上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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20話 チーム決めと騎馬戦の開始です

 

 

 ミッドナイトの防護服、太陽の光を吸ってポカポカしています。

 

 すよぉ……と、眠りそうになっていると、ミッドナイトにポンポンと優しく肩を叩かれてハッとします。

 そうでした、交渉タイムでした。こそこそとミッドナイトの防護服の隙間から顔を出して、場が落ち着いているか様子を見ます。

 

 

「気配消すの、相変わらずヤバ……!!」

「見つからないー!」

「刹那にて、眼前から掻き消える、か……」

「どんな“個性”の使い方だよ? 渡我の奴、絶対まだ隠し玉あるぞ!」

「ここで逃げるとか、クラス最強の自覚無いのか?」

「ある訳ないでしょ、渡我だよ?」

「ごめん」

 

 

 うえー、まだ探してます。

 

(諦めましょうよぉ……)

 

 というか、A組の“個性”まで使った捜索に、B組まで興味を持っています。

 チーム決めの交渉をしながら私を探してるの迷惑です。……これは、いずれ見つかりますね。……ヤですが腹をくくりましょう。

 

「あ、あの~」

 

「「「「いたー!!」」」」

 

 やめてください。

 目立つのヤなんです。

 

「ミッドナイトの後ろって、いつの間に!?」

「まあ! 被身子さんはかくれんぼもお上手なんですね」

「ヤオママ、今は和んでる場合じゃないから!」

「トガぁ! 俺と組もうぜ!! 爆豪も一緒な!!」

「ハアァ!!?? 勝手言ってんじゃねェぞクソ髪ィ!!!!」

 

 お、落ち着いて?

 そろそろ5分たちますよ? 真面目に私以外と交渉しましょう?

 

 少し悩んで、心苦しいけどちゃんと言おうと「あ、あの……」一度ひっこめていた顔を、意を決してミッドナイトの腕の隙間から出して、しっかりと伝える。

 

「私は、騎馬戦をA組の人とするつもり、ないのです……!」

 

 途端、皆の顔が驚き一色になる。

 

「「「!?」」」

「そんな……」

「被身子ちゃん?」

「なんで!?」

 

「だ、だから、ごめんねぇ……?」

 

 驚いている皆に申し訳なく頭を下げながら『加速』して、視界に捉えていた心操くんの後ろにザッ! と移動する。

 

「! ……渡我、さん?」

「突然ごめんなさい、心操くん。私とチームを組みませんか?」

「……っ!?」

 

 え、全身で動揺してる?

 

 まるで『自分が誘われると思わなかった』みたいな顔にこっちが困ります。

 私と貴方は、あの廊下でヒーロー科と普通科のトレード裏取引をかわした同士ですよね? ……あ、もしかして。

 

「0Pは、お呼びじゃ無いです?」

「! いえ、大丈夫、です。俺なんかでよければ……」

 

 あ、良かったです。

 表情がほとんど変わらないから、心操くんが何を考えているのか分かりませんが、ここで拒絶されなかったのは僥倖でした。流石に同チームじゃないとフォローするのも大変です。

 

「良かったです。一緒に頑張りましょう」

「……!」

 

 廊下の時と同じ様に握手しようとすると「「「えー!?」」」と、こっちに気づいた皆に見つかってしまう。差し出される心操くんの手がぴたっと止まる。

 

「トガぁ!? なんでだよ!? オイラじゃダメなのかよぉ!?」

「彼、廊下で宣戦布告していた人ね」

「ええ、普通科の方ですわ」

「……また、何を考えているのか分からない事をっ!」

「読めない……!」

 

 詰め寄ってくる皆の勢いが強すぎて、咄嗟に秘儀を使いそうになりました……

 

 ダメです。例えるなら皆は足元でにゃあにゃあ鳴いている猫ちゃんなんです。

 カァイくてか弱くて、下手に動くとうっかり殺しちゃいそうで、一気にこられるのは困ります。

 

 びっくりついでにマダラスの笛とか鳴ったら、A組が大蛇の餌になるので本当にやめてください……!!

 

「……ぅう」

 

 つい、で殺しちゃわない様に、すすっと心操くんの後ろに隠れます。

 

 ええと、とりあえず適当な事を言って皆を宥めなくてはですね。……そう、真面目で頑張り屋さんの皆なら……

 

 

「私は、皆に挑戦したいのです」

 

 

 こうです!

 

「「「「……!!??」」」」

 

 あ、ちょろい。

 嘘じゃなくて、ちゃんと真実を混ぜているので問題ないですが、そこまで喰いつきます?

 

「……私は、皆とちゃんと戦いたいです。だから、同じチームじゃダメなんです」

 

 平時から『普通』の仮面(ちょっとひび割れてはいますが)を被る私は演技が得意です。

 そして、今この場において私は、心操くんを目立たせる事を優先しているのです。

 

「ただの勝負なら、私が一番強いです」

「ッ!! 欠伸女ァ……!!」

 

 い、威圧はやめましょう?

 

 そんな迫力を出せちゃう子がいるからこそ、やっぱりA組と一緒に勝ちあがるのは無しです。

 地味でか弱い心操くんが霞みます。

 

「個人競技なら、好きに調整できます」

「……あ、最下位はやっぱり狙ってたんだ。……怖ッ!!」

 

 上鳴くんが失礼です。……いえ、何故か皆が同じ感想を抱いているのが分かったので、代表だっただけでつまり皆が失礼です。

 

 ……。

 心操くんを目立たせる為に、そんな失礼な皆には踏み台になって貰います。

 

「この団体競技なら。私は、A組に負ける可能性があります」

 

 ザワッとする皆に頷きつつ、まさかの5%の確率です。高いです。ヒントはミッドナイト。

 A組を通り越して、脅威であるミッドナイトを意識しながら彼ら彼女らを見つめる。

 

「だからこそ、私は皆と戦いたいです……!」

 

 スッと唇に指をあてながら、ニィと口角をあげる。

 

 

「敗北の泥味……私に、味わわせてくれますか?」

 

 

 ……うん。

 不気味な笑顔を浮かべられたと満足しながら落ち込んで、静かに待っていてくれた心操くんの背を押して、その場を去る。

 

 

「――エロイ!!」

「やめろ!? トガだぞ!? ……トガなのに……!!」

「ギャップがさ、犯罪どころか巨悪になってきたね」

「……ったく、トガはさぁ……普段は赤ちゃんなのに」

「ずるすぎる。……でも、なあ?」

「これで燃えないとか、無いな……!!」

「負けないぞー!」

「ああ! クラス最強からの挑戦状だ! やるしかないよな!!」

「…………ッッ!!」

 

 

 ズオォ……! と。

 

 皆の気合が良い意味で高まっている。

 下手すると、それは試合というより実戦に近い緊張感と集中力で……んー?

 

(……私、そこまで過激な事は言ってませんよね?)

 

 ちょっと、煽っただけですよね?

 殺し合おう、なんてニュアンスは含んでませんよね?

 

 なのに、実戦を経験したばかりの彼らは、まるで次の本番を前にした戦士の様で……A組の迫力に中てられた心操くんが顔を強張らせています。

 ……あの。このプレッシャーは、1位の緑谷くんに浴びせませんか? 緑谷くんも含めて、なんで私達に挑戦する形になってるんです? おかしいですよね? 冷静になりましょう?

 

(……様子見っぽいB組も、A組と私達への警戒度をあげまくってるじゃないですかー)

 

 ヤです面倒そうです。

 どうやってさぼろうと顎に指をあてていると「渡我さん」声をかけられて、つい振り向く。

 

「……はい。あ!」

 

 そこには、あの時の『ツル』の子が立っている。

 

 近くで見るとカァイイと見惚れていると、そんな私に近づいて、丁寧に茨のツルで覆われる頭を下げる。

 

「私は、B組の塩崎茨と申します」

「と、トガです。トガヒミコです」

「ご丁寧に。……渡我さん、突然の申し出、失礼します! 私と、チームを組んでいただけませんか?」

 

 ……はい?

 突然の申し出が意味不明すぎて固まっていると、ズイッとその横に大柄な影。

 

「おう、塩崎に先を越されたな! 渡我、俺とも組もう!!」

「て、鉄哲くん!?」

 

 これは、更なる予想外です。

 目の前には、あの廊下でお知り合いになった鉄哲くんが立っている。

 

 B組の塩崎ちゃんと鉄哲くんが、まさかのチームを組んでくれると申し込んでくれました。

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

 B組なら、世間から注目されていないので嬉しい誤算ですが、どうしてでしょう?

 

 とにかく、興奮してこくこく頷いていると、2人は各々の表情で笑ってくれる。

 ……いえ、背後からのA組の視線が痛いですが、今は振り払うのです!

 

 と、とりあえず、こういう時は……自己紹介? チラと心操くんを見ると、彼は察して頷いてくれる。

 

「普通科の心操人使だ。渡我さんのおまけだが、よろしく頼む」

「謙遜するな! 俺はB組の―――」

 

 そのまま、心操くんとB組2人の自己紹介を聞きながら、一気にやれることが広がって、思考が少しだけ忙しくなる。

 

(……最初は、心操くんを背負ってハチマキを集めるつもりでしたが)

 

 この2人がいるなら、せかせか動く必要が無いですね。

 

 んー。『スティール』と『ツル』と『洗脳』…………ああ、いえ。その前に確認しないと喧嘩の元でした。

 

「あの、私が騎手でも良いですか?」

 

 手をあげて主張する。ダメなら、別の作戦を立てようと考えていると、3人に意外そうな顔で頷かれる。

 

「いいぞ!! 渡我が適任だろ!?」

「勿論です」

「渡我さんなら、問題ない」

 

 ……あれ?

 あっさりと決まってしまいました。

 

 あまりに都合の良い展開が不思議で、首を傾げてしまう。

 

「……ありがとう、ございます?」

 

 知らない人達と急造でチームを組んでいるのに?

 

「……作戦とかも……私が、決めていいのでしょうか……?」

 

 だんだん意味もなく不安になってきて、上目に見つめる。

 

「おう!! よろしく頼む!! さっきの話は聞こえていたしな!!」

「渡我さんの作戦、是非お聞かせください」

「……意見はします」

 

 おお……! いいんだと少し嬉しい。

 でも『さっきの話』ってどれでしょう? 覚えが無いのですが、都合が良いのはラッキーです。

 

「では、作戦ですが――――」

 

 塩崎ちゃん、鉄哲くん、心操くんの、真剣な視線がくすぐったい。……この3人は、勝たせてあげないとですね。

 

 眠いけど、頑張ります。

 今だけはと、欠伸を堪えながら考えたばかりの作戦を伝えていく。

 

 途中、眉を顰められたりもしましたが、なんだかんだ納得して貰い、作戦の共有はギリギリで交渉タイム中に終わる。

 

 

「という感じで、シンプルにいきます」

 

 

 締めくくると、塩崎ちゃんが手をあげる。

 

「はい、塩崎ちゃん」

「作戦は分かりました。充分に効果的であると理解もします。……ですが、それで良いのですか?」

「なにがです?」

「……渡我さんに責任の所在が傾きすぎています。……失敗すれば、私達はその時点で敗北します」

「しないですよ?」

 

 塩崎ちゃんは何を気にしているのでしょう? 分かりませんが、大丈夫ですと頷く。

 

「鉄哲くんが踏ん張れないとか」

「む?」

「心操くんがこけるとか」

「……」

「塩崎ちゃんのツルが脆弱でもなければ、失敗はないです」

「……」

 

 まあ、それ以外の要因で失敗するとしても。

 

「大丈夫です。皆が失敗しても私がフォローします」

 

 お姉ちゃんとして、君たちを助けますと目を細める。

 暫し無言で見つめられますが、気にせず視線は逸らしません。

 

「……言葉では無く、態度で語るか!! ますます気に入ったぜぇ渡我ァ!!」

「……そこまでのご意志がおありなら、私は全てを受け入れます」

「……渡我さんの足を、いや、誰の邪魔になるつもりも無い」

 

 ああ。良かった。

 気合は十分みたいですね。

 

 

『さぁ起きろイレイザー! 15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに11組の騎馬が並び立った!!』

『…………なかなか、面白ぇ組が揃ったな』

 

 騎手に私。前騎馬に鉄哲くん。後騎馬に塩崎ちゃんと心操くん。

 

『さァ上げてけ鬨の声!! 狼煙を上げる!!!! 血で血を洗う雄英の合戦が今!!』

 

 裸足になり、組んで貰った手の上に乗り上げる。

 

「ん?」

「え?」

「……は?」

 

 何故か3人に、異常なものを見る目を向けられますが、どこか変です?

 

『よォーし、組み終わったな!!?? 準備はいいかなんて聞かねぇぞ!! いくぜ!! 残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

 

「鉄哲、塩崎、恨みっこなしだぞ」

「お、おう!」

「はい……」

 

 B組の子に激励されてるのに、なんだか気もそぞろですね?

 

『3!!』

 

 まあ、いいです。

 

『2!!』

 

 それじゃあ。

 

『1……!』

 

 私達の勝利の為に。

 

 

『START!』

 

 

 緑谷くんには、負けて貰いましょう。

 

 

 

 

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