戦え!ナイスネイチャ!!   作:ヘルシー司

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第六話 後悔

ライスシャワー「行っちゃいましたね。」

 

トレーナー「何か誤解してるようだったし俺追いかけてくるよ。」

 

「待って!!」

 

いきなり走り出そうとしたお兄様の袖を強く掴む。

 

どこにも行かせない。

 

「ライスをここに置いていくの?」

 

「でも、誤解を解かなきゃ。ライスだってあれだけチームに入りたいって言ってただろ。」

 

そのつもりだったけど、もう良いの。

 

ライバルがあんな調子じゃチームになんて入らなくてもお兄様はライスの物になりそうだもん。

 

「行かないで...。」

 

「寒いよ、お兄様。」

 

そう言って震える私にお兄様は慌てて自分の上着を着せる。

 

「ごめん俺が悪かった。一緒に校舎の中に戻ろう。」

 

「うん。」

 

頷きながらも笑みが溢れてしまう。

 

駄目だこんな表情を見せちゃ。可哀想で守ってあげたくなる存在でいなくては。

 

あの二人がお兄様のことを好きなのは知っていた。

 

というかあれだけ距離が近かったら誰でも好意を持っていることに気づく。

 

気づかないのはその好意を向けられる本人であるお兄様だけ。

 

テイオー、ネイチャあなたたちの敗因はそれをきっちり分からせなかったこと。

 

もうこの瞬間彼の中から二人は消えた。

 

外から差し切る。ライスの勝ちは揺るがない。

 

結婚式に青薔薇のブーケトスでもするからまた二人で争いあってね。

 

上で微笑んでいてあげる。

 

二人ともちゃんと聞いててね。この寒空の下で勝利のファンファーレを鳴らすから。

 

校舎の中でお兄様の上着の温もりに包まれながら二人で談笑をした。

 

楽しい時間は経つのが早い、もう寮に戻らないといけない時間になってしまった。

 

二人で歩きながら正門の前で急に立ち止る。

 

「お兄様。大切な話があるの。」

 

「ん、どうしたんだ?」

 

「ライスと付き合っ、「プルルルルルルルルルル

 

突然の着信音に言葉を遮られる。それはお兄様の携帯から鳴っていた。

 

なんでこんなときに鳴るのかなぁ。もしかして最後の足掻きとか?

 

ネイチャからとかだったら面白くなるなぁ。

 

なんてライスの考えはひどく甘いものだった。

 

求め続けていた二人きりの世界はこんな電話一本でいとも簡単に瓦解してしまうものだった。

 

ことの異常性に気づいたのはその音がいつまで経っても響いたままだったから。

 

着信音は鳴り続けているのにお兄様は携帯を手に持ったまま画面を見て動かない。

 

すでに二十秒は経とうとしているのに、青ざめたまま一向に取る気配が無い。

 

爪先を立たせ覗き込もうとしたその時、お兄様が決心したようにボタンを押し、携帯を耳に当てた。

 

???「お前今どこにいんだよ。」

 

トレーナー「その声は....帰って来てたのか!?」

 

「慌てるな、私の質問に答えろよ。」

 

「今はまだトレセンにいるよ、そっちは今どこに、

 

「いいか、誤魔化すなよ、お前ネイチャ泣かしただろ。」

 

「それは誤解なんだ、話せば分かる。」

 

「ならなんですぐに追いかけなかったんだ?」

 

「それは......

 

何なのこの人、ライスのトレーナーに詰め寄るなんて許せない。

 

「酷いよ、トレーナー....

 

奥からネイチャの涙混じりの声が聞こえて来る。

 

思った通り泣いていた。やっぱりネイチャじゃ何もできない。

 

その筈だったのに。この人は何?ネイチャの何で、トレーナーの何なの?

 

「いいから、今すぐ商店街にこい。」

 

「分かるよな。お前とネイチャが通ってた所だよ。」

 

「分かった。俺も誤解を解きたい、すぐに向かう。」

 

「それに、お前とも話したい。」

 

「こっちは何も話すことはねぇよ。」

 

電話を切った途端、トレーナーがライスに見向きもせずに走り去っていく。

 

どうしてこうなってしまうの。やっと今日というチャンスが来たのに。

 

「待って!!!」

 

さっきより大きな声で叫んだけど振り向きもしてくれなかった。

 

だんだん小さくなっていくお兄様を見ながら涙が止まらなかった。

 

一人残され、掛けられた上着を強く掴み、自分で自分を抱きしめる。

 

そうして半ば放心状態のまま地面に倒れ込んだ。

 

冷たい風が私を非難するように吹き続け、空を切る音がブーイングの声に聞こえる。

 

なんでお前なんかが、

 

ミホノブルボンの三冠が見たかったのに、、

 

ママーなんであのウマ娘が勝ってるの?僕あの娘のこと知らないよ?でもなんだか汚いね、、、

 

もう誰もいなくなったトレセンで横たわりながら目を閉じる。

 

ねぇ、これでもまだ駄目?

 

お兄様は可哀想じゃないと、同情できないと、哀れでちっぽけで今にも消えそうでないとライスのこと見てくれないもんね。

 

だから私ずっとそうしてたよ、ほら今もそうでしょ。

 

お兄様さえいれば私ずっとヒールのままでも良かったよ。

 

それで一緒に居られるなら。ライスのこと好きになってくれるなら。

 

ねぇ寒いよ、お兄様....

 

早く...迎えに来てよ......

 

 

 

 

薄れゆく思考の中で最後に目を開ける。

 

そこには望んでいた景色はなく最後の希望は儚く潰えてしまう。

 

代わりに目に入ってきたのはいつも正門のすぐ横で存在感を放っている、あの二人の部室だった。

 

上にチームシリウスと看板が打ち付けられている。

 

シリウス、、チームシリウスかぁ。

 

選ぶことは出来なかった、でも確実に存在していた別の未来に思いを馳せる。

 

そこには、テイオーとネイチャと一緒に笑っている自分の姿。

 

ああ、あんな意地悪なことしなきゃ良かったなぁ。

 

広い校内でたった一人で、後悔を残したままゆっくりと瞼を閉じた。

 

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