また、以下の要素にもご注意ください。
・ジョジョの奇妙な冒険ネタ
・異世界転移チート系主人公
・独自設定キャラ崩壊
紫様のスキマで、博麗神社へジャンプしたボク。
幻想入りした時は、人里の空き家に落ちたので、ここに来るのは初めてだった。
紫様曰く、博麗神社は幻想郷と外の世界の境目にあるのだという。そして、博麗大結界というのもある。
ボクみたいな外来人が幻想郷に行く場合、大結界の裂け目に落ちる、紫様が気まぐれで開けたスキマに落ちる……の二つしかないらしい。
さて、博麗の巫女たる博麗霊夢はどこにいるかな。
境内に入っていくと、しんと静まり返った空間に、ひとり、黒髪の美少女が座っている。
その美少女は腋が露出している紅白の巫女服を着て、胡座をかき、瞑想しているように見えた。
「くっ……はぁ……」
しかし、うまく瞑想できてないようだ。彼女の雰囲気からそんなことを感じた。
「……あなたが、博麗霊夢……?」
「………誰よ、あんた」
「あぁ、ごめんなさい。ボクはハイゼンスレイという、人里にいたただの人間さ」
「ただの人間が……珍しいわね……。妖怪が……ウヨウヨいる……この神社に……。それで……何用……?」
ボクは霊夢の横に腰掛けた。
「……? なんか気持ちがすぅーっと、楽になってきたのだけど、どういうこと?」
「あぁ。これ、勝手に働くもので、ボクの周囲にいれば、瘴気を含んだ霧の影響を受けづらくなるんです。あと……ごめんなさい、お手を拝借……」
そして、霊夢の手に触れる。
「――だいぶ楽になったわ。ホント不思議ね、ハイゼンスレイ。……あんた、本当に人間?」
「人間ですよ。時間と空間を操る程度の能力を持っただけの」
「咲夜と同じ能力を持つのね」
「咲夜……?」
「十六夜咲夜。紅魔館のメイド長をしている女よ。銀色のような短い髪で、おさげを垂らしているし、メイド服を着てるからすぐに分かると思うわ。……それで、ハイゼンスレイがここに来たのは、紫に頼まれたのかしら」
「はい。紫様と摩多羅隠岐奈という秘神のふたりに、異変を解決してほしいと頼まれました」
「へぇ……。それなら、少し休んでから出かけましょ。私も本調子ではないし。ハイゼンスレイも少し休みたいでしょう?」
「お言葉に甘えて」
☆★☆★☆★
博麗神社の居間で休憩しながら、ボクは全部の事情を話した。
「なるほど。ハイゼンスレイはこの霧の中でも、正気を保っていて、さっき私にしたみたいにすれば、人妖問わず正気に戻ると」
「はい。ボクが時間と空間を操る能力の拡張のために修行していた時に、紫様が調べていたらしくて」
「ふぅん。紫がね……。まあ、それもそうか」
「はい?」
「あいつ自身の口から聞いたと思うけど、紫は幻想郷を誰よりも愛している妖怪だからね。こういうことには本気を出してくれるのよ」
霊夢は言う。
「それで、ですか」
「隠岐奈まで出てくるなんてね。あの二人がおかしくなったから、出てきたのかしらね」
「そんなことも言ってたような気がします。……なんだかんだで、幻想郷を気にしているみたいなので、いいことなんじゃないですか?」
「かもしれないわね。ま、とりあえず、私はハイゼンスレイがいなければ、まともに動けないだろうから、よろしくね。あと、私のことは霊夢でいいわ」
「わかったわ、霊夢」
「……で、まあ、霧の異変なら、またレミリアの仕業でしょ。紅魔館に行きましょ」
「レミリア……?」
「レミリア・スカーレット。紅魔館の主で、吸血鬼とか言ってたわね。見た目は幼女なくせして、尊大なんだから」
「へぇ……」
こうして、ボクと霊夢は紅魔館へ向かうことにしたのだった。
境内裏を進んでいくと、さっきまで昼だったのに急に夜のような暗闇に空間が染まる。
霊夢は持っていた札を真正面に何枚か投げた。
「あ、は、あ、あははははあはははははははあはははははっ」
暗闇が解かれ、頬を赤く染めた短い金髪少女が、狂ったように笑いながら姿を表した。
「あははははは、あはははははっ!」
気が触れているかのように笑い続ける。
「……霧のせいでおかしくなったやつね。ハイゼンスレイ、危ないから下がって」
「ええ。気をつけてね、霊夢。あと、ボクから離れすぎないでね」
「もちろんよ」
先手必勝とばかりに霊夢が札を投げる。
ダメージを受けているように見えるが、おかしな笑いをしながら、金髪の少女は霊夢に迫る。
「……っ、く……。ハイゼン……スレイ……ッ」
瘴気を含んだ弾幕を受けたせいで、霊夢が助けを求めてきた。
そこまでの反撃を受けたわけではないのだろうけど、瘴気が混じったせいだと思う。
「霊夢」
ボクは霊夢を呼びかけて、両手をしっかりと掴む。
「ありがとう。助かったわ」
「あは、あはは、あはははははっ」
金髪少女が迫ったその時、ヴィジョンが見えた。
””金髪少女がボク達に瘴気をばら撒いてくる!””
ボクは霊夢を引っ張って、迫ってきた少女と距離をとった。
「……しょうがない。時空静止「ザ・ワールド」!」
時間が止まる。
狂った笑いを浮かべる少女。それを睨む札を持った霊夢。
世界はグレー一色で、何もかもが止まっている。
霊夢を移動させ、少女をけつまずいたような状態にさせた。
「――そして、時は動き出す」
瞬間解凍するように凍りついた世界が、色と音を取り戻した。
霊夢の目には、金髪の少女がドジって地面に転がったように見える。ボクが時間を静止させて、そう仕向けたのだが。
「………あれ?」
「どうやら、あんたは正気に戻ったみたいね。……ハイゼンスレイ、やってあげて」
「ええ」
金髪少女の手を掴んで起き上がらせた。
「ねえ、私、どうしちゃったの?」
「おかしな笑いを浮かべながら、私達に襲いかかったのよ。……ま、ハイゼンスレイが解決してくれたのだけどね」
「ハイゼンスレイって?」
「あんたの目の前にいる女よ」
「ふーん……。ねえ、」
「はい?」
「あなたは食べてもいい人間?」
黙ってしまった。
「……食べていい人間なわけないでしょ」
霊夢の札がその娘のおでこに当たる。
「うぅ、ごめん」
「いいよ。あなたは妖怪なのでしょう? そう言ってもそこまで不思議じゃないけどね。ま、気をつけてね」
「うん、ありがとう。……あ、そうだ。あのさ、」
「うん?」
「私の友達も私と同じようにおかしくなっていると思うから、気をつけてね」
「ええ。ありがとう」
ボクは金髪の少女の頭をなでてから、霊夢とともに先を急いだ。