「さて皆さん、始めましょうか!!」
「「「いや、何を…?」」」
「学校の中間テストが迫ってきました」
「そうそう」
「そんなわけでこの時間は高速強化テスト勉強をおこないます!!」
シュバババとマッハで分身している殺せんせーがリレーして高らかに宣言する。
「先生の分身が一人ずつマンツーマンでそれぞれの苦手科目を徹底して復習します」
この人の教師としての仕事ぶりには毎回驚かされる。わざわざ教科別にハチマキまで巻いているほどだからな。ちなみに俺が教えてもらう科目は理科だ。
「では零斗くん、まずはこの南中高度の求め方ですがこれは公式がありましてね」
殺せんせーに言われたポイントをノートに書き連ねていく。すると突如、殺せんせーの顔がぐにゅんと歪んだ。
「急に暗殺しないでくださいカルマくん!!それを避けると残像が全部乱れるんです!!」
以外と繊細な分身だった。
「おい、赤羽…」
「ちぇ、ざんね〜ん。今なら殺れると思ったのになぁ〜」
当の本人は悪びれもなく、舌を出しながら顔を反らしている。
それにしても中間テストか…。転入試験を受けて分かったが、中学校の試験の割には問題の難度はかなり高めであった。この落ちこぼれのE組がどれだけ対抗できるかだな。
◇◇◇
そうして終えた一日。時間は放課後となっていた。
「さてと、帰るか…」
俺は靴を履き替え、校舎を出ると見覚えのある高級ブランドのスーツを着た男が見えた。
「久しぶりだね、零斗くん。学校生活にはもう慣れたかい?」
話し掛けてきたか。もう会いたくないって言ったのはフラグだったか…。
「…えぇ、お陰様で。理事長先生はこんなボロ校舎になんの用ですか?」
「噂の殺せんせーにご挨拶をしにね」
まぁたしかに、学校の長であるこの人が暗殺について知って貰わないと政府側も困るだろうな。
口止め料とかやばそうだけど…。
「そういえばそろそろ中間テストだね。勉強は捗ってるかい?」
「まぁ…、赤点を取らないぐらいには」
「それは何より。良い結果を期待しているよ」
もう少し感情込めて言えばましなんだがな…。
◇◇◇
「おはようございます皆さん!今日は先生、さらに頑張って増えてみました。さぁ、授業開始です!!」
うん、分身は増えてるんだ。だがその質が下がっている。所々別キャラになってるし…。
おそらく、昨日理事長になんか言われたんだろうな。
《キーンコーンカーンコーン》
「ぜー、ぜー、ハァ、ハァ」
授業後、案の定と言うべきか殺せんせーは目に見えて疲弊していた。
今も団扇でパタパタと扇いでいる。
「……さすがに相当疲れたみたいだな」
「なんでここまで一生懸命先生をすんのかね〜」
「……ヌルフフフフ。全ては君達のテストの点を上げるためです。そうすれば……」
皆まで語らずともわかる。煩悩満載だし…。
「…いや、勉強の方はそれなりでいいよな」
「うん、なんたって暗殺すれば賞金百億だし」
「百億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしねー」
「にゅやッ、そ、そういう考えをしますか!!」
「俺たち、エンドのE組だぜ殺せんせー」
「テストなんかより…暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」
「…………」
俺は何も言わずに、聞き手に徹した。
「…なるほど、よくわかりました」
「え…、何が?」
「今の君達には…暗殺者の資格がありませんねぇ」
まぁ、当然そうなるよな…。
「全員校庭へ出なさい」
俺たちは殺せんせーの言われた通り、校庭に出た。
皆がイリーナや烏間、殺せんせーの話を聴く中、俺は一人思案していた。
このE組の連中に利用価値はあるのか、と。こいつらは敗北することの惨めさ、愚かさ、恐ろしさを知らない。だから自らに敗者の烙印を押すことができるんだ。
そんなやつらを駒としたところで、はたして大した成果を挙げられるのだろうか。
そこで俺は忌まわしきあの男の言葉を思い出した。
『清隆、零斗、よく覚えておけ。力を持っていながらそれを使わないのは、愚か者のすることだ』
嗚呼、やはり俺は、人類史上最高の
――――――駄作だ。
◇◇◇
そして迎えた中間テスト当日、殺せんせーからクラス全員50位以内に入ることを課せられた俺たちの結果は……芳しくなかった。
テスト範囲の大幅な変更があった上に、その情報がE組に知らされていなかったためである。
俺はE組の平均的が下がることを見越して、全科目60点前後を取るように調整を入れた。
理事長による策略に俺たちはまんまとハマってしまった訳だ。
どことなく、クラスの雰囲気もいつもより重い。
「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見過ぎてしまったようです。君達に顔向けできません…」
そんな重い雰囲気を断ち切ったのは殺せんせーに向けて対先生用ナイフを投げつける赤羽だった。
「にゅやッ!」
「いいの〜?顔向け出来なかったら俺が殺しに来んのも見えないよ?」
「カルマくん!!先生は今落ち込んで…にゅっ!」
殺せんせーが言い切る前に赤羽は、自分の解答用紙を見せつけるようにして教卓に置いた。
「俺、問題変わっても関係ないし」
「すっげぇ…」 「数学100点かよ…!」
そこからの赤羽はいつも通りだった。殺せんせーをクラス全員で煽り、出した結論は…
「期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!」
だそうだ。
「「「アハハハハ!!」」」
「にゅやー!笑うところじゃありません!」
先程までの重い雰囲気とは一変して、和気藹々とするクラスの連中を俺は何処か冷めた目で見つめていた。