上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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18話 雄英体育祭と第一関門です

 

 雄英体育祭の当日。

 

 最終確認ともいえるリカバリーガールの健康診断を終えた私は、無事に出場を許可されました!

 安堵と同時に訪れる眠気に逆らわず、その後は控え室でまったりと過ごしています。

 

「……♪」

 

 パイプ椅子を集めて簡易ベッドを作り、百ちゃんが好意で膝枕もしてくれて、とてもご満悦です。

 数日前にはギプスが外れてお風呂にも入れる様になりましたし、良い事づくめです。

 

「トガちゃん、リラックスしてるねー」

「……廊下であんな啖呵きっといて、本人はこれだもんね」

 

 むぅ? 耳郎ちゃん、つんつんやめてください。

 ヤですと体勢を変えながら、百ちゃんのお腹に鼻をくっつける様に抱きつく。

 

「あ、ごめん。ヤオモモ大丈夫?」

「はい! むしろ、ありがとうございます!」

 

 なにがです?

 

「……やっぱり、引き離した方が良い?」

「ヤオモモのママ進行度、今日は早いね」

「トガちゃん、今日もお団子にしてないね?」

「うん。無い方が撫でられる面積が増えるからって」

「……子供だわ」

 

 ん~……百ちゃんは良い匂いがします。

 頭もいっぱい撫でてくれるし、ほっぺもなでなで気持ちが良いのです。……ああ、このままずっと微睡んでいたいと、うとうとに拍車がかかる。

 

「…………んに」

 

 チゥ、と。百ちゃんの手に吸い付いて「!」体育祭の事を今だけは忘れて、ゆったりと意識をたゆた「皆準備は出来てるか!? もうじき入場だ!!」ビクッとしました。……あ、飯田くんですか。

 

「飯田さん! 被身子さんが微睡んでいましたのに!」

「もうちょーっと、声をおさえてあげてー!」

「被身子ちゃん、びっくりしたねー。……でも、タイミングは良かったかも。指を吸い出したら本格的にねむねむちゃんになるんよ」

「トガー、1人で起きれそう? 抱っこする?」

「そ、それはすまなかった!! トガくん、オレンジジュースを飲むかい?」

 

 ありがとうございます。ちょっと心臓が跳ねていますけど平気です……

 フラフラしつつ、まだ意識はしっかりしている方だと、百ちゃんに髪を耳にかけて貰いながら身を起こします。

 

「……っ。響香ちゃん。私たちが最後の砦よ。私たちだけはヒミコちゃんに厳しく接するのよ」

「……いいんだけどさ。ウチはともかく、梅雨ちゃんちょくちょく陥落してるよね?」

 

 起きれました。飯田くんがくれたオレンジジュースを飲みます。

 

「にしても、コスチューム着たかったなー」

「公平を期すため、着用不可なんだよ」

 

 んむ? 百ちゃん、口元をわざわざ拭いてくれなくて良いですよ?

 

 もう自分で拭けますし、お茶子ちゃん曰くまだ怪我人の出で立ちらしいですが、すでに全快と言って差し支えないのです。……まあ、嬉しそうにお世話してくれて嬉しいので、本気で止めるつもりはないのですが……私の方がお姉ちゃんだって、いつ伝えればいいのでしょう?

 

「緑谷」

 

 そんな時、轟くんの声がして、百ちゃんが少し気にして手を止める。

 

「轟くん……何?」

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へ!? うっ、うん……」

 

 そうです? うーん……どうなんでしょう?

 私より弱い子の強さの順番とか、気にした事なかったです。

 

「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな」

「!!」

「別にそこ詮索するつもりはねぇが……おまえには、勝つぞ」

 

 元気ですねぇ。

 

「おお!? クラス上位からの宣戦布告!!??」

「急にケンカ腰でどうした!? 直前にやめろって……」

「仲良しごっこじゃねえんだ。何だって良いだろ」

 

 ふあ、っと欠伸をすると、少し緊張していた百ちゃんが『ふう』と詰めていた息を吐いて、私をそっと抱き寄せる。

 

「……。轟くんが、何を思って僕に勝つって言ってんのか……は、わかんないけど……」

 

 おや?

 想像よりずっと、緑谷くんの声はしっかりしている。

 

「そりゃ、君の方が上だよ。実力なんて大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても」

 

 スッと、俯いていた顔をあげる緑谷くんの瞳は、挑む者のみが持つ光を宿している。

 すでに腹を決めた者にのみ出せる輝きに、何かを言おうとした切島くんも「……!」口を閉じる。

 

「皆……他の科の人も、本気でトップを狙ってるんだ。僕だって――――遅れを取るわけには、いかないんだ」

 

 彼の瞳が、一瞬だけ私を見て。まっすぐに轟くんに向けられる。

 

「僕も本気で、獲りに行く!!」

 

 ……。

 男の子って、成長が早いんですね。微笑ましくなりながら『ふあり』と欠伸。

 

「………。おお」

 

 さて。そろそろ時間の様だと、そんな彼らを横目にのんびりと伸びをする。

 

(良い感じです)

 

 クラスの皆がやる気を出せば出すほど、私は『普通科』に近づけるので、こういうカァイイ諍いはむしろもっとやって欲しいのです。

 

 控え室に充満していく熱意とかやる気の様なものに、満足しながら立ち上がる。

 それと同時に、控室のドアが開いて入場ゲート前に移動だと伝えられ、欠伸を堪えながらのんびりと皆より先を歩いていく。

 

(……?)

 

 途端、私の背中に視線が集まってくる。場の空気が一つになるのを感じて、ちょっと戸惑う。

 

 ……私、実は恨まれてます? 今日に限っては都合が良いですが……こんなにも『負けられない』って感情が一心に向けられるのは変な感じです。

 

 まあ、眠くて歩調は遅めなので、即座に追ってきた皆に追い抜かれるんですけどね。

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』

 

 ゲートから、声が響いてくる。

 

『どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!!?? 敵の襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!!』

 

 皆に合わせて歩きながら、ぼんやりと目元を擦る。

 

 

『ヒーロー科!! 一年!! A組だろぉお!!??』

 

 

 ……ちょっと、うるさすぎません?

 テレビで見るのと違って、音量調節できないのが辛いです。

 ゲートを通り抜けると太陽が眩しくて、目がしぱしぱする。

 

「わあああ……人がすんごい……」

「大人数に見られる中で、最大のパフォーマンスを発揮できるか……! これもまた、ヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

 

 ……? 緊張するんです、これ?

 

「めっちゃ持ち上げられてんな……なんか緊張すんな……! なァ爆豪」

「しねえよ、ただただアガるわ」

 

 アガる? ……私には眠気しか押し寄せてこないです。

 

『B組に続いて、普通科、C・D・E組……!! サポート科、F・G・H組もきたぞー! そして経営科……』

 

 放送、露骨でとてもいいですね! もっと他の科を煽ってやる気を出させて欲しいで――――えっ????

 

『選手宣誓!!』

 

 最近、凄くどこかで見た事がある全身防護服の、ええと『ミッドナイト』が、ごつい格好のまま、軽快に鞭を振るっています、けど…………何してるんです?

 

 周りの皆も、観客も、18禁要素の消えた声だけミッドナイトの姿にザワッザワしています。

 

 いえ、本当に色々な人の目がある今日という日に、どうしてそんな恰好で……

 

 

「ミッドナイト……とうとう規制されたか」

「なんっでだよ!!?? やる気激減じゃねぇか!!!!」

「18禁ヒーローだしなぁ……」

「実は、いつかこんな日が来ると思ってた……」

 

 

 ピシャン!! と鞭を振るい『静かにしなさい!!』と怒っているミッドナイト……もしかして、私のせいです?

 

『選手代表!! ―――1-A爆豪勝己!!』

 

 私が、眠くなっちゃうから……ミッドナイトはそんな恰好で人前に立っているのかと思うと、なんだか落ち着かない気分になる。

 

「え~かっちゃんなの!?」

「あいつ一応、入試一位通過だったからな」

 

 複雑な気持ちでミッドナイトを見つめていると、マイクの前に立った爆豪くんがそんな私に気づいて、苛立たし気に睨んできた気がする。

 

(ん?)

 

 少し気になりますが、気のせいでしょうとミッドナイトを見つめる。

 顔は見えないけど、感覚で目が合っているのが分かり、少し嬉しくなっていると『せんせー』選手宣誓がはじま……あれ、爆豪くんがまっすぐに私を指さしているような?

 

 

『俺が! 一位になる!』

 

 

 んー? 驚いて目を丸くするも「絶対やると思った!!」爆豪くんと目があうと、物騒な笑みをニヤリと浮かべて、首を掻っ切る様なポーズをする。

 

『せいぜい、跳ねの良い踏み台になってくれ』

 

 あの、私を見て言ってません?

 

(……いえ、もしかしたら自意識過剰な可能性もありますし)

 

 実は私の後ろに「調子のんなよA組オラァ」爆豪君が気にしている人が「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」あれ、いませんね? というか「怪我人に宣戦布告かよ!?」そこにだけ誰もいないというか「ヘドロヤロー」皆あえて私の後ろに立とうとしないというか避けて……え? 苛めです?

 

 んー? きょろきょろしていると、戻って来た爆豪くんにギラギラした目で睨まれたままで……とりあえず手を振っときました。…………わぁ、殺意すら滲んできたんですけど、短気過ぎません?

 

『さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう』

 

 余韻も何も無いですねミッドナイト。お茶子ちゃんも「雄英って何でも早速だね」って呆れてますよ。

 

『いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!! さて運命の第一種目!! 今年は……コレ!!!!』

 

 あ、今気づいたけど、防護服の手首部分に手錠があります! ……ちょっとカァイイですね! ええと、モニターの内容は「障害物競走……!」ですか。緑谷くんの声を耳に、少しだけ気合をいれます。

 

『計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km! 我が校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!』

 

 とりあえず、後ろに下がっていますか。

 スタートへの合図に皆が注目しているので、気配を消すのも楽々です。

 

『さあさあ位置につきまくりなさい……』

 

 そう。上手に『普通科』に入るためにも……この子達のレベルが分からないと調整も難しいのです。場に急激に満ちていく熱気に、ふう、と気配を溶け込ませていく。

 

 

『スタート!!』

 

 

 ワッ!! と、ミッドナイトの声と共に、溜め込まれた緊張感が一気に爆発して、熱気を纏いながら走っていく同級生たちを静かに見送る。…………んー。

 

(“個性”ありきで考えても、全員弱そうって直感以上に分かる事がありません!)

 

 力量差以前に、例えるなら地面で働く蟻さんの見分け方とか、専門家以外で分かる人いるんです?

 

(……いえ、ダメです! ここで頑張れば夢の『普通科』ですよ!) 

 

 面倒臭くなってはいけないと、動きながら出来る事を探っていこうと目を細める。入り口のゲート付近が凍ったのを見つめながら、人ごみに紛れて走り出す。

 

『さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!? イレイザーヘッド!!』

『無理矢理呼んだんだろが』

 

 先生たちは楽しそうで良いですね。……私もあっち側がいいです。

 

 解説の声を聞きながら、このくらいの速度かと、足が凍っている生徒たちを避けて走っていく。……先頭はガヤガヤ騒がしそうです。……あ、ロボがいっぱいいます。

 

『さあいきなり障害物だ!! まずは手始め……第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

 なんか、どっかで見た事がある様な……「入試ん時の0P敵じゃねぇか!!」ああ、そうでした。柔らかいって事は覚えています。

 最後尾なので、落ち着いて周りが見えますね。……やっぱり私は観客が良いです。

 

『1-A轟!! 攻略と妨害を一度に!! こいつぁシヴィー!!!!』

 

 んー。何してるか分かんないけど、頬に当たる風が冷たくて心地良いです。

 

『すげぇな!! 一抜けだ!! アレだなもうなんか……ズリィな!!』

 

 しかし、どうしたものでしょう……?

 

 ここまで、ちゃんと普通科さんはついて来ている様ですが、初めて見るロボに怯えている人もいる様で、足が止まって尻込みしている人が多いです。

 

(……普通科さんが上に来てくれないと、意味が無いのです)

 

 しょうがないですね。

 

 少し速度をあげて、立ち往生している生徒達の間にスッと紛れ込み、姿を隠しながら手を合わせる。そして祈り、合わせた手を高く捧げる。

 

「――っ」

 

 瞬間、合わせた手に宇宙を感じると同時に、星の小爆発が起こる。

 

 独特の音が生まれ、集中した結果100発以上の光が太陽の下で煌めいて飛び散り、尋常じゃない破壊力をもって全方位に雨の如くズガガガガガッという感じに降り注ぐ。

 

「え!?」

「なんだぁ!?」

「誰かの個性!?」

 

 そして、全ての光が狙い通りロボを追尾し、避けようとしても続けざまに悉くを破壊していく。

 

「ふぅ……!」

 

 彼方への呼びかけ。悪夢では、立ち回りに気をつけないとほとんど当てられませんでしたが、これだけ大きくて鈍い機械が相手なら、全弾命中もいけるものです!

 

 

『―――はああ!? ロボ地帯、突然小規模の大爆発とかいう意味不明な事が連続で起こったかと思えば、ロボが全部ぶっ壊れてやがる!! 何が起こったー!?』

 

 

 この隙に、紛れこむ様に走り出します。

 他の科の人達も、これに息を吹き返して楽しそうに駆けて行きます。

 

「……」

 

 ふと、髪が茨の様な女の子に、ジッと見つめられましたが……ばれていないですよね? いえ、むしろばれても問題ない筈です。

 

 ふふふ、この調子で普通科の人達をこっそり牽引していけば、最後尾で早々に脱落するヒーロー科の私が除籍されるのは確実です。

 

 さあ、次も彼ら彼女らを守ってみせますよ!

 

『オイオイ第一関門チョロイってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!!』

 

 さて、次は……………ぁ。

 

 

『ザ・フォール!!!!』

 

 

 無数にできた崖と、縄。……つまり、綱渡り……うん。無理ですね!!

 

(これは、こっそり助けられないです……っ)

 

 ここで余計な事をしたら、絶対に相澤先生にはバレる気がするので、泣く泣く1人で走る事にします。……一応、ロボは全滅してるっぽいし、ここを越えられる普通科さんはいると信じてますからね!!

 

 やる気を激減させながら、縄に一歩を踏み出した。

 

 

 




 ※おまけな爆豪くんのトガちゃんへの心境について。


 初期→最下位の癖に「私が一番強い」発言に調子のんな死ね!!!! ブチギレ。次に目ざわりだったらぶっ潰す!!!!



 戦闘訓練→緑谷くんへの敗北で、尊大な自尊心が傷心中でも、気に喰わない相手の戦いは見ている。
 そして、初手の轟くんの氷を葉隠ちゃんを助けながら避ける(……ッ!! 俺んだって、そんくらいできるわボケェ……!!)カメラにはしっかり映っているのに、目の前を通過しても気づかれない様子に驚くも(そういう個性か……!?)と、納得。からの障子くんノックアウト(……あ゛!?)そして“変身”(――――!?)轟くんの後ろを歩いていく姿に、自分だったら気づけるかと想像してゾッとする。

 そして、核の部屋での不意打ちから確保までの派手さは無いが圧倒的な試合運び、それを可能にする力量差に、轟くんの“個性”と同じか、それ以上に底が見えないと(なん、なんだよ、アイツ……!!)勝てないんじゃないかと、思ってしまった。



 USJ→飛び出して殴ってから、その『ありゃ……』とばかりの少し困った顔に、知らぬ間に教師と打ち合わせ済みな事を知った。知るかクソが!!!! やった事よりも、そのやりとりに一切気づけなかった自分に一番腹を立てる。

 戻ってきたら、飛び出していた緑谷くんやトガちゃんより先にモブモヤに効果的な一撃をいれられて(ザマア!!!!)テンションぶち上がり、からの怪我ぁ? あんなモブにやられたんかと複雑なイラつきを爆発させてトガちゃんを見て、その有様に目を見開く。

 羽織る真っ黒なコートで気づかなかったが、よく見れば赤く染まったシャツとすでに機能しているとは思えない左腕。謎の形状をした武器をもった右手もところどころ赤黒く変色している。(―――あ?)予想の許容範囲外の重症に『……ッ!?』苛立ちと混乱を同時に脳内爆発させながら、突然の脳無の動きに一切反応できず、しかし見てしまう。

 自分を守る様に前に立つ、トガヒミコの背中を。

 オールマイトが、彼女を信じて自分を助ける事を優先した事。そして、ナンバーワンヒーローが、彼女に自分たちを託す様な視線を向けている事。
 そんな重症を負いながら、オールマイトに頼られる女。……自分では無く。

 現状の全てを屈辱に変換して、血を吐く様な怒りを覚える。 

 後に、あの左腕が13号を庇った末に負ったのだと、泣いているクラスメイト達から聞いてしまう。
 その場にいた自分たちは反応すらできず、彼女だけが動いたと。そして、そんな傷を負いながら駆けて行った背中を、誰も止められなかったと。

 切島くんが零す様に『あの時、俺たちが考え無しに動かなきゃ……トガは怪我しなかったんじゃないか……?』その可能性に気づいていたからこそ『知るか!!!!』吐きすて、苛つく。

(つまりあの欠伸女は……あの化け物と、右だけで戦ったっつうんか……!?)

 その事実が、一番堪えていた。



 廊下→大怪我で登校してきやがったので、流石に寝てろや!!!! と叫ぶのをいっぱい我慢した。

 今口を開いても、助けられた事への文句やら、絶対に言う予定の無い謝罪とか、宣戦布告とか、自分でも心の整理がついていないので、無視という形で視界にいれない事にした。

 だってのに、自分をさしおいて普通科モブと勝負するとかふざけんな! なんっで俺じゃないんだと、内心で大爆発を起こしている。

 緑谷くんは、まだ自分を意識しているから気に喰わないが視界に入る度にぶっ潰す!! で、すんでいるけど、トガヒミコは自分を意識すらしていない。クラスメイトと認識されているのかも怪しい。いつも眠そうに女子に世話されて、睨んでいるとさりげなく壁ができるし、男子達もしれっと間に入ってくる。

 自分が気にしている相手に、存在すら気に掛けられていない現実に、内臓が煮えくりかえる様な怒りを知った。

 俺を、無視できなくしてやる……!!!!

 彼が、トガヒミコを睨む視線は日に日に数と時間と濃度を増しているが、トガヒミコは気づいていない。彼女は、普通科に通えるかもしれない未来にウキウキしていた。

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