プルフォウ・ストーリー0092 失われたエメラルド   作:ガチャM

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宇宙世紀0092年。アクシズ親衛隊の生き残りプルフォウは地球にいた。アフリカ戦線でエースパイロットになっていた彼女は、あるとき特殊任務を命じられた。それは地球で身を隠している要人を宇宙に脱出させるというものだった―。

■デザイン協力 
アマニア X @amania_orz
おにまる X @onimal7802
かにばさみ X @kanibasami_ta
ねむのと X @noto999
田舎太郎 X @jegotaro
いなり X @inrtbg7
ヒスイ X @m_hisui

■設定資料
ティプレ・アン(デザイン:おにまる)
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ジェシカ(デザイン:ねむのと)
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エミリー・バルド軍曹(デザイン:アマニア)
【挿絵表示】

オスカー・ウィルフォード大尉(デザイン:田舎太郎)
【挿絵表示】


※Pixivにも投稿しています。


第24話「奇襲攻撃 Part2」

     23

 

 

 

「マリウス中尉、後についてこい。管制塔を制圧するぞ!」

「中央の塹壕に、モビルスーツが少なくとも六機います。簡単には突破できません」

「フランクのケンプファーに反対から攻撃させる。ザクキャノンにも支援射撃を要請するんだ!」

「了解」

 

 オスカーの作戦は、支援射撃を受けながら二機で管制塔に突撃し、敵が混乱したところを反対方向から挟撃させるというものだったが、窮余の策であることは否めなかった。

 だが、このままでは全滅は必至なのだ。

 

 マリウス中尉が、速度の速い隊長機についていくために機体を加速させた。

 彼の乗機は砂漠仕様のドム・トローペンで、その大きく外側に膨らんだ脚には砂塵フィルターの付いたインテークとジェット・ホバー機構が装備されていて、地面から数メートル浮くことで高速移動が可能なのだ。

 

「中尉、塹壕に向けてマシンガンを撃ちまくれ!」

 

 オスカーは部下に指示しながら、ドライセンに両手持ちさせていたバズーカを右肩に構え直させると、操縦桿のトリガーを軽く引いた。するとドライセンの左腕カバーが後方にスライドして、内部から三連装ビームキャノンが迫り出してきた。

 このビームキャノンは、パルス状のビームを連続発射することが出来る。パルスビームとマシンガンによる制圧射撃で、塹壕に隠れたMSを足止めしておいて、その間に飛び込んで白兵戦に持ち込むのである。

 マリウスのドム・トローペンもバズーカを背中に回して収納して、マシンガンとヒートサーベルを構えて後に続いた。

 

 タイミングよくザクキャノンの砲撃が塹壕に襲いかかった。時間をおきながら断続的に対MS榴弾が爆発して、モビルスーツを塹壕に閉じ込めた。

 その好機を生かして、二機は防御フェンスを強引に突き破って敵陣に侵入すると、塹壕に向かって突撃した。

 オスカーは、敵が塹壕に隠れていてくれることを願ったが、砲撃の隙をついて重装甲の機体が身を乗り出してきた。

 

「キャノン野郎がでてきた! 中尉、狙撃に注意しろ!」

 

 背中に二基のビームキャノンを背負い、増加装甲を着込んだモビルスーツ。連邦軍の支援型MS、RGC-80ジムキャノンⅡだ。

 ジムキャノンⅡは塹壕の端に両手を付いて機体を安定させると、ホバー走行する二機に向けて、恐るべき精度のビーム斉射を行ってきた。おそらく電子機器をアップグレードしているのだろう。

 オスカーは、マニュアル操作でドライセンにジグザグ走行をとらせて回避するが、動きを予測されて数発のビームが直撃した。

 

「大尉!」

「大丈夫だ、止まるな!」

 

 対ビームコーティングが施されたぶ厚い装甲のおかげで致命傷にはならず、オスカーは高速移動したまま、ジムキャノンIIに向けて360mmロケットバズーカを放った。

 大型弾頭の威力は凄まじく、砂埃をあげながら直撃すると、ジムキャノンIIの左肩がキャノン砲ごと吹き飛んだ。さらにコンデンサーに蓄えられた電力と、ビームキャノンのメガ粒子カートリッジが反応して、機体は大爆発を起こした。

 その大爆発に怯んで、ジムキャノンIIを支援しようと塹壕から出ようとしていたネモが再び身を潜めた。

 

「中尉、トライブレードを飛ばすから近づくなよ」

 

 オスカー大尉は僚機に注意を促すと、操縦桿のボタンを複雑に組みわせながら押した。するとドライセンの背中から円盤状の物体が外れて飛び上がり、一旦後方に向かったあと、緩やかに向きを変えて、前方に勢いよく飛んでいった。

 

 この投擲型攻撃兵器トライブレードは、その名の通り円盤に三つの羽が取り付けられていて、それが回転することで揚力が産まれて、ニンジャが使う手裏剣のように飛んでいく兵器だ。

 羽根にはガンダリウム合金製の刃が付いており、敵モビルスーツにぶつかると、自らの運動エネルギーによる回転力と鋭い刃によって敵機の装甲を切り裂いてしまうのである。

 ネオ・ジオンの技術陣が開発したこの特異な武装は、言ってみればニュータイプや強化人間が操る遠隔攻撃端末ファンネルを単純化した武器なのだが、敵味方を正確に認識することは出来ないので、攻撃目標に近づくと勝手にモビルスーツを攻撃するようにプログラムされている。

 僚機に注意を促したのはそれが理由だ。

 

 二機のトライブレードは塹壕に隠れていたネモに狙いを定めると、獲物に群がるピラニアのように襲いかかった。突如現れた小型無人機にネモは完全に不意をつかれて、慌ててビームライフルを連射したものの、動き回る小型目標に当てることはできず、トライブレードに頭部と左腕を切り裂かれてしまった。

 

「いまだフランク突撃しろ!」

 

 管制塔に正対して左側にいたフランク軍曹は、隊長の指示を受けて、ケンプファーの腰部バーニアを全開にして塹壕に斬り込んでいった。

ケンプファーはショットガンを右手で構えつつ、左手で携帯ロケット砲シュツルム・ファウストを連続発射した。弾頭はやや不安定な軌道を描きながら飛翔すると、塹壕内のネモに直撃して半壊させた。

 

 別方向からの攻撃に気がついた連邦軍モビルスーツは、制圧射撃の間隙をついて攻撃に転じた。

 二機のジムIIIが塹壕から上半身を露にして、両肩のミサイルランチャーをドライセンとドムに向けて一斉発射する。そしてミサイルの援護を受けつつ、ロングスピアを装備したもう一機のジムIIIが、ケンプファーに向かって塹壕から勢いよく飛び出していった。

 ロングスピアでケンプファーに白兵戦を挑むつもりなのだ。

 

「フランク! 槍を持ったジムがそっちに向かった!」

「ジムのくせに生意気な!」

 

 フランク軍曹は、ケンプファーにヒート・マチェットを構えさせた。この斬撃装備はMS-08Xイフリートの装備を改造したもので、腰に日本刀のように装備されていたが、フランクはマニュアル操作で白兵戦モードに操縦系を切り替えた。その方が柔軟な斬撃が可能になるのだ。

 

 走り込んできたジムⅢは、加速した勢いのままロングスピアを勢いよく突き出してきた。フランクは槍の突きを見切ってケンプファーを屈ませて避けると、そのまま下段からマチェットを振り上げた。

 ジムⅢの腕は伸びきっているので、この攻撃を防御することは出来ない。

 

「もらった!」

 

 だがジムⅢのパイロットは手練れだった。左腕に装備された小型シールドで、ヒート・マチェットをの攻撃を弾いて逸らしてしまったのだ。

 さらにロングスピア先端に装備されたビームサーベルの取り付け角度を九十度変化させると、逆噴射で急制動をかけながら、まるで死神の鎌のように真横に薙ぎ払ってきた。

 

「しまった!」

 

 ジムⅢは、この変幻自在の攻撃で多くのモビルスーツを撃破してきたに違いなかった。

 鎌に刈り取られたケンプファーの頭が、勢いよく横に飛んでいく。さらにジムⅢは体勢を整えると、ビームスピアを上段から降り下ろしてきた。

 

「うわああっ」

「軍曹!」

 

 離れた場所にいるオスカーにはどうすることも出来なかった。彼もジムⅢのミサイルを回避するのに精一杯で、塹壕を突破することすらままならないのだ。

 オスカーは、周囲の時間が止まったように感じられた。実際、ジムの動きが止まって見えたのだ。

 だが、文字通りケンプファーが縦から真っ二つになる寸前、事実ジムⅢの動きは停止していた。

 

「!?」

 

 ぴたっと動きを止めたジムⅢは、数秒間ガクガクと震えたあと、全身から煙を吹いて地面に膝をついた。

 

「な、なんだ。故障したのかっ!?」

 

 オスカーはジムⅢの不自然な挙動に困惑したが、その理由はすぐにわかった。胴体にヒートロッドがぐるぐると巻き付いていたのだ。

 そして動かなくなったジムⅢの背後から、丸みを帯びた水色のモビルスーツが姿を現した。

 

「味方か!? いつのまに接近したんだ!」

 

 その正体不明のモビルスーツは倒したジムⅢを持ち上げると、それを盾にしながら塹壕に突き進んでいった。

 

「あれは……カプールか!」

 

【挿絵表示】

 

 見たところ、その機体はネオジオン製のカプールタイプのようだった。

 カプールはアクシズが開発した水陸両用型のモビルスーツで、球体から手脚が伸びたような格好をしている。手は長く脚が短い、ユーモラスな動物のような体型をした機体である。

 だが、カプールは見かけによらず凄まじい機動を見せていた。

 

「速い! 水陸両用タイプの動きじゃないぞ」

 

 背中に追加された増速用ブースターと素早い脚の動きで、カプールは恐るべき速さで敵陣を駆け抜けていく。

 そしてバッと勢いよく塹壕の上をジャンプすると、上空から両肩に装備されたミサイルランチャーを一斉発射して、塹壕に隠れていた二機のジムⅢをあっという間に倒してしまった。

 

「あのパイロット只者じゃない! 誰なんだ!」

『隊長機、聞こえるか? 援護する。攻撃を続行しろ』

「その声はプルフォウ大尉か!? なぜここに!?」

『話は後だ。作戦に集中するんだ』

「わかった。大尉が来てくれれば心強い」

『管制塔が司令部だな?』

「そうだ。だが厄介な奴がいる。ビーム兵器を装備しているから注意してくれ!」

『了解した。お前たちは対MS車両と砲台を潰してくれ』

 

 カプールは盾にしていた機体を地面に転がすと、今度は撃破したジムⅢから素早く二枚のシールドを奪い、再びジグザグの高速機動で管制塔に突撃していった。

 

 管制塔はシエラレオネ前線基地の司令部として機能していた。高い位置から戦況を把握して、各機に指示しているのだ。

 当然オスカーたちも砲撃や狙撃で破壊しようと試みたのだが、バルカンファランクスと対ビーム装甲を組み合わせた防御システムによって固く守られていたのである。

 加えて高性能モビルスーツが配備されているのが厄介だった。

 

 管制塔下の陣地で指揮をとる隊長機は、陸戦型百式改だった。対ビーム用の金色のエマルジョン塗装が施された、戦場では目立ちすぎるモビルスーツである。

 さらに百式改は僚機として二機のネモIIIを率いていて、三機は注意深く戦場に目を光らせていたのだが、異様な速さで突撃してくる敵機に気がつくと、すぐにビームライフルで迎撃を開始した。

 

 オスカーは心配しながら様子をみていた。カプールはビームの軌道を予測しながら紙一重で避け続け、あっという間に管制塔に接近してしまった。そして、その勢いのまま、ハイジャンプで飛びかかっていった。

 

 オスカーには、その機動が無謀に思えた。案の定、百式改とネモⅢは、バルカン砲とミサイルランチャーを大量に空中にばら撒き始めた。

 

「プルフォウ避けろ!」

 

 だが飛び上がっていたカプールは攻撃を避けきれず、構えていたシールドごと粉々に吹き飛ばされてしまった。

 

「!!」

 

 空中に大量の砂と破片が舞い上がった。センサーからも味方を現す輝点がひとつ消失した。

 

「そ、そんな…」

 

 オスカーはプルフォウ大尉が戦死したことが信じられず、ドライセンの操縦に集中することが出来なかった。

 なぜ彼女を援護せずに、単騎で突撃させてしまったのか……。自分の判断が悔やまれた。

 

 だが、カプールは健在だった。センサー上から消えていた輝点が再び現れたのだ。

 

「大尉!」

 

 カプールのジャンプはフェイントで、シールドを隠れ蓑にしつつ素早く着地して、地面を滑るように移動していたのだ。視覚やセンサーでは追いきれない、目にも止まらぬ高速機動だった。

 カプールのジャンプはフェイントで、シールドを隠れ蓑にしつつ素早く着地して、地面を滑るように移動していたのだ。

 視覚やセンサーでは追いきれない、目にも止まらぬ高速機動だった。

 

 カプールは百式改に肉薄すると、右腕を振ってヒートロッドを巻きつけて高圧電流を流して、金色モビルスーツの電気系統をズタズタにしてしまった。

 バリバリという音が響いたあと、金色のメッキがパラパラと剥がれ落ちて、百式は煙を吹いてばったりと地面に倒れた。

 僚機のネモⅢも反応することが出来ないまま、カプールの左手から発射されたマシンガンで全身穴だらけになっていた。

 

 陣地のMSを行動不能にすると、カプールは今度はヒートロッドを管制塔に巻きつけてオープンチャンネルを開いた。

 

『管制塔、電流を流されたくなければ降伏しろ!』

 

 管制塔の士官たちは、非情な脅しにパニックに陥った。もちろん、実際には建物に電流は流れないのだが、指揮官機の無惨な姿に動揺していたのだ。

 

『わ、わかった、降伏する! 電流を流さないでくれ!』

『了解した。そこから全員降りてくるんだ』

 

 司令部が落ちたことで指揮系統が失われ、残った防衛部隊もほどなく降伏した。

 シオラレオネの連邦軍前線基地はついに陥落したのである。

 

 オスカーは塹壕に立て籠っていたモビルスーツを武装解除させると、予想していなかった助っ人の労をねぎらった。

 

「プルフォウ大尉、本当に助かった。一瞬ヒヤッとしたが、学園生活で腕は鈍っていないようだな」

「学園生活?」

「ミーミスなんとか学園では生徒なんだろう?」

「あ、ああ。その通りだ」

「生徒を演じていて、いきなり戦闘では大変だったろうな」

 

 モニターに映ったプルフォウ大尉は、髪型をポニーテールにして、戦闘ジャケットを着こんでいた。基地にいたときとは雰囲気が違っていて、これが学生の間で流行っているファッションなのかもしれない。

 

「状況の変化には慣れている」

「さすがだ。……管制塔の士官たちも投降したようだな」

「そうか、任務完了だ」

「それにしても、その機体は驚いたよ。カプールは基地に配備されてなかったはずだが?」

「……他の基地から借りたんだ。カプールは運動性が高い。合理的な選択だ」

「まるで猛獣みたいな動きだったよ」

「猛獣? ああ、比喩だな。駆動系を改良しているから、ノーマルより三割は速く動けるんだ」

「なるほど……」

「オスカー大尉! 格納庫にいたモビルスーツも投降してきました!」

「よし、油断しないで武装解除させろよ。抵抗しようとする奴がいるかもしれんからな」

 

 とは言ったものの、そのほとんどは作業用モビルスーツだった。

 

「連中はザクタンクまで使ってました」

「連邦軍はモビルワーカーもケチってるのか?」

「持って帰りますか?」

「そうだな、中破した機体を運ばせよう」

「わかりました」

「投降した連中は一箇所に集めて、階級が高い奴らを尋問するんだ。もちろん、たいした情報は入手できないだろうが、荷物に偽情報が入ったメモリーを入れておくのを忘れずにな」  

 

 地球連邦軍に偽情報を流すことも、今回の作戦の重要な目的だった。つまり連邦軍上層部に、アフリカのジオンは組織化されておらず、思い付きで戦闘する愚か者の集団で、最優先で叩く目標ではないと思わせるのだ。

 

「欺瞞作戦か。地球連邦軍の注意をアフリカから逸らそうというわけだな?」

「プルフォウ大尉の活躍で、我々は注目されすぎたからな。今回の君の活躍で、また注目されそうだがね」

「……」

「我々の損害は?」

「損害はMS一機が大破、二機が中破です。カミル少尉が戦死。ハンス中尉、フランク軍曹は無事です」

「カミル少尉は気の毒だった」

「本当にいい奴でした。彼とはアクシズ時代から一緒で」

「宇宙に戻りたかっただろうな」

 

 アフリカ戦線のジオン兵は、みな宇宙に帰還することを願っていた。

 だがアクシズが陥落し、と言っていまさらサイド3に移住することも出来ず、ジオン兵は帰るところがない状況ではあった。

 

「プルフォウ大尉はどうする? モビルスーツに乗って学園に帰るのはまずいだろう。いちど基地に寄るか?」

「いや、学園に戻るつもりだ。ベースジャバーも借りているんだ。どこかに隠すつもりだ」

「カプールでベースジャバーは似合わないなあ。わかった。よし、みんな撤退準備だ!」

『待って! 何か聞こえる!』

 

 増援を警戒し、高台からゲルググで周囲を監視していたディリーナ少尉が無線に割り込んできた。

 

「聞こえるって、風の音じゃないのか?」

『人工音よ。これはローターかジェットの音? かなり大きいわ』

 

 やがて、全員が遠方から唸るような音を聞いた。その音量からは、かなりの質量だとわかった。

 

「! 陸上戦艦だ」

 

 プルフォウが呟いた。

 

『わかったわ、ビッグトレーよ! みんな基地から離れて!』

「全員すぐに移動しろ! 砲撃がくる!」

 

 オスカーが叫んだ直後、大口径砲が着弾する凄まじい衝撃が襲いかかってきた。

 

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