トウカイテイオー「どういうこと?今から?」
私の突然の言葉に理解がまだ追いついていないようで、首を傾げ言葉の意味を考えている。
もちろんそれが当たり前の反応だ。
今さっきこれから告白すると宣言したにも関わらず、全く意に介さずレースをしようなんて自分でも意味が分からない。
でもテイオーの意表をついたようでなんだか少しやり返してやったような清々しさが感じられる。
ナイスネイチャ「そう、今からレースしない?」
「えー!本気で言ってるの!?もう放課後なのにさぁ。」
「お願い!そろそろ有馬記念だからテイオーの走りを確かめておきたくて。」
「もー仕方ないなぁ。ボクもライバルが弱すぎるとつまらないしね。」
「テイオー様の強さをぞんぶんに見せつけてあげるよ。」
「でも1レースだけだよ。汗だくでトレーナーと会うわけにはいかないからね。」
「ありがとう、テイオー。」
「じゃ早く着替えに行こうよ。」
トレーナー室から出てテイオーについていく。
告白前の時間は気持ちを整理したい筈なのに誘われたからと快くレースを了解できるなんて凄いな。
でもまあテイオーのことだから走ったほうがコンディションを整えられると思ったのかもしれない。
私がテイオーを利用しているようで実際はテイオーが私を利用している。
いつのまにか立場が逆転する。彼女はそういうことが簡単にできる。
私が知るトウカイテイオーはそういうウマ娘だ。
さっきの言葉も、私とのレースなんて2500M走っても汗なんてかかないと言われているようなものだ。
キラキラに飲み込まれちゃ駄目だ。今日は私が勝つんだ。
着替えが済みレース場でウォーミングアップを行う。
なんど見てもテイオーの体は柔らかく今も伸ばした足の先に簡単に手が届いている。
彼女の強い理由はその柔軟さにある。あの軽快な走りは他のどのウマ娘も実現出来ていない。
私は密かに獲物を狙う鳥のようにテイオーを観察していた。
普段から先行の位置で走るテイオーは後ろのウマ娘からのプレッシャーを後押しにし前を走るウマ娘を見据えることでスパートをかける。
つまりテイオーの走りは前と後ろのウマ娘が存在することで成り立つ走りだ。
つまり2人だけのレースではテイオーは本領を発揮できない。
それを理解したのは一年以上前のことだ。それを知ってもなおまだ一度も勝てていない。
原因は分かっている。私は今までテイオーを追い抜く、超えることに全力を注いでいた。
ずっとテイオーの背中を見て走っていた。
自分でテイオーのことを敵わない存在にしたてあげ、それを超える形で勝たないと上にいけないと思い込んでいた。
でも、今はもう違う。私は今日最初からテイオーの隣で走る。
くらいついてやる。自分から下がったりなんかしない。
私の走りはテイオーに負けてない。今までの言い訳の余地を残すような負け方はもうしない。
今まで弱点を知りつつも怖くて実践することが出来なかった。そのため後手に回り結果テイオーの走りを後押しする形で走っていた。
今まで私は勝負のスタートラインにも立てていなかったんだ。
正々堂々と戦う。そして、言うんだ。
私もトレーナーのことが好きだって。
とっても意地悪だけどそれでいい。それが勝者の特権ってものでしょ?
「ネイチャ準備出来た?」
「もちろん!」
「じゃあテイオーも良いならパドック行こっか。」
力強く返事を返した。私は今日初めて本当の意味でテイオーと戦うんだ。