少女の友達は喋らない   作:星音るう

1 / 2
第1話 少女は月夜に何を思う

むかしむかし、私たちが住んでいる世界と、もうひとつ別の世界があったそうな。

 

その世界には、“魔術”という不思議な術が存在し、それを発動させる“魔力”という力がそこの人間にはあった。

 

その中でも、とりわけ高い魔力を内に秘めた少女が、とある街に住んでいたーーーー

 

***

 

ある月の綺麗な夜のことだった。

 

「お休み、リリィ」

 

「お休みなさい、お母様」

 

リリィと呼ばれた少女は思う。

 

-リリィside-

 

毎日毎日、同じことの繰り返し。

 

朝起きたら、屋敷の皆におはよう、と挨拶をし、食堂でお父様とお母様と朝ごはんを食べる。

 

それから、部屋で本を読んだり、ピアノを弾いたりして遊んで、運が良ければお庭で遊ぶ。

 

そして、お昼ごはんを食べて、召使いに勉強を教わる。

 

その後、夕ごはんを食べて、お風呂に入って、寝る。その繰り返しだ。

 

…私は外で思いきり遊んだことがない。

 

特に体が不自由な訳でも、病気を持っている訳でもない。

 

なのに、お父様もお母様も、私は屋敷にいないとだめだと言う。

 

…やっぱり、私が“普通じゃない”からかな?

 

この前、お父様とお母様が話していたけれど、私は「魔力」が強いらしい。

 

勉強を教えてくれる召使いがよく言っていた。「魔力が強いとその魔力を狙って悪い“マモノ”が寄ってくる」と。

 

そして、「“マモノ”に捕まったら、魔力と一緒に“正気”もとられて、死んでしまう」とも。

 

ーーーでも、少なくとも私は今までそんなもの見たこともないし、それで人が死んだという話も聞いたことがなかった。

 

だけど、魔力が強い人ほど狙われやすいという。だから私は屋敷から出してもらえないと言うの?

 

…そんなの嫌だ。もうこんな毎日、飽きたよ。

 

ふと外を見る。そこには間抜けなほど丸い月がぽっかりと浮かんでいた。

 

と、突然、私はここから抜け出したい、月明かりの中で野原を駆け回りたいという衝動に駆られた。

 

だが、ここは二階。玄関から出る…ということはまず不可能だろう。召使いやお父様たちに会うかもしれないし、玄関の先の門を開ける時に、防犯対策なのかかなり大きな音が鳴るのだ。

 

…考えに考えた末、私は窓から脱出することにした。

 

二階からどうやって出るのか、という人もいるだろう。確かに、結構な高さなので、飛び降りれば命に関わるだろうし、ロープを使うにしても、そんなものはないし、ロープ代わりになりそうなものもない。

 

じゃあどうやって出るのかって?…………“魔術”を使うのだ。

 

魔術の練習はこっそり何回もしているし、簡単な術ならいくつか使える。

 

今回は、その中の“風術(ふうじゅつ)”という術を使う。

 

この術は、文字通り風を操る。これを使って、地面に激突する前に下方向に風を起こし、衝撃を緩和するというわけだ。

 

だがもし失敗したら……

 

…慌ててそんな不吉な考えを隅に押しやる。

 

「…そんなの、やってみなきゃわかんないよね……!」

 

決心を決めた私は、窓を開け、身を乗り出す。

 

下を見ると、冷たい風がビュウと吹いていく。

 

「…思った以上に高いなぁ……」

 

だが、ここで尻込みする訳にはいかない。

 

目をつぶり、心の中で大丈夫と自己暗示をかけると、私は空中に身を任せた。

 

「きゃっ!!……じ、術をかけ………!!」

 

ーーー術が……発動しない…………!?

 

あぁ、駄目だと思ったところで、私の体が浮く訳でもない。

 

やっぱり、外には出ちゃいけなかったんだ。

 

お父様、お母様、ごめんなさい。私は馬鹿な子でした。さよなら…ーーー

 

ーーーーそう心で詫びた瞬間、ガクンと体に衝撃が走り、私は意識を手放した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。