プルフォウ・ストーリー0092 失われたエメラルド 作:ガチャM
■デザイン協力
アマニア X @amania_orz
おにまる X @onimal7802
かにばさみ X @kanibasami_ta
ねむのと X @noto999
田舎太郎 X @jegotaro
いなり X @inrtbg7
ヒスイ X @m_hisui
■設定資料
ティプレ・アン(デザイン:おにまる)
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ジェシカ(デザイン:ねむのと)
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エミリー・バルド軍曹(デザイン:アマニア)
【挿絵表示】
オスカー・ウィルフォード大尉(デザイン:田舎太郎)
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※Pixivにも投稿しています。
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学園はジオンの基地とは比較にならないほど綺麗で、このままでは軍人としてのスキルや勘が鈍ってしまうと心配になるほどに快適だった。
でも、日々の学生生活をこなすことはなかなか面倒なことだと実感する。
授業をさぼったら教師から素行の悪い生徒として目を付けられてしまうので、なるべく模範的な生徒として振る舞ってくれというのがエミリー軍曹の指示だったからだ。
真面目に任務をこなすのは軍隊生活で慣れてはいても、生徒らしく振舞うのが骨が折れる。授業は実践的でないから退屈だし、生徒たちはなぜ無意味な無駄話ばかり好むのか。
その意味では、体を動かすのは気晴らしになる。今日の一時限目は体育で、カリキュラムは水泳だ。
「水泳ね……」
プルフォウはスポーツバッグから水着を取り出しながらつぶやいた。大勢でただ漫然と泳ぐだけのことが授業になるとは、彼女にとっては少し驚きなのだ。
それを聞いたクラスメイトのジェシカが意外そうに尋ねてくる。
「どうしたの? プルっち実は水泳苦手だったり? サイド3でも水泳の授業はあったよね?」
しまった。水泳の授業を受けたことがないとばれたら怪しまれてしまう。だが大勢と一緒にプールで泳ぐのは、アクシズでの水中訓練を除けば初めての経験なのだ。
水中訓練というのは、水没したモビルスーツから緊急脱出するとか、敵地でのサバイバルのために潜行するとか緊迫したシチュエーションばかりで、とても水泳とは言えないものではあった。
「あ、もちろん授業はあったわ。ただ、ひさしぶりだなって」
プルフォウは慌てて取り繕った。
「ふーん。じゃあ泳ぐのは好き?」
「うん。人工の海があるコロニーで泳ぐこともあったから。でも授業は宇宙遊泳の方が多かったかな」
それは嘘ではない。パイロットの訓練では宇宙遊泳は必須なのだ。
「宇宙遊泳!? すごいね! プールで泳ぐのとは全然違うでしょ? クロールとかで泳げるの?」
「ううん。宇宙じゃ手足を動かしても進まないのよ。空気も水もないから、噴射装置で進むの」
「へえ~専門的だね。やっぱりコロニーの授業は違うんだね」
「そうなの……」
「まあ幼稚で退屈な授業に思えるかもしれないけどさ、プルっち我慢して、わたしたちにちゃんと付き合ってよ!」
「あはは」
ジェシカの話では、ペアになって息継ぎの練習をしたり、基礎からと泳ぎ方の練習をしたりするらしかった。確かに彼女が言うとおり子供っぽくて、もどかしい内容だ。
いまだって教室は騒がしく、クラスメイトたちはスタイルがどうの下着がどうのと、お互いをからかいあっている。
「(でも本当に泳ぐのは久しぶりだ。せいぜい楽しませてもらうさ)」
プルフォウは水着に着替えるために制服と下着を脱いだ。
そんな彼女の思い切りの良い脱ぎ方にジェシカは驚いてしまう。
「わっ、プルっち! 少しは隠さないの」
「えっ? だって、ここには女子しかいないじゃない」
「そうだけどね。だけどプルっちは可愛いから……」
そのとき「どっか行け! 変態ども!」という誰かの叫び声が聞こえて、プルフォウは飛び上がるくらい驚いてしまった。
「な、なに!?」
「やっぱりか!」
男子生徒の数人が、廊下から女子が着替えている教室内を覗こうとしていたのだ。教室のドアを開けて、一人の女生徒がこぶしをふりあげて男子生徒を追い払う。怒声が廊下に響き渡った。
ジェシカがプルフォウの身体をタオルで隠した。
「あ、ありがと……」
「気をつけなよプルっち」
プルフォウは男子たちの幼稚さ、明け透けさに呆れてしまった。
馬鹿じゃないのか? 知能が低いのだろうが、このくらいの年齢の男子は性欲が異常に旺盛ということなのだろうか。だとすれば少々危険かもしれない。他の女子はどうしているのだろうか? だが女生徒の剣幕をみれば心配はいらないとも思えた。あれはネオ・ジオンの兵士より迫力がある。ネオ・ジオンにスカウトしても良いくらいだ。
「いつもこんな感じなの?」
「あの馬鹿たち、いつもは上級生とか覗きにいってるらしいよ。でもさ、今日は100%あんたのせいだって!」
「ほ、ほんとに?」
「だから言ったじゃん。プルっちの着替えを見たくて湧いてきてるんだよ。美人の転校生のさ」
プルフォウは思わぬ言葉に自分の顔が熱くなるのを感じた。
転校してきてすぐにジェシカに勝手に付けられたあだ名にも困ってしまうが、面と向かって容姿を評価されることが何よりも恥ずかしかった。およそパイロットとしては最も縁遠い評価基準だ。頼むからやめてほしい……。
「わ、わたし可愛いだなんて言われたことないから」
そんなプルフォウの言い訳に、ジェシカは世の中のことが何も分かってないというような顔で
「いやいや、自分の魅力に気づきなさいよ……うらやましい。わたしだってプルっちの裸みたいくらいだよ。綺麗だし、なんでそんなにスタイルがいいの? このデブスのお尻なんか悲惨だよ」
と言いながら、ジェシカは確かに少し不格好な自分のお尻の肉をつまんでみせた。
「そんなにスタイル良いとは思わないけどね……あ、でも毎日運動はしてるかな」
そう言ってみたものの、パイロットとして日頃から体を鍛えている身体が、均整がとれているのは当たり前だとは思った。
常に死と隣り合わせにある兵士と、怠惰な日常を過ごす女生徒。その肉体が同じであるわけはない。体を適切に鍛えていれば、動作の正確さや耐久力、集中力など、ギリギリのところで敵との差が生まれる。そのちょっとしたアドバンテージが生死を分けるのだ。
死神が等しく戦場に舞い降りるならば、その振り下ろされる大鎌を避けることが出来るのは、唯一鍛錬だというのがプルフォウが戦場で学んだことなのだ。
「なるほどね~納得だよ。見た目は細いのに、けっこう筋肉ある感じだよね」
「そうかしら?」
プルフォウは窓や廊下を見回し、加えて戦闘以外ではあまり役には立たないが、ニュータイプ能力で殺気や邪念などを確認して、教室を覗いている男子がいないことを確かめると、再び下着を脱ぎ始めた。
さっきまでなら気にせずさっさと脱いでしまったところだが、覗かれていたと意識するとさすがに気にしてしまう。
「それに胸も大きいし」
「ひぇっ!?」
プルフォウは背後から胸を掴まれて思わず妙な声をあげてしまった。その艶やかな声にクラスメイトが一斉に注目する。反射神経が優れている彼女も、さすがに着替え中は無防備なのだ。
「張りがあるね~。すごい弾力! わたしが揉んだら反発力でもっと大きくなるんじゃないの~?」
ジェシカはプルフォウの乳房を、リズミカルに弾ませる。
「あんっ、や、やめてっ!」
ジェシカを近接格闘で無力化しないように自分を抑えるのは、かなりの精神力を必要とした。もう少しで彼女の首の骨を折るところだった。そんなことにも気付かすに、はしゃぐ二人を見てクラスメイト達が呆れている。
理性もなく、欲望のままに振る舞う。ここの子供たちは本当に愚かだ。いや、もしかするとエルマン中尉や、基地の他の人間もそういう要素があるのだろうか? 本当は欲望だらけで、だが理性が欲望を抑えているという感じなのか?
基地に帰ったら少し注意して観察してみようと、プルフォウは胸を揉まれて身じろぎしながら思うのだった。