造花に命を吹き込む魔法   作:赤鱶

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プロゲーマー、策を錬る

――というわけで、俺は一体どうしたらいいと思う?」

 

「ちょっと待って、いや突っ込みどころが多すぎるわよ!?」

 

俺には女心は分からないからな。 身近な人に相談するに限る……というわけで爆薬分隊の同僚、夏目氏に現状を話したところ返ってきた反応がこれである。

 

「新進気鋭のプロゲーマーにラブロマンスの気配!? って話題になってたから惚気でも聞かせてくれるのかと思ったら、そもそも恋愛関係じゃなかったとか……おかしいのは挙動だけにしておきなさいよ」

 

「おう誰の頭がおかしいって?」

 

「アンタよ、アンタ。 恋心が努力でどうにかなるなら私達、あんなに頭悩ませる事なんてなかった筈じゃない?」

 

妙なポリシー拗らせてお嬢様囲い込んだのも頭おかしいけど、と前置きして、当事者だからこそ伝わる表現で夏目氏が語りだす

 

「ほんっとーに伝わらない、変わらない。 気の遠くなるような積み重ねがなんにもならない。 喧嘩もする。 バトルもする。 仕事でペアルックだった事もある、SNSでカップリングされてるのも知ってる……ランチだって行くし死ぬほど勇気出して手を繋いでみた事もある! ……のによ」

 

ミーティングルームに溜息が2つ響く

 

 

最初はからかい半分だったとはいえ、俺もその道程をずっと見てきたしサポートしてきた。

乙女ゲームならチャプターが幾つか進んでもいいようなイベントの数々を経験してなお、あんの超絶鈍感総受け野郎はちょっと意識するようになった程度でしかない。

 

だからこそ、恋心はどうすることもできない、という夏目氏の評は痛いほどよく分かる。

 

それは同時に、俺には打てる手が無さそうだ、という事も意味していた。

 

いやそれじゃ困る。 どっかに糸口はないのか。

 

「夏目氏の()()()()って具体的にどんなのだったの」

 

む、と考え込む夏目氏はとりあえず置いておいて。

俺は普段から慧と夏目氏の仲をネタに慧をからかってはいるが、実際問題としてそれを否定する慧は本気でその気がないのか照れ隠しなのか分からない所がある。

最近は否定するにも勢いがなくなってきたから、ようやく意識してきているのかと判断していたが。

そろそろ本音をしっかりと聞き出さなきゃいけないか。

 

 

「……思い出せないの」

 

「うん?」

 

「最初は憧れだった、目標だったのは覚えてる。 おんなじチームになってスカシた奴だって敵視して、でもたまにヘタレで、努力家で、可愛いところも沢山見付けて……気が付いたら好きになってたのよ。 だから切っ掛けは分からなかったわ」

 

ツンデレ娘に自問は難しかったらしい……半分以上冗談だ。

思い返してみれば俺の中で玲さんの比重はどんどん増してきていたのは確かで、俺には自覚する切っ掛けがあっただけ、とも言える。

 

だとしたら……或いは、その感情に好きと名付ける機会さえあれば、意識させることは出来るのかもしれない。

 

 

――そういう家なんです――

 

 

……出来るのかなぁ。

 

例えば俺が玲さんに告白してみたとして、気の迷いとして処理されたら?

玲さんが学生時代に告白された回数を考えてもみよう、玉砕させた恋心で山が築けるくらいだ。

恋愛に興味のない家系だという自己申告も鑑みると、並大抵の事では認識の壁を乗り越えるのは難しいだろうと推測される。

 

基準値を超えないとダメージが入らないボスだとかのクソ調整は両手で足りないくらいに戦ってきた。 しかも人は慣れるものだ。 カスダメを無効化した分だけ基準が上がっていくとすれば……

 

一撃、たった一撃の有効打を入れられればいい。

けれどそれは、クリティカル確定の超ダメージ攻撃である必要がある。

 

……どうしたものかね。

 

 

基本方針は決まった。 とはいえ具体的に何を、と言われると困る。 俺が思い付くようなことは大体は他の奴らも思い付いていただろうし、それを実行に移した奴だって居たに違いない。

そして玲さんが誰とも付き合わず、誰にも心動かされなかったという事は、つまりそういう事だ。

さっきの例で言うと基準値以下だった訳だ。

普通に告白したんじゃ届かない。

 

「じゃあ難しいんじゃないかしらね……」

 

「だよなぁ……」

 

もう何人かに相談しよう。 そう決めて今のところは解散だ。

取り敢えずは岩巻さんかな、知ってるシチュエーションの数ならあの人に勝るものはないだろう。

戦略的な観点からの評価は武田氏が適任だろう。

玲さんと俺の内面に関する考察は……後が怖いが鉛筆と慧にお願いすることになるかな。

敵を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず危うし、とも言うし今回に限っては絶対に失敗できない。

例えこの先の一生で数え切れぬほど煽られるのであってもだ。

 

いや鉛筆は止めといたほうが賢明かな……

 

 

 

やけに荒々しく扉が開く。

慌てた様子でミーティングルームに入ってきたのは、見たことのない表情の慧で。

 

「噂をすれば影が差す、どうしたそんなに慌てて」

 

「談話室に二人が居なかったから探しに来たんだよ。 ……どうしたの、今日に限って」

 

「ちょっと恋愛相談をな」

 

「……は?」

 

俺の口から恋愛相談という単語が飛び出したのがよっぽど驚きだったのか、フレーメン反応を起こした猫みたいな表情になっている。 面白いなコレ、写真撮っとこう。

 

俺が端末を取り出した時点で我に返った慧は、マトモな説明を求めて夏目氏を見る……が夏目氏もどう説明したものかと肩を竦めるばかり。

 

自分で説明しろと申すか……

 

 

…………

 

 

「人生までクソゲーにしなくていいじゃん、頭おかしくなったの?」

 

「テメェ覚えてろよ」

 

「はいはいそういうのは10先勝ってからにしてくれる?」

 

「は? よしその喧嘩乗ってやろうじゃねーか喧騒(ライブラリー)箱有(キューブゲット)でいいな!?」

 

「上等! 前回みたいに返り討ちにしてあげるよ」

 

 

 

「って訳で夏目氏、慧は借りていくな」

 

「私のって訳じゃないから!」

 

目礼一つ、捨て台詞一つ。

 

ちっとも関係が進まない二人の顔が赤くなったのを視界の端で確認してほくそ笑む。

 

これからは内緒話の時間だからな。

夏目氏にはちょっと聞かせられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「……で、なんであんなに慌ててたんだ? 夏目氏を俺に取られるとでも思った?」

「いっそ殺せ」

「今夜は鉛筆も呼んでシャンパンだな……」

喜べ夏目氏、勝利はすぐそこだぞ
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