ナイスネイチャ「はぁ〜どうしたもんかねぇ」
他に誰もいないトレーナー室で声を漏らす。
いったい私のトレーナーはどれだけ鈍感なんだろう。
結構アピールしてきたつもりなんだけどなぁ、まったく成果が感じられない。
彼の元で過ごしてきてもうじき三年が経つ。
年頃の娘が四六時中共に過ごしてきた異性に何も感じないなんて無理な話で。
多くのウマ娘はその魅力的な男性に好意を覚えてしまう。
私もその例に漏れずトレーナーのことが好きになってしまった。
そろそろ契約期間が終わってしまう。どうアタックすればいいのかもう一度よく考える必要がありそうだ。
トレーナーが帰ってくるまでにはまだ時間がある。
それまでどうしていようかと考えだしたちょうどその時聞き覚えのある軽快なステップを踏む足音がこちらに近づいてくるのが分かった。
トウカイテイオー「やっほー!!トレーナーいる?」
いつもの如く勢いよくドアが開け放たれる。
この調子で何度もテイオーがドアを壊すのでこれまでに何度も取り替えている。
こんなことが許されているのはトレーナーの懐の広さによるものだ。
こんなことまで笑って許してしまえる私のトレーナーの優しさが嫌いでもあるし大好きでもある。
「あれネイチャじゃん。何してるの〜?トレーナーは?」
「トレーナーならまだ帰ってないよ。」
「そうなの?じゃあそれまで待ってようかな。」
私が何か言う前にハキハキした足取りでソファに向かい遠慮もなく寝そべってしまった。
かく言う私も許可もなく彼のイスに座っているんだけど。
そんな私と同じトレーナーの元でトレーニングに日々勤しむキラキラウマ娘トウカイテイオー。
私はまだ彼女に一度も勝てていない。レースでも恋愛でも。
密かに自分のアタックがなんとも思われていないのはテイオーのせいだと思っている。
テイオーのトレーナーに対するスキンシップは、はたからみても度を超えている。
私がどれだけ勇気を振り絞っても、彼女の何気ない行動で全てが上書きされてしまう。
私が生活している中でテイオーに対する劣等感を感じない日はない。
何をしていても、何を考えていても常にネガティブな方に進んでしまう。
トレーナーだってこんな私より天真爛漫で太陽のようなテイオーのほうが良いに決まっている。
駄目だ。またこんなことを考えてしまった。
「ねぇ、テイオーはさ。トレーナーのことが好きなんだよね?」
「うん、そうだよ。」
誤魔化すことのない真っ直ぐな答え。力強くハッキリとそう返された。
それに対して私の方はトレーナーに対する気持ちをいまだに打ち明けられていない。
私は負けヒロインのルートを着実に進んでいた。
「トレーナー早く帰ってこないかなぁ。」
声のトーンがわずかに高くなっている様子から喜びの感情が見てとれる。
これからいつもみたいに一緒に散歩でもしにいくのだろう。
なんとも羨ましい。私だってそんな関係になりたい。
「今日さ、トレーナーに直接告白しようと思ってるんだ。」
「え、、ど、どういうこと!?」
思ってもみなかった突然の暴露に私は動揺を隠せないでいた。
「今まで告白まがいのようなことは何度もしてきたけど。あのトレーナー鈍感だからさっ。正面からボクの気持ちをぶつけてみるよ。」
「応援しててよねっ。」
テイオーは本気だ。いつもやると決めたら一直線だった。
取られてしまう、このままじゃ何度も出てきた悪夢が現実のものとなってしまう。
ずっとたかを括っていた。さすがに告白までは出来ないだろう。
いつか私にはチャンスが巡ってくるだろうって。
でもそんな考えは一瞬で打ち砕かれた。ガツンと頭を殴られたような気がした。
いつまでもネガティブじゃいられない、さぼっちゃいられない。
初めてこんなにも人を好きになった。簡単に失ってなるものか。
心に火がつく。私だって恋する乙女なんだ。
戦わなければ勝てない。そのことを理解するのにずいぶん時間が掛かってしまった。
そっちがそのつもりなら教えてやる。私はただのモブキャラじゃないんだと。
とことん戦いつくして、勝利を飾ってやるんだ。
そのためにもまずは
「テイオー!私とレースで勝負だ!」
トレーナーは絶対に譲らない!!