プルフォウ・ストーリー0092 失われたエメラルド   作:ガチャM

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宇宙世紀0092年。アクシズ親衛隊の生き残りプルフォウは地球にいた。アフリカ戦線でエースパイロットになっていた彼女は、あるとき特殊任務を命じられた。それは地球で身を隠している要人を宇宙に脱出させるというものだった―。

■デザイン協力 
アマニア X @amania_orz
おにまる X @onimal7802
かにばさみ X @kanibasami_ta
ねむのと X @noto999
田舎太郎 X @jegotaro
いなり X @inrtbg7
ヒスイ X @m_hisui

■設定資料
ティプレ・アン(デザイン:おにまる)
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ジェシカ(デザイン:ねむのと)
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エミリー・バルド軍曹(デザイン:アマニア)
【挿絵表示】

オスカー・ウィルフォード大尉(デザイン:田舎太郎)
【挿絵表示】


※Pixivにも投稿しています。


第23話「奇襲攻撃 Part1」

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 アフリカ、シエラレオネ東部。これといって見るべきものはない見渡す限りの砂漠。

 その地は旧世紀から続く砂漠化の影響で、土地がすっかり痩せ細ってしまっていた。ろくに穀物もできず、ダイヤモンドやレアメタルなどの資源はとっくに掘り尽くしてしまって、価値のあるモノはまったくなかった。一言で表現するなら、シエラレオネは見捨てられた土地だった。

 

 だからこそ、ここに目をつけたのかもしれない。いま地球連邦軍はダイヤモンド鉱山跡に前線基地を建設しつつあったのだ。

 

 アフリカ大陸におけるジオン残党軍のゲリラ活動は、地球連邦軍にとっては積年の懸案事項だった。残党軍の戦力は、けっして地球連邦軍を脅かすものではないのだが、パイロットは手練れ揃いで、その作戦行動は老獪極まりなかった。いつかは治療しなくてはならない悪化した虫歯のようなもので、連邦議会でジオン共和国の自治権委譲に関する議案が提出されたことをきっかけとして、怠惰で日和見主義の地球連邦政府もようやく重い腰を上げたのだ。

 サイド3のジオン共和国が再び地球連邦政府の統治下に入るならば、ジオン残党軍が地球上に存在することは許されないというのがその名目だった。

 

 この前線基地は、アフリカのジオン残党軍を殲滅する橋頭保となることが期待されていた。シエラレオネは海からのアクセスが良いので、港が整備されて輸送艦の接岸が可能になれば、多数のモビルスーツを運び込むことが可能になるからだ。

 そのため連邦軍はシエラレオネ基地を一刻も早く完成されるべく、莫大なペイロードを誇るミデア輸送機をヨーロッパ大陸とアフリカとをせわしなく往復させて資材やモビルスーツを空輸した。さらにダイヤモンドが掘り尽くされた跡を塹壕とし、残された施設をそのまま管制塔、司令室として利用することで、建設コストと期間を大幅に短縮させたのだ。

 

 滑走路も完成間近で、すでに発電機やレーダー設備、通信装置は搬入されて、航空管制が始まるとともに簡易な空港として機能し始めていた。

 作業用のRTX-65ガンタンク、MS-06Vザクタンクといった戦車タイプのモビルスーツが、車体にドーザーをつけて荒れた土地を整地し、簡易舗装用の鋼板を敷き詰めて滑走路をどんどん拡張していった。滑走路があれば大型輸送機も使えるようになるので、さらに大型の機材を運び込むことが出来るようになる。鉱山跡は急速に基地化していた。地球連邦軍はここを橋頭堡とし、アフリカのジオン残党を一掃するつもりなのだ。

 

 この状況に危機感を覚えたジオン・アフリカ方面軍は、戦力が集中する前に殲滅する作戦を立てた。つまり基地に先制攻撃をしかけることを決断したのである。何の戦略的価値もなかった土地が、突如前線となったのだ。

 

「……思った以上に基地は完成している。情報以上の進み具合だ」

 

 先行したワッパから送信されてくる映像と、ドライセンのセンサーから得られる情報を確認しながら、攻撃部隊を率いるオスカー大尉はひとりごちた。

 防衛のために、基地周辺では量産型モビルスーツMSA-003ネモやRGM-86RジムⅢが哨戒任務につき、交代で警戒を行っていた。

 

FLAK(対空砲)や対モビルスーツ砲台も設置されているみたいね」

 

 セレン・ディリーナ中尉は愛機のゲルググを高所に陣取らせて、スナイパー・ライフルのスコープで基地のモビルスーツや施設をマーキングしていた。

 彼女のゲルググが扱うスナイパー・ライフルは、モビルスーツ用対鑑ライフルASR-78を小型化したモデルで、戦艦の装甲を撃ちぬけるほどの威力を誇る。全長がモビルスーツほどもあるので、取り回しが悪いのが欠点ではあった。

 

「セレン中尉、攻撃開始の合図で砲撃が始まる。俺たちが突入するから援護してくれ」

「わかったわ。砲台を優先的に排除します」

「頼んだぞ。モビルスーツは俺たちがやる。全員準備はいいか? 問題がある者は報告しろ」

「マリウス準備よし」「フランク問題なし」「カミル少尉、問題はありません」

 

 攻撃部隊のメンバー全員が機体に異常はないことを報告する。

 

「みんな気を付けて」

「よし、攻撃開始だ!」

 

 オスカーの掛け声とともに、後方に位置していた二機の砲撃用モビルスーツMS-06Kザクキャノンが、背部に装備する180mmキャノン砲を発射した。目標は基地中枢に位置する航空管制ビルだ。

 

 輸送車両であるザクタンカーに搭載されていたワッパ観測機が、先行して地上から二メートル足らずの地面すれすれを飛行しながら基地ギリギリまで接近し、ミノフスキー粒子の影響を受けないレーザー観測装置で、目標の位置情報をあらかじめザクキャノンに伝えていた。

 ザクキャノンは限られた機体で最大効果を発揮する攻撃を行うべく、キャノン砲の角度を少しずつ変えながら連射する攻撃手法をとった。

 それは多数砲弾同時着弾というもので、タイミングをずらして異なった弧の弾道で砲弾を発射し、最終的に複数の砲弾を目標に同時に着弾させる手法である。その着弾の衝撃は凄まじく、集中攻撃による激烈な破壊を行うことが可能だった。

 

 基地の管制室にいた連邦軍兵士は、砲弾が落下するヒュルヒュルと風を切るような音を聞いたが、その僅か数秒後に管制室は大爆発を起こして、ビルごと跡形もなく吹き飛んでしまった。

 その爆発を合図に、基地周辺の岩陰に隠れていたジオンのモビルスーツが次々と飛び出していった。

 奇襲に対応するために、基地の要所に設置されていた対モビルスーツ砲台が、モビルスーツに狙いを定めるべく旋回した。だが、その直後砲台は長距離弾の直撃をうけて大爆発を起こした。

 セレン中尉のゲルググの狙撃は、次々と砲台を潰していった。

 

「いまだ突入しろ!」

 

 先陣を切ったのは、フランク・ミラー軍曹が駆るケンプファーだった。

 爆発的な加速で戦場を駆けぬけてゆくそのモビルスーツは、砂漠迷彩を施され、脚部にはホバー走行用のバーニアが追加装備されていた。

 それは大気圏突入用に開発されたバリュートシステムの減速用バーニア・ユニットを流用したもので、さらには全身にショットガンやバズーカを武器を積めるだけ装備し、まさに強襲モビルスーツの名に恥じない勇ましい姿を見せていた。

 

「基地の戦力は、観測機によればネモ三機、ジムタイプ六機。キャノンタイプの砲撃モビルスーツが四機だ。隠れている奴もいるかもしれない。俺とボーマンが突っ込むから援護しろ!」

 

 フランク軍曹は一番乗りを果たすべく、ケンプファーを加速させた。

 その後方から、追随していたMS-07BグフとMS-06Dディザート・ザクが、バズーカによる攻撃で援護射撃を行った。バズーカ砲弾が格納庫から飛び出してきた一機のジムⅡに直撃し、左腕が吹き飛ばされた。

 基地周辺で警戒中だった連邦軍モビルスーツは、不意を突かれて訳のわからぬまま回避行動をとる他はなかった。その混乱に乗じてケンプファーは肉薄して白兵戦を挑んだ。闘士(ケンプファー)の異名を持つこの機体は、接近戦こそ真価を発揮するのだ。

 

 滑走路端に展開していたネモをターゲットに定めると、フランク軍曹はバーニアを全開にしてケンプファーを最大加速させた。そして散弾の射程距離まで急接近すると、装備していたショットガンを速射した。

 対モビルスーツ用197mm口径ショットガンから放たれたダブルオーバック弾が、内包されていた無数のガンダリウム合金製の散弾を撒き散らして敵機の装甲を穿った。

 ネモは散弾をまともに胴体に喰らって、その運動エネルギーで後ろに吹っ飛ばされながら、穴だらけになって沈黙した。

 

 軍曹はすぐさま左脚を軸にして機体を素早くターンさせると、もう一機のネモとの距離を詰めるべく高速移動した。だが、次にターゲットとなったネモはその接近に気付き、迎撃するために腰のビームサーベルを引き抜いて、ケンプファーから見て右方向にスライド移動しながら突進してきた。

 

 右手に銃を持っている場合、右側は狙いにくくなる。すぐに対応して、そのような戦術をとるネモのパイロットは手練れに違いなかった。フランク軍曹は向きを変えようとケンプファーに九十度ターンをさせるが、一気にネモに間合いを詰められてしまった。ネモを近づけまいとフランクはショットガンを連射したが、ネモはその攻撃をシールドで防ぎつつ、ビームサーベルを上段に構えて切りかかってきた。

 

「やるな! 練度が意外に高い!」

 

 軍曹はケンプファーにショットガンを胸の辺りまで持ち上げさせると、ネモのビームサーベルの柄を受け止めた。だがネモは逆噴射をかけて間合いを調整しつつ、反転して再び斬りかかると、今度はビームサーベルの切っ先を上手くショットガンに当ててきた。

 

 ジュッと金属が溶ける音がしてショットガンがぐにゃりと曲がった。フランクは、もう使いものにならないショットガンを放棄すると、素早く背中から斬撃用の刀を取り出した。

 その刀は、ケンプファーと同タイプの強襲型モビルスーツMS-08TXイフリート用のヒートサーベルを加工したもので、なぎ払う用途で用いられる刀マチェットを模したヒート・マチェットだった。取り回しが良いので、近接戦闘用には最適の武器だ。

 

 ネモはショットガンを斬った勢いで僅かに体勢を崩していた。その隙を突いてケンプファーは一気に接近すると、横なぎにマチェットを振るった。それは斬ると言うよりは強引に叩き斬るという感じで、ネモの腕が関節から千切れ飛び、断面からオイルがまき散らされた。

 両腕を失ったネモは、ふらつきながらも頭部のバルカン砲を速射して反撃するが、もはや勝負は決していた。フランク軍曹はバルカン砲の攻撃を難なくかわすと、ネモの腰を切断して完全に行動不能にした。エンジンを狙わなかったのは別に人道主義からではなく、核融合炉を爆発させたくなかったからだ。小型とはいえ、核融合炉の爆発を至近距離から喰らえば相当のダメージを受けてしまう。

 

「次はどいつだ! いくらでも相手になるぞ!」

 

 二機のネモを屠り、勢いに乗るフランク軍曹が次の攻撃目標を探そうと辺りを見回したとき、彼は味方のディザート・ザクがジムの攻撃を受けて吹っ飛ばされる光景を見た。

 ジムは長い槍のようなビームサーベルを装備している。

 

「カミル少尉!」

 

 高台で援護するディリーナ中尉からもその様子が見えた。援護しようと周囲を確認すると、塹壕からキャノンタイプのモビルスーツが上半身を出すのが見えた。

 

「キャノンタイプが狙ってる! 誰か助けてあげて!」

 

 ディリーナはキャノンタイプのモビルスーツを素早く狙って狙撃したが、狙撃を警戒した相手は素早く身を伏せた。

 

「俺がいく!」

 

 オスカーがフランクが援護に行こうと考えた次の瞬間、塹壕の別の場所から放たれたビームキャノンの閃光がザクを貫き、瞬く間に光球に変えた。

 

「少尉ーっ!」

 

 ジムはロングスピア型のビームサーベルのリーチを生かした戦術をとっていた。離れた間合いから敵モビルスーツを突き刺して動きを止め、間を置かずにキャノンタイプのモビルスーツが砲撃で止めを刺すという連携戦術だ。

 

「フランク軍曹! 聞こえるか?!」

「聞こえてますぜ大尉!」

「カミル少尉がやられた! 俺が砲撃を引きつけるから、あの槍野郎を倒してくれ! 出来るか?」

「当てにしてください!」

「期待するぞ」

 

 重モビルスーツAMX-009ドライセンは、ジオンの攻撃部隊の中で一際目立っていた。ドライセンは、ザクやドムといったジオン公国製の機体より一回り大型で、世代的にも宇宙要塞アクシズで開発された最新鋭の機体だ。高性能機であることから地球連邦軍からも戦力の要であると看破されて、彼らにとって優先順位の高い攻撃目標になっていたのだ。

 オスカーは、その状況を最大限活かそうと考えていた。つまり目立つ機体で戦場を縦横無尽に駆け巡り、囮として敵の攻撃を引きつけることで、他の機体が攻撃するきっかけを作ろうというのだ。ドライセンが誇るガンダリウム製の重装甲は、ちょっとやそっとの攻撃は受け付けない。

 

 だが連邦軍の守りは予想以上に強固で、ザクキャノンの砲撃から間を置かずに攻め入ったはずが、連邦軍は素早く防御体制を整えてしまっていた。

 その迅速な対応は、職業訓練校と揶揄される地球連邦軍らしからぬものだった。連邦軍は砲撃用モビルスーツと白兵戦用モビルスーツを組み合わせて四つの部隊に分けて、死角のないように基地の対角線上に配置していた。しかも作業用モビルスーツで地面を掘削して作り上げた塹壕に機体を半ば隠しているので、遠方からの攻撃は思うように当たらないのだ。

 

 基地への襲撃を想定して、攻撃を受けたらすぐに防衛ラインを引けるように訓練していたのだろう。砲撃から三分で警戒態勢を整えるのだから、けっして二線級の部隊ではない。

 あるいは罠にはまったのかもしれなかった。美味しいエサを撒き、それを食べようとしてきた間抜けな獲物を捕まえる。仮にそうだとすれば全滅は必至だ。

 

 焦りを覚えたオスカー大尉は、基地周囲を移動しながら様子を伺い、防御の手薄な場所を探し回った。基地の管制ビルを破壊したように、ザクキャノンによる曲射射撃が要請出来れば助けになるが、すでにミノフスキー粒子が散布されていて長距離通信は不可能だった。

 長距離砲撃のために後方に位置していたザクキャノンも今は部隊に合流し、キャノン砲の水平射撃で援護を行っている。もちろん水平射撃なので塹壕にはあまり効果はない。これではただの仮設基地ではなく、ちょっとした要塞だ。

 

「連邦軍め、ここまで基地化を進めていたとはな……。くそっ、ベースジャバーがあれば!」

 

 支援航空機であるベースジャバーがあれば、柔軟で立体的な作戦が可能になる。だがベースジャバーは数が少なく、いまはヨーロッパの作戦に集中運用されていたので余っている機体は無かった。

 このまま走り回っているだけでは埒があかない。ぐずぐずしていて増援をを呼ばれでもしたら、前後から挟撃されてしまう。そのくらいのことは連邦軍もするだろう。

 こらえきれず、うかつにも単機で飛び出したカミル少尉のディザート・ザクは、敵の連携攻撃にあっという間に撃破されてしまった。

 制しきれなかった隊長である自分の責任だ。

 

 オスカーは意を決して、ドライセンの強固な装甲を信じることにした。そう、この膠着状態を打破するためには、もはや基地に突入するしかないのだ。

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