上位者少女が夢みるヒーローアカデミア   作:百合好きの雑食

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7話 講評と反省会です

 

 

 微睡みながら、ふわふわした心地で歩いている。

 

 実戦訓練の後は、皆で集まって講評をしなくてはいけない。オールマイト曰く、勝っても負けても振り返ってこそ経験は活きるのだそうで、葉隠ちゃんが手を引きながら教えてくれた。

 

「……ヤです」

「え?」

 

 気づけば口にして、足を止める。

 ふらつく足取りを危ぶまれていたのか、尾白くんの大きな尻尾で背を支えられながら、強烈な眠気の波に逆らえず、限界で、ぐずる様に壁にはりつく。

 

「もう眠いから寝ます!」

 

 雄英が真面目すぎて授業中に居眠りができず、先程の勝利の余韻で完全に糸が切れてしまった。

 そのまま床に転がろうとすると、ガシッと引っ張られて捕まってしまう。

 

「トガちゃんしっかり!!」

「もうちょっとだから! 頑張ろう!?」 

 

 無理です。

 赤ちゃん舐めないでください。

 

 もういいんです。今日は色々ありすぎて眠いのです。

 

 唸りながら、もう寝てやるのです! と、尾白くんの尻尾に抱き着いていやいやする。先っぽのふさふさが柔らかくて気持ち良いけど負けません! 運ばれているけどヤなものはヤなんです!

 

「ラッキースケベ野郎が……ッ!!」

「や、やめろよ!」

 

 『もぎもぎ』の子の舌打ちと共に吐き捨てられる怨嗟の声に、ビクッと大げさに顔を青ざめさせる尾白くん。

 

「うー……」

「ほ、ほら、講評の時間が始まるから! オールマイト、お願いします!」

 

 尾白くんの尻尾に浮かされて足がプラプラします。オールマイトは「あ、うん!」と、改めてポーズを決める。

 

「先程の戦いは、甲乙つけがたい素晴らしい実戦訓練だった! ベストが誰か、もう察しているだろうけどあえて言おう!! 渡我少女!! 君だよ!!」

「…………すぴぃ」

「もう少し起きていようね!? 葉隠少女、起こしてあげて!! ……さて、疑問がある人はいるかな!?」

「イイエ、オールマイト先生。この場の誰もが納得していますわ」

 

 八百万ちゃんの声と、葉隠ちゃんの揺すりと、尾白くんの尻尾ゆらゆらで、かろうじて意識を保つ。

 

「轟さんの“個性”に、いち早く反応してみせた判断力と感知力。迷いのない行動力と目の前を通過しても発見されない潜伏力。大柄な障子さんを短時間で無力化できる戦闘力と技術力。……その後の“個性”の使い方も、見事としか言いようがありませんでした」

「凄かったよな! 自分が一番強いって言えるだけの事はあるわ!」

「見ていてドキドキしたもん! プロって感じの動きだった!」

 

 すごく褒めてくれる。……良い人たちですね。

 

 嬉しいなって笑っていると、葉隠ちゃんが仮面を外そうとしてくる。……やめて? あ、取っちゃった。無表情を頑張ります。

 

「またしても正解だよ……! そして、今回の訓練は全員が己の役割を理解し、状況設定に合わせて行動できていた! 誰がMVPでもおかしくなかったぜ!!」

 

 それは確かにと、ふやけた欠伸をする。

 

「だよな! 渡我がいなかったら轟の1人勝ちだったもんな!」

「最強すぎるだろ、あの“個性”!!」

「それで? 両手に花どころか両手におっぱいの気持ちはどうだったんだ!? なあ!?」

「やめてやれって」

「峰田の奴、おいらと代われーってずっと叫んでたもんな」

「そうそ……って、いやそれはダメでしょう!?」

 

 ふあ? なんとなく尾白くんのふさふさを口に含んでいたら「―――葉隠さん!!」と、葉隠ちゃんにパスされる。……柔らかくて温かいです。尾白くん優しいなぁ。

 

「……赤ちゃんって、何でも口にいれるよな?」

「それ、年頃の娘としてどうなのよ」

「……話を戻しましょう。障子さんの索敵能力も正確でした。渡我さんが例外なだけで、他者には充分に脅威ですわ」

「……そういえばトガさん。あの時何してたの?」

 

 ふあ?

 麗日ちゃんの声に、かろうじて顔をあげると「起こしちゃってごめんね」と謝られる。

 

「障子くんを気絶させた後なんだけど、カメラから見えなくて。何してるんだろーって皆で話してたら渡我さん変身してるし! 轟くんも気づいてないしでホラーやし!!」

「……んぅ」

 

 目を擦りながら『複製腕』の子を見て、その頬に貼っている絆創膏をのろのろと指差す。

 

「……血、です」

「え?」

「……私の“個性”、発動させるには、血が必要なんです」

「ああ、それで……!」

「だから、このメスで切って舐めました」

「え?」

 

 マントの裏ポケットに手をいれて、一つ一つの先端がパックされているメスを数本取り出して見せる。

 

「な、舐めたの……?」

「? はい」

「ええと、指とかですくって」

「いえ、時間も無かったですし、直接舐めました」

「「「直接!!??」」」

 

 そんな、過剰に反応する事です?

 

「ほっぺを!? あっ、もしかしてその仮面の嘴にはそういう機能が!?」

「無いですよ。仮面は上にずらして、唇で直接舐めました」

「なんでほっぺ!? 腕とか剥き出しの部分はいっぱいあったじゃん!?」

「……“個性”が、腕と密接してそうだったので、下手に傷つけるのはダメかなって……舐めた後はちゃんと絆創膏つけましたよ?」

 

 もしかして、怒られているのかと不安になり、葉隠ちゃんの背中に隠れる。

 

 思考がぼやけて、何が悪かったのかと困ってしまう。さっきまで静かに佇んでいた『複製腕』の子が「――!!??」すごく動揺して、腕と触手が面白い事になっている。

 頬に貼った絆創膏に触れては離しと、表情はあまり動いていないけど、すごく困っています。

 

(……あ)

 

 これアレだと、遅れて気づく。そうだったとふらつきながら「トガちゃん?」葉隠ちゃんの声を背に、『複製腕』の子にぺこりと頭を下げる。

 

 

「……気持ち悪いことして、ごめんねぇ……?」

 

 

 “コレ”が、気持ち悪くておかしな事だと、忘れていた。

 

「……!?」

 

 手遅れかもしれないけど、もう一度謝ろうと顔をあげると、『複製腕』の子が大きく首を振っている。

 

『違う……! そういう事ではない……!』

『次があったら、腕を掻っ切ってくれて構わない!!』

『君は悪くない! だが、そういうのは良くない……!』

『俺の精進が足りなかった。また手合わせを願いたい……!』

 

 触手が全部口になって、慰めてくれる。

 驚いて、気持ち悪い事しちゃったのに、そんな風に言ってくれるんだ。

 

「……ありがとうございます!」

 

 うれしいと、衝動のまま四本の触手をまとめてぎゅっとすると『『『――――ッッ!!??』』』お口から面白い音がでてくる。……仕様ですか?

 

「……渡我、手加減してやってくれ……男ってのは、色々あるんだよ……っ」

「矜持というものがある。……これ以上は酷だ」

「チィッ!! 片頬チュー童貞をよぉ、寝ている間に奪われた気持ちはどうなんだよ!? しかも今めっちゃ柔らかいんだろぉ!!??」

「やめてやれって」

 

 スパン! と『もぎもぎ』の子が叩かれている。

 

 よく分からないけど、講評って優しいんですね。……麗日ちゃん達のも見たかったです。寝ていたのが惜しくなる。

 

「葉隠少女も、ナイスガッツだったぜ!!」

「わわ、ありがとうございます!!」

 

 葉隠ちゃんが、オールマイトに褒められて喜色満面になる。

 

「確かに、轟も気づいていなかったしな!」

「だけど、轟もよく止まったよな……!」

「感じていたんだぜオイラは! 寒さに震える透明おっぱいが、お前の後頭部をパフパフしたことをよぉ……!!」

「だから、やめてやれって」

 

 安心して床で寝ようとすると、麗日ちゃんの“個性”で無重力になっていた。麗日ちゃんと葉隠ちゃんに手を握られる。

 

「尾白も目立たなかっただけで、色々と活躍してたよな!」

「身体を張って2人を助けた様なもんだしな!! 男だぜ!!」

「なあ、生乳の感触はどうだったんだ!? 本日ラッキースケベ全世界ナンバーワン野郎がよぉ!!!!」

「お前、いい加減にしろよ? ……でも、さりげなく美味しい立ち位置だったよな」

 

 麗日ちゃんに「もうちょっと頑張ろうね?」って、撫でられる。……それ逆効果のやつですけど、気持ち良いから頷きます。

 少し上の方から彼らを見下ろせば、尾白くんと『複製腕』の子が、顔を覆ったまま膝から崩れ落ちています。……何かありました?

 

「ふぁ……」

 

 だめです、ねむいです。

 

 何も考えられないと、地上にいながら宙にいる感覚が、ゆりかごに揺らされている様で、もう瞼を開けていられない。

 

 

「……渡我少女は限界の様だね。それでは、次の戦闘訓練に入ろうか!!」

 

 

 その声を最後に、少しだけだと意識を手放す。……その際に、微かに興味を引いたのは、

 

「――――」

 

 ずっと無言だった『爆破』の子。

 

 誰かが、特に私が褒められる度に、強く拳を握りしめる意味が、分からないから気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……?

 

 あたたかくて、やわらかくて、きもちがいい。

 

「……ぁ」

 

 狩人の夢に誘われる寸前で、ふっと目を覚ます。

 夢の()が、何か言っていたけど無視です。反射で唸れば「あ、起きたんだ」柔らかい感触が髪を撫でる。

 

「……?」

「おはよう、トガちゃん!」

 

 カァイイ笑顔が、私を見ている。……どうやら私は、葉隠ちゃんに抱きつく様に眠っていたらしい。

 

「……おはよう、ございます?」

 

 どうして? 分からなくてきょろきょろすると、ここは教室だ。

 皆がいて、わいわいと積極的に何かを語り合っている様に見える。

 

「……ぁ」

 

 着ていた狩装束も制服になっていて、状況を早々に理解してぽそりと呟く。

 

「……残りの戦闘訓練、見逃しちゃいましたね」

 

 少しだけ勿体ない気持ちになると、葉隠ちゃんがおかしそうに笑う。

 

「お! 起きたんだな渡我! さっきまで緑谷もいたんだけどよぉ、帰っちまった!」

 

 赤……いえ、黒い髪の『硬化』の男の子が、元気に声をかけてくれる。

 

「俺ぁ切島鋭児郎、今皆で訓練の反省会してたんだ!」

「……ふぁい、トガです。トガヒミコです」

 

 返事をしながら、とても眠くて、もそもそと葉隠ちゃんの首に抱きつく。……あったかいのです。

 

「……あー、トガには見えてるから実感ないだろうけど、葉隠は透明だからな? そういう油断しきった顔はこっちから見えてるんだぞ? ……ほら、飴やるから」

 

 苦笑しながら『テープ』の子が、飴をくれる。やさしいです。

 

 舐めようとして、上手に包装を破れなかったら、葉隠ちゃんが「はい」って食べさせてくれる。……世界の『優しい』だけが詰め込まれている様な夢心地の味がして、コロコロと転がす。

 

「トガさん、相当にお疲れのご様子ですわね」

「……まあ、実際に凄かったからね。今日も麗日の家?」

「うん。あんな事故物件に、トガさんは帰さない……!」

 

 麗日ちゃんにもぎゅっとされて、血が欲しくて、歯がカチカチ鳴ってしまう。

 

「? むずがってるのかな」

「うん。朝もこんな感じだったよ」

 

 せっかくの飴も割れてしまい、むにむに頬を動かして欠片を飲みくだす。

 

 

「…………ふぁ」

 

 

 にぎやかです。

 

「……なんだよアレ天国かよ? おいらも女子に挟まれてあやされたいっていうか混ざりたい!!!!」

「だめだぞ」

 

 それが嬉しくて、

 

「峰田ちゃん。ヒミコちゃんの半径一メートル以内に近づかないで」

「保護者ばっかかよぉ!!」

 

 楽しくて、ウキウキして、

 

「やっぱり、寝起きはダメっぽいね」

「……難儀な体質だな」

 

 終わってしまうのが怖くなる。

 

「あ、また寝ちゃった感じ……?」

「んじゃ、声をおさえるか!」

 

 そんな夢を、

 

「なんか、トガってすっげー強いのに、赤ちゃんみたいだよな」

「……放っておけないわ」

 

 見ているんです。

 

「それにしても、トガくんはどこであんな技術を……」

「ねー! まともにやりあって勝てる気がしないのに、可愛い寝顔しちゃって」

 

 少しだけ、

 

「動きが洗練されていたね!!☆」

「……あそこまで高度な技術を、ああもたやすく実践できるとは、只者ではない。……仮面の趣味も良いしな」

 

 目覚めたくないなぁって、

 

「飴、もうちょっと持っとけば良かったな」

「近所の兄ちゃんかよ」

 

 そんな夢を。

 

「トガさん、不思議な子だよね」

「うん! でも、すっごく優しいよね」

 

 

 目覚めるまでは、見ていたい。

 

 

 

 

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