上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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41話 癒しの内臓攻撃です

 

 

 今更ですが、お婆ちゃんは容赦が無いです。

 

 休日の午前中に呼び出すとか、慈悲が無さすぎでびっくりです。

 

 

「お客さん、着きましたよ」

「……ありがとうございます」

 

 タクシーの運転手さん(いつもの担当の人じゃない、はじめましての玄人)に起こされ、お礼を言いながら出ようとしたら「あ、自分は今日からお客さんの担当になったんで、お帰りをお待ちしてますよ」と朗らかな笑顔で言ってくれます。

 

「……えと、時間がかかるかもです」

「そうですか? じゃあ午前中まで駐車場で待ってますから、それ以上かかりそうなら連絡ください。会社を通すのも面倒だと思うんで、こちらに」

 

 ……名刺を受け取りつつ、その距離感が上手いなぁと感心します。……なんだかんだ、こういう人がお近づきになろうとするのも雄英体育祭が原因なんでしょう。再度「ありがとうございます」とお礼を言って、雄英の門をくぐります。

 

(……今朝から、周りがちょっと騒がしくなりました)

 

 さっきのタクシーさん以外にも、お茶子ちゃんには内緒ですが、アパート付近に不自然な気配が増えています。今のところ害意はないのですが、近いうちに挨拶に来るんだろうなぁって面倒臭いです。

 

 いえ、そんな未来の事より今です。午後でも良くなかったですか?

 

(……思考停止で、了承した私も悪いですけど)

 

 欠伸を漏らしながら瞼を擦ろうとして、包帯が取れていない事を思い出す。

 

 今度からは、もうちょっと考えて交渉しましょう。お茶子ちゃんと早くお風呂に入りたくて、二つ返事で承諾した私も悪いといえば悪いです……

 

「…………くふあ」

 

 あー、ダメです。全身に睡魔が纏わりついています。

 

(……食欲は、少し増えましたが、睡眠に変わりがありません)

 

 反映していく順番に殺意を抱きつつ、悪夢で芦戸ちゃんを苛めぬいて癒されたとはいえ、やっぱり休日に登校するのはストレスです。

 目を覆う包帯にカリカリと爪をたてながら、無人の廊下を歩きます。

 

「……」

 

 人気のない校舎の、普段とは違う側面に物珍しさを覚えてきょろりと首をまわします。

 そういえば、最近はいつも誰かが一緒にいてくれるから、今は人肌が足りなくて物足りません。

 

(……ヒーローを目指そうとする子達は、やっぱり優しいです。私にも構ってくれます)

 

 私も、そんな皆をもっと観察して参考にしなくてはとやる気がでます。

 

 でも最近は、心地よさに負けてそんな皆に甘えすぎかもしれません。

 特にお茶子ちゃんに負担をかけてるかもです。今朝だって、お茶子ちゃんは当たり前に私に付き添おうと制服に着替えるからびっくりしました。焦って止めつつ、ちゃんと休んで欲しくて込み入った話になりそうだと嘘もついて説得しました。

 

(お茶子ちゃん、優しすぎます)

 

 最近も、私のせいで眠りが浅いのに起きるたびに抱きしめてくれます。背中を向けても抱き寄せてくれます。今朝も、タクシーに乗り込むまで心配してくれたお茶子ちゃんの事を考えると、頬の緩みが止まりません。それを指先で隠しながら、特殊素材だろう保健室のドアをノックします。

 

 確か、ノックは三回でしたっけ?

 

 用件が何かは知りませんが、早く終わらせてお茶子ちゃんに会いたいと、返事を待たずにドアを開けて……うん?

 

 

「おはよう、渡我。急に呼び出してすまなかったね」

「やあ! おはよう渡我さん!」

「お、おはよう……!」

 

 

 珍しい組み合わせに、包帯の下で目が疼きました。

 

「……おはようございます、リカバリーガール。根津校長。オー……っと。はじめましての人」

 

 あぶなっ……トラップです? 骨っぽい方のオールマイトに口が滑りかけました。

 私は何も勘付いていない普通の女子高生です。それ相応の振る舞いをしなくてはいけません。

 

「「「…………」」」

 

 三者三様の意味深な沈黙は無視して、招かれるままにリカバリーガールが引いてくれた椅子に座ります。

 

「お茶は昨日と同じで良いかい?」

「大丈夫です」

 

 さて、いきなり本題に入るつもりでしたが、この面子では何をどう対処しようと面倒な話題にしかならないと諦めました。もうお茶を楽しむ事にします。お茶子ちゃんに焦がれながら頑張ります。

 

「改めて渡我さん! よく来てくれたのさ!」

 

 根津校長が、いそいそとお茶菓子も差し出してくれます。歓迎モードに警戒心を強めつつ、悪意は感じません。

 

(……面倒事はヤですが、丁度良いと言えば丁度良いですね)

 

 ここで恩を売っておけばこちらの話がしやすいです。思考しながら、お茶菓子の羊羹を添えられた匙でいただきます。……! これは、しっとりした食感と繊細な味わいです。

 

「……見えてないのに、本当に凄いね」

 

 これお土産にできないですかね? お茶子ちゃんにも食べて貰いたいです。

 

「ん、視覚がなくても、なんとかなりますから」

 

 オールマイトに顔を向けながら、タッパーをもってくれば良かったと持ち帰り方法を模索します。

 

「……気に入ったなら、残りは持ってお帰り」

「え?」

「気に入って貰えて何よりさ!」

「え?」

 

 ……待ってください、なんで私が考えてる事が分かったんです? やはり、雄英の人たちは油断できないです。でも羊羹は喜んでいただきます。

 

「……ありがとうございます。それで、話ってなんです?」

 

 ゆっくり話を聞こうと思いましたが、早くお茶子ちゃんに羊羹をあげたいです。甘いの喜んでくれるでしょうか? あと、頑張ったら羊羹が更に増えたりしませんか?

 

「……そうだね。本題に入らせて貰うよ」

 

 リカバリーガールの声が少しだけ笑っています。そのまま入り口の鍵を閉めて、自分のスマホを取り出して電源を切り、私にもそうする様に促します。逆らう理由も無いのでその通りにすると、何やらさっきから言葉少ななオールマイトがもじもじしています。

 

「実は、渡我さんにお願いがあるのさ!」

「本来なら、こちらから出向くのが礼儀だけど、理由が理由でそういう訳にもいかなくてね」

「? はあ」

「…………あの、やっぱり、渡我少女に無理を強いるのは「八木くんは黙ってるのさ」「腹をくくりな」……はい」

 

 オールマイト弱っ。

 何やら頭があがらない様子に首を傾げつつ、前振りはいいからと話の続きを促せば「実は……」と、更に回りくどくごちゃごちゃ言われましたが……まとめると、オールマイトの診察をして、できるなら治療をして欲しい、との事でした。……え? 普通にヤです。

 

 

「…………」

 

 

 っていうか、普通のJKはそんな事できないので、そういう意味でもヤですね。

 

 なんで私が? お好きに最高峰の医療を受ければ良いのでは? 瞬間的に断ろうと思いましたが、なんとなく、それは悪手な気がします。

 

(……んー。この勘は無視したら、後からもっと面倒になる奴です)

 

 腕を組んで、考え込む私に向けられる視線には気づかない振りをします。でも……診断結果によっては……なら……んーっ。

 

「……何が嫌なのか、聞いてもいいかい?」

「……ここだけの話にしてくれるなら」

「勿論さ! 誓って、ここでの話を外に出す事はないのさ!」

「……そうですか」

 

 立場が上の人達に下手にでられる居心地悪さを覚えつつ、目元の包帯をカリカリと引っ掻く。

 

「……単純に、面倒臭いです」

「見れば分かるよ」

「……あと、どうして私に? という疑問もあります」

「それは、申し訳ないが。渡我さんの色よい返事が聞けないと迂闊に話せないのさ!」

「……あー。腹の探り合いは面倒です。もう言っちゃいますけど、オールマイトならいくらでも最優の医療が受けられるでしょう?」

「! ……やはり、気づいていたんだね」

 

 頷きながら、苛立ちを振り払うようにお茶を飲みます。

 

「リカバリーガールが、良かれと思って口を滑らせた事に関して怒るつもりはありません。でも、オールマイトの診断と治療って、ただの学生に頼む事じゃないです」

「……あんた、自分の事に関しては視野狭窄に陥ってないかい?」

 

 はい? 呆れた声のリカバリーガールに首を傾げると、彼女が歩みよってくる。

 

「渡我」

「……なんです?」

「お願いできないかい?」

「……ぐ」

 

 そっと手を握られてしまう。そのしわしわなお婆ちゃんの手に心がぐらついてしまう。

 

「渡我さん、僕からもお願いするのさ!」

「…………ヤ、でも、オールマイトが、ほら、乗り気じゃないみたいですし」

「え!? ……あ、いや、それは」

「「……」」

 

 ほら、オールマイトもあの調子ですしって、2人の無言の圧力に負けて「どうかよろしくお願いします!!!!」突然立ち上がって頭を下げてきました。……あぁ、もう。

 

 ここまで流れがつくられてしまえば、一学生が意地を張るのも限界です。

 

 いや、張れるといえば張れますが、お婆ちゃんのお願いっていうのが卑怯なんですよ。

 本気で騙して利用を企んでいるなら私も抵抗しますが、そういうのじゃなくて、むしろ己の力不足を嘆きながら学生に手を借りる無力感や罪悪感や悲壮感込みで覚悟決まってるんですよ。

 私に、いつもみたいに接しながら、これだけは通さなくてはと焦りも視えて、これは突っぱねれば土下座されかねません。

 

「……分かり、ました。オールマイト、上を脱いでください」

「渡我少女……! よろしくお願いします!!」

「……渡我、ありがとう」

 

 お婆ちゃんのホッと緩んだ声に、後悔はしなさそうだと唇を隠します。

 

「……渡我さん、本当にありがとう。そして申し訳ない。協力を求めておきながら説明できない不誠実をお詫びするのさ」

「いえ全然大丈夫です。むしろ説明しないでください。絶対にいらないです」

「安心するのさ! 後日きちんと話せる範囲で開示するのさ!」

「話聞いてます????」

 

 どうして? そんな回れ右したくなる発言をするんです? いえ、一度やると言った手前、どんな話を聞いてもやりますけど。

 

「席を外した方が良いかい?」

「……別にいいです。でも、秘密は守ってください」

「勿論さ! これに関しては誰にも悟られない様に最大限に動くつもりだよ!」

 

 あ……その発言に、やっぱりリカバリーガールってそういう立ち位置なんですね、と気づきます。

 

 根津校長のあえてだろう発言に「はあ」と気づかない振りをします。……お婆ちゃんはつまり、分かりやすい蝙蝠スパイであり、ただの連絡役なんですね。

 “お互い”にソレを知りながら、知らない振りをして、両者から庇護されているトラップカード。

 

(……露骨ですねぇ)

 

 でも、それぐらいが丁度良いのかもしれません。

 雄英って敵が多いみたいですし、戦闘力の無い回復役のお婆ちゃんがゲームのノリで狙われたら大変です。お婆ちゃんにはスパイとしての価値もあると喰いついたら、そこからどちらにも存在を気づかれる仕組み。

 

「渡我少女……下は脱がなくて良いよね?」

「大丈夫です、座ってください」

 

 大人の世界って大変そうです。

 

 でも秘密は甘くて、だからこそ群がられてしまう。

 きっと今日の件だって、最初から秘匿を期待するのがバカなんです。約束に期待はなく、ここから私の異常が知れ渡ったとしても、やることは変わりません。

 

「じゃあ、触りますね」

 

 信頼は無くとも、信頼させておくに越したことはありません。

 

 依頼はきちんとこなしますと、オールマイトのガリガリの胸板に触れます。いつもは閉ざしている脳の瞳も開いて、診断するつもりで肉体を視…………うわっ。

 

「……オールマイト、ちょっと血を貰います」

「痛い!?」

 

 ピッ、と。爪先で頬を傷つけ、その血を指で掬って舐めます。…………苦い。

 

 血に刻まれた情報から得られる異常と狂気に、愕然とします。思わず、オールマイトの肩を慰める様に撫でます。

 

「オールマイト」

「は、はい」

「……もうこれ、死んだ方が楽じゃないです?」

「なんて事言うの!?」

 

 あ、吐血した。

 ゴハッ!! と、何故かショックだったらしく吐血するオールマイトの血を皮膚でも吸収しながら、体内の医療器具の位置を視つめながら、口元を覆う。

 

「……これ治すの『聖歌の鐘』二回分で、私もかなり治っちゃいます。流石に言い訳が面倒でヤですね」

 

 嘆いて、けれど、もうしょーがないと。諦めます。

 

「と、渡我少女?」

「オールマイト……ちょっと内臓をえぐりますが、我慢してください」

「えっ!!?? ちょ、待って何するつも、ぐはー!!??」

 

 何って、ただの内臓攻撃です。

 

 グジュリ、と。右手が心臓をえぐる様に体内に侵入します。

 

 

「――――え?」

「…………は?」

 

 

 見学者が驚いてます。でも、しょうがないんです。

 

 オールマイトの体内には医療器具? もしくは機器? があちこちにあって再生に邪魔なんです。軽くオールマイトの額を小突いて脳を揺らし、そこを意識した瞬間に指から突き入れました。……久しぶりですが、身体が覚えているのでスムーズに内臓をえぐれます。

 

 血が噴きでますけど、その血もかなり濁ってダメな臭いがしてるので、出しちゃった方が良いでしょう。

 

「――――ッ!? ――――――が、ぁ、え? ……ァ????」

 

 むわりと、立ち込める血と香りが全身にまぶされていきます。

 手の平に感じる、熱くてぬるついた内臓の感触や手応えに懐かしさを覚えながら、オールマイトの治療を阻害する、さっきまでオールマイトを助けていただろうそれらを丁寧に取り除き、引き抜きます。「ぐ、ギャ!?」再度ブシャッ!! と勢いよく出血しますが、致死量になる前に『聖歌の鐘』を出して、行使します。

 

 鐘の音は、二回。

 金色の光が、リカバリーガールと根津校長にも効果を及ぼし、己の回復量だけを減らします。

 

 

「? あ、ガ……!? と、ァ……しょう、じょ?」

「シー、ですよ。血の塊が喉に詰まってむせちゃいます」

 

 自分が治りすぎない様に苦心しながら、オールマイトの骨で指を切って私の血を混ぜます。これで回復を促進しながら、個性因子の方を、こうして。……ん、こんなもんですね。

 

 

「「――――――」」

 

 

 後ろで、リカバリーガールと根津校長が固まってます。……リカバリーガールは顎が外れそうだし、根津校長はお髭がぴんぴん毛がブワァしてカァイイです。……もしかして、2人にはショッキングな光景でしたかね? でも、1分もかからないので我慢してください。

 

 

「はい、おしまいです。オールマイト、意識ははっきりしてますか?」

「え? あ、ああ……凄く痛かったけど、生きてるよね、私?」

 

 

 げほっと、口の端から血を流して、オールマイトがぺたぺた自分の身体を触っています。

 

「殺してないから生きてます。内臓はできたてなので、最初はゼリー飲料で慣らし……って、本職がいるんです。リカバリーガールに諸々の諸注意をうけてください」

「え? ……ッ、まさか、いや、確かに体内に重さが戻ってるし、へこまない!?」

 

 驚いてわたわた動き出すオールマイトを横目に、大きく息を吐きます。あー……血が減りました。

 くらくらしますが、覚悟していたので意識が遠のくだけですね。

 

「……こ、これは、予想以上なのさ」

「……喜ばしいけど。部屋も、あたし達も血まみれだよ」

「……口の堅い業者に頼むから、大丈夫なのさ」

 

 あ、そうですそうです。

 欠伸をしながら、リカバリーガールに顔を向ける。

 

「お願いがあります」

「……っ、なんだい?」

「芦戸ちゃんと早朝訓練したいんですけど、雄英の施設って借りられます?」

 

 今日の目的である質問に、リカバリーガールが「は?」ときょとんとする。ついでに抜き取ったものを渡します。そしたら、根津校長がずいっと割り込んでくる。

 

「おっと! そういう話なら僕に任せるのさ! ……そうだね。大抵の施設は2年3年がすでに利用しているし、そういう事なら1年生が気軽に利用できる施設を建てておくのさ! 明日までに間に合わせれば良いかな?」

「……明日は寝ます。寝させてください。貧血なので明後日から使います」

「分かったのさ! じゃあ、校舎から離れた場所に体育館程度の施設を用意しておくのさ! あ、1年のヒーロー科全員に使用許可を出してもいいかな?」

「……“個性”を使える場所が欲しかっただけなので、問題ないです」

「ありがとう! なら早速用意するのさ!」

 

 スケールすごいですね……

 ある意味、ここに根津校長がいたのは話が早くて助かりました。……じゃあ帰りましょう。

 

「待ちな! 制服は用意しておくから羊羹を取るんじゃないよ。その羊羹も新しいのにおし!!」

「え?」

「……うっかりでも外に出るんじゃないよ? 即座に通報されて面倒な事になるよ」

「あ」

 

 そうでした。鼻先からぼたりと落ちる血の感触に、自分が血まみれだと思い出しました。

 

「……タクシーが待ってますが、これじゃあ乗れませんね」

「! それは僕が声をかけておくから、気にしないでいいのさ」

「……今日は、当番の教師に送らせるから安心おし」

「あ、それは助かります」

 

 話していたら、何やら唖然、とした様子で「え? え?」と大きくなったり戻ったりしていたオールマイトが、ごくり、と喉を鳴らして私を見る。

 

「……個性の、活動時間が……伸びてる?」

「「!?」」

 

 何やらギョッとしている3人に、何か問題があるのかと首を傾げながら説明する。

 

「ダメでしたか? 個性因子が風前の灯火でしたので、身体を治すついでに効率化しただけです。その影響で“個性”の寿命は少し伸びたかもですが、いずれ消えるのに変わりはありませんよ?」

「……ッ、渡我少女、いや」

「はい」

「――――渡我先生!! どうもありがとうございました!!」

 

 うん? 急に勢いよく頭を下げられました。……いえ、感謝の気持ちは嬉しいですが、私にも得はあったので気にしないで欲しいです。オールマイトの血、しっかりストックできました。……こういう“個性”だったんですねぇ。

 

「……それで? 効率化って何をしたんだい?」

「え、言葉での説明が難しいです。内臓を戻すついでにそこも最適化したから調子が良い、みたいな……?」

 

 ほとんど感覚でやっているので、詳しい説明はちょっと難しいです。

 だいたい、トガヒミコは()()()()()()()という点においては本能的に秀でているのです。当たり前にできる事への説明を求められても困ります。……あと、さっきから欠伸がとまりません。

 

「……ベッドで、と思ったけど、血の臭いが濃すぎるね」

「……八木くんが、想像以上に完治したのは喜ばしいけど、凄まじい治療法なのさ」

「……知ってはいましたが、渡我少女の人体に対する理解度は突き抜けています」

 

 さすさすと自分の上半身を撫でながら、残したままの古傷に余計に戦慄しているらしいオールマイト。……私からしたら、貴方の方がやばいですけどね。

 

 こんな身体になりながら人助けって……実はオールマイトって、私と同じぐらいの異常者だったんですね。

 それが分かって、そんな彼が世間で認められている事実に、うれしくなる。

 

 がんばろうって、未来に小さな希望がもてました。

 

 

(まあ、それはそれとして……オールマイトはもうダメですね)

 

 

 その事実を知れたことも、幸運だったのかもしれません。

 平和の象徴という、実に都合の良い彼がいなくなる事は、私にも無視できません。

 

 この後の事をつらつらと考えながら、我慢できずにベッドにぼふっ! と倒れ込んで、慌てる大人達を気にする余裕もなく、意識を手放しました。

 

 

 

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