上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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40話 前途は多難そうです

  

  

 芦戸ちゃんの血は芳しく、滑らかで濃厚な舌触りを想像させる。

 

 ごきゅりと喉が勝手に嚥下して、湧き上がる渇望を自分の血で誤魔化す。彼女の血はきっと美味しいぜったい美味しいチウチウしたいと、負傷した芦戸ちゃんを出張保健室に運びながらボタボタと涎をこぼし、唸りながら我慢した記憶は新しい。

 

(……とても、拷問みたいな時間でした)

 

 辛かった。

 胸を掻き毟って心臓を潰したいぐらい苦しかった。

 

 芦戸ちゃんが、ショック状態で意識を失っていたのも悪くて、酸に覆われて血の香りが濁っていなければ、我慢できずその肌に歯をたてていた。

 自分の顔が溶けるのもお構いなしに、意識のないクラスメイトに覆いかぶさり、酸で覆われた皮膚をプチッと喰い破り、チウチウと……えっちな事をするところでした。

 

(……そういうのは、しかるべき関係になって許されてからです……!)

 

 チウチウは、私にとっても刺激が強いんです。

 

 ただでさえ、性欲と食欲が同時に満たされるドラッグじみた快感です。止まれる自信もないのに、意識の無い相手に一方的とかダメすぎます。チウチウだけでも犯罪なのに、更に罪を重ねてしまいます。

 塩崎ちゃんの時もチウチウにならない様、ちょっと舌で掬うぐらいで我慢したんです。あそこで血の味にクラクラして唇を奪わなかった私をもっと褒めて欲しいです。

 ほんとうは、もっといっぱ……っ、いえ、自重しましょう。私はクールなトガヒミコです。我慢のできる当たり前で『普通』な私になるんです。

 

「……ト、ガ?」

 

 でも、悪夢の『普通』は違うのです。

 

 ここに、現実の法はありません。私達がこの世界の主であり、そんな私を望んだのは芦戸ちゃんです。この子を好きにして良い条件が揃っています、けど。

 

 

(……ッ。リカバリーガールの、呼び出しさえなければ)

 

 

 ギチリ、と。奥歯を噛みしめます。泣いちゃいそうな焦燥感です。

 

 今すぐにでも、芦戸ちゃんをチウチウしたい。彼女の首に口付け、その味を堪能したい。脳の瞳を開く事なく壊してあげたい。

 

 芦戸ちゃんの軽い頭を抱きしめながら、女の子の遊びをしましょう。

 

 四肢を丁寧に裏返しましょう。胴体を開いて内臓を彩りましょう。血管を噴水に、皮膚は受け皿に、骨を研磨し、小骨は楽器に、油で艶を、余った部位は摘まみ食い。たった一夜の肉の花を咲かせましょう。

 

 月光に照らされる“貴女という名の花”は、カラカラと揺れてきっと綺麗です。

 

 

(……でも、それは今度です)

 

 

 お婆ちゃんに、どれだけ時間をとられるか分からない以上、芦戸ちゃんの様子を見に行けないからダメです。

 

 これは夢であり夢ではないと、自覚と同時に芦戸ちゃんが壊れたら困ります。芦戸ちゃんは強い子ですが、死を受け入れられるかどうかは別問題です。

 

(……芦戸ちゃんの、内側に触りたかったです)

 

 熱さを、ぬめりを、匂いを、味を、感じたかったけど、切り替えます。

 だから、別のショック体験で夢を自覚させようと、私は彼女の衣類を切り裂きます。

 

 はらり、はらりと。

 芦戸ちゃんが反応する隙を与えず、呆ける彼女の病衣()()が、また一枚落ちていく。

 

「……?」

 

 芦戸ちゃんは、まだ気づいていません。

 

 走る刃の軌跡に、彼女は目を見開くばかりで身じろぎしません。

 すでに病衣は布切れになり、地面に散らばっている。その下は全裸であり、皮が剥かれる果実よりも瑞々しい姿を晒している。

 

(……っ)

 

 ツン、と鼻の奥が痛くなってきました。

 

 ……じつは、この病衣の下が全裸だと、忘れていました。

 これ、今更ですが私、芦戸ちゃん生け花計画で、生々しさに耐えられるでしょうか?

 

(……やっぱり女の子って、一人一人で違うんですね)

 

 形とか色とか丸みとか匂いとか……いろいろ。チラチラ見ながら歯がかちかちします。

 

 考えてみれば、私は()と違って、そういう経験がないんです。……こういうのを、耳年増や童貞っていうんですかね?

 

 

「ん? ――――は、え゛!? ひゃああああ!!??」

 

 

 あ、ようやく気づきました。

 

 己の状態に遅れて気づいた芦戸ちゃんが、しゃがみこんで悲鳴をあげます。……あまりに反応が遅いですが、おかげでじっくり見れました。

 

「スース―すると思ったら!? トガ、見ないであっち向いてて!!」

「……み、見てないですよ?」

「嘘つきめっちゃ見てたじゃんトガのえっち!!」

 

 ぐ……っ。や、やはり女の人は視線に敏感です。

 

 背中まで色っぽく赤らめ、身体を隠そうと頑張って逆に無防備にさらけだす姿にゾクゾク……い、いえ! ここはクラスメイトとして着ているコートを肩にかけるべきですね!

 

「……どうぞ」

「あ、ありがと…………むー」

 

 じと目で睨まれますが、涙目なので迫力は皆無です。……わざとですか? うっかりもう一度剥きたくなるからやめてください。

 

「……それで? どうしてアタシは裸にされたの?」

「……ぅ」

 

 ぐいーっと。

 ほっぺをぐりぐりされて怒られます。……けど、腰がひけた上目遣いはキュンとするからやめてくださいっ。せめてもう少し離れてください、このアングル破壊力すごいです。

 

「……え、えっと、芦戸ちゃんを、驚かせるためです」

「えっ、そんな理由? じゃあこれ、悪戯だったの?」

「……はい」

「えー……トガからされる、初めての悪戯がこれって」

 

 芦戸ちゃんは嘆きながら肩をすくめて「もう!」と、顔を赤らめたまま頬を膨らませます。カァイイ。

 

(……? というか、改めて視ると、個性のない芦戸ちゃんって皮膚が薄いですね)

 

 てっきり赤くなっても気づけず、赤面症が治せないのだと思いましたが……『酸』耐性の皮膚が悪夢では反映されず、そのせいで薄いんですね。

 

 試しにと、彼女の頬をちょんっと突くと「ひょわ!?」とびっくりされる。

 

「な、なに!? なになになに!?」

「……」

 

 え、カァイイ。……じゃなくて過敏ですね。

 

 身体をぎゅーと固めて、困惑した上目遣いに苛めたくなります。でも、このままでは話がすすみません。

 

「……とりあえず芦戸ちゃん、家に入りましょう」

「え? でも……誰かいる気配はないけど、不法侵入にならない?」

 

 おずおずと、芦戸ちゃんが私の服を摘まもうとして、分厚い包帯が邪魔だと気づいて腕に腕を絡めてくる。……警戒心は大丈夫? 私の理性は据え膳で火がついたままだし、貴女さっき私に剥かれたんですよ?

 

「……っ、大丈夫です。……今日から、私と芦戸ちゃんの別荘になるただの日本家屋です」

「はい? えっ、どういう事!?」

 

 驚愕して更にぎゅーっとくっついている芦戸ちゃんの感触に「っ」何かダメになりそうで、逃げる様に縁側から室内にあがりこもうとすると「ちょちょちょ!!」全身でくっつかれる。

 

「な、なんですか!?」

「トガ、流石に靴は脱ごう? 土足はダメだって!」

「……」

 

 正論でした。

 ……1人で慌ててバカみたいですね。

 

 此処のお掃除は、恐らく人形ちゃんかアデーラちゃんがしてくれると思いますが、あえて汚すのはいけません。無言で足をひっこめて、もそもそとブーツを脱ぎます。芦戸ちゃんは裸足だから、足の汚れを気にしています。……んー。

 

「待っててください」

 

 そんな芦戸ちゃんを見かねて室内に入り、各部屋を軽く見て回り、お目当てのタオルを見つけます。それを洗面台で濡らして、ついでに芦戸ちゃん用だろう衣類も両手に抱える。

 

「お待たせしました」

「あ、ありがとう」

 

 芦戸ちゃんが、ホッとした顔でタオルを受け取り、縁側に腰かけて足を拭いています。……こういうところで、育ちの良さってでるんですね。私達とは大違いです。

 

「お、おじゃましまーす」

 

 そろそろと、芦戸ちゃんは縁側から廊下に足を踏み入れ、スーッと障子を開いて、畳が敷かれた部屋に目を丸くしている。

 

「わー……旅館みたい」

 

 真新しい畳の香りに反応しながら、慣れない環境に警戒心を思い出したのか、またピタリとくっついてくる。

 

「……ねえ、トガ」

「はい」

「……これ。ただの夢じゃないよね?」

 

 え? まさかの理解力に目を丸くする。

 

 ……もしや、当時7歳の渡我被身子を基準にしていましたが、高校生なら話し合えば夢の異常を理解できるのでしょうか? 渡我被身子は、同じ夢を一ヵ月見続けてから『あれ?』ってなりました。

 

「そうです」

「……やっぱりかー!」

 

 しなだれる様に、芦戸ちゃんが体重を預けてくる。

 あの、額もぐりぐり鎖骨に押し付けるのダメです近いですシャンプーの匂いにドギマギするんです……!

 

「……この夢、トガが見せてるの?」

「っ、はい。芦戸ちゃんは、私が招きました」

「……だよねー」

「今夜から、ここで芦戸ちゃんを強くします」

「……ん、色々聞きたい事はあるけど、よろしくお願いします」

 

 ほ、本当に話が早いです……もしかして、『普通』だからでしょうか? 芦戸ちゃんはすでに現状を受け入れています。

 

「……トガが、いつも眠いのはこの夢のせい?」

「原因といえばそうですが、元凶は別ですね」

「そっか」

 

 頷きつつ、好奇心に負けて小動物みたいに室内を見回しています……このまま、この家を探索してもいいですが。

 

「……芦戸ちゃん、まずは着替えましょう」

「あ、そうだった!」

 

 流石に、裸にコートというのは……自業自得ですが刺激が強いです。

 

「これ、シャツとズボンです。あとコートとサスペンダーと下着―――」

「わあ!?」

「へぶっ?」

 

 え……?

 

「す、すぐ着替えるから、待っててね!! ……どこにも行かないでね!!」

 

 ち、ちょっと待って? 今、両手で拒絶された意味が分からないんですが?

 

 下着を見せた途端に焦って、服をとって隣の部屋に駆け込む一連の流れが全部分かりません。

 

(……え、どういう心理でそうなるんです?)

 

 もしや、下着の柄や形を知られるのがヤってこと? 女の子同士で? 私が持って来たんですよ? 好感度が足りなかった? ムリですダメですわかりません。女心がむずかしすぎます。

 

「…………」

 

 あと……静けさと相まって日本家屋の壁の薄さが致命的です。芦戸ちゃんが着替えている音がよく聞こえます。……芦戸ちゃんが今、下着をつけてるなーとか、私のコートをぎゅっとしてるなーとか分かるから凄く困ります。お茶子ちゃんの着替えをチラ見するのとは違うドギマギといいますか、妙に覗きたくなるから本当に困ります。

 

「お、おまたせ!」

「……っ、はい」

「この服、トガが着てるのと同じだね?」

「そうですね。お揃いみたいです」

「あ、コート返すね。ありがとう」

「……? はい」

 

 実際、芦戸ちゃんが袖を通した衣装は、悪夢の普段着と同じです。……この気遣いは人形ちゃんでしょう。ちょっと複雑ですがありがとうございます。

 

(……それはそうと、なんでコートがこっそり交換されてるんです?)

 

 芦戸ちゃん、素知らぬ顔してるけど気づいてますよね? これ、気づかない振りをするのが正解ですか? ……難易度高いです。

 

「似合ってる?」

「カァイイです!」

 

 ポーズをとる芦戸ちゃんに、疑問を放り出して称賛します。実際、こういう格好の芦戸ちゃんは新鮮でカァイイです。

 巻いただけだった包帯も外して、お揃いの手袋をしているのも最高です。さっそく芦戸ちゃんの手を引いてにぎにぎします。

 

「トガ、くすぐったい」

「ダメって言っても、聞きません」

 

 私のですし。

 指を絡めて引き寄せ、頬に当てると芦戸ちゃんの顔が赤くなる。……やっぱり、皮膚が薄すぎますね。

 

「……まずは、回避を中心に教えた方が良いですね。あ、ほっぺをむにーってしてください」

「えっ? うん」

「んふ♪」

 

 これは癒されます。

 

「次、頭をたくさん撫でてください!」

「……夢の中でもあか……んんっ。トガはトガだね」

 

 ? よく分かりませんが、優しく撫でられて和みます。

 あー……疲れてささくれた心が癒されます。……こういうのも、いいですね。

 

「……ふはぁ、ありがとうございます。……じゃあ、訓練しますか」

「え?」

「芦戸ちゃん的には、この世界の説明とか、私の正体とか、聞きたい事はいっぱいあるでしょうが……」

 

 どうにも、それは今日じゃないみたいです。

 

「明日はリカバリーガールに呼ばれてるので、詳しく説明できないんです」

「そうなの?」

「はい。うっかり芦戸ちゃんが狂ってもフォローできないから、今日は普通に訓練しましょう」

「……ん゛?」

 

 もにっと、芦戸ちゃんの指がほっぺを伸ばしてきます。

 そして「え?」と眉を寄せて、己を落ち着ける様にすーはーと深呼吸し「……待って? ここってそんな危険なの?」と顔を青くします。……何をいまさら。

 

「危険ですよ。だから、この家を囲ってる竹林には入らないでね」

「そこからダメなの!? ……ち、ちなみに、入ったらどうなるの?」

「狂います」

「……やだー怖いじゃんバカー!! せつめいをようきゅーします!」

「んぶぅ? ……そうでふね。芦戸ちゃんは『ヤーナムの悪夢』って知ってます?」

 

 ほっぺ、触るの気にいったんです?

 めっちゃもちもちされます。でも優しいです。

 

「? そりゃ知ってるよ。すっごい有名な都市伝説だし。これのせいで夢系の“個性”が差別されたり、自殺者がでて社会問題に…………ん?」

 

 じわり、と。芦戸ちゃんの両手に緊張がこもります。

 

「……ほ、他の都市伝説と、一線を画してる『ヤーナムの悪夢』?」

「はい」

「実際に、あるって言われてる……回避不能で、絶対死ぬ系の、友達と話してるだけで先生に怒られちゃう……何百年も昔からあって、実際にどこかの島や都市が消えたっていう『ヤーナムの悪夢』?」

「はい」

「……ここが?」

「はい」

 

 すぅー……と。

 芦戸ちゃんが急に静かな表情になったかと思えば『無理!!』とばかりにぶわっと泣きだす一歩手前の顔になります。……え? 怖いのダメでした?

 

「う、うう嘘でしょ!?」

「ほんとうです」

「分かってる!! トガにそんな嘘つける訳ない!!」

「落ち着いてくだ……え、それどういう意味です?」

「怖いどうしよすっごくこわい!! トガ、絶対に手を放さないでね!? 一族郎党呪われて死んじゃうんでしょ!?」

「あの、大丈夫ですから……分かりました簡単な概要を説明します」

 

 待って、その抱きつき方は柔らかすぎて吐息に興奮するからやめてください! 鼻血がうっかり青いと洒落にならないんです!

 

「ま、まず、『ヤーナムの悪夢』は、被害者を悪夢から食べるタイプの都市伝説です」

「……う、うん!」

「そして『ヤーナムの悪夢』には、本体にあたる核。……強い敵がいます」

「……っ、うん」

「ある日、私は……事故で『ヤーナムの悪夢』の被害者に“変身”してしまい、そこで不正アクセスが成功しちゃった形で『ヤーナムの悪夢』に呪われました」

「……展開が早い!? っていうか巻き込まれてる!?」

「そこから色々あって、頑張った私は呪いの核を倒し『ヤーナムの悪夢』は平和な夢になりました。……ハッピーエンド」

「……おお? ……おおおお!?」

 

 かなり雑に端折りましたが……芦戸ちゃんはこのざっくりで何かを納得したらしく、目がキラキラしています。……この子、大丈夫ですか?

 

「分かってると思いますが、ナイショですよ?」

「え、皆にも?」

「はい。ダメです」

「そっか……」

 

 まあ、吹聴されて大きな問題になるとは思いませんが、秘密は守られる方が良いですからね。

 

「というわけで、この場所は私がいる限り安心です」

「うん!」

 

 完全に理解した! という顔でまったく分かっていない芦戸ちゃんが、だんだん愛しくなってきました。……これが、バカな子ほどカァイイ現象ですか。

 

「……明日から、芦戸ちゃんはこの夢だけをみます。此処ならどんなにボロボロになろうと現実の肉体に反映されません」

「すごっ!?」

「なので、今日はそれを証明するつもりで芦戸ちゃんを鍛えます。―――ちなみに、芦戸ちゃんは自分の死と向き合える子ですか? ダメなら生け花にします」

「……うん?」

 

 芦戸ちゃんが『ちょっと何を聞かれているか分からないな?』って顔をします。説明不足でしたかね?

 

「いえ、やっぱりはじめてだし、死ぬのは怖いと思うんです」

「うん?」

「なので、首だけを生かして死を実感すれば、健全に死生観が壊れて精神的にも強くなります」

「……え、っと? や、やだなーもうー! 冗談にしてもきつすぎるって!」

「え?」

「え?」

 

 首を傾げます。すれ違いがあるらしく、芦戸ちゃんの顔色から考えて「あ」と目を伏せます。

 

「……もしかして、優しすぎてダメでしたか?」

「―――そ、そうだ!! 初日だし色々考えるよりまずはお試しって事で、麗日にしてる特訓をアタシにもお願いします!!」

 

 んむ? ……なるほど、本人希望ですし、まどろっこしいですがまずは赤ちゃんのハイハイから、という事ですね。

 

「分かりました。では、児戯からはじめましょう」

「お願いします!! …………っ、今、人生を左右する難局を乗り越えた気がする!!」

「? じゃあ、蹴り技を主体でいくので、頑張って回避してください。あ、スタミナ管理に気をつけてね」

「え? 待って、まさか今か―――!?」

 

 襟首をそうっと握った瞬間にぶん投げます。……いや、開始の合図をわざわざしてくれる敵なんて、現実にそういませんよ?

 

 一応、室内で暴れるのはダメなので縁側から外に投げ飛ばすと、流石にコツを掴んでいるらしく空中で身を捻り、不格好に着地します。

 

「ッ! 靴は、履いちゃダメって事ね!?」

「うん? 靴を履くのを待ってくれる、優しい敵がいたらいいね」

「―――実戦形式じゃん!! よーし、やるぞー!!」

 

 気合も充分です。地面の感触を確認しながら、芦戸ちゃんの目はキラキラしています。

 

 まあ、お茶子ちゃんと同じで良いなら私も慣れてますし、肩の力も抜けます。

 私も裸足のまま庭に降りて、自然体で芦戸ちゃんに「おいで」と手招きします。

 

 

「っ、よろしくお願いします!! ……あーもう、かっこいいなー!!」

 

 

 待ちきれないと飛び込んでくる弟子を、まずはサマーソルトキックで歓迎してあげる。

 

 ……うん。あのね? 対人慣れしてないとはいえ、まっすぐに突っ込んだらダメですおバカ。

 

 

 

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