当日は、ただ待っているだけで此処にいる面々が私を陥れ、普通科へと導いてくれる。そう思えば嬉しくて、つい「ヒッ!?」「……ぅ!?」気持ちが緩んでしまう。……おっと、いけません。威圧感っぽいの出てるし落ち着きましょう。

 

 ヒーロー科で頑張るぞー! って感じのクラスメイト達に、この裏取引はばれてないでしょうが、怪しい行動は控えるべきです。

 

 ふぅっと肩の力を抜けば……ふありと欠伸がでてしまう。「……あ、職員室、行くんでした」ふやけた声がでて、お茶子ちゃんの手をつい探してしまう。「そ、そうだね!」そしたら、お茶子ちゃんにぎゅうって繋いで貰えて、うれしい。

 

「被身子ちゃんって……!」

「ふぁい?」

「やっぱり、ギャップが詐欺だと思うんよ!」

 

 え? 今、存在が犯罪者だって言われました?

 

 聞き間違いを願いつつ、人混みが割れていくので楽に職員室に向かいながら……それにしても、と視線を向ける。

 

(緑谷くん……急に怖いぐらい真剣になりましたけど、何かあったんですかね?)

 

 話している途中から、彼の空気がぐんっ! とやる気に満ち溢れていったのだ。

 爆豪くんは……ちょっと私への敵愾心? 闘争心? そういう感情が更に研ぎ澄まされていて、これ以上ロックオンされるとうっかり手がでちゃいそうで困ります。そしてクラスメイト達は、ピリピリ度があがっています。

 

 ……。

 もしかして、普通科さんに喰われる可能性に慌てているのでしょうか? ……それなら安心してください。個性テストの時と同じで、大丈夫です。

 

 

(だってソレは、私にこそふさわしい栄光です……!)

 

 

 ええ、私はヒーローになります。なります、が……『普通科』にも入ってみたいのです!

 

 結局はトガヒミコである私は、目の前にぶら下げられる魅力的な欲望に抗うのは難しく、道徳的に問題がないのなら積極的に取りにいくのです。

 

 普通科のトガ……素敵な響きです……!

 

 

 




 ※おまけなトガちゃんの怪我の具合について。

 13号の“個性”である『ブラックホール』により、左腕から手の甲にかけて皮と肉がチリになっている。保護する皮膚が無い為に出血が止まらず、緊急手術。一番の大怪我。

 脳無の攻撃による右頬の切創。彼女は平然としていたが、一部口内にまで貫通していた。なので、彼女が口を開く際、頬の傷と混じって口からもポタポタと血が流れていた。相澤先生は勿論気づいていたし、リカバリーガールが左腕の次に気にかけて“個性”をつかっている。

 右手。脳無への攻防により人差し指と中指の骨が折れている。親指と手首は罅が入り、細かい傷や痣で赤黒くなっている。

 頸部。鎖骨から顎下にかけて切創があり、右頬と同じくガーゼと包帯でしっかりと保護されている。

 左脇腹と右大腿部。切創により何針も縫っている。包帯でがっちり保護されている。

 全身。とにかく裂傷、擦過傷、熱傷、その他の細かい傷があり。治療跡で痛々しく保護されている。


 結論として、顔は右頬のガーゼのみが目立つが、首から下を一般人が見たら腰を抜かす。


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