造花に命を吹き込む魔法   作:赤鱶

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迷走3

「ARゲーム、ですか……?」

 

週末にVRゲームをやるようになって数週間経った。 それはつまり言い換えれば俺と玲さんが同棲……いや同居だなこれ、同居するようになってから数週間経った、という事も意味している。

玲さんは持ち前のプレイヤースキルで普通のゲームは簡単に攻略してしまう。 俺のクソゲーコレクションは高難易度のものはシングルプレイのもの、製作の感性が独特すぎるものも多く、今の段階では勧めるべきではないと判断した。 だからこその選択肢として、一旦はクソゲーから離れてみるべきだと思ったし、本質的には趣味探しなんてもっと広い範囲でやるべき事のはずで

 

……逃げるな照れるな誤魔化すな、夏目氏を焚き付けておいて情けないとは思わないのか

 

 

「まあそれは理由の一つでしかないんだけど……ええと、なんだ」

 

言い淀むな俺。

 

 

「デート、してみない?」

 

 

そういう事になった。 だいたい俺の趣味だ

 

 

 

 

 

 

 

俺の隣を玲さんが歩いている。

目が合えば微笑んでくれる。

話が合えば笑い、最近始めたゲームの話で盛り上がる。

なんというかこう、まるで普通の彼女みたいな気すらしてくるのが自分でも擽ったいくらいの、穏やかな時間だ。

中学高校時代の斎賀さんは掴みどころがない、高嶺の花だ、などと言われていたのを覚えている。 そう言っていた奴らは今の玲さんを見たらどう言うんだろうな?

 

こんな可愛いひとだとは思わなかった。 頑張れば接点の一つでも作れただろうに、俺は何をやっていたんだ。

 

……孤島で暗殺幼女やってたり、ストップウォッチ片手にピザと戦ってたな。 というか現実の女性に興味無かったわ。

直後にナッツクラッカーに精神汚染を受けたせいで状態が固定されたんだろうな、リセットされたのか、奴への反発で軽い性嫌悪にでも陥ってたのか。 悪霊退散、悪霊退散。

 

夏目氏の恋愛相談に付き合って、至近距離でラブコメ展開を見ているのがリハビリになったのか、関連して乙女ゲームをやり込んだのが良かったのか。 最近はだいぶまともな感性を取り戻せたと思ってはいるのだが……まだ足りないか?

そもそも婚約、結婚を決意したのが恋とか愛とかじゃなくて価値観の押し付けって時点でだいぶ感性歪んでるような…! 手に衝撃!

 

「楽郎さん!」

 

「アッはい何でしょか」

 

「……その、ゲームセンターに着きましたよ?」

 

「……(マジでぇ? という驚き)」

 

「……(にこにこ)」

 

「はい。 すみません」

 

「お疲れでしたか? 昨日もお帰りが遅かったですし……」

 

「いやそういうんじゃないんだありがとう、身体は元気。 すごく元気」

 

デート中に考え込んで彼女放ったらかしにするプロゲーマーが居るってマ? 普通に考えてクソ野郎では?

 

 

 

 

 

後でクレーンゲームもやってみようか、などと話しつつVR、AR機器の並ぶブースに到着して、見覚えのあるロゴとコックピット風の筐体を見付けた玲さんが声を上げた。

 

「あっ、楽郎さん、これって……」

 

「そう。 アーケード版のネフィリム・ホロウ、業務用VRシステムと専用ソフトでランクマッチしてる。 で、あっちのディスプレイに映ってるのがオンラインモードのランカー戦」

 

ランカーの戦闘は見栄えがいいから、そのままモニターに映すだけでいい客寄せになる。

今も画面の中では真紅の機体が暴れ回っていた。

 

ネフホロを始めた頃はいつ見ても居るからもうそういうNPCなのかと思ってたが、大会で戦ったりしていると知り得る事も増えてくるもので。

 

「練習したらあんなに動けるようになるんですね」

 

「あの赤い機体のプレイヤーはマニュアルモードで操縦する人だから、レーダーからブースターまで、全部それぞれ意識して操作してる筈だけど……まぁオートモードでもあの動きは可能だね」

 

「……えっ」

 

「初代の頃は偶にしか勝てなかったからなぁ……本当に化け物じみてると思うよ」

 

「……たしか初代って、オートモードが無かったってお聞きした覚えがあるのですけれど」

 

「言った覚えがあるのですけれど、どうされました?」

 

 

「勝ったんですか? ……マニュアルモードで、アレに?」

 

 

なんで俺まで化け物を見るような目で見られてるんだろうね?

 

 

 

 

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