………私は、どうなってしまったんだろう。
死んで……しまったのかな?
体に痛みはない。頭はぼんやりとしか働かない。
「……う…………………」
ゆっくりと、私は目を開けた。どうやら生きているようだ。
目の前には、心配そうに私の顔を覗きこんでいる少年の姿が見えた。
あぁ、あなたが助けてくれたのね…。本当にありが………
そこまで考えて私は大きな悲鳴を上げた。いや、悲鳴を上げようとした。
少年に口を押さえられ、私の出した悲鳴は小さくくぐもったものになる。
「んぐ…えぇっ!?だ、だだだだだ誰……ッ!?」
パニックに陥る私を落ち着かせようとしているのだろうか。少年は私の背中をさすり、人差し指を口元に当てた。静かに、という意味だろう。
「あ、あのっ、あなたが助けてくれたんです、か…?」
少しして、いくらか落ち着きを取り戻した私が冷静に聞く。すると少年は、コクンと頷いた。
「えっと、あなたは…誰ですか?」
少年は少し考えた後、地面に文字を書き初めた。
(…もしかして、喋れない……のかな?)
私がそう思っていると、少年は文字を書き終え、私に読むよう促した。
「えー、と…『零音』…レイン、くん?」
私が言うと少年はコクコクと頷いた。
「レインくんか…。あ、私の名前は莉々依(リリィ)。よろしくね!」
私が手を差し出し、握手を促すと、レインくんは少しためらったが、顔を赤くして手を握ってくれた。
新ためてレインくんの顔を見る。少しはねている美しい銀色の髪の毛に、金色の瞳。整ってはいるが、まだあどけなさの残る顔立ち。
まじまじと見ていると、やめてよ、というようにレインくんは顔を伏せた。…照れてるんだ。そうわかると、なぜかとても可愛く思えて、ふふっと笑いが漏れる。
…あれ?これって、友達…ってことでいいんだよね……?
…この目の前のレインくんが、私の初めての友達。
「……悪くないかも………」
ぼそっ、と呟くと、レインくんは不思議そうにこちらを見てきた。
「ん?ううん、何でもないよ。ただの独り言。」
そう言うと、レインくんはそうか、という顔になり、立ち上がった。
「えっ!?もう帰っちゃうの?」
私が言うと、レインくんは少し悲しそうな顔をして頷いた。
「そんな……もっと話したかったなぁ…」
初めての友達と、もうお別れなんて。
「…ねぇ、もうちょっとだけ、ここにいてよ?」
必死に懇願する私に、レインくんは首を振る。
レインくんともう会えなくなると、私はまた独りぼっちになる。…そんなの、嫌だ。
レインくんは既に私と60メートルくらい離れている。追いかけても無駄だろう。
だから最後に私は、初めての“友達”に向かってこう叫んだ。
「…また明日もここで話そうねーーッ!!」
すると、レインくんは歩みを止め、こちらを振り替えると、…控えめに笑った。
「!!」
それが「いいよ」という意味だと、私は信じている。
空がだんだんと白んでいく。
私は、眠い目を擦りながら、帰路につくのだった。